289 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/18(土) 09:50:06.74
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銀色の永遠 〜 スウィート・ハーツ・コレクション
〜
終業式!!
それは学校での一学期の終わり、もしくは一学年間での学業を終えることであるッ!!!
そして、今回の終業式は三学期の終わり!!
つまり後者というわけだッ!!
「いやぁマジよかったぜぇ〜!!古典で点数足りないッつわれたときは
このあたしもさすがにブルッたけどよぉ〜」
藤本美貴は、職員室の奥にある大きなクーラーボックスの中から、プラ製のスコップで
四角い氷を部室から持ってきたケースの中に詰めながら言った。
終業式を迎えたとはいえ、演劇部には体育会系の部活と同じで休みの三文字はない。
なぜなら、春には新入生歓迎会の舞台に立つからである。
とは言っても、部活動こそ行われてはいるが、欠席している生徒もなかなか多い。
それでも、いつもの倍の人数は出席していた。
そんな演劇部の休憩中、ジャンケンで負けた藤本美貴と小川麻琴、そして亀井絵里の
3人は、給水係をまかされてしまったのである。
「点数足りない・・・・・?まさか藤本さん、留年ですか??」
いくつもある黄色いボトルの中に水道水を入れながら、亀井絵里は言った。
演劇部は文化系の部活と認識されているが、こういったボトルを見ていると
どこか体育会系のノリである。
290 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/18(土) 09:51:43.74
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「まさかwあたしは普段やる気がないだけなんだよ。やる気を出せばなんだって
出来る女なんだぜ?美貴は」
「へぇ」
「お前信じてねーだろ?これでも英語という難関も乗り越えてんだかんな。
あ、そうそう思い出した!!お前よぉ〜!前に借りた単語帳に書いてあった冷蔵庫の読み
間違ってたじゃねーかよ!!!冷蔵庫の読みは『りふりじーたー』じゃあねぇッ!!
『リフリジュレイター』だぞッ!?」
「り、りふ・・・・りふりじーたー?」
「・・・・・なんでもねぇ。ま、今じゃアメイジング・グレイスの歌詞も見ないで歌える
くらいに英語力はついたわけよ。古典もそのノリでかわしたのさ。ってかさ、
それ水道水だろ?浄水器ちゃんとついてる?O-157とか最近けっこう話題だからな。
最近話題の細菌ってか?」
「肌寒くなってきた。上着持ってくればよかったな・・・・・まぁ大丈夫ですよ。
ちゃんと浄水器ついてますから。あの、ところで・・・・・・」
「ン?」
「石川さんは進級できるんですかね?ずいぶん長い間入院していたけど・・・・」
「・・・・ふっ」
「なんですか、その笑いにも似たタメ息は」
「美貴は悪くねぇよ・・・・・運命がそうさせたのさ、きっと」
291 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/18(土) 09:54:49.48
0
亀井絵里は、その一言で決定的な言葉を聞くまでもなく理解した。
石川さんは運がなかったんだ・・・・・いや、むしろ逆かもしれないな。
こんなアバズレな人を相手に二次審査をして、死ななかっただけマシだよ。
命を運ぶと書いて運命か・・・・・よく言ったもんだ。
でも石川さんって幸薄そうだもんなぁ〜僕も人のことは言えないけど。
「oi!!!ミキティに亀ちゃん!!!サッカー部からポカリの粉、もらってきたぜェイ」
「おおあッ!びっくりしたァー!!!」
音も無くその場に現れた小川麻琴に、藤本美貴と亀井絵里の二人は心底驚いた。
どうして驚いているのか理解不能な小川麻琴は、目をパチクリさせる。
「oioi、鼻水を垂らすほど驚いてどうしたんスカ?二人とも」
「oioiじゃあねーッ!!おめー『FRIENDSHIP』の能力使ってここまで来ただろ!?」
「お、ワカる?練習中はさんざ動き回って疲れたからなァ。コレ、すげーラクなんスよ」
「ラクだとかラクじゃねーとか、んなこたぁどーでもいい!!前にも言ったろ!?
お前はドスドス歩いてる方がお似合いだって!!!」
「oioiまたそれかよッ!!ショック!!!!」
「ふ、藤本さんって…本当に言う事が容赦ないなwそれにしても、マコっちゃん
よくそんなイイものもらって来れたね?」
「オウ、マネージャーの小猫ちゃん達が買いすぎたんだってヨォ。顧問の北澤先生が
嘆いてたヨ。ワタシらからしたら棚からぼた餅だけどナァ〜!!」
小川麻琴は満面の笑みで言った。
292 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/18(土) 09:58:33.22
0
黄色いボトルを敷き詰めた大きな黒いカゴを亀井絵里と小川麻琴が、短い時間なら
クーラーボックスの役割を果たしてくれるケースを藤本美貴が肩にかけ、
3人はダラダラと部室を目指して歩く。
「あー重てぇ」
「こんなん持って階段上りたくねぇよなァ、亀ちゃん。ワタシはイヤだ」
「イヤだって言っても、ジャンケンで負けたのは僕らだし」
「なぁ、亀もマコもよぉ〜。なぁんかノド渇かねぇ?」
「あぁ、藤本さんのボトルならこのカゴの奥の中に・・・・・ってか、まだポカリの粉
入れてないですけど。ハイどうぞ」
「ん、水なんかには興味ねぇよ。それよりどうよ?ちょうど今、あたしらは
生徒ホールの前に差し掛かってきているわけだが・・・・・」
そう言うと、藤本美貴は生徒ホールの中にある自動販売機を遠目から眺めて
舌なめずりをした。その行為が何を表しているかは、聞くまでもなかった。
「ちょ、ダメだよ!!そりゃいつもなら練習中抜け出して自販機でジュース買ったり
してるけど、出席率悪いとはいえ、いつもより人がいるんだ。生徒ホールに
大人数でおしかけるワケにはいかないから、こうやってわざわざボトルに水を・・・・・」
「わかってるよ。でも、今は美貴たち3人だけだぜ?」
293 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/18(土) 10:00:36.26
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「う、う〜ん・・・・でも・・・・・・」
「麻琴ッ!!君の意見を聞こうッ!!!」
亀井絵里が何かを言おうとするのを聞かずに、藤本美貴はマジメな表情で
小川麻琴に向き直った。
彼女は静かに答え始める。
「・・・・・・・部室のみんなはノドを渇かしている。ワタシたちはノドが渇いてる中、
みんなのために何も飲まず水を汲んできてあげている・・・・・つまり・・・・」
「「つ、つまり・・・・・?」」
緊張が走る・・・・・・
唾を飲む音さえも・・・・・・響き渡る・・・・・・・・・・・
ゴクリッ
「当然ワタシらの方が肉体的疲労はみんなより大きいってワケだよなぁ〜oiッ!!!
飲もうぜ飲もうぜーっ!!100%野菜ジュース飲みてぇッ!!!!!!」
ドッバアァァァァ〜ン!!!!
294 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/18(土) 10:03:51.25
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「おッおッ!!!さすがマコだぜ!!!話がわかるねェ〜!!ま、あたしは
ファンタグレープにすっけどな!!!!」
「ちょ、ちょっと!!でも・・・・・僕らだけコソコソとジュースなんか飲んじゃって・・・・
いいのかなぁ?」
「おバカ!ワタシはそーゆー風には考えネェなーっ。みんなが冷た〜い水に
氷まで入れて飲めるのは、ワタシたちが水をたくさんのボトルに汲んで、尚且つ氷を
大量に補給してきたからこそだぜoiッ!!しかもポカリの粉末つきサ。ワタシらが
いなきゃあ、水飲み場で大して冷えてもないサビの味がするマズい水をありがたがって、
長蛇の列作って飲んでいたンだ」
「そうだ、そうだ、そうだ!!まったくその通り!!!ハッ!!!
まぁなんだ、そんなに気にかかるんなら無理してジュース飲む必要はねーよ。
先に部室戻っててくれ。美貴たちはジュースを飲んで行くッ!!!行くぜ麻琴!!
どっちが先に自販機に金いれられっか競争だッ!」
「oioiッこの距離で競争ッスか!!?負ぁけネー!!ぜってぇ負けねーッ!!!」
二人は生徒ホールに飛び込んでいってしまった。
大きなカゴを持った亀井絵里は、一人そこにつっ立っていた。
295 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/18(土) 10:08:23.36
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亀井絵里は考える。
部室でノドを渇かしているみんなのこと、そして・・・・・・
実はジュースを飲みたくてしょうがない自分。
飲んじゃえよ、飲んじゃえよ・・・・・・・
グビッ!グビッ!!って音鳴らして粒々が入ったオレンジジュース飲んじゃえよ・・・・・
「・・・・・・・はッ!!なんだろう・・・・今日はサッカー部に出ているハズの吉澤さんの
声が聞こえてきた気がするッ!!って、気のせいか・・・・・どうしようかな・・・う〜ん・・・・
・・・・・・ま、今日はさゆ部活に出てないし、さゆを待たせるワケじゃないから、いっか♪」
亀井絵里は、重たいカゴを抱えて二人のあとを追っていった。
・・・・・そして、彼女たちは引かれ合う。
磁石が引かれ合うように。地球上のすべてが重力に引っぱられているように。
同じように、人と人との間には引力がある。たとえ、望んだものではなかったとしても。
だが、そこから学ぶものがあったとしたら・・・・・それは・・・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
334 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:07:18.04
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生徒ホールの中は、さすがに登校最終日で午前授業の日程ということもあってか、
いつもより人の入りは少なかった。
それでもHRが終わってから既に3時間が経っているので、これだけの生徒が
ダベッているのは不思議だ。
中等部、高等部関係なく、校内で遊んでいる生徒が多いという証明である。
「なんだ、けっきょくお前も来たのか」
「うん、僕もジュース飲みたい。それに、肝心の氷は藤本さんが持ってるわけだし」
「ああ、これな。忘れてた。ってか麻琴よぉ〜、パックの野菜ジュースなんて
よく飲む気になるなぁ」
「oioi、ミキティ野菜嫌いッスか?ワタシは好きだぜ〜カボチャとかたまんないね。
カレーの中に肉のかわりにホクホクのカボチャ入れたり」
「肉の代わりにカボチャ〜?ゲェー。あたしならぜってー肉の方がいいけどな」
そう言うと、藤本美貴は炭酸飲料をゴクッゴクッとノド鳴らして飲み、
ゲェッ!とゲップをはいた。
335 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:08:33.17
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「きたなッ!!藤本さん!!場を慎んでよ!!!」
「場を慎めって言ったって、別に誰に見られてるわけでもないし」
「人に見えないところだったら何をしてもイイってワケじゃないでしょう?
オシャレだってそうだ。見えない部分だからって、ブーツの下にくるぶしまでしかない
靴下なんて履いたりしないハズだよ」
「いまいち説得力に欠けてる気ィする例えだな」
「とにかくッ!藤本さんは女の子なんですからね。勉強もそうですけど、
やる気を出せば藤本さんはスゴイ人なのにもったいないよ。元は美人なんだし」
「そうだな〜亀ちゃんの言う通りだぜoi。内面的に男顔負けの粗暴な分、
外見くらいは女らしさを気取ってもいいんじゃないカイ??」
「元は美人かぁ〜さすが亀井は女を見る目があるな!!ゲップ!!!」
「ノォォォォッ!!ワタシにゲップをかけるなァーッ!!!」
小川麻琴は一人悶絶した。
そして、この人の前世は絶対男だ!!と強く思ったのだった。
336 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:11:49.17
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「こらこら藤本さん!なんもわかってないじゃあないですかッ!!」
「んなこと言ってもさ、炭酸飲んだ後ってゲップは確実ッ!!それに・・・・
お前ら部屋で一人でいる時『屁』の一つや二つこくだろ?」
藤本美貴は小声でボソリと訊いた。
「そんな話は石川さんにしてよッ!!」
「まぁまぁ最後まで聞けよ。いいか?誰もいない場所で屁ェこいても、バレる
ことはねぇ。誰もいねーんだからな。ぶっとんだ話、犯罪だってバレなきゃ
犯罪とは認識されねーんだぜ?」
その時、二人の目つきが変わった。
何か聞いてはいけないことを聞いてしまった…そんな目で藤本美貴を
見つめている。
「ふ、藤本さん・・・・」
「oioiミキティ・・・・まさか・・・・・・」
「お、おいおい勘違いすんなって!!美貴は犯罪なんて犯さねぇ、あくまで例えだよ。
要はバレなければこの世は何をしても罰せられない『必要悪』があるわけで・・・・」
説明しながら、彼女は自分でも何を言ってるんだと思えてきた。
これじゃまるで、自分が悪事を行っている人間を肯定しているみたいだ。
だが、どんな凶悪犯も素性がバレなければ決して捕まることはない。
これは世の中の生み出した悲しい現実なのだ。
「なんだか自分が何を言いたいんだかわからなくなってきたし」
と、その時である。
337 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:12:32.08
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『その通りッ!!バレなければ犯罪は犯罪にはなり得ないッ!!!!』
338 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:14:42.15
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「「「・・・・・・・・・・・・?」」」
突然、彼女ら3人の会話に割り込んできた者がいたのだ。
声の主は意外と近くにおり、すぐそばの丸いテーブルに一人で腰掛けていた。
「・・・・・oioiなんだアイツ。ワタシらに言ったのか?」
「さぁね。見たところイケメンだけど、中身はただのバカみてーだ」
「・・・・あれ?僕あの人見たことあるぞ・・・・・C組の亀梨くんと何故かよく一緒に
いる高等部の2年生だよ」
「え?じゃあ美貴とタメか。亀井、名前知ってる?」
「えっと確か・・・・・赤西・・・・仁・・・・・・くんだったかな・・・・・・・」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
339 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:16:12.41
0
赤西仁と呼ばれた少年は、一人マッチ棒パズルをして遊んでいるようだった。
マッチを持った手は動いていない。
「なんだ、オメーの知り合いだったのか」
「い、いや・・・・・・あくまで亀梨くんとよく一緒にいる所を見るだけで、
僕は話したこともないよ。まぁカッコイイとは思うけど・・・・」
僕はさゆ一筋だからなぁ〜。
その出かけた一言を、亀井絵里は必死に飲み込んだ。
「お?オレのことカッコイイと思う??いや〜照れるな。よく言われるけど」
そう言うと、赤西仁はつまんでいたマッチ棒をピンッと指で弾き、
亀井絵里に向かって飛ばした。
「わ・・・・ッ!?」
パシッ!!
