水無月の風が草木を揺らす。

さわさわ
     さわさわ
 さわさわ

そよぐ草木はこの場にそぐわない・・・穏やかなリズムを奏でる


その中で田中れいなは目の前の出来事が理解出来ず・・・立ちすくんだ・・・・。


銀色の永遠 〜スィート・ホリック@〜


時間は遡る


「おはよーさん!」

れいなは級友数人に声を掛け何時もの様に下駄箱に手を突っ込んだ。

「ちゃ?」
指に硬いモノが触れる・・・。
指先で形を確認する・・・・・『封筒』?・・・ラブレター?
興奮気味に、周囲に解らない様に素早く『封筒』を取り出し左右に目を配る・・・・。
「誰も見てないっちゃね?」
封筒を隠しながら上履きを取り出すと素早く物陰に走り出す!

壁際の「死角」に隠れると封筒を2回ほど壁に軽く叩いて中に異物が無いのを確認する。
特に理屈はないが何と無く確認してみた。
「表には何も書いてなかとねぇ〜」

ピラリ!

裏がえして差出人の確認をする。
「なッ・・・・・?」
記入してある名前を確認したれいなは感嘆符を吐き出す・・・・。
「た・・・・高橋さん・・・・・?何で?」
裏面に書いてある『高橋愛』の名・・・・
急いで封を破り中の文章に目を通す!

『貴殿ニ伝承セシ物アリ!ソノ資格ノ有無を知リタク候!放課後、裏庭マデ来ルベシ!』

・・・・・・何?コレ?・・・挑戦状??????
内容の奇怪さにれいなは眉を顰める。
それに『伝承セシ物』ってなんちゃ?

謎めいた先輩、高橋愛からの手紙を鞄に詰めるとれいなは足早に教室へ向かった。


銀色の永遠 〜スィート・ホリックA〜


リンゴォォオオォン・・・・・リンゴォオォオォオン・・・・

電子音が授業の終わりを告げる。
れいなはゆっくりと席を立ち思案する。
「ん〜・・・・『放課後』いうても部活が終わった後なんやろか?その前なんやろか?」
他の部員と違い『高橋愛』という先輩は部活動には非常に熱心なヒトだ・・・
「あんヒトがサボるのは考えずらいんやけど・・・・ん〜・・・取り合えず部室に行って見るっちゃ!」
思いつきのままれいなは部室へと駆け出した!



トラタタタタァアアァッァアアアーーーーー!!!!

別段急ぐ事も無かったがれいなは『伝承セシ物』が気になりピッチを上げる。
まぁ金銭の類では無いだろうしプレゼントでも無いだろう。
宝塚のビデオなのかもしれない・・・・・それでも直接言わずに「手紙」で伝えた事には何か有るハズ!

西館3Fここを曲がれば。
直ぐに演劇部だッ。
    「?」
「!」
通路の真ん中に、当たるのを見越した様にそこに居た。
「あ・・・・あんた・・・・は」

「愛ちゃんは部室には居ないわよ。」
紺野あさ美は田中れいなに微笑みかける。

「何で・・・?何で知っとっと!!!!?????」
あさ美の言葉は激しくれいなを動揺させる!!!
あさ美はれいなの言葉に答えず裏庭の方を指刺した。
「早く行ってあげて!愛ちゃんは待っているわッ」
その言葉!強い眼差し!
れいなは言われるままに裏庭に方向を変えた!

「紺野あさ美・・・・・訳解らんヒトっちゃケド!あの眼差しには何ら偽りは無かッ!!!」
その人物の信頼を得ている高橋愛が己を待ちわびている!
その事に心は振るえ加速する!


銀色の永遠 〜スィート・ホリックB〜


息急き掛けて田中れいなは裏庭に辿りついた!

だがそこは良く知る風景とは変わっていた・・・・
辺りに抉れた様な痕や亀裂が奔る・・・・

まるで砲撃戦の跡の様な場所。

その中を水無月の風が草木を揺らす。

さわさわ
     さわさわ
 さわさわ

そよぐ草木はこの場にそぐわない・・・穏やかなリズムを奏でる


惨劇の中心に女性が後ろ向きに立っていた。
ショートボブの髪型・・・・エプロン姿からそれは『高橋愛』でないのは明白だった・・・

そしてその傍らに倒れている制服の少女・・・・・

田中れいなは目の前の出来事が理解出来ず・・・立ちすくんだ・・・・。

エプロン姿の女性は来訪者の存在に気付いたらしくれいなの方を振り向く。
「遅いよ田中〜・・・・もぉ〜・・・なっち、待ちくたびれちまったべさ!!」
ショートカットの女性は満面の笑顔をれいなに浴びせたッ!
「あ・・・・安倍さん??が・・・・なんでココに居るとですか??????・・・それに
 そこに倒れているンは高橋さんじゃなかッ!????」
れいなは乾く咽喉を振り絞って安倍なつみの問う。

