104 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 09:51:16.15 0


銀色の永遠  〜 その名は マッキング・ゴールド 〜



時間は、小川麻琴と紺野あさ美が後藤真希と交戦中の頃に遡るが…


「さゆ…心の準備はいい?」

「待って、待って・・・・・・・す〜…は〜・・・・・・・い、いいの」

「いくよ?いれるよ…?」


「・・・・・・」

「・・・・・・」


「ちょっと待って!やなのやなの!!さゆみやなの!!」

「えッ!!もう先っぽまで入ってるんだよ!!無理だよ!!!」

「やだやだホントやめて!!!はぁっはぁっはぁっはぁっ!!!」

「あ、暴れないで…うまく入らないじゃん!!」

「ホントやめて!ホントやめて!!いや〜ッ!!!」



105 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 09:53:27.31 0

「…もう!!」


亀井絵里は痺れを切らして道重さゆみから離れた。
その手には、ピアッサーが握られている。
既にぶどうヶ丘高校に進学が決まった道重さゆみが、高校生になる前に何か
大きなことをしたいのと言うので、亀井絵里がピアスを開けちゃえば?と提案したのだ。
耳にアクセサリーだなんて、お姫様っぽい!!
最初は大ハシャギしていた彼女だったが…


「そんなに騒がれたら手元が狂っちゃうよ」

「ご、ごめんなの…」


市販のピアッサーを購入したのが間違いであった。
病院で開けさせればよかったかな。
鋭く尖ったピアッサーの針を見て、道重さゆみは恐怖してしまったのである。
それでもさっきは何とか右耳に打ち込むことができたので、彼女の
右の耳たぶには誕生石のついたピアスが光っているが…

「もう一回、氷で耳たぶ冷やすの。あぁ、怖い」

この始末であった。

さゆのお部屋に入るのはいつの時も嬉しいけど、なんだかなぁ…
もしピアッサー入れるの失敗しちゃったらって思うと僕まで怖くなってくるよ。
あーあ…大人しくしてくれないかなぁ。


106 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 09:56:06.87 0

「さゆ、もう平気?」
「ううん、怖いの」
「怖いのって…さっき右耳に開けた時、そんなに痛くなかったでしょ?」
「う、うん…」
「じゃあ、早いとこ入れちゃおうよ!!ウサちゃんのピアス、したいんじゃないの?」
「そ、それもそうなの…よし」

ちなみにウサちゃんのピアスとは、亀井絵里がちょっと早い進学祝いとして
ピアッサーと一緒に道重さゆみに買ってあげた『プレイボーイ』のピアスの事である。

「じゃあ、大人しくしてるんだよ」
「ちょっと待って、絵里」
「なぁに?」
「ベッドで横になってもいい?」
「えッ!!?」

突然、彼女が言い出した事に、亀井絵里はドキッとしてしまう。
な、なななななな何を言ってるんだ!!
べ、べべべべべッドに横になってどうするっていうんだ??

「身体起こしてるとなんだか不安定だし、そわそわするの。横になれば
なんとなく安心かなって」
「あ、ああ…うん、そうだね!!」

そ、そういうことか。
ふぅ…びっくりしちゃったよ…
あれ、でもそうしたら僕はどんな体勢でさゆにピアス打ち込めばいいんだろう?
亀井絵里はピアッサーを右手、左手と何度も持ち替えて考えた。


107 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 09:58:09.47 0

「ねぇ、決心が揺らがないうちに早く入れてほしいの」

「え、でも僕、どんな体勢でやればいいの?」

「さゆみに跨ればいいじゃん」

「あ、なるほどね…って…えぇぇぇええええぇえええええぇっ!!!?」


僕が乗るの!?さゆの上に!!?
う、うっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!


「どうしたの?」

「い、いや!!なんでもないよっ!!!!」

「じゃあ早く」

「う、うん」


亀井絵里は、心臓の鼓動をバクバクいわせながら道重さゆみの上に跨った。
こ、困ったぞ…これじゃ手が震えて失敗しそうだ…
道重さゆみは目を閉じて、ピアスが打ち込まれるのを待っている。


108 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 09:59:55.99 0

し、しっかりするんだ亀井絵里ッ!!
僕がさゆの耳にピアスを打ち込むんだぞ…これでさゆは今よりも可愛くなれるッ!!
僕の手で可愛くなるんだ!!!
さゆのためにも…失敗なんかするもんか…ッ!!!

よし!!と心の中で決心をすると、亀井絵里は道重さゆみに覆いかぶさるようにして
右手に持ったピアッサーを左耳にあてがった。
穴を開ける位置は水性ペンで印をつけて置いたので、間違えることはないだろう。

一気にやるんだ…一気にパチンと…


スー…フー…スー…フー…


ふと、道重さゆみの呼吸音が亀井絵里の耳に入ってきた。
なんだかこうしていると、変なことしているみたいだなぁ…彼女はそう思ってしまった。
それは、この状況で思ってはいけないことだったのだが…


僕が上、さゆが下かぁ…

か、可愛い…ッ!!


ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…


109 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 10:02:47.33 0

って…な、何を考えているんだ僕はッ!!
僕はさゆの左耳にピアスを打ち込むために、さゆに跨っているんだぞ!!?
あぁ…バカだ、本物の大バカものですよ…僕は…
変なこと考えてないで、早くピアス打ち込んで安心させてあげよう…

亀井絵里は、ピアッサーを持った手の力を強めた。

パチンッ!!!


入った。
無事、ピアスを打ち込むことが出来た。
意外とあっさり入ったなぁ…
とにかく、これでさゆは今より可愛くなれる…亀井絵里はそう思ったが…
唯一、誤算が生じた。

パチンというピアスを打ち込む音ともに、どこか切なげな表情(本当はビクッと
しただけだが)を見せた道重さゆみを見て…


亀井絵里は…


「・・・・・・・」
「・・・・・ぅん・・・?」


唇を重ねてしまった!!!


ズキュウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンン!!!


110 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 10:03:43.87 0


僕…今まで十分我慢してきたよね?


ハイ?理性??


何それ?




111 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 10:05:16.70 0


ちゃーらららら〜ちゃーらららら〜…♪


突然鳴り響く、亀井絵里の携帯電話。
だが、こんな状況で電話を手に取ろうとするバカはいない。

それにこの着信音はEメールだ、あとでいくらでも見れるさ…

そう思い、彼女はしばらくその体制を変えようとはしなかった。








放置された携帯電話のサブディスプレイには、こう表示されていた。


『Eメール受信  紺野あさ美』


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


177 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/06(月) 06:44:09.18 0


けんだま!!
その玩具は久住小春の好奇心を震撼させたッ!!!


話は数日前のことだ。
ヒマだったので、部室で小道具を漁っていた久住小春は、懐かしいものを発見する。

「懐かしい…けんだまだ。小学三年生のお正月にやって以来だなぁ」

どれ、久々にやってみよう。
昔は左右の器に乗せるのがやっとだったが、あれからかなり時が経った。
成長した今なら意外と簡単に玉を挿すことが出来るかもしれない。


ひゅん…カツン…ひゅん…カツン…


だが、人生と同じでけんだまもそう簡単なものではなかった。
けんだまの先っぽに、なかなか玉が挿さらない。

「ちぇッ、こんなのつまんない」

ポイッ…ガチャン!!

久住小春はけんだまを乱暴に箱の中へ投げ入れた。

182 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/06(月) 06:50:57.34


「小春、なにやってんの?」
「あ、吉澤さん。ヒマだったんで小道具を漁っていたんです」
「小道具?ああ、昔舞台で使ったやつかぁ…おッ?けんだまじゃん。懐かしいなぁ」

吉澤ひとみは先ほど久住小春が乱暴にしまったけんだまを手に取ると、
その場で遊び始める。

カタッカタッカタッカタッ…

けんだまの赤い玉は、まるで意思を持ったかのように右、左、さらには柄へと
テンポよくリズミカルに乗り続け、そして…

カツン…

頂部に刺さった。
ミラコー!!おぉ…ミラコー!!!

178 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/06(月) 06:45:56.71 0

「よ、吉澤さンッ!!めちゃめちゃうまいじゃあないですか!!!」

「ン?ったりめーだろ。俺はこう見えても球技全般得意なんだ。バレーだって
小春にゃあ負けねーさw」


けんだまが球技なのかどうか定かではないが、今のけんだま捌きは見事だった。
これは敬意に値するものだ。
吉澤ひとみは最後にこう言った。

「この歳でけんだまがうまく出来ないってのも恥ずかしいからな」

けんだまを誰かに見せる機会もないが。
ただ、一つ言えることがある。
吉澤ひとみのこの一言が、久住小春のやる気の導火線に火をつけたのだ!!


この歳でけんだまがうまく出来ないってのも恥ずかしいからな。


私は…ミラクルエースなんだ。
ミラクルエースの私は、将来ミラクルな大スターになるんだ。
その私が…けんだまごときロクにこなせないなんて…許されないッ!!!


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

179 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/06(月) 06:46:52.08 0

そんなわけで、久住小春は小道具のけんだまを家に持ち帰り、それ以来
部屋で一人奮闘しているのだが…

「くッ…強敵すぎる…」

思い通りに操れないけんだまを握り、四苦八苦していた。
そんな久住小春を、彼女の精神体である『ミラクル・ビスケッツ』が見つめている。
七人の小人であるが、これで一体のスタンドだ。

『コハル!!ガンガレッ!!!』
『アトひと息ダワッ!!イケルワヨコハルチャン!!!』
『ミラクルキボンヌ!!』

彼らも久住小春を応援してくれているようだ。
なら、我々も応援しようじゃないか。
頑張れ久住小春!!
ミラクルを見せてくれ!!!


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…



180 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/06(月) 06:47:38.30 0

「たぁッ!!!」

ひゅん…カツン…


赤い玉は虚しく頂部に弾かれて、ブラリと垂れ下がった。
…飽きてきた。
久住小春は、去年の冬に買ってもらったばかりのベッドの上にけんだまを
放り投げてしまう。
何をやってるんだか、私は。こんな遊びにムキになって…
彼女はベッドに横たわって天井のシミを眺めた。

『コハルチャン、ヤメチャウノ?』

ミラクル・ビスケッツのNo.2が彼女に問う。

「うん、もういいんだ。小春はムキになっていただけなんだ。ミラクルとも
あろう者がけんだまごときにムキなるなんて…まだまだだよ」

そう言うと、久住小春は寝返りを打って彼らから顔を背ける。
目を開くとそこには、今し方放ったばかりのけんだまが目に飛び込んできた。

ふと思ったけど…
けんだまって恋人同士みたいだなぁ。
例え離れていても、常に紐で繋がっていて、一つになることができる。
赤い玉と本体、どっちが女の子かな?
う〜ん…私にはわからないや。
今度吉澤さんにでも聞いてみよう。



181 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/06(月) 06:48:03.87 0

ピリリリリ…ピリリリリ…


これもまた今年に入ってから買ってもらったばかりの、携帯電話が音を鳴らした。
着信?誰だろう…私の電話の番号を知っているのは…

久住小春は、携帯電話を手に取った。


『着信中  道重さゆみ』


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


277 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 00:25:51.78 0

おーおー、いっぱい並んでると。
ピカピカに光るローファーが目まぐるしく陳列されとるとッ!!!