それを、藤本美貴は無言で手を出してキャッチする。
340 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:18:50.89
0
「お、すごい動体視力だなぁキミ」
「美貴たちに何か用?ずいぶんと馴れ馴れしい態度してくれてるけど」
言いながら、彼女は手の中のマッチ棒をボキッとへし折った。
その行為を気にとめることなく、彼は口を開く。
「オレの名前は赤西仁・・・・・・赤い西の御仁と書いて『赤西仁』さ。血液型は大雑把な
O型。得意なスポーツはサッカーで、リフティングの過去最高記録は838回。
あ、今すげーと思っただろ?家で飼ってる愛犬の名は『テン』『マル』『ピン』っつって…」
「「「???」」」
突然の自己紹介に、彼女達は困惑した。
何を言ってるんだコイツは?
ただのバカか?それとも新手のナンパか?
そのとき藤本美貴は、ふと去年この生徒ホールで出会ったババ抜きの
スタンド使いのことを思い出した。
「oioi、誰もお前のプロフィールなんか聞いてないヨ」
いつまでも喋り続ける赤西仁に、小川麻琴が言い放つ。
とりあえずめんどくさいから用件だけ言ってくれ、そう思ったのだ。
そういえば、以前もこんなことがあったなぁ。
同じ一年生の岩出山も、やたらと長い自己紹介を・・・・そーいやアイツ、
行方不明になっちまったんだよな・・・・oioi・・・・・・・・
341 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:20:41.80
0
「なに?まだ自己紹介は終わってないんだけどな」
「別に自己紹介なんてどーでもいいッて。ワタシらに何か用カイ?」
小川麻琴のその一言に、赤西仁はピクンと眉毛を吊り上げた。
しかし、彼女たちは3人ともそれには気付いていない。
「どうでもいいだって?おいおい、どーでもいいってこたぁないだろ?
だってさぁ・・・・・・」
「ンン?だってなんだよ、oi」
彼女が聞き返すと、赤西仁は立ち上がり、戸惑うことなく、自然にさらりと
こう口にした。
「きみは、これからオレの『彼女』になるんだぜ?オレのこと、よく知って
もらわなきゃ困るんだよ・・・・・」
ドッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!
342 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:24:05.48
0
「き、聞いたかよ亀井ッ!!麻琴が愛の告白されたぜーッ!!!こりゃあ世も末だな!!」
「な、なんかショックだ!!なんだか知らないけど、僕はショックだッ!!!」
「ooooooooooiッ!!!二人ともそりゃネェよ!!!!そもそもよぉ、いきなり
そんなこと言われたって、ワタシの心の整理ってもんがつかねーよoioi。
いやぁ〜しかしなんだ、ワタシって結構知らないとこで見られてるンだなぁ〜。
なんだか自信がつきそうだぜ」
そんなセリフを陽気に吐く小川麻琴だったが、赤西仁の前に立つと
胸を張って言った。
「でもよ〜ワタシはアンタの事をまったく知らないのヨ。ん、二年生って
ことは先輩だから敬語の方がいいのか??まぁとにかく、そーいうことは
もっとお互いのことをよく知ってから言うもんだ。付き合うっつーなら尚更な」
それに、初対面の男と付き合っているほど彼女はヒマではない。
人には言えないが、自分には目的があるのだ。
そう、いまの彼女には・・・・・色恋にかまけているヒマはない!!!
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!
343 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:25:55.03
0
ところが、そんな小川麻琴に対し、赤西仁は表情を変えることなく述べる。
「おいおい、なんか勘違いしてないか?オレは別に付き合ってくれなんて言ってないぜ?」
「・・・・・ハイ?だって、彼女になるとかどうって・・・・」
「う〜ん、説明が足りなかったな。じゃあこうしよう。今からオレと一つ賭けをして、
負けた方が相手の言う事を一つ聞くのさ」
「はぁ〜?賭けぇぇ??」
訝しげな表情でそう言ったのは、他ならぬ藤本美貴であった。
去年の塚本高史との一件が、少しばかり彼女を注意深くさせたのだ。
だが、小川麻琴は藤本美貴のそんな気も知らずに、
「賭け?いいねぇ、やってやるぜoi」
と言ってしまった。
344 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:27:36.82
0
「ちょ、マコおま・・・・」
「ちょっと面白そうじゃネ?負かせば言うことを聞いてくれるってんだし。
てっとり早く負かしてこの重たい氷とカゴ、部室まで持って行ってもらうとかよ〜」
「…ほー、じゃあキミが買ったらオレがその荷物を部室まで持ってけばいいんだな?」
「聞こえてたのかヨ。まぁそんなとこだな〜。で、アンタが買ったらどうするんダイ?」
「さっき言ったじゃんか。キミが負けたら、オレの『彼女』になるのさ」
赤西仁は、自信満々に口の端をつりあげて言った。
そんな二人のやりとりに、不安を抱き始める藤本美貴がいたのだった。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…
345 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:29:58.98
0
「ところで、何をもってして『賭け』をするンだい?見たところ、トランプも
何も持ってはいねーみたいだけど・・・・?」
「賭けなんてもんは何でもできるのさ。そうだな・・・・・『あみだクジ』なんてどう?」
赤西仁は制服の懐から生徒手帳とペンを取り出すと、メモ欄のページを
一枚ビリッと剥がした。
「ここに2本の線を引く。もちろん、あみだクジだから右を選んでも左を選んでも
どちらに辿り着くかはわからない。先にハズレを引いたほうが負けってワケさ。
どうよ、簡単だろ?」
簡単な説明を終えると、赤西仁は持っていたペンを握った。
それを小川麻琴は止める。
「どうかしたの?」
「待てよoioi。こりゃー賭けだろ?アンタがあみだクジを作るなんてちょっと
フェアじゃあね〜よなぁ??賭けとしはよぉ〜」
「・・・・・ま、それもそうだな。第三者の協力を得るか・・・・おぅい、そこのキミ〜」
彼は、やや遠目の場所に座っていた女子生徒に声をかけ、事情を説明した。
女子生徒は「何言ってんの?」という顔をしていたが、赤西仁があみだクジを
作ってくれるだけでいいと説明すると、不思議な顔をしながらも線を引いて、
答えの欄にインデックスを貼り、あみだクジを作ってくれたのだった。
346 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:31:57.71
0
「ほら、賭けの題材は出来上がったぜ。いいかい?ハズレを引いたら
その場で負けだ。さぁ、キミから引いていいよ」
2本しか縦線のないあみだクジは、まるでハシゴのようだ。
答えの部分には黄緑色のインデックスが貼られており、見ることはできない。
まぁ賭けなんだし、あたりまえか・・・・
「ところで、ワタシから引いちまっていいのカイ?」
「ああ、どうぞ。オレって優柔不断なんでね。たぶんいつまで立っても決められない
だろうからさ。ま、残り物には福があるって言うし・・・・・」
「・・・・・フン」
小川麻琴はペンを握ると、あみだクジを睨んだ。
2本しかないということは、実質自分が引いたもので勝負は決まる。
つまり赤西仁が選ぶまでもなく、自分がアタリを引けば勝ち、ハズレを引けば
負けが決定するというわけだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
347 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:35:51.38
0
う〜んどっちにすっかなぁ〜・・・・・・・
右・・・・・いや左・・・・・いややっぱり右・・・・・・・
「マコっちゃん、悩んでるの?」
「亀ちゃんよぉ、こーいうのってアレだよなぁ〜。右か左かってことはつまり、
朝か夜か、YESかNOか、男か女かってことだよなぁ〜?男と女だったら、
やっぱり男を選びたいよなぁ?oi」
「う、うん・・・・・・」
「あれ、亀ちゃんは違うのカイ?」
「おいおい、仲間同士で相談とかフェアじゃあなくないか?」
「ちっ、セクシーボーイがお怒りだぜ・・・そうだな」
小川麻琴は、両の手のひらを自然に組ませてみた。
その手は、右手の親指が上になっている。
「右手の親指が上ってこたぁ、ワタシの前世は『男』ってぇことサ。
つーわけで・・・・・・・右だな!!!」
そう言うと自信満々に彼女は右側の棒に『マコ』と書いた。
あとは引いてみるだけだ。
アタリが出れば勝ち、ハズレが出れば負け・・・・・
くだらない賭け事なのに、何故か緊迫している小川麻琴がいた。
そして、線をなぞっていくと・・・・・辿り着いたのは左側の棒の先。
黄緑色のインデックスを剥がせば・・・・・そこに結果が出ている。
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…
348 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:36:59.42
0
「・・・・・・・行くぜoi」
「ああ・・・・・・・・・・」
349 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:37:37.18
0
ベリッ!!!!!!
350 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:38:41.56
0
「「「ああッ!!!」」」
インデックスを剥がしたそこには、『ハズレ』の文字が無情にも書き記されていた。
小川麻琴は、あみだクジを使った賭けに負けてしまったのだ。
勝負はあっという間だった。
「ハズレを引いたね・・・・・つまり、自動的にまだ引いてないオレの勝ちってわけだ」
赤西仁は、頬杖をついて言った。
ジャアア〜ン!!!!!!!
351 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:40:14.55
0
「おい、負けちまったじゃねーか麻琴。どーすんだ?」
「やっべ」
小川麻琴は苦笑いを浮かべた。
彼女は、まだ事の重大さに気付いていなかった。
「さ・・・・約束通り、オレの彼女になってもらおうか?」
「oioi?本気で言ってんのかアンタ?そんぐれーで付き合うとかネェーってw」
「ない?お前は確かに賭けたハズだぜ??だからあみだクジを引いたんだろう?」
「そりゃあそうだけれども・・・・」
「認めたな・・・・つーことは、キミの『心』はオレの虜になったってぇーことさ!!!」
ドオォォォォォォウッ!!!!!!ドンッ!!!!!!!!!!
352 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:42:37.59
0
「「なッ!!?」」
その時、藤本美貴と亀井絵里の二人は信じられないものを見た!!
いつのまにか出現していた赤い装束をまとったビジョンに、背中から胸を貫かれている
小川麻琴がそこにいたのだ!!
彼女の胸から生えた赤い腕には、何かが力強く握り締められていたッ!!!
「ま・・・・・マコッちゃん!!?」
「血が出てねぇ・・・・・・テメェッ!!!マコに何してやがる!!?」
藤本美貴はすかさずブギートレイン03を出し、赤西仁の赤い装束を
まとったビジョン…スタンドに攻撃を仕掛ける!!
ところがッ!!!
バッキィィィィィィィィンンンッ!!!!!!!!!!!
「な、何ィッ!!?」
彼女のスタンドの拳は、いとも簡単に防がれてしまったのだ。
小川麻琴のFRIENDSHIPの手によって。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…
353 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:47:20.59
0
「麻琴おめー・・・・無事だったのかよ・・・・・しかし・・・・こいつぁ何のマネだ・・・・?」
「ワタシは・・・・・彼の愛の奴隷なのサ。彼を傷つける者は、ワタシが許さネーぜ」
「お前何を言って・・・まさか・・・・・・コイツになんかされたんだなッ!!!」
バカなようで、実は計算高い小川麻琴の目がフラフラと泳いでしまっている。
まるでコイツがコイツじゃなくなったみてーだ・・・・・・藤本美貴は赤西仁をきつく睨んだ。
そんな彼女に、彼はおどけて両手を挙げて見せる。
「おっと!オレを攻撃すんなよ?別に痛い目あわそーってんじゃあねーんだからさぁ…」
その時、彼らが賭けに使っていたあみだクジを見ていた亀井絵里が、
素っ頓狂な声をあげた。
「あぁッ!これは!!!」
「亀!?どうしたッ!!!」
「こ、このあみだクジ、アタリがないぞッ!!!両方ともハズレだよ!!」
開かれていないインデックスを剥がして現れた文字、それは紛れもなく『ハズレ』だった。
そう、初めから『アタリ』などなかったのだ。
『ハズレ』しかないあみだクジで、彼らは賭けをしていたのだッ!!!
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!
354 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/19(日) 07:53:12.88
0
「先手が勝利とは限らないことの証明だな」
「き、きたないぞッ!!こんなのイカサマじゃあないかァーッ!!!」
「きたない?亀井、オレはアタリがあるなんて一言も言ってないぜ?
『先にハズレを引いた方が負け』と言ったハズだけどな。だから、先にハズレを
引いたこの女の負けなんだよ・・・・ちなみに、あみだクジを作ってくれたあの女の子は
オレの級友さ」
「な、なに・・・・・ッ!!」
「バレなきゃ犯罪じゃあない・・・・そう言ったのは藤本美貴、キミだったな。
イカサマも同じなんだ。バレなきゃイカサマもクソもないんだよ・・・・・・
ま、このバカを助けたかったらオレと賭けを続けるんだな。お前ら二人とも
オレの『彼女』にしてやるがね」
ドッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!
474 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/21(火) 07:33:54.34
0
「オレのスタンドは賭けなどの勝負事に負けた相手の『心』を虜にさせる能力!!
名前は『ヘズィテイツ(躊躇い)』・・・・『ズ』と『テ』の間に小さい『ィ』がつく・・・・
小川は賭けに敗北したことを認めた!!したがって『心』は俺の虜になったのさ」
赤西仁は長めの髪の毛を両手で立ち上げながら言った。
ああ、なんということであろうッ!!
賭けに負けた小川麻琴は『心』の虜・・・・・つまり愛の奴隷になってしまったのだ!!
