銀色の永遠     〜サイレンの歌@〜


ぶどうヶ丘高校 構内 演劇部

12月22日 AM7:15

〜美貴〜

私は皆の前に立つ真希ちゃんから目が逸らせなかった。
あの『目』
決して演劇部の為なんかじゃない!

大体なんで自分で辞めたハズの部活に戻ってくるんだよ!
辞めるだけの理由が有った筈だからだろ?
なのに・・・わかんねーよ・・・

そんな事が頭の中に渦巻きグチャグチャになった。
     『疑惑』
友人にそんな考えを向けなくては為らないのか?
悲しいと思ったが 彼女に 何を 私は疑うのか?
ますますわかんねー・・・

「美貴姐ェ?どうしたと・・・顔色が悪か〜」

「うるせェッ!触るンじゃねェッッ!!」

心配してくれたれいなの手を叩き払ってしまった・・
混乱した私は酷く興奮してしまっている・・
れいなはすごく悲しそうな目で私を見た。
悔恨が私の心に走る。
「・・・・そんな・・・心算じゃ・・・無かったんだ・・・」

・・・何なんだよ・・・クソ!!


ぶどうヶ丘高校 構内 演劇部

12月22日 AM7:15

〜れいな〜

はぁ〜!!今日は朝から衝撃的やね〜
絵里とさゆが入院しとったんは全く知らんかったと!
ばってん『噂の』後藤さんが演劇部に来るなんてスゴか〜!

『あげな女にれいなも為りたか!』

凛としたあのヒトを見たら心の底からそう思えたった。

ん?美貴姐ェ、随分と顔色が悪かね?
心配たい・・・

「美貴姐ェ?どうしたと・・・顔色が悪か〜」

「うるせェッ!触るンじゃねェッッ!!」
      痛ァ!
れいなの手が美貴姐ェの裏拳に・・・
酷か・・やっぱり・・・美貴姐ェはれいなの事、嫌ってったい!

後藤さん・・・後藤さんはきっとこんな事はせんたい!
そう・・後藤さんなら・・・・・


ぶどうヶ丘高校 構内 演劇部

12月22日 AM7:10

〜小春〜

『道重さゆみと亀井絵里が襲撃を受けて入院した』

私の脳天に衝撃が奔る!

二人を相手にして二人共病院送りにした「スポルトマティク」とは如何なる存在なのか!
許せない。と思うのと同じくらい気分が昂る!
このメラメラと湧き上がってくる気持ちは何なんだろう?
怒りや憎しみ?それだけでは無い・・・・
こんな風に感じるのは・・・ミラクルエースだから!
・・・なのか。

その後、部長のよっしーさんの友達が助っ人に来てくれる様で挨拶をした。
・・・・?  二人だけでは無い様だ・・・
『後藤真希』?  
藤本さんと一緒に居るのを偶に見かけたことがある・・・

「ねぇねぇ?桃子!あのヒト演劇部だったの?」
道重さんが居ないので桃子に聞いてみた。
  知っているのかな?
「うん。何だか中等部の時に在籍してたみたい・・・当時は『一人だけ飛び抜けている』
 とか言われてエースだって・・ちょうど小春みたいに言われてたんじゃないの?」
エース・・・その言葉に感応したのか私は不思議と『後藤真希』を目で追った。
   !
目が合った・・・向こうもこっちを見ていた。
  何で?
でも何故だろうか?
あのヒトの『目』は何かが違う風に感じた。
その何かは解らない。
なにかこう・・・悪夢のような・・
!?
私は何を言っているのだろうか!
見かけた事が有る位で顔を合わすのは初めてなヒトに・・・
でもあのヒトに渦巻く黒い気流は何なんだろう?
『スポルトマティク』『後藤真希』
このフレーズが私の頭の中をグルグルと周り続けていた。

ぶどうヶ丘高校 構内 演劇部

12月22日 AM7:15

〜絵里香と唯〜

「『後藤真希』・・・・ッッ!!」
絵里香は獣染みた唸り声を低く上げる
「いかんよッ!・・・まだやで!」
唯の制止を絵里香は受け止める。
「解ってる・・・大丈夫だよ・・」
絵里香は深呼吸をして昂った己を平常に調整する。
「それにしてもアチラから出向いてくれるやなんてねぇ・・」
「全くだね・・何を企んでいるのか・・」
絵里香は苛立ちを視線に乗せて『後藤真希』を穿つく。
その感情を真っ向から突き崩す様に真希の視線が絵里香に注がれる。
「ッッ!!!」
絵里香と真希は数秒、真正面から視線をぶつけ合った。

「フン!やる気でココに来てンじゃんか!」
絵里香は満足したかの様に眉を寄せた。
「近い内に殺りあうんやからアイツには焦る必要は無いやン・・・それより・・」
「それより?」
「『スポルトマティク』とかいう奴のほうが・・・得体が知れんだけ不気味やなぁ!」
「得体・・・ねぇ・・どんなヤツなんだか・・・・案外もう会った事が在るヤツだったりね!」
「会った事?・・・おもろいわぁそれ!だったらどんなヒトだか会ってみたいわぁ」
 
