銀色の永遠 〜橙色の波紋疾走〜

その日あたしは自らの意思で演劇部の活動に参加した。
先日ドゥ・マゴで三好絵梨華から攻撃を受けて改めて思い知ったのが、
スタンド使いは引かれ合う、ということ。
どんなに身近な相手でも、もしかしたら敵に回ってしまうかもしれない。
三好絵梨華はどうやら梨華ちゃんの仇討ちのつもりであたしを襲ったようだった。
もしかしたら、梨華ちゃんがスタンド使いの刺客を送ってくる可能性も
無きにしもあらずなのだ。まあ塚本っていう例外もいるけど。
そんなわけで、あたしは調べられる範囲でスタンド使いとその能力を
知っていなければならない。
もちろん自衛のためだ。
ああ、大スターになるあたしの夢はどこ行っちまったんだ…
演劇部の活動とは、それは質素なものだった。
質素…というより、活動していないのだ。
テーブルの上には部員(メンバー)の紺野あさ美と小川麻琴が昼休みに
食い散らかした菓子の袋がそのままになっている。しかも二人はもう下校したらしい。
あとは亀井絵里がでかい鏡の前で音楽に合わせて身体をくねらせているぐらいだ。
ドルフィンを練習してる、とか言ってたな。
今日見た限りでは部活らしい活動をしているのはこの子だけで、よく部活が
成り立っているなと不思議に思う。
なんか…いるだけ時間の無駄かもしんねーな。



372 :名無し募集中。。。:2005/09/17(土) 06:18:16 0
あたしが帰ろうと立ち上がった時、部室のドアが開いた。
「ちわー」
部室に入ってきたのは中等部の女の子だ。
ド派手な装飾を施した制服を着ており、腕の部分には「麗奈」と
金色の刺繍がしてある。
間違いない、こいつはあたしと同期で入部した田中れいなだ。
見た目、ヤンキーなイメージがあるが、どこか哀愁漂うものを感じる。
「絵里〜、S市に遊び行かない?れいな、カラオケ行ってプリクラ撮りたいと」
れいなは練習中の亀井に躊躇せず訊いた。
「ごめ〜ん、今日はこれからちょっと用事あるんだ」
と、亀井は踊りをやめずに答える。
「そっか、さゆにも『今日はそんな気分じゃない』って言われたっちゃ。つまんない」
「そ、そうなんだ…」
「ん?なんか知っとるん?」
「い、いやッ別になんもないよ」
亀井がなんでうろたえているのかは知らないけど、そう言われるとれいなは
あたしをチラ見した。
「藤本さん、久し振りッス。もう帰ります?」
「え?ああ、まーな」
「S市行きましょうよッ!れいな…」
「カラオケ行ってプリクラだろ?行きたいけど金ね〜や」
さて、帰るか。
あたしは部室を後にした。



373 :名無し募集中。。。:2005/09/17(土) 06:19:58 0
そーいや火事場になったカフェドゥ・マゴはどうなったんだろう。
もう復旧したかな?
あの後はすぐ人気のない路地に逃げ込んだからなあ、ちょっと気になる。
ちょっと、見に行ってみるか。
悪いのは三好絵梨華に決まっているが、あたしにも責任がないわけ
ではない。どうだ、考え方が大人だろう。
あたしは帰路に着くその足で、カフェドゥ・マゴに向かった。
ぶどうヶ丘高校・中学の近くには、ちょっと大きい池がある。
あたしはそこで、誰かにつけられているのを感じた。
「…おい」
あたしは歩きながら、振り向かずにそいつに声をかけた。
「さっきからずっとついてきているようだけど…何の用?」
「…」
そいつは歩みを止めた。
それに合わせてあたしも歩くのをやめ、身体ごと後ろを振り返る。
れいなとは違った意味でド派手な格好をした女だった。
色黒で、いかにもギャルっちい服装をした女子高生だ。胸は…でかいな、くそ。
なんつーか、女のフェロモンをムンムンさせたヤツだった。
でも、どっかで見たことのある女だ。
「私の名前は倖田來未。ぶどうヶ丘高校の三年生よ」
「倖田…」
思い出した、確か学園のマドンナとか言われてる女だ。
その三年生のマドンナがあたしになんの用だ?
「あなたを『餌』として貸してもらうわ」

ズッヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ〜ンッ!!!!




