302 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 08:45:13.18
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銀色の永遠 〜後藤真希は杜王町を守りたい〜
「高橋、小川、新垣、紺野、田中、道重、久住・・・・・・みんな入院かい。
難儀なこっちゃ。あの場にいて病院沙汰になんなかったのは、お前と亀井だけやないか…」
「はい・・・・・・でも、れいなはみんなの中でも一番の大怪我してるのにも関わらず、
一番回復が早いって、お医者さんが…あと、さゆと小春も爆音で耳やられちゃった
らしいんですけど、じきに聞こえるようになるって・・・・」
「さよか・・・・・・なぁ藤本」
「・・・・・・はい?」
「後藤のことは、どうしようもなかったことや。あいつは自分自身が選んだ道で
『事故』を起こしたようなモンやからな・・・・お前にはどうすることもできひん・・・・
そうそう、<矢>はどうなった?あいつ、アレの破片を持ち出したンやけど」
「さぁ・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・まぁええわ。昨日はホントごくろうやったな。元気だせや。
もう行ってええよ・・・・・・・・」
303 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 08:47:37.39
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顧問の部屋を出た藤本美貴は、誰もいない部室を眺めて思う。
あたしは・・・・・・・何をしたくてこの部に入ったんだったかな・・・・・・
・・・・そうさ、大スターに・・・・・ふん、大スター・・・か・・・・
スカートのポケットから、銀色のペンダントを取り出し、中を開ける。
中には、鋭利に割れた石の破片が入っている。
いや、これは石などではない。
我々はこれを知っている。
矢の破片だということを知っている!!!
「真希ちゃん・・・・・あんたの意思はあたしが受け継ぐ。方法も考え方も違うだろうけど…
町も!仲間も!!友達も!!!あたしはすべてを守り抜いてみせるさ・・・・今のあたしは
演劇部がなかったらいなかった・・・だからあたしは演劇部はやめない・・・・・・・この<矢>も
破棄しない!!!」
あんたが退院したら・・・また三人でいつもと変わらない毎日を過ごせますように…
藤本美貴はペンダントを閉じると、それを首にかけた。
いったいこれからどんな苦難の道を歩むのか、まだ知ることが出来ない。
しかし、すべては決められているに違いない。
我々は、皆『運命』の奴隷なのだから。
そして『運命』を変えることのできる少女が、ここに一人…
304 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 08:49:10.00
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ぶどうヶ丘高校・中学の女子生徒が7人、急患で運ばれた翌日…
後藤真希は、いなくなった。
305 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 08:50:46.62
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某日。
彼は杜王駅の広場にいた。
S市に買い物へ行った帰りである。
「ふー重たかったぜ。こっからまた家まで運ばなきゃならないのがめんどくさいけど…」
ポツ・・・・・ポツ・・・・・
雨だ。
あいにく、彼は傘を持ってはいなかった。
天気予報は見るほうではない。
でかい荷物を持って走るのはめんどくさいな・・・・そう思っていた時、
彼は奇妙な人影を見た。
すげぇ可愛い子だな。包帯なんか巻いて、ケガしてるようだけど…
…ん?あの制服、おれと同じ学校だよな・・・・・・・
ビュオォォォォォォ・・・・・
「んわッ」
正面から吹かれた風に、彼は思わず目をつむる。
そして、再びまぶたを開いたその視界には…
306 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 08:52:25.01
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「・・・・・・ッ!?」
その腕や足に包帯を巻いた少女が、紫色の悪魔を連れて佇んでいたのだ。
駅前にいる人間は紫色の悪魔に気付く者がいなかった。
彼を除いて。
「す・・・・・・スタンド!!」
彼は、スタンド使いとひかれ合うことを恐れて生きていた。
能力を手にした時は、普通のやつよりも楽しく自由に実りある人生を生きたいと
やりたい放題やっていたが、去年の春、ひどい目にあった彼は(自業自得ではあったが)
スタンドを使うのをやめていたのだ。
だが、スタンド使いとスタンド使いはひかれ合う。
この『運命』から逃げることは、誰であろうと不可能だ。
彼は、スタンド使いの少女とひかれ合ってしまったのだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
307 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 08:53:45.88
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「・・・・・・・んぁ」
彼女は気がついた。
スタンドを出している自分を見ている者に。
そいつは背が低く、ロン毛で制服にいっぱいベルトがついている変なヤツであった。
・・・・・・あいつ、見えてるな。
こうも簡単にめぐり合えるとは思わなかった。
やはり、この町には『スタンド使い』という名のウイルスが多いことは間違いない。
彼女はその男子生徒を睨みつける。
すると、その男子生徒はオドオドしながら走って逃げていった。
「・・・・・・・逃がさないぽ」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・
308 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 08:55:06.42
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「ハァ・・・・・ハァ・・・・・・なんなんだあの女はッ!!町中で平気で
スタンドを出しているなんて!!」
スタンド使いと関わりあうのはごめんだ。
彼は大きい荷物を持ったまま、裏道へと駆け込んだ。
ちょっと暗いが、ここを通ったほうが家も近いのだ。
それに、雨もどんどん本降りになってきている。
「早いとこ家に帰ろう!…あッ!!あの女のせいで少年ジャンプ買いそびれたぜ!!」
それにしても、あの女何してたんだろうな…
やっぱりあれか?
