165 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:18:54.90 0


 真金色の狂風  〜 ブラック・サバス 〜



その組織の名は『パッショーネ(情熱)』という。
構成員は761人。
このネアポリスの町のホテル・港の運送会社・建築会社・葬儀屋・レストランなどを
支配し、賭博や麻薬のあがりはとてつもなく大きい・・・・・


裏の社会とも呼べるその世界に、今!!

一人の娘が飛び込もうとしているッ!!!

大いなる目的を胸に秘め!!

日本人の娘はその地にやってきたのであるッ!!!!


「おねーちゃんを探し出すにはギャング達と敵対することよりも実際に
『組織』に入団して内側から調べた方が格段にはやい・・・・・たとえ連れ去ったヤツが
別の『組織』だったとしても・・・・莫大な情報が管理されているはずだぽ!!
だからッ!!ごとーは『ギャング』になるッ!!!!!」



ドッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!


166 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:20:52.96 0


ごとーはそびえ立つその建物を前にして、立ち尽くしていた。
赤レンガ造りの、大きくて広い建物。

そう・・・・・『刑務所』だぽ。

空港で出会った奇妙な『マンガ家の先生』は言っていた。
刑務所で、ギャングになるための面接を行っているらしい・・・・・それは本当なの?
『刑務所』ってのは警察官がいっぱいいて、悪いヤツを捕まえるために
日夜、休む間もなく東奔西走しているんじゃないの?

そんな場所で、ギャングになるための面接を行っているなんて・・・・
悪人を捕まえる警察が悪人を増やしてどうするんだろう。
うぅむ・・・・考えれば考えるほど奇妙だぽ。

もしかしたら、マンガ家の先生にバカにされているのかも知れない。

・・・・・だとしたら、どうする?
真実を調べるために、町で情報収集でもしてみる?
どうすれば『ギャング』になれますか・・・・って?


167 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:22:39.64 0


はッ!!


バカげてるぽ。
非常にバカげているッ!!!

相手は『イタリアンマフィア』・・・・『ギャング』なんだ!!!
日本人の女が何か嗅ぎまわっている・・・・・・そんなことが噂にでもなろうもんなら!!!
もはや・・・・・おねーちゃんどころじゃあなくなってしまうぽ・・・・・ッ!!!!

だからといって、ごとーは立ち止まっているわけにも行かない。
それに・・・・・あくまでこれはごとー個人の感じた事だけど・・・・・
あのマンガ家の先生、嘘は言っていないような気がする。
今のごとーは、ちょっと他人を信用しすぎなんだろうか?


「とにかく、今は先生の話を信じるしかない・・・・『起承転結』・・・・
何か行動を起こさなければ、先には進めないのだから・・・・ッ!!!!」


でも「ギャングの面接しに来た」なんて言って、いきなり手錠を
はめられたりしないだろうなぁ・・・・?



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・


168 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:25:15.79 0


刑務所に入り、いざ警官の前に立つと、さすがに物凄く緊張してしまった。
なんでかな、別にまだ悪いことはしてないんだけど・・・・
やっぱあの紺色のビシッとした制服が、ごとーの神経を視覚的に
引き締めているんだろうか?


「どうかなさいました?」


一人の女刑務官が、ごとーに近寄ってきてそう言った。
言うんだ・・・・意を決して・・・・・ギャングの面接を受けさせてくださいと・・・・

「・・・・・・・ッ」

「・・・・・・・・?」


・・・・・んあぁ〜ッ!!本当に大丈夫なのか!!?

言った瞬間、手錠されて現行犯逮捕とか言われて取調室に
連れてかれたりしないだろうな・・・・!!!
乾いた口の中を唾で無理やり潤す。
な、なんでこんなことでごとーはビビッてるんだ?
日本のヤクザとケンカする時は全然びびんなかったのに・・・・

やっぱり、ここにいる警官が一応全員『正義』の象徴だからだろうか?


169 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:27:07.75 0


「あの・・・・お嬢さん?」


女刑務官はごとーの顔を覗きこむ。
んぁ・・・・黙ってたってしょうがない・・・・

言うしか・・・・ないッ!!!


「め、面接・・・・」

「・・・え?」

「ギャングの『面接』・・・・・受けたいんですけど・・・・」

「は?面接??」


女刑務官は訝しげな表情でごとーを見た。
何をいってるんだ、コイツは・・・・そんな目をしている。

なんか・・・・風の流れがおかしいぞ・・・・
本当に面接なんてできるのか!?


170 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:28:33.07 0


「あ、そういうこと」


女刑務官の表情がパッと変わる。
その中には、笑みまでこぼれている様だった。


「あなた、見たところ日本人のようだけど・・・・単語、間違ってるわ」

「・・・・・たんご?」


単語が間違ってるだって?
んぁ・・・・・いったい何の話だろう?
女刑務官は言った。

「『面会』と言いたかったのね、あなた。この国には来たばかり?
単語は間違ってたけど、発音と文法はなかなかうまいわよ〜」

「え、いやその『面会』じゃなくて『面接』なんですけど」

「はいはい、わかりました。『面会』はこちらの塔じゃないわ、隣の塔よ。
ちょうどあっちに行くついでだから案内してあげる・・・・・ギャング・・・・彼のことね?
あなたのような日本人の女性がいったい何故彼の面会に訪れたのか気になるけど・・・・・」

「い、いやだから面会じゃなくて・・・・」



171 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:29:14.99 0


ごとーの声が聞こえているのかいないのか、女刑務官はスタスタと
前を歩き始めてしまった。


なんだかおかしなことになってしまったな・・・・

面会なんかして・・・・どうするんだよorz



ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ・・・


172 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:31:53.02 0

「荷物・腕時計!!ポケットの中の物を全て、机の上のトレイの中に
出してから奥に進み、ボディ・チェックを受けて下さい・・・・」

ズイッと出された銀のトレイの中に、ごとーは言われるがまま荷物を置く。
と言っても、大きい荷物は昨日から泊まってるホテルにすべておいて来たので
持っているものはサイフとか、エイプのキーホルダーといった小物だけだったりする。

しかし・・・・こうも貴重品を外して置いていくってのは落ち着かないぽ・・・・
ヂャラヂャラと腕時計やら何やらをトレイの中に入れてるごとーを
二人の警官がジーッと見ているようだ。
その手には、映画とかで見たことがある大きな鉄砲が抱えられていた。
なんだか・・・・無言の威圧感ってのがあるなぁ・・・・

すべての荷物を置き終えると、赤いランプのついた鉄格子が音をたてて
開かれた。


ガッシャアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!


その中に、さっきここへと案内してくれた女刑務官が佇んでいる。
彼女は寄ってくると、ごとーの身体をベタベタと触りだした。

「ちょ!!」

「ボディ・チェックです!!大人しくして下さい」

「んぁ・・・・はい」

ごとーが両手を挙げると、女刑務官がポンポンとごとーの衣服の・・・
特にポケットの辺りは重点的に軽く叩いて調べ始めた。


173 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:34:14.62 0


「奥のゲートをくぐると囚人番号N−28『ポルポ』の監房があります。
廊下をまっすぐ歩いていって下さい」


んぁ・・・・どうしよう。

流れでこうなっちゃったけど、面会なんかしてどうするんだごとーは・・・・
やっぱり先生の言っていたことはデマだったんだろうか。

つーか、この面会ってまさかお金かかったりしないよね?