 唯は軽く笑って見せたが・・・・・・その目は酷く暗く澱んでいた。


銀色の永遠     〜サイレンの歌A〜


ぶどうヶ丘高校 構内 演劇部

12月22日 AM8:15

〜小春〜

「はい!ここでセリフ!」
よっし〜さんの声が響く。
ミーティングが終わり此処に居ない人達の配役を変えての初めての合わせだ。
あと3日で本番なのに・・・本当に大丈夫なのかな?
そんな不安が胸を過ぎる。

『レ・ミゼラブル』のセリフが流れる。
 後藤さんだ!
は・・・初めて読む本じゃないの?
何であんなにスラスラを感情を込めて読めるのか?
只只、驚くばかりだった・・・
ああ言うのが・・・本当のエースなのかな?
じゃあ・・・私は・・・・

「何しとん?セリフ言わな!」
岡田さんに声を掛けられ慌てて自分のセリフを読む。
後藤さん・・・あの人のお陰で私の平常心は掻き乱されている。


ぶどうヶ丘高校 構内 演劇部

12月22日 AM8:30

〜れいな〜

「後藤さん!すごが〜!尊敬し直しました!!」
後藤さんのセリフ合わせを聞いてバリ感動した!
れいなはこのヒトに付いていくと!!

「んあ?そんなに凄い?ただ台本道理読んだだけぽ・・」

そんな謙虚な所にシビれるゥ!あこがれるゥ!!

「そんな事なか!間の取り方とか是非に教えて欲しかったい!!」
れいなの言葉に笑顔で答えてくれる!
美貴姐ェとはエライ違いたい・・・

ぶどうヶ丘高校 構内 演劇部

12月22日 AM8:30

〜美貴〜

「・・・・」

確かに・・・真希ちゃんの演技って凄いモンだ。
穴埋め所か前より劇のレベルは上がっている・・・真希ちゃん一人の力で・・

この苛立ちと不信感・・・不快感なのか?
ない交ぜな気持ちがカフェオレのように私の心を彩る。

れいなもすっかり真希ちゃんに懐き出している。
一緒に居てもウザいだけなヤツなのに・・・クソ!

「すっかり取り巻きのコ。取られちゃったね!」
「てめぇ・・・三好!」
後ろからいきなり声を掛けてきた三好に私は怒鳴りつけて威嚇をした!
普段は近づきもしない癖に・・・イラつく女だ!
「ふふ・・怒鳴りなさんな・・この場でやり合うワケ無いじゃん!」
そんなこと解るか!私は視線を逸らさず睨みつける!
「あんたアイツの友達でしょ?なんでいきなり戻ってきたか教えてよ。」
「それは・・・」
口ごもる・・・知りたいのは私の方だ!
「知らないの?いつも一緒に居る癖に?・・・その分じゃ何も知らないんだ・・」
「何いってんだよ!お前・・・・」
私の視線をひらりとかわし三好はニヤニヤと笑いながらこっちも見た。
「まぁ知らない方が幸せって事かもね?」
「おい!どういう事だよ!」
三好は私の問いに答えず練習の輪に戻っていった。
私は一人その場に取り残された・・・・・


銀色の永遠     〜サイレンの歌B〜


ぶどうヶ丘高校 構内 廊下

12月22日 AM9:00

〜美貴〜

輪の中に戻れなかった私は廊下で看板や大道具の制作をしていた。
幸いな事に私の出る場面には役者の変更が無かった為、もう一度合わせをやる必要が無いのだ。

とはいえ亀も小川もコンコンも居ない。小春や美海は役の変更で手一杯・・・
そうなると親しいヤツも居ない私は身の置き場がアソコにないのを感じ
こうやって制作作業に没頭している。
考えたくなかったのだ。
とりあえず忘れたかった。
作業に没頭さえしていればこの時間だけは忘れられる・・・・

「・・・・ちゃん!」
「・・・・・・き・・・ちゃん!」
「み・・・き・・・ちゃ・・ん!!」

「美貴ちゃんッッ!!」
「うわッ!」
耳元でいきなり大声を出されて私は大きく仰け反った!
「も〜・・さっきから呼んでるのに何、無視すんだヨォ〜」
「・・・亜弥ちゃん・・か。ゴメン!ゴメン!ちょっと集中してやってて・・気が付かなかった」
「そんなに集中してたの?・・・これ!曲がってない?」
「え〜!!マジ?」
私は釘を引き抜いて打ち直した。
「ところで。亜弥ちゃんなんで此処にいるの?」
「ちょっと・・・補習・・・」
そうだった。ケアレスミスとかで亜弥ちゃんの期末の英語は私の地理より点数が悪かったんだっけ。
「大変そうだね・・・いつまで?」
「うん25日まで!」
「毎日?」
「そうなんだ。嫌になるよォ!」

『聞かなくてもいい事』のはずだった。
こんな気分だったからなのだろうか?
私の口は精神を離れて動き出す・・・

「亜弥ちゃんさ・・・この何ヶ月かでなんか変わった?」
「えッ!?なになに?」
「だから・・・気分が妙に高揚した。とか・・いきなり怪我したり痛かったりとか!」
「言ってる意味が解んねーけど・・・偶に手が攣ったりするけど・・普通じゃ無い?」
「・・・そう・・そうなんだ・・・」
「ちょっとおかしいよ!美貴ちゃん!?」
そういうと亜弥ちゃんは立ち上がって歩きだした。
・・補習へ行ってしまうのか・・・
出来ればもう少し・・ここに居て欲しかった・・

「なんや〜もう行ってもうたんかぁ。」
コッーン
革靴の音が近づく。
  コッーン
「補習ぐらい遅れていってもええやろうになぁ?そうおもわへんかぁ」
     コッーン
「なぁ。藤本ぉ?」

    寺田!
私の背中に虫が這う様な怖気が奔る!