こんなもの買ったから、こんな目にあったのか?
でもみんなにバカにされっぱなしってのもムカつくしよぉ〜もうすぐ卒業なのに。
まぁいいや、そこを抜ければすぐに家・・・・
彼が安心しきっていた、まさにその時である。
ビュルオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!
「うわあッ!!!!!」
一陣の風が吹いた。
彼は、生まれて初めて風に身体を飛ばされた。
ドシャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!
309 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 08:56:15.64
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「ホガァーッ!!なんだ今のはぁーッ!!!!!!!」
押し流されたとか、そんな生易しいものではなかった。
足が浮いたのだ。
風に吹かれて足が浮き、後方に飛ばされたのだ。
雨の中、尻もちをついてしまった彼の制服はビショビショであった。
パンツにまで水がしみている。
「きみぃ・・・・・いま、逃げたね?」
前から歩み寄ってくる女に、彼は震え上がる。
暗くて顔はよく見えない。
だが、包帯やバンソーコーの数を見るに、身体中にケガをしているようだった。
間違いない・・・・・さっきの女だ!!!!
「あっ・・・・あっ・・・・・・・ッ!!!な、なんだお前は!!?」
「んぁ…?質問を質問で返すんじゃあねーよ…きみ、見えてるんでしょ…?
この・・・・・・『ゴシップ・セクシーGUY』がさぁーッ!!!!」
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
310 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 08:58:33.91
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「お、おれになんの用だよ!?」
「用?それは至ってシンプルなものだよ・・・・・ただ『消えてもらう』だけだぽ」
彼女は軽く風を操作した。
すると・・・・・
ビシビシビシビシビシビシッ!!!!!!!!!!!!!!
突然、彼の制服が音をたてて切り刻まれ始めた。
制服だけではない。
その風が頬を霞めると、皮膚を切り裂き出血した。
「う、うわああああッ!!!なんだお前はああああああああああッ!!!!!」
「町の平穏ため・・・安息のため!!スタンド使いは皆殺しだぽ・・・!!!!」
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…
311 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 08:59:55.93
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彼女は考えた。
すべてが終わったらどうしようか・・・と。
すべて終えて、町が平穏を取り戻したら…そうだなぁ。
資格とったり、もう一度学校行こうかな。
勉強、中途半端だったし、今度行くときはマジメに勉強してみよう。
漢検の準2級の雪辱も晴らしたい。
で、カッコいいイケメンの彼氏作って、友達もいっぱい作って…
・・・・・・あの二人みたいな友達、またできるといいなぁ。
312 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 09:02:18.14
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ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・・・
雨は強さを増し、容赦なく二人を濡らした。
「さ・・・・・雨が傷にしみるし、きみにはさっさと退場してもらうよ・・・・この世界からねぇ!!!」
彼女はスタンドの槍を腰に納め、両手を突き出す。
『神砂嵐』…一撃で仕留める。
と、その時である。
「うわああああッ!!!!!」
そいつが持っていた荷物の中身を投げてきたのだ。
スタンド攻撃…いや違う!!!
バシッ!!!!ガシャン!!!!
