銀色の永遠 〜プリンセスさゆみんの新しい仕事〜

私はハロプロ物産のOL、プリンセスさゆみん改めピンキーさゆみん。
先日まで秘書課で超ハイグレードのプリンセスさゆみんとして
働いていたんだけど、エリックさんの突然の異動(理由はあのクソ憎たらしい
小娘のせいなんだけど)により、急遽、営業課に配属されたの。
ちなみに『さゆみん』とは私の本名じゃあない。
大事な妹のさゆみから名前を借りたの。
私は普段、エリックさんと一緒に行動していたから、訪問販売っていう
仕事の段取りみたいなものは頭に入ってるつもりだったんだけど…
いや〜営業って甘い仕事じゃないみたい。
エリックさんは『スタンド』を使って仕事をしてたけど、あれの能力はあくまで
気持ちを倍化させるだけ。「欲しい」と思わせるエリックさんの話術は本当に
素晴らしいのッ!一級品なのッ!!
…わたしも負けてられないの。
いつエリックさんが杜王町に戻ってきてもいいように、私がしっかりこの町に
たくさんお得意様を増やしておくのッ!!
エリックさん…ねぇ…早く…あなたに会いたい…。




282 :名無し募集中。。。:2005/09/16(金) 06:07:22 0
それでもやっぱり、ゼロからお客様を開拓するのって難しい。
特におば様方。
私が家に無理やり入ろうものなら、全力で追い出しにかかる。
ひどい時は「警察呼ぶわよッ!」なんて言われたの。
やっぱりエリックさんはすごいの。顔もちょっとヨン様っぽいし、
おばさんのハートも鷲づかみなの。
…ちょっとジェラシー。
まあだから私もちょっと発想を変えようと思うのッ。
エリックさんがおば様方をターゲットにするなら、私はおじ様方を
ターゲットにしてみるの。



283 :名無し募集中。。。:2005/09/16(金) 06:08:42 0
そんなわけで、私は今日も外回りに出た。
「着いたの」
今日訪れたのは、公当台にある渋めの数奇屋住宅が素敵な
「吉良」さんの御宅。
よーし、バンバン気にいられてバンバン売りさばくのッ!!
ピンポーン…
ガラガラッと引き戸が開く。
「はい…」
おお、家も渋ければこの人もなかなか渋い。
「どーも〜☆ハロプロ物産OLの、ピンキーさゆみんです♪」
「…」
「このお花、こんなに美しいのにどうして霞んで見えちゃうんだろう?
ハッ…それは私が可愛いからなのねッ!!ごめんね、お花さん☆
キャハァ〜ッ!!」
「…どういったご用件でしょうか?」
吉良さんは顔色変えずに私に訊いた。
「癒してあげたいッ!!!!」
今だ、このタイミングで家の中入っちゃえッ!!
「な、なんだ君はッ」
「ニャンニャンニャンニャンッ」
エリックさん、私一所懸命頑張ってます♪
私は無理やり居間の方へ連れて行くよう、吉良さんを押して歩いた。




284 :名無し募集中。。。:2005/09/16(金) 06:10:28 0
「それでは本日の商品行きますよッ」
「本日の商品?きみは訪問販売か何かか?」
私は吉良さんの質問には答えず、エリックさんが愛用していた
アタッシュケースから本日の商品その@『洗水』を取り出した。
アルコール度数の高い、かぁ〜なり効くやつだ。
これはなかなかおじ様好みの酒じゃなかろうか、私はお酒あんま
飲まないからわからないけど。
私は頑張ってこの商品を欲しいと思わせるように勧めた。が…
「すまないが、わたしは酒は嗜む程度しか飲まない。遠慮しておくよ…」
なんて言われてしまった。
えーっ!そんなぁ〜…。
「じゃあこちらなんてどうでしょう?超薄刃の爪切りッ!指に負担をかけない
この切れ味ッ!あ、でもこれでプラモデルは作らないで下さいね!
切れ味悪くなっちゃうから♪」
私が新商品の『超薄刃爪切り』を出すと、吉良さんの表情が変わった。
「フム…爪切りか…」
お、ちょっといい感じに食いついてきたみたい。
ここで押さなきゃ…頑張るの私ッ!!
「あら、お客様爪がだいぶ伸びてらっしゃいますねッ」
「あ、ああ…今年は爪の伸びが速くてね。困ったものだ…」
「なんならお試しになります?こちらの商品」
「いいのかね?」
「ハイッ☆」



