銀色の永遠 外伝補 〜クレナイの前奏曲(プレリュード)〜


「クソッッ・・・・・・」
有りっ丈の怨嗟を込めて身体中を包帯で覆われた少女が身を捩じらせるように校門を潜る。
ギプスで固定された右腕。松葉杖を突きながら歩く姿が重傷の具合を物語っている・・・
歩く事儘為らない少女を突き動かすモノは何なのか?

それは『怨み』である。

自らを落伍者に蹴落とした『後藤真希』。
積もった怨みを晴らす、その時が来た・・・・ハズだったのに・・・・・。
手痛く返り討ちに遭い何ヶ月も入院する怪我を負わされたッッ!!
どれもこれも誰が悪いッ!?

      後藤真希の存在だッ!!

    アイツの存在そのものが元凶なのだッッ!!!

「殺してやるッ殺してやるゥウウゥっっーーーー!!!」

渡引智美は目を血走らせながらギプスに包帯で固定した刃物の柄を強く握り締めた。
己の全ての負の感情を注ぎ込むように。

覚束無い足取りで教室に向かう・・・・まだ授業が終わって間もない・・・。
バラバラと居る生徒の中を無視する様に歩く。

もっとも黒い瘴気のような負の感情を纏った包帯だらけの少女を誰もが気味悪がって声も掛けなかった

のだが・・・・

「あと少しで校舎・・・・待ってろ後藤・・・・腹裂いて内臓ブチ撒けてやるッッ!!!」
渡引智美は口端を醜く歪めその瞬間を妄想し狂気の快楽に浸る。

         ドンッッ!

足取りの覚束無い渡引智美は『誰か』にぶつかった、が異常な状態に有る彼女にはそんな事を感じる
事も無くただただ歪んだ妄想を目の前に実現させる事しか頭に無かった・・・。

「ねぇ?ちょっと!」
後ろから渡引智美を引き止める声が聞こえる。
「・・・・・」
渡引智美はその声を無視した。それどころでは無いのだ。
「待てって言ってんだろッッッ!!!!!」
怒号と共に松葉杖が激しく蹴り飛ばされる。
支点を失った渡引智美は地面に叩きつけられた!

「うぅ・・・・な・・・・何・・・?」
痛みに呻く渡引智美の視界に紅い液体が着いた靴が入ってきた。

「あんたが後ろから押すから・・・カシスオレンジが靴に掛かっちまっただろーが?」
威圧に満ちた声が降りかかる。
「そんな・・・」
と言いかけた渡引智美の口に靴が叩き込まれる。
鈍い音が響き白い歯が飛び散る。
「てめぇッツ!ハルタのコインロォーファーだからッて馬鹿にしてんのかッッッ!?」

渡引智美の顔面をつま先蹴りが襲う!
鼻骨に、眼球に・・・場所を問わない容赦のない攻撃が叩き込まれた!
「うげぇ・・・ッ!!」
その激痛に渡引智美はうめき声を漏らす。
「『うげぇ』?謝れって言ってんのに『うげぇ』じゃねぇよッ!三好絵里香をバカにしてんのかッ?」
三好絵里香は更に逆上し攻撃は速度を増す。

その暴力劇は周囲を固まらせ誰も係ろうとはしなかった・・・・。

「はぁ・・はぁ・・・    そうだ良い事を思いついた・・・・」
乱れた呼吸を整えながら・・・三好は渡引智美を抱えると人気の無い校舎の隅に引き摺った。



            ドガァッッッ!!!!

渡引智美の身体が激しく壁に叩きつけられる!
「何・・・を・・・」
弱弱しい渡引智美の問いに三好は笑みを浮かべて答える。
「ん〜・・・ちょっと遊ぼうと思ってさぁ〜」

「遊・・・ぶ・・・」
言葉とは裏腹の三好の狂気に満ちた眼光に渡引智美の顔は恐怖に染まる。

「おぉッ!!『シーズン・オブ・ディープレッド』ッッ!!!」
赤黒い溶岩を身に纏ったような奇怪なビジョンが三好の背後に浮かびだす。
「な・・・・スタンド!?おまえ・・・スタンド使い!!?」
渡引智美の絶叫が三好の狂気に火を注ぐ。
「へぇ〜コレが見えてそんな単語を知ってるって事はアンタもスタンド使いなのか・・丁度良い!」
『シーズン・オブ・ディープレッド』の手が渡引智美の頭を掴み、その身体を無理矢理立たせる。
「アタシね・・・・『敵対しかねないスタンド使い』は狩るっつー任務を負ってんだよね・・・」
三好は目をギラつかせながら渡引智美に顔を近づける。
「だ・・・誰が・・・そんな・・・」

「誰も何も・・・・お前は誰に『スタンド能力』を身に付けるキッカケを貰ったのさ?」
三好の答えに渡引の顔が引き攣る。
「まさか・・・・寺・・・田・・・」

「ビンゴ☆」
      メシャァアッ!
『シーズン・オブ・ディープレッド』の拳が渡引智美の腹部にのめり込みそこから血が滲み出す。
「おいおい・・・一発で腹が裂けたのかよ・・・・・・潰し甲斐の無い奴・・・・」
激しい痛みに身体を痙攣させた渡引智美の絶叫が響き渡る!
「ギャーギャーうるせぇなぁ?   そうだこのまま『解体』してやるよ・・生きたまま、アハ♪」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・


周囲は紅に染まる。

「おい・・・・答えろよ?どんな気分だよ?おい?・・・・
   て、もう終わりかぁ?あっけない・・
      ・・・・でもまた標的は現れるさ・・・・
               その為の「チーム」なんだからな・・・・」

          血生臭い風が吹く

この悪鬼のごとき所業も彼女、三好絵里香の生涯の前奏曲でしかなかった。

渡引智美  死亡
スタンド名 サクラリッジ・フラワーズ


TO BE CONTINUED・・・・・