「部屋は強化ガラスによって遮られておりますが会話は出来ます。
ガラスが割れる心配は無用ですが、触れることは禁止されています。
何か物を渡すことも、もらうことも禁止されています。面会時間は15分です」


女刑務官は業務的にツラツラと述べた。
なんか引っかかるな・・・・監房?部屋?強化ガラス?
その時、ごとーはふと「奇妙だな」と思った。


174 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:36:05.84 0


「あなたがゲートをくぐったら、あのゲートは閉じますが、何かあった時は
大声で叫んで下さい」

「あの・・・・・」

「なにか?」

「イタリアって・・・・牢獄で直接面会するんですか?面会室とかじゃなくて?」

ごとーの質問に、女刑務官は扉のスイッチに指を乗せ、小声で答える。
それは答えでもなんでもなかったけれど・・・・・

「あなた、彼を知らないの?」

「・・・・・・・・・・・」


グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!


ごとーが何かを言うのを待たずに、女刑務官は鉄の扉を開け放った。
彼女はそれ以上何かを聞くつもりはなかったようだ。
面会時間は15分・・・・・か。

面会って・・・・・話すことなんてないけれど・・・・・

今は先へ進むしかない・・・・・ぽ。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・


175 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:39:04.55 0


「んぁ・・・・・」


薄暗い廊下に足を踏み入れたごとーは、その光景に言葉を失った。

な・・・・・・んだ・・・・この壁に彫られた人の顔みたいなオブジェは・・・・・
右の壁に一つ、左の壁に一つ、正面の行き止まりに一つ・・・・・
全部で三つあるぽ・・・・

そして少し先の右側の壁の奥から、光が漏れている。
あそこが女刑務官の言っていた『部屋』なのかな・・・・・?


ガシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!


たった今通ってきた鉄の扉が、重たい音をたてて閉まった。
その音にちょっと驚いて、思わず振り返ってしまう。


・・・・・・ここ、刑務所だよな・・・・


イタリアの刑務所って・・・・・・日本と違うのか?
と言っても日本の刑務所に入ったことはないから、定かではないけど・・・・・
映画やドラマで見たそれと、なんだか全然イメージが違うぽ。


176 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:42:36.39 0


ごとーはさらに足を進め、部屋の前へ向かう。
そして部屋から漏れる四角い明かりの中心に、ごとーは立った。

「・・・・・・・・・なんだ、ここ?」

強化ガラス越しに見える光景は、ごとーの予想を裏切った。
小さな机に照明スタンド、部屋の壁にかけられた二つの額縁、トイレ、
そして・・・・・大きなベッド。

トイレとベッドはいい。
机も、まだわかる。
でも絵画はちょっと変じゃあないか?
明らかに私物じゃん。
ここ、牢獄でしょ??
それに・・・・何よりもおかしいのは・・・・・・・

「誰もいない・・・・・?」

どういうこと?
外出中・・・・?いや、そんなバカな。
牢獄に収容されてるってことは、ここから出ることは許されていないってことだ。
じゃあ・・・・囚人の『ポルポ』ってヤツはどこに・・・・?

「?」

ごとーは部屋の中をガラス越しにキョロキョロと見渡す。
思わずガラスに手を触れてしまいそうになり、さっと身を引いた。

その時だ。


177 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:43:54.20 0





      『 手 術 で も し た の か ね ? そ の 首 ・・・・ 』









178 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:45:24.62 0


!!!!?

なんだ今の野太い男の声は!?
辺りを見回してみるが・・・・当然ごとー以外の人間はいない。
じゃあ部屋の中?
で、でも部屋の中には人の姿は見えな・・・・・・

「・・・・・・ッ!!?」

何か動いたぞ・・・・・視界で何かが動いた・・・・間違いなく!!!


ズモオォォォォォォォォォォォォォ・・・・・・


「!!!」

信じられない光景だった。
ゆっくり、ゆっくりと・・・・・それは独りでに起き上がっていく・・・・
い、いいや・・・・独りでになんかじゃあないッ!!
ベッドだと思っていたそれには、気付けば手が生えていた。
足も生えていた。
そして、大きな頭部が存在していた。

そうか、これは・・・・・

初めから『ベッド』などではなかったんだ!!!


グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!


179 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:48:25.27 0


物凄い巨体だった。
巨体・・・・いや、ここまでいくとほとんど肉の塊としか思えない!!
いったい、ごとーの何倍あるんだ?

こんなやつ・・・・・初めて見たぽ・・・・・ッ!!!

なんにしても、こいつが・・・警察に捕まったギャング!!
でもどうやってドアからこの部屋に入ったんだろう・・・・・・?


「その首の傷跡・・・・・手術でもしたのかね?一部分だけ、まるで線を引いたように
皮膚の色がかすかだが濃くなっている・・・・・・しかし珍しい客人だ・・・・それもかなり
若い・・・・東洋人の女性がいったいこのわたしに何の用かね?ブフゥゥゥゥ〜」


ギョロンとした小さな目で、そいつ・・・囚人の『ポルポ』は
ごとーを見下ろしていた。
用はない・・・・けど・・・・・何か答えないと・・・・・


「・・・・・・・・ちょっといろいろ手違いがあったんだ」

「手違い?なにかね、それは」

「さぁ・・・・気付いたらここにいたぽ」



180 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:51:03.45 0

そう、ごとーはギャングの面接を受けに来たハズなのに、
面会と勘違いされてここに来てしまったのだ。
だから、用なんてない。
そもそも、この大きな彼と顔を合わせるのも初めてなんだから。

「手違いか・・・・フム。手違い・・・・・ブふゥ〜」

「?」

ポルポは唸りながら巨体から生えた手を石造りの壁にあてがう。
すると壁に切れ目が入り、まるで扉が開くようにそこが開いた。
中はまるで冷蔵庫みたいだ。ワインやチーズ・・・・ジャムなどが並んでいる。
扉が開くように・・・・いや、それは間違いかもしれない。

あれは扉なんだ・・・・壁に見せかけた・・・・・・ッ!!


「どうして監房の中に、こんな飲食物を持ち込んでいるのか?
そう言いたいのかね?ブふ〜」

「んぁ・・・・・イタリアの文化はまだよくわからないから・・・・・日本とは
ずいぶんと違うみたいだけど」

「そうか、まぁ日本にはあまり興味がないからどうでもいいがね・・・・ブフゥ〜・・・・
何か飲むかね?ワインなんかどうだ?極上のソアーヴェがある・・・・・高級ワインは
だいたい『赤』に偏ってるから『白』の高級ワインを飲める機会はなかなかないぞ」


ポルポがごとーにワインを勧めてきた。
お酒・・・・・飲んでみたいけど、ごとーはまだ未成年だし、こんな埃臭い廊下で
ワインを立ち飲みしたって美味しくないに決まってる。


181 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:54:52.76 0


「・・・・何も渡してはならないし、何ももらってはいけないと言われてるぽ」

「ブフゥ・・・・言ってるだけだよ。人間とは言ってることとやってる事は
違うんだな。天と地ほど・・・・と言ってしまっても決して大袈裟じゃあない。
そこが人間の良さであり悪しきところなんだが・・・・」


ポルポはそう言いながら、いつの間にか手にしていた小さなリモコン
(普通のサイズなんだけど、このデブが持ってるから小さく見えるんだ)を
壁に向けて、そのスイッチを押した。


ピッ・・・・・ウイィィィィィィィィン!!!


石で出来ている壁が上方にスライドすると、そこには普通に考えたら
監房に持ち込めるわけがないものが次々とごとーの目に飛び込んでくる。
先ほどの小さな冷蔵庫、テレビ、コンポ、CDプレーヤー、プラモデル、
ヴァイオリン・・・・・そして、拳銃に手榴弾・・・・・!!!


「この牢獄において不自由する事いえば・・・・・・そうだなぁ〜・・・・・
システィーナ礼拝堂のミケランジェロの壁画が見れないことかなぁ〜・・・・
ゴッホとゴーギャンはあるんだが・・・・」




182 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/20(火) 05:56:31.03 0


白ワインを口にしながら、ポルポは額縁に入れて飾ってある
絵画を見て言った。

ごとーにはこの手の美的センスはない・・・というか興味もないから
なんとも言えないけど・・・・・

でも・・・・・・


これがイタリアの『ギャング』なんだッ!!!


