色の永遠 〜ババ抜きをしよう!〜
スタンド使いは引かれ合う。
それは仲のいい友達だったり、同じ学校の同級生だったり。
はたまた販売員だったり秘書だったり。
…普通っぽい姿をした凶悪殺人鬼だったり。
やはり演劇部の人間は、あたしが病院送りにしたあの石川梨華のように、
みんなスタンド使いなんだろうか。
吉良吉影の事件以降、あたしはスタンド使いとは絶ッッッッッ対に遭遇したくは
ないと思った。命がいくつあっても足りないし、あたしの『ブギートレイン03』の
『時を戻す』という力は今のとこ自分の意思で発動させることができない。
今まで、よくうまいこと偶発的に能力を発動させられたものだ。
あたしにはつくづく強運…というか悪運がついているらしい。
とにかく、もうスタンド使いと関わるのはゴメンだ。
せっかく入部した演劇だけど、このまま幽霊部員になった方が身のためかも。
まあそんなわけで、放課後あたしは部活をバッくれて、亜弥ちゃんや真希ちゃんと
カラオケに行くことにした。
だが真希ちゃんが生徒指導室にお呼ばれしてしまったため、あたしは亜弥ちゃんと
教室で雑談しながら彼女の帰りを待っていた。
だが、それにしても遅い。もう40分くらい経っている。
40分も説教って、一体あの子何やらかしたんだろう。
あまりに遅いし喉も渇いたので、あたしと亜弥ちゃんは生徒ホールへ缶ジュースを
買いに行った。
89 :名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 01:58:51
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放課後になると下校する生徒でごった返す生徒ホールも、この時間になると
だいぶ生徒の入りも落ちついたようだった。
「ペプシとCCレモンどっちにすっかな〜」
「美貴タン、迷ってる時は同時押しするといいよ。押す瞬間に自分の本当に欲しい
方を無意識に押しちゃうって昨日テレビでやってた」
「どれどれ」
あたしはお金を入れると、ペプシのボタンとCCレモンのボタンを同時に押してみた。
ガシャッ!
「ペプシかよ」
「本当に欲しい方が出てきてよかったね」
いや、いざペプシと決まったら急にCCレモンが飲みたくなってきたんだけど。
ないものねだりっつったらそれまでだけどさ。
亜弥ちゃんは午後ティのストレートティーをおいしそうに飲んでいる。
なんかムカついてきたし。
「そこの君たち」
振り返ると、そこには円形のテーブルに腰掛けた男子生徒がしきりにトランプを切っていた。
「あたし達のこと?」
「ああ」
そいつはテーブルから腰を下ろすと、備え付けの椅子に座った。
「なんか用?」
「いや、ちょっと俺とババ抜きでもしない?」
ハァ〜?なんだこいつ、新手のナンパですか?
「ババ抜きって面白いんだ。定番すぎてみんなやろうともしないが、たまにやってみると
これほど単純で深いトランプのゲームはない」
「バッカじゃねーの」
「でも、ちょっと面白そうじゃない?」
亜弥ちゃん、あんた何を言ってんだ。
「どーせ真希ちゃんなかなか戻ってこなさそうだしさ」
「う〜ん、まあ暇つぶしぐらいにはなんのかな」
そんなあたし達の態度を見て、その男子生徒は空いている向かいの2箇所の席に
トランプを配り始めた。
「俺の名は塚本高史。まあ座りなよ」
91 :名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 02:19:52
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塚本高史ね…変なヤツだけど、なかなかいい男じゃん。
「トランプは行き渡ったよ」
この塚本ってヤツ、いつもこんなことやってんのかな。
ダブったカードを切り捨てていると、なんだか先日訪問販売に来た自称エリート
イケメン販売員エリック亀造のことを思い出す。あの時もトランプでゲームしたな。
あれから彼は、どうなったんだろう。
…げッ!!!!ババ、あたしに回ってきてんじゃん!