「おいおい。そうビビるなて!やりずらいわ〜」
私は寺田の目を強く睨む。
「そう怖い目ェすんなて。あの子・・松浦?『素質』を見出してやったのに
 未だに気付かへんとは・・・ちょお鈍いんちゃうかなぁ?」
「!!!」
「お前も知っとんのやろ?」
「・・・・」
「・・・まぁえぇ!お前もよう磨いとけ!」
「・・自転車・・・ですか?」
「『能力』を・・・や!」


銀色の永遠     〜サイレンの歌C〜


ぶどうヶ丘高校 構内 演劇部

12月22日 AM9:15

〜れいな〜

「そうなんですかぁ?はい!あ。なるほど!」
後藤さんはれいなの質問になんでもくれとお!
やっぱり元エースは伊達じゃなかね〜。不熱心な美貴姐ェとは大違いばい!!

「ねぇ?読みも一段落したし少し休まない?」
さすがは後藤さん!気遣いが違う!!!
「ジュースば買うて来ます!!」
れいなは後藤さんの分のジュースば買ってたばってん色々話すと〜。

「久々に此処に来たけど・・・変わんないね・・」
「後藤さんも中学の時・・・れいなと同い年の時は演劇部だったとね!」
「田中ッチも寺田から「弓と矢の試練」を受けたの?」
「ここに居るんは誰でも受けとっと!」
「ふ〜ん・・・じゃあ未だに寺田が『矢』を持ってんだ・・・」
「・・・・・?」
「ん?どうかした?」
「あ・・いや・・・なんでもなかです・・」

『矢』の話ばしていた時の後藤さんの目・・・・別人に様に・・
暗く澱んで見えた・・・れ・・れいなの気の所為・・・たい・・ね。

ぶどうヶ丘高校 構内 演劇部

12月22日 AM9:15

〜小春〜

なんとか読み合わせが終わった。
正直、自信が砕かれた・・・・
『ミラクルエース』なんて言われて浮き足立って居たことを思い知らされた。
本当の『エース』はあの人の事を言うのだろう。
私なんかは・・・まがいものだ・・・

こんな時、道重さんだった何て言ってくれるだろう?
『大丈夫だよ』とか心配してくれるだろうか?
『もっとしっかりしなさいッ!』と叱咤してくれるだろうか?
あの人が居ない今は解らない・・・
こんなに落ち込むのは自分らしく無い。
どうしてこんな事になってしまったのか?
弱い考えばかりが頭を埋めていく・・・・

「どないしたん?」
「え?」
岡田さんだ・・・随分と心配そうな目で私を見ている・・・
今の私はそんな頼りない顔をしているのだろうか?
「いえ・・・大丈夫です・・・」
「そんな事あるかい!顔色が悪いで?」
「・・・・・・・・」
この人は・・・親しくは無かったが・・・やさしいヒト・・だったんだな・・
なんだか・・・・胸が苦しくなってきた・・・私ってこんなにヨワかったのかな?
「うぅううぅ・・・」
嗚咽が溢れてきた・・・・こんなの・・・私らしくないな・・・

「大丈夫?しっかりしぃ!」

差し出されたハンカチで涙を拭った。
深呼吸で落ち着きを取り戻す・・・もう大丈夫だ・・・
「岡田さん!すみませんでした。道重さんの事でちょっと混乱してたので・・・
 でももう大丈夫です!!」
泣いた事で頭がスッキリしたのだろうか?いつもの私に戻れた。

「ほんま。道重さんは災難やったねェ。訳も解らん様なヤツに襲われて。
 久住ちゃんも犯人には相当頭にキてるやろぉ?」
「そう・・ですね。あの二人を相手にして倒すくらい強くて凶暴なヤツが
 野放しなのは危険な事だと思いますし何より許せません!」
「やっぱり久住ちゃんもそう思う?私もそう思っとったんよ!」
そう言った岡田さんは何だか妙に嬉しそうだった・・・


ぶどうヶ丘高校 構内 演劇部

12月22日 AM9:15

〜絵里香〜

「だからどうだって聞いんのさ!」
「いちいち答える必要があるんか!」
こいつ・・・年下の癖に調子に乗ってんじゃねよ!
「まぁアンタ程度じゃトモダチの仇なんて取れないよ!タカハシさんよぉ!」
「このォ・・・・ざけんじゃねーぞォオ!!」
「愛ちゃん!いい加減にするのだ!」

かっぺの高橋は新垣のチビに押さえつけられて部室から出て行った。
おーおー・・・これだからガキの友情ゴッコは始末が悪い・・・

   『仲間がやられて悔しくないのか?』

・・・これだけを聞いたらあんなにムキになって・・・・
こうやって焚き付けとけば何かの役に立つだろう?あんな雑魚でもね!

