520 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/22(水) 05:09:42.86
0
銀色の永遠 〜 決意はダイアモンドよりも硬く
〜
―――― 昨夜は雨が降った。
521 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/22(水) 05:13:38.40
0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
「ちょっと早く来すぎちゃったの。みんなは…まだ来てないようなの」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「すいません、10人席で予約した道重ですけど…え?予約されてない??
あぁ、そっか。予約取ったのは藤本さんだったの。藤本です、えぇ…藤本」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「どの席に座ろうかなぁ〜。ねぇ?どこがいいと思う?どこに誰が座るか
想像もつかないの…一番の悩みはそこなの」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
522 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/22(水) 05:14:50.84
0
「ま、どこ座っても同じかな。たぶん隣には絵里がくると思うけど、もう片方は
"あなた"が座ると思い込んでみんな空けといてくれるに違いないの。ふふふ…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「そろそろみんな来てもおかしくない時間なの…ン?・・・・・クン・・・・クン・・・・・・
もう・・・みんな来るんだからそんな変な臭い出してちゃあダメなの、女の子なんだから。
ちゃんと身だしなみを整えて…」
シュッ!・・・・・・シュッ!・・・・・・。
「これでよし・・・・・女の子はいつの時もキチンと構えてないとね。いつ、どこで
誰が見ているかわかんないんだから・・・ふふふ・・・あ、みんなやってきたの・・・・
さて・・・暗いし狭いだろうけど我慢するの・・・・ン?これじゃ意味がないんじゃあ
ないですかって?大丈夫・・・・・この場にいることに意味があるの・・・・・ふふふ・・・」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
523 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/22(水) 05:16:07.59
0
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・
11月12日…昼下がりのことだ。
空は晴れ渡り、休日ということも相まってか、ここにいる彼女たちの
テンションはいつもより高いものであった。
青空がいつまでも続くような未来であれ!そんな気持ちを抑えられないのも
無理はないだろう。
「くしゅんッ!」
「どうしたと?さゆ、風邪?」
「いや、なんてこたぁないの」
「なんだァ?しげさん、アンタもしかして『風邪』をれいなの誕生日の
プレゼントにもってきてあげたのカァ??うは〜、いやマジに恐れいるがし。
それは思いつかンかった!」
「oioi愛ちゃんよォ〜寒いジョークもいいンだけど…そのショートケーキのイチゴ、
食べないのカイ?皿のスミにわけてるって事は『食べる意思はない』って
ことだよなァ?それじゃイチゴが可愛そうだゼ。ワタシが食べてやるヨ」
「ちょッ!?麻琴オメェッ!!イチゴはあっしの好物なんよ!!最後に
ちゃ〜んと食べてあげるんダカラ…って、オラァッ!!勝手こいてフォークで
突付こうとしてンじゃあネェーしっ!!!」
「二人とも静かに。お客さんは僕らだけじゃあないんだからぁ〜…シーッ!」
「ほらほら麻琴、イチゴが欲しいのならコンコンのをあげますよぉ〜」
524 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/22(水) 05:19:11.24
0
華の女子高生が6人も集まっているのだから、騒がしくならないわけがない。
カフェ・ドゥマゴの一角にある10人席の大きなテーブルで、彼女たち6人は
平和なひと時を楽しんでいた。
先日の11月11日は田中れいなの誕生日だったのだ。
今日はそのパーティ…主役は言うまでもなく、れいなである。
主催者は藤本美貴ことミキティなのだが、当の本人はまだ来ていなかった。
彼女だけではない、そのテーブルに空席は全部で4つある。
「ガキさんも藤本さんも遅いなぁ〜…僕の知る限りじゃあ、藤本さんはともかく
ガキさんは時間にルーズな人ではなかったと思うだけど…どうしたんだろう?」
絵里が腕時計に目をやり呟いた。
「そのうちひょっこり現れるンじゃないのカァ?深く考える必要はないやよ〜。
なぁこんこん、ケーキ細かく刻んで食べるのやめネ??」
「ゴメンね。こんこん、イチゴ苦手なんで…」
「ミキティは遅れるって連絡きたゼ?寝坊したんだってサ。
言いだしっぺのくせにしょ〜がねーなァ〜…oioi」
「でも・・・・ワガママ言うみたいやけど、れいなは早くみんなに揃って欲しか。
"小春ちゃん"もまだきとらんし…」
525 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/22(水) 05:19:58.20
0
ド サ ァ !!!!!
526 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/22(水) 05:21:17.48
0
「「「「「ッ!!!?」」」」」
突然響いた大きな物音に、彼女達の空気は引き締まる。
音は、さゆみの席から聞こえた。
「椅子に引っ掛けてたカバンが落ちただけなの。大丈夫、気にしなくていいの」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
会話がなくなった。
皆、黙ってさゆみを見つめている。
何か違う・・・・・直感だが・・・・・・いつものさゆみと何か違う。
「…どうしたの?どうしてみんなしてさゆみを見てるの?ほら…話を続けるの。
それとも、さゆみのあまりの可愛さに声も出なくなっちゃったの??」
・・・・・・・・・・いや、気のせいだったか。
いつもの彼女のペースに、一同は気を取り直した。
527 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/22(水) 05:26:00.28
0
「そ、そーいえば"小春ちゃん"と会うのもヒサブリですよね。あの子、
最近まったく部活に顔出してませんでしたし。早く元気な顔が見たいですねぇ〜。
吉澤さんはサッカー部が終わってから来るんでしょうか?時間的にはもう着いても
おかしくないと思うんですけど」
「oioi…これはワタシの直感なんだが…もしかしたら吉澤さんと"小春"は
今日は来ないかもっていう可能性も無きにしも非ずダゼ?oi」
「…?それ、どういうことですか??」
「え、いいの?これ話しちゃっていいのカイ??」
麻琴は誰にというわけでもなく疑問を投げかけ迷っている。
みんなの視線が彼女に集まると、待ってましたとばかりに口を開いた。
「あのな、これは舞台の練習してた時期の話なんだが…ホラ、ワタシとあの2人は
役的に絡み多かったろ?だから一緒に台本読みあわせたりとかしてて気付いたのサ…
"こはっピンク"のヤツ…もしかして吉澤さんに惚の字なんじゃあねーかッてヨォ!!」
!?