金色の髪をした女の悪魔の絵が描いてあるババだ。いかにもババらしい絵である。
「じゃあ始めようか、トランプの枚数が一番多い僕から時計まわりで」
ってことは塚本→亜弥ちゃん→あたしの順で取ってくのね。
「わかった」
3人だから、早くケリが着きそうだな…亜弥ちゃん、悪いけどババ引いてくれ。
あたしが悪気もなくそんなことを思っていると、あたしの持ってる6枚のトランプの
中からいきなりババを抜いた。
「ぶッ!」
願ってたとはいえ、こう簡単に叶ってしまっては間抜けである。
あたしは思わず吹き出してしまった。
「美貴タンうざ〜、むかつく〜」
亜弥ちゃんは膨れてあたしに言った。
おいおい、何言ってんだよ。
それじゃババ持ってるぞって自らアピールしてるようなもんだw
92 :名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 02:39:20
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「はい1上がり!」
1番最初に上がったあたしはちょっと興奮していた。
やはり、1番ってのは気分がいい。
間もなくして、塚本は亜弥ちゃんとの1対1の勝負にあっさりと勝っていた。
「ええ〜ババ残っちゃったし」
「亜弥ちゃんお疲れ」
「うるさいしー!美貴タンのせいだかんねッ」
そんな亜弥ちゃんをよそに、あたしは時計を眺めた。
なんだかんだでババ抜きを始めて10分経っている。
「そろそろ戻ろっか。真希ちゃん帰ってきてるかもしんないし」
「うん、そだね…ん、あれ?」
あたしが歩き出したのに、亜弥ちゃんは動き出さない。椅子に座ったままだ。
まだババ抜きしたいのかな。
「亜弥ちゃん、ホラ行くよ」
「み、美貴タン、な、なんか、変なの」
「変?何が?」
「か、体が動かな…」
は?何を言ってるんだこの子は。
その時、亜弥ちゃんの全身が一瞬光って…
「ハウッ!!!!!!!!!!!」
ドッシュウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンン!!!!!
消えた。
「な、なにッ!!」
いない、亜弥ちゃんが消えた!
「まさか…こ、これは…スタンド攻撃!!!?」
あたしは塚本を睨む。ひょっとしてこいつは…
「こ、こいつはあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
塚本は口の端を吊り上げて、不敵に笑っていた。
94 :名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 03:02:08
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「お前ッ!亜弥ちゃんをどこにやった!?」
塚本は何も答えず、腕を組んであたしを見ている。
「どこへやったか聞いてんだよォッ!!!!!」
あたしが塚本に掴みかかると、塚本はそこで口を開いた。
「別にどこにも行ってないじゃないか。ちゃんとそこにいるだろ」
「は?あんた何を言って…」
チラリと亜弥ちゃんが座っていた椅子の上を見ると、そこにはトランプが
一枚裏返っているのに気づいた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
あたしは塚本から手を離し、おそるおそるそのトランプを捲ってみる。
「こ、これはッ!!」
ショートカットの女の子の絵が描いてあるジョーカーのカード!!
しかし待てよ、ババ抜きでジョーカーは二枚も使わないぞ。さっき使っていた
ジョーカーは金髪の女悪魔の絵柄だった。そしてそれは今もテーブルの上に
空しく乗っている。
ま、まさか…これは…
「塚本、あんた…まさかッ・・・!?」
「そう、俺のスタンドはババ抜きに負けた者をトランプのカード、ジョーカーに変える事が
できる能力を持つ…名づけてッ!『ラブラブ・マンハッタン』ッ!!!」
ドッギャアアアアアアン!!!!!
負けた者をジョーカーに変える…だって!!!!!!!!?
95 :名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 03:26:25
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「俺は、ある人物を探している…」
塚本は先ほどの勝負でダブって切り捨てたカードを集めながら話を始めた。
「つい先日の話なんだが…俺の彼女が保健室で大怪我をしてね。病院に
運ばれたんだ…まあ今も入院してるんだが、指は無茶苦茶にへし折られてて
体はガラスの破片で傷だらけ。おまけに全身打撲で腕は骨折していたよ」
い、石川梨華の話みたいだ…
「俺はその怪我を見てすぐわかったよ。これは同じ能力者の仕業だってね。
梨華には身を守る術がある。強力な能力を持ったスタンドを持っているッ!