「????あぁ!コレね!いやさ!なっちも今、保母さんの資格取るのに急がしいんだけどね?
 高橋がなんかも〜あんたの事、凄く高く評価してて次期エース候補だなんて言っててね。
 それで本当の実力が見たいから安倍さんに『タチアイニン』になって欲しいなんて言われたんで
 それで今さっき高橋と『太刀合った』の!・・・・でアンタとも『太刀合う』ンだべ?」

田中れいなは安倍なつみの言動が一瞬、理解出来なかったが・・・・直ぐに理解した!

あ・・・・安倍さん・・・・『立会い人』を『太刀合い人』を勘違いしてる!!???
・・・天然にも程が有るばいッ!!!!!



ゴゴゴゴゴゴ
     ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ゴゴゴゴゴゴ

そよぐ風を踏みしめる様に土を蹴る音が響く。
安倍なつみが近づくにつれて田中れいなの鼓動が早くなる・・・・
そしてその高鳴りとは別に冷静になる己が居たッ!

 チャチャ・・・・まっこととんでも無か展開になったと!あの高橋さんをブチのめしたにも
 拘らず無傷の安倍さん・・・流石は『レジェンド・エース』と・・・これは試練ばい!
 この状況を切り抜ければ・・・・れいなは・・・・・・・・・

「どうしたの?田中?ブツブツ言っちゃってさー・・・高橋も高橋だよねー?
 太刀合う何て言うからどんな実力かと思えば能力に頼りすぎで詰めが甘くってさ・・・
 今はいいかも知んないけど昔だったら役不足だべさ。」
なつみは躁状態の様にケラケラと笑いながら間合いを詰める。

3m程、離れた所でなつみの足は止まる・・・・・・
「じゃ・・・・見せてもらおっか?田中の実力!」

コォオォオォオオオオオオオオオオオオォオオオオ・・・・・・・

れいなは答える様に『波紋』の呼吸を整える・・・・。

「『チェイン・ギャングッ!』」
    ギュュュユン!
白とピンクの人影が灯るッ!!
「ちゅらぁあああああッッ!!!」
なつみのスタンド『チェイン・ギャング』の拳が地面を叩き亀裂はれいなに向かって走る!

「ちゃッ!???『亀裂』!!!!」
初めて見た安倍なつみの能力!れいなは稲妻の軌跡の様な亀裂を身を翻してソレをかわす!
「ちゅらららららららららららららららららららららららららららららららららららららぁぁあ」
『チェイン・ギャング』の拳は地面を滅多打ちに叩きつけた!
ダカカカダカダカッカカッカカッカカッ!!!
打撃音は亀裂に変化し縦横無尽に田中れいなの足元を襲う!
「な・・・・・・・・なんね?こんヒトの『能力』わぁあぁああ????」
蜘蛛の巣の様に張り巡らされた亀裂群に足を絡め取る!
「ホラホラ!田中ぁ?来ないの?何にもしてないでもう終わりなの?来ないなら行っちゃうよ?」
なつみの瞳は冷たい光を放つ!
その瞳に心を穿つかれる事無くれいなは『波紋』の息吹を整える!
「れいなン事!甘く見んといてくださいッッ!」
生命の迸りが煌くッ!

「ひよっこがッ!思いあがりを後悔させてやんべさッ!!」
『チェインギャング』の拳が唸りを上げて弾き出される!
「違うと・・・信念さえあれば人間に不可能は無か!人間は成長すると!してみせるとォッ!」

ぶつかり合う信念と信念!それを具現化するかのように
『チェイン・ギャング』の拳とれいなの拳が交差する。
れいなの腕は伸びきったその瞬間!
ゴキィン・・・・
   れいなの右腕が鈍い音を放つ・・・・
「震えるぞ!ハート! 
         燃え尽きる程!ヒート!!刻むと!
                        血液のビート!!!!!!!」

関節の外れたれいなの腕は加速するように伸びる!!!!!

「轟けッ!生命のビートッ!橙色の波紋疾走ッツ(サンライトオレンジ・オーバードライブ)!!!」

ゴチャアァア!!!