れいなは杜王町の駅ビルの中にある靴屋に来ていたと。
春から高校生やけん。
もう、このコンバースのオールスターともさよならだっちゃ。
これは確か…中2の春に『靴のムカデ屋』で買ったものたい。
この靴もずいぶん履きこんだばい…思い出がいっぱいツマッとる。
けどッ!!高校生になったら絶対ローファーがよか!!
スニーカーで通学するのは中学までで終わりたいッ!!!

何にしよかね…美貴姐や絵里みたくカッコいいローファーがいいなぁ。
ハルタじゃ定番すぎるやろか?


278 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 00:27:25.50 0

ちゃーらんららったったった…


「ん…おぉッ!!絵里から電話くるなんて珍しか!!も、もしもしッ!!!」
『もしもし?れいな?』
「ちょうど良かったと。絵里の履いてる革靴ってどこのもんやったっけ?」
『ヴェルサーチだよ。そんなことより…』
「どうしたと?」
『うん、あのさ…あ、あれ…なんだっけ?』
「ズコーッ!!何か用があったんじゃなかとね?」
『そ、そうなんだ!ちょっと今いろいろあって気が動転してたもんだから。
あのね、僕さゆと…って違う違う!そんな話じゃあなかった!!!』
「絵里、今日はいつにも増して変っちゃ…」
『そうそう!!紺野さんから連絡が来たんだ。後藤さんと交戦中だから、
すぐ皆を呼んでぶどうヶ丘公園の時計台のある広場に来いって!!』

「ご…後藤さんと…交戦中?」

『うん』


後藤さんといえば、吉澤さんのアレで、美貴姐の親友じゃなかとね。
演劇部に入ってからスタンド使いになったれいなは、あとあと聞いた後藤さんの
武勇伝を聞いて…とても痺れて!!そして憧れたばい!!!
けど、いったいなんで紺野さんが後藤さんと闘っていると?


279 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 00:29:00.53 0

「後藤さんと交戦中だなんて…なんばしたとね。いったい何があったん?」
『それはわからない…けど、Eメールは平仮名だらけでとても読みづらいものだったんだ』
「…どういうことっちゃ?」
『わからないけど…漢字変換をしている余裕がないということは…』

よっぽど…切羽詰まってるってことやろか…

「よ、よくわからんけど…ぶどうヶ丘公園の時計台のある広場っちゃね!?」
『うん!!れいな、今どこ?』
「杜王駅の駅ビルたいッ!!ダッシュでその場所に行くっちゃ!!!」


えぇぇぇぇい!!
靴買うのは後回しばい!!!
なんで…なんで後藤さんが紺野さんと闘っているとね?
なにがなんだかわからんたい…そんなれいなの頭のすみっこから、
以前会った元演劇部のメンバーである市井さんの、こんな台詞がよみがえってくる。


『・・・・・・私が気がついた時には敵味方かまわず真希のスタンドが巻き起こした
暴風によって倒れていたんだよ。あれは凄惨な光景だったなあ・・・・・・・・・
死人まで出しちゃったからね』


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



280 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 00:30:48.62 0


んぁ…きみ、誰?

『ワタシはオマエ自身ダ』

わぁ、綺麗な黄金色だぽ…
でもおかしいな、ごとーのスタンドは紫色のハズなんだけどなぁ…
それに、ここはどこ?

『今、オマエは現実ノ世界ニハイナイ…ワタシがココニ連レテキタ。オマエには
何に変エテも譲ルコトの出来ナイ信念がアル…黄金の意思ガアル!!
ソレがワタシとイウ存在に変ワッタノダ…』

んぁ…?どういうこと??
現実の世界にはいないって…それはいったい…

『ココハ選ばれた者ノ世界…オマエの中にアル<正義>の輝きの中にアルトイウ
<黄金の精神>ハ選バレタノダ。<矢>は<矢を支配できる資格のある者>ヲ選ぶノダ』

<矢>を支配?ごとーが?
もしかして、きみの右胸に埋まってるように見えるのは<矢>の破片なの?

『ソウダ。ワタシを操ルオマエは<風>の速さヲ超エタノダ。<風>ヲ超越シタノダ!!
ワタシとオマエの前ニ立ツ者ハ、ドンナ能力ヲ持トート…決シテ!!ソノ姿ヲ
捉エルコトハ出来ナイ!!ソレガ…<G・セクシーGUY・レクイエム>…
またの名ヲ…ソウ…<マッキング・ゴールド>』


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…



281 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 00:33:22.20 0


…んぁ?

ごとー、倒れてるの?
なんだか夢を見ていたような気がするぽ…

確か今、ごとーの胸を矢が貫いて、それが背後の『G・セクシーGUY』の
胸に突き刺さって穴を開けて…ん?じゃあなんで生きてるんだろう?
致命傷のハズじゃあ…あ、あれ?

傷が…ないぽ。


目の前には、何か驚愕したような表情で辺りを見渡しているらしい
小川麻琴が佇んでいる。
その向こう側には紺野あさ美も…


この子たち、なにしてるんだ?
ピクリとも動かない…

あ、もしかしてアレか。
事故に遭った瞬間の人間は体内や脳でアドレナリンやら何やらが分泌されて
一瞬が何秒にも何分にも感じられるっていうヤツか。

いや、でもそしたらごとーの胸の傷が消えている説明がつかないじゃん。


282 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 00:35:08.66 0

地面に倒れっぱなしっていうのもなんなので、ごとーは砂を払いながら立ち上がる。


おかしい…なにか…奇妙だ…


この間、ごとーの体内時計では三秒は経ってるけど…こいつら、固まっちゃった
みたいに動かなくなってる…

そしてごとーは…小川麻琴の隣に立つことが出来た!!

こ、これはアドレナリンがどうとかの幻覚じゃあないッ!!!


『オマエは<風>の速サヲ超エテ!!<時>を支配シタノダ!!』

ガシィッ!!!!!!!!


