520 :1:2005/09/19(月) 00:52:41 0
銀色の永遠 〜エリックかめりんは王子様に憧れる〜

僕の…いや、私の名前は亀井絵里。
今日は大好きなあの子とではなく、同じ部活のメンバーである
田中れいなと帰っていた。
普段はあの子と帰っているんだけれど、今日は「人と会う」らしく、
しょうがないのでまたいつものように部室でドルフィンの練習をしていたところに
れいなが現れたのだ。
「さゆのお姉さんの手がかり、まだつかめないと?」
「うん、未だに手掛かりらしい手掛かりはないって」
あるとしたら、私のお父さんの携帯電話に、さゆのお姉さんから行方不明になる
直前(と思われる)に、携帯電話からEメールが送られてきたことくらいだ。
さゆのお姉さん、変な人でとても自意識過剰な人だったけど、いい人だったなあ。
今、どこにいるんだろうか。
もう…死んでしまっているんだろうか。
はは、まさかな。きっとケロッとした顔で帰ってくるさ。

お姉さん…絵里のお父さんは、淋しがっているよ。



521 :1:2005/09/19(月) 00:54:14 0
「お?」
カフェドゥ・マゴの辺りまで来て、れいなが足を止めた。
「どうしたの?」
「絵里、あれ見るっちゃ」
れいなに指を挿されて見た視線の先には、ぼ…じゃなくて
私の大好きなあの子がいた。
「さゆがいると。一人でお茶なんかして何しとーと?」
「僕に訊かないでよ」
「僕?」
「あ、いや私…」
さゆはオレンジジュースを一口飲んではキョロキョロして、やけに
落ちつかない様子だ。
そういえば、人と会うって言ってたけど…。
「え、絵里!あれ見るばい!!」
「えッ?」
…は?
うそ?
マジで?
「ちょ、ちょ…絵里…お、男っちゃ!」
見たところ、同じぶどうヶ丘高校の生徒のようだった。
私は突然の事に、ショックで声も出ない。



522 :1:2005/09/19(月) 00:55:18 0
「ありゃー高等部の三年生の、押尾先輩っちゃね」
「れいな、知ってるの?」
「知ってるも何も、あれは安倍先輩の…やばッ隠れるっちゃ!!」
そう言うと、れいなは私の腕を引っ張って物陰に隠れた。
「偵察すると」
れいなはニヤニヤしながら言う。
て、偵察したい!!何?何??
あの人何なの!?
さゆとどういう関係なんだよ!!!
「でも…そーいうのよくないよ」
なんて、私は本心とは真逆の事を言ってしまう。
「なに言〜とると。絵里にも人と会うって言っただけで名前出さなかった
ところをみると…これは何かあるッちゃね。怪しいばい…」
れいなは楽しそうに話した。
好きだなぁ…れいなも。
「もっとそばまで近づくっちゃ」
さゆと押尾先輩の死角になるように、隙をついて走り出し、私とれいなは
近くの木陰に隠れる。
「はぁ…でも、その…あの…え〜っと…」
「なーに、すぐに返事をくれとは言わないよ」
何の話をしてるんだろう…?
「聞こえる…聞こえるっちゃ。ああ〜ッ双眼鏡も欲しいとッ!!」
面白がっているれいなを他所に、私は一人真剣である。
聴覚の神経を研ぎ澄ませ、二人の会話に集中した。
「じゃあ、俺はこれで帰ッから」
え?もう帰っちゃうの?
「あ…はい…」
「ちゃんと考えておいてくれよ。俺、きみのことマジで好きだぜ」



523 :1:2005/09/19(月) 00:56:05 0

「なッ!!!!!!!!!!!!」

私はれいなに口を押さえられた。
「…」
「ぶ、ぶったまげたと…こりゃ〜愛の告白っちゃ」
愛の告白…?
う…うぅ…。

「今なんか聞こえなかったか?」
「え、さゆには何も…」
「そっか…ま、いーや。じゃあ、また明日学校でな」
「あ、さよならなの…先輩」

「こ、これはビックリしたと…スタンドも月までぶッ飛ぶこの衝撃…」
愛の告白されたの…?
さゆが?

525 :1:2005/09/19(月) 00:57:01 0
「こ、これはビックリしたと…スタンドも月までぶッ飛ぶこの衝撃…」
愛の告白されたの…?
さゆが?
「さゆ、顔が鼻の頭まで真っ赤だっちゃ。こりゃあエンゼルが舞い降りたとね」
エンゼルが舞い降りたの?
さゆ、その気になっちゃったってこと?
あ、あれ、涙が…。
「いつも『よしッ今日も可愛い♪』なんて根拠も何もねェ〜こと言っとったけど…」
やば…どうしよう…止まんないよ…れいなに見られちゃう。
「こんなとこ見せられたら認めざるを得んと。ね、絵里」
「…クスン」
「絵里?」

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

もうダメ!!たまんないよ!!!!!!!!
僕は大声を上げて涙を流し、一刻も早くその場から立ち去りたくて走り出した。
さゆ…僕のさゆ…ッ!!
…僕の泣き声、さゆに聞かれちゃったかもしれないな。




526 :1:2005/09/19(月) 00:57:36 0

「ちょっ絵里ッ!なにも泣くことはないとねッ(まさか絵里、押尾先輩の事…)」
「れいな?」
「ッ!!…ニャーニャー(猫のふりしてやり過ごすたい…)」
「そこにいるの、れいなでしょ?間違いないの」
「…ギクッ」