「えぇぇぇっ!?嘘でしょ?まこっちゃん!!!」
「それ麻琴の妄想とかじゃあないですよね??」
「イチゴショート、マジうめェんざ」
「れいなはそんな話聞いたことなか。証拠はあると?証拠は」
528 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/22(水) 05:32:15.22
0
「同じ土地の生まれだからわかるんだヨ。直感って言ったろ?あ〜…吉澤さんの
肩に後ろからアゴ乗せてた"小春"の姿、忘れらんネェ〜なぁoioi!!ありゃ〜もう
恋する乙女の瞳って感じだったねーッ!!今頃どこかで逢引してたりして…ッ!!!」
「あ…逢引ィ〜?"小春ちゃん"が??そ、想像できないなァ…うへへ」
「か、亀ちゃん…敢えて訊きますけど何を考えてるんですか?」
「亀子、コイツの話をまともに聞いちゃあダメやよ…中学生の"久住"が
逢引とかアホかwところでみんなケーキ足りる?もう一個頼んでイイ?」
「え?え?『あいびき』って何??れいな意味わからんばい」
「チッチッチ〜ッw子供にゃまだ早いゼwww」
麻琴は意味を理解していないれいなを小バカにするように人差し指を振ってみせた。
こうして見ていると、恋話というのは当事者であろうと第三者であろうと、思春期の
彼女たちにとって最大の面白さを秘めているものなのだということがわかる。
「まこっちゃんヒント!!ヒントを出すっちゃッ!!」
「しょ〜がねぇ〜なぁ…コンコン、言ってやれヨ」
「なにを言わす気ですか?」
「ランデブーだよ、れいな…"小春ちゃん"と吉澤さんはランデブーに
浸ってるんだ・・・・いいなぁ・・・・・・」
「亀子、コイツの話を広げンなって…決めた!あっしもう一個頼むもんネ〜っ!!」
皆、この場にいない小春の話題に興味のツボをつつかれて、ドンドン盛り上がっていく…
529 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/22(水) 05:33:48.69
0
「れ、れいな…ようワカランけど…結局"小春ちゃん"たちは来んの?」
「大丈夫ですよ、"小春ちゃん"達ならきっと来ますって。ねぇさゆみん?」
「そーいえば重さん、今日は"小春"と一緒に来なかったんだもんナ。
いつも一緒なのに珍しいこともあるんだなァw雨でも降るんじゃねーのかoioi」
「あ、"久住"たちも来るんだったら、あっしのと一緒にイチゴショート頼んどくカァ?
なぁなぁ"久住"はあとどんくらいで着くン?」
「ねぇさゆ、"小春ちゃん"からなんか連絡きてる?なんで遅れるって??」
・・・・・・・ブゥワアアッ!!!!!!
「「「「「「ッ!!!!?」」」」」
彼女たちは一斉に黙り込んだ。
ただならぬ気配を感じたのだ…全身の毛穴が広がった気分だった。
そして、彼女達は…何故かさゆみに目を向けていた。
「〜〜〜〜♪」
さゆみは、まるで何事も感じていないかのように、音の外れた鼻歌を唄いながら、
小さなクシで縛った髪の毛の先を梳かしている。
そんなさゆみの様子も奇妙だが、それよりももっと奇妙だと思ったのは…
530 :1:2006/11/22(水) 05:45:28.30 O
(さゆ・・・・指先という指先にバンドエイドやらガーゼやらで手当てをしているけど・・・・・)
(なんだ・・・・?ケガでもしてンのか・・・・・・oioi・・・・・・・)
「小春ちゃんなら来てるの」
「「「「「えッ?」」」」」
突拍子もないさゆみの発言に5人は目を丸くした。
「来てるって・・・・・ど、どこに?」
「oioi、なに言ってんだ?さっきから…いや、今日の重さんは何か変だゼ」
眉をひそめる絵里と麻琴に、さゆみは自分のカバンを撫でながら言った。
「小春ちゃんは来ているの・・・・・ずっと一緒だったの・・・・・ふふふ・・・・・・」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
579 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/23(木) 05:06:11.41
0
「ずっと一緒だったって…さゆみん、いったいどういうことです?」
「どこにいると?店ン中にはいないけん…どっかに隠れとぅの?」
微笑みながらカバンを撫でるさゆみを余所に、れいなは辺りをキョロキョロと見渡す。
テラスは彼女たち以外にも他の客で賑わっているが、その中に小春が
紛れているような様子はない。
「今日のさゆ、なんか変だ…会話にも全然加わらないし…ン?」
その時、絵里の携帯電話がブーツ・インしたジーンズのポケットの中で
ブルブルとそのボディを振るわせた。
Eメールが届いたのだ。送り主は・・・・・新垣里沙である。
実は先ほどの会話の最中に、絵里は隙を見て『あとどれくらいで着くの?』と
彼女に連絡しておいていたのだ。
メールの文章は、こう書かれていた。
『 今日ってなんかあったっけ?? From:新垣里沙 』
「・・・・・・え?」
里沙から届いた返信の内容に絵里は戸惑う。
今日のことは昨晩ミキティからの連絡で知らされているはずだ。
まさか昨日の今日で予定を忘れるだなんて事はないだろうし、彼女が今日の
集いに参加できないという話も聞いていない。
「ど、どういうことなんだ・・・・・コレ・・・・・」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
580 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/23(木) 05:11:15.19
0
「おめーら!!なにやってんだーッ!!!」
その時、威勢のいい声が彼女達に放たれた。そう…ヒーロー(ヒロイン)は遅れてやってくる…
「…と、まぁ部室に入ってくる時のよっちゃんさんを意識して真似てみたわけだが」
「美貴姐ッ!!」
「oioi、遅すぎるゼ〜ッ!ミキティ!!」
「わりィな、ちょっと考えることがいろいろあってよ。それはそうとよぉ、れいな。
昨日で16歳・・・・・もう結婚できる歳じゃね〜か。ほれ、誕生日プレゼント」
ミキティはれいなに白い長方形の箱が入った質素な紙袋を渡す。
プレゼント用の包装だとかリボンだとかは一切施されていない…それでもれいなは大喜びだった。
「うわあぁぁぁッ!!か、感激やけん!!美貴姐…あけて見てもイイ??」
「おう、どんどん見てくれ。まぁ、美貴のお古なんだけどさ…」
れいなはキラキラとシャイニーガールな瞳で袋から箱を取り出す。
白い長方形の箱から出てきたそれとは…
「・・・・キティちゃんのサンダルばい!!!しかも紫色ッ!!か、可愛いっちゃ!!!」
「だろだろ?中坊の時に衝動買いしたんだけどよぉ〜結局履かなかったんだよなァ!!
ローファーが主戦力になっちまったからさ。ま、コンビニ行く時にでも履いてくれや」
「けど、制服でそれ履いたらいかにも小ヤンキーって感じだなぁ、oi」
「それでも嬉しいっちゃ。グラッツェ(ありがとう)!美貴姐ッ!!」
れいなはミキティに敬意を表し、深々と頭を下げたのだった。
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!
581 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/23(木) 05:13:29.80
0
「ということは…あと吉澤さんにマメ(新垣里沙)、それに小春ちゃんだけですね。
残りの3人が揃えば完璧です・・・・・・ささ、ミキティも早く座って下さい。立っていたら
おいしいケーキが食べられませんよ。イチゴ入ってますけど」
「よしッ!それじゃあイチゴショート二つ頼むカァ〜?それとも新メニューの
パフェにする?なんかコッチの方がイチゴいっぱい入ってるみたいやよ、高いケド」
二人がミキティに薦めるが彼女はノリノリになることはなく、口を一本に
結ぶと、ついさっきまでのテンションが嘘のように静かに席に着き、
「美貴は・・・・・ケーキ食べないよ」
と、小さな声でそう言った。
そんなミキティに麻琴はいつものテンションで話しかける。
「ハァ〜?なんだかミキティらしくねーなァ、oioi。"ケーキやめました"ってか?
あ、もしかしてアレ?ダイエットってやつ?言っとくけど断食は効果ないゼ。
どうしてもするっつーならワタシが編み出したダイエット良法を教えてやるヨ」
「アンタ、ダイエットなんかしてたのカ?」
「オウよ愛ちゃん。ま、今はしてネーけどサ・・・・・そうそれはッ!!!