紺野も小川も『イロイロ』と嗅ぎまわっていたからなぁ・・潰し時・・
いいタイミングだったんじゃねえの?
この際なんだから後藤や藤本なんかも一緒に在庫一斉セールでブチ殺せばイイ!
・・・・『スポルトマティク』とかいう奴もついでにね!

私達はふるいに掛けられているんだよ・・・残る奴は少し居ればいいんだ・・・

強い能力を持っている奴だけなぁ・・・


銀色の永遠     〜サイレンの歌C〜

ぶどうヶ丘高校 構内 

12月22日 pm12:03

〜小春〜

午前の練習は一応カタチができた所で終了した。
後は細部を煮詰めれば公演しは充分間に合うだろう。

ああ、お腹が空いたなぁ・・
・・でも一緒に昼食を食べていた道重さんも亀井さんも居ないんだっけ・・

「小春ちゃん!一緒にお昼食べへん?」


ぶどうヶ丘高校 構内 

12月22日 pm12:03

〜れいな〜

さすが後藤さんね!
公演は午前の練習だけでほぼ完成したようなもんっちゃッ!
後藤さんのお陰で絡むれいなも上手そうに見えるったい!!

それにしてもお腹が・・・
またベランダで一人で・・・食べるたい・・・

「田中ッチ!お昼、一人なの?」


ぶどうヶ丘高校 構内 食堂

12月22日 pm12:15

〜小春〜

「実はなぁ。私、小春ちゃんを見込んで話があんねん!」
「話・・ですか?」
「そうや・・・でもな、外の人には聞かれたらまだ困んねん!」
「?」
「そういう訳でちょぉ隅のほうで話そ・・・」
「はぁ・・・」
「み〜よは席外して見張ってて貰えへん?」
「・・・・あいよ」
「な・・何なんですか?見張りまでって・・尋常では・・無いようですが?」
「スパイがおんねん。」
「!?」
「山下とそれに繋がる団体の件・・・実態は解らず仕舞い・・やろ?」
「な・・・・・なんでそれを知っているんですか?」
「・・・・なんかオカしい思わへんかった?」
「・・・?」
「アイツ等は何故だか私達についてよう知ってんねん・・・・それは何故だか?」
「・・・それでスパイが演劇部に居る・・という発想ですか?証拠もないし短絡的じゃ無いですか?」
「確かに状況証拠はあらへんなぁ。せやけどね、ウチの部には目的が怪しいのがおんねん。」
「目的?」
「例えば小川麻琴。紺野あさ美。」
「昨日のッ!?」
「昨日の一件絡んでいるのは斉藤美海、藤本美貴、後藤真希。」
「そう聞いてます・・が・・・何か?」
「紺野あさ美を倒した後、小川麻琴は三人に襲い掛かった・・・知っとるなぁ?」
「はい!」

「ここからは推理でしかあらへんけど、紺野、小川が何かしらのトラブルを起こし闘争になった。
 そこに偶然、部外者の後藤真希が部員と一緒に現れる。コレおかしいンちゃう?」
「・・・・・たしかに・・・関係の無いハズの人がそこに現れるのは・・・おかしいですね」
「知っとったとしたら?騒ぎが起きるのを・・」
「騒ぎが起こる事を知っていた?」
「自らが騒ぎを起こすように仕向けてそれに乗じて演劇部に乗り込む。」
「乗り込んで何を?」
「そこからは解らへん・・・せやけど・・」
「なんですか?」
「山下に命令を出したのは後藤真希。これはどないや、知っとった?」
「え?」
「アイツがあのチームのリーダーや。」
「ッッッッ!」
「友人の藤本美貴もチームの一員やったりするかもしれへんなぁ。」
「藤本さんが?」
「・・・・そうなると私の推理はハズレとるやん。紺野、小川の二人はもしかしたら
 私達の為に二人と闘ってそれで返り討ちに合ったのかもしれへん!!」
「・・・・・・!!」

ぶどうヶ丘高校 構内 ベランダ

12月22日 pm12:15

〜れいな〜

「どうぞ!後藤さんの分もヤキソバパン買って来ました!」
「ありがとう!田中ッチ!」
「いえ!後輩として当たり前の事ったい!!」
「後輩か・・・実は田中ッチを見込んで話が有るんだ!」
「話・・?」


銀色の永遠     〜サイレンの歌D〜

ぶどうヶ丘高校 構内 

12月22日 pm1:20

〜美貴〜

孤独・・・そんなのを妙に感じた。
昼は一人で取った・・・何だか人に会いたくねーってのもあったが
戻ったら誰も居なかっただけだかどね・・・

皆と会ったり話したりそれが普通の事何だろうケド、
数時間会わなかっただけで随分と長い間あってなかったような気すらする・・・

午後は全体練習か・・・気が乗らねー・・・道具室にでも入り込んでバックレるか?