家に着いた私は、自分の部屋へ行き2時間眠った。
そして…目を覚ましてしばらくして…
さゆが男の子に好かれたことを思い出し…泣いた…。
535 :1:2005/09/19(月) 02:30:59 0

次の日、私は一人で学校へ行った。
私のちょっと前をさゆが歩いているのに気づいたけど、
昨日の事を思い出すと、一人気まずい気持ちになってしまうので
声をかけられなかった。
「いつもなら、一緒にこの道を歩いてるのにな…」
そんなことを登校中ずっと考えながら、私は一人、さゆが中等部の
校舎に入っていくのを見送っていた。

放課後になり、今日もまた私は部室でドルフィンの練習をしていた。
部室には私だけではなく、松葉杖をついている高橋愛先輩もいる。
何やら、雑誌を読みふけっていようだ。宝塚の雑誌かな?
って、そんなのあるのか知らないけど。
音楽に合わせて身体をくねらせる。
ダメだ…今日は全ッ然ダメだ…いつも以上にリズムが先走る…ッ!!
ダンスも、スタンド能力も、気持ちが乱れているとうまくいかないと誰かが言っていたなぁ。
さゆ…。
私はこれ以上の練習は無駄だと思い、CDプレーヤーの音楽を止めた。
帰ろう。無意味だ。
「亀子、帰るん?」
高橋さんは雑誌から目を離さずに私に訊いた。
「はい、今日は帰ります。あの、高橋さんは?」
「あっしはまだいるヨー。やっと動けるようになったし、いつ活動内容が
発表されるかもわかんないしねー」
やっと動けるようになったって…そんなボロボロな姿で言われても説得力ないです。



536 :1:2005/09/19(月) 02:32:45 0
私は部室を出たところで、れいなと出くわした。
「あれ、今日はダンスの練習せんと?」
「うん、気分乗らないから」
「そかそか。あのさ、昨日あの後大変だったと。さゆに見つかっちゃたとよ」
ああ、やっぱり。
…私のせいだろうな。
「さゆ、なんか言ってた?」
怒ってるのかな、盗み聞きしてたこと。
「いんや、ただ、押尾先輩の事聞いたけんね」
「マジで?何だって!?」
「え、こ、これ言っても平気なんかな…」
「何て言ってたの!?」
私はすごい剣幕でれいなをまくし立てる。
さゆ、どうするつもりなの!!!!?
「お、おちつくっちゃ…う〜ん、ハッキリとは言ってなかったと。
けど、まんざらでもなさそうな感じだったばい」
…。

そっか、まんざらでもないのか。



537 :1:2005/09/19(月) 02:34:20 0
「れいなはよく知らんけど、さゆ、お姉さんのことがあって、今すごく寂しい
はずっちゃね。誰かが支えてあげなきゃ、あの子可愛そうたい」
れいなの言葉が、私の心に突き刺さる。
さゆを支えるのは僕じゃなくて、あの押尾とかいう先輩なんだ…
そ、そうだ、そうだよな!
僕…じゃなくて私はれっきとした女の子なんだぞ。
どう頑張ったって彼氏になれるわけないじゃないか。
女なんだから。
ホント、どうかしてたよ私。
さゆは女の子なんだ。付き合うなら男の子だろーさ。
「あはは…私、バカみたい」
「へ?」
「れいな、カラオケでも行かない?なんかムショーに大声出したくなってきたッ!」
すると、れいなは私の手を握って、何だかよくわからないが感動していた。
「絵里がれいなをカラオケに…?は、初めて誘われたばい…こんなに
嬉しい事はないっちゃ…」
そうだよね、私、女の子なんだった。
そろそろ夢から覚めなくちゃ…彼氏つくる努力しなきゃ!!
どんな人がいいかなぁ〜ッ!C組の亀梨くんとかイケメンだよなァ〜ッ!!
あはは…。




538 :1:2005/09/19(月) 02:36:17 0

「お金あんま持ってないから、ぶどうヶ丘銀行でお金下ろして行くッっちゃ」
カラオケに行く前から、れいなは楽しそうである。
そんなにカラオケ好きなのかな?しょっちゅう行ってると思ってたけど。
そういえば、演劇部に入ってから中等部の子ばっかとつるんでるなぁ、私。
れいなが銀行でお金を下ろしている間、私は外でバスターミナルを眺めていた。
あそこの中心にある小さな池には亀がいるんだよ。
私、亀ってけっこう好きなんだよね。名前のせいかな?
「ん…あれは…」
ぶどうヶ丘高校の男子生徒だ…顔は昨日見たばっかりだ、忘れるわけがない。
「押尾…先輩?」
どうやら、すぐそこにあるカフェドゥ・マゴに向っているようだ。
時計の針は、昨日と同じ時間を指している。
もしかして…またさゆと会うんじゃ…。
返事を聞きに行くのかも知れない。
私の足は、勝手に押尾先輩と同じカフェドゥ・マゴへと歩み始めていた。


「絵里、おまた…アレッ絵里〜?どこ行ったと〜ッ!?」




539 :1:2005/09/19(月) 02:38:22 0

押尾先輩か…。
いい男かもしんないけど、私はあまり好きなタイプじゃないな。
なんていうか、危なそうな感じがする。殴り合いのケンカとかしてそうだ。
私は押尾先輩とは知り合いでもなんともないので、別にコソコソ隠れて尾行する
必要はないのだけれど、なんだかそうせずにはいられなかった。
後ろめたさがそうさせているんだと思う。
私、なにやってるんだ?
結局、さゆがどんな答え出すのか気になってるのか?
こんなコソコソとさゆの彼氏になるかもしれない男の後をつけてまでして…
これって、ストーカーっていうんじゃないのか?
でも、私は止まれなかった。
押尾先輩は昨日と同じ客席に向う。
「あ、あれ…?」
私の予想に反して、その客席で押尾先輩を待ってるのはさゆではなかった。
ちょっと、ホッとした自分がいた。
「よおぅ、待たせたな」
「いや、拙者らも今来たとこっす」
彼を待っていたのはぶどうヶ丘高校の男子生徒と女子生徒だった。
カップル…なのかな?