なつみの鎖骨にれいなの拳が叩きつけられ稲光の様な迸りが煌く・・・・・

「勝ち誇った時点で・・・・・・勝負はついとっと・・・・安倍さん・・・」


銀色の永遠 〜スィート・ホリックC〜


メリ・・・
    メリリ・・・・

「ちゃ?」

田中れいなの拳に妙な感覚が伝わる! 

メキャメキャメキャメキャーーーーーーーーー!!!!!

「な・・・・・・・なんやとォォオオォオォオォオッッッッ!!!!!!」
安倍なつみの身体は鎖骨付近から胴体まで真っ二つに裂け、れいなのズームパンチは突きぬけ
『波紋』の迸りは空振りをしていた!
「どこ見てんだべッ!!!!」
「お・・・・ぐぅ・・・・」
れいなの呼吸が乱れる。
『チェイン・ギャング』の頭突きがれいなの胸元に炸裂し吹き飛ばされる様に間合いが離された。

「やれやれだべ・・・・いきなりカッパみたいに腕が伸びたと思ったら光ってビリビリ来るなんて
 サ・・・・・あんたがスタンド能力以外の能力を身に付けてるとは思わなかったべ・・・」
『亀裂』が入りパックリと裂けたなつみの身体は逆回転の再生映像の様にピッタリとくっ付き始める。

「『波紋』が完全に入る前に自分の能力で身体を裂くなんて・・・安倍さんは強かヒトですね。」
れいなは呼吸を整えながら立ち上がろうとするが右腕が言う事を聞かないッ!
「んぁ?!」
真剣に右腕を動かそうとすればするほど違和感が強くなる。

「あ〜・・・・田中〜。さっきの接触の瞬間に『チェイン・フィンガー』で肘の筋の繋がってるトコ
 に穴開けたから動かないよ〜・・・・痛くしなかったから理解んなかったっしょ?」
なつみはもがく様に動くれいなを尻目にエプロンから取り出したノートに何やら書き込みを始めた!
「勝ち誇った時点で勝負は付いてるか・・・・・・素敵だな・・・・忘れないウチにメモメモ!」

「戦闘中に随分と余裕っちゃねッ!!」
ポケットからシュルシュルとスカーフを取り出しながら田中れいなは安倍なつみを睨みつけた!

「余裕?・・・何言ってんだべ?なっちが遊びや余興の心算で此処に居るワケないっしょ!」
パタム!とノートを閉じ、エプロンのポケットに滑り込ませると安倍なつみは田中れいなに向かい
身体を正面に向ける・・・・・。

   ドドド  ドドドドド ドド

ドドドド  ドドド

 ドド     ドドド




コォォオオォォォオオォ・・・・・

緊迫した空間の中・・・れいなは『波紋』の呼吸を整える・・・・。

「そのヘンな息の吸い方があの『光ってビリビリ』の素?」

「・・・・・・安倍さん・・・・アンタはとてもスルドイ・・・賢いですね・・・・・・」

「『年季の差』だべ・・・・・この位の洞察力がなければ『初代エース』には成れんよ?」
なつみが『よ』の言葉を言い切らない内にれいなの左手が風切り音を上げる!

ひゅんひゅんひゅんひゅんひゅんひゅんッッッ!!!!!!!

波紋の力を帯び、D・エレジーズ能力で『石化』したスカーフがギロチンの刃の様な鋭さで空間を切り裂く!!!

:舌戦でなつみの気を逸らし奇襲を掛ける!:

実力でなつみとの差を感じたれいなは『策』に走った!

「!????????」
話に気を取られたなつみの反応は著しく遅れる!
極限状態に身体は反応し射線をギリギリでかわす!!

数本の毛髪が宙に舞う
ギロチンの刃は大気を巻き込みながら後方に消える・・・・・。

「このッ!!!!!謀りおってッッッ!!!!!!!!!!!!!」
「ドラララララララララァァァアアアァァアァアッッッ!!!!!!」

虚を付かれた事に激怒したなつみに『デュエル・エレジーズ』の拳撃が降りかかるッ!!!

怒涛の波状攻撃になつみはカウンターを取る事も、捌くことも出来ず身を屈め守備に徹した。

・・・・・・・・・
・・・・
・・・
・・


「田中・・・・・・あんた自分がなにをしてるのか・・・・解ってんだべか・・・・・?
 これはそこいらの犬の喧嘩とは訳が違うべ・・・・言わば『あんたの真価』が試される時なんだ
 べさ・・・・・・それを・・・・・こんな・・・・・もう許さないべ・・・・・・」
冷たい憎悪がれいなに突き刺さる様に振り注ぐ!