そうと決めたら見つからないようにソロソロと道具室に近づく。
音が出ないように細心の注意を払って引き戸を少しだけ動かし中を覗く。
「だれも・・・いませんよね・・・」
そんな独り言をいいながら視線を奔らせる。
「!!」
誰か居た!
おかしくないか?今日道具を何か使うわけでも無いのに・・・何で居るんだよ!!
気配を消しながら戸から壁に身体を翻して中を覗き込む。
・・・誰が・・・いやがるんだ?
?  何かを探している?
顔は棚に被っている・・アイツがもうちょっと右に動かねーと誰だかわかんねー!
む!袋から何かを取り出した!
              『弓と矢』じゃねぇか!?

  ボキッ! ボキッツ! ボボキ!!!
こ・・・壊した?  壊した反動で顔が動いた見えるぞ!!


       ・・・・・真希ちゃんッ?

何してんだ?こんな所で?なんで『弓と矢』を破壊しているんだよ?

                      ガラッッッ!!

私は決意を込めて引き戸を開けた!!

「ぽ!?」
「真希ちゃん・・・・『何』してんのサ?」
「うぅん?久しぶりにね。昔使ってた道具を探していたんだぽ!」
「ふうん!・・・そうなんだ・・・・」
「あの小道具が使いたかったんだけど見つかんなかった・・・もういいや・・
 じゃあ!美貴ちゃん!午後の練習、遅れないように!」
「・・・うん・・」
チッ!
真希ちゃんの肩と私の肩が擦れるように触れる。

私は振り返りながら真希ちゃんの後ろ姿を見送った。
暫く見送った後、視線を道具室に移す・・・
足元にはさっき見た袋が落ちていた。
中にはバラバラに破壊された矢・・・・そして矢じり・・
「この矢じりは偽者・・・」
私はポケットから輝く矢じりを取り出した。
「そしてコレが本物・・・。」
擦れ違い様に真希ちゃんのポケットからスリ盗った矢じりだ・・・

バラバラに壊して・・・矢じりを入れ替えるなんて・・。
何がしたいんだよッッッッ!!真希ちゃんッッッッッ!!!!!


To Be Next→

Next sied

銀色の永遠   〜ボックスフィッシュ・パラダイス@〜


12月22日 pm7:00

『トラサルディ』

「それでは四人の出会いに乾杯ッッッッ!!」
グラスの軽い音が店内に響く!
「いゃ〜まいったまいった!!!まさか俺の『断空の流法』が見破られるとは思わなかったぜ!!」
革ジャケットの男 菅沼は早くも酒が回った様で非常にハイになっているようだ。
「見破ったんじゃねえよ!聞き破ったのサ!
 お前、動き廻りながら随分と蟻を踏みつけて動いていたからな!」
赤い髪の男 伊達兼はジョッキを傾けて淡々と話す。
「へぇ〜!伊達クン、そんな事考えながら闘ってたの?」
派手なフリルの付いた服の女 小倉優子は感心しながらグラスの赤ワインを飲み干す。
「でも、お互い決定打が無くてて延長の末引き分けって感じだったろ?」
オールバックの中年女性 カーズ・ホソキは笑いながらシャンパーニュをぐいぐいと飲む。
「引き分けったって居る場所は解ってもコイツに触れる前に俺のスタンドが弾かれちまうんだから
 しょーがねーのよ!」
伊達は口端だけ歪めてしょうがなさそうに笑って見せた。
「そりゃ俺だって変わンねーよ!『流法』を解かなけりゃハサミを使えないし解けば蟻の大群が
 身体中に這い回ってくるしな!俺もこの街に来て結構スタンド使いと闘ったが謙ほどやりずらい
 のも居なかったよ・・・いやマジでな!」
菅沼は甘い貴腐ワインを飲みながら熱心に話して居る・・・酒癖の様だ・・
「そんなもんかね?」
伊達は肩を竦めて答える。
「凄い!たたかいの中で生まれる友情りんこ!!」
小倉は二人の遣り取りを興味深そうに観察する。
「あんた・・・この街に来てって言ったね!それはもしかして『ぶどうヶ丘高校の演劇部』かい?」
ホソキは眉をしかめて菅沼に問いただす。
「そう言う高校なのかどうかは知らないが・・・・演劇部とは聞いてるよ!」
菅沼はシレっと答える。
「演劇部?・・・・あのガキも・・・そうなのか・・・?」
ホソキの言葉に伊達は反応し眼筋をピクつかす!
「・・・伊達クン・・・どうしたりんこ?」
軽く張り詰めた空気を無視して小倉は伊達に問う。
「伊達・・あんたも『ぶどうヶ丘』と係った事があるのかい?」
ホソキは同情・・というか親近感を込めてそういった。
「んだよ!あんたもか?」
伊達は素直な視線をホソキに向ける。
「おいおい!どうなってるんだ?演劇部ってのは能力者を手当たりしだいに狙ってンのかぁ!」
妙な展開に菅沼は困惑し始めた。
「ゆうこりんはたしかぶどうヶ丘のOGとかいうのが店に来て闘ったりんこ!」
「闘いの押し売りかぁ?」
菅沼は理解出来ない心情を首を曲げて表現した。
「じゃあ此処にいる全員が『ぶどうヶ丘の演劇部』に係った事になるね!不思議なもんだ!」
ホソキは感慨深そうに言う。
「・・・・なんか間違ってるよな・・あいつら・・」
菅沼は絞り出すような声で『演劇部』を非難した。
「で?あんたはこれからどうするんだい?」
悪くなった空気を払おうとホソキは菅沼に声を掛ける。
「ああ?俺?そうだよな〜。寝る所も無ェーからなあ・・」
「なんだァ?お前宿無しなのか?」
菅沼の言葉に伊達は一瞬、固まる!
「うるせーよ。俺だって好きでやってる訳じゃーねーよ!」
「寝床くらいならあたしが貸すよ・・」
ホソキは菅沼を少しだけ不憫に思ってそう言った。
「オバちゃん!マジ?それ?」
菅沼ほその言葉に驚喜する。
「よかったねぇ!菅沼クン!じゃあもう一回いこうか?」
         「乾杯」
         酒宴は続く  