その声が聞こえた瞬間、時の歯車がガッシリとごとーのスタンドと
噛みあったような気がした。
なんだろう、このスガスガしい気分は…!!

そうだ…ごとーのスタンドは…黄金の意思は…<矢>に選ばれたんだ。
その証が、目の前に立っているじゃないか!!!


そう、その名は…マッキング・ゴールド!!!



283 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 00:36:55.78 0


ドゴォォォォォォッ!!!!!!


ごとーの髪の色と同じ、黄金の輝きを放っているスタンドで、小川麻琴を殴りつける。
あばら骨が折れた感触が、スタンドを通じてごとーの拳にも伝わってきた。

そして…


『「時は動き出す…」』



「うげえええええええええええええええええッ!!!!!!!!!」

「ま、マコ!!!そんな…い、いきなり…吹っ飛ばされているなんてッ!!!!!」


ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!



284 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 00:40:25.34 0


もう何発殴られたであろうか。
地面に倒れ伏した紺野あさ美は、朦朧とした意識の中で後藤真希を見つめていた。


相手が勝ったと思ったとき、そいつはすでに敗北している…か。
やはり私は、心のどこかで勝ったと思っていたんだろう。
恐らく、あそこで倒れているマコも。
まさかこんな事態になるなんて、誰が予想できたのだろうか…

後藤さんの紫色のスタンドは、黄金に輝くスタンドへと変化したのだ。

スタンドが『進化する』という事例はあるが…あれは進化とかそういうレベルではない。
まるでスタンドの『先へ行った』というような…そんな形容がピッタリであった。


「あとはきみだけだね、意識があるのは…」

「うぅ…ッ」


285 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 00:42:49.96 0

後藤さんが私に近付いてくる。
黄金のスタンドを発現させてから、彼女は風を使うのをやめた…
だが、それ以上の何かを手に入れたようである。
マコは、一瞬のうちに後藤さんに倒されてしまったのだ。
そして…私も…

あの子に連絡しておいてよかった…私の嫌な予感はあたったんだ…
確かに、かなり痛い目にはあったが…私の行動に間違いはなかったんだ。
もし、あの時あの子に連絡を取っていなかったらどうなっていただろう?
強大な力を持った後藤さんが…きっとあの子達を…

そうだ、やはり私はツイている。予感が的中したのだから…
あとは、あの子たちがここに来るまでの間に、私がやられさえしなければいいのだ!!
いまの後藤さんの能力には…謎が多すぎる!!


「…ニューオーダー!!!!!!」
ガキョンガキョンッ!!!


空間を歪ませて、後藤さんが私に近づけないようにする。
倒れている三人にはとても申し訳ない闘い方ではあるが…私がやられたら
あとに伝える者がいなくなる!!
あの子たちが来るまででいい!!!私は防戦態勢をとるのだッ!!!


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!


286 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 00:44:20.86 0


「ニューオーダー…空間に歪みを作る能力かぁ。まぁ他にも何かありそうだけど、
きみの闘い方はさっきから妙だよ。ごとーを潰そういう意思が感じられない…
きみは逃げているッ!!!」


ガキョンガキョン!!!

紺野あさ美は尚も空間に仕掛けを作り、後藤真希から距離を取ろうとする。


「その耳障りな音…いい加減うざいんだよぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」


後藤真希の変化したスタンドが一瞬輝いた。

またあの光だ!!

紺野あさ美がそう思ったその時…



「マッキング・G・ザ・ワールド!!!」


ドオォォォォォォォォォーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!







287 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 00:45:44.04 0



「ごとーが『D』とか呼ばれる男と同じ力を手にいれるとは…
つまり、あの歯糞くせぇ鈴木と同じ属性の能力か…フン!!」




その声を、紺野あさ美は聞くことは出来なかった。

後藤真希を除いた全ての時間は・・・・・制止してしまっているのだから。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


299 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 08:36:23.07 0


僕は、平凡に生きてきた女の子だった。

そりゃあ、人と違った能力を持ってたり、女の子に恋しちゃってたり、
しまいには一度死んじゃったこともあるから、普通の人から見たら平凡には
見えやしないんだろうけど…それでも平凡に生きてきたつもり。

こうして走っている今だって、謎のメールをよこしてきた紺野さんのことより、
僕の前を走ってる好きな子のことを考えている。

きっと、僕の根っこはバカで能天気なんだろう…


さゆ、きみは今、なにを考えているの?


僕は、目先のことしか考えられない最低のマヌケだった。

真の絶望というものがどういったものなのか…まだ知らなかったんだ。


ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…



300 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 08:41:02.33 0


その現場を見て、二人は驚愕する。
地獄絵図…それを見せ付けられている気分だった。
地面に倒れるよく知った面々…その真ん中に立つ、一人の女子高生。
まるで、自分がこの世の帝王だとでも言わんばかりのオーラに、女子中学生である
道重さゆみは恐怖を覚えた。

そして、亀井絵里は…


大きく目を開いているだけだった。



301 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 08:41:49.13 0


あれれ…紺野さんからメールがきて、僕はここにやって来たんだよな?
紺野さん、なにやってるの?
みんな、どうしてそんなグッタリしてるの…?


高橋さん?
新垣さん?
小川さん?
紺野さん?


