348 :銀色の永遠 〜マイマイの奇妙な冒険〜:2006/02/21(火) 01:49:33.58 0
1999年もはや半年以上が過ぎた。
今年はあの有名なノストラダムスの恐怖の大予言の年とかで
日本や世界のマスコミは大騒ぎだが
たいていの人々は晴れ晴れとして気分ではないにしても
いつも生活しているように秋を迎えようとしていた。

彼女の名前は萩原舞。 ぶどうヶ丘高等学校初等部4年生。
夏休みを終え、新学期が始まる浮き浮きした気分と憂鬱さの両方を胸に
親友の岡井千聖とともに学校へ向かっていた。

「舞ちゃん、夏休みの宿題やった〜?」
千聖が眉をひそめながら舞にたずねる。
あきらかに自分はやっておらず、友人もそうであって欲しいと願うような表情である。
「うーん…ああーーッ! 忘れてたあ!」
「ホント!? やっぱりねッ! 実はね、わたしもなんだ!」
舞の返事を聞き、千聖は飛び上がるように喜んだ。
「うん。 今思い出したけど、すっかり忘れてたぁ…」
「だよねえ、でもいいよいいよ! 2人いっしょに先生に謝ろう!」
「言われておもいだした…家の玄関に置きっぱなしだよう…」
「えッ!?」
途端に千聖は青ざめる。
「どうしようかなあ、取りに帰ろうかなあ、でも遅刻しちゃいそうだし…」
「あはは…そう…。 そうだよね、舞ちゃんが宿題やってないはずないもんね…」
千聖はがっくりと肩を落とし、俯いて歩き出した。
「千聖ちゃんも忘れたんでしょ? 一緒に取りに帰る?」
「いいよ、私は…へへ、また私だけ怒られるんだ…」


349 :銀色の永遠 〜マイマイの奇妙な冒険〜:2006/02/21(火) 01:50:25.83 0
萩原舞は特別勉強が好きというわけではないし、頭が良いわけでもない。
しかし与えられたことはちゃんとこなす性質だった。
それも変に力を入れて挑むというわけでもなく、日常のひとつとして捉えていた。
母親の料理の手伝いや家の掃除なども、それが『当たり前の役割』だと思っていた。
(ただ、多少ドジなところがあるので、今日のように忘れ物をすることもある)
そして舞は、人は誰もがみな何かしら役割を持って生きているのだとも思っている。
もちろん哲学的な意味合いで考えているのではなく、小学生の頭でぼんやりと、ではあるが。

「宿題やってないんだぁ、千聖ちゃん、ちゃんとやらなきゃダメだよ」
「ふぁーい…」
千聖は舞の説教?に生返事で答えると、再びトボトボ歩き出す。
舞も千聖の歩幅にあわせてゆっくり歩き出した。

爽やかな夏の朝のシーンであるが、それを老人の叫び声が打ち消した。

「誰かァァァーーー!!! それを止めてくれェェェーーーッッ!!!」

ちょうど舞たちが歩いている歩道の右手側、ぶどうヶ丘公園の西の端の階段。
その階段の上のほうに1人の老人が慌てた様子で立っていた。
老人は舞たちのほうを見ながらおろおろしている。


350 :銀色の永遠 〜マイマイの奇妙な冒険〜:2006/02/21(火) 01:50:55.61 0
「舞ちゃん、あのおじいちゃんどうしたんだろう」
「うん…、すごく慌ててるみたい…」
この辺ではあんまり見ない人だ、と舞は思った。

ガラガラガラガラガラッ! ガシャッ! ガラガラガラガラガラッ!!

その音は舞たちと老人を結んだ直線上、ちょうど階段の中腹辺りから聞こえている。
音はまっすぐ舞たちのほうに向かっているように聞こえるが、そこには何も見えない。

「まずい! あの子達にぶつかってしまうッ! シ、シズカァーーー!!!」

再び老人が叫ぶのが聞こえた。
『ぶつかってしまう』とその老人は言ったが、
一体何のことだろうかと、舞と千聖は頭をひねった。
そして公園に住んでいる浮浪者が自分たちをからかっているのかもしれないと
止めていた足を向きなおそうとしたそのとき、『奇妙な事』が起こった。

ガラガラガラガラガラッ! ガラガラガラガラガラッ!