285 :名無し募集中。。。:2005/09/16(金) 06:11:28 0
なんだか今日の私は冴えてるの!!
この調子ならもしかして…
「うむ…ひとつお願いがあるのだが…」
「はい?」
「その爪切りでわたしの爪を切ってくれないか?」
「え…?」
私が切るの?吉良さんの爪を…?
「なぁに、心配することはない。他人の爪は切ったことない?
何事も経験だよ…」
はあ…なんか気がひけるけど。
でも商品買ってもらえそうだし、いっか。
「はいっ!よろこんでぇ♪」
私はエリックさんの口調を真似して言った。



286 :名無し募集中。。。:2005/09/16(金) 06:13:28 0
パチンッ…パチンッ…
「そう…深爪しないよう気をつけて…」
パチンッ…パチンッ…
いつかエリックさんの爪も切ってあげたいなぁ。
ふう…なんとか全部の指を切り終わった。人の爪を切るなんて
慣れてないからちょっと不安だったけど。
「いかがですか?お客様」
「うむ…素晴らしい切れ味だ…切断面がこんなに滑らかになっている」
うん、上々な反応だ。これならイケそうッ!!
「ではこちらの商品…」
「だが試しておいて言うのもなんだが、買うほどではないな。やはり爪切りは
長年使い慣れているものがいい…」
は?なにそれ?
「買わないんですか?」
「ああ…悪いがね」
はあああああああああ?
わざわざ爪まで切ってやったのに?
なんだこのおっさん、ムカつくし。
「それよりも」
心の中で密かに毒づく私に、吉良さんは続けた。
「君は…ずいぶんと白くて華奢な手をしているな…」
「…え?」
「ちょっと握らせてもらってもいいかな?」
そういうと彼は、私の返事も聞かずに手を握ると、わたしの手に頬擦りを始めた。



287 :名無し募集中。。。:2005/09/16(金) 06:15:04 0
「美しい…美しいよ…」
「い…」
な、なんだコイツは〜ッ!!
「いやああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!」
思わず黄色い声をあげ、私は吉良さんの手から自分の手を振り解いた。
「何をそんなにうろたえているんだ?」
「ちょっ…近づかないでッ」
私は吉良さんから距離をとった。
「なぜ逃げる?私のところにおいで…清い心でお付き合いができるよ…」
その時、私は信じられない光景を目の当たりにした。
こ、これはスタンド…?吉良さんの背後から現れた猫ちゃんみたいな顔のこれは…ッ!
吉良さんのスタンドは私に触れようとしている。
「さ…さわんじゃねえええええええええッ!!!」
「何ッ!?」
私はさらに吉良さんから距離をとる。そして自らのスタンドを発現させたのッ!
「シャボン・クイィィィィィッンンン!!!!!!!!!!!!!!!!」
どうだッ!私だって能力を持ってるんだッ!!
このチューリップの花弁を思わせる頭!
ドレスを纏っているかのようなこのボディ!!
まさに私らしいスタンド『シャボン・クイーン』!!!
「こ…これは…君もわたしと同じ能力を持っているのか…?」
「そいつを早くしまうのッ!私になんかしようとしても無駄なのッ!!」
「…この『キラークイーン』を見たからには…」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