547 :1:2005/09/19(月) 03:50:21 0
男子の方は肌の白い好青年だった。
金髪なのに彼が不良のように見えないのは、彼の出すオーラが
爽やかだからであろう。一言で言うと、イケメンだ。
女子生徒は、こちらを背に向けて座っているので顔を確認する
ことは出来ない。
この先輩も金髪なんだけど、髪の毛が伸びかけらしくて
プリンみたくなっちゃってる。
制服の背中には『横浜蜃気楼』なんて刺繍がしてあって、
レディースなのかな?と思わせる。でもスカートは短いようだし、どこか
ギャルっぽいんだ。
まあ見た目は派手だけど、ただのヤンキーだろうな。
うちの学校、ああいう格好してる不良けっこういるんだよね。
B組の東方くんとかさ。
まあ、この女子生徒、ちょっと見た事あるよ〜な後ろ姿だけど…気のせいかな?
「とりあえず下準備は済みそうだぜ。あの道重って子、確実に俺に堕ちたな」
!!!!!!?
押尾先輩は席に座ると、ぶっきらぼうにそう言った。
「道重って…ここにホクロある子?」
爽やかな金髪のイケメンは口の下を指差しながらギャルに訊く。
「んぁ、そうだよ…って、山P?演劇部のメンバーはわかる範囲で教えたはずだけど?」
「すまぬ、拙者…最近のメンバーはよくわかんない」
山P?
あの爽やかな人のあだ名かな?



548 :1:2005/09/19(月) 03:54:04 0
「で、押尾先輩。なんでまた中等部の子にしたんすか?」
「ああ、なんか最近身内が蒸発したって噂でよー。それであの子に
決めたんだ。心の弱った女って最高にアホだぜ。なんでそんな淋しそうな
顔してるんだい?って言ったら猫みてーになついてきてよ〜」
そう言うと押尾先輩は手を叩いて笑った。
心の弱った女って、最高にアホ…?
「で、ちゃんとできるの?」
笑っている先輩を無視して、ギャルが言う。
「あ、何を?」
「押尾先輩、そんなんで演劇部を『潰す』ことができんの?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

え、演劇部を潰す…だって…ッ!!?
この人達は…一体ッ!?
「ああ」
押尾先輩は真顔になって言った。
「できるさ」
コンッ!!
そう言うと、彼は山Pって人があらかじめ注文していた飲みかけの
アイスティーを一気に飲み干し、テーブルに空になったコップを叩き付けた。
「道重さゆみを触媒にしてよぉ…一人一人…順番に順番に…
俺のスタンド『ラッシュ・フォーメン』で確実にひき殺してやるぜ…」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



549 :1:2005/09/19(月) 03:56:37 0

「押尾さん、それ…拙者のアイスティー…」
山Pって人は、あまり空気を読まない人らしい…。
そんなことより、今の会話だ!
俺のスタンド…えっと『ラッシュ・フォーメン』とか言ったっけ?
この人はスタンド使いなんだ!
たぶん、あとの二人もそうだッ!!
どういう理由なのかはよくわからないけど、この人達は演劇部を潰そうとしているッ!
そして、そのためにこの押尾先輩…いや、こんなやつに先輩なんてつける
必要ないか。そこに座ってる押尾のクソッたれは、お姉さんが心配で弱ってる
さゆの心につけ込んだんだッ!!

ゆ、ゆるせない…ゆるせないよ…ッ!!!!!!!!!!

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…


550 :1:2005/09/19(月) 04:01:03 0
「じゃあ、俺はそろそろ行くぜ。道重さゆみから昨日の返事聞かなきゃ
ならねーからよおぉ」
「押尾先輩」
「あ」
「もし、万が一、道重さゆみがOKを出さなかったらどうする気なの?」
「ああ、まぁ、ねーとは思うがもしそうなったら」
押尾は親指を下に向けてこう言った。
「kill・her…まず一人ってわけよ」
「本当に、やれるのね?」
「バーカ。俺の話はノンフィクションだぜ?」
「ふ〜ん、わかったぽ…」
キル・ハー…だってさ。
さゆを利用しようとしてる上に、もし利用できなかったらソレですか…
そうかい…やっぱり、男ってクズなんだな。
私が…僕がアイツからさゆを守らなきゃダメだ。
僕がやらなきゃ…やる人がいないんだッ!!!
怖いけど…さゆが笑ってくれるなら、僕はボロボロになってもいいッ!!!!!!!

僕がさゆのッ!!!
王子様になるんだァァァァァァッ!!!!!!!

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!!!!!!!!!!!!