死ぬほど腹を空かしてからガッツリ食うッ!!あ、もしかして嘘だと思ってる?
でも実際マジで効き目あるんダゼ??」
麻琴は手にしていたフォークでミキティを指した。
そんな彼女のテンションには思わず笑みがこぼれかけるが・・・・
ミキティは気を取り直し、やはり静かになる。
582 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/23(木) 05:17:56.19
0
「いや別にダイエットしてるわけじゃねーよ・・・・・とりあえず先に謝っておく。
れいなワリィ・・・・・ホントはこーいう場で話すべき事じゃあないんだけどよぉ・・・・」
「え?え?どうしたと?なんで謝るン??」
「何かしこまってンだ?で、パフェどうすんの?ホントに食わないのカァ?」
「あ、ミキティ。良かったらコンコンが取り除いたイチゴ食べます??」
「oioi、面白そうなカミングアウトはガキさんや小春が来てからにしようゼ〜ッ!!」
「いや、あのさ・・・・そーいうんじゃなくてよ・・・・・」
「あッ!わかったゼ〜!?金がないんだロ?だから何も頼まないつもりだったけど
みんなが食ってるの見てやっぱり何か食いたくなったんじゃねーのカイ?違う??」
「金なら貸さんがし。だって返ってこなそーだモンな〜ッ」
「紫芋アイス、二人で割り勘して食べません?コレなら安いですよ」
ブチン・・・・・・・・・その時、ミキティの中で何かが切れた。
「てめーら・・・・・美貴は今から真剣な話をしようと思ってんだよ!!!!
こっちは色々考えて覚悟して来てンだッ!!妙な茶化し入れてんじゃあねぇッ!!
ハッ倒すぞ!この大ボゲ共ッ!!!」
ガシャンッ!!!!!!
ミキティは怒鳴り、目の色を変えてテーブルに拳を力強く叩きつける。
その振動でみんなのケーキ皿が小さく踊った。
彼女たちを包む空気は一瞬にして静まり返った・・・・・
シーン・・・・・・
583 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/23(木) 05:21:10.55
0
ミキティがいきなりキレた。
もともと、虫の居所が悪いと些細な事でキレやすくなるタチではあるが・・・・
今日のミキティは何か違う。
いつも以上に短気だし、それでいてなんだか切羽詰まってどうしようも
なくなってしまったかのような・・・・そんな雰囲気も漂わせていた。
「・・・・・・・わ、ワリィみんな・・・・ちょっと余裕なくてよ・・・・・ど・・・・どっから
話しゃいいンだろうな・・・・・」
和気藹々とした空気を一瞬でぶち壊してしまった事を察したミキティは
みんなに謝罪の言葉をかける。
「藤本さん・・・・・」
絵里がミキティを呼んだ。
その表情は険しい。
「・・・・・どうした?」
「真剣な話・・・・・って言ったよね?今・・・・・ってことは今日のメンバーは
これで全員ってこと?」
「・・・・・・・・」
「僕、さっきガキさんに連絡したんだ・・・・・・ガキさん、今日のことは
何も知らなかった・・・・・気まずくて何も返事出来なかったよ・・・・」
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
584 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/23(木) 05:24:25.51
0
その絵里の言葉に、誰よりも過剰に反応したのは他ならぬれいなだった。
「ど・・・・どういうことっちゃ?・・・・・美貴姐・・・・・・ガキさんを・・・・・
仲間外れにしたンか??プレゼントはホントに嬉しいばい・・・・・でも・・・・
れいなはそういうの嫌いけんッ!!」
「違うんだ、れいな・・・・・それに亀も・・・・・聞いてくれ・・・・話を・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
ミキティの一言を最後に、またも静寂が訪れる。
さっきから上がったり下がったりと、あまりにテンションにメリハリが
ついてしまっているせいか、彼女達は気疲れを起こし始めていた。
「・・・・・・・・みんな、ミキティの話を聞きましょう。何かワケがあるみたいです・・・・
そうなんですよね?話して下さい・・・・・私たちは『仲間』なんですから・・・・・」
「こんこん・・・・・」
彼女の、紺野あさ美の一言が静寂だった時間を切り裂いてみせた。
『仲間』・・・・・今の彼女の言葉が、ミキティをどれだけ救ったのだろう。
「ワケがあるんだ・・・・・よっちゃんさんとガキさんを呼んでいないことには・・・・・
よっちゃんさんは演劇部の部長だし・・・・・・ガキさんは演劇部を心の底から
愛してる・・・・・そんな二人の前では出来るワケがない話なんだよ」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
585 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/23(木) 05:27:33.14
0
一同はフォークを持つ手を置いた。
ミキティの口から発せられる一句一句に、只ならぬ気配を感じたのだ。
何か尋常じゃないことを口にするんじゃないか?
そう思うと、話の続きなんて聞きたくなくなってしまう。
その気持ちが誰よりも俄然強めだった絵里は、思わず話題を
演劇部自体のことから逸らそうと、ある人物の名前を出した。
「・・・・・・"小春ちゃん"は?」
「え・・・・・・・?」
「"小春ちゃん"はどうして呼ばなかったの・・・・?」
グワッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!
「っ!!?」
その時、耳を劈くような乾いた音が辺りに響き渡る。
ケーキをのせていた食器が床に落ちて派手に割れたのだ・・・・・
その食器は、さゆみが使っていたものであった。
586 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/23(木) 05:34:28.18
0
「お客様、いかがなされましたか?お怪我はございませんか??」
「ごめんなさい・・・・・・ケーキ皿代を弁償させてほしいの」
店員とさゆみのやりとりを一同は逃げるように見つめる。
さゆみは何食わぬ顔でミキティに言った。
「別にキレちゃあいないの・・・・・チコッと頭に血がのぼっただけなの・・・・・
冷静なの・・・・・・全然ね」
「・・・・・・・・冷静・・・・・・ね・・・・・・・」
あたしも冷静にならなくちゃあな・・・・・・店員がチリトリですくっている
砕け散ってしまったケーキ皿の無残な最期を見て、ミキティは下唇を噛んだ。
そして・・・・店員がその場から立ち去ったのを見計らって・・・・・・
ミキティは言ったのだった。
587 :1:2006/11/23(木) 05:35:03.11 O
「小春は・・・・・“死んだ”よ」
588 :1:2006/11/23(木) 05:36:36.49 O
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
589 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/23(木) 05:40:29.18
0
「・・・・・・・・え・・・・・なんだって・・・・・・?」
「オ・・・・・oi・・・・・・なんだいそりゃ?・・・・・そんなジョーク、ちっとも面白くないゼ」
「アンタ寝坊したんだっけ?ひょっとしてまだ目ェ覚めてないんじゃないのカァ・・・?」
「冗談でも・・・・・そういうことは言っちゃあいけない事だと思いますよ・・・・」
「い、今ごろ小春ちゃんはクシャミ全快やけんね!!さっきのさゆみたく・・・っ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
誰もが信用しないのは当たり前だろう。
それはミキティだってわかっていた・・・・・だが、ミキティのセリフから感じられる
言霊には、冗談や偽りなどはないような気がしてならなかった。
それだけの気迫があった・・・・・彼女達は、内心動揺していたのだ。
小春が死んだ?