だが、どこからどう見ても普段の彼女とは外見上の変わりはない。
しいて言えば、目が泳いでしまっていることくらいか。
ただ、一つわかることは、彼女が操られているとか、そういったことは
断じてないだろうということだ。
藤本美貴が『ブギートレイン03』で攻撃をしかけた時の小川麻琴の口調は、
彼女自身の意思によるものだと思えるくらいにハッキリしていたのだ。
「てめぇ・・・・・何が目的だ?いったいマコに何の恨みがあってこんなことをッ!!!」
藤本美貴はケンカ腰にスタンドを構える。
それに反応するように、小川麻琴も赤西仁を守るために、いつでも迎撃を取れるよう
スタンドを構えた。
「恨み?とんでもないね、恨みなんかあるもんか。オレはただ『彼女』が欲しいだけさ。
明日から春休みだろう?それに四月からは高校三年生、いわば受験のシーズンよ。
恋人を作るなら今しかないって思ってな」
「何だって?」
「ま、この女を恋人にするつもりはねーよ。オレにだって選ぶ権利はあるからな・・・・
だから、こうつかうのさ・・・・・おい小川、ゴリラの物マネをしろ」
赤西仁が命令すると、小川麻琴は大きく頷き・・・・・・
475 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/21(火) 07:37:02.02
0
「ま、マコっちゃん・・・・・ああ・・・・な、なんてことをッ!!!」
なんと、いきなり隣のテーブルの上に立ち、ゴリラの物まねを始めたではないか!!
しかも顔までそれっぽくゴリラを真似ている!!!
さらに、どこから取り出したのか定かではないが、バナナを持つほどの気合の入りっぷりだ。
「んーッ」
皮を剥こうとしているようだが、なかなか剥くことができないらしい。
イライラしているのか、しきりに「ん〜」と唸り声をあげている。
そして、ポイッとバナナを放り投げた。
「や、やめろぉぉぉぉッ!!マコっちゃん!!僕は知ってるんだぞ!!!キミにだって
誇り高いプライドがあるんだ!!それなのに・・・・・ゴリラのマネなどとーッ!!!」
「ん〜ッ!!」
亀井絵里の声は聞こえているはずなのに、彼女はそれを無視してたった今
放り投げたバナナを拾いに行ってしまう。
生徒ホールにいる事情を何もしらない生徒達は、そんな小川麻琴を見て
クスクスと含み笑いを浮かべていた。
476 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/21(火) 07:39:43.53
0
「くははははははははッ!!こりゃ笑えるなッ!!!ケッサクだ!!!
小川うまいぞッ!!!別の意味で惚れちまいそうぜwww」
「・・・・・・・・・・・・・」
「どうしたんだよ藤本、目つきが悪いぞ?楽しめよ〜、今の現状をよぉ〜ッ」
「ふざけやがって・・・・・あたしはな、やろうと思えば赤西!!アンタを再起不能に
することはワケない・・・・だがそれをしないのは、マコがアンタの守りに回っているからだ。
アンタをぶっとばすというクソ以下のくだらねー理由で、退院して間もないマコまで
ぶっ潰すワケにはいかねーからな・・・・・・!!!!」
怒りに震えた声で、藤本美貴はテーブルの上にドガンとクーラーボックスを置いた。
そして、そのフタを開いて中身を赤西仁に見せる。
「藤本さん・・・・・何を?」
藤本美貴は亀井絵里の質問には答えず、無言で赤西仁に対面する椅子に
腰をかけると、彼の目から目を離さず説明を始めた。
「この中に氷が詰まってる・・・・・どれもこの生徒ホールの暖房による熱の
影響で溶け始めてるけどよぉ・・・・・・」
「これがどうかしたのか?」
すると藤本美貴は、クーラーボックスの中の氷を一つ取り出し、テーブルの上に
カトゥーン!!と音を立てて置いた。
「ルールは簡単。この氷を交代で一つずつ積んで、崩したほうが負けだ」
477 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/21(火) 07:41:12.62
0
!!!!!!!!!!!!!
「ま、まさか藤本さん・・・・・・ッ!!!!」
亀井絵里が驚愕の声をあげる中、藤本美貴は躊躇うことなく言ったのだった。
「麻琴の『心』とその名誉のために・・・・・賭けよう!!美貴の『心』を!!!」
「・・・・・・・・グッド!!!!」
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!!!
478 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/21(火) 07:44:39.76
0
「なんだってえええええええええええええええええッ!!!!」
亀井絵里が仰天するのも無理はない。
なぜなら、目の前にいる赤西仁はイカサマをして小川麻琴との賭けに勝ったのだ。
正当な賭けなど出来るわけがないことは、日を見るより明らかである。
「ば、バカな・・・・やめて下さいッ!!今度はどんなイカサマをするかわかりませんよ!?」
「イカサマなんかさせっかよ!!この賭けの方法はあたしが決めたんだ。
それに、麻琴をこのまま放っておくわけにもいかねぇ・・・・」
藤本美貴は、アホのようにゴリラの真似をしている小川麻琴を見て言った。
麻琴に対する侮辱は・・・・・この美貴が晴らす!!
彼女の心は、熱く滾っていた。
「・・・・・・欲しいならすべてをやるよ・・・・けどな、本当に『心』まで奪えるもんか。
どんなことがあろうと、美貴はアンタに心まで奪われたりはしねぇぜ・・・・・・
アンタは無事にここから帰ることはできない」
「・・・・『心』なら奪えるとも。それがオレの能力なんだからな」
「ふん・・・・アンタが負けたら麻琴を元に戻すって保証は?」
「さっきも言ったが、俺のスタンドは負けたと認めた相手の心を虜にし、
愛の奴隷とするスタンドだ。『敗北感』とは心に隙間を作り出す・・・・・オレが負ければ、
俺の心に隙間が出来て、小川の心はヤツ自身の身体に逃げていくだろうよ。
オレは負けんがね。それと・・・・・・勝負の前に、この氷を調べても構わないな?」
「いいよ。アンタにもイカサマを調べる権利がある」
479 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/21(火) 07:46:53.66
0
赤西仁がクーラーボックスに入っている氷を調べている中、亀井絵里は
不安な心持ちで藤本美貴を見つめた。
腕っ節なら藤本さんと、彼女のスタンド『ブギートレイン03』の方が上だろう・・・
でも、これは腕力勝負じゃあない・・・・賭けなんだ。
氷を積み上げ、崩したほうの負け・・・・・精神力、集中力、バランス感覚が問われるぞ。
これはもはや、赤西くんとの闘いじゃない・・・・!!
精神的動揺によるミスを犯すやも知れぬ、自分自身との闘いなんだッ!!!
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…
480 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/21(火) 07:48:24.43
0
「ン?なんだよ亀、そんな目で美貴を見るな」
「だ、だって・・・・・」
「お前は黙って勝負を眺めてくれていればいいよ。それに、コイツはさっきのように
イカサマをすることは出来ないのさ。何度も言うようだけど、この賭けの方法は
あたしが決めたんだからな。今からじゃあイカサマの準備もすることはできない・・・・・・
よって正々堂々!!勝負が出来るってぇワケだな・・・・・」
藤本美貴は自信満々のようだ。
今の彼女なら、この賭けで精神的動揺によるミスは決してないだろう。
勝てればいいのだが・・・・・・・
「うん、これは至って普通の氷のようだ」
「気は済んだみてーだな。さぁ、氷が解けきっちまう前に始めるぜ・・・・赤西!!」
「OKッ!OPEN THE GAME!!ゲームを始めよう!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
637 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/24(金) 09:48:47.13
0
ルールは簡単!!
クーラーボックスに入っている四角い氷を交代で一つずつテーブルに置いて
積み上げていく!!その氷の塔を崩してしまった方の負けだ!!!
しかし、ミキティは小川麻琴を助けるために自分の『心』を賭けているのだ!!
敵は『心』を奪い取り、愛の奴隷としてしまうスタンド使いなのだ!!!
「オレから積んで構わないよな?」
「いいぜ。アンタ、麻琴との賭けの時は後手だったしな・・・・おっと、イカサマしようとか
考えるなよ?イカサマを見つけたその時、あたしは勝負に関係なくアンタの指を
へし折るからな」
「この短時間でイカサマを考え付くと思うのか?それに、これはキミが決めた
賭けじゃねーかよ。最も、バレなきゃイカサマではないんだがね。ま、そう言う
からにはキミこそイカサマしようとか考えてないだろうな?」
「美貴がイカサマ?ありえれいな。あたしにはプライドがある。あんたと違ってな。
プライドがレフェリーさ」
「ふん」
赤西仁は氷を一つつまむと、テーブルの上に置かれた氷の上にそっと氷を乗せた。
イカサマをしている素振りはなく、その手はやけに慎重である。
氷を置き終わると、彼はふぅと息を吐いた。
「やけに慎重なんだな、アンタ」
「建物ってのはよ、土台がしっかりしてないと簡単に崩れちまうんだぜ?
俺は賭けを楽しみたいからな。どんどん積み上げて行こうじゃあねーか・・・・」
638 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/24(金) 09:50:48.41
0
「・・・・・・次は美貴の番だ」
藤本美貴も同じようにクーラーボックスから氷を取り出し、つまんだそれを赤西仁が
置いた氷の上に置こうとする。その動作は、赤西仁よりも慎重・・・・いや、遅い。
これで三段目である・・・・一番下の氷はすでに溶け始めていた。
そして、藤本美貴がつまんでいる氷も指の体温で溶けて水が滴り落ち・・・・・ところが!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?」
勝負の行方を見つめていた亀井絵里は、あることに気付いたのだ。
今、藤本さんの指先が一瞬光ったぞ。
氷が光りに反射したのか・・・・いや、違う・・・・・・・・・・
今の輝きを僕は知っている、いつも見てきたからだ。
藤本さん、一瞬だけど『ブギートレイン03』を指先だけ発現させたぞ!!
まさか・・・・・・つまんでいた氷を<満月の流法>で戻したのか!?
溶け始めていたハズの氷からは、もう水が滴り落ちていないし・・・・・
この人、イカサマをしているッ!?
「ほら、置いたよ。アンタの番さ」
「よし・・・・怖いのはここからだ。4段目・・・・4ってのはいやな数さ、不吉な数字よ。
知ってるか?マンションによっては404号室を欠番として設計しないマンションも
あったりするんだぜ?」
「豆知識なんか披露してる場合か?氷は溶け始めているんだぜ??」
藤本美貴が置いた氷からは、溶け出した水が滴り落ちていた。
ブギートレイン03の<満月の流法>は解除され、氷が時の流れに戻ったのである。
639 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/24(金) 09:53:23.01
0
な、なんてきたないヤツだ藤本美貴という女は!!
彼女はイカサマをやったのだ!!!
赤西仁にバレないよう、死角でブギートレイン03の能力を使い、指で暖めて
溶かした氷を、溶かす前の時間、約20秒弱ほど戻して積みやすくし!!
さらにッ!!赤西仁が積むときには氷の時間は時の流れに戻り、水が滴るほど
溶けて積みにくくなるという、二重のイカサマを行っていたのだ!!!
なにがプライドがレフェリーだ!!
だが、だからといって赤西仁が哀れなどということは決してない!!
なぜなら、彼は小川麻琴をイカサマして負かしたのだ!!!
当然の報いなのだ!!!
「な・・・・・・さっきお前が積んだ氷はここまで溶けてはいなかったはず!!
と、溶けるスピードが速すぎやしねーかッ!!?」
「部屋の暖房のせいじゃあないの?ホラ、さっさと氷積みなよ。時間が経てば経つほど
積み上げるの難しくなるぜ〜?」
「チッ・・・・・テーブルから手をどかせッ!!気が散るぜ!!!!」
「うぇwうぇwwセクシーボーイがお怒りだぜwww」
ニヤリ!!
挑発して赤西仁の怒りを誘っている!!!
勝負事に負けることが大嫌いな赤西仁の感情は、徐々に露になって行く。
そんな彼の姿を見て、思惑通りの藤本美貴はほくそ笑んでいた。
640 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/24(金) 09:55:39.93
0
うはははーッ!!
指で暖めまくってやったからな〜!!これに氷を積むのは至難の技!!!
この賭け、美貴の勝ちだぜッ!!これ以上積めるもんか!!!
バレなきゃイイって考えは美貴も同じなんだってこと忘れたのかバーカ!!!!
「GO AHEAD!赤西仁!!早く積みなよ!!このままじゃ何もしなくても
氷が崩れちまうぜーッ!!!!」
藤本美貴は、クーラーボックスに手を入れて氷をまさぐっている赤西仁を急かし、
さらに精神的動揺を誘う。
実は短気な彼は、歯を食いしばり爆発しそうな感情をこらえていた。
落ち着けオレ・・・・・この賭けはコイツとの勝負じゃあない。
自分との戦いなんだ。
ケンカっぱやい自分自身との勝負なんだ!!
この女の一言一言はオレの堪忍袋の尾をチマチマと刺激してきてガマンならねーが・・・・・・
今こそ冷静になるぜ・・・・・この氷のようにな。
だが藤本・・・・・テメェはオレを怒らせた。
絶対に・・・・お前の『心』、貰い受けるッ!!!!!!
641 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/24(金) 09:57:14.71
0
ピッタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
氷を持った赤西仁が、最上段の氷の上につまんでいる氷が触れるか
触れないかのところで静止する。
ピクリとも・・・・・・動かない。
「『この氷の塔にさらに氷を積むことは不可能だ・・・』『無理だ』と考えて
いるんだろう?なぁ、藤本美貴さんよぉ・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・?」
「ちがうんだな、それが」
d
!!!!!!!!!!!!!
氷は滑ることなく、バランスを崩すことなく積まれた!!!
「なッ・・・・・・・・ば、バカな!!!!この状態で氷を積むなんてッ!!!!!」
「さぁ、オメーの番だぞ・・・・藤本!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
642 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/24(金) 09:58:22.14
0
くぅ〜・・・・・なんて集中力をしてやがるんだ赤西!!!
この状態で氷を積んでみせるなんて・・・・
美貴の次の一手で氷は五段目・・・・・・そろそろやべぇな。
けど・・・・・あたしにはブギートレイン03がある…<満月の流法>があるッ!!!