374 :名無し募集中。。。:2005/09/17(土) 06:22:05 0
「ずいぶんと堂々としたスタンド使いだな…」
三好絵梨華も堂々としていたが、こいつはそれを上回っている気がする。
真っ向から勝負を挑んでくるなんて…相当自信があるらしいなッ!!
倖田來未は蝶の様に鮮やかな羽を持ったスタンドを出すと、あたしを指指して叫ぶ。
「これが私のスタンド『バタフライ』ッ!!藤本美貴…あなたには後藤真希を
おびき出す『餌』になってもらうッ!!」
「何回も言ってんじゃねーよ…出ろッ『ブギートレイン03』ィッ!!」

ドドドドドドド…

「それがあなたのスタンド…銀色で美しい…」
「真希ちゃんをおびき出すとか言ったな…説明してもらおうかッ!」
「説明する意味、ある?」
そう言うと倖田來未のスタンド『バタフライ』が力強く羽ばたく。
くそ、飛ばされる…ッ!なんつー強さの風起こしだッ!!
「うおッ!」
バタフライの起こした風に乗り、倖田來未は一気にあたしとの間合いを
詰める。そして…
ガバッ!!!!
カバンをひったくった。
「もら〜い」
そう言うと、バタフライの起こす風は静かになっていく。
「てめッ人のカバンを…返せ!!」
「返して欲しければここまで来なさい、バタフライッ!!」
倖田來未の自らのスタンドの能力なのか、彼女は宙に浮き始めた。



375 :名無し募集中。。。:2005/09/17(土) 06:24:55 0
「そ、空に…ッ!」
「おっと!あんま上見てんじゃないわよッ!パンツ見えるだろーがよおぉッ!!」
ドシュウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!!
「イヤよ〜イヤよ〜イヤよ見つめちゃイヤ〜♪」
バタフライが再び風を起こし、倖田來未はスタンドにつかまって風に乗り、
滑空して、さらに池の上でホバリングした。
「くそッ早えぇッ!!」
あたしは倖田來未を追いかけるが、池より先には行くことができない。
池の中に入ったら圧倒的に不利になる。なにせ、ヤツは浮遊しているのだから。
第一、水に濡れたくないッ!!
畜生…一般人から見たら人が水の上に立ってる様にしか見えねーぞ。
「てめー卑怯だぞッ!こっちへ来いッ!!」
そしてカバン返せ!!!!!
「私のスタンド…『バタフライ』にはもともとこんな力はなかったわ…演劇部の
一次審査は通過できたけど、私の『物を風に乗せる』だけの能力では
二次審査なんて受かるわけもなかった…」
こいつ…演劇部に入ろうとしていたのか?

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…




376 :名無し募集中。。。:2005/09/17(土) 06:26:52 0
「当時の後藤真希…あの子はすごい子だったわ。スタンドの才能があったのね。
スタンドが発現したばかりだというのに、風を集めたり、風を設置したりすることが
できた。私と同じタイプのスタンドのはずなのに、その差は圧倒的だった…でも!」
彼女はスタンドの四枚の羽を力強く広げ、私を見てくれと言わんばかりに主張した。
「スタンドとは精神力ッ!!私はこの劣等感をバネにして成長したんだッ!!!
今の私なら風を操る後藤にも勝てるッ!!ついでにクソッたれの集まりに
落ちぶれた演劇部もつぶすッ!!!!私のスタンド『バタフライ』の風を使って
『物体を加速させる』力でッ!!!!!!」
ドーン!!!!!!
「勝手なこと言ってんじゃねーぜッ!なら初めから真希ちゃんのとこに
行けばいいだろーがッ!!」
「ふん、なんか知らないけど、いつの頃からかあいつは戦闘をしなくなったのよ。
牙を抜かれた狼ってのはこの事ね」
そういえば、この間も三好の前で『コイツ(スタンド)を人前で出すなんて久し振りだ』
なんて言っていた気がする。
「だから、あなたを餌として使わせてもらうわよ…後藤真希を倒して初めて!!
私のサクセスライフはスタートするんだッ!!!!!!」
なんていう執念だ…別に真希ちゃんに何かされたわけではないらしいが、同じ時期に
演劇部に入部を希望し、同じ時期にスタンド使いとして目覚め、同じタイプの
スタンドを持ったがために、この女は真希ちゃんを執拗に狙っているのか。
同じタイプのスタンドなのに、自分は演劇部に入部できなかった…その劣等感を
持った自分を克服するために、倖田來未は真希ちゃんを倒す気なんだ。