そして・・・・この『ポルポ』にとって、刑務所の中だろうが外だろうが関係ないんだ。

むしろこの図体のデカさじゃあ刑務所の方が安全なのかもしれないぽ・・・・・ッ!!!



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・・


87 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/25(日) 04:35:02.07 0


「ところで、さっき君は『手違い』がどう・・・とか言っていたが・・・・
いったい何が手違いなのかね?ブふぅ〜・・・・・・何が起きて、どんな経緯で
わたしの前に立っているのか・・・・・それに関しては非常に興味深いのだが・・・・」

そう言うと、ポルポは手元に置いてあったクラッカーをムシャムシャと
下品に食べ始める。
口の中に物を含めたまま、さらに彼は続けた。

「刑務所で手違い・・・・ブフゥ・・・・どんな手違いが起きればここに現れるというのか・・・」

・・・・・・いま思いついたのだが、こいつにどうすればギャングになれるのか
訊くというのはどうだろうか?
相手は牢獄の中だし、ごとーにとって不都合なことになっても
なんとかなるんじゃあないか?
・・・・でも、見る限りこのデブは好き勝手な生活を送っているようだし・・・
仲間に連絡されたら、かなり面倒だ。
んぁ・・・・そもそも、このポルポは捕まってしまった今でもギャングなのか??
なんにせよ、このまま黙りこくっているわけにもいかない。


「・・・・・変な噂が立ってるぽ」

「ム?」

「刑務所でギャングになるための面接を行ってるってさ・・・・」

「・・・・それと君の手違いと・・・・何の関係があるのだね?」


ポルポは食う手を休めずに聞き返してくると、白ワインに口をつけた。


88 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/25(日) 04:37:13.77 0

「んぁ・・・・でも、それはデマだったんだ。これがごとーの『手違い』でさ・・・・
面接と面会を間違われてしまったってわけ。笑えないし」

「・・・・・・話を要約させてもらうが、つまるところ・・・・ギャングになるために
面接を受けに来て、ここに立っている・・・・と、君は言いたいのかね?」

「ま、そーいうことになんのかなぁ〜面会しに来たと思われちゃったけどね」

「ブフー・・・・・・」


口癖のような息を吐き、ポルポはクラッカーを食べ続ける。
そして、こんなことを言い始めた。


「『面接』ってのは確かに違うなぁ・・・・ぶふぅ」

「うん、それを『面会』だと間違われて・・・・」

「そうじゃない・・・・・・きみは『ギャングになりたくて』その噂を鵜呑みにし、
ここに現れたということなのだね?いま、最も重要なのは・・・・ギャングになるために
行動したという、その事実が存在するかどうかということなのだよ・・・ブフ〜」

「んぁ・・・・・まぁ」

「・・・・なるほど、よくわかった」


そう言うと、ポルポはグラスの中のワインを一気に口へ流し込む。
んぁ・・・ちょっとちょっと、コイツなに一人で納得しちゃってんだ?
ごとーにはこのデブが何をわかったのか見当もつかない。


89 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/25(日) 04:38:08.59 0







           『 ポッポーッ!! ポッポーッ!!! 』









90 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/25(日) 04:39:32.95 0


「んぁッ!!」


突然、ポルポの監獄の中に置かれた鳩時計が元気よく鳴いた。

青い鳩は『ポッポー』と、喧しく午後3時を告げている。
びっくりした・・・なんで真昼間に目覚ましなんてセットしてるんだ?

青い鳩・・・・そーいえば、幸せの青い鳥は恋をしたところにとまるっていう話を
聞いたことがあるぽ。

なんだかこの鳩を見ていると、なぜか『ミキティ』を思い出すなぁ・・・


・・・・・・と、ポルポから目を離したのは一瞬だったはずだった。

なのに次の瞬間、彼は・・・・



ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ・・・・・


91 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/25(日) 04:41:19.01 0


片手に火のついたライターを持っていたんだッ!!


い、いつの間に・・・・?
着火音も、何も聞こえなかったぽ・・・・!!

さっきまでその手に持っていたのは食べかけのクラッカーでは・・・・?


「どれ・・・・・それじゃあ『面接試験』を始めるとするかな・・・・・」

「えッ!?なんだって!!?」

「面接試験だよ。きみは我々の組織に入りたいんじゃあなかったのかね?ブフゥ〜」


ポルポは空になったワイングラスを、ごとーに向けて言った。

面接試験・・・・?面接試験と言ったの?


それはつまり・・・・



「面接は・・・・やっぱりギャングの面接は存在すんのッ!?」



バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!


92 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/25(日) 04:43:39.83 0


ポルポは言った。

ギャングに入団するための試験・・・それはごとーの『信頼』を見ることなのだと。
やつの組織に入るには、見えないところで『信頼』を示さなければならないのだと!!
そのために行われるテストというのが・・・・

この、ポルポから受け取ったライターの・・・・炎を守ることッ!!!

今から24時間、このライターの『炎』を消さずに持っていねばならないんだ!!
それができたら、ごとーを彼の組織に入団させてくれると言う。
ライターのガスは十分にあるそうだから、燃料が切れて消えるということはないらしい。
だが、もし何かの拍子に『炎』が消えてしまったら!!
ごとーは『信頼』できない女ということで、入団を許してはもらえないそうなんだッ!!

これが、ギャングの入団試験なのか・・・・!!!

・・・・・・けど簡単な話じゃないか。
要はこの『炎』を消さなければいいって話。
それに、どんなことをしても試験に落ちるわけにはいかない・・・・

卑怯な手も使おう、地獄に落ちることもしよう。
なんとしてもポルポの組織に入り、おねーちゃんを探し出すために
情報を集めるんだ。
でなきゃ、ごとーがここに立っている意味はないからな・・・・ッ!!


「明日の午後3時・・・ここに再び君が面会に来るのを楽しみにしているよ」


最後にそう言われたが、ごとーは何も言わずに監房の前から立ち去った。


93 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/25(日) 04:46:03.22 0

ガシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!


ポルポの監房から出てくると、来るとき通った鉄の扉が音をたてて閉まった。
なんだかいきなり空気が軽くなった感じがする・・・・あの廊下の空気は
異様な重たさがあったからな。
ライターの炎は、手の中で『ボボボボボ』と爆ぜている。
これから24時間・・・なんとしてもこの炎、守りきってやるぽ・・・・

その時、女刑務官のこんな声が聞こえた。


『面会人はゲートをくぐったら再びボディ・チェックを受けてください!』


・・・・・え?
なんつった?今・・・・??


『ボディ・チェックを受け、館内を出てもよいという許可が出たら次の部屋に進み、
自分の所持品を受け取って下さい!!』


・・・・・・えっ!?

ごとーは咄嗟にライターの炎を手で覆った。

ちょ、ちょっと待つぽ!!ボディ・チェックだって!!?
確かに囚人からは何も受け取ってはならないって言われたけど、そこんところは
ポルポがこの人達を買収して『ライター』を刑務所から持ち出す許可を
得ているのかと・・・・・!!!


94 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/25(日) 04:47:51.89 0


で、でも考えてもみるぽ・・・・この人達は恐らく、この刑務所でギャングになるための
『面接』が行われているなんてこと確実に知らないだろう・・・・
知っていれば、スムーズに事は進んでただろうからだ。


だとすると・・・・まさか・・・・・

これも試験だっていうのかッ!?
ポルポのごとーを試す試験はすでに始まってるってのか!!?

ボディ・チェックで見つかってしまえば、『炎』を守るも何もない・・・・

何か策はないか・・・・
考えろ・・・・・考えるんだぽ!!ごとぉーッ!!!!