次は積む氷だけじゃなく、積まれた氷も一端凍らせたほうがいいな・・・何秒戻すか・・・・・
でも<満月の流法>は触れなきゃ発動できねぇ・・・・いま、この氷の塔に触れることは
ルール的にも不可能なことなんだ。
と、すると・・・・積んだ氷を始点にして<満月の流法>を下の氷に伝わらせるしかない!!!
それは、氷を置いてからしばらくの間(と言っても一瞬だが)指を氷の上に乗せて
いなければならない事を意味する!!!
赤西にバレないよう・・・・そして氷のバランスを崩さぬよう・・・・・
やれやれ、難儀なことになってきやがったな・・・・・ッ!!!!
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…
643 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/24(金) 09:59:31.20
0
藤本美貴は下唇を噛み締めた。
精神統一だ・・・・・あたしは絶対にコイツを負かして!!!
麻琴を正気に戻し!!目の前にいるイケメンの皮を被ったミソクソをぶっ飛ばす!!!
ピッタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!
藤本美貴もまた、ピクリとも動かない。
勝負は一瞬だ・・・・・氷を置いた瞬間、即座に<満月の流法>を下の氷の塔に
流し込むんだ!!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そして・・・・・
644 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/24(金) 10:00:07.09
0
トッ・・・・
カッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!
645 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/24(金) 10:02:16.85
0
「え・・・・・・・?」
氷の塔は、二段目から折れるようにして崩れたのだった。
<満月の流法>を流し込むヒマもなかった。
氷の底面が4段目の氷の上面に触れたとき、氷の塔は不自然にバランスを
崩して滑り、テーブルに散らばったのだ。
「ふ、藤本さんんんッ!!!!!!!!」
「ば、バカな!!!崩れるわきゃねーッ!!!!確かに溶けかかっちゃあいたけど…
そんな・・・・・う、うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!」
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!ドォン!!!!!!!!!
突如、全身に伝わった衝撃に藤本美貴は息を詰まらせる。
そして、あまり発達してない胸から突き出た赤い腕を見て恐怖した。
藤本美貴は、その赤い手が何かを握り締めていることに気がついた。
サーモンピンクの、ハートのような形をしたトクントクンと脈打つそれは・・・・
「心・・・・・美貴の『心』・・・・・・ッ!?」
「お前の負けだぜーッ藤本美貴!!!オレのスタンドはッ!!もうお前の『心』を
ガッチリとつかんで離さないんだあああああああッ!!!!!!!!」
赤西仁は立ち上がると、手に持っていた小袋をテーブルの上にぶちまける。
砂糖・・・・・・いや、これは塩である!!!
646 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/24(金) 10:05:49.04
0
「今日は昼間にゆで卵を食べたんでね・・・・塩をかけないで食べたのがよかったな。
今日のオレはツイている、絶好調だぜ!!誰にもオレは止められないッ!!!!」
「食塩・・・・・・・氷・・・・・ま、まさか赤西くんッ!!きみはッ!!!!」
「もう遅いぜ亀井ーッ!!!藤本美貴は!!オレの『心』の虜になったッ!!!!」
亀井絵里は気付いたのだ。
彼のイカサマに、たったいま気付いたのだ!!!
「2段目と4段目の氷に・・・・・塩をかけていたのかッ!?」
「その通りッ!!塩ってのは氷を冷やすために吸熱反応を起こし速く溶かすんだ!!
2段目の氷の底面と上面に軽く塩をつけておいたんだよ!!!しかし危なかったぜ・・・・・
藤本が積んだ氷の溶けるスピードが意外と速かったからな・・・・4段目の底面につけた
塩は滑り止めに使ったのさ」
「な・・・・・きみもイカサマをしていたなんて・・・・ッ!!!」
「きみも?ほ〜う、じゃやっぱり藤本もイカサマをしていたのか。ま、そんな事だろうと
思ってたけどな。しかし本当にやばかった・・・・・氷の溶ける時間がすっかり計算違い
だったからな・・・・・・オレはどうやら、運を味方につけていたらしい」
「ず、ズルいよっ!!イカサマなんて・・・・・・!!!」
「ズルいだと?言ったろう!!?バレなきゃイカサマじゃあないとッ!!!!
藤本だって同じだっただろうがよ!!騙されたヤツがどうしようもなくマヌケなんだ!!
それにもう遅いッ!!オレのスタンドは!!!すでに藤本美貴の『心』を虜にして
やまないんだからなぁ!!!!」
647 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/24(金) 10:07:55.29
0
そうなのだ、勝負はついてしまった後・・・・・・今さらイカサマを見抜いたところで
後の祭り。藤本美貴の進むべき道は決まってしまっているのだ。
スタンドにつかまれてしまったために『時』を戻すことも出来ない。
「う、う・・・・・・奪われるもんか・・・・・・美貴の心は・・・・・美貴だけのものなんだ・・・・・
欲しいなら…すべてをあげるけど・・・・・・心まで奪える・・・・・も・・・・・の・・・・・・」
ドギュウウウウウウウウウウウウウウウンンン!!!!!!!!!
赤西仁のスタンド『ヘズィテイツ』はその場から消えた。
藤本美貴の『心』をつかんだまま、消えてしまった。
そして・・・・・・・・
「アンタすげぇぜ・・・・・・ほ、惚れたぜ!!他の彼(ひと)なんて論外だな・・・・・・」
「ふ、藤本さん・・・・そ、そんな・・・・・」
「あぁ?なんだよ亀、あたしが誰を好きになろーとテメェには関係ねーだろ。
あたしはな、彼の愛の奴隷なんだ・・・・・」
泳ぐ目で、それでいて藤本美貴はハッキリとした口調で述べた。
彼女の心は、赤西仁の『心』の虜になってしまったのだ。
赤西くん・・・・・なんて・・・・なんてズルいことをいっぱいする人なんだ!!
これが自然なら・・・・・なお悪だぞ・・・・ッ!!!!
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!
648 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/24(金) 10:09:14.94
0
「気持ちだけじゃあどうにもならないって事の証明だな」
「あ、赤西くん!!きみは・・・・・ッ!!!!」
「これで二人だ!!藤本美貴か・・・・・悪くねー女だけど、こいつは趣味じゃねぇ。
さて!!ギャンブルを続けよーぜ!!!この二人を元に戻したかったらなぁッ!!!
亀梨にゃあ悪いが、オレとしてはやっぱりお前が一番だな・・・・亀井絵里!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…
95 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/30(木) 22:49:44.00
0
「ねぇねぇ〜明日から春休みだし、噂の『ひょうたん島』連れてってよぉ〜。
あそこ、チョベリグにハッチャけられるって話よ」
「この歳でレジャーランドなんて行くのかよ。カラオケでいいだろ」
「はぁ〜?隣のクラスのプッツン由花子も背の低いボーヤとひょうたん島に
遊びに出かけたって話なのよ?私のこと愛してないの??」
「わかったよ〜。じゃあ来週予定あけといて」
高等部のカップルが、他愛のない会話を交わしながら生徒ホールを出て行った。
彼らからすれば、すぐそばにいた一人の男子生徒と三人の女子生徒は背景でしかない。
いたって穏やかな背景であった。
しかし、その実はドスのきいた闘いが繰り広げられていたのだ。
あみだくじの賭けに敗北した小川麻琴は、赤西仁の『心』の虜・・・・・・
つまり、愛の奴隷と化してしまった。
そんな彼女の『心』を取り戻そうと自ら賭けに身を投じ勝負に出た藤本美貴は、
彼の知恵と精神力の前に崩れ、その『心』を失い、彼女もまた愛の奴隷となってしまった。
そして、残された亀井絵里は・・・・・・
「どうした亀井?賭けをしなきゃ二人は元の二人に戻らないぜ??それとも・・・・・
オレの彼女になるのが怖いのか?勝負する前から負けを認めてブルッているのか?」
「う、う・・・・・・」
亀井絵里は伏目がちにうろたえる。
スタンド能力を使ってイカサマをしていた藤本美貴を、目の前にいる赤西仁は
自身の知恵と屈強な精神力だけで押し勝っているのだ。
敵うワケがない・・・・・彼女はそう思っていた。
だが、同時に疑問も浮かんでいた。
96 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/30(木) 22:51:50.31
0
「勝負したくないならそれでもいいんだぜ?お前よりイイ女はいっぱいいるし…
それに『友達』を見捨てるような昆虫以下の心の女なんざ、こっちから願い下げさ」
「・・・・・赤西くん、一つだ。きみに一つだけ訊きたいことがある」
ピッと人差し指を立てると、彼女は合わせないようにしていた目線を、その時ばかりは
彼とピッタリと合わせた。彼もそれに答えるかのように、視線をそらさない。
「どうしてきみはそのスタンド能力を使うんだ?きみは頭もいいし、聞く限り
運動神経も良さそうだ・・・・・それに・・・・・・二人の『心』を奪ったきみにこんなことは
言いたくないけれど、顔だってすごくカッコいいじゃないか・・・・・」
「・・・・・・」
「こんな姑息なマネをしなくたって、きみなら彼女くらいすぐ出来るだろう?
なのに、どうして?きみは『彼女』という存在に何を求めてるの??」
亀井絵里の素朴な疑問に、赤西仁はふぅ・・・と一息つくと、テーブルの上に
散らばった氷をクーラーボックスに戻しながら語り始めた。
「LOVE or LIKE・・・・・そう、LOVEとLIKEの違いさ」
「LOVEとLIKE?」
「そうだ。LOVEまたはLIKEだよ」
似ているようで否なる単語を口にした彼に、亀井絵里は首を傾げた。
彼はいったい何を訴えようとしているんだろう・・・そう思った。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
97 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/30(木) 22:56:59.08
0
「恋の駆け引きってあるよなぁ〜?単純にいえば押したり引いたりすることだがよ…
俺はな、そーいうくだらない駆け引きに疲れたのさ」
「つかれた・・・・・?」
「ああ・・・・・知り合って、好きになって、アプローチして・・・・・・
すべてにおいて、飽きた。こりゃあ自慢に聞こえるかもしれねーが・・・・・
俺がアピって惚れない女ってなかなかいねーんだよ。俺の性格もよく知らねー
くせによぉ…つまり頑張る必要がないワケだ」
なんと、彼は失恋を知らない人間だったのだ。
恋人と別れるときも、すべて自分から縁を切っている人間だった!!
「そしてこれは俺の経験談だけどなぁ…女ってーのは性格よりもルックスを見ている
生き物なのさ。性格や体裁なんざ見ちゃあいねー…カスみてーなヤツを好きになった
女は、適当な理由をつけてその男を褒め称える・・・熱い仲間がいるだとか、
熱い夢を持ってるだとか、本質とはまるで関係ない『どうでもいいこと』を並べてな」
「そんなこと・・・・・ないと思うけどな・・・・・」
亀井絵里は強く言い返せなかった。
昔、さゆと知り合う前・・・・自分はイケメンな男の子が好きだった。
それを思い出したのだ。
「そんなことはあるね、オレが身を持って知ってるからな。好きになって、
告る前に相手に告白されて、楽しい生活が始まるかと思えば・・・・それはとんだ
夢物語よ。目に付くのは愛情じゃあねぇ…オレに嫌われないよう、好かれるよう、
振られないようビクビクしながら自分を作ってる偽者の心がこもったお世辞さ。
何を言っても治りはしない・・・・・こんなのはLOVEとは言えないと思わないか?」
98 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/30(木) 22:59:36.92
0
「よくわかんないけど・・・・それはきみが好かれている証拠なんじゃあないの?」
「なら余計にフェアじゃないな。オレの機嫌を伺って性格作るんだぜ?女どもはよぉ。
オレが好きになった性格はなくなっちまう・・・・作られた性格を好きになってやるほど
オレは優しくはなれないね。つまりそういうことさ・・・・女ってやつは真正面から愛を
ぶつけ合うことができないんだ。それはLIKEで好きになっている証拠!!俺が求める
ものは真実のLOVEだけだ!!そしてLOVEで好きになる女なんて存在しない。だから・・・」
「だから・・・・・・心を奪うの?」
「ま、そういうことさ。オレのスタンド『ヘズィテイツ』の力があれば、真剣に
愛情をぶつけ合うことができる!!心を開ききった恋ができるッ!!!だから、ホラ」
その時である。
突然、彼の後ろに立っていた藤本美貴と小川麻琴の様子が変わったのだ!!
まるで何かに気付いたように、目を見開いている。
「あ、赤西クンよぉ・・・・・今、あんたの心は美貴に通じたぜ!!!」
「oi…oioioioioioioioioioiッ!!ワタシにも通じたぜ・・・・彼の想いが!!!!」
ドギャン!!!!
二人の背後にそれぞれのスタンドが姿を現す!!
そして、彼女らがとった行動は・・・・・
99 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/30(木) 23:02:15.20
0
「FRIENDSHIP!!」
「ブギートレイン03ィッ!!」
ガッシイィィィィィィィィンンンッ!!!!!!!!!
二つの拳がぶつかり合う!!
なんと、彼女達は突如戦闘を開始したのだ!!!
「アンタとはマジでやってみたかったよ・・・・・マコ!!!今回は去年の暮れのようには
いかねぇ・・・・マジでいかせてもらうかんなーッ!!赤西クンはあたしのもんだ!!」
「わりーけど負けねぇッスよミキティ・・・・アンタに屈服するようじゃあ、ワタシの
目的もクソもないからなァ・・・・それに彼は渡さネェーよoiッ!!!!」
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!
100 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/30(木) 23:04:03.24
0
「な、なにをしたんだッ!?二人が突然・・・・・!!!」
「ツーといえばカー、『阿』といえば『吽』というように・・・オレらは心が繋がって
いるのさ。なんせ恋人なんだからよ・・・・こいつら、オレのすべてを何と引き換えにしても
いいくらいにオレを愛しているんだ。二人はいま、オレを取り合っているのさ」
彼らの後ろで戦闘が始まる!!