554 :1:2005/09/19(月) 05:13:49 0
学校からドゥ・マゴまで来て、また学校に戻るなんて思わなかった。
押尾は返事を聞きに行く、と言っていた。
つまり、さゆはまだ学校にいるということだ。
とりあえず、さっきドゥ・マゴで聞いた会話をさゆに伝えなくちゃ。
そして押尾と会わせるのだけは避けなくてはならない。
学校まで戻る道を、僕は木の陰を転々として、隠れながら後を追った。
クソッ出来ることならあのゲス野郎を出し抜いていち早くさゆの元へ
飛んで行きたいのだけれど…ッ。
学校が目の前という所まで来て、押尾は急に立ち止まった。
…一体どうしたんだ?
「…おい」
押尾が口を開いた。
「出て来いよ…さっきから金魚のフンみてーにくっついてきやがってよ…」
ば、ばれてるしィ〜ッ!!!!
僕は無言のまま、木の陰から身を出す。
まずいな…戦闘になるかもしれない…。
「オメー、演劇部だな?しかも新入りだ…写真で見たぜ」
「…だったらどうするんだよ」
「ふん…いつから俺の後をつけてたんだがしんね〜けどよ…
そんなに早死にしてーのか?」
自信たっぷりだな、コイツ。
でも、それはハッタリじゃないってことはわかる。僕は自分でも気づかぬ
うちに、おでこに冷や汗を滲ませていた。
それでも、押尾のクソッたれから目を逸らしたりはしないッ。
気迫なんかで…負けるもんか…ッ!!
「お、お前なんかにさゆをいい様にさせないぞッ!!」
僕が…僕がさゆを守るッ!!!!!!!!!



555 :1:2005/09/19(月) 05:15:13 0
「…いい目してやがるぜ。なつみに似てるな、お前」
「なつみ…?」
安倍さんのこと…かな?
「あいつのスタンド…まあ負けはしね〜が勝つ自信もねえ…
だが、これだけは言えるッ」
そう言うと、押尾は僕を指差した。
「てめェのスタンドがどんなもんだか知らねーがッ!俺のスタンドは
『絶対無敵』ッ!死にてェなら逝かせてやンぜッ!!」
く、くるッ!!!
ヤツがスタンドを出すぞッ!!!!
勝てるのか?僕の、ただ『周囲の音を消す』だけの能力で…ッ!!!!
「さ、サイレント…」
「ちッ、やめるか…今は…」
「えッ!?」
な、な、な…
なんなんだコイツはあッ!!
思わずズッコケそうになったぞッ!?ふざけてるのかッ!!!?



556 :1:2005/09/19(月) 05:17:33 0
「お前、名前は?」
「か、亀井絵里だッ…!」
「『亀井』か。それで、お前が俺をつけてきた理由は『道重さゆみ』か」
「だったらどうするッ!!」
「俺は四時半に体育館の倉庫裏で彼女と会う約束をしている。彼女を止めたきゃ
止めてみなな。無駄だろうがな。それとも、今ここで俺を止めてみせるかい?」
「くッ…」
なんという自信!
こいつは自分に限りない自信を持っているッ!!
容姿も、力も、誰にも負けないという自信に満ち溢れているッ!!!
どうすればこんなに自信をつけることが出来る!?
まるで、その気になればいつでも僕を殺れるというこのオーラ!!
どれだけの力を持ったスタンドを持てば、こんな風になれるんだッ!!!!!!!?
「くそおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!」
僕は走った。
押尾の脇を抜け、学校へと駆け出した。
畜生ッ!悔しい…ッ!!!
戦ってもいないのに負けた気分だッ!
さゆを取られた気分だッ!!!
僕の頬を、勝手に目からこぼれた悔し涙が伝う。
このやろう…涙なんか流してる場合じゃねーんだよッ!!!
僕は下校する生徒の波に逆らい、校舎へと駆け込む。
とにかくさゆと会うんだッ!!
この時間で、さゆがいる場所っていうと…心当たりのある場所は…
あそこしかないッ!!!




557 :1:2005/09/19(月) 05:18:56 0

「ん、亀子〜おかえり」
演劇部。
僕がさゆといる時間をもっと増やしたくて入部した、演劇部の部室だ。
「さゆは…」
さゆは隅っこの机に突っ伏していた。
「亀子…アンタ、何泣いてるん?」
僕は高橋さんの質問に答えず、さゆに近づく。
「さゆ…」
「スースー」
「さゆ?」
「さゆなら寝てるヨォ。四時半に人と会うんだって言ってたヨー。ま、その時間に
なったらあっしが起こすつもりやったけど…さゆの会う人って、亀子?」
四時半まで、あと10分か…。
「高橋さん、できたら…さゆをこのまま寝かせてあげていて下さい」
「んー?」
さゆ…僕は…女の子だけど…。
ドッドッドッドッドッド…
「亀子?」
僕はさゆを起こさないように近づくと、さゆのホッペにそっとキスした。

僕がついてるよ…
さゆは僕がずっと守ってあげる…

僕は演劇部の部室にカバンを置くと、一人、体育館の倉庫の裏へ向かった。

563 :1:2005/09/19(月) 06:49:36 0

放課後の体育館の倉庫の裏は、どこか淋しげだった。
サワサワとそよぐ木の葉の擦れている音が、まるで僕になにか
囁いているかのようである。
「よぅ、亀井。やっぱりきたな」
「押尾…ッ」
押尾は吸っていたタバコを捨て、足で踏みにじると、僕に向き直る。
そして人差し指を立てた。
「まず、一人だ。喜べよ…お前が演劇部の血祭り第一号だぜッ!!」
押尾が叫ぶッ!
負けるもんか…気迫なんかに負けるもんかァッ!!!!!!
「『サイレント・エリーゼ』ッ!!!!」
「『ラッシュ・フォーメン』ッ!!!!!!!!!」

ズッバリバリバアアアアアアアアアアアンンンッッッ!!!!!!!!!!