「オギァ! オギァ! オギァ! オギァァァッ!」

声…泣き声である。 何も無いその空間から、何かが転がるような音と
その『奇妙な泣き声』が聞こえてきたのだ。


351 :銀色の永遠 〜マイマイの奇妙な冒険〜:2006/02/21(火) 01:51:56.89 0
「舞ちゃん…なんだか変だよ…どこから聞こえるの、この声!!」
「う、うん…。 この声、泣き声…! まるで『赤ちゃんの鳴き声』みたいに聞こえる…!」
「でも、でもッ! 何も無いよ! あそこには何も無いじゃん!」
「うん! でもたしかに聞こえる…泣き声だ、まちがいないよ、赤ちゃんの鳴き声ッ!」
2人は身を寄せ合い、その見えない何かに怯えて震えた。
そしてさらに彼女たちの前に『奇妙な光景』が現れた。

フォン… フォォォォンッ

『音』と『泣き声』がするその方向にある階段が
ごっそり削れたように消えてしまったのだ!

「なに! あれッ! 見てよ舞ちゃん、いきなり地面がえぐれたよおおおお!!!」
「えぐれた…でも、なんか変だよ…けずれてるみたいな、それとも少し違う…」
『音』と『泣き声』は周りの階段のあった場所を半円に削りながら舞たちに近づいてくる。
あわてふためく千聖の横で、舞は考えた。
(削れてる、けど、何か変…。 ショベルのようなものでえぐったのなら
 周りに土ぼこりが舞っていてもいいはずなのに…)
「舞ちゃん、これってアレじゃない? 舞美ちゃん達が言ってた…」
千聖はそう言って震えながら舞を見た。
「『スタンド』の攻撃っていうのじゃあないの!?」
(……!!)

舞は中等部にいる友人の矢島舞美から以前聞いた話を思い出した。
この杜王町には『スタンド使い』がたくさんいて、スタンド使い同士は引かれ合うのだと。
そして舞や千聖に自分のスタンドを見せ、
『これが見えるのなら、舞ちゃん達もスタンド使いなんだよ』と言ったのだ。


352 :銀色の永遠 〜マイマイの奇妙な冒険〜:2006/02/21(火) 01:52:19.14 0
「頼むッ! 君達、そこをどいてくれーッ!! どくんじゃあァーッ!」
老人がさらに叫びながら、ふらふらした足取りで階段を、
いや階段のあったはずの何もない地面を駆け下りてくる。

ガラガラガラガラガラッ! ガシャッ! ガシャンッ!
「オギァ! オギァァァッ!」

フォォォォン…

地面はどんどん削られながら、『音』と『泣き声』とともに舞たちに近づいてくる。
もう後30メートルほどのところまで来ていた。

「ぶつかるよお、舞ちゃんッ!! 逃げないと!!」
千聖は舞の腕をひっぱり、その場から逃げ出そうとする。
しかし、舞は動かなかった。
「舞ちゃん何やってるのおお!! 危ないよ! 攻撃されるよおおおッ!」
半泣きになりながら千聖は舞をひっぱったがそれでも舞は動かない。
何故なら…舞は匂いを感じなかったからだった。
もしこれがスタンドによる攻撃だとしたら、もっと自分達に敵意を持っているはずなのに
向かってくる『泣き声』に、その敵意の匂いがまったく感じられなかった。
だから、舞はその場を動かなかった!!

ガラガラ…ガタンッ!

その削られていく地面が舞たちの目の前10m程のところまできた時
何かにぶつかったような音がした。


353 :銀色の永遠 〜マイマイの奇妙な冒険〜:2006/02/21(火) 01:52:39.03 0
「オギァア」

同時に『泣き声』が上のほうに移動した。

(飛んでいる…! 『泣き声』が飛んだ!
 『赤ちゃんの鳴き声』が飛んで、今、舞の真上にいる!!)

舞はとっさに両手を上空に向かって伸ばした。
(助けなきゃ!!)
そこにいる何かに向かって、それに敵意は無いと確信して、手を伸ばした!!

「オギァァ…あば…あぶぅ…」

泣き声が急におさまり、赤ん坊の落ち着いた時の声に変わる。
同時に、何も無かった舞の目の前の空中に、パッと物体が現れた。
「赤ちゃん…やっぱり! 赤ちゃんだあ!」
舞は伸ばした手に力を込めた。
落ちてくる赤ん坊を落とさないように、手に、腕にぐっと力を込めた。

ドサァッ!!


354 :銀色の永遠 〜マイマイの奇妙な冒険〜:2006/02/21(火) 01:53:03.87 0
赤ん坊は見事に舞の腕の中におさまり、その衝撃で舞は尻餅をつく。
「舞ちゃん! 大丈夫!? そ、その子は…」
千聖は、急に空中から現れた赤ん坊とそれを受け止めた舞に近づき、声をかけた。
「うん…、だいじょうぶ。 無事みたい…」
「あぶぅ…アハ、アハ」
空から現れた、顔を白粉で塗りたくり、サングラスを掛けた奇妙な赤ん坊は
舞の腕の中で楽しそうに笑っている。
舞は逃げなかった! 目の前の『奇妙な出来事』から逃げ出さなかった。
彼女は迫りくる者が悪ではないと信じ、悟り、逃げなかったのだ!
だから赤ん坊は助かった!!
この瞬間が萩原舞の小さな『黄金の精神』の芽生えだった!!