「別に許して貰う気何てサラサラありましぇん!れいなは本気で闘ってっと!」
れいなはその視線を荒げた息で振り払う。
「不意打ちや受身の『対応』しかしてないクセに利いた風な口を・・・・」
なつみは憎憎しくれいなを睨みつけるッ!

が・・・・睨みつけたれいなの左手に妙は『紐』がぶら下がる・・・・・・・・・。
その紐はれいなの靴先に『くっ付いて』いる・・・・・・くっ付いている先を追うと何故だか自分の
方に伸びている・・・・・・・・そしてその先は・・・・・・。
「な・・・・・・何なの?なんでこんな紐がなっちの靴に『くっ付いて』るんだべ?????」

なつみの驚嘆にれいながクスリを笑みを漏らす。
「不意打ちのスカーフもD・エレジーズの弾幕ラッシュもこの『毛糸の紐』をくっ付ける為の演出
 ばい・・・・・これだけ近ければ『亀裂』の足止めとかは出来んでしょ?」

「・・・・・・・「良く考えたわね」とか言って欲しいの?この薄汚い『弄策者』がッ!!!」



銀色の永遠 〜スィート・ホリックD〜



   ゴゴ

       ゴ
  
  ゴゴゴゴ

     ゴ

チェイン・ギャングの腕はゆっくりと標的を据える・・・・・
「確かに・・・・これだけ近ければ選択肢は『直接攻撃』以外ないべ・・・・攻撃の的は絞られる
 ・・・絞られた攻撃だけを受けて反撃するのは容易だが・・・・だけどね!」
なつみのコメカミに血管のイナズマが奔る!

「なっちの『チェイン・ギャング』のスピードをなめんじゃネーべさッッッッ!!!!!!」

ドグォォオオオォオォッッッ!!!!!!!!!!!

弾けんばかりの憤りを乗せて白とピンクの残像が奔るッ!

「ちょぉッ!」
その極僅かなタイミングを見切り『紐』を左手で勢い良く引っ張る!

ビンッ

緊張の音を響かせ『紐』は勢いのまま『滑車』の様に踏み込んだ左足を支点にしその力を倍増させる!
「なッ・・・・・・!???」
絶妙のタイミングで右足を引っ張られたなつみは大きく身体を泳がせるッ!!

「どらぁッッ!!!!」
虚を突かれ精彩を失った『チェイン・ギャング』の拳を易々とかわしたれいなは『D・エレジーズ』
の拳をなつみの腹部に深々とのめり込ませる。
「おぶぅ・・・・」
呻き声を漏らしたなつみの身体はイキオイ良く地面に叩きつけられた・・・・・。

「何が・・・・起きたンだべ・・?」
腹部を押さえながらなつみはゆっくりと立ち上がる・・・・。

「何も不思議な事は無かとですよ・・・・いいですか?この『紐』は安倍さん自身なんですよ?」
なつみを見下ろしながられいなは『紐』を玩ぶ・・・。
「だからこーやって引っ張れば。」

ビンッ

『紐』の緊迫音

なつみの身体が滑る様に転倒するッ!
「ぎゃッ!」
再び地面に叩き付けられた身体に冷たい衝撃が走る!

「『紐』が繋がってる限り・・・・安倍さんの身体は簡単にコントロール出来ると!おっと・・・
 真似しようなんて思わんで下さいよォ〜〜  れいなは『波紋』で安倍さんの微妙な『兆し』ば
 感じとってますけんねェ!」

れいなの言葉になつみの憤りが爆発するッ!

「こんな『策略』で相手を・・・相手の精神を愚弄する事ことが『戦闘』だと思ってンだべかッ!?
 許さない・・・・・認めない・・・・なっちはお前の事をエースだなんて認めないッッ!!!」

「安倍さん・・・その考えは間違ってっと。『戦闘』は足し算引き算じゃなか!『戦略』さえあれば
 掛け算にも割り算にも成ると!少ない戦闘能力でも強大な敵と闘えっとッ!!『闘う為の策略』こ
 そが『人類の英知』ばいッ!!!!!!!」