なんで?みんな昨日はピンピンしていたじゃあないですか。
目…覚ますんですよねェ?
僕らをここに呼んだのは紺野さん、あなたですよ?
ちゃんと状況を説明してもらわないと…僕らどうしたらいいかわからないじゃあ
ないですか…ほら、向こうから来たれいなと小春ちゃんも困ってます。

ほら、早く起き上がって…いつもみたく小難しく説明して下さい…
目、覚ましてくださいよ…ねぇ…


「んぁ…また来たのか…今度は新参が四人同時…まぁ、こいつらに
浪費した時間よりも短い時間で全員潰してやるぽ…!!!!」

金髪の悪魔はボソリとそう呟いた。
その背後には、同じ金色のスタンドが佇んでいる。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


302 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 08:43:42.73 0

「これは…想像以上にヤバイ…やば過ぎるの!!藤本さんと吉澤さんがいないのも
心細いし…と、とにかく、藤本さんがくるまでさゆみ達で…ねぇ絵里」

「・・・・・・・・・・・」

「絵里?」


もはや彼女の声は亀井絵里に届かなかった。
本当の惨劇の舞台に立たされた気分だった。

目の前に無残な姿で流血して倒れている四人の『同級生』…


『努力を持続させる事が出来るヤツは、何でもこなせるヤツよりもスゴイんだ!!』

『何かを育てるという事は、自分を育てるという事にも通じるのだ』

『人間の可能性は無限さ、先に進もうとする意志さえあれば』

『生きる喜びを日々から拾い上げる努力は必要なんだ』


四人の口癖が、彼女の頭の中をグルグルと交錯する。
同い年の先輩から学んだ数々の教え。
亀井絵里は、間違いなくこの四人と出会ったことにより、大きく成長した!!

その四人が、目の前でピクリと動かない。
生きているのか死んでいるのか…それすらもわからない。


303 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 08:47:23.16 0


「愛ちゃん…ガキさん…マコっちゃん…コンちゃん…みんな!!!!」

僕の…僕の大切な仲間が…
大事な友達がッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

この時、尊敬によって生じてしまっていた見えない心の『壁』が音を立てて崩れた。
それを心待ちにしていた四人に、その声は届かなかったが…


ドッヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウンンン!!!!!!!!!!


亀井絵里の身体から、飛び出すようにしてスタンドが発現する!!
それは『サイレント・エリーゼACT3』…宙に浮かせる能力!!!


「おまえ…おまえッ!おまえ!!おまえッ!!!おまええええええええッ!!!!!」

「え、絵里ッ!?」

「…ぽ?」

亀井絵里は怒りを露にして叫んだ。
固めた拳はブルブルと振るえ、噛んでいる唇からは血が出ている。

「絶対に…絶対に許さないぞ!!!!!サンドバックにしてやるッ!!!!
土下座したって何したってダメだッ!!!!宙に浮かせて!!!きみがッ!!
泣くまで!!!殴るのをやめないッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



304 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 08:49:05.97 0

今まで見せたことのない気迫とオーラに、隣にいた道重さゆみは圧倒されてしまう。
それは向こう側にいた田中れいなや久住小春も同じだった。
こんなにまで闘争心を剥き出しにする彼女は…初めてだ。


「やれッ!!サイレント・エリザベエェェェェェスッ!!!!!!!!」
『R・o・g・e・r!!了解シマスタ!!!!』

ドンッ!!!!!!!!

「んぁ…?」


突然、目の前まで接近してきた亀井絵里のスタンドを見て、後藤真希は
一瞬たじろいだ。その距離は、射程5mの範囲を越えている。

亀井絵里のスタンドが…こんなに素早く、しかも遠くまで攻撃できるなんて…
知らなかったぽ…


「ぶっ飛ばしてやるッ!!今の僕のエリザベスは素早いぞッ!!!
みんなを傷つけられた怒りでグツグツ煮えたぎっているんだからなぁーッ!!!!
でやあぁぁぁッ!!モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグッ!!!!!」


繰り出される蹴りのラッシュ!!
小さいスタンドではあるが、その能力は確かなようだ。
だが…


305 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 08:51:36.01 0


パパパパパパパパパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!


後藤真希の『マッキング・ゴールド』は、それらをすべて捌ききった。
能力があるとはいえ、あたらなければ意味はないのだ。
そして、すかさず拳を一発叩き込む。

バシィッ!!!

『ギャッ!!』
「ぐえええええええええええええええええええッ!!!!!」

スタンドとともに、亀井絵里はダメージを受けた。
唇の端に、殴られたようなアザが出来る。

「絵里ッ!!!!!!!」
「う、うげ…」

道重さゆみに肩を抱かれるも、なんという威力のパンチであろうか。
たったの一発なのに、脳震盪で体が言う事をきかない。
みんなは…こんなものを何発も何発も食らっていたのか…?
そんな彼女を見て、後藤真希は冷たく言い放った。

「きみら…自分達が『無駄』なことをしようとしてるってェのがわからない?
演劇部でも上位に立っているであろうこの四人を倒したこのごとーが…所詮は
『二軍』でしかないきみたちに負けるわけがネェーに決まってんじゃあぁン!!
無駄な足掻きなんだよぉッ!!無駄無駄無駄無駄ァ!!!」


ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!


306 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/08(水) 08:53:55.60 0


「小春ちゃん…何を考えてると?どうしてビスケッツを出してるとね…?」

「決まってるじゃないですか。彼女を…後藤さんを出し抜くんですよ…
方法は思いつきませんがね…」


田中れいなの質問に、久住小春は冷静に答える。
あくまでも冷静を保たなければ…でないと、今の亀井さんのようになってしまう。
しかし、久住小春は田中れいなの質問が妙に引っ掛かった。

この状況を見てみろ。
四人は見るも無残な姿で地に倒れ、意識があるかどうかもわかりはしない。
彼女らを血祭りにあげた後藤さんは、広場の中心で大地を踏みしめている。
なら、闘うしかないじゃあないか。
目の前の敵、後藤さんはいずれ自分達を潰しにくる者なのだ。
向こう側にいる道重さんだって、すでにスタンドを発現させて、如何なる
状況にも対応しようと備えている。
なぜスタンドを出しているのか…その質問は明らかおかしい。


「あなたは何をしてるんです?なぜスタンドを出さないんですか…田中さん」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


462 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/10(金) 18:44:49.67 0

後藤真希は一歩、また一歩とゆっくり亀井絵里と道重さゆみの二人に近付いていく。

な、なんて気迫なの…これが…演劇部の元エース!!
後藤さんのスタンドは紫色で、風を操る能力のハズ!!なのに…
目の前まで迫ってきている後藤さんのスタンドは…金色で眩しいの!!!