そんなバカな。
一昨日の朝、登校している小春を見かけた。
移動教室で音楽の教科書を抱えて廊下を歩いている小春を見かけた。
学校帰りに駅前で他校の生徒らしい女の子と遊んでいる小春を見かけた。
ついさっきまで小春の話題で盛り上がっていた!!
その小春が・・・・・・・死んだ?
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
590 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/11/23(木) 05:43:59.82
0
「嘘なんかじゃあねぇよ・・・」
ミキティは机の中心に右手の拳を持っていった。
何かを握っているようだが・・・・
「美貴は・・・・・美貴とさゆは・・・・・小春の最後を見たんだ・・・・・・アイツさ・・・・・
あたしらに『遺言』を残していったんだぜ・・・・・」
コトッ・・・・・机の上に何かが置かれる。
「小春があたしらに託していったものがある・・・・・その時は気が動転してて
気付けなかったけど・・・・昨日の夜やっと思い出したんだよ・・・・・なんで
気付かなかったンだろーなぁ・・・・・何度も何度も見たことがあったのによォ・・・・・」
ミキティは手を退けた。そこに置かれていたものは・・・・・・
「こ・・・・これは・・・・・ッ!?」
「気がついたか?コンコン・・・・・・観察力に優れてるアンタはすぐに気づくと
思っていたよ・・・・・小春が『ミラクル・ビスケッツ』を使って届けてくれたのは・・・」
『♂』マークに象られた銀色のボタン。
それが示すものとは・・・・
「そう・・・・・寺田先生のジャケットについていたボタンなんだ・・・・・」
ドッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!
924 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/01(金) 07:32:40.74
0
「「「「な・・・・・なんだってえええええええええええええええええええッ!!!!」」」」
誰もが驚いた瞬間であった。このボタンが本当に寺田のものだとするのなら…!!!
「oi、でもちょっと待ってくれヨ・・・・・仮によォ〜…このボタンが寺田のジャケットに
ついていたモノだったとして・・・・・なんで小春が寺田にやられなきゃなんねーんダイ?
それに小春が死んだっつー証拠もないゼ?ちゃんと小春のこと探したのかヨ??」
「・・・・・・見せてやれるような証拠はねェよ。ただ・・・・小春の左手だけが切られたのか
千切られたのか知らねーが・・・・学校の中庭に落ちていたんだ」
「左手・・・・・だけがですか?」
「ゴクッ・・・・・・・ふ、藤本さんはどうしてそれが小春ちゃんの左手だってわかったのさ?」
絵里の質問にミキティは一呼吸の間をおくと、れいなの顔をジッと見つめた。
「な、なんばしよったと・・・・・?れいなの顔に何かついとぅ??」
「おい、れいな・・・・・あんた、気にいってた髪飾りを小春にあげたって、前に
言ってたことがあったよなぁ。それって黄緑と白のチェックのヤツじゃねーか?」
「そ、そうやけど・・・・・どうしてそれを・・・・・・・・・ハッ!!!」
れいなは押し黙った・・・・次の言葉が出てこない。
確かに、以前ミキティには自分の髪飾りを小春にあげたと言ったことはあるが・・・・
その髪飾りの色や柄をわざわざ彼女に説明などした記憶はなかったのだ。
背筋に冷たいものを感じずにはいられない・・・・そして、ミキティは言った。
「・・・・・・・・・・・落ちてた左手にはアンタの髪飾りが通してあったんだ」
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
925 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/01(金) 07:35:13.02
0
ミキティの説明が終わっても、すぐに口を開けようとする者はいなかった。
何かが起きたのかはわかった・・・・・でも頭の中で整理はつかない。
言葉など浮かんでくるワケがないのだ。歳の差があるとはいえ、これまで
当たり前のように近くにいた友人がこの世界からいなくなったという実感がわかない。
だから今できることと言えば、ミキティの顔とテーブルに置かれたボタンを
交互に見ることぐらいだ。
「小春の左手は"そのまま"国見峠霊園の桜の木の下に簡素だが埋葬してきたよ。
なぁ、さゆ。あんたは一緒に来たもんな・・・・今頃安らかに眠ってるぜ。だから証拠も
何もあったもんじゃあねーし、かといってあんた達に見せるためだけに
掘り出してくるわけにもいかなかった」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「〜〜〜〜ッ」
「・・・・・・・・・・・・・」
「っ・・・・・」
「・・・・・・・・・」
ミキティとさゆみを除く5人は唇を噛む思いだった。
そんなみんなを、ミキティはしっかりと顔をあげて見据える。
ミキティの表情は決して弱々しいものではなく、まるで真実に辿りついた
名探偵のような…そういった力強いものが感じられる表情であった。
926 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/01(金) 07:37:55.79
0
「寺田がいったいどんな能力を持っているのかは知らねーがよぉ〜…
小春の『ミラクル・ビスケッツ』に勝てる能力ってのはそうは考えらんねーぜ…
アンタらは小春とマジでやりあったことがないからわかんねーと思うが」
「・・・・・・・・ミキティの話はわかったゼ。小春が・・・・その・・・・死んじまった事を
信じよう。憶測にしか過ぎない段階だが、その犯人が寺田だとも仮定しよう・・・・
でもよミキティ、それでアンタはワタシ達に何を伝えたいンだ?」
「・・・・・・・」
「何かよぉ〜・・・・決心したことでもあるんじゃあネーのか?・・・・・oioi。
『覚悟して来た』って言ってたぐらいだもんナァ・・・・それとも、ただアンタと
一緒に悲しんでくれってだけカイ?」
麻琴の目は、もはやさっきまでのおちゃらけた瞳ではない。
「美貴姐・・・・そうなん?何を決心したと・・・・・??」
「どういう事なのさ!?藤本さん・・・・ちゃんと説明してよ!!」
れいなと絵里が黙っているミキティを急かす。
そして・・・・・・・ついにミキティは重たい口を開いたのだ!!
「美貴は・・・・・・・・演劇部を卒業するッ!!!!!!!!!!!」
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!
927 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/01(金) 07:41:12.33
0
演劇部を卒業するッ!!?
それはいったい何を意味しているのだろうか!!
「な・・・・なんだァ?なんて言ったンよ・・・・・今」
「よくわかりません・・・・ミキティの言ったことが・・・・」
「『卒業』すると言ったんだ・・・・演劇部を!」
「oioiミキティ・・・・・わかって言ってるのかヨ・・・・・・ワタシたち演劇部員が
『卒業』という言葉の使うときの意味を・・・・・ッ!!」
そうその意味とはッ!!
演劇部を"やめる"という事と同意語なのだ!!!