銀色の永遠   〜ボックスフィッシュ・パラダイスA〜


12月22日 pm9:00

ぶどうヶ丘公園

♪ティゥリトゥリトゥリラー ティゥリトゥリトゥリラー
トゥラーリー ティゥリトゥリトゥリラー ティゥリトゥリトゥリラー
アー ティゥリトゥリトゥリラー ティゥリトゥリトゥリラー
トゥラーリー ティゥリトゥリトゥリラートゥーレリラー♪

調子の外れた鼻歌が公園の静寂に滲み渡る。

「おぉーい。犬ども!帰って来たドー!」
歌い手の菅沼は千鳥足で公園に足を踏み入れる。

「・・・・・・・」

菅沼の呼びかけに答えは返ってこなかった。

「おぉ〜い!お前たちィ?お土産あるんだぞォォ?いらねーのか?」
菅沼は聞こえやすい様に頭を左右に振って声を撒き散らす!
「・・・・・・・・」
音は返ってこず変わりに凄まじい殺気が公園に満ち溢れる!
     ゴクリ!
その凄まじさに菅沼の酔いは覚め思わず唾を飲み込んだ!

「おい・・・これは・・どおゆー事だぁ?」

闇夜に光る十の光眼・・・
その全てが殺気に満ちて菅沼を射抜く!

「お前等・・・・・」
一呼吸も置かずにに犬歯が闇に煌き、爪は冬の空気を切り裂く!
獣の殺意が菅沼の身体にスコールの様に降り注ぐ!!

「この馬鹿タレどもがァア!」

銀の軌跡が菅沼の周囲に奔る。

菅沼の身体は操り人形の様に縦横に振り動く!
獣の連撃は尽く空を切る・・・・
「ほ!何か・・・事態が飲み込めて来たゼ!」
軽くバックステップをして距離を取る。
「全く持っておめー等は手が掛かる・・・」
    スッ・・・
菅沼が腕を広げると『12本』の小ぶりな鋏が宙に浮かぶ!

「シザース・スプリッツアッッッ!!!!」

夜という漆黒の布を切り裂く様に鋏は踊る・・・・


銀色の永遠   〜ボックスフィッシュ・パラダイスB〜


12月22日 pm9:03

ぶどうヶ丘公園

  一閃
     銀色が瞬く。

犬達は電池を抜かれたように一斉に地に伏せた。
「・・・この分だと・・美紀も・・・」
周りに目を配らせる菅沼の首に金属の冷たさが走る。

「くッ!」
植木バサミの鈍い音より早く菅沼はその身を地面に叩きつけるように転がった。
前転しながらブレイクダンスの様に身体を捻り体勢を整える・・・
「お前も・・・やっぱりそうか。」
美紀と美紀のスタンド「サイレントジェラシー」の波状攻撃が菅沼を襲う!
「チェイア!」
金属が軋みながら不気味なリズムを奏でる・・・
菅沼の手から生えた小ぶりの鋏が美紀達のハサミを受け止めその動きを封じ込める。

「へへ・・・そのピロピロしてんのが怪しいなぁ?  チョップ・シザース!!!」
菅沼の声に合わせ美紀の背後の『何か』に向かって鋏が飛ぶ!
  ジャキ!ジャキ!
鋏の快音が『何か』を切断した。
「ぎぃいぃいッ!」
断末魔と共に目の前の幽霊のビジョンが消える!

「ったく・・・危い所だったぜー・・・」
菅沼は首を擦りなから歩みを進める。

幽霊の居た場所に足を進め地面に落ちた『何か』を確認する・・
「なんだぁ?この緑の紐みてーなの?これが犬どもとか美紀にくっついて・・
 もしかして・・・操られてたーなんて事は・・・ねーだろ?おい!」

「御名答!もっとドン臭いと思うてたんやけど・・あんた中々鋭いんやねぇ?」
菅沼は眉を顰めてログハウスの方に視線を奔らす!