俺は梨華に聞いたさ、誰にやられたってな。したら何て言ったと思う?」
「し、知らないけど…」
あたしの名前…出したのか?
「言えないッて言われたんだよ!彼氏の俺が聞いてるのにだぞ!?彼女は自分の
不注意でこうなったと言ったんだッ!あれは演劇部のテストだったとッ!!」
なるほど…梨華ちゃん、あんたも誇りの高い人間だったのね。
塚本が復讐を企てるのがわかったから…なのかな?
「だから俺は決めた。あいつを動けなくしたスタンド使い…演劇部員をこの手で
カードの中に封じ込めてやるとなッ!!!」
そう言うと塚本は、さっきまで使っていた女の悪魔のジョーカーをあたしに突きつけた。
「これ…誰だと思う?」
「わ、わかんないけど…」
いや、実を言うと、なんとなく面影があったので気づいていた。
だがそれを認めるのはあたしにとって恐ろしいことだった。
「じゃあ教えてやるよ。これはな…」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
「後藤真希だよ、元演劇部員のなッ!!!!!!!!!!!!!」
ガーン!!!!!!!!!!!!!!!!!
96 :名無し募集中。。。:2005/09/11(日) 03:42:53
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「な、なんてことを…塚本ッ!!!」
「藤本美貴…お前も最近演劇部の部員になったそうじゃないか。
さあ、そこに座ってもらおうか。裁きのババ抜きを始めるぞ!!!」
「ふ、ふざけんじゃねえッ!大体亜弥ちゃんは演劇部とは関係ねーだろうが
このスカチンがッ!!真希ちゃんだってもう演劇部とは関係ないんだッ!
2人を元に戻せ!今すぐだ!!」
「このカードは人質なんだよ。後藤だって関係ないとはいえ元演劇部だ。
疑いの余地は十分あるッ!」
ま、まさかこいつ…怪しいヤツを片っ端から見境なくジョーカーに変えるつもりじゃ…ッ!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
「藤本…お前が勝ったら松浦も後藤も元に戻してやるよ。だが、もし負けた時は
大人しくジョーカーのカードになってもらう。永遠になッ!」
く、くそ…
やるしか…ないのか…ッ!!?
45 :名無し募集中。。。:2005/09/12(月) 14:46:35
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「1対1のババ抜きか…早くケリがつきそうだな、藤本」
二人に振り分けられた53枚のトランプ。
ダブったカードを切り捨て終わり、あたしと塚本は睨み合っていた。
あたしの手持ちカードは4枚、塚本は5枚。
幸運なことなのか、あたしの手持ちカードの中にはババは混ざっていない。
「さあ、始めようか…裁きのババ抜きをッ!」
このまま、ババを引かずに勝負が終わるのを祈るしかないな…。
もしババを引いてしまったとしても、またうまいこと時間が戻せれば勝てそうな
ものだが、あまり期待してちゃいけないな。
「俺から引くぞ」
あと三枚。
カードがダブったか、塚本は5のカードを二枚、捨て山に捨てた。
「実を言うとな、お前が一番怪しいと思っていたんだ」
「え?」
「偶然保健室に居合わせ、俺の彼女が入院したその日に演劇部に入部が
決まった藤本美貴…そう、貴様が一番怪しいッ!!」
まあ片っ端から演劇部の部員をジョーカーに変えるつもりだったがね…と塚本は言った。
恋は盲目ってか。男は好きな女のためならなんでもするっつー『情熱』を持ってるのは
承知してるけど…人間、広い視野で物を見なきゃダメなんだぞ。
あたしは何も答えず、彼の手持ちのカードを引いた。
よし、そろった。あと2枚。
で、次は塚本があたしのを引いて、自動的にあと1枚。
こりゃ…ものの数分で勝負がつきそうね…ッ!!