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
「な・・・・・なぜ?」
「小春が殺されたのがキッカケになったっつーのは理由にならないか?それとこれだけは
言っておこうと思う。美貴はスタンド使いである前に・・・・・普通の女子高生でありたいんだ」
「今だって普通じゃないか・・・・・スタンド使いがどうとか関係ないよ」
「普通か?じゃあ殺された小春は普通じゃなかったのか?」
「そ、それは・・・・・っ」
「あたしは小春を殺したのは寺田であり『演劇部』っつー存在だって気がついた。
確かに、まだ舞台に立ちてぇって気持ちはあるし、舞台は最高だと思ってる・・・
でも、こんな虚無感を味わうのはもうゴメンだ。友人を失う虚無感はな・・・・・」
928 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/01(金) 07:43:46.30
0
その時、ミキティの脳裏にふと『後藤真希』の顔が浮かんだ。
彼女は今どこにいるのだろう?後藤真希もまた、演劇部による
被害者であったことは間違いない。
後藤真希、そして久住小春・・・・・このままでは、いずれまた誰かが傷つく!!
「だから・・・・・・美貴は・・・・・・」
迷いはなかった・・・・ミキティの決意はダイヤモンドよりも遥かに硬かったのだ。
「"演劇部をブッ潰す"・・・・・・正義感ぶるわけじゃねーが・・・・・もう誰も
傷つけさせるもんかよ!!それから・・・・・すげぇ勝手で情けないことを言うようだけど・・・・・」
ミキティはゆっくりと立ち上がる。
全員の顔を見渡し・・・・・ミキティはついに立ち上がる!!
「みんなの力を・・・・・・・・・・美貴に貸してくれ!」
ドッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!!!!
929 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/01(金) 07:47:36.00
0
彼女らは押し黙った。
なんということを言い出すのだ・・・・ミキティは!?
演劇部を潰すために演劇部を離れる彼女に力を貸すという事は、部に対する
裏切り行為に加担しろと言っているようなものだッ!!
「美貴に力を貸してくれるっつーなら・・・・・その席から立ちあがってほしい。
けど無理にとは言わない、自分の意思で決めてくれ。でも一つだけ言わせて
貰うよ・・・・あたしは寺田を倒し演劇部を潰すことは『正しい』ことだと信じてる」
皮肉なようだが、演劇部にいなかったら今のミキティに中で芽生えた
『正義』はなかっただろう。
しかし、カタチは違えどその演劇部のために友人が二人も犠牲になったのだ。
もはやミキティには寺田をこのままにしておけるわけがなかった。
「だから"ブッ潰す"!!」
町も、仲間も、友達も!!すべて守ってみせるッ!!!
それが美貴のやり方だ!!!・・・・・ミキティは拳を握り締めた。
ガダッ!!
「!?」
その時、誰かが立ち上がった!!かなりの決断力の早さだ!!!
ミキティは…いや、全員がその人物に注目の視線を浴びせる。
その人物とは・・・・・・!!!
「あ・・・・・・愛ちゃんッ!?」
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
930 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/01(金) 07:49:58.49
0
い、意外ッ!!!
絵里は信じられないという声をあげた。
あの高橋愛が、演劇部を潰すなどという行為に加担するというのか!?
「愛ちゃん、アンタ・・・・・」
ミキティは感嘆する・・・・・
ところが、そこで高橋愛はおかしな行動を取り始めた。
「えぇ〜っと・・・・・お会計っていくら?これって予約席だっけ?席料とか
取られてるン??う〜ん・・・・・・こんなもんで足りるかぁ?」
「・・・・・・・・・・え?」
誰に聞いてるというわけでもなく、愛は伝票に目を通すと財布の中からお札を取り出す。
まるで空気を読まない彼女のセリフに、誰もが呆気に取られていた。
そんな皆を無視するかのように、愛は立ち上がったまま、千円札を一枚
テーブルの上に強く叩きつけたッ!!
バンッ!!!
931 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/01(金) 07:51:51.57
0
「あ、愛ちゃん・・・・・?」
「勘違いすんじゃネー・・・・・あっしはアンタに手を貸そうだなんて気は毛頭ないやよ。
この場にいることに興醒めしただけがし・・・・・ま、興味ないからセンセとかにはチクらんで
おいてやるよ・・・・・・シカシな」
愛はミキティを道端に落ちている犬のフンを見るような目で見つめた。
「アンタにはガッカリやよミキティ・・・・・どんな理由だったか忘れたけど・・・・
舞台を捨てるコトまでしてみせるとはなァ。大スターの夢が聞いて呆れるがし。
次の舞台で主役の座を奪い合えるのはれいなか・・・・・もしかしたら最近は顔出して
こないケド、一気に実力を上げてきた"久住"かもなぁー!!ケッ!!!!!」
彼女はそう言い残すと全員に背中を向け去ってしまった。
高橋愛は・・・・ミキティの仲間にはならなかったのだ!!
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!
932 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/01(金) 07:54:49.39
0
「・・・・・・・・・・・・・・」
高橋愛がいなくなった今、全員の肩に圧し掛かる空気は重い。
次は誰が口を開くのだろう?
それとも、このままだれも口を開かないのであろうか・・・・・・!?
「愛ちゃんは・・・・・・小春ちゃんが死んだなんて認めてなかったよね?」
いや、そんなことはなかったようだ。
少なくとも、ここにいる者たちはミキティと真正面から向き合おうとする意思はある。
声を発したのは亀井絵里であった。
「藤本さん・・・・・・僕はね、演劇部がなかったら今の僕は絶対にいないんだ。
それはみんなだって同じなんだと思うし・・・・・僕は演劇部のみんなを尊敬してる!!
演劇部がなかったらみんなに出会えなかったし、僕は弱虫のまんまだったッ!!」
「亀・・・・・・ッ」
「演劇部があったから変われたんだ・・・・・あそこは僕にとって大事な居場所だッ!!
それに小春ちゃんが死んだっていう話は・・・・僕も認めてないからね。そのボタンだって
寺田先生のものとは限らないよ・・・・そんなボタンを使ったメーカーなんていくらでもある!」
ギィッ!!!
絵里は思いっきり椅子を引くと、深く深く腰をかける。
それは"席を立ち上がる意思はない"という心の現われであった。
「はっきり言わせてもらうよ・・・・今の藤本さんは言ってることもやってることも
ムチャクチャだ・・・・・残念だけど"席を立つ"人はいないと思うな・・・・」
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
933 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/01(金) 07:58:49.78
0
「亀ちゃんの言う通りだぜ・・・・・oioi」
さらに小川麻琴が続いた。
「アンタは小春が死んだその瞬間を見たのかも知れない・・・・・でもよォ〜それだけじゃ
なんの説得力もねぇンだよなぁ・・・・・それでも、もしアンタの言う事が事実だと
したらよぉ・・・・ミキティは誰を相手にする事になるのか理解してるのカイ?
アンタも言っていたことだが・・・・小春を殺したほどの相手なんだゼ・・・・・・??」
「でも・・・・・だからって黙ってられることじゃねー。どんな大人しいヤツだって、
肉親が殺されれば刃を握るだろ・・・・美貴の場合は肉親の範囲が広いのかも
しんねーけど・・・・それでも、美貴はそれが間違ったことだとは思っていないッ!!