…なんだかその気持ち、わからんでもない。



377 :名無し募集中。。。:2005/09/17(土) 06:29:27 0
「さて、雑談はこのぐらいにしましょう…行くわよ藤本美貴ッ!バタフライ!!」
倖田來未が足元の水面を蹴り上げると、池の水がしぶきを上げて宙を舞う。
「くらえッ!!!!ハニーフラッシュ!!!!!!!!!!!!」
倖田のスタンドが羽ばたく。
まるで、水しぶきを風に乗せてこちらに飛ばすように。
「何ッ!?」
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンッ!!!!!!!!!
水が…水の雫がまるで弾丸の様にこっちに向かってくるッ!!!
「ぶ、ブギートレインッ!!!」
すかさず水しぶきをガードする!!が、威力が…強い!!!
「い、いてててててッ!!!」
足元の砂利が水しぶきの弾丸を受けて砕けている。
こ、これはガードしないでまともに受けたらエラいことになりそうだぞ…
同情なんてしてる場合じゃないッ!
「で、でもッ…一体どうやってアイツを攻撃すれば…ッ!!」
「ブギートレインとか言ったわね…あなたのスタンドの射程距離は精々2mって
いったところかしら…さて、そろそろ楽になってもらうとするかな」
倖田はさっきよりも激しく水しぶきを上げて見せる。
「これくらいの水のかたまりを風に乗せてぶつけたらどうなるんだろうね?」
「て、てめ…ッ!」
あんなもん、今みたいに食らったら気ィ失うだけじゃ済まないぞッ!!
どうする…



378 :名無し募集中。。。:2005/09/17(土) 06:30:05 0
その時、あたしは変な感覚にとらわれた。
不自然だ。
何かが不自然なのだ。
その原因が池の水面にあると気づくのに、さほど時間はかからなかった。
「な、なんだこれは…」
倖田も気づいたか。
「水面の…波紋が…ッ!?」
なんだ…あの水面の波紋の形はッ!あんな形は…不自然だ!!
そしてさらに信じがたいことが起こる。
バッシャアアアアアアアアアアっ!!!
「うひゃああッ!!!?」
倖田の足元の水面が、しぶきを上げて倖田を包んだのだ!!


379 :名無し募集中。。。:2005/09/17(土) 06:32:01 0
「あーあ、なんでさっきからいるのに二人とも気づいてくれないとね?」
遠くから、まるで聞こえるようにして言った独り言に反応してあたしは声が
した方を見ると、そこにいたのは…
「れ、れいなッ!!?」
バーンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
れいなはしゃがみこんで、池の水面に手を突っ込んでいた。
「プェッ…ペッペ!畜生ッ池の水が口に入ったわ!!制服も濡れちまった
じゃないッ!下着も透け透けだわッ!!!!」
倖田もれいなに気づき、彼女を睨む。
「れいなッ!なんでここに…!?」
「藤本さん、話はあとっちゃ。よくわかんないけどコイツをぶっとばせばいいんとね?」
そう言うとれいなは、水面に足を入れた…が。
し、沈まない!!れいなが…水の上を歩いている!!!
これが…れいなの能力なのか?!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…