288 :名無し募集中。。。:2005/09/16(金) 06:17:20 0
「生かしてはおけないな」
な、なによコイツは…ッ!
このドス黒い感覚は…恐怖?私はこの男に恐怖している?
この男には関わっちゃいけない…女の感ってやつだ。
「でも…もう遅いみたいなの…」
ならッ!やられる前にやるまでなのッ!!
「シャボン・クイーン!!」
使わせてもらうの私の能力ッ!!!!!
シャボン・クイーンの花弁から無数のシャボン玉が吹き出され、吉良さんを包む。
「な、なに…見えんッ!!」
「どうだッ!たくさんのシャボン玉が光を屈折させて目の前が真っ白のはずなのッ!」
目の前が見えなくなり、うろたえている吉良さんの脇を私はすり抜け、
奥の部屋へ飛び込んだ。
今なら逃げることはできる。
でもそれじゃダメなのッ!
あの男…すごく危険な気がするの…。
「殺しはしない…でも再起不能にさせてもらうのッ!!」
実は私のスタンド、シャボン・クイーンの放ったシャボン玉は、威力は弱いが
時限爆弾になっている。吉良さんにまとわりつかせた時、30秒後に四肢に
取り付いて爆破するようにセットした!時限爆弾をセットすると爆破するまでスタンドも
その場で『花時計』となり動けなくなってしまうが、もう勝負はついたようなもんだ。
心配はないと思う。



289 :名無し募集中。。。:2005/09/16(金) 06:18:57 0
「まあしばらくは車椅子になるかもしれないけど、私に何かしようとした
あなたが悪いのッ!!」
あと、20秒くらいかな?
もし家に火がついたら、その時は消防車呼んであげるの!
あれ、110番だっけ?119番だっけ?
「まあいいや、あと15秒くらいかな…」

パシャッ…ジー…

「…え?」
何、今の音。なんの音?
振り返ると、古いポラロイドカメラから撮ったばかりの写真が出てきた。
「そんな…ッ!この家はあの人の一人暮らしのハズじゃ…ッ!!」
あと10秒ッ!!
他に誰かいるの?
だとしたらどこに?
私は思わず写真を手に取る。
「こ、これは…ッ!?」
私の後ろにおじいちゃんがッ!やっぱり誰かいたんだ!!
振り返っておじいちゃんの位置を確認する。
「い、いない…?」



290 :名無し募集中。。。:2005/09/16(金) 06:20:01 0
あと5秒!!
もう一度写真を見ると、おじいちゃんの位置が変わっていた。
いや、写真そのものが変わっていたと言うべきか。私のポーズは
そのままで、おじいちゃんが私の胸に深々と包丁を突き立てていた。
あと4秒!!
ガタッと引き出しの開く音が聞こえて、見ると鋭利な包丁が宙に浮いていた。
あと3秒!!
その刃先が私の方を向くと、一直線にこちらへ向かってくるッ!!
「な、なにッ?なんなのッ!これはッ!!」
あと2秒!!
包丁から逃れるために部屋から出ようとする…が。
ドンッ…
「えッ行けない!!?見えない壁があるのッ!!!!!」
あと1秒!!
ダメだッ!!!包丁に刺される…ッ!!!
このままじゃ爆発しても同時にやられるッ!!!



291 :名無し募集中。。。:2005/09/16(金) 06:21:15 0
「くそッ…戻るのッ!シャボン・クイーンッ!!!!!!!!」
ちぃッ!一端スタンドでこの包丁受け止めてから攻撃しなおすのッ!
2対1なんて…卑怯なのッ!!
私はシャボン・クイーンで包丁を受け止めようとした。
私のスタンドはスピードもある。絶対受け止められるッ!!
「…えッ!!?」

グサッ…ブショオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ…

つかめなかったの。
包丁、つかめなかったの。
つかんだのに、すり抜けちゃったの。
実体が…なかったの。

私は自分の胸から吹き出して出来た、血の池地獄の上に倒れた。

エリックさん、ごめんなさい。
私は残った力で携帯電話を取り出し、彼にそうメールを送った。
ホントは電話したかった。
でも、もう声なんて出なかった。





292 :名無し募集中。。。:2005/09/16(金) 06:22:40 0
「むう…なんだったのだ、今のシャボン玉は…」
「ハッ…この女…死んでいるッ!この状況で…自害したというのか…奇妙だが…」

シュウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

「きみはさっき、わたしに『癒してあげたい』と言ったね…」
「まだ一人になることはない…わたしがついていてあげよう」
「きみの名前、なんだったか思い出せないが…まあいい」


ピンキーさゆみん  死亡
スタンド名:シャボン・クイーン

TO BE CONTINUED…