並々ならぬ気迫に、生徒ホールにいた少ない生徒達はざわつき始めていた。
101 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/30(木) 23:07:30.90
0
「oi!!oioioioioioioioiッ!!!!!!」
「・・・・・・・」
「な、なんだ・・・・ミキティにワタシのパンチがあたらねぇーッ!!!」
「オメーの攻撃はすでに見切った・・・なんせ『一度食らっている』んだからな」
「食らっている・・・・・ハッ!!ミキティ・・・・・まさか時をッ!?」
「勢いのついた右の拳はフェイク・・・・軽めに繰り出した左の拳が本命なんだよな。
能力であたしの身体の摩擦をなくし、さらにそこのテーブルで追い討ちをかける・・・・
つもりだったんだろう麻琴ォッ!?死ぬほど痛かったぞ!!!行くぜマコ!!
ゴールデンッゴォォォォル決めてッ!!!」
「負けネェ…ぜってぇ負けねぇ・・・・!!ユウゥゥゥゥキャンッドゥウゥウウゥゥゥウゥゥゥッ!!
!!!」
「VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVッ!!!!!」
バリバリバリ・・・・・ドッパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!
激しい攻防が一体となった二人のラッシュは、勢いで外へ通じる出入り口から
飛び出していってしまった。
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンン!!!!!!!
102 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/30(木) 23:10:02.73
0
「ツーといえばカー・・・・阿といえば吽か・・・・」
亀井絵里は、二人が飛び出していった外に通じる出口をボーッと見つめて
赤西仁のセリフを反復した。
「それは確かに幸せかもしれない」
彼女は本心からそう答えた。
赤西仁の考え方を肯定することは、正直気分のいいことではなかったが・・・・・
しかし好きな人間と心まで結ばれたなら、どんなに幸せなことなのだろう。
これは、片思いをしている人間が常に追い求めているものだ。
ましてや亀井絵里にとって、その思いは現在進行形の話なのである。
ああ、なんということであろう!!勝負をする間でもなく、彼女は彼の考え方に
屈服し、藤本美貴と小川麻琴の心を取り戻すことを断念してしまったのか!?
だが、彼女はさらに続けてこう言ったのだ。
「でもね、それは偽者だよ」
「偽者?」
「うん、偽者だね・・・・・・『絆』のない愛なんて偽者さ。カラッポだよ・・・・・・
今の藤本さんとマコッちゃんを見て尚更そう思った!!!」
眉毛の端をピクッと吊り上げた赤西仁から目を離すことなく亀井絵里は言い切り、
彼と対面するイスに腰をかけた。
103 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/30(木) 23:16:16.46
0
「きみの考え方は『絆』というものを無視している・・・だから教えてあげるよ。
愛ってのは永遠じゃあないんだ。いずれ薄れてなくなるものなのさ。僕には好きな子が
いるけど、いつかその気持ちもなくなっていくんだろうね。けど、それでも僕は
あの子を好きでい続けるんだと思ってる・・・・なぜならッ!!!!」
亀井絵里は叫ぶと、どこから取り出したのか四角いケースをテーブルの上に
叩きつけるようにして置いた!!
これは・・・・・トランプだ!!!
「僕とあの子には『絆』があるからだ!!『絆』は例え片思いでも
愛を持続させるんだよ!!!そして『絆』は100%分かり合えないからこそ生まれ、
湧き上がってくるものッ!!ツーカーの仲でも、阿吽の呼吸でもないからこそ
お互いが分かり合おうとして深まる…それが愛なんじゃないの!?『絆』のない、
カラッポの愛なんて・・・それこそ昆虫以下の心の人間だね!!!」
104 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/03/30(木) 23:17:33.81
0
「て、てめぇ・・・・・・」
「そんな昆虫みたいな心になった藤本さん達は、僕が必ず元の人間の心に戻すさ」
「・・・・・・言ってくれるな亀井。つーことは…」
「さぁ赤西くん!!このトランプカードを取りなよ!!!僕が小さい頃に
お父さんから教わったゲーム・・・・・・『くるりんぱ』でカタをつける!!!」
「・・・・・いいぜ!!なんだかテメーは意地でもオレの『彼女』にしてやりたく
なってきたッ!!!その腐った理想論、忘れさせてやんぜーッ!!そしてその前に!!
例の言葉を聞かせてもらおうか・・・・・・・・亀井絵里!!!!」
「わかった・・・・・二人の人間らしい『心』を取り戻すために・・・・・僕の『心』を賭ける!!!」
「グッド!!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…
284 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 08:45:49.30
0
机の真ん中らへんにポツンと置かれた一つのトランプの山。
亀井絵里と赤西仁、二人の手によってよく切られたこの山札の中に、
二人の運命がかかっている。
亀井絵里が負ければ、彼女の『心』は永久に彼のものに。
赤西仁が負ければ、彼の奪った二人の『心』は元の身体に帰っていく。
「三回勝負だよ。ダウンは一回まで、先に三本取った方の勝ちさ。
ちなみに、ジョーカーは一枚だけ。一枚なくしちゃったんでね」
「ああ、インディアン・ポーカーみてぇなもんだな」
「それじゃあ順番を決めようか」
亀井絵里はカードを一枚取り、赤西仁もそれに続く。
「僕のカードはスペードの6」
「俺はダイヤのKだ。俺から引かせてもらうぜ」
二人は山の隣に今引いたカードを捨て、お互いを見合った。
どちらも、負ける意思はない強い瞳だ。
山からカードを引く前に、赤西仁は言った。
「この勝負、俺の勝ちだ」
「・・・・・・?」
何を言い出すかと思えば・・・・・・
いったいどんな根拠があってそんなことを言えるのか。
イカサマでもしているとでもいうのか・・・・・・亀井絵里にはわからなかった。
285 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 08:47:41.24
0
「人生には波がある。上り坂の時は何をやってもうまくいくものだし、
下り坂の時は何をしても裏目に出るものよ」
「何が言いたいの?」
「俺は上り坂に立ったのさ。たった今、順番を決める際にお前より大きな数字を
出したこの俺はな。そして、お前は下り坂に足を踏み入れた・・・・・!!」
「このゲームは順番が運命を左右するものじゃないよ」
「そうだな。だが、運は確実にこちらについたんだ」
そう言うと、赤西仁は山札からカードを一枚抜き、伏せたままテーブルに置いた。
亀井絵里もそれに続き、カードを引いて自分の前に伏せて置く。
「さて、一回戦・・・・・始めますよ?」
「ああ、行くぜ。せーの・・・・・」
「「くるりんぱ!!」」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!!
286 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 08:50:43.29
0
二人は同時に相手にカードの絵札が見えるよう、額に持っていった。
お互い、自分のカードの絵札はわからない。
ここからが、この勝負の本当の始まり・・・即ち醍醐味である。
(赤西くんのカードは・・・・・クラブの8)
なんとも言えない数字である。並よりやや強いといったところか。
彼には当然自分のカードは見えていないが・・・・・・その目は自信に溢れていた。
(この表情はなんだろう・・・・・?勝ち誇ったようなこの顔は・・・・・何を出しても勝てる、
そんな顔をしている・・・・・ってことは、僕のカードはけっこう弱いのかな?)
これはパスした方がいいかもしれない・・・・そう思ったが、パスは一回までだ。
今ここでパスをしてしまえば、あとは運任せでゲームをすることになる。
それは非常に危険な行為だ。
勝負はまだ一回戦、後のために逃げ道はとっておいた方がいい。
しかし、このまま勝負に出るのもアレなので、亀井絵里は赤西仁の精神を
揺さぶってみることにした。
「きみのカード、当たりさわりがなくてなんとも言えない」
あえて本当のことを言ってみた。
これで表情が変われば、多少なりとも自分のカードの強さが特定できる可能性がある。
だが、彼は顔色ひとつ変えなかった。
「まぁ、まだ一回戦だからな。なんっつわれてもパスする気はねぇ。しいて言うなら
お前のカード・・・・あまりいい札とは思えない。降りることをオススメするよ。
勝負はまだ長いが、ここでの勝敗はけっこうでかいぜ??」
287 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 08:51:36.49
0
赤西仁はゲームに降りるつもりがないようだ。
確かにまだ一回戦、様子見で勝負をしてみるのもいいのかも知れない。
「じゃあ、勝負してみますか?」
「おう、いいよ」
「それじゃあ、いっせーのーせぇ・・・・・」
「「くるりんぱ!!」」
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!!
288 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 08:52:34.47
0
赤西仁 『クラブ 8』
亀井絵里 『スペード 7』
「あっ・・・・・」
「あぶねぇあぶねぇ…けど、やっぱり勝利の女神は俺についたらしいな・・・・・」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
289 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 08:54:14.01
0
一回戦は、僅差で赤西仁の勝利であった。
8と7、なんとも難しい勝負だったと言えよう。
しかし・・・・・まさかお互いに本当のことを言って精神を揺さぶろうとしていたとは。
(7は確かに微妙な数字だったけど・・・・・7に負ける数字は6つもある。勝率は
半々・・・・・真ん中の数字なんだ。それでいてあんな余裕そうな顔をしてみせるなんて・・・
なかなかポーカーフェイスじゃあないか。これは表情だけで読むのは危ないな・・・・)
やはり一筋縄ではいかないか・・・・彼女はそう思った。
でも、まだ一回戦なのだ。
絶対負けるもんか。
本当の『愛』を知らない彼に、絶対負けるもんか!!
亀井絵里は強く思い、それを心の糧にする。
「さて、二回戦行くか」
「うん、そうだね。せーの・・・・・」
「「くるりんぱ!!」」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンン!!!!!!!!!
290 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 08:56:17.84
0
(きたッ!!)
亀井絵里は心の中で歓喜に震える。
しかし、決して表情に出すことはしなかった。
赤西仁のカードはハートの4・・・・・勝率は5/7だ。これはチャンス到来である。
彼が自分のカードを見る表情は、特に変化はない。
だが、彼がパスしてしまえばこの勝負はお流れだ。
前の勝負で一勝を取られてる彼女としては、なんとか同点に追いつかせて
おきたいところであった。出来る事ならゲームをおろさせたくはない。
無表情で考えを巡らせる亀井絵里だったが・・・・・
「正直に言わせてもらう。降りたほうが身のためだぜ?」
赤西仁もまた無表情で言った。
表情に出さないため、どうにも真実は見えてこない。
一つ言えることは、そのセリフをそっくりそのまま返してやりたいと
いうことだけであった。
「僕は・・・・・このまま行かせてもらうよ」
「大した自信だな、こわいこわい・・・・・俺のカードが弱いのか。それとも俺を
下ろすためのハッタリのつもりなのか・・・・・まぁ今降りるのは得策じゃあねーよなぁ?
ゲームってぇのは考えながら進めるものだしよぉ・・・・・運任せにはしたくねぇ」
291 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 08:57:16.79
0
「それじゃあ・・・・・」
「ちょっと早いが勝負と行くぜ!!せーのッ・・・・・!!!!」
やった!!
赤西仁は降りることなく賭けにでるつもりだ!!!
捨て山の4枚と彼のカードを除けば全部で48枚。
その中に赤西仁のカードより弱いカードは15枚。
そして彼より強いカードは33枚。
勝率は11/16だ!!!
(勝った!!!)
「「くるりんぱッ!!」」
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!!!
292 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 08:57:43.74
0
赤西仁 『ハート 4』
亀井絵里 『クラブ 2』
293 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 08:59:22.58
0
「えッ!?」
「だから言ったのによぉ〜・・・・・おりたほうが身のためだぜ?ってなぁ。それにしても
この数字・・・・なかなか嫌な数字だぜ。縁起わりーよな、4ってよぉ…」
う、嘘だろ・・・・・・?
彼のカードは弱いものであったが、亀井絵里のカードはさらにそれを下回っていたのだ。
勝利に焦りすぎた・・・・・いや違う!!それだけではない!!!
パスしようという概念も生ませなかったのだ!!!
彼は必要以上の事を述べなかった・・・・それに加え『今は勝っておきたい』と
亀井絵里は考えていると判断し、逆の心理をついたのである!!!
おりたほうがいい・・・・・それは、1敗している亀井絵里にとって、自分のカードは
彼より強いと信じさせてしまうのに十分であった。
本人自身も感じていなかった微々たる焦りにより、亀井絵里は状況をもっとじっくりと
見定めることができなかったのだ!!
(赤西くん・・・・・・この人できるぞ!?や、やばい・・・・・・ッ)
赤西仁…2勝0敗
亀井絵里…0勝2敗
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!
294 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 09:01:23.23
0
に・・・・・2回連続で・・・・・負けてしまった・・・・・!!!
負けた・・・・・く・・・・くっそォッ!!!
亀井絵里にはもう後がない。
パスはまだ1回残っているが・・・・・もう一度として負けることはできないのだ。
心に圧し掛かってくるプレッシャーは計り知れない。
彼女は、この勝負に勝つことができるのだろうか・・・・?
いや、勝たねばならないのだ。
もし負けてしまえば、藤本美貴も小川麻琴も元の『心』を取り戻さないだけでなく、
自分の『心』をも奪われてしまうのだ。
そうなってしまったら・・・・・道重さゆみへの想いをすべてなくしてしまうことと
同じ意味なのだ!!!
それは、すべてをなくすことに等しいものであった。
イヤだ!!絶対にイヤだ!!!
玉ねぎのように皮しかなく、ピーマンのようにカラッポの『心』になるのはイヤだ!!
「さて、三回戦と行こうか。もっとも、これがラストゲームになるかもしれねーが…」
赤西仁が山札からカードを引こうとした、その時である。
亀井絵里は驚くべき行動を取った。
295 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 09:02:02.01
0
サッ・・・・・・・ドッスウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
296 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 09:02:56.58
0
「な・・・・・ッ!?」
「うぅ・・・・・」
「なにやってんだオメエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!!!」
297 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 09:05:34.48
0
突然の出来事に彼が驚愕するのも無理はない。
なんと亀井絵里は、テーブルのわきに置いてあった先ほどあみだくじの賭けに
使われたボールペンを深々と左手の甲に突き刺したのだ!!!