380 :名無し募集中。。。:2005/09/17(土) 06:33:12 0
「面白い芸を持ってるわね、あなた。でもそれだけじゃ私は倒せないッ!!
くらえィッ…ハニーフラッシュ!!!!」
ま、まただ!!また水しぶきをあげて…ッ!!
「『デュエル・エレジーズ』ッ!!」
ドーンッ!!!!!!!
これがれいなのスタンドかッ!!緑色の、いかにも強そうなスタンドだ!!
「おりゃッ!」
バゴオッス!!!!!!!!!!!!!!!!!
れいなはスタンドを使って自らのカバンを殴った。
「ふん、そんなことして何をッ…ハッ!?」
スタンドを使って殴ったれいなのカバンが石になっている!!
カンカンカンカンカンカンッ!!
それで水しぶきを防ぐと、カバンは元の姿を取り戻していった。
「れいなのスタンドはぶん殴ったものを一時的にダイヤモンドよりも硬い石に
変えるっちゃ!!あんたの攻撃は通用せんと!!!!」
れいなのスタンドは殴ったものを石に変える能力!!
だが一つ疑問が浮かんだ。
「れいな…って言ったわね。あなた、その水の上に立っているようだけど…
それもスタンドの力…なの?」
そう、倖田の言うとおりなのだ。
れいなの能力では、水の上を歩いたりする芸当ができるとは思えない。
「れいな…腹式呼吸を覚えたかったんよ」
腹式呼吸…?
「で、とあるイタリア帰りの先生のとこで習ッたと。辛かったばい…一秒間に
十回の呼吸とか、十分間息を吸い続けて十分間はき続けたり…」
そ、それ…ホントに腹式呼吸の練習だったのか!?

433 :名無し募集中。。。:2005/09/18(日) 03:22:47 0
「そ、それが一体あなたのその能力と何の関係が…?」
「これは、れいながその時偶然体得した『仙道』…西洋人は
『波紋』と呼んでいるらしいッちゃ!!!!」
そう叫ぶと、れいなは右手の人差し指を高々と揚げ、太陽を指挿す。
すると、れいなの足元の水面が、瞬く間に普通では考えられない
波紋の波を作り出した!
「波紋とはッ!太陽の光のパワーッ!!生命の息吹ッ!!!れいなには
この大地の恵みの自然が味方しているっちゃよ!!!」

ドッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!!!

「ほ、ほざけこの小娘があああッ!!」
バッシャアアアアアアアアン!!
倖田は水面に響くほどの怒声を上げると、水面を殴りつけ大きく水しぶきをあげた。
「ハニイィィィィィィィッ!!フラアアアアアアアアアアアアアッッッシュゥ!!!!」
水の塊は倖田のスタンド『バタフライ』が作り出した風に乗り、加速してれいなに迫る!
あ、あれをまともに食らったら…
「れいなッ!!」
だがあたしが叫ぶと同時に、水面かられいなの姿が消えた!!



434 :名無し募集中。。。:2005/09/18(日) 03:25:04 0
一瞬の出来事だった。
倖田の放った水の弾丸は砂利道を空しく砕く。
「何ィッ…どこに…」
「ここッちゃ!!」
信じられない事だが、れいなは音もなく水面から浮上したのだ!!
「足の裏に集中していた水を『弾く波紋』を身体全体から放出ッ!
そのまま水中に潜ったから身体は濡れてないとッ!!」
「なッ何もんだオメーッ!!!?」
「るおおおおおおおおおおおッ!!」
ぶ、ぶん殴る気だ!!でもちょっと距離が足りないッ!!!
「ふんバァーカッ!浅いんだよ!!」
「ズームパンチッ!!」
ドドンッグウウン!!!!
「ぐおっ!!!?」
の、伸びたッ…れいなの腕が一瞬…ッ!?
伸びたれいなの腕は倖田の左腕を捕らえた。
「くっそおおぉぉぉぉッ!!!!!!!!!!!!!」
殴られた勢いを使い、倖田はそのまま空へ舞いあがる。
「で、デタラメなガキんちょだわッ!!肩の関節外して殴ってくるなんてッ!!
ああ、私の腕が…石に…ッ!!!!!」
スタンドの能力だッ!!れいなは波紋と呼ばれる力とスタンド能力、2つの
力を同時に使い分けているんだッ!!!
この子…戦い慣れしているッ!戦闘の才能がある!!!