ザワザワ
    ザワザワ
ザワ

「そんな『言葉』で自分の卑劣さをごまかせるつもりでいるンだべか・・・・?」

「いいだっちゃ!安倍さんの『匹夫の勇』とれいなの『知恵』、どちらが正しいか結論を出すと!」

なつみの眉間に血管がのたうち廻る・・・・・
「言わせておけば・・・・・・もう勝った気にでもなってんだべか?なっちは『言ったべ』?
 『勝ち誇った時点で勝負は付いてる』ってよォォォオォォォォオォォォォォオオォ!!!!!」
絶叫と共に『チェイン・ギャング』は両拳を地面に叩きつけるッ。

メリ・・・・・・

メリメリメリメリメリメリァアアァァァアアァアアァアァアアア・・・・・・・・・・・・・・

「な・・・?自分諸共なんてッッッあんた正気かァアアアァアアァアァ??????」

大地にパックリと開いた『亀裂』は大口を開けてなつみ共々れいなを呑み込んで行ったッ!

「おぉぉッ!!」
れいなは左手で『くっつく波紋』を駆使し壁面に留まる!
直ぐさに右足が引っ張られるッ。

ビンッ
ビビンッッ

『紐』が振り子時計の様にゆっくりと揺れる・・・・・・

「フン・・・・フフン・・・・・『二人分の重量』は重いべ?・・・ほらほらどうしたァ?
 得意の『策略』でこの状況を打破してみなよォォォオ・・・・・」

重力に任せ、なつみはブラブラとぶら下がる・・・・・
『紐』でれいなと繋がったまま・・・・・

「く・・・正気っちゃか?こんヒトはァァアァァァア????」
呼吸を整えて『波紋』を練るが左手一本、オマケに二人分の荷重を支えるにはとても耐え切れなかった・・・・・

ズル・・・・ズルと位置が下る・・・・・
「だんだん下って来たねェ?もう限界なんじゃないの?」
フルフルと指先が震える・・・・
「支え切れん!!!!右足の『紐』のくっつく波紋を切るッ!!!」

プッ

靴先から『紐』は離れ、なつみとの接続は解かれる!

「・・・・・所詮『覚悟』の無い者に『信念』なんて貫けないべさ!」
『チェイン・ギャング』は指先を急な角度で壁面に向ける
「『チェイン・フィンガーッッッ!!!!!!』」

ボッ!!!!!!

鋭角に打ち込まれた指先!その反動でなつみの身体は上昇(ゲイン)する!!

 
銀色の永遠 〜スィート・ホリックE〜


「うぐぐ・・・・い・・こ・・・呼吸が・・・続かん・・・・」

ズルゥ

「うう・・・滑った・・・」

ガシィ

滑り落ちるれいな腕を誰か強く掴む・・・・

その先に見える満面の笑顔・・・・

        ドドドドド
   ドドドド

ドドド
    ドドドド
         ドドド

「あ・・・安倍さん・・・・・」
そう言うや否や引っこ抜かれる様に地表に投げ出された!
「うぎゃッ!!!」
地面に投げ出されたれいなは這う這うの体で立ち上がろうとする・・・・

「気分はどう?田中・・・?」
なつみの声が降りかかる
「・・・・・」
上から見下げる者と見上げる者。その事に歯を喰いしばりながられいなは立ち上がろうとする!
「答えるべさッッッ!!!!!!!」

メメタァ!!!!!!!!!

『チェイン・ギャング』の拳がれいなの首筋に叩き込まれる!

メリメリと・・・・
       乾燥音を立てながら・・・・

れいなの身体に『亀裂』が入り・・・腰まで真っ二つに裂け割れる・・・・。

「うわぁあぁあぁああぁぁあぁああぁ」
      
       『うわぁぁぁぁあぁあぁあぁあぁああぁあ』

  【うわぁぁぁあぁあぁあぁあぁあぁああああぁ】

生きながら身を裂かれる激痛にれいなは絶叫するッッッ!!!!!!!

「ンンン・・・・いい声だべ!実にナイスさ返事だべさ!」

身体を裂かれ、れいなは激痛に悶えながらその場に倒れ込む・・・・・

「薄っぺらいさねェ?立ち回りばっか派手で一撃喰らえば立ち上がれないなんてさ!」

「おぉ・・・・あぁ・・・・ぁあ・・・・」

れいなはなつみの言葉に反応せず虚ろに空を見上げていた・・・・・。

「・・・・・まぁ本来ならここで『勝負有り!ここまで!』であんたや高橋に『エースの資格無し』
 ッて事で終わりさ・・・けど・・・・・・・あんたには2〜3ヶ月、ベットで寝てて貰うベさ!」
なつみの顔から笑顔が消える・・・・・。
「病室のベットで今後の身の振り方でも考えるがいいべ・・・・・・」
動けないれいなに『チェイン・ギャング』は焦点を合わす。
「オメーはなっちを怒らせた・・・・・・・その報いだで!」