あたしは町を、みんなを守りたい・・・・自分の信じた『正義』を貫きたいんだ!!」
「守りたい・・・・・か。“アイツ”は言っていたナァ・・・・そういうヤツから死ねってよォ。
アンタは結果が見れてない。正義だなんていう理想だけで町を守れるかヨ・・・・・
みんなを守れるかヨ・・・・・・oioi」
「ま・・・・・こと・・・・・・?」
ミキティは何も言えなかった。
だが、確かに麻琴の言う通りである。
理想だけでこの世界を生き抜く者などいないのだから。
もしかしたら、仲間は手に入らないのかも知れない。
ミキティは一人で戦ってゆくしかないのだろうか・・・・・・・・
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
965 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/02(土) 01:45:22.76
0
「しかし・・・・・ダ」
ガタッ!!
それを誰が予想しただろうか。
予想できたであろうか。
麻琴はミキティに対してかなり否定的であったハズ・・・・・その麻琴が・・・・・
その麻琴がッ!!!
立ち上がっているではないかッ!!!!1
「ワタシも元々よォ〜演劇部を"ブッ潰す"目的で演劇部に入った女さ・・・・
寺田にスタンド使いにされた時はマジでビビったけどよォ〜・・・・それもこれも
すべてはこの時のためだったと・・・・・・」
バンッ!!!
「ワタシは解釈したゼ・・・・・・ヤツは自分で自分の首を絞めたってことダナ・・・・!!」
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!
966 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/02(土) 01:47:38.35
0
「な、なんだよそれッ!!まこっちゃん!!?」
絵里は驚愕の声をあげた。
ムチャクチャなことを言っていたミキティについていく者がいたという事にも
驚いていたが、なによりもショックだったのは麻琴が初めから演劇部を
潰す目的でその身を置いていたという新しく知った事実であった。
「アンタについていくぜミキティ・・・・・oioi、コンコンはどーするんダイ?」
麻琴は座ったままでいるあさ美に促した。
彼女は一瞬下を向くが、すぐに顔をあげる。
「やれやれ・・・・・しょうがない人達ですね・・・・・でも・・・・・・・麻琴に
なんと言われようとコンコンは演劇部をやめませんよ」
「なッ!!」
「だ、だよねッ!!紺ちゃんはそんなこと言わないよねッ!!!」
強かな態度のあさ美に絵里は安心感を覚えた。
やはり彼女を見ていると安心する・・・・・きっと彼女は、自分に不安感など
与えやしないだろう・・・・・絵里は心の底から安堵した。
だが、その安心感はすぐに崩れてなくなってしまう・・・・・・
あさ美は、ゆっくりと静かに立ち始めていたのだ!!
「ミキティは外から演劇部を潰す…コンコンと麻琴は内から演劇部を潰す…
つまり・・・・・・・・ハサミ討ちの形になりますね・・・・・・」
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!
967 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/02(土) 01:49:03.13
0
「グラッツェ・・・・・・・コンコンッ!!」
「お・・・・・oioiィッ!!びっくりさせやがって!コンコンめッ!!!」
「作戦は完璧にしませんと・・・・・ガムシャラに突っ込むようなのはダメです。
それでは勇気と言えませんからね・・・・・・・ノミと同じです」
麻琴とあさ美・・・・・・この二人は影で何かコソコソとやっている事には
以前からなんとなくミキティも気付いていたが、自分の仲間になると言ってくれた今、
彼女らが何をしようとしていたのか・・・・・何となくだがわかった気がした。
「紺ちゃんッ!!?」
絵里には信じられなかった。
どうして紺ちゃんまで立ち上がるんだ!?そう思った。
まったく理解できない。
「ふ・・・・・二人ともどうかしてるよッ!!完全に孤立するかも知れないンだよ!?
いやそれだけじゃない!!これが寺田先生に知れたら・・・・・ぜ、絶対ダメだッ!!
そしたら誰が紺ちゃん達を止めに来ると思ってるのさ!?」
「亀ちゃん・・・・・ゴメンね」
「ご、ゴメンね・・・・・・って・・・・・・嫌だよ!!謝る前に考え直すんだーッ!!!
演劇部のこと嫌いになっちゃったの!?それとも・・・・・初めっから演劇部なんて
どーでも良かったの!?答えてよッ!!紺ちゃんンンっ!!!」
「・・・・・・・っ」
968 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/02(土) 01:51:00.48
0
「いや、そんなことはないと思うの」
ガダッ・・・・・・
席を立つ音が聞こえた。
絵里が片思いしている娘の声と一緒に・・・・・
あさ美の代わりに絵里の質問に答えたのは道重さゆみだった。
「さゆ・・・・・・さゆまで何やってんの?へ、変な冗談はやめてさ・・・・・・ほら座ってよ。
僕、チョコレートパフェが食べたいな・・・・・・一緒に食べよう・・・・・・だから・・・・ほら・・・」
絵里の声は次第に震え始めた。
あさ美も行ってしまうというのだ・・・・・・
絵里の心には、もう安心感などというものはなくなってしまった。
さゆみはカバンを両腕で力強く抱えて言う。
「さっき藤本さんの言ったことはまったくもって正しい…どんなに大人しい人だって、
肉親が殺されれば刃を握る…さゆみにはそれが『言葉』ではなく『心』で理解できたのッ!」
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!
969 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/02(土) 01:52:24.92
0
そんなバカな。
これは・・・・・・悪い夢だ。
絵里は目の前の風景に疑問を抱き始めた。
いつも一緒にいた人たちなのに・・・・・いま・・・席を立ち上がっている人達はッ!!
自分の大事な居場所を踏みにじろうとしているのだ!!
それが現実だなんて絵里は信用したくなかった。
みんなを信用したかったからだ。
しかし、現実というのはチョコレートパフェのような甘い世界ではない。
「れいなは・・・・・・どうするんです?」
あさ美が黙ったままのれいなに優しく微笑む。
れいなの表情は、そんなあさ美とは対照的に曇っていた。
「う・・・・・・・・ううぅぅぅぅ・・・・・・・・わ、わからんばい・・・・・どうしたらいいと?
美貴姐・・・・・・それにみんな・・・・・・教えてほしいっちゃ・・・・・・れいな・・・・・
立った方がいいんやろ・・・・・か・・・・・・?」
れいなは、まるで植木の影で震えあがるネコのように小さくなっていた。
どんなに強くて、どんなに負けず嫌いな性格でも…やはりそこは、
まだ16歳になったばかりの若すぎる娘なのだ。
970 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/02(土) 01:54:19.50
0
「なんで誕生日迎えたばっかやのにこんな決断しなきゃいかんと・・・・・?
れいな、わからん・・・・・決められン・・・・・・美貴姐・・・・・そ、そうだ!美貴姐に
決めてもらうたい!!れいな、美貴姐が言うことなら・・・・・・ッ」
ミキティはそんなれいなが見てられなかった。
「忠告はしとくぜ、れいな。アンタには向いてない」
「えっ・・・・・?」
「けど本心では美貴と一緒に来てほしいと思ってる・・・・・あんたがいれば
百人力だ・・・・・そう感じている!!でもよ、れいな・・・・・・これから美貴は演劇部の
『友達』を傷つけることになるかも知れない・・・・いや、それは避けられないだろうよ・・・
れいな、アンタには友達を傷つける覚悟があるのか・・・・・・?」
「う・・・・・・・うぅぅぅぐぅ・・・・・・・・・・・・・・っ」
「美貴はできてる!!」
友達を傷つける。
れいなにそんな事ができるワケがない・・・・・
れいなにとって友情とは、この世の何よりもかけがえのないものだったからだ!!