やるしかないんだ・・・・このテストを乗り越え・・・・


ごとーは必ず、ポルポの組織『パッショーネ』に入団しなくてはならないんだ!!!



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・


95 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/25(日) 04:49:01.60 0


あれこれ悩んでいるヒマはないッ!!
今はこのライターと『炎』さえ守れれば・・・・!!!!

ごとーは左手で炎を覆うようにライターを隠し持った。


「うぐぅッ!!!」

んぁ・・・・あ、熱いッ!!
親指が絶え間なく針で刺されているようだぽ・・・・や、火傷で済むのか・・・?


   ジジ・・・・   ジジ・・・・


女刑務官がごとーの顔を覗きこむが、当然平静を装って誤魔化す。
が・・・・やっぱり限界ってのはあるし、身体は正直だ。
額から嫌な汗がドッとふきだして来た。


   ジジジ・・・・ ジ・・・・・


女刑務官はようやくごとーの体をポンポンとチェックし始める。
んぁ・・・・あ・・・・は、早くして・・・・ッ!!!



96 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/25(日) 04:50:17.62 0


「くぅ・・・・」

我慢するぽ・・・・ごとー!!
指が焼ける痛みで発狂しそうになってるのはわかるけど、我慢するんだぽ!!
これ以上に痛い目にあったことなんて、今まで数えるのも面倒くさいほど
あったじゃないか!!


「・・・・・・・」

「・・・・・・・・っ」

「・・・・・」

「・・・・・・・・・・・ッ」

「・・・・・OKです。何も問題はありません。ここを出る事を許可します」


拷問のような痛みの苦しみで、何十分と感じられたボディ・チェックは
とうとう終わりを告げた。

頑張った、よく頑張ったよごとー。

自分自身にあとでお祝いしよう、なに食べようか?
できたら右手にナイフを持つような料理は避けたいなぁ、左手でフォーク持たなきゃ
ならなくなるからなぁ〜。

さて、あとは銀色のケースの中の私物に初めからこのライターがあったと見せかけて・・・


97 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/25(日) 04:51:37.59 0







          「その前に手のひらもあけて見せてください」








「・・・・んぁ?」



98 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/25(日) 04:52:25.41 0






      「もう一度言います。手のひらを見せてください、チェックします」








99 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/25(日) 04:53:37.06 0



な、なんだってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!



女刑務官がごとーの左腕を掴む。

こ、これで見つかったらなんのために嫌な汗で身体中濡らしたのかわかんない!!


まずい・・・・この女ッ!!明らかにこの『左手』を怪しんでいる!!

何かを隠していると思っているッ!!!



この手は開くしかない・・・・隠し通すことはできないッ!!!




どうする・・・・・どうする・・・・・どうする・・・・・ッ!!!!!!




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・


100 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/25(日) 04:54:54.53 0


「早くッ!!その手のひらを開けて見せなさい!!!」


女刑務官は、もたもたしているごとーに一喝すると、左手をグイッと
強く引っぱった。



「・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・」



「・・・・・この左手の親指・・・・・・どうしたのかしら?真っ赤よ・・・・火傷かしら?」



「んぁ・・・・昨日お料理する時ちょっと。あまり得意な方ではないんで・・・・
お料理塾にでも通おうかな〜とは思っているんですけどね」


「・・・まぁいいわ、右手にも何も持っていないようね。退館を許可します」


「・・・・・・・・・」


101 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/25(日) 04:56:39.67 0



・・・・・・・『ゴシップ・セクシーGUY』。



あぶないところだったぽ・・・・


ごとーのスタンドは『風』を自由に操るスタンド。

左手の親指が焼かれていたときにかいた汗を水蒸気にして、
そのウズをこのライターに纏わせた。

光の屈折現象さ・・・・この水蒸気がスーツとなって、光を屈折させている。


だから、ライターと『炎』が透明に見えるんだ。


以前これで自分の身を消したことはあったけど、自分以外の『物』を
消したことはなかったからな・・・・うまくいって良かったぽ。



そして刑務所を出て数秒後・・・・・ライターは元通り、見えるようになった。



バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!


128 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:10:49.00 0

ビュオォォォォォ・・・・


ライターの炎に全神経を集中していると、どんな微風でさえも
強圧なものに感じられる。

風はまずいんだ・・・・風は・・・・・・

いつもは頼もしい味方であるはずの『風』が、今日ばかりはひどく
うざったいものに思えた。
とりあえず、炎が消えないように手で覆っておこう・・・・


ビュオォォォォォォ・・・・・

「んぁ・・・」

な、なんだなんだ?
まるで炎を守るごとーを弄ぶかのように風が吹きつけてくる!
イタリアって風が強い国なのか?
それともたまたま風が強い日なのか?
なんにしても、このままじゃホテルまでもたない・・・・ならば!!!


「ゴシップ・セクシーGUY!!」

ビュオォォン!!!

ごとーはスタンドを発現させると、風が炎を揺らさないよう、ライターの周りに
風を集めて、吹きつけてくる風をガードする。
血で血を洗うって言葉があったな、この場合は風で風を打ち消すわけだけど・・・


129 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:12:54.08 0

「これなら風が吹いてもライターの周りに集まった風がガードしてくれて
炎が消えてしまうことはないぽ」

言うなれば、風という名の真空管だ。
何も炎に触れることはできないぽ・・・・これでホテルまではもつだろう。


人気の少ない路地に差し掛かると、すでに日が傾き始めていた。
間もなく4時か・・・・さて、ホテルまでもうすぐだぽ。

と、その時。
ごとーはライターの炎に生じた異変に気がついた。

「んぁ・・・なんだ・・・・炎の勢いが弱く・・・・?」

そう、炎がさっきよりも小さくなっていたんだぽ!!
ちょ、ちょっと待て!?
ごとーはなんもしてないぞ??燃料切れか?
いや、でもポルポは燃料は十分にあるって・・・・・

「お、おあああッ!!どんどん弱くなるッ!!!」

待て!待て!!
考えろ!!
炎はガードしているんだ!!風でガードしてるんだから何者も炎に
触れることはできないハズなんだ・・・・

んぁ、待てよ・・・・・
そーいえば高校の授業で習ったことがある・・・・・・

火は、酸素がなきゃ燃えないんじゃあなかったか?


130 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:14:01.45 0


「そ、そうか・・・酸素だぽ・・・・風でガードしているから酸素も少なからずガード
されてしまっているんだ・・・・完全な真空状態ではないとはいえ、この風のガードの
中は明らかに酸素が薄い・・・・・!!!」

心なしか、またさっきよりも火が小さくなった気がする。
・・・・・このままじゃまずいんじゃないのッ!!!


「ご、ゴシップ・セクシーGUY!!風を解除しろぉーっ!!!」


もし、このとき風の能力を解除していなければ、ガードの中の酸素はどんどん
燃焼して、ライターの炎の灯火は消えてしまっていただろう。
ごとーの選択は決して間違ってはいなかった。

でも、結果は同じだった。


ビュルオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!


解除したと同時に自然の力が起こした突風は、弱まっていた炎の欠片を
いとも簡単にさらっていってしまったのだ。

炎は・・・・けっきょく消える運命にあったらしい・・・・・ぽ!!!



ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!


131 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:15:31.29 0


「・・・・・・・・・・・は?」


もはやそんな声しか出せない。
あっけなさすぎじゃんか、これ。
雨に降られたとかさ、掃除のおじさんに水かけられた、とかなら
まだ自分の中で納得がいく。
でも、こんな炎の消え方ってなくない?