彼女は、素手でその物体を叩き落とした。
これは…
「んぁ、人形・・・・・・・か。なんだ」
画材屋で売ってるスタイルクロッキー用の人形のようだ。
絵でも描くのだろうか…それにしては大きいが。
ビビッてものを投げつけてくるとは…よくそんなんでスタンド使いでいられたものだ。
「まぁいいや・・・きみがどんな能力を持ってたのか知らないけど、一撃でラクに
してあげるからね」
313 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 09:02:46.38
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「さわったな」
314 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 09:04:15.00
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「え?」
そいつの声色が変わった。
わざと低い声を出したのだろうが、その声色には歓喜で満ち溢れているように感じた。
「…まぁいいや。奥義『神砂…」
グン!!
彼女は異変に気がついた。
身体が動かない…?
「おれはついてたね…腹の底から『ザマミロ&スカッと爽やか』の笑いが
出てしょうがねーよ!!だってこの人形をさっき買ってなきゃ終わりだったし、
てめーの槍で人形砕かれてたらそれでも終わりだったもんなぁ?そうすっと、
おれは今めちゃくちゃツイてるってことだな!!」
人形…いま叩き落した人形のことを言っているのだろうか?
彼女は目で叩き落した人形を捜す…が、どこにも落ちていないようだ。
バカな…たった今叩き落したばかりなのに…
まさか…スタンド攻撃を受けているのか!?
315 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 09:06:57.40
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彼女はそいつを見た。
そして、そいつの後ろに誰かが立っているのが見えたのだ。
『んぁ…パーマンに出てくるさぁ〜…コピーロボットって便利だよねぇ』
「んぁ…!?」
彼女は奇異な瞳でそいつを押しのけて目の前に立った自分を見つめた。
この胸糞悪い感覚…自分自身を見るということが、こんなに精神的に
くるものだとは思わなかった。
『ま、ごとーの方はいなきゃいいなって思うコピー人形なんだけどさぁ…』
スッ
自分と同じ姿をした人形が腕を下げると、自分まで腕を下げてしまう。
どうしても、目の前にいる自分と同じポーズを取ってしまう!!
「な…なんだこれは・・・・・・・・・ッ!!!!!!!!!!!」
316 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 09:08:44.96
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「おれのスタンドは人形に触れたものをコピーする能力さ…てめー…おれを
殺そうとしたよなァ〜?どいつもこいつもおれのことナメやがってよぉ〜…
ムカつくぜ。ケガもしちまったしよぉ〜…」
そいつは彼女の姿をした人形に何かを渡した。
棒のような…なんだあれは?
『ぽっ』
人形は手に持ったそれを、彼女に向かって投げる。
キャッチするつもりはなかったが、人形がそんな体勢を取ったので、操られてしまった。
そして、握って初めて気付くその物体の正体。
「か、カッターナイフ…!!!」
チキチキチキ…
右手でその刃を出す。
彼女の意思ではない…彼女の前に立つ人形が、彼女を操っているのだ。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・
317 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 09:10:19.46
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クルッ
「ん、んぁ…ッ!?」
長く刃を出したカッターナイフは、彼女のノドを目指していた。
抵抗してはみるものの、どうにも身体の自由が利かない。
まさか・・・ハマってしまった…!?
そんなバカな…
こんなアッサリと敵の能力にハマってしまったのか?
しかも、自分から通り魔的に急襲しておいて…このザマなのか!!?
初めてだった。
ハイエナは自分だったはずなのに…
こんなに早く…
逆 に や ら れ る な ん て !!!
「ご、ゴシップ・セクs」
『うるさいぽ』
ブシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!
318 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 09:12:58.73
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「うわあ…ザックリいったなぁ…まぁ血が吹き出てっからって出血多量で死ぬとは
限らないよ。血が足りなくなる前に大抵血が固まるからさぁ〜あ、でもこの雨じゃ
傷口の血がなかなか固まらないからわかんねぇなぁ〜」
『その前に窒息死だぽ』
「どっちでもいいさ。勝手に襲い掛かってきたコイツが悪いんだ。自業自得だ。
さ、帰るぞ『サーフィス』…」
ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・・・
319 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/20(月) 09:15:00.21
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絶望なんて…もう何度か知ってる。
こんなもの。
でもなのに…涙だらけ。
彼女の血飛沫は、雨が綺麗に洗い流していた。
後藤真希 消息不明
スタンド名 ゴシップ・セクシーGUY
TO BE CONTINUED・・・