れいなの頭になつみの声が乱反射する・・・・・


・・・・・決定的ばい
れいなはこれから病院送り・・・・最悪・・・・再起不能にされると・・・・
・・・・・・決定的に・・・・


―れいなはいともすんなり それを受け入れた・・・・恐怖は無かった・・・・痛みも無かった
・・・・・後悔も無かった・・・・・『やるだけの事はやった』そう思った―

れいなの世界がゆっくりとスローに流れる・・・・・

虚ろな目に浮かぶ『赤』・・・・・・

れいなの動かせない左手の掌に『指輪』・・・・・『指輪』が煌く・・・・


「え・・・・・エイジャの・・・・赤石・・・・・」

れいなは『指輪』に嵌め込まれた輝石の名前を呟く・・・・

古代・・・・・波紋の戦士とその『敵』はこの石の完全結晶を巡り死闘を繰り広げた・・・・
『敵』から人々を護る為に・・・・・・・

波紋戦士の・・・・・誇りの結晶・・・・・・

「そう・・・たい・・・・まだ『終わって無か』! れいなの・・・『波紋戦士の誇り』は死んで無かとよッッッ。」

コ   ォォオォォ  ォォォォオ ・・・・・・・

れいなは死力を振り絞り有りっ丈の『波紋』を練るッ!!!!!

「またその『呼吸』ッッッ!!!!!!!!散り際を心得るべッッッ!!!!!!」
その激情より早く!なつみの『チェイン・ギャング』の指がれいなの胴体に一直線に伸びるッ。
「穴ぼこだらけにしてやんべッ!!!『ブリッツ・チェイン・フィンガー』!!!!」

水無月彩る雨の如き指槍の連打が降り掛かる・・・・・・・・・。


怯むなッッ

立ち向かえッッ

れいなの生命の大車輪が闘志をプッシュするッ。

「おぉおぉぉぉおぉおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!涌きたてッッ生命!そして誇りのビートッッッ!!!!!
 波紋疾走爆発(オーバードライブ・エクスプローション)!!!!」

ドグシャアアァアァァッァアァアッァァアアアッァア!!!!!!!!

赤石の力で増幅された『波紋』は爆発的な光を放つッ。
そしてッ!−−−−−−−ッ!波紋の迸りで動かなかったれいなの左手はバネ仕掛けの様に跳ね上がるッ!

ハネ上がった左手は『チェインフィンガー』の間隙を縫いなつみの胸に吸い込まれる!

「何だべェェエェエエエエェッッ!!!!!!!!!」















橙色の奔流がなつみを貫く・・・・・・


『波紋』がなつみの身体を疾走する・・・・過剰なる生命の迸りが意識を奪っていった・・・

「この・・・・・・土壇・・・・場で・・・・・こんな・・・・これも・・・・・『策略』・・・・・・・・・・?」

「当たり前っちゃ!この田中れいな!なにからなにまで計算ずみっちゃッ!!!
 (本当は違うけん、安倍さんが悔しがるならこー言ってやるけんね〜。)」

なつみはそのまま地面に伏し撃沈した・・・・・。
それに連動するようにれいなの身体の『亀裂』は元に戻り始めた。

完全に身体がくっつくとれいなは安堵の溜息を吐き地面に腰を打ち付けるッ。

「・・・・・安倍さんの攻撃でペンダントが千切られてペンダントヘッドの
 『赤石』が運良く袖を通って左手に移ってなかったら・・・・そのLUCK(幸運)がなかったら・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

水無月の薫風がれいなの前髪を揺らす・・・・

「・・・いや・・・・・LUCK(幸運)だけや無か!あの時の、絶望的状況を打ち破ったPLUCK(勇気)の・・・・・勝利たい・・・・・。」
れいなは腰を上げると土埃を払いながら歩きだす・・・・。

その足取りは受けたダメージを物語っていたが何よりも力強くそして誇りに満ちている・・・・・。

薫風がれいなを取り囲み舞い上がる、橙色の輝きを放ちながら。











田中れいな
スタンド名:デュエル・エレジーズ
安倍なつみ
スタンド名:チェイン・ギャング
高橋愛
スタンド名:ライク・ア・ルノアール

TO BE CONTINUED…