「どうしよう・・・・まずいぽ・・・まだ『一時間』しか経ってないのに・・・・
炎が・・・・こんなあっけなく・・・・ッ!!!」


もう一回ポルポに頼んだら再トライさせてくれるかな?
そんな甘い考えが思い浮かんだが、それはないものだとすぐに気がつく。
その程度のヤツだったなら、ごとーをこんなテストで試すわけがないからだ。


「・・・・・・・・不合格・・・・かな」


せっかく巡りあえたギャングの組織だったのに・・・・
また振り出しだぽ・・・・他にギャングの組織ってあんのかな。

つーか、このライターどうしよ。
返しに行きづらいな・・・


132 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:17:27.07 0


      シュー 


「んぁ?」

なんか空気の擦れている音がする。
空気が漏れているような、そんな音だ。
どこからだ・・・・あたりをキョロキョロと見渡すが、この人気のない道には
ごとー以外誰も歩いていない。


      シュー   シュー


「んぁ!?」

音はかなり身近な場所から発せられていた。
場所が場所なだけに、すごくバカらしい。

その音は手の中・・・・ライターから聞こえていたんだ。


      シュー    シュー 


・・・・・そんなバカな。
ライターから・・・・・ガスが出てるっていうの?



133 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:19:00.86 0


指の腹でガス口を押さえてみる。



・・・・・・



離す・・・・




         シュー    シュー





134 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:23:45.44 0

ガスは正常に出ている・・・・・これはどういうことだ?

「点火できんの・・・・?いやでもッ!!そんなハズが・・・テストは炎が
『消えてるか』『ついてるか』なんだ・・・・再点火できたらテストの意味が・・・・」

その時、ごとーの脳裏にふと一つの考えが過ぎった。
もしかしてバカにされていただけなんじゃないのか?・・・・と。
だって考えてもみろ、ライターの炎で入団できるか否かを決めるとかおかしな話だ。
そもそも刑務所の中で『ギャングの試験』をやってることが変なんだ。
なんで気付かなかったんだ・・・・・人様を信用しすぎだぞ、ごとー。
・・・・点火ボタンはこれかな?
よし、自分の中で賭けてみよう。

これで炎がついたら、バカにされてたと見なして考えを改める。
逆につかなかったら・・・・諦めて新しい組織を捜そう。


カチリ・・・・シュボォォォォォォォォォォォォォォォ!!!


・・・炎は天に昇るくらい勢いよく灯った。
その強さに思わずビクッと反応してしまう。
でも・・・・これでやっぱりわかったよ。

「はは・・・・はははははははは!!やっぱりバカにされてただけじゃん!!!
なに一時間もマジメに火ィ守ってたんだか!!バカだなごとーは・・・・・
親指まで火傷してさ・・・・・・ふざけんな!!!!」

ごとーは怒り任せにライターを壁に向かってぶん投げてやった。
ガチャンという音を立てたが、ライターは破裂することなく、元気な炎を灯したまま
地面に落ちたのだった。


135 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:26:00.09 0


「アホらしい・・・・・ホテル帰って寝なおそ・・・」

乱暴に捨ててやったライターに背を向け、歩き出そうとしたまさにその時。
ごとーは身体に異変を感じた。


んぁ、動かない・・・・?
いや・・・動けない!?


『・・・・・・・・・・したな』

「えッ・・・・・?」


背後から聞こえた不気味な声に、ごとーは鳥肌が立った。
突然起きた身体の異変に抵抗しながら、なんとか首だけでも振り返ると・・・・


『おまえ・・・・・・・!<再点火>したな!!』

「なッ!!?」


ごとーは自分のスタンドを出した覚えはない。
しかし、目に映るものは事実を物語っている。

ごとーの『G・セクシーGUY』をガッシリと掴んで離さない、黒いマントを
羽織った・・・こいつはまさか!!!


136 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:27:24.30 0


『チャンスをやろう・・・向かうべき<2つの道>を・・・・・・・・!!』


「こ・・・・こいつは・・・・・スタンド!!お前ッ!!いったい何者・・・・!!!」


『チャンスとは・・・・ひとつは生きて<選ばれる者>への道』


「そんなことは聞いてないッ!!なんだぽッ!?お前はぁ〜!!!」


『もうひとつは!!さもなくば<死への道>・・・・・!!』



その黒いスタンドはごとーの質問に答えない。
な、なんだっつーんだッ!!
なんでごとーがいきなりスタンド攻撃なんか受けているんだ!?


『<再点火>したのだ!!』


クアァァ・・・・と、ヤツの口がゆっくりと開いていく。

そこから徐々に除いてくるもの・・・・それは・・・・


137 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:29:03.10 0


銀色で・・・・

尖ってて・・・・・

見たことがあるものだった・・・・

見たことがあるなんてもんじゃあない・・・・

この手に取ったこともあったし・・・・


ごとーとごとーのスタンドを貫いたこともある!!


全力で破壊してやったことがあるアレだ・・・・

アレが・・・・・スタンド使いを生み出す『矢』が・・・・


このイタリアにもッ!!!?



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・


138 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:32:04.62 0

「ん・・・んあぁぁぁぁぁッ!!!おまえぇッ!!何をする気だぽぉぉぉ!!!」

『受けてもらうぞッ!!』


ヤツの口から矢が迫ってくる!!
カタチも、色も、すべてあの忌々しい男が持っていたものと同じものだ!!
その矢が、ゴシップ・セクシーGUYの頭を貫こうとしている!!!

「やめろぉぉぉッ!!!!」

ガッキーン!!!

迫り来る矢を力任せにスタンドの槍でガードするッ!!
重い金属音を立て、矢はゴシップ・セクシーGUYの頬をかすめていった。

『ムグッ!』

この隙を逃すごとーではないぽ・・・伊達に場数は踏んでない!!
一瞬のうちに風を集めて・・・・解き放つ!!


「『ゴシップ・ハリケーン(風の噂)』!!!」

ビュルオォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!


ヤツの腹あたりに生じた強風は、そのままヤツをさらうと向こうの
影が立ちこめた壁の方へと吹っ飛んでいった。
さっきまで風がうざいと感じたり、頼もしいと感じたり・・・やれやれ。
なんだか今日は感情の落差が激しいな、ごとーは。


139 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:36:40.47 0

影の中でヤツは何事もなかったかのように立ち上がると、こっちを見てウロウロしている。
どうやら警戒しているようだ。

・・・・・あいつ『再点火』がどうとか言っていたけど・・・・
まさか・・・・あのライターのことを言っているんだろうか?
ライターを再点火したことを指していたんだろうか?
ごとーの投げつけたライターは、ゆらゆらと炎を揺らしている。
消える気配はないが・・・・

「もし、あのライターを再点火したことだとすれば・・・・本体は・・・・ハッ!!!!」

い、いないッ!!!
あの黒いスタンドがあの影の中からいなくなっているッ!?
スタンドを解除したのか!!?
いや、大したダメージは与えられていないんだ・・・・また攻撃がくるはず!!

「もし本体が『ポルポ』だとすれば・・・あれは遠隔操作のハズだぽ。
射程距離はどのくらいだろうか・・・・とにかくこんなことになっては入団も
糞もないし・・・・どうすれば・・・・!!」

そう思い、足を踏み出したのは、たまたま影の中だった。
それがいけなかった!!

『受けてもらうぞッ!!』

ドギャン!!!!!!!!

「んあぁぁぁぁあぁぁあッ!!!」

突如影の中から出現したそいつにビビり、ごとーは尻餅をついてしまった!!
ま、まずい!!やられるッ!!!こいつにつかまってしまうッ!!!!!!!!!


140 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:37:47.31 0


『・・・・・・・・・・』


だが、そいつは手をごとーに伸ばしたところでピタリと動きを止めた。


「うぐぐ・・・・・・?」


『・・・・・・・・・』


いったいどうしたっていうんだろう?
そいつは無防備になった無様なごとーを前にして、ただ立ち尽くしているだけだ。


『・・・・・・・・・』


なんだコイツ・・・・?