「きみと亀井絵里ちゃんには山Pがお世話になったからねぇ……
彼は…ごとーの考えを理解してくれた数少ない友達だった!だからッ!!
てめーらはただじゃあおかないぽッ!!!!!」

後藤真希が走り出す!!
有無を言わさず攻撃をしかける気なのだ!!!
その気の圧力に一瞬押されるも、道重さゆみは右腕に絡みついた
ウナギ型のスタンド『シャボン・イール』を構えた。


「シャボン玉あああああああああああああああああッ!!!!!!!」
ブシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウンンン!!!!!


スタンドの口から高圧力で吹き出される無数のシャボン玉型爆弾!!!!
一つ一つのシャボン玉の威力は大したものではないにしろ、これだけの数の
シャボン玉であれば、そこいらの木を吹っ飛ばす威力も持っているだろう!!!
直撃を受ければ無事では済まないのだ!!!

「シャボン玉タイプの爆弾スタンドか…そんな一直線の攻撃がこのごとーに
通用するとでも思ってんのかねぇ!!!!」

後藤真希は、ヒラリと身を翻して華麗にシャボン玉をかわす。
それはまるで、踊っているようであった…彼女もまた、演劇部に身を
置いていた人間なのである。


463 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/10(金) 18:47:19.77 0

「きみら二人は嬲り殺すと予告するぽ!!!」

一気に間合いを詰めた後藤真希が、拳を振り上げた。
こんなウジ虫どものために、わざわざ時間を止めるまでもない!!!

「う、うぅ…」

道重さゆみは後藤真希の怒りのオーラに圧倒されっぱなしであった。
広いところでの戦闘が得意なハズのスタンドも、ここまで接近されてしまっては
どうすることも出来ない。
それに、左腕では亀井絵里を抱えている。
この攻撃をかわすことは…出来ない!!!


その時、後藤真希の背後で何かが飛んだのが見えた。


人?
いや、けど小春ちゃんもれいなも向こうで何やら驚いたような顔しているし…
じゃあ誰なの?

その正体は、声ですぐに判明した。


「亀子ォォォォォォォォォッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


それは、砂埃と血で汚れた高橋愛であった!!!


ドッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!


464 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/10(金) 18:50:00.84 0


なんで亀子たちがここにいるのかは知んネーけど…
二人がヤラれる!!
亀子が後藤真希にヤラれる!!!!

意識を取り戻して目の前に飛び込んできた光景に、彼女は
無我夢中で飛び込んでいったのだ。


「ライク・ア・ルノアール!!!!!!!!!」
「んぁ…そのまま寝てればよかったのに…」

マッキング・ゴールドが一際眩い光を放ち、そして…



ドォォォォォォォォォォォォォォーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



後藤真希を除いたすべての時間は止まった。
動くものは何もない。
風も、吹かない。


465 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/10(金) 18:51:05.15 0

「惜しかったねぇ高橋愛ちゃん。もう少し速く飛んでいれば、ごとーの
脳天に一撃いれることが出来たかもしれないのにねぇ」

もの凄い形相でスタンドの左の拳を繰り出そうとしている高橋愛の横に立ち、
聞こえることのないセリフを後藤真希は吐いた。
それにしても、使い物にならなくなった右腕をぶら下げて、よく立ち上がり、
飛び掛って来れたものだ…後藤真希は心底、感心する。


ドゴォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!!!!!!!


とりあえず、高橋愛の脇腹を裏拳で力強く殴りつけておいた。
恐らく彼女は、自分が殴りつけられたことにさえ気付いていないであろう。
何が起こったのかもわかるハズがない…


「5秒だぽ…時が止まっているのに5秒と考えるのはおかしいけど…
とにかく今は5秒なんだ。そして、時は動きだす…」


ドッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!


466 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/10(金) 18:55:09.30 0


「うげぇえええぇぇぇえええぇぇぇッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


何がなんだかわからないまま、高橋愛は脇腹に殴られたかのような激痛を
抱え吹っ飛び、再び地面に倒れ伏せてしまった!!。
それを目の当たりにした道重さゆみは、目の前の悪魔に恐怖することしか出来ない。

な、なんてスピードなの?
さゆみは今、ピタリとも目を逸らしてはいなかったの!!!
後藤さんは一瞬のうちに体制を変えて・・・・・高橋さんを吹っ飛ばしたの!!!
殴ったの?蹴ったの?それすらもわからない…
お尻の穴にツララを突っ込まれた気分なの…こんな人に勝てる気がしない!!!!


後藤真希を止めることが出来る人間は、もはやいないのか。
いや、そんなハズはない…どんなに強大な力を持っていようと、それを操っているのは
一人の人間なのである。
後藤真希は『神』になったわけではないのだから。
それに、何かに気がつき始めている人間が…ここに一人…


「なんだ、今の彼女の攻撃は…高橋さんが攻撃を仕掛けたと思ったら、いきなり
吹っ飛ばされていた…後藤さんの位置も変わっている。超スピード?いや、それなら
高橋さんがいったい何をされたのかくらいはわかるハズ…瞬きをする間もなく、何をしたかも
わからないなんて…これは何かある…見当はつかないが、恐ろしい何かが…」

久住小春である…


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


467 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/10(金) 18:57:33.97 0

「高橋愛、か…まったくきみには驚かされたよ…よく動けたもんだ」

だが、それも無駄な抵抗である。
所詮は一度、後藤真希に敗れ去った者…そこからさらに『先へと進んだ』彼女に
敵うわけがないのだ。
ただ、こいつら(亀井と道重)の寿命が延びただけ…


「ミラクル・ビスケッツ!!No.5!!No.6ッ!!!」
「んぁ?」


突然の響いた幼い声に、後藤真希は振り返った。


『未来ニタスキ渡スーッ!!』
『コハルに迷イはナァァァァァイッ!!』

ビッシィィィィッ!!!!!!!!