435 :名無し募集中。。。:2005/09/18(日) 03:28:06 0
「畜生…後藤真希を呼び出すための餌にするつもりだったけど、マジで
再起不能にする気でいかなきゃならねーみたいねッ!!!」
倖田は石になった左腕を抱え、樹木の茂みに身を隠した。
木の葉の中に隠れやがった…生い茂っていて倖田がどこにいるかわからないッ!!
その時、茂みの中から『風』が起きた。その『風』は木の葉を乗せ、
あたしとれいなに迫る!!
ブッヒョオォォォォォォォォォッ!!
まさか…葉っぱが風に乗って…加速しているのかッ!!?
「うわあああッブギートレインッ!!!」
「デュエル・エレジーズッ!!」
あたし達はたまらずガードする!!
が、加速して鋭利なカッターと化した葉っぱは容赦なくガードしたあたしの
腕を切りつけた。
「いってえ…クソッ!」
制服もボロボロじゃねーかッ!!
そうだ、れいなは…
「ハァーハァーッ…油断したとッ!わき腹が…呼吸が乱れたっちゃ…ッ!!」
わき腹を激しく切り刻まれたれいなは、膝下まで水面に沈んでいた。
「この野郎ッ…その木から引きずり下ろしてやるかんなッ!!」
と叫んだは言いが、策はねえッ…。
あたしのスタンド『ブギートレイン03』では、木の上に隠れている倖田を
攻撃するには木に登る必要がある。
そんなことをしたら…ただの的になるだけだ。



436 :名無し募集中。。。:2005/09/18(日) 03:31:31 0

ブッヒョオォォォォォォォォォッ!!

んなこと考えてたら第二波が来たッ!!!
うぐうッ何もできないのかッ!?
あたしのスタンドじゃあコイツに何もッ!!!!
「くっそおぉぉぉぉぉッ!!」
ふ、防ぐのに精一杯だッ!!強いッ!!!!!!!
「なめんじゃねーとよ…エレジーズッ!!」
ガードすることしかできないあたしとは逆に、なんとれいなは
ノーガードで水面を走りだした!!
こ、これを胴体にまともに食らったら擦り傷じゃすまねーぞ!!
「れいなッ!!!」
「どおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!!!!!!!」

ドスッ…ドスドスドスドスドスドスドスッ!!!

顔はスタンドでなんとかガードしている様だが、ノーガードのれいなの胸、腹には
加速して出来た木の葉のナイフが無残にも突き刺さる。
それでもれいなは走る、倖田の隠れている木に向かって。
「あ、あんた…」
身体にいくつもの木の葉のナイフを受けつつも、れいなは倖田が潜伏している
木の真下に辿り着いた。



437 :名無し募集中。。。:2005/09/18(日) 03:35:38 0
「いま引きずり下ろしてやるけんね…流し込む波紋ッ!
橙色の波紋疾走ッ(サンライトオレンジ・オーバードライブ)!!!」

ドッコオォォォォォォォォォォォォン!!

れいなは素手で木を殴りつけた。
「れいな…それは一体…」
「美貴姉ッ!もう少し右っちゃね」
「えッ?」

ドンッ!!!!!!

「うおああッ!!!!!!!!!!」
なんと、倖田は木の枝に弾かれ、茂みから飛び出したのだ!!
「ビリッときたあああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
ドシャアッ!!
そして、あたしがさっきまでいた位置まで吹っ飛んで落ちてきた。
一体何が起きたんだ…それにれいなの身体は…。
「な、なぜだ…ッ…葉っぱを加速させて作ったナイフをまともに身体に受けて…
何で動けるのよッ!?神経がクソにでもなってるって言うのッ!?」
倖田は痺れた身体でれいなを指差す。
「れいなだってスタンド使いだとッ!見るばい!!!」
れいながズタズタになった制服を胸まで捲くった!!!
「な、何よそれは…ッ!!」
あたしも倖田も、れいなの身体を見て驚愕した。
「デュエル・エレジーズで身体を殴って石に変えたッちゃ!!
石に葉っぱなんか効かんとよッ!!!!!!!!!」
バーン!!!!!!!
そ、そうか…あの時、走り出す前にあらかじめ身体を殴っていたのか…ッ!!
田中れいな…波紋と呼ばれる力といい、この子は戦闘の天才かも…。