なんで・・・・・攻撃をやめたんだ?



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・


141 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:39:49.31 0

黒いスタンドは、ただただ佇んでいるだけだ。
でも奇妙だ・・・・攻撃をやめたとするなら、どうしてスタンドそのものを
解除しないのかって話になるじゃあないか。
だとすれば・・・・こいつの行動はただ立っているだけじゃあないってことだ。

「こいつ、何かを待っている・・・・・虎視眈々と何かを狙っている・・・・ッ!!?」

『・・・・・・・・』

ちっ・・・・・ムカツクぽ!!
一歩動いてみるが、やつは何も反応しない。
さらに手を振ってみるが、これまた無反応だ。

・・・・イライラするヤツッ!!!

さらに一歩進んだとき、足が影に触れたときだ。


ガオン!!!

「んぁッ!!!」


いきなり、そいつは襲ってきた!!
ごとーを捕まえようと手を伸ばしてきたようだが、一歩下がると再びピタリと
動きを止めてしまう。
そして、影の中をウロウロと歩き回り始めた。

『・・・・・・・』

「・・・・・・・・」


142 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:42:12.37 0

まさかな・・・・・
なんとなく、影に手をかざして見る。

ドギョォォ!!!!


さっと影から手を引くと、そいつはまた攻撃をやめた。
こいつ・・・・こいつまさか・・・・・

「影だ・・・・こいつ影の中からは出られないんだ・・・・・何かを狙ってるんじゃあない…
ごとーが今いる場所は日光が当たっているから襲ってこないんだ・・・・!!」

だから、待っている!!
ごとーが影の中に入ってくるのを待っているんだ!!
だとすれば、こいつを逆に日光の当たる方へ持ってきたらどうなるんだろう?

しかし・・・・・そんな悠長なことも考えてられないか・・・・・

日は暮れ始めているし・・・・もし、この状態のまま日が沈んでしまえば
あたり一面は闇の世界へと変わる。
それは恐らく、こいつのホームグラウンドだろう・・・・

まずい・・・・・それだけはまずいッ!!
しかし、かといって逃げ出すのもダメだ。

もしもこいつがポルポのスタンドだとすれば、ヤツは試験に落ちた
ごとーを攻撃しにきてる!!
見られているんだ・・・・ごとーのスタンドが!!!


「なら・・・・・・・口封じしなければ・・・・・ならないッ!!!」


143 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:44:29.03 0


見たところ、どうやらヤツは影から影へのジャンプもできないようだ。
できれば、とっくにごとーの背後にある木の影にジャンプして攻撃してくるだろう。
ふん、とんだ遠距離タイプのスタンドだぽ・・・・どう料理してやろうか。

その時、ヤツが影の中に飲まれるようにして消えていった。
んぁ?スタンドを解除した・・・・?


「ミー」

可愛らしい鳴声がした。
さっきまでヤツがいた影の先から顔を出している小さな生き物・・・
緊迫した空気のすぐあとに聞こえたその声に、ごとーはほだされてしまいそうになる。

「みー」

「・・・・・・」

「みーぃ」


・・・・杜王町と同じで、イタリアにもノラネコなんているんだなぁ。
そういえば、あっちでは野ウサギなんてのも見かけたな。
あと、鉄塔に住んでる人とか・・・・


「みぃ〜」

猫が影を渡ってこちらへ寄ってくる。
人間なれしてるのかな?別に呼んでもないのに寄って来るところをみると・・・


144 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:45:54.29 0

「みぃ」

猫はごとーの足元までくると、身体をこすり付けてきた。
か、可愛い・・・・・この足にかかる重みと猫の毛の擦れ具合がなんともいえない・・・・
でもこんなことしてる場合じゃないぽ。
ヤツに逃げられた以上、ごとーもここで突っ立てるわけには・・・・
猫はそんなごとーの気持ちも知らず、足に身体をこすり付けてくる。

そして、猫がごとーの後ろ・・・・・木の影に入ったその時だった。



ドギャアアアアアアアアアンンン!!!!!!


「・・・・・・・・・・んぁ?」

最悪の対面だった・・・・・・!!
なんてことだッ!!!
さっき影の中に消えていったあの黒いスタンドが・・・・・
ごとーのすぐ後ろに出現したッ!?


『おまえには<向かうべき2つの道>がある!!』

「なんだこいつはッ!!んあああああああああああああああああッ!!!!」


そ、そうか・・・・・わかったぞ!!
こいつッ!!猫の影を利用して近付いてきたな!!!
歩み寄ってきた猫の影に潜んでごとーの側の・・・・この木の影まで移動してきたんだ!!!


145 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:52:07.92 0

ガシィッ!!
木の影と繋がってしまっていたごとーの影をそいつが掴むと
ズルッと影が引きずり出された!!・・・いや違う・・・・・引きずり出されたのは・・・・

「ごとーのスタンドだってぇ!?こいつッ!!ごとーの影から・・・・!!!!」

ゴシップ・セクシーGUYを引きずり出しやがったぽ!!
そうか、さっきもこうやって・・・・・ッ!!!
やがて、やつの口が開くと・・・・その中にチカリと光る矢の先が覗いた。

もしかして・・・・ポルポはこうやってスタンド使いを増やしてる人間なのか?
これが・・・・・ギャングのテストだということなのか!?
このシステム、何かに似ているぽ・・・・・あの・・・・・あの『部活』にそっくりだ!!

『受けてもらうぞ!!おまえは<再点火>したのだッ!!』

でも・・・・・・でもね。
別にこれで良かったんだごとーは・・・こうやって近付かれても良かったッ!!
なぜなら・・・・ごとーのスタンドは近距離タイプなのだから!!!

「きみはわかってない・・・・遠距離射程のきみが近距離タイプのごとーに
近距離で挑むなんて・・・・まるでわかってないッ!!!」

ごとーのスタンドの両手はフリーだった。
んぁ・・・あの部員達の誰だったかのセリフを借りるとすれば・・・・
ゼロ距離射撃シャボン玉…!!

やつの腹に添えた拳に、風が集まってくる・・・・

ドテッ腹に風穴開けてッ!!
そっから脂肪だらけの内蔵ぶちまけなあぁぁぁぁッ!!!!!!


146 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:53:52.21 0


「闘技!!神砂あら・・・・」




グワシィ!!!!!




「・・・・んぁ?」



一瞬の出来事だったから、ごとーは最初何が起きたのか理解できなかった。

とりあえず簡単に言ってしまおう。

両腕がまったく動かなくなったんだ・・・・・その理由が、こいつに腕を力強く
押さえつけたからだということに気付いたのは手首に痛みを感じ始めてからだった。

ゴシップ・セクシーGUYの両腕は、とてつもない力で地面に押さえつけられていた。



ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!


147 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 08:56:21.53 0


んぁ、なんだ・・・・このパワーは・・・・

『神砂嵐』を発動させたパワーごと・・・・・押さえつけてしまいやがったぽ!!
くそ!!近距離型とはいえ、ごとーのスタンドは主に槍で切りつけるスタンド!!
こいつの腕を振り払うことができないッ!!!

「あり得ない・・・・・遠距離型スタンドがあり得ないッ!!!」

なんだこのパワーは・・・・・パワータイプの遠距離型があるとでもいうのか!?
異常だぽ・・・・こいつの押さえつけるパワーは・・・・・
本体が近くにいるとしか思えない!!

本体が近くに?
あのポルポが?
一人で外出できるかどーかっつーデブだぞ?