ボロボロになった手首の周りが銀色に光り、そこに出現したのは…

「これは…ツタ?新垣里沙の…ッ!!!」

間違いない。
このタンポポの咲いた太くて丈夫なツタは、先ほど『神砂嵐』を破られた時に
新垣里沙の能力で腕に巻かれたツタだ!!!
そのツタが後藤真希自身の左手首に固く結ばれている。


468 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/10(金) 18:59:28.67 0

こんなことをしていったい何を…そう思い、ツタを目で追っていくと…
その端は、久住小春の左手首に結ばれていた。


「昔の決闘にこういったものがあったそうで…えぇとなんていったかな…?
ま、お互いの手をロープで縛り、ナイフのみでやり合うっていう至極単純なもの
なんですがね」


そう、久住小春は新垣里沙の頭部から生えているツタを『分解』し、
後藤真希の腕にくくり付けるようにして『再形成』したのだ。



ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!


469 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/10(金) 19:01:54.68 0


「きみは…演劇部でも最も新参の…」
「久住小春です」
「へぇ…」

聞くところによれば、久住小春は演劇部に入部する際にスタンド使いになったのではなく、
自分と同じで生まれついたスタンド使いらしいが…

「…で?これはその決闘をするためのものなの??」

後藤真希は左手に固く結び付けられたツタを揺らして言った。
そんな彼女に、久住小春は首を振って答える。

「まさか。あなたと私の『力の差』は歴然としている。その能力も謎だ…
だから確かめさせてもらうんですよ。あなたのスタンドの本当の力をね」

「これで?どうやって??もしごとーがその気になれば、力まかせにツタを
ちょん切ることだって出来るし、きみを引き寄せてぶっ飛ばすことだって出来るんだよ?」

「いえ、あなたにはそんなことできませんね」


久住小春は自信を持って答えた。
どこからそんな自信が湧いて来るんだか…後藤真希は『マッキング・ゴールド』で
腕に絡まったツタを握る。
演劇部のミラクルエースとはいえ所詮は中学一年生…何を考えているんだ。
無謀と勇気は違うのに。

ツタを引き寄せてぶっとばそう…
その時、左耳に何か奇妙な違和感を感じた。

470 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/10(金) 19:03:59.60 0


バリッッ!!!!

「いつッ!!!!!!!!!!!!!」


ピアスをしていた左の耳たぶに軽い痛みが走る。
乱暴にピアスを抜かれたような、そんな感じだった。


『オイ、コハルが動クナッテ言ってイルンダゼ?』
『妙ナ動きヲ見セルンジャアネェゾォ』
『コンナ耳クソくせーピアスナンカイラネェーナ』
『返シテアゲルワ』

「な…に?」


声がしたのは自分の顔の側であることに後藤真希はすぐに気付く。
久住小春の七人で一体のスタンド『ミラクル・ビスケッツ』は、すでに配置についていた。

ポトッ

No.4と頭に書かれたビスケッツの手の中からさっきまでしていたハズの
Diorのピアスが『再形成』され、地面に音を立てて落ちる。
抜かれたと思っていたピアスは『分解』されていたのだ。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


471 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/10(金) 19:07:51.06 0

「…と、いうわけです後藤さん。いま私がその気だったのなら、あなたは
死んでいたんですよ。わかりますか?彼らはなんだって『分解』できる…
人間だろうと、なんだろうと…あなたが妙な動きを見せるようであれば、私の
『ミラクル・ビスケッツ』はあなたの頭を砕きにかかるでしょう」

「んぁ…なんだきみは…何がしたいんだ?」

「何度も言わせないで下さいよ…あなたの本当の能力を知るためです。
あなたが高橋さんに使った謎の能力…私はこの目で確かめたい」


そうだ…それを知るためには、実際に『経験』してみる他ない…
かなり危険ではあるが、あの一瞬で高橋さんをふっ飛ばしていた能力の
謎を解くにはこの方法しかないのだ。
腕に巻いた新垣さんのツタの丈夫さを私はよく知っている。
引きちぎることはもちろん、手刀で切ることも一筋縄ではいかないであろう。
彼女がツタから逃れようと何かをした時、その振動はこちらまで伝わってくるッ!!!!

私がその気になれば、彼女を殺そうと思えばいつでも殺せる。

だが、それは本当の解決にはならない。
彼女を心の芯から屈服させねば…こうなってしまった真意を確かめるのは必要なのだ。
ビスケッツによる『脅し』は彼女の心を圧迫しているハズ。
さぁ…早く仕掛けて来い…私にあなたの能力を『経験』させてみろ…!!!!


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


517 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/11(土) 05:10:36.64 0

そんな二人のやり取りを見て、田中れいなは複雑な心境に陥った。

何があったのかは知らないけど後藤さんが四人の先輩を酷い目に
遭わせたのは事実やけん。
ボロボロのみんなを見ていると、れいなも頭のてっぺんから怒りで湯気が
沸き立ちそうになると。それに、大したケガではないとはいえ絵里も殴られた!!!

…それはれいながここにいるみんなを『友達』だと思っているからたい。
みんなに『友情』を感じていたからたい!!

だから憧れていた後藤さんの粗暴っぷりに対して、ドタマきてるっちゃ。
それに、れいな達は後藤さんと深い繋がりがあるわけやなか。


けど…今ここに向かっている美貴姐は?
連絡がつかなかったからここには現れないが、後藤さんのアレである吉澤さんは?