「それが…押尾、あんたのスタンドか…ッ!!」
ブロオォォン…ブロオォォン…
骸骨のライダーが、バイクと一体化したような姿のスタンド!!
これが…押尾のスタンド『ラッシュ・フォーメン』!!
「それが亀井、テメーのスタンドかよ…小ッちぇえし、力もなさそうだ」
ブオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!
僕のスタンドを見て、押尾はバカにするようにスタンドバイクのマフラーを吹かした。



564 :1:2005/09/19(月) 06:52:51 0
「スタンドは大きさや力じゃないッ!!」
「負け犬の遠吠えにしか聞こえねーんだよ…ラッシュ・フォーメンッ!!!」
ブオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!
押尾のスタンドバイクが僕に向かって発進する!!
「じゃーな、もう会うことはねェよ…」
「うわああああッ!!」
僕は間一髪のところで押尾のスタンド『ラッシュ・フォーメン』の突進をかわす。
「さて、道重との待ち合わせ場所…変えなきゃならんぜ…」
「なにッこのスタンド…射程距離はどうなってんだッ!!?」
このパワーといいスピードといい、明らかに近距離パワー型のものだ。
だがこいつは、スタンドをここに追いてこの場を離れる気だッ!!
「だから言っただろうがよ…『絶対無敵』だってな。ひき殺してやんぜ…
部員全員な…一人一人…順番に順番に…」
こ、こいつ…めちゃくちゃヤバイ!!!!
「冥土の土産に教えてやるよ。俺は待ち合わせ場所を『屋上』に変えるぜ。
まあ、これねェだろーけどよ」
押尾はそう言うと、じゃあなと言ってその場から立ち去った。
ブオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!
押尾のスタンドは以前パワーに満ち溢れた音を出している。
勝算は…ないッ!けど戦うしかない!!
「でもどうやってッ!!」
自問自答をする僕に、再びスタンドバイクは迫ってきた!!
プワアァァァァァァァプオォォォォォォォォッ!!!!!!!!!1
か、加速したッ!!?
「うわッ!」
バゴスッ!!!
「うあああああああッ!!食らったッ!!!!!!」
か、かわしきれなかった…体をかすめただけなのに、こんなに痛くて、
吹っ飛ばされるなんて…ッ!!
だめだ、僕のスタンドじゃまるで歯が立たない!!
戦いようがないッ!!!!



565 :1:2005/09/19(月) 06:55:54 0
僕の頭は押尾の『絶対無敵』という言葉に支配されていた。
キュキュキュキュキュキュッ!!!!
「た、ターンだとおぉぉぉッ!!!!!」
一瞬のうちにラッシュ・フォーメンはこちらを向き直り、そして…
ブオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!
発進した。

ああ、この体制じゃかわせない…
アイツにまともに引かれたら、僕の身体はどうなっちゃうんだ…
さゆ…ごめんよ。
守って…あげられ…



「『ライク・ア・ルノアール』ッ!!!!!!!」
ギャアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!

…えッ?
一瞬の出来事だった。
掛け声と共に赤い人影が僕の前に灯り、その人影が地面を殴りつけたのだ。
そして、殴りつけた地面はまるで練り消しのようにへこみ、さらに…

ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!!!

勢いよく突き出した。
ちょうど凹みの上を通過しようとしていたスタンドバイクは、その力で
上空に突き上げられ吹っ飛んだ!
この能力は知っている。
これを使うのは…
「高橋さんッ!?」
そこには松葉杖をついた、ボロボロの姿の高橋さんがいた。


566 :1:2005/09/19(月) 06:59:36 0
「オィィッス!」
お…
「オィィィィィィッスじゃねえッす!!何やってるんですかッ!?」
「それ、あっしのセリフだと思うけどネー。あ、さゆ寝かせたまんまにしといたから」
ガシャアアアアアアアアン!!!
スタンドバイクが地面に叩きつけられた。
「まー何がなんだか知らんけど、勝負はついたヨー。あの高さから落ちたンやし、
無事じゃ済ま…」

ブオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!

スタンドバイクは、まるでダルマのように、造作もなく起き上がった。
しかも、大した傷もない。
「おぉッ…ピンピンしとる…」
な、なんて頑丈なスタンドなんだッ!!
ブオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!
「た、高橋さんッ!!来るッ!!」
「やべッ!!ライク・ア…ッ」
ダメだ、スタンドバイクの方が明らかに早いッ!!
「危ないッ!!!」
僕は高橋さんを突き飛ばし、そのまま一緒にバイクの軌道から逃れた!!
だがその際に、高橋さんの松葉杖と携帯電話が吹っ飛んだ。
取りに行くには遠い距離だ。
「逃げて下さいッ!今のその足じゃ、的になるだけですよッ!!!」
僕がそう言うと、彼女は途端に顔色を変える。
「…逃げる?あっしが?」



567 :1:2005/09/19(月) 07:04:02 0

ブオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!

うわうわうわうわうわ…また来るッ!!!
「早くッ!!逃げろッ!!!!!」
「なんで逃げなきゃいけないんよ…これが、あっしの選んだ部活やよ?」
な、こんな時に何を言ってるンだ…この人はッ!?
「部活が出来る力があるのに…病院のベッドで寝てなんかいられねーンよッ!!!!!」

ブオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!

「来たアアアアッ!!!?」
かわせない!!
僕はかわせるけど、高橋さんの足じゃかわせないッ!!
どうするッ…どうする!!亀井絵里ッ!!!!
「ライク・ア・ルノアァァァァァァァァァァァァッッッル!!!!!!!!!!」
こ、この人ッ!真っ向から立ち向かう気かァッ!?