ペン先を抜くと、そこから赤黒い血が流れ出した。
いったい、どれだけの力を込めて自分の左手を傷つけたというのであろうか・・・・・!?
「痛い・・・・・痛いよ・・・・・」
「な、なんなんだお前は〜ッ!?亀井!!おめーっ、頭おかしいぞ!?
プレッシャーに負けてとち狂ったのか?」
赤西仁は思わず立ち上がると、彼女に向かって怒鳴った。
亀井絵里は、痛みからきた生理的な涙を目にためているが・・・・
「違うね・・・・・・これは一瞬でもきみに屈服しかけた自分への戒め・・・・・
そして・・・僕自身への誓いだよ・・・・・・・ッ」
痛みに震える声とは裏腹に、さっきまでよりさらに強い眼差しで亀井絵里は
赤西仁を睨んだのだ。彼としたことが、一瞬ではあるが圧倒されかけてしまった。
そして、彼女は言う。
「この傷の痛みがある限り・・・・僕はきみに絶対に屈服しないことを誓ったんだ・・・・
僕がきみの前に屈服するとき・・・・それはこの左手の傷の痛みを忘れた時だけさ・・・・・!!!」
「おめぇ・・・・それでオレをビビらせてるつもりか?何を強がってるんだ??」
「うへへ・・・・我前強め?さぁ、早くトランプを引きなよ・・・・引くのはきみが先だろう?」
「ちッ・・・・・・・きもちわりぃヤツだぜ・・・・」
298 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 09:07:59.03
0
赤西仁は、彼女の異様なオーラを感じ取り、内心ゾクッとしつつも椅子に座る。
手の甲を傷つけてなんになるというのだ・・・・自分を痛めつけたところで、運命に
対抗できるものではないというのに…そう思いつつ、カードの山札に手を伸ばす。
・・・・・・・・・・・・・・・
カードを引いたその時、彼は一瞬だが何か『違和感』を感じた。
そう、一瞬だけ・・・・・何も聞こえなくなったような・・・・・
(耳鳴りか?気圧でも変わったのか・・・・・まぁいい)
特に気にすることなく、赤西仁はトランプを伏せて置いた。
亀井絵里もそれに続き、山札からカードを一枚引き抜く。
あえて傷ついた左手でカードを引き抜き見せ付ける行為は、彼に十分な
敵意があるということを伝えていた。
「じゃあ・・・・三回戦行きますか?」
「あぁ・・・・せーの・・・・・」
「「くるりんぱ!!!」」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンン!!!!!!!
299 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 09:11:13.28
0
血を流している彼女の左手が掲げていたトランプの数字は・・・・・
(亀井のトランプはダイヤの5・・・・・大して強くもねーカードだ。これより弱い数字は
53枚中わずか16枚、そのうち捨て山に2枚・・・勝ち札のうち6枚も捨て山にあって、
同じ数字の5は3枚だから…負ける確立は8/11か・・・・グッド、こいつはもらったな)
所詮、自分を傷つけ誓いを立てたところで運命に太刀打ちすることなどできないのだ。
それのいい証明になったな・・・・彼は心の中でニヤリと笑った。
しかし、亀井絵里にはまだ一回だけパスが残されている。
彼女がダウンといえば、この賭けはお流れになるのだ。
相手が弱い数字を引いた今、賭けをおろさせたくはなかった。
それは当然の考えであろう。
チャンスを棒に振ることは、愚かな行為なのだ。
「もう、オレには何もいうことはねーが・・・・・・ゲーム性を追い求めてあえて言うぜ。
最初にも言ったが、今お前は下り坂にいるんだ・・・・よぉーく考えて、勝負に出てくれよ」
彼のいうことはそれだけであった。
カードが強いのか弱いのかも推理させず、精神だけを僅かに揺さぶって焦らせる。
もうあとがない亀井絵里にとっては効果的なはずだ。
ところが彼女はその言葉には何も反応せず、こう言ったのだ。
300 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 09:13:15.50
0
「人生には波がある・・・きみはそう言ったね。確かにその通りだと思う・・・・」
「・・・・・・・?」
いったい何を言わんとしているのか?それが不可解であった。
なんの精神の揺さぶりでもない、ただの諦めの入った寝言のようにしか聞こえない。
思えば、さっきから亀井絵里の行動は狂っていた。
もしかすると、焦りと恐怖で精神のバランスが先ほどの『氷の積み木』のように
崩壊しているんじゃあないだろうか?
「・・・・・僕は絶対勝つからね・・・・」
ダイヤの5を掲げた亀井絵里は、彼に重く圧し掛かるようにして言った。
しかし、そんな弱い数字のカードを掲げて強気になられても、湧いてくるのは
失笑だけである。
「・・・・言いたいことはそれだけか?この勝負に負ければ、自動的にオレのスタンドは
発動してお前の『心』を虜にするが・・・・・いいのか?」
「きみの都合で生きちゃいないよ。僕は絶っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
ためてためて、そして・・・・・・・
「〜〜〜対に!負けないッ」
と、強く言い放った。
301 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 09:14:56.81
0
(・・・・・・かかった・・・!!)
赤西仁は密かにそう思った。
彼は亀井絵里をゲームに参加させることに成功したのだ。
彼女を気遣うフリをして、彼女をゲームからおろさせたいと思っているフリをする。
この二重のひっかけ・・・・・赤西仁は素人ではなかったのだ。
「じゃあ決まりだ・・・・・いざ・・・・勝負ッ!!!」
「せーのッ!!!」
「「くるりんぱァッ!!!!!!!!」」
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!!!!!!!!
302 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 09:15:30.54
0
亀井絵里 『ダイヤ 5』
赤西仁 『スペード 3』
303 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/04(火) 09:16:19.30
0
予想外の数字に、彼は驚きを隠せない。
「な、なにぃィィッ!!!!!!!!??」
「・・・・・・・・・言ったよね?僕は『絶対に負けない!』ってさ・・・・・」
彼女の声は、もう震えてはいなかった。
亀井絵里…1勝2敗
赤西仁…2勝1敗
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…
407 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/07(金) 07:02:03.46
0
亀井絵里に1勝されてしまい思わず面食らってしまった赤西仁だったが、
状況を見直してすぐに冷静になった。
あくまで勝っているのは自分なのだ、あせることはない・・・・と。
「さぁ、次の勝負と行こう・・・・カードを引いて」
彼女はニヤニヤしながら赤西仁に諭す。
それを見た赤西仁は、思わず吹き出した。
「『カードを引いて』か・・・・・・m9(^Д^)プギャー」
「なにがおかしいの?赤西くん」
「いやな・・・・お前、自分の状況わかってんのかなと思ってよ。1勝して喜んでる
みてーだけど、よく考えてみろよ。1勝2敗はお前の方なんだぜ?オレはまだ
1回負けても後があるし、パスもできる。だが、お前は1回パスできるものの
後がない状況なんだ、俺の言ってる意味・・・・わかるか?」
「・・・・・・・・・・」
「お前は追い詰められてるんだよ亀井ッ!次負けたらお前はおしまいなんだぞ!?
崖っぷちにいるんだよテメーはッ!!もう1敗たりともできねーんだからな!!!」
赤西仁のセリフは、亀井絵里の気持ちから余裕の二文字を奪うほどの破壊力があった。
・・・彼女の頬を冷たい汗が伝う。
408 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/07(金) 07:03:16.07
0
だが亀井絵里もここで圧倒されるわけにはいかないと、必死に気持ちを起こしていた。
絶対に・・・・・・・・・負けない!!!
左手の流血している傷に、汗が沁みた。
「それは覚悟しているよ・・・・・・・・けど、勝つのは僕だ」
「フン!せいぜいガンバるんだな。でももう一度言うぞ?オレはあと2回チャンスが
あって気が楽だ。パスも残ってるし、お前は下り坂にいるんだしな。負けるわけがない」
「・・・・・・プレッシャーかけてるの?」
「どうだか・・・・さぁ、勝負しようか・・・・・・・」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
409 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/07(金) 07:05:21.68
0
赤西仁が山札からカードを引き、亀井絵里もそれに続く。
お互い、カードを伏せて置いている。
「さて、ラストゲームといこう」
「ラストなんかにさせないよ。これはネクストゲームさ」
「言ってろよ。いっせーのせッ!!!」
「「くるりんp」」
シーン・・・・・・・・・・
「・・・・・ん?」
「どうしたんだい?」
「いや・・・・」
カードを掲げるその瞬間、何も聞こえなくなってしまったような・・・・
ついさっきのゲームの時もそうだった。
だが音が聞こえなくなったのは自分だけのようだ。
現に、亀井絵里は何事もなく涼しい顔をしている。
410 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/07(金) 07:08:02.43
0
(まぁいいか・・・・・さて、ヤツのカードは・・・・クラブの10か。やや強めのカードだな…)
さっきまでの弱めのカードとは違うので、迂闊に勝負できない…
ここはひとまず相手をゲームからおろさせてパスを奪うことを狙うよりも、
自分のカードがどれほどのものか詮索する必要があった。
「実を言うと、オレは今とてつもなく悩んでいる。このまま勝負に出ても
いいもんかな…とな。さっきのように『油断』して、またお前より弱いカードとか
笑えないからよぉ・・・・・・お前はどう思う?」
『油断』・・・・・・その言葉を、印象付けるようにして彼は言った。
さっきのように『油断』・・・・・これを彼女が信じてしまえば、またも彼女は
弱めのカードを引いたのだと思い込むだろう。そして、自分のカードのヒントも聞く・・・・・
これで彼女は、いっそう疑心暗鬼にかきたてられる。
それにしても疑心とは恐ろしいものだ。
人の心というものは、疑心が生じるとなんでもないことも恐ろしく感じられるのだから。
「きみは今回おりた方がいいと思うな」
「なに?」
「今回はおりた方がいいって言ったのさ」
亀井絵里は、自信をもって言った。
おりた方がいい・・・・・・これが何を意味するのか。
一つは、自分はかなり強いカードで彼女は勝負をしたくないと思っているのか。
もう一つは、本当に自分のカードがありえないくらい弱いのか。
どっちとも取れる発言である・・・・・だが、彼は落ち着いて考えた。
411 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/07(金) 07:11:25.59
0
亀井にはもう後がない・・・・・
パスを使ったとしても、パスが残ってるオレに勝つのはかなり難しくなる・・・・
運任せのゲームに勝利なんてないんだからな。
それに、ヤツはオレにおりた方がいいと言っている・・・・
これはパスを使わせるためのものなのか・・・・・?
いや、違う!!
なにも感じてなさそーな顔をしてるが、亀井の精神力はもはやギリギリのハズ!!
このゲームで生き残る事に必死なハズだ!!!
そうか・・・・・ヤツは今、オレと勝負をしたくないんだ!!
オレはそれほど強いカードなんだ!!
だからおりた方がいいなどと言っているんだーッ!!!
それに、亀井自身がパスを使えば2回余裕のあるオレに勝つことはもはや不可能!!
なるほど、だからオレをおろさせる気なんだな…ッ!!!!
412 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/07(金) 07:15:28.34
0
(読めたぜ・・・・亀井ッ!!)
この勝負、もらった・・・・・彼はそう思った。
きっと亀井絵里は、自分がおりないので彼女自身から「おりる」の三文字を言うだろう。
だが、2勝とパス1回の余裕のある彼に対し、それは自殺行為なのだ。
もはや亀井絵里の『心』は手に入ったようなものである。
(そのツラ、恐怖でゲドゲドに泣かせてから虜にしてやるぜ・・・・・)
「赤西くん、どうするの?」
「・・・・・・・勝負だな」
ニヤリ・・・・・!!彼は不敵に口の端を吊り上げた。
まさに敵無しといった感じだ。
だが、ここで予想外の自体が起こる。
「わかった。じゃあ勝負しよう・・・・・せーのッ!!!!!」
(えッ!?コイツおりねーの!!?)
そう思ったときにはもう遅い。
勝負は始まってしまったのだから。
(えぇーいッ!!どーいうことだよ!!!)
「「くるりんぱッ!!!!!!!!」」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンン!!!!
413 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/07(金) 07:17:02.32
0
亀井絵里 『クラブ 10』
赤西仁 『ハート 1』
「なッ!!!!!?バカなあああああああああああああッ!!!
い・・・・『1』だとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「僕は言ったよ、おりた方がいいってね」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
414 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/07(金) 07:19:26.29
0
2勝2敗、パス残り1回・・・・・
赤西仁と亀井絵里は、五分と五分の勝負を繰り広げているッ!!!!
「これで2勝2敗だよ赤西くん・・・・・・僕の言葉を信じなかったきみが悪いんだ」
「うぜぇよ・・・・・2連勝していい気になっているようだが・・・・・・・
オメーが崖っぷちにいることには変わりねーんだ」
「それはお互い様じゃんか。でもね、僕はもう負ける気がしないんだ。
それがなぜだか・・・・・わかるかい??」
「あン?」
「きみはゲームの最初に言ったね。『人生には波がある。上り坂の時は何をやっても
うまくいくものだし、下り坂の時は何をしても裏目に出るもの』だって」
「何が言いてーんだ?」
「僕は確かに下り坂にいた・・・・僕の方は最初2敗したことがそれを物語っているね。
きみの方はというと、その逆で2回続けて勝っていた・・・・・いや、もっと前からだ。
きみはマコっちゃんにも藤本さんにも『賭け』に勝利している…きみは確かに
上り坂にいたんだ・・・・・・だけどねッ!!!!!」
415 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/07(金) 07:22:04.13
0
亀井絵里はビッ!と赤西仁の前に血のついた左手の人差し指を立てて突き出すと、
指先を勢いよく下に向けて言い放った!!!
「きみは今!!坂を上りきって下り坂に足を踏み入れているんだ!!!
僕に2回連続で負けたのがその証拠さ!!
現に、きみの引くカードはゲームを重ねるごとに弱くなっているッ!!!
いいかい!?もう一度言うよ!!!