「君は・・・・」
菅沼は知った顔だった・・2日に出会った少女だ!
少女は菅沼の方に近づいてきた・・・・
「私もびっくりしたんよ〜。まさかあんたが『スポルトマティク』やったなんて!」
その目の暗さに菅沼は軽く戦慄を覚え思わず距離を取る。
「ホントにこんなヤツに皆やられたの?」
もう一つ、声がする。
菅沼は顔を動かさず目でソレを追う!
闇夜に浮かぶのはショートカットの快活そうな少女だ・・がその目は余りにも闘争本能に・・
いや・・・狂気に彩られていた・・・・

「みんな?   ・・・お前ら演劇部・・・・ぶどうヶ丘のヤツらか・・・」
菅沼は二人を睨みつけながらそう問いただした。
「だったら?どうだってのさ・・・」
ショートカットの少女 三好絵里香は口端を吊り上げてニヤニヤと笑いながら間合いを詰めてきた。
「あんたがどういう目的で私達を狙っているかは知らんけど・・・落とし前付けさせて貰うわ!」
2日前に会った少女 岡田唯はその目を暗く輝かせながら菅沼に近づく・・・・・・

「目的?目的ね・・・・有るともよ!だがな!その前に!
 俺の大事な犬どもや美紀を『使った』事は・・・・・許せねぇえぇえッッッ!!!!!」

菅沼の憤怒の唸り声に呼応するように獣の光眼が闇夜に浮かぶ!
「おめぇ等も・・・やるってか?いいだろう!許可するッッ!!
 こいつ等を痛い目に遭わせてやれッッッ!」


銀色の永遠   〜ボックスフィッシュ・パラダイスC〜


12月22日 pm9:10

ぶどうヶ丘公園

「陣形は竜王第一と伏虎弐!カウントは7:4!良いかッッ!!」
菅沼の怒号に反応して従者が散らばる・・・・・
「へぇ〜〜〜〜〜?面白く躾けてんねぇ?」
三好は扇形に陣を組む犬を見てからかう様に言う。
「これはお遊戯じゃあ無いんだぜ・・この陣形!お前はもう『結界』の中にいるッ!」

パッッツチィィイィイインッ!

菅沼の指を弾く音が夜の公園に響く!
それを合図に犬達は天地左右を問わず全ての方向から三好の急所に目掛けて牙を奔らせる!

「『結界』だと!よぉーくみろッ!『結界』をはっていたのは私の方だ!!」

地面の下に!
三好の『シーズン・オブ・ディープレッド』の足から伸びた『血管針』が地面一帯にその姿を現す!

血管針は犬達の身体を意とも簡単に貫く!
「貧弱ゥ!虚弱ゥ!脆弱ゥウ!沸き立て!怪焔王の流法ッッッ!!!」

   ゴパァッッ!!

犬の断末魔が公園に響く!

「ふふ・・・・『三好絵里香の一兆度の怒り』を体内に送り込む『怪焔王の流法』・・・
 犬のシチューの一丁上がりねぇ!」
三好はそう言うと大笑いをしながら血管針を使って犬の身体を菅沼に投げつけた。

「こんな・・・・なんて事を・・・・・」
菅沼は犬に寄り添う・・・
「う〜〜〜〜ううう  あんまりだ・・・・」

「HEYYYYYYYY   あァァアァアんまりだァアアァア ヒィイイイ  !!!!!」

菅沼の喚き声の不気味さに三好と岡田は異様な感覚を覚えた。
「・・・・コイツ飼い犬を殺されて怒り狂うと思ったら・・・」
「アヒィィイイイ アヒィイイイイ アヒィ ウホォオォオオオオ」
「怒るより逆に不気味やわ!み〜よ!!早うとどめを刺してんかッッ!!!!」

    ピタリ!

「フーーーー スッとしたぜ!落ち着いた!激昂してテンパってるとうっかり殺しそうに
 なるからなァ〜〜〜!さてと・・・等価代償といくか?この代償は重くつくぜッッッ!!」


銀色の永遠   〜ボックスフィッシュ・パラダイスD〜


12月22日 pm9:18

ぶどうヶ丘公園

「く・・・・・・何なんだ?このプレッシャー!」
三好は近づく菅沼に異様な圧迫感を感じていた。
「どうした?気圧されてるようだが?」
菅沼は口角を持ち上げニヤリと笑う!
「・・・ッッ!!うるさァアいィィイイ!!!!!!!」
血管針が四方から菅沼を襲う!
「遅いな!」
銀色の瞬きが菅沼の身体を包む。
血管針は菅沼の身体に接近した所から摩り下ろされる様に削り取られる!
「くっ!コイツ!!!!」
「じゃこのまま行きますか!『断空の流法』!!」
シャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキンシャキン



「?消えた?????」
三好は己の目を疑う!
「これは・・・・催眠術?・・・・か?行き成り消えるなんてどんな能力なんだ?」
左右を見回して行き成り消失した菅沼の気配を探る!
「近くに居るハズ・・・・だけどなんだ?なんで見えない?」
三好は平静を失い辺り構わず血管針を乱舞させる!
「み〜よ!!あかんよ!落ち着いて!!」
「くぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
唯の言葉は三好の耳には届かず激昂した三好はヘドロを撒き散らす!
「・・・こない事に為るなんて・・・・手段なんて選んでられるかい!」
唯は髪を掻き揚げ後頭部に爪を立てる。
「・・・・・いくで!・・・コード3!」
ドンッッ!!!
唯の髪は逆立ち蔦が身体中に奔る。

「ぐゥウウウあァアアァ!!!!」
苦悶の呻き声を耐えられずに洩らす・・・・
「こ・・・この状態・・・なら・・・・」
唯は三好の居る場所に視線を凝らす!

