79 :スタンドの名はニューオーダー:2005/09/11(日)
00:26:31 0
─S市杜王町、ここに私紺野あさ美が越してきて二週間ほど経つ。
都会の喧騒とは無縁だが生活に必要なモノは一通り揃っている。
あまり騒がしい場所が好きではない私にとって住み心地の良い街だ。
住む処を変えたことにあまり意味はない。
ただ、なんとなくそうしたくなった。何かに導かれるようにここに。
スタンド使い同士は引かれ合うと聞く。私もまたこの生まれ持った能力、
ニューオーダー(新しい秩序)によって出会いの引力に引き寄せられたのだろう
81 :スタンドの名はニューオーダー:2005/09/11(日)
00:45:33 0
時に、私は食べることを無上の喜びとしている。
「食の喜び」とは人間に与えられた特権だと考える。
多くの生物はただ食欲を満たし、生命を維持する為に食を摂る。
サルの類なら味覚を刺激されて心が満たされることもあるだろう、
だがこれほど食に想いを馳せるようなことはないはずだ。ガタンッ!
「生きるために食べるのではなくッ!生きているから食べるのだッ!!」
思わず声に出してしまった。チラチラとこちらをうかがう視線が痛い。
かわいそうな子を見るような目をどうか私に向けないで。
82 :スタンドの名はニューオーダー:2005/09/11(日)
00:54:15 0
昼下がりのひと時を有意義に過ごそうとここカフェ「ドゥマゴ」に来ている。
そして今まさに目当てのものを注文しようとする瞬間。
「パンプキンプディングと紫芋のタルトそれにコーヒーを」
そう店員に伝えた。あとは5分ばかり待っていれば幸福が訪れる、はずだった。
しかし返って来た答えは私の予想に反する意外なものだ。
「お客様大変申し訳ありませんが、紫芋のタルトの方は本日売り切れと
なっておりまして…」
ああなんと言うことだッ!holy shit!!
私の脳はタルトを頬張った時の感触とでんぷん質特有の上品な甘さが
口の中に広がり行く至福の時を今まさに迎えんとしていると言うのにッ!
83 :スタンドの名はニューオーダー:2005/09/11(日)
00:59:08 0
だが悔やんでいても仕方がない。こうしていて状況が打破出来るわけでも
腹が膨れるわけでもない。その時に選択し得る最良の策を取るべきだと、
この紺野あさ美は思うわけだ。そして私が取る行動はこれだ。
「それでは代わりに紅芋アイスを」
芋に勝るものはまた芋である、ンッン〜素晴らしくてナイスチョイス。
これでもダメならばもはや打つ手はない潔く諦めよう。
「かしこまりましたニューオーダーを承ります」
85 :スタンドの名はニューオーダー:2005/09/11(日)
01:13:07 0
既に秋と呼ばれる季節にも関わらず、陽射しはオープンテラスに居る
私の肌を軽く汗ばませる。
アイスにしたのは好都合だったのではないか?そうだ私はツイている。
人生が転がる石のようなものであるとすれば、
その動きの流れを良いように解釈して楽しむと言うのは、
運命の奴隷である人間に出来るささやかな抵抗だ。
生きる喜びを日々から拾い上げる努力は必要なんだ。
TO BE CONTINUED
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