だかられいなは・・・・・うつむくことしか出来なかった・・・・・
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
971 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/02(土) 01:57:44.15
0
「さぁ行こう!コンコンッ!麻琴!!さゆッ!!!あんま立ちッぱでいると
周りの客に変な目で見られちまうからな・・・・・あたしらは場所を変えるぜ!!」
「そうだナ・・・・・」
「そう・・・・・ですね」
「・・・・・・・」
それぞれ財布の中からお金を取り出し、テーブルの上に置いてゆく・・・・・
絵里はその時、さゆみだけを見つめていた。
(僕は・・・・・・どうして演劇部に入ったんだっけ・・・・・そうだ、さゆのことを
追っかけてあの部活に飛び込んでいったんだ・・・・・つらい事もあったけど・・・・
それがあったから僕は前より自分に自信が持てるようになったし、さゆのことも
もっと知ることができたんだ・・・・・もし・・・・・いま離れ離れになったら・・・・・)
絵里はさゆみに好意があった。
さゆみに対して男の子の心を持っていた。
そうだ・・・・・いつだったか、自分はさゆみを守ろうと決意したのではなかったか?
さゆみの『王子様』になろうとしたのではなかったか!?
(で、でも・・・・・この気持ちは・・・・・演劇部に入っていなかったら生まれなかった
気持ちなんだ・・・・・・さゆへの想いには誇りがある・・・・・だけどッ!!!)
絵里は演劇部の仲間達の顔を思い浮かべた。
ここから去った高橋愛、ここにはいない新垣里沙・・・・・
さゆみのためだけに入った演劇部で、絵里は量りになど掛けられないものを
いくつも手にしていたのだ!!!
やはり演劇部を捨てることはできない・・・・・・彼女の想いは俄然強めだった。
972 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/02(土) 02:00:45.86
0
絵里が心の中で葛藤し、自分の中で決着をつけていた頃・・・・・
れいなもまた、同い年のさゆみを見つめていた。
さゆは気が弱い子っちゃ。
それを悪く言うわけではないが、れいなはそう思っていた。
そして、それは間違いだったことを今知った。
この究極ともいえる選択肢を、さゆみは決断してみせたのだ。
それなのに自分といったら情けないことこの上ない・・・・
スタンド使いになってからというもの、れいなは闘いにおいて
負け知らずといっても過言ではない。
だが、それがなんだというのだろう?
自分はどうすればいいのか決められないのだ。
自分の気持ちがわからない。
自分の意思を持ったさゆみの方が遥かに強い・・・れいなは視界によどみを感じた。
それなら、ついていけば良かったのか?
しかしそんな事をすれば、演劇部の友達や後輩を傷つけることになる。
やはり、れいなには選ぶことなど出来なかった。
973 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/02(土) 02:03:01.67
0
「・・・・・・・・・・」
そんな時だ。
「・・・・・・・・・?」
財布をゴソゴソとカバンの中にしまうさゆみの白いボアジャケットの袖から・・・・
「あっ・・・・・・」
懐かしいものが垣間見えたのだ。
(あ・・・・あれは・・・・・れいなが小春ちゃんにあげたお気に入りだった髪飾りばい・・・・
なんでさゆが持っとぅ・・・まさか美貴姐の言う通り・・・・本当に小春ちゃんは・・・・・・ッ)
れいなの中で、不透明だったものが徐々に色をつけ始めた。
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
32 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/03(日) 04:31:03.67
0
「行くぜみんな!!ここを離れたら美貴たちは裏切りモンになるッ!!!
・・・亀、れいな。残念だけど・・・・・もう、アンタ達と顔を合わせたくはねーな」
ミキティは二人に冷たく言い放った。
しかしそれは、ミキティに同調しなかった二人を"嫌いになった"という意味ではない。
次に会うことになる時が来るとすれば・・・・・それは敵同士、という事になるだろう。
そんなことがないことを祈るばかりのミキティだったが、その可能性は極めて低い。
・・・・ドゥ・マゴから出て行こうとする五人の後姿を見て、
絵里は彼女たちによく聞こえるような通る声で言った。
「なぜだ・・・・・正気じゃないよッ!!どういう物の考え方をしてるんだ!?
藤本さんだけじゃない・・・・まこっちゃんも!紺ちゃんだって!!いったいどこに
小春ちゃんが死んだなんて証拠があるんだ!!さゆも・・・・よくわかんないけど
さっき小春ちゃんは来てるとか言ってたじゃあないかッ!!!」
絵里の額に汗がにじむ。
彼女は恐れていたのだ・・・・・仲間だと思っていた友人が
これから敵として自分の居場所を潰そうとしていることに。
「ああ〜!!絶対にタダじゃ済まされないよッ!!こんなことッ!!!…そりゃあ、
小春ちゃんのことは僕らに無関係な話ではないですよ?けど、他にもやり方は
あるってもんだよ!!みんなで探すとかさ!!何も演劇部を敵に回す必要なんて
どこにもないじゃないか!!僕には理解できないッ!!」
怒りをあらわにする事でしか、その恐怖を覆うことは出来なかった。
その怒りすらも、どうしようもない気持ちでいっぱいだ。
33 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/03(日) 04:32:59.46
0
「でも、れいなだけでも残ってくれて良かった・・・・そうだ、今から小春ちゃんを
探しに行こう?小春ちゃんを探し出せば藤本さんは・・・・それにさゆだって・・・・」
「あの・・・・・髪飾りは・・・・・さゆが左手につけてる髪飾りは・・・・・」
「え?」
「れいなが小春ちゃんにあげた髪飾りっちゃ・・・・・・美貴姐は・・・落ちてたとか言う
左手にあの髪飾りがつけてあったから・・・・・それが小春ちゃんだとわかったって
言ってたばい・・・・・」
「・・・・・・・・・・・れいな?」
れいなは・・・・・・・ゆっくりと腰を持ち上げ始めた。
その視線は、ドゥ・マゴを出て行かんとするさゆみの左手・・・・・
そう!小春にあげた髪飾りにあったッ!!
「ずっとつけててくれたンか?・・・・小春ちゃん・・・・・れいながあげた髪飾りを・・・
ずっと大事に身につけていてくれたんか・・・・・・っ!!!!?」
34 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/03(日) 04:37:24.07
0
ガダァッ!!!!!!!!!
「れいなッ!!!!!」
危機を感じて叫んだ絵里と、れいなが立ち上がりミキティたちの
背中を追いかけたのは、ほぼ同時であった。
「 美貴姐ェェェェェェェェェェェェッ!!!!!行くとッ!!!
れいなも行くッ!!行くっちゃよォォォォォッ!!!!!!
」
…れいなが涙をしみ込ませた声はミキティだけではなく、
何も関係のない客や店員にも響き渡っていた。
「さゆの左手についてる髪飾りは・・・・・れいなが小春ちゃんにあげたものッちゃ!!!
大事な友達にあげたモンたいッ!!黙っておれん・・・・・・ッ!!!友達がッ!!