「?」

「!」

「!!!み〜よッッ!!!斜め前ッッッ!!!!」
「え???」
「遅いって!」
虚空から菅沼が突然、姿を現す。
三好は反応が出来ず銀の一撃を喰らう!

鋏は三好の目前で開閉し周りの大気の構成に干渉を与る。
酸素濃度の低くなった空気を吸った三好は溺れる様にもがいて気を失った・・・・
菅沼は唯の方を向き歩みを進めた。
「さてと・・・・お嬢ちゃん教えてもらおうか?『落とし前』っつーのはどうつけるモンだ?」


銀色の永遠   〜ボックスフィッシュ・パラダイスE〜


12月22日 pm9:23

ぶどうヶ丘公園

菅沼の身体に再び銀の鋏が纏わり付く様に旋回する。
鋏の開閉音と共にその身体は闇夜に染み入る・・・・

岡田唯は『ハイドロレインジャ:コード3』の能力
指から打ち出す種子で脳を刺激し一時的に人間の限界を超え、未知の領域まで
引き出す事が出来る・・・・・・その力を使用して菅沼の消失の仕組みを暴こうと
その朧げな姿を凝視する!

未だ完成を見せていない『コード3』。
使用する際に苦痛を伴う事やコントロールが出来ない事で使う事を躊躇っていたが
三好が倒されてしまった現在では相手を直接叩くのは身に纏うスタンド!
『コード3』意外無い!
活路が無い訳では無いのだ。完全に消えている訳ではなく電飾の瞬きの様にほんの短い瞬間では
あるが部分的に身体は見える・・・・・
人間の限界を超える動体視力をもってもこの一瞬・・・・・
身体に纏わり付いた鋏は何を断ち切りながら動いているのか?
・・・・・?
・・・・・・!


「・・・・・これがが見たまんまやったら・・・
 あんたはトンデモないスピードの持ち主って事になるやん・・・」
     ザッ!
唯は身体を半身に構え虚空を睨む。
「 !  何 で  オ  レ の 場   所が  解   る  ?  」
菅沼の声が虚空から飛び飛びに聞こえてくる。
「私には見えんのや・・・あんたの鋏が光を断ち切っているのを・・・・・」

    パウッッッ!!!

大気が裂ける音が聞こえた。

  ドォオオォォォグゥウウォオオォォォン!!!!!!

衝撃音と共に菅沼の身体が錐揉みながら後方に吹っ飛ぶ!!
鈍い音を立てて地面に落下したその身体は首がくの字にヘシ折れあごは無残に砕けている・・

「ぐぅうう・・・・」
唯は殴った勢いで脱臼した肩関節を押さえて声を上げる。
「身体に反射して目に映る可視光線・・・それを断ち切って目に映らない様に細工するなんて
 セコイ・・・事を・・・おかげでそれを越える速度で殴らなアカンようになってしもうたやん!」

『コード3』の蔦の拘束を強め外れた関節をハメる。
痛みが残るが動くようにはなった・・・
「これで・・・・仕舞いやな。『革ジャケットのスポルトマティク』はこれでお仕舞いや・・・」

地面に這いつくばった異邦人に一瞥をくれるとすぐさま、三好の方に急ぐ。
「み〜よ!大丈夫??ほらッ!しっかりしいッ!!!」
三好の身体を擦りながら生気を戻そうとする。
呼吸は乱れていないが気を失っているだけなのかは解らない・・・・
「ほれ!しっかり・・・・・」

ジャリッ!

唯の後方から小石をずって立ち上がる音が聞こえる・・・・・

「・・・・・・あほな・・・」
唯は背中が冷たくなるのを覚えた・・・・・死んでいる人間が甦る・・そんな事は有り得ない・・

「あ〜〜痛ぇ〜〜〜!クソッ!」
起き上がった菅沼は何も無かったかのように唯の方に歩きだす。

「何だ?その目?『信じられない』って感じの??」
菅沼はなおも続ける。
「何も不思議な事ないだろ?お前等もそうなんだろ?
 ・・・能力を身に付けた時に『死なない身体』に身体になったんじゃぁ無いのか?」
唯の青ざめた顔を見て菅沼は失望したような顔をした。

「・・・・おい・・違うのか?・・何か・・がっかりだぜ・・・『弓と矢』と『石』は
 ルーツが同じだと思っていたのに・・・・・なぁ?お前等?」

菅沼の言葉に呼応するように光眼が浮かぶ・・死んだハズの犬が唯達を囲んでいるのだ。
唯の首筋に冷たい金属の刃が突き立てられる。
「これでお終いだな・・・・・」
そう言いながら菅沼は懐からペンダントを取り出す。
そのトップには闇夜なのに異常に輝きを放つ『黒い石』が付いていた・・・

「そうだな・・・昔話をしよう・・・・」


TO BE NEXT SIDE・・・・・