ブ―ッ…ブ―ッ…

その時だ。吹っ飛んだ高橋さんの携帯電話が鳴ったんだ。
バイブレーション…マナーモードにしていたらしい。
「!!!!」
奇妙な事にスタンドバイクは、目標を突如僕らから高橋さんの携帯電話に変えたのだ。
グシャアアアアッ!!
高橋さんの携帯電話は、粉々になって吹っ飛んだ。

587 :名無し募集中。。。:2005/09/19(月) 16:43:19 0
「な、なんだ…あっしの携帯を攻撃した!?」
いや…違う!!
「携帯の…携帯のバイブの『音』を攻撃したんだ!!」
そうか…わかったぞ!!
音だ!音で探知して攻撃してるんだッ!!!!
そういえば…あの時ッ!
学校の近くで押尾に尾行していることがバレたとき!!
ヤツはスタンドを発現させなかった!!!!
それは周りに人や車が通っていたからだ!
「このスタンド…音を探知して、それを襲ってくるスタンドなんだ!」

ブオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!ブオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!

スタンドがこちらを向き直った。
「高橋さん下がってて!!僕のスタンド『サイレント・エリーゼ』で動きを止めるッ!!」
音を消せば、コイツは行動不能になるはずだ!!
なんだか…急に闘志が湧いてきたぞッ!!
「サイレント・エリーゼッ!!!!!!!!!!!!」
ドスンッ!
「…?」

ブオォォォォォォォォォォォォォンッ!



588 :名無し募集中。。。:2005/09/19(月) 16:44:00 0
「…亀子?」

シ〜ン…

「あ、あれ…どうした!?サイレント・エリーゼ!!」
シィ〜ン…
な、なんだ…?どこだ…僕の…スタンドが発現しない!!?
「か、亀子ッ!あんたのスタンドがッ…!?」
「えッ!?」
高橋さんの視線の先を見ると、そこには…
「ああッ!!」
僕のスタンドが…死んでる!!!
ど、どんどん枯れたような色になっていくぞッ!!!
「うわあああッ!僕のエリーゼがああッ!!」
ブオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!!
「亀子ッ!!くるッ!!!!」
「死んでしまったああああああああああああああああッ!!!」
僕はスタンドが死んでしまったことに絶望した。
「ライク・ア・ルノアールッ!!亀子ッ!!!あんただけでも、はよ逃げるんよ!!」

604 :1:2005/09/19(月) 23:45:49 0

高橋さんが叫ぶと、ライク・ア・ルノアールが紅く輝き、構えをとった。
ブオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!!
つ、突っ込んでくるうぅッ!
僕はたまらず動かなくなった『サイレント・エリーゼ』を抱え、
その場から飛び退く。
が、高橋さんは動かない。
まさか受け止める気じゃないだろうなッ!!
「おおぉぉぉッちょきんしねまああアァァァァァッッッ!!!!!!!!」
ドゴオォッス!!!!!!
高橋さんは倉庫の壁を殴りつけた。
ブオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!
「来た来た…しゃしゃりバイクがなァー…」
スタンド『ラッシュ・フォーメン』が高橋さんの間近まで迫ってきた時!!
グッボォォォォイィィィィッン!!!!
気の抜けた反発音と共に、壁が迫り出した!!
ドゴシャアアアアアアアアッ!!!!!!
高橋さんの作り出した『迫り出し』が、押尾のスタンドバイクを横から殴りつける
ようにして吹っ飛ばす!!
ライク・ア・ルノアールの能力だッ!
殴ったものを凹ませ、倍化させて凸らせる能力!!
も、もしこの人と屋内で戦ったらどうなるんだ?
しかも、そんな高橋さんを再起不能にした小川さんの能力は…ッ!!
いまさらだが、なんだか、自分がとても場違いな部活に入部したような気がしてきた。



605 :1:2005/09/19(月) 23:47:20 0
「ヘェー。今の一撃食らっても、まだそんな元気あるとァーね」
スタンドバイクは瞬く間に体制を立て直すと、今度は僕に向き直る。
「ハァーハァー…くそ…ッ!!」
エリーゼッ!どうして動かないんだよッ!!!
『スタンド』とは本人の精神力で動くものッ!
今の僕は、死への恐怖と緊張で息も切れるほどブルっている。
だから『スタンド』が動かなくなってしまったんだッ!!
「わッ!!!!」
突然、高橋が叫んだ。
すると、スタンドバイクは高橋さんに目標を変える。
「やっぱりなァー。亀子、あんたの『音に反応する』って推理は正しい…けンど!」
ブオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!
また高橋さんに迫っていった!!
「推理は正しいけンど!!!!!!!」
そう言うと、高橋さんはライク・ア・ルノアールで地面を猛烈にラッシュした。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアァッ!!!!!!!!!!!」

グウウウウウウウッイイイイイイイイイイイイイッッッッッンンン!!!!!!!!!!!
ラッシュを受けた地面はでッかいクレーターとなって凹んだ!!
で、でかい!
なんてでかい凹みなんだッ!!!
「音だけじゃーない!!コイツは物の出す『振動の音』を感知しているンよ!!」

ギャッギャアアアアン!!!



606 :1:2005/09/19(月) 23:48:54 0
振動の音!!
なるほど、コイツが僕に集中して向かってこようとするわけがわかった!!
僕の激しく波打つ心臓の振動、激しく切れた息の振動に反応しているんだ!!
だから、さっき高橋さんの携帯電話がバイブで震えた時、真っ先に
携帯電話を破壊しに行ったんだッ!!!
咄嗟にそれに気づくなんて…高橋さん、なんて人だ。
きっと僕のように心臓をバクバクいわせてないだろうし、慌ててもいないんだ!
凄まじい精神力ッ!!
この人は僕とは比べ物にならないほどの精神力を持っているッ!!
高橋さんが『エース』の一人と言われる由縁が、今わかったッ!!!
「はまれェッ!!あっしの作った穴にはまるンやァァァこのドテチンがアァッ!!」
ブオォォ…ボスッ!!
は、ハマッた!!!!!そして次の瞬間…

ドッシャアアアアアアアアアアアンンンン!!!