状況は小春ちゃんが圧倒的に有利たい。
後藤さんが何かをする前に、きっとこの子は後藤さんの頭を砕いてしまう。
小春ちゃんの勝利ばい…あの後藤さんを倒すなんて、めちゃくちゃスゴかと思う。
思うンやけど…

それを、美貴姐が見たらどう思うっちゃ?

後藤さんは美貴姐の『友達』たい…『親友』たいッ!!!
親友が倒れている姿を見たら美貴姐は…今のれいな達と同じ気持ちになるハズっちゃ!
やられたからやり返す、やったからやり返される…
それで最後はみんな笑顔になれるんか!?


518 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/11(土) 05:12:11.51 0

「小春ちゃん!!」

「・・・なんですか?今あなたと話している余裕はありません。闘う意思を
なくしてスタンドを出さない『ブザマ』なあなたとは」

「く…ッ」


闘う意思をなくしたわけじゃなか…
いまの小春ちゃんにはそれが通じないンやろか…?
力を持つことが正義だと思ってるところがある小春ちゃんには、
れいなのこの気持ちは言っても理解してもらえないに決まってると…

力だけが正義ななんやろか…
力だけで『友情』が守れるもんなんやろか…ッ!!


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


519 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/11(土) 05:14:51.90 0


睨みあう後藤真希と久住小春を見て、道重さゆみは希望を取り戻し始めた。

や、やったの…小春ちゃん、VERYYYYYYYッ!!ナイスなの!!!!
高橋さんがやられて、こっちに向かってくる時はどうなるかと思っちゃったけど…

この勝負!!さゆみ達の勝ちなの!!!

小春ちゃんのビスケッツなら、風を使わなくなった後藤さんに勝てるッ!!!
あの子のスタンドは、対人に使えば『一撃必殺』なんだもの!!!
やっぱり凄いの…あの子はミラクルなの!!!

「さゆ、もう大丈夫…自分で立てるよ」

絵里も元気になってきたし、状況はいい方向に流れ始めているの!!
この流れの勢いにのって、目の前のクソッたれ金髪コギャルをぶっとばすの!!!


520 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/11(土) 05:17:43.62 0

ところが、小春ちゃんはいつまで立っても後藤さんを攻撃しようとしない。
れいなと何やら話をしている始末なの。
後藤さんは降参したわけじゃあなさそうなの…現に、金色のスタンドを
未だ出しているまんまだし…いつ、行動に出られるかわからない。
高橋さんのように、意味不明な攻撃を受けてしまうかもしれないの!!!
…そういえば小春ちゃんは『能力をこの目で確かめたい』なんて言ってたの。
確かに、さゆみ達は勝ったも同然だけど…後藤さんは殺気起っているの。
舐めてはかかれないの。
それに、ここで後藤さんを倒せなければ、いったい何のために四人の先輩が
傷ついて倒れたのか…わかったもんじゃないの。
卑怯な手も使おう、地獄に落ちることもしよう…最終的に勝てばよかろうなの。
四人の頑張りはッ!!決して無駄にしてはならない!!!


よぅし…!!!


さゆみは無言で『シャボン・イール』を後藤さんの背中に向けたの。
後藤さんが立っている位置が位置なので、さゆみから小春ちゃんは死角になって
見えないけど、大丈夫。あの子が爆風に巻き込まれることはないの。たぶん。

これで・・・・・・再起不能にしてやるの!!!!



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


521 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/11(土) 05:21:09.29 0


「物質だろうと生物だろうと、なんでも『分解』するスタンドかぁ…
しかもこんな可愛らしいのが七人も。小春ちゃん、きみは本当にミラクルなんだね。
このごとーも…ビックリだよ」

「自分でもわかっています」

「けど、もしこのままごとーが能力を使わなかったらどうするの?」

「さぁ…でも、使わないワケにはいかないんじゃあないんですか?使わなければ
あなたの目的は…どんな目的かは知りませんが…潰えますよ」

「んぁ、それもそうだね。小春ちゃん、さっきごとーの頭を砕きにかかるなんて
言ってたけどさ、ごとーだっていつでも小春ちゃんの首をへし折りに行けるんだよ?」

「その時はあなたの頭もなくなってますから、安心して下さい」

「…とんだミラクルエースだぽ」


無言の睨みあいは続く。
それを真剣な表情で見つめる亀井絵里と、困惑した表情で見ている田中れいな。
そして、久住小春と後藤真希のやりとりにじれったさを感じている道重さゆみ。




522 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/11(土) 05:22:11.06 0



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」





523 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/11(土) 05:23:37.10 0


沈黙が続いていた・・・・・・・・・・その時!!!!!!


「必殺!!シャボン玉ぁああぁああああぁぁぁあああああああぁッ!!!!!!!!」

ブッシュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!!!!!


道重さゆみがシャボン玉の爆弾を発射したのだ!!!!

「んぁ…な、なにィーッ!!!!」

その行為には、その場にいた誰もが驚いた。
高圧力で噴出されたシャボン玉は一直線にこちらを振り返った後藤真希へと向かって行く。
しかも威力は高めだ。直撃を受ければ間違いなく再起不能になるだろう。
運が悪ければ…いや、運が良ければ死んでしまうかもしれない。

道重さゆみは考える。
さゆみのやったことは背後からの不意打ちなの。
卑怯者のすることなの。
でもッ!!この人は必要以上に先輩達をぶちのめしたの!!!
この人のしたことは決して許せることではないのッ!!!
だからテメーには一片の憐みも感じねーの!!当然の報いなのッ!!!

「やらなきゃやられるのッ!!その人はさゆみ達も血祭りにあげるつもりッ!!
だから!!