まさかとは思うけど・・・・こいつ、以前ごとーに発現した『レクイエム』の
類じゃあないだろうな?
勝手に人のスタンド引きずり出したり・・・・並のスタンドじゃ出来ない能力だぽ。
それになにより、こいつは矢を持っている。
だとしたら、弱点はないのか・・・・・?
いや、でも・・・もしかしたら単なる『自動操縦』って説も・・・・

うぅん・・・・わからない・・・けど、もう考えている時間もなかった。
両手をおさえられ、やつにがら空きの胸をさらけ出してしまっているのだから。



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・・


148 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 09:00:06.68 0

『受けてもらうぞッ!!』

やつがごとーに裁きを下したようだが・・・・


「んぁ・・・・・受ける?その必要は・・・・・・・・ないぽ」

おまえがなにを望もうと・・・・・・
そんなもん受け止める気はないね!!!


ビュルオォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!

倒れているごとーの身体の下・・・・地面から溢れんばかりの風が巻き起こる。

『!!?』

「ゴシップ・シード(噂の種)・・・・風の地雷をごとーの身体の下に集めて置いておいた。
押さえつけるパワーはトップクラスのようだけど・・・・風で持ち上げられる
自分の身体まで押さえつけることはできるかな?」

ドヒュウウウウウウウッ!!!!!!

破裂した風の地雷は、猛烈な力でごとーと、この黒いスタンドを空に押し上げる!!
そして、上空でごとー達を待っていたのは・・・・


パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!


茜色の太陽だぽ。


149 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 09:03:25.52 0


『ぐ・・・・ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉああああああ!!!!!!』


DRY!手ごたえアリッ!!!
やっぱり、日光を浴びるとダメージを受けるみたいだぽ!!!

影の中しか移動しないから怪しいとは思ってたけど・・・・・
そいつは苦悶の叫びを上げると、ごとーの身体を盾に太陽の光から
逃れようとしている。
空には影なんかないからね。隠れる場所はごとーの身体くらいしかないんだろう。

そのゴキブリのような行動が、激しく目障りで邪魔だった。


「んぁ、邪魔だよ・・・・あんたの負けだッ!!」


『ぐわぎゃあああああああああああああああああ!!!!!!!!』



流派も何もないけれど・・・・ごとーの槍の洗礼を受けるがいいぽッ!!!

くらええええええええええええええええッ!!!!


150 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/06/30(金) 09:08:58.98 0



「邪魔・・・・邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔ァッ!!!!」


ドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスッ!!!!



ズタズタにしてやるッ!!
そして・・・・ゆっくりと日焼けでもするといいぽ!!!


『ふわあああああああああああああああああああ・・・・・・』


「さよならね!BYE BYE」



ブショワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・・・・



黒いスタンドは日光の中で塵となって、消えた。



ドッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!


167 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/07/05(水) 08:03:41.24 0


ポルポのスタンドは倒した。
それなら、ポルポは死んだのか?
普通ならそう考えるのが自然だぽ。しかし・・・

あのスタンドが、押尾先輩の能力と同じ『遠隔自動操縦』だったとしたら・・・?

もしそうなら、敵は攻撃をやめただけってことだ。
あのデブは『闘いがあったこと自体』気付いていないに違いない。
ヤツはピンピンだ・・・・!!!

そう思ったごとーは、結局その炎を一日中守り続けてしまった。



翌日、午後3時。
ごとーは再び刑務所に足を運んだ。
手に持ったライターは、風を操り水蒸気によって自分の姿を透明にする
『横浜蜃気楼』の応用で見えなくしたからボディ・チェックも昨日より
スムーズだった。
そして、再びポルポの監房の前へ・・・・・・



168 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/07/05(水) 08:04:40.86 0


ガシャアアアアアアアアアアアン!!!!!


「・・・・・・」

監房のドアの小さな小窓に、一日中守り続けてきたライターを置く。
その炎は、静かに揺らめいていた。

「・・・・・・?」

監房の中を見渡すが、ポルポの姿が見えない。
この部屋にはあの身体を隠すようなものはないけど・・・どこだ?
ごとーはガラス越しに部屋の中を覗き込んで見た。



『特注の「ピッツァ」の差し入れがあってね・・・・モグモグ』



声は壁から聞こえた。
よく見ると、天井に近いあたりからデカイ顔がはみ出している。

「モグモグ・・・・パクパク・・・・」

んぁ、なかなか美味しそうに食べてるな・・・・
そういえば、ぶ高の演劇部に『食べてるときが一番幸せそう』なヤツがいるって
ミキティが授業中に言ってた気がする。
まぁ、今となっては関係ないけど・・・・


169 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/07/05(水) 08:05:56.65 0


「・・・・・・大きいね、そのピッツァ。ピッツァ好きなの?」

「アツアツなら尚良いのだがね・・・・ブフゥ〜・・・・」


ズゥオォォォォォォォォォォォ!!!


「・・・・」

ピッツァは、ポルポの口の中に掃除機で吸い込んだように滑り込んでいった。
気持ち悪い芸当ッ!!
ポルポはでかい身体を引きずりながら冷蔵庫を開けると、中からリンゴやら
サクランボやらを取り出す。
まだ食べんの?

「お待たせした・・・・・え〜っと・・・・ブフ〜・・・・・・きみは・・・・ええ〜っと・・・・」

「後藤真希だぽ」

「え?なんだって?モグモグ・・・・よく聞こえなかった・・・ゴ・・・・マキ?」

「んぁ・・・・・・うん」

「すまないね。食事をすると胃に血がいくからな・・・・・バクバク」


ポルポは二つのフルーツを見境なしに口に入れている。
おいしいの?そんな食べ方して。
つーかこいつ、絶対サクランボの種を出さずに飲み込んでるぽ。


170 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/07/05(水) 08:07:03.16 0


「唐突だが、この世で最も大切なことはなんだと思うかね?ゴマキくん」


「んぁ・・・・・?」

いきなりなんだ?
この世で最も大切なことだって??
一つだけ、パッと浮かんできたけど・・・・これは大切だと思っているというより、
今の自分の『願望』なような気もする。


「どうだね、ゴマキくん」

「・・・・・・・・・『何を知っているか』・・・・かな?」


するとポルポは見下すようにごとーを眺め、こう言ってきた。


「ほぅ〜・・・・・・それじゃあ君は何を知っているんだ?」


・・・・・・・・・・。



171 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/07/05(水) 08:08:02.79 0


「んぁ・・・・・天使と悪魔と人間の話」


「天使と悪魔?人間?ブフ〜・・・・なんだねそれは」

「天使は『本当のことしか話せない』んだ。逆に悪魔は『なんとしてでも自分の存在を
隠すため嘘しかつけない』。人間は気まぐれで『嘘もつくしホントも言える』んだけど・・・」

「ふむ」

「それでね。『Aさん』『Bさん』『Cさん』ってのがいるの。Aさんは
『自分は天使じゃない』と言ってる。Bさんは『自分は悪魔じゃない』と
言ってるし、Cさんは『自分は人間じゃない』って言ってるんだぽ」

「それで?」

「この3人は『天使』『悪魔』『人間』なんだ。Aは誰?Bは誰?Cは誰?
そーいう話だよ・・・・・」


ごとーが言い終えると、ポルポは短い手を腕組して考え始める。
まぁ、一種のなぞなぞみたいなもんだからな。

ヒッカケとかじゃなく、ちゃんとした答えはあるんだけどね。



172 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/07/05(水) 08:09:19.49 0


「全員人間・・・・かね?ぶふぅ〜・・・・・」

「んぁ、違う。A、B、Cはそれぞれ『天使』『悪魔』『人間』だから。
この中に悪魔が二人いるとか、そーいうのは一切ない」

「ブフ〜・・・・難問だな・・・・う〜ん・・・・・・・人間が邪魔だなぁ・・・・・・・
天使と悪魔だけなら簡単なんだろうがなぁ・・・・・・うむ、なかなか面白い。
まぁこれについては、今度答えがわかったらきみに伝えるとして・・・・」