迫り出しは物凄い勢いでスタンドを遥か上空に突き上げた!!
まるで、山脈のようだ…すごいッ!!
ゴシャアアアアアァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!
そして、何メートルという高さから地面に急降下してきたスタンドバイクは…

ブオォォォォォォォォォォォォォ…

無傷だった。




607 :1:2005/09/19(月) 23:50:49 0
「な、なんちゅータフな…」
さすがの高橋さんも、この現状に焦りを感じ始めたようだ。
「高橋さん!!もう無理です逃げましょうッ!!!あなたの身体はもう
限界のハズだッ!!!」
そうなんだ、普通の人から見たら、彼女の身体は『再起不能』の状態なんだッ!
逃げたら、ヤツは追ってくるのだろうか…追ってくるだろうな。
でも、こんなヤツを相手にしていたらいずれやられるッ!!
なら、なんとかして本体を叩いた方が…
「前にマコが言ってたよォ…『物事を始める前から諦めたり、簡単に
他人に屈服するのは心が弱い証拠だ』ッて」
スタンドバイクが起き上がった。
ブオォォォォォォォォォォォォォ…ン
「『弱さを言い訳ければそれは醜さになる』ッてなァーッ!!!」
ライク・ア・ルノアールが紅く輝きだす!!
「あっしはそんな女じゃネエエェッ!!あっしは浪漫を描く女だアアァッ!!!!」
バアアアアアアアアンッ!!!!!!
な、なんという誇り高き精神ッ!!
彼女は敵前逃亡したりする女じゃないんだッ!!!!
「ぼ、僕は…ッ」
僕はこうなりたい!!
彼女のように、どんな相手にも真っ向から勝負を挑める誇り高い精神を持ちたいッ!!
そうだ、僕は…王子様になる男だッ!!
こんなところで震え上がっているわけにはいかないんだッ!!!!!!
「頼むッ!!動いてくれえェッ『サイレント・エリーゼ』エェェェェッ!!

ピシッ…

僕がそう叫んだと同時くらいだろうか。
干からびた色になった『サイレント・エリーゼ』の背中に亀裂が入ったんだ。

611 :1:2005/09/20(火) 00:58:02 0
「な、なんだあああッ!エリーゼがッ!!」
亀裂は大きく広がっていき、そして…

バリバリバリバリ…ドッパアアアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!!!!

「うわあッ!!!!」
エリーゼの背中から、光り輝く何かが飛び出したッ!!
「か、亀子ッ!?それは…ッ!!!!!?」
「え!?」
こっ!これはッ!!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

「…ビィッ!!」
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!!!!

「な、なんだ…これ…?僕の…サイレント・エリーゼ?」
死んでない…!
前の形から…し、信じられないことだけど、新しく抜け出たのか…?
大きさもちょっぴり大きくなり、腕のトランペットもなくなっている。
かわりに、スタンドの身体ほどもある大きなしっぽと、亀の甲羅のような鎧に
身を包んでいた。
そのしっぽと鎧には、まるで音楽室の『防音』のためにあいている穴のような
ものが、いくつもあいている。
「し、信じられない…スタンドが…脱皮するなんて!?」
高橋さんも驚いているようだ。
ブオォォォォォォォォォォォォォンッ!!!
驚いて声も絶え絶えの僕らを他所に、スタンドバイクは高橋さん目掛けて発進した!



612 :1:2005/09/20(火) 01:00:03 0
「ちィーッ!!!」
だがライク・ア・ルノアールで迫り出しを作る時間はない!!
うおぉぉぉぉぉッ!!やるしかないッ!!!
このスタンドがどんな能力を持ってるのか知らないけど…この大きなしっぽに
『パワー』があることを信じて…ッ!!!!
「『サイレント・エリーゼACT2』…『サイレント・エリドリアン』!!」
いっけえええええええええええええッ!!!!
スピードは速いッ!!
僕は『サイレント・エリドリアン』をスタンドバイクの横につけると、思いっきり
スタンドの大きなしっぽで引っ叩いた!!!
「おりゃあああああッ!!」
ベッシイイイイイッン!!!!!!!!!!!!!!ポーン…

「ああッ!!弱い!!!」
前の『サイレント・エリーゼ』よりはまだ力は強いようだけれど、高橋さんの
スタンドの作り出す『迫り出し』ほどの威力はないッ!!!!
「くう…ライク・ア・ルノア…」
ダメだッやっぱり間に合わないッ!!
高橋さんが壁とスタンドバイクに挟まれて潰されちまう…ッ!!!
「と、とまれえええええええええええええッ!!!」
思わずそう叫んだ時、奇妙なことが起きた。

ブロン…ブロン…プスン…

「え?」



613 :1:2005/09/20(火) 01:02:28 0
僕と高橋さんは呆気に取られた。
高橋さんの目の前まで来て、スタンドバイクはスピードを緩め、
その場で足をつき、止まってしまったんだ。
「亀子…あンた、なにを…?」
「えッ…ぼ、僕は…」
しっぽで引っ叩いただけ。
しっぽで引っ叩いただけだぞ…?
その答えは、僕の元に戻ってきたサイレント・エリドリアンが文字通り持っていた。
「え、エリドリアン…これは…」
まあるい、ハンドボールくらいの大きさの玉のようだけど…。
「ビィッ」
僕はエリドリアンからその玉を受け取る。
「こ、これは…ッ!!!」
確証もなにもない、僕の直感だけど、これは…間違いない!!
「音だッ!!これはコイツの『音の概念』だッ!!!!」
そうか…この大きなしっぽでスタンドバイクを引っ叩いた時!!!
サイレント・エリドリアンはコイツから『音の概念』を弾き飛ばしたんだッ!!!
音の概念を失ったスタンドバイクは何も聞こえなくなって、振動の音すらも
感知できなくなって…それで止まったんだ!!!!