438 :名無し募集中。。。:2005/09/18(日) 03:38:37 0
「後藤さんを超えるのはこの『田中れいな』たいッ!!
テメーなんかに邪魔させんとッ!!」
「うるせえガキャアアアアッ!!!」
倖田のスタンド『バタフライ』が羽を広げた。
「砂利を風に乗せて弾丸に変えてやるわッ!あんたのその顔ッ!
れんこんみてーに穴だらけにしてやるわよッ!!!!!!」
…こいつ、隣にいるあたしが目に入ってないのか?
「いッけえええっバタフ…」
させるかこの野郎ッ!!!!!!!!!!!!!!!!
「うらあッ!!!!!!!!!」

バキィッ!!!

「ぶべッ!」
あたしは倖田を殴りつけた。
「てめー…さっきからあたしの存在、忘れちゃいないか?」
「ふ、藤本み…ちょ、ま、待った…」
「うっせええッ!あ〜ッ!!!なんか無性にムカついてきた!!!!
ゴオォォォォォォルデンッゴォォォル決めてッ…」
「ひッ…ひィ…ッ」

「VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVV
VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVV!!!!!!!」

ドッギャ〜ン!!!!



439 :名無し募集中。。。:2005/09/18(日) 03:40:17 0


「れいな…?れいな大丈夫?」
「ああ、藤本さん…カラオケ…」
「ばーか今から行ったってすぐ夜になっちゃうよ。それよりどうよ?
これからドゥ・マゴでも行こうかと思ってんだけど、お茶しない?」
営業してるかわかんねーけどな。
「で、でも…お金ないんじゃ…」
「なーに言ってンだよ、紅茶のいっぱいくらいおごらせな」
するとれいなは、
「お、オッス!!」
と言った。




440 :名無し募集中。。。:2005/09/18(日) 03:43:03 0

ドゥ・マゴ、けっこう焼けてるかと思ったけど、そこまでひどくなかったみたい。
まあ一部の客席はちょっと使えないみたいだけど、それほど混んで
いなかったので簡単に座れた。
「まー好きなもん飲みなよ」
「ゴ…ゴチになりやすッ!!」
ん…?あそこに座っているのは…うん、間違いない。
「お〜い、亀井ちゃんにさゆじゃん!」
声かけてから思ったけど、さゆも亀井もれいなの誘い断ってなかったっけ?
「…」
れいなが二人をチラ見して黙ってしまった。
こ、これは…なんかあたしまで気まずくなってきたぞッ!!
そんなあたしとれいなを他所に、さゆと亀井はこちらのテーブルに近づいてきた。
「あの…」
さゆはトーンの低い声で言う。
「お姉ちゃん、見かけたら教えて下さい」
「え?どういうこと?」
「さゆのお姉さん…行方不明になっちゃったんだ」
あたしの質問に、さゆではなく亀井が答える。
「お姉さんって…あの秘書の?」
「うん…日曜なのにお仕事に行ってそのまま…警察に捜索願い出したんだけど、
三日間経った今も手がかりもなくて…」
そこまで言って、さゆは亀井の胸の中で泣き崩れた。
「うわああああッ…!!おねえちゃん…おねえちゃん…」
あたしもれいなも、黙って彼女らを見つめることしか出来なかった。



441 :名無し募集中。。。:2005/09/18(日) 03:44:34 0

この杜王町で、何かが起きているようだ。
平和な営みの影に隠れ、おぞましい何かが潜み、人を闇の中に飲み込んでいる。
それはまるで、自覚症状のなく進行していく病の様に…。



田中れいな
スタンド名:デュエル・エレジーズ

倖田來未  再起不能
スタンド名:バタフライ

TO BE CONTINUED…