きみは今ッ!!!!!!!!!!
勝 負 の 下 り 坂 に い る ん だ ! ! ! ! 」
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!!!
416 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/07(金) 07:23:47.41
0
赤西仁は震え始めた。
敗北への恐怖ではない・・・・これは怒りだ。
元より負けず嫌いな彼は年下の、それも女にコケにされる事がガマンならなかった!!
「うるせーぞガキ・・・テメーに圧倒されるほどオレは場数を踏んでねーわけじゃねぇ!!
絶対にお前をおとしてやるぜ・・・・・オレなしでは生きていけない女にしてやるッ!!!」
「僕は絶対に負けない!!二人の『心』を取り戻しッ!!!本当の愛が何なのか
ノミほどわかっちゃいないきみのプライドをへし折ってやる!!!それに、僕には
サイレント・エリーゼACT2があるッ!!音も振動の感覚も奪う能力がある!!」
「テメーのスタンドの能力なんざ聞いちゃいねーんだよッ!!!ラストゲームだ!!!
次で決めてやるぜーッ!!!カードを引けッ!!亀井絵里!!!!!」
「いくぞッ!!赤西仁!!!」
「勝負だッ!!!!せーのッ!!!!!!!!!!!」
「「くるりんぱあああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!」」
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!!
417 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/07(金) 07:25:59.77
0
(亀井のカードは・・・・・・・・・ハートの9!!!)
絵札ではない・・・・・前回と同じくやや強めのカードだが、彼は負けるわけにはいかなかった。
かといって五分と五分の状況において・・・・・おりるわけにもいかない!!!
だいたい、冷静に考えればこれより強いカードは4枚もあるのだ!!
捨て山にいってしまったカードを除き、ジョーカーを加えれば合計15枚!!
自分のカードがその15枚のうちのどれかなら勝てるッ!!!
(ようし・・・・ハッタリをかけてやるぜーッ!!!)
「亀井ッ!!テメーのカーd」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シーン
418 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/07(金) 07:28:17.17
0
「・・・・・・・・・なッ!?」
またも、一瞬の間ではあるが耳鳴りが彼を襲う。
いや、これは本当に耳鳴りなのか?勝負の時にこんな連続して耳鳴りが??
それに、言葉を口にしている自分の声も聞こえなくなるなどと・・・・
その時である。
「ねぇねぇ、なんだか私、さっきから耳遠くなるんだけど」
「えッ!アンタも??実は私もさっきから耳聞こえなくなったりするのよ〜。
今ので三度目よ。これ病院行ったほうがいいのかしら?」
「耳っつーと耳鼻科?耳鼻科ってなんか怖いのよね〜」
ふと、生徒ホールにいた女子生徒が離れた席でそんな会話を始めたのだ。
彼女達だけではない。
「なんか一瞬なんも聞こえなくなったわけだが」
「気圧が変わったんじゃねーの?どーいう原理かは知らないけど」
「ま、俺ら文系だしな」
「ははは」
振り返れば、二人組みの男子生徒がそんな会話をしながら生徒ホールを出て行った。
そう、何も聞こえなくなったのは彼だけではなかったのだ!!
そして、その中でそれを異変とも感じていない者がただ一人!!!
419 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/07(金) 07:29:42.92
0
「か、亀井ッ!?」
「ぷはッ!二杯目のジュースはお腹にくるね」
「なッ!!!じゅッ!!ジュース!!?」
いつの間にやら、亀井絵里は缶ジュースを飲んでいたのだ!!!
彼女が席を立った気配はない・・・・・だが、彼は見た!!!
亀井絵里の身体に、手がトランペットのホーンを思わせるハ虫類にも似た
形の何かが吸い込まれて消えるその瞬間を!!!
(今のは・・・・スタンド!?)
まさか・・・・・彼女のスタンドが自販機でジュースを買って持ってきたのか!?
その時、赤西仁は思い出した。先ほどの、不自然な彼女の解説を・・・・
『僕にはサイレント・エリーゼACT2があるッ!!音も振動の感覚も奪う能力がある!!』
音も振動の感覚も奪う能力・・・・
(こ…コイツまさかッ!!そのサイレント・エリーゼとやらで…何かイカサマをッ!!?)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
16 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/08(土) 07:36:07.82
0
(こ…この余裕ッ!!コイツまさか!!オレの気付かぬ間に音と振動の感覚を
奪って『サイレント・エリーゼ』で何かをッ!!?)
赤西仁は悟った。
突然起きた彼女の2連勝・・・・・上り調子でいたはずの自分のまさかの2連敗。
もしかして・・・目の前にいる彼女は前々回のゲームからイカサマを行っていたのでは!?
音の消える現象が起きてから、彼は負け始めた。
そして、音を消している犯人が亀井絵里だったとするならば!!
間違いなく彼女は『何かを』しているッ!!!
(バカやろうッ!!びびるなオレ!!!)
「ハァ・・・・・ハァ・・・・・!!!」
(仮にヤツが何かイカサマをしているとしよう・・・・見る限り、ヤツは自分のカードの
すり替えはしていない。なら、カードを引く前に何かイカサマを・・・・?
いや!!それもない・・・・順番はオレからだったし、それでいてコイツは負け続けていた!
それに、カードを引く前にイカサマをしているというのならゲーム中に音を消す
必要性がない・・・・・・ッ!!!)
17 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/08(土) 07:36:45.46
0
「ハァ・・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・・!!!」
(この女がおもむろに吐いたセリフを思い出せ・・・・・サイレント・エリーゼACT2は
音や振動の感覚を消す能力・・・・あくとつー?いったい何のことだか知らねーが・・・・・
音や振動の感覚を消すってのはどういうことだ・・・・・?)
「ハァ・・・・ハァ・・・・・ハァ・・・・・ハァ・・・・・!!!」
(待て!待て!!よく考えるんだ!!!ヤツは自分のカードのすり替えは
していないんだ・・・これはまぎれもない事実!だとすると・・・・・・
すり替えているのは・・・・・!!!)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
18 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/08(土) 07:37:30.55
0
オ レ の カ ー ド ! ?
19 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/08(土) 07:39:42.60
0
(し、しかし・・・・・・・音や振動の感覚をなくしたからといってオレがすでに持っている
カードをすり替えるなんてことができるのか?ズバリ、できるわけがない!!!
なぜなら、オレの座り疲れて汗かいたこのケツの感覚は一時だってなくなったり
してねーからだ!!振動の感覚とやらがなくなればオレの指からスタンドを使って
カードを引き抜いて取り替えたりすることができるかも知れんが、それには相当の
スピードと技術が必要のハズ!!!つーことは…)
「ハァ・・・・ハァ・・・・ニヤリ」
(こいつ、ハッタリだ!!オレをビビらせておろすつもりなんだな!?このゲームで
おりることは八割方敗北を意味するからな・・・・・やれやれ、焦ったぜ・・・・スタンドで
妙な小細工までしやがって・・・・・そして、オレをおろそうとしているということは!!)
そうだ、そういうことなのだ!!
彼女のハッタリ(だと思われる)行動は、彼のカードは強いということを意味していた!!
もし本当にすり替えていたとするなら、間違いなく彼は負けるだろう。
しかし!!実際の問題としてカードのすり替えなど不可能だ!!!
すり替えているように思わせているということはッ!!逆をとればこのゲームを
おろさせたいと願う亀井絵里の心の表情の表れなのだ!!!
(・・・・なめやがって)
「いいだろう亀井ッ!!もう言う事はなにもねー!!!勝負するぜーッ!!!」
赤西仁は意気込んでいた。
確実に勝てるッ!!やはりオレは上り坂にいる!!!そう思った。
ところが・・・・・
20 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/08(土) 07:43:54.44
0
「おっと待ちなよ」
「あン?勝負すんのが怖くなったか??」
「いや、そうじゃないんだ。せっかくの勝負だし、もうちょっとスリルを加えて
面白くしようかと思ってね」
もうちょっと面白くする?
スリル・・・・・??
この期に及んでいったい何を言っているのだろうか?
「僕の父さんは販売員なんだ・・・・・エリック亀造っていうんだけどね、去年までは
杜王町でも有名な人だったんだよ。なんかいろいろあって杜王町では大胆な仕事が
できなくなったって言ってたけど・・・・・」
「なんの話だ?そりゃあ・・・」
21 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/08(土) 07:44:22.69
0
「実はこれがまたけっこうゲームが好きな親でね。お客様がゲームに買ったら
商品をタダでさしあげちゃったりするとんでもない人なんだ、負けたことはほとんど
ないらしいけどさぁ・・・・・常連の中澤さん・・・・だったかな?その人の家で何回
風船を使ったゲームをしたかわからないくらいなんだ」
「・・・・・・・・?」
「それでね、僕がそんなお父さんの娘だって知ってる友達からはね・・・・・
僕はたまにこう呼ばれるんだ・・・・・『エリックかめりん』って」
「エリック・・・・かめ・・・・?」
「そう・・・・僕は・・・・お父さんの血を受け継いでいるせいか御多分にもれず!!!
こーいうゲームが大好きなんだ!!!!」
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!
22 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/08(土) 07:48:05.11
0
「テメーはさっきから何が言いてぇえんだああああああああああああああッ!!!」
もったいぶる亀井絵里に、赤西仁は怒鳴り上げた。
イライラする・・・・まるでバカにされているような表情に、彼は我慢ならなかった!!
だが、そんな彼に対しお構いなしに亀井絵里は言う!!!
「このゲームに『レイズ(上乗せ)』するッ!!僕がこの賭けに負けた場合、
僕の心に加えて僕の大好きな子と友達を紹介してやるッ!!!」
バンッ!!!
彼女はサイフの中から片手で一枚のプリクラを取り出し、彼の前に叩き付けた!!!
そこに写っているのは、先ほど心を奪ってやった顔がワクに収まらず半分切れてしまっている
藤本美貴と、目の前にいる亀井絵里・・・・・そして、ちょっとガラの悪い娘と口元にホクロのある少女だ。
皆、プリクラによる美白効果で可愛さが三割増している。
23 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/08(土) 07:48:44.40
0
「れ・・・・レイズだと!?それも・・・友達をオレに売るってのか!!?」
「ゲームに負けたら、どうせ僕の心はきみの虜になっちゃうんだろう?
だったらそれでもいいさ・・・・・知らない人に取られるよりはね。さゆとは
お互い同じ人を好きになって生きていくよ」
彼女のセリフは理解し難いものであった(特に後半)。
つまり、自分が勝てば彼女は他に女を二人連れてくると誓ったということか。
その二人の『心』もくれてやるということか!!
「でも待てよ・・・・・・オレにはそれ相応に賭けれるもんがねぇぜ・・・・?」
「賭けるものなんてなんだっていいじゃないか・・・・うーんそうだね、じゃあきみが
負けた場合、藤本さん達の心を返すことに加えて・・・・あの二人のサンドバッグに
なるなんてどう?」
ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!
24 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/08(土) 07:49:32.54
0
「な、なにいいいいいいいいいいいいいいいいッ!!!!!!?」
「きみにとっちゃあ拷問じゃない?きみのスタンド、あまり戦闘に向いてるような
感じはしなかったし・・・・・・ま、あの二人の心が戻ったら、二人の性格からして
賭けに関係なくきみを『タダじゃあ済まさない』と思うけどね」
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!
25 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/08(土) 07:50:53.59
0
「ハァーッ!!ハァーッ!!ハァーッ!!ハァーッ!!」
「どう?ゲーム性が増したでしょ??さ、お互いじっくり考えながら勝負しよう…
コールか・・・・・ドロップか・・・・・・僕ももう少し悩みたいからね」
亀井絵里は笑みを浮かべながら言った。
楽しんでいる・・・・・・この女ッ!!このゲームを楽しんでいるッ!!!
(どーいうこった!?その笑みはどっから生まれて来るんだ!!?コイツが
イカサマをしてないのは見破ったんだ・・・・・オレをおろさせようとしているだけっつー
ことがわかったんだ!!!今さらハッタリに拍車をかけてなにを・・・・)
「・・・・・・・・・・・・はッ!!」
(もしかして・・・・・オレはとんでもない勘違いをしているんじゃあないのか!?
コイツはこういうゲームが好きなんだと言っていた・・・・それにこのゲームを指定したのは
他ならぬ亀井自身だ!!!つまり、これは亀井の得意なゲーム・・・・・や、やっぱり
イカサマをしてるんじゃねーのか!!?だから自信満々に『レイズ』なんてして
みせたんじゃあないのか!?コイツだって素人じゃねーッ!!オレの心の裏を
かいていたとしても何も不思議じゃあないんだ!!!)
26 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/08(土) 07:52:30.22
0
「ぬ・・・・ぬ・・・・ぬーッ!!!!!!!!」
心の中で葛藤は続く。
コールか。
ドロップか。
だが・・・・・・このゲームでおりるということは、ルール上ほぼ敗北を意味する。
運任せで勝てるゲームに勝利するなど、あり得ない話なのだ。
それ以前に、運に頼ってバクチを打てるほどの余裕は彼にはなかったのだった。
いやな汗が彼の全身から吹き出る。
ゲームに負ければ・・・・・再起不能!!!!
「僕は決めた」
「えッ!?」
「コールだ・・・・僕は決してこのゲームをおりない」
(なにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ!!!!)
亀井絵里の宣言に、赤西仁は震えた。
今度は怒りではない・・・・恐怖だ。
何を考えているのか、何かをしたのかわからない亀井絵里に対する恐怖の震えだ。
27 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/08(土) 07:54:05.41
0
「さぁ、きみも早く決めなよ」
彼女の言葉は、彼の心にプレッシャーをかける。
手の中のカードは、あまりのプレッシャーによって指に力が入ってしまい、
クシャクシャになっていた。
「年下の、それも女の僕が覚悟を決めたんだ」
もはや、心にかけられた重圧は計り知れない。
負ければサンドバッグにされて、再起不能・・・・・
「さぁ!コールなの!?ドロップなの!!?ハッキリ言葉に出してもらうよッ!!!