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!


355 :銀色の永遠 〜マイマイの奇妙な冒険〜:2006/02/21(火) 01:53:39.04 0
ふと目の前を見るとタイヤが壊れて外れたベビーカーが道端に転がっていた。
それに今まで削れていた地面も何事もなかったように元に戻っていた。

「おーい! 君達、無事かね!」

舞たちのもとにようやく老人が追いついた。
ゼェゼェと息を切らしながら、舞たちと赤ん坊を交互に見渡した。
よく見れば老人は日本人ではなく、欧米風の顔つきをしている。
そして老人は舞の腕の中で笑う赤ん坊に手を伸ばした。

「おお、なんという事だ! さっきまで泣き喚いていたのが嘘のように笑っておるッ!」
老人は顔に汗を浮かべながら赤ん坊を見下ろした。
「君達が助けてくれたんじゃな! 本当にありがとう!!」
「おじいさん…この子は、おじいさんの…?」
舞が尋ねると老人は少し照れくさそうにした。
「いや、まあ正確にはワシの子じゃあないんだが、かと言って孫でもないし…
 まあなんというか…養子、というたらいいのか…」
言葉に詰まる老人に、舞は赤ん坊を差し出した。
「おお、ありがとうお嬢ちゃん。 どれ、怪我が無いか見てみよう」
老人はそう言い、片手を赤ん坊の上に出す。
…が、特に何も怒らない。

「な、なんじゃ…どうしたんじゃ…『スタンド』が出んとは!」
老人の言葉に舞と千聖は驚きの表情を見せた。
「ス…タンド…」


356 :銀色の永遠 〜マイマイの奇妙な冒険〜:2006/02/21(火) 01:54:05.64 0
舞がつぶやくと、老人はハッとしたように口に手を当てた。
「おじいさんも『スタンド使い』なんですか!?」
と千聖が問い詰めると、老人も驚きの表情を見せた。
「なんとッ! き、君たちも知っておるのか、その言葉をッ!」
「舞は…私はよくしりません。 スタンドっていうのは見えるけど、どんなものかは…」
「お嬢ちゃん、君は…もしかしたら、いや、本当にワシのただの憶測なんじゃが」
老人は顎をさすりながら舞の顔を見た。
「そういう能力なのかもしれん、『スタンドを出せなくする』とか、
 若しくは、例えばこの子が泣き止んだように、『なだめる』能力なのかも…」
「舞の…ちから…?」
舞は不思議そうに自分の腕、そして体を見回した。
「フフフ…まあワシのスタンドが出せれば調べられるんじゃが、何故か出せんもんでのう」
老人はそう言うと笑った。

舞はこの時初めて自分のスタンド能力をおぼろげながら理解した。
昔から自分の周りで争いごとが起こった事のないことを特に不思議とは思わなかったが
今日、この日の事件と、この老人に出会ったことで自分のことを少しだけ理解した。


357 :銀色の永遠 〜マイマイの奇妙な冒険〜:2006/02/21(火) 01:54:21.81 0
「舞ちゃん、すごいね! そんなチカラだったんだ!」
千聖がうれしそうに舞に駆け寄る。
「うん…なんだかまだよくわからない事だらけだけど…」
舞は照れたように微笑んだ。
「お嬢ちゃんたち、本当にありがとう。
 ワシはジョセフ・ジョースターという者なんじゃが、名前を聞いてもいいかな?」
「萩原舞、です」
「岡井千聖です!」
2人の答えに老人、ジョセフはにっこり笑うと、続けて言った。
「君達2人にお礼をしたいとこなんじゃが…
 確か今日は『新学期』という奴じゃあなかったかな。 学校はいいのかね?」
老人の言葉に舞たちは顔を見合わせた。

「わぁあああ!!! 遅刻するうーーー!!!」
「千聖ちゃん、はしろう!」
2人は急いで走り出した。 そして途中で一度振り返り、ジョセフにペコッとおじぎをした。

「ふふ…。 しかし、あんな小さな子までスタンドを持っておるとは…ま、この子もじゃがな…」


―TO BE CONTINUED


358 :銀色の永遠 〜マイマイの奇妙な冒険〜:2006/02/21(火) 01:54:41.48 0
静ジョースター 無傷(萩原舞になつく)
スタンド名:アクトン・ベイビー

萩原舞 無傷(ジョセフが帰国するまでたまに静の面倒を見に行く)
スタンド名:アフタースクール・オブ・ミルクホワイト