「『サイレント・エリドリアン』は…音を…『音を奪う』能力ッ!!!!!」

ツッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!

617 :1:2005/09/20(火) 02:03:41 0

バンッバンッ…
高橋さんがスタンドバイク『ラッシュ・フォーメン』の前で地団駄を踏んだ。
「す、すげーよォ亀子…コイツ、もう何も聞こえてないみたいよォ…」
スタンドバイクは、もう何にも反応している様子はなかった。
押尾のスタンド『ラッシュ・フォーメン』による『絶対無敵』の進撃は止まったのだ。
あ、危なかった…とんでもないヤツだった。
もし…エリーゼがエリドリアンにならなかったら…今頃僕らはどうなっていたんだろう。
「さァーて、まだ終わってないよォ。亀子、こいつをどうするかァ?」
高橋さんが、指の骨をポキポキならした。
な、なんて似合わない姿なんだ…。
「お、お任せします…」
「おっしゃあッ!!ライク・ア・ルノアールッ!!!!!」
紅く輝くそれを出すと、高橋さんはスタンドバイクに猛ラッシュを浴びせた。

「おおおぉぉちょきんしねまあアアアアアァァァアァァアァァアァッ!!!!!!!!」
ドカバキズゴバキドカバキズゴバキッ…



618 :1:2005/09/20(火) 02:05:13 0

「ハァ…ハァ…ぶ、ぶっ壊れねェし…」
攻撃はやんでも、スタンドの耐久力は健在だ。
パンチを繰り出していた高橋さんの拳の皮が裂けて、血が滲んでいる。
早くコイツをぶっ壊さないと…さゆは、屋上へ行ってしまっただろうか?
ザッ…ザッ…
その時、倉庫の裏に誰かの足音が響いた!!
「だ、誰だッ!!」
僕は叫んだ。
そこに現れたのは…。
「ハア…ハア…聞こえ…ねえ…な…にも…」
「お、押尾学ッ!!!」
押尾は頭を支えて苦しんでいる。
「てめ…ら…なに…を…シタッ…!!」
き、聞こえていないんだ…僕がコイツのスタンドから音を奪ったから!!
だから本体のコイツにも、その影響が返って来て、何も聞こえなくなったんだ!!!
「ヘェ〜…この男が本体?なんだか情けないねェー」
「そうです…三年生の押尾学…理由はわからないけど、演劇部を潰そうとしているッ!!」
「き…こえ…な、い…た、助け…」
押尾は苦悶の表情で顔が歪んでいた。
「…亀子、やっちゃいな。あっしが許す」
「ハイ」
言われなくてもそのつもりだった。



619 :1:2005/09/20(火) 02:06:50 0
「ウ…う…ウウウゥゥ…スタ…ンドが…ウ・・・ごか…ね」
自分の世界だけ音がまったく聞こえなくなるっていうのは、
そんなに苦しいものなんだろうか?

演劇部を潰そうとしたこのクソったれ。
そのためにさゆに近づいて、弄んだゴミ溜め男。
そして、さゆを殺ろうとしたイカレチンポコ野郎。

「この時を待ったぜッ!!押尾学ウゥゥゥゥゥッ!!!!!!」
僕のオーラの気迫に負けたのか、押尾は、
「ひ…ひ…ッ!」
と情けない声をだしてうろたえた。

「これも、これも、これも…全部さゆの分だああああッ!!受け取れえええッ!!」
「あ、あ、ああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!!!!!」

くらえッ!!これが僕の『しっぽの猛ラッシュ』だッ!!!

「デェラデラデラデラデラデラデラデラデラデラデラデラデラデラデラデラデラデラデラ
デラデラデラデラデラデラデラデラデラ…デラックス!!!!!!!!!」


ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!





620 :1:2005/09/20(火) 02:07:57 0


屋上の扉を開けると、そこにはさゆがいた。
「…さゆ」
「あ、絵里」
夕日がさゆを赤く照らしていた。
「押尾…先輩とは、会った?」
さゆは首を横に振った。
「実はさ、告白されて嬉しかったの。でも、なんか迷っちゃったの」
それでね、とさゆは続ける。
「どうしたらいいかわかんなくて、約束の時間に10分遅れでここに来たの。
そしたら、いなかったの」
「そっか…」
押尾のことは…言わないでおこう。
いずれ、知る時がくるかもしれないけど、今知る必要はないもんね。
「絵里、帰ろッか」
「う…ウンッ!!」
僕は満面の笑みで答えた。

さゆ、僕は…キミの王子様になれたのかな。



621 :1:2005/09/20(火) 02:09:14 0

「ところで、なんでさっき部室でさゆのホッペにチューしたの?」
「えッ!!!!?」


押尾学 再起不能
スタンド名:ラッシュ・フォーメン

亀井絵里(エリックかめりん)
スタンド名:サイレント・エリーゼACT2=サイレント・エリドリアン