壁にはまった小さな冷蔵庫から白ワインを取り出したポルポは、
グラスにトクトクとワインを注ぐと、それで口の中のものを胃の中に
流し込んだ。
今回は、ごとーにすすめては来なかった。


「きみは『何を知っているか』・・・・・そう答えた・・・・・が。それは大きな
勘違いなのだよ・・・ブフゥ〜・・・・・人間とは、それが『幸福』だろうが
『不幸』だろうが知りたがる生き物だが・・・・・最も大事なのは『何を知っているか』
じゃあないんだな・・・・・ブフ〜・・・・・」

「・・・・・・」



173 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/07/05(水) 08:11:07.50 0


「これからわたしの話す事は、君にはよく聞いて理解してもらいたい。
いいかね?米国にこんな<ことわざ>がある・・・・・・そう、最も大事なことは・・・・
『何を知っているか』より『誰を知っているか』・・・・・と、いうことだ」

「んぁ・・・・・」

「人間関係の狭さは考え方の狭さにも繋がるのだよ・・・・ぶふぅ・・・・・
浅く広く!それが一番だ・・・・しかし深いのはダメだ。固定観念が生まれるからな。
さらに自分から知ろうとしてはならない。図々しいことほどくだらんことはないのだ」


何を知っているかより誰を知っているか・・・・・?
ごとーには、ポルポがそこから何を言わんとしているのかよく理解できなかった。
聞き返そうか・・・・・そう思ったが、それより早くポルポは律儀に説明を始めた。


「最近組織の中で『裏切り者』が出てね・・・・そいつらは『知ろうとした』のだ。
図々しく、自分達から行動を起こしたのだ・・・・罰は降ったがね」

「んぁ、裏切り者?そいつらってことは・・・・二人以上?何を知ろうとしたの?」

「ふむ。二人のバカが『ボス』の正体を探ろうとしたのだよ。だからだ・・・・・
人間とは欲に弱く、そして知りたがる生き物だが・・・・まったく、忌むべきことだ」


ボスの正体を探ろうとしただけで裏切り者なのか・・・・・?
んぁ・・・罰が降ったって、そいつら二人はどうなったんだ・・・・!?


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・


174 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/07/05(水) 08:13:37.52 0

「だからそのチームは今、二人消えたことにより人数的に欠けてしまっていてね。
現在7人しかいない・・・・ブフー・・・・・だから君にはその『チーム』に入ってもらう・・・・」

「チーム・・・・?」

「ああ・・・・『暗殺チーム』だ」


あ、暗殺チーム!?
なんだかすごくやばそうなチームだけど・・・・・・
そんなチームでごとーはいろいろとおねーちゃんのことを調べたりできるのか?
疑問だぽ・・・・・ん、待てよ?
暗殺チーム・・・・?


「だが、それだけじゃない」


ポルポがそう言った。

「あのチームの連中は『信頼』を『侮辱』したチームということで、ボスはあまり
野放しにしておきたくないのだ。彼らにメッセージは届いただろうが、悲しいかな
一度失った『信頼』を取り戻すのは不可能なことだ。では、なぜ君をそんなチームに
入れるのか?それはだね、きみが『信頼』できないからではない・・・・むしろ逆なのだ」

「・・・・・・・・」

ごとーは黙ってポルポを見つめた。
こいつの話、何かある。
何か特別な事を、ごとーにさせようとしている!!
そう思った。


175 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/07/05(水) 08:15:02.63 0


「きみはライターの炎を信頼どおり消さずに持ってきた。つまりきみは
『信頼』できる女だ・・・・・そんな君をわたしも心から『信頼』して、
入団を認めよう・・・・・そして命令するッ!!暗殺チームに成りすまして
潜入し、怪しいと思える動きをすべてわたしに報告するのだ!!!」



成りすまして潜入・・・・?

怪しいと思える動きをすべて報告しろだって・・・・??



「んぁ・・・・まさか・・・・・ごとーにスパイをやれっての!?」



ドッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!


176 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/07/05(水) 08:18:20.26 0


「そうだ・・・・きみは暗殺チームの人間として動く。だがわたしの部下であることは
隠してだ。今述べた、何を知っているかよりも誰を知っているかということだな・・・・・
きみは暗殺チームの人間を知り、わたしのことも知っているわけだ」

ガシャッ!

音を立てドアの小窓に置かれたのは丸い彫り物のバッジだ。
これは・・・・・?


「わが組織『パッショーネ』のバッヂだよ。それが証明だ・・・・向こうの幹部には
わたしから伝えておこう・・・・新しい仲間の面倒を見て欲しいとな。ヤツはいま
不在だから・・・・しばらくは暗殺チームにいる『プロシュート』の指示で行動したまえ・・・・・
だが、これだけは忘れるな。真の意味でゴマキくん、君に命令するのは・・・・わたしを
通じて、ボスであるということを」

「・・・・・なんで新参のごとーにそんな重要なことを?それに、スパイする行為ってのは
暗殺チームのやつらの『信頼』を『侮辱』してることになるんじゃあ・・・・」

「新参だからいいのだよ。わたしの部下は知られすぎているし、その仲間も
向いてるとは言えない。最近ガキが一人入ったが、ヤツはブチャラティを気にいって
入団希望してきたヤツだったからなぁ〜・・・・ブフゥ・・・・それとだ、暗殺チームの人間に
関してはいいのだよ。彼らは一度『信頼』を『侮辱』している。そんな人間達を
『信頼』し続けるなんて実にくだらん。バカのすることだ。向こうも『信頼』
していると思えないしな。さぁ・・・・バッヂを手に取りたまえ、今から君も組織の
一員なのだからな・・・・・!!」


177 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/07/05(水) 08:20:10.61 0


ごとーはバッヂに手を伸ばし、考える。


日本でボコしたやくざから聞いた話だ・・・・いま思い出していたけど・・・
超能力者と言われていたスタンド使いの暴力団員を倒したのは・・・確か・・・・

イタリアンマフィアの、暗殺者チームとか言ってなかったか?

おねーちゃんを連れて行ったのがそのチームの人間かはわからないが・・・・


もし!!そのイタリアンマフィアというのがこの『組織』の暗殺チームのことを
指していたとするのならッ!!!


ごとーはかなりおねーちゃんに近付いていることになるんじゃあないのか!?


本当にそうなら、ごとーの行動はかなり間違っていないといえるぽ。

いろんな意味で、ギャングの面接は大成功だ・・・・ッ!!



178 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/07/05(水) 08:21:12.03 0


ポルポが白ワインを啜っているうちに、ごとーはバッヂを手の中に収め
静かにその場を立ち去ることにした。

とにかく、ごとーが探さねばならないのは、もちろんおねーちゃんだけど、
それだけではない。
話で聞いた『相手の身体からハサミやカミソリを生み出す』っていう男だ。
たぶん、そいつに会うのが一番早い・・・・

うまく事が運べば・・・・いいんだけどね。






「グビグビ・・・・・ブフ〜・・・・どうだね?きみも祝杯を・・・・・ン?行ったのか・・・・
フン!・・・・・・あの小娘、まじめに24時間この炎を守ったのか?それとも再点火して
『スタンド使い』になったのか?まぁどっちでもいい・・・・マヌケそうだが、とにかく
生きて炎を持ってきた・・・・あーゆーなにも考えてないヤツは利用できる・・・・・
どっちだろうと、我々の都合のいいようにな・・・・・ブフゥ〜・・・さて、A・B・Cのうち
どれが天使で、どれが悪魔なんだか・・・・」




本体名   ポルポ
スタンド名 ブラック・サバス


TO BE CONTINUED…