赤西くん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!
28 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/08(土) 07:56:21.39
0
ハァ・・・・・ハァ・・・・・・・・・・・
負ければ・・・・・サンドバッグ・・・・・再起不能・・・・・・・・・
だが!!!
おりてしまえば!!どうせそれは負けを意味しているんだーッ!!!!
そんなら賭けてやるゥーッ!!
コイツにイカサマなぞするヒマはなかったんだ!!!
できるわけないんだ!!!!
こんなクリクリのガキにこのオレを出し抜けるものかーッ!!!!
だから・・・・・・・・・・・だからあああああああッ!!!
コールしてやるぜえええええええええええええええええッ!!!!!!!!
勝つのはオレだ!!この赤西仁が勝つんだッ!!!!!!!
真実の愛は全部オレのもんだーッ!!!!!!
このオレに惚れない女なんかいねえええええええええええええええッ!!!!
29 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/08(土) 07:57:08.34
0
「い・・・・・行くぜ亀井イィィィィィッ!!!!勝負だッ!!!!!!」
「なッ!!!!・・・・・いくんだね・・・・そういう場面では・・・・・・すごいんだね・・・・
呆れちゃうよ・・・・・・・・」
その時、亀井絵里が一瞬だけ、悲しげな表情を見せた。
すべてが終わってしまった・・・・・そんな表情だったが・・・・・・・・
ただただ必死な赤西仁は、そんな些細なことに気付くよしもなかった。
彼は叫ぶ!!!
「いっせええええええええええええのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉせえええッ!!!!!!!」
30 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/08(土) 07:58:07.97
0
くるりんぱ!くるりんぱ!くるりんぱ!くるりんぱ!くるりんぱ!くるりんぱ!
くるりんぱ!!くるりんぱ!!くるりんぱ!!くるりんぱ!!くるりんぱ!!
くるりんぱ!!!くるりんぱ!!!くるりんぱ!!!くるりんぱ!!!くるりんぱ!!!
くるりんぱ!くるりんぱ!くるりんぱ!くるりんぱ!くるりんぱ!くるりんぱ!
くるりんぱ!!くるりんぱ!!くるりんぱ!!くるりんぱ!!くるりんぱ!!
くるりんぱ!!!くるりんぱ!!!くるりんぱ!!!くるりんぱ!!!くるりんぱ!!!
くるりんぱ!!くるりんぱ!!くるりんぱ!!くるりんぱ!!くるりんぱ!!
くるりんぱ!くるりんぱ!くるりんぱ・・・・・・・・・・・
31 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/08(土) 07:58:55.92
0
「くるりんぱあああああああああッ!!!!!!」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンン!!!!!
171 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/12(水) 11:14:40.29
0
テーブルを叩きつけるようにしてカードをあらわにする。
これから先の運命は、カードの数字によって決められる!!
そして、亀井絵里がつきつけたその数字は・・・・絵柄でもなく、ジョーカーでもなく・・・・・
『ハート 9』
だが、どんな数字であろうが・・・・・もう勝負は決まっていたのだ。
彼女だけがそれを知っていた。
この勝負には初めから負けていたことに。
このカードで勝負をかけたその瞬間から、負けることを知っていたのだ。
では何故、負けるとわかったのか。
負けると決まっていたと思ったのか。
その答えは簡単だった・・・・・・・・・・・・が!!!!
ここで、亀井絵里にとって予想だにしなかった事態が起こる。
172 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/12(水) 11:15:05.42
0
「赤西くん・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「赤西・・・・・・くん?」
「・・・・・・・くゥッ!!!!」
「・・・・・どうして・・・・・・」
その予想だにしなかった事態とは・・・・・・
「赤西くん・・・・・どうして・・・・・・・・・どうしてカードを出さない!!?」
ドッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!
173 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/12(水) 11:16:11.37
0
なんと、赤西仁はカードを出さなかったのだ!!!
お互い「くるりんぱ」と掛け声をかけておきながらも、カードを出してみせたのは
亀井絵里だけ・・・・・赤西仁は、カードをクシャクシャに握ったまま手を振り上げて
固まっていた。
(オレは・・・・・・確かに勝負に出ようとした・・・・だが・・・・・・ッ)
寸でのところで、それを『躊躇』してしまったのだ!!!
ヤケクソになって勝負に出たバカな自分に気付いてしまったため、カードを出すのを
恐れ『ためらって』しまったのだ!!!
負けたら再起不能・・・・・そのことが、彼に恐怖心をあたえたのだ・・・・
敗北による身の破滅を恐れてしまったのだ!!!
ブッシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウンンン!!
真っ赤な装束を纏った赤西仁のスタンド『ヘズィテイツ(躊躇い)』は自動的に発現し、
胸から勢いよく煙のようなものを噴出する。
ああ・・・・・こ、これは!!!
(こ…『心』だッ!!これは藤本さんとマコっちゃんの奪われた『心』!!!
確証はないけど・・・・・・僕の『心』がそう感じている!!!)
そしてその頃・・・・・藤本美貴と小川麻琴の二人は・・・・・・・
174 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/12(水) 11:17:36.50
0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「逆転サヨナラ!!満・塁・ホームランンンッ!!!!」
「BREAK THROUGHッ!!アンタをぶち破れェェェェッ!!!!!!」
藤本美貴のスタンド『ブギートレイン03』の右の拳が小川麻琴に迫り!!
小川麻琴のスタンド『FRIENDSHIP』の左の拳が藤本美貴に迫る!!!
お互いの放った拳はクロスしてッ!!!!
ゴシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!
175 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/12(水) 11:18:41.31
0
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・oi・・・・・・・ミキティ・・・・・・・・なんで・・・・・・ワタシらがあのセクシーボーイの
ために・・・・・・・・・こんな争いしてんだァ・・・・・・oi・・・・・・」
「美貴に・・・・・聞くな・・・・・・・・今あたしにわかんのは・・・・・・すげー痛いって・・・こ・・・・」
「『心』が奪われるってーのは・・・・・とんでもねーことだゼ・・・・・o・・・・・i」
ドシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
二人は同時にヒザを折り、地に伏してしまった。
そして・・・・・・雨が降り始めた。
サアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
176 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/12(水) 11:20:34.96
0
「きみのスタンド・・・・・いま二人の心を離したね・・・・・?」
亀井絵里の問いに、赤西仁は答えない・・・・・
だが、このゲームによる敗北を認めたのは、他ならぬ彼自身の『心』だった。
心が負けを認めてしまったので、スタンドが二人の『心』を離してしまったのだ。
…ゲームは、意外なカタチで決着をつけたのである!!!
「『くるりんぱ』って言ったらお互いカードを出さなきゃならないのがこのゲームの
ルールなんだ・・・・・なのに・・・・・・きみはカードを出さなかった。ルール違反だよ・・・・・
・・・・・・・・きみの負けだ」
「一つ教えてくれ」
赤西仁は異様に疲れきった瞳で亀井絵里を見つめ、訊いた。
まるで、なにかを懇願しているような・・・・・そんな眼差しである。
「お前は・・・・・イカサマをしていたのか・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・」
「おいッ!!!なんで何も答えてくれないんだッ!!!??」
「自分のカード、見てみなよ」
亀井絵里は彼の質問には答えず、そう促した。
自分のカード・・・・・・そういえば、彼のカードはいったいなんだったのであろう?
赤西仁は恐る恐るカードを捲る・・・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
177 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/12(水) 11:21:29.67
0
「こ、こ・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・そういうわけさ」
「これはああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
『JOKER』
そう・・・・・彼の数字は!!
敗北とは無縁の無敵のジョーカーだったのである!!!!!!!!
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンン!!!!
178 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/12(水) 11:24:15.60
0
「これでわかった?わざわざきみに無敵のカードをつかませるような
イカサマを僕がすると思うかい??」
「な・・・・・じゃあお前・・・・・なんのためにスタンドを・・・・・振動の感覚とやらを
消す能力を使ったんだ!?」
「僕は振動の感覚なんてものは消していないよ・・・・・僕が使ったのは『音を消す』
能力だけ・・・・・振動を感じさせなくするにはきみをACT2のしっぽで引っ叩かなきゃ
いけないからね・・・・・さすがにそんなマネはできないでしょ?」
「音を消しただけ・・・・・?そ、それこそいったいなんのために・・・・・?」
「『ハッタリ』だよ。きみに僕がイカサマをしていると思わせてゲームからおろさせようと
思ったんだ。したらいきなりジョーカー引くんだもんなぁ・・・・びっくりしたよ。
終いには勝負に出ようとするし・・・・・見事だね、ホント」
「ジョーカーを前に・・・・余裕の笑みを見せることまでしやがって・・・・・」
「笑み・・・・・?あぁ…僕、よく普通にしててもニヤニヤしてるって言われるんだよね。
生まれつきこーいう顔つきなんだ」
そう言うと、亀井絵里はニヤニヤと苦笑いをして見せた。
ハッタリ・・・・・?
ハッタリのために、あそこまで賭けたのか?
ジョーカーという最強のカードを目の前にして、友達の運命までも賭けてみせたのか?
オレをゲームからおろさせる・・・・・・・ただそれだけのために!!!!
179 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/12(水) 11:26:21.31
0
「な、なんてヤツだ・・・・・・・・」
あまりの信じられない度胸と考え方に、彼は思わず口に洩らした。
亀井絵里は語り始める。
「きみの言う通りだったんだ・・・・・勝負の上り坂に立っていたのは僕じゃあない。
やっぱりきみの方だったのさ・・・・・そのカードを見ればわかるだろう?
でもきみは負けた。きみは自分の選んだ道を進むことができなかったんだ。
きみの『心』が、運命に追いつけなかったんだ」
「う・・・・・う・・・・・・」
「自分の選んだ道も信じて進むことができない人に、真実の愛なんて見つかるもんか。
愛とはッ!!知ろうとして進むからこそ生まれてくるものでありッ!!!
次から次に欲しいと思うから輝くんだ!!!」
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!
180 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/12(水) 11:27:29.24
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「きみの能力で作り出したカラッポの『心』の恋人なんて、真実の愛じゃあ
ないんだよ・・・・・100%わかりあえるものは愛じゃない・・・・あまい日も、
からい日もあるから、愛が生きるんじゃあないの?」
そう言うと、亀井絵里は席を立った。
足元のクーラーボックスを肩にかけ、黄色のボトルが詰まったカゴを抱える。
「どこにいくんだ?」
「部室へ戻るんだ。みんながノドを乾かして待ってる」
「オレは・・・・どうなるんだ・・・・・?」
「きみの好きなようにすればいいじゃん。あの二人から逃げるのもよし・・・・
最も、藤本さんたちが今頃無事だとは思えないな・・・・あの人たち無茶苦茶だから」
「このトランプはどうする?持って帰らないのか??」
「だって、きみがジョーカーにクチャクチャな折り目つけちゃったんだもん。
それじゃババ抜きもできないよ・・・・・だからいらない。あげるよ」
そうして、亀井絵里は彼に背を向け生徒ホールから出て行った。
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!
181 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/12(水) 11:29:57.27
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彼女が出て行った先を見つめ、赤西仁は考える。
オレは自分の選んだ道も信じて歩けない人間なのか・・・・・?
ムカつくぜ・・・・・・彼は悔しかった。
だが、このどうしようもないと納得している奇妙な感覚はなんだろう?
ゲームとなると暴れたくなるほど負けん気を剥き出しにする彼が、
負けた事実をイライラしつつもすんなり受け止めていた。
(完敗だ・・・・・・・亀井に対してではない・・・・・自分自身に完敗したのだ・・・・・)
その時、見慣れた顔の男子生徒が生徒ホールに駆け込んでくる。
「お、赤西!ちょうどいいところにいたッ!!」
「・・・・・亀梨かよ」
「外は大雨だぜ。たまらず学校まで戻ってきちまったよ〜コンビニまでは
距離あったからなぁ。購買に傘買いにきたのよぉ〜」
「で?」
「したらお前がいたわけだ。金もったいないし、相合傘で帰るかw
割り勘して傘買おうぜ」
「アホか」
182 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/12(水) 11:31:25.52
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「あン?トランプじゃねーか??なにやってンのお前???」
「ちょっとな」
「そうだなぁ、雨まだ強いし・・・・いっちょポーカーでもして時間潰そうぜ!!」
「ポーカーかぁ・・・・・いいな、やろうぜ。あ、そうそう・・・・あいにくジョーカーは
一枚もねぇよ。一枚なくしたらしくて、もう一枚はクシャクシャにしちまったんでね・・・・」
「なくしたらしいってなんだ?ま、いいや。俺は負けねーぜ?w」
「わりーけど今のオレは上り坂にいるんだ・・・・・今度は自分を信じて勝負するぜ・・・・
負けたら一週間飯奢りだ亀梨ィッ!!!いいなーッ!!?」
「おう!!受けて立とうッ!!!ただしイカサマはすんなよ!!!!」
「・・・・・・・・・・・・グッド!!!!!」
人と人との引力によって彼が・・・・赤西仁が出会った演劇部員の亀井絵里。
彼は、彼女から何かを学んだのか?
それは・・・・彼自身しか知らない・・・・・・・
183 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/04/12(水) 11:33:25.13
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部室へ向かう中、亀井絵里は思う。
赤西くん・・・・・そして、心を奪って虜にするスタンド『ヘズィテイツ』・・・・・
恐ろしい相手だった・・・・・
そして・・・・彼が前の栄高のような『演劇部の敵』ではなくて本当に良かった・・・・・!!
なんたってあの人は・・・・たった一人であの藤本さんとマコッちゃんを・・・・ん?
「あッ!!そういえば・・・・・あの二人はどうなったんだろう・・・・?
まさか本当に無事じゃないんじゃあ・・・・や、やば!!!」
赤西仁 再起可能 (改心?)
スタンド名 ヘズィテイツ
藤本美貴 再起不能
スタンド名 ブギートレイン03
小川麻琴 再起不能
スタンド名 FRIENDSHIP
TO BE CONTINUED・・・・・・