友達がやられたってのに黙っておれんとぉ!れいなはぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!」
ガシィッ!!…ミキティに駆け寄ったれいなはその勢いのまま彼女にしがみつく。
「れいな・・・・・よく決断してくれた・・・・」
「よしよし、なの」
「うぅ・・・・うぅぅおぅおぉうぉぅ〜・・・・・・!!!」
「し、しかしよぉ・・・・・ちょっと声がでか過ぎだったんじゃあねーカイ?
みんな見てるゼ・・・・・こりゃ注目の的ってヤツだぜ、oioi」
「目立つのは舞台の上だけでじゅうぶんです・・・・さぁ、いきますよ〜・・・みなさん」
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!
35 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/03(日) 04:42:42.71
0
そして・・・・・そこには絵里だけが残った。
今日は最低な日だ。
ついさっきまでの楽しい時間はどこへ行ったのだろうか?
絵里は携帯電話を手に取った。
「もしもし・・・・・ガキさん?え、さっきのメール?あぁ、気にしないくていーよ・・・・・
ねぇねぇ、今からドゥ・マゴこない?なんか面白い話とかしてさ・・・いや意味わかんないとか
言わないでよ・・・・・・うん、うん・・・・・・え?別になんもないですよ?・・・・・いつもの僕だって・・・
みんなのエリックかめりんだよ・・・・・うん・・・・僕“ひとりだけ”・・・・じゃあ・・・・待ってるからね・・・」
ピッ
「このイチゴショート・・・・・しょっぱいなぁ・・・・・・・っ・・・・・・さっきまで・・・・・
すっごく甘いと思っ・・・・・て・・・けど・・・・・・っ」
36 :1:2006/12/03(日) 04:44:49.31 O
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
37 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/03(日) 04:48:38.86
0
夕焼けが沈む頃になると、皆それぞれ…希望を信じて帰路についた。
ミキティの隣には、彼女と決意を供にしてくれたさゆみが歩いている。
チラリとさゆみの左手を見やると、やはり緑色の髪飾りを通してあるようだった。
二人っきりだ・・・・チャンスは今しかない。
辺りに人気のないことを確認したミキティは、どうしても訊かなくては
ならない質問を投げかけた。
「なぁ〜・・・・・・こんなこと、正直訊きたくはないんだけどさ」
「・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・掘り返したのか?オメーよぉ・・・・・」
ミキティは足を止めた。
それに合わせて、さゆみも足を止め、ミキティを振り返る。
38 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/03(日) 04:52:53.16
0
「なんのこと?」
「とぼけんじゃあねー。ドゥ・マゴでれいなが駆け寄ってきたとき気付いたんだよ・・・・
その左手に通してる髪飾りによォ・・・・・それは小春が左手につけてた髪飾りだよなぁ?
違うのか?どうなんだよ・・・・・・さゆ!!」
「・・・・・・」
「その髪飾りは・・・・・・あたしとアンタで小春を埋めに行ったときッ!!
左手に通してやったまんま埋葬したじゃあねーのか!?なんで土の下で
眠ってるハズの髪飾りがテメーの、それも左腕に通してあんだァッ!?
だいたいこの『爪』はなんだよッ!?オルァッ!!!!!!!」
グワシィッ!!!!
ミキティはさゆみの左手をつかんで持ち上げた。
五本の指先にある爪は、ガーゼやバンドエイドで手当てが施してある。
それは左手だけではなく、カバンを持っている右手の指も同様だった。
「掘り返したんじゃあねーのか?固い土を素手で掘ってよォ〜・・・・・
“連れて帰ったり”したんじゃあねーのかッ!?」
「・・・・・・何を言ってるの?爪を噛みすぎて深爪しちゃっただけなの。
今度からは気をつけると思うの」
「それじゃあオメー・・・・・ずっと大事そうに持ってるそのカバンはなんだ?
ドゥ・マゴでも、その後でも・・・・・アンタは大事そうにそいつを抱えてたよなァ??
何か取り出すよーなそぶりもねェし・・・・・・こん中には何が入ってんだろうなァッ!!」
「ッ!!!!!!?」
39 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/03(日) 04:58:17.42
0
バァーッ!!ガッ!
ミキティはさゆみの左手から手を離すと、強引にカバンを引ったくろうと
そのストラップを引っぱる!!!
さゆみは嫌がっているのか、両手でカバンをつかんで離さない。
「だ、ダメダメ!離してほしいのッ!!」
「バレバレだな・・・・・そんなに嫌がるっつーことはよぉ〜・・・・美貴には
見せられないような何かが入ってるってことの証明になるんだぜッ!!!」
カバンのジッパーがフリーになった隙をつき、ミキティは一瞬だけ力を
緩め、ジッパーをつまんで勢いよく開くッ!!!!
ズ ビ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィィ ッ ! ! !
「な・・・・・・ッ!!!!!!!」
「・・・・・・」
なんと・・・・・そこには・・・・・
40 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/03(日) 05:00:19.00
0
「は、箱・・・・・・?しかもプレゼントの包装がされた・・・・・・・」
ミキティは唖然とした。
勘違い・・・・・だったのか?
てっきり、小春が死んだショックでさゆの頭がおかしくなったんじゃあないかと
思っていたのだが…
「さゆ・・・・こいつは・・・・・・?」
「・・・・・・れいなの誕生日プレゼントなの。今日みんなと会う前に選んできた・・・・
でも、あんな空気だったから渡すの忘れちゃったの。いけない、いけない・・・・・
今度れいなに会った時はちゃんと渡さなきゃいけないの・・・・・ふふふ・・・・・」
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
「な、なんだ・・・・・・そういうことかよ・・・・・・」
どうやら、すべてミキティの勘違いであったらしい。
彼女は自分に力を貸してくれると言ってくれた友人に対し、
軽率な行動をしてしまったことを恥じた。
41 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/03(日) 05:03:31.71
0
「わ、ワリィ・・・・・・許してくれ」
では、あの髪飾りを小春の左手と一緒に埋めたのは見間違いだったのだろうか?
ミキティとしては、そんなハズはないと思うのだが・・・・・
確認がとれなくなった今ではそれを知る術はない。
そんなことのために小春を掘り返すわけにもいかないからだ。
「と、とりあえず・・・・・またな。美貴、こっちだからさ・・・・・・それと・・・・
今日はありがとう。よっちゃんさんやガキさんには絶対内緒だぜ?
あと中等部の連中にも・・・・・・」
さゆみはカバンを開けたままコクコクと頷いた。
じゃあな、と手を振るミキティが見えなくなるまで、さゆみはその後姿を
見送り続けていた。
42 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/03(日) 05:04:35.35
0
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
さゆみは何も言わない。
何も言わずに、ただ開けっ放しのカバンの中を見た。
そこにはれいなへの誕生日プレゼントが入っている。
「ホント・・・・・・・・・・・・・・・渡さないといけないの」
ガサッ!!
れいなへの誕生日プレゼントの下から、白く華奢なモノが覗いた。
ガササッ!!!
さゆみはそれを引っ張り出す・・・・・・・
優しく、壊れ物を扱うように・・・・・それでいて強く握り締める。
43 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/12/03(日) 05:05:48.77
0
「せっかく一緒に選んだンだもんね・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・。
「 ね 、 小 春 ち ゃ ん ・・・・・・・・・・ふ
ふ ふ ふ ふ ふ ふ ふ ふ ふ ! 」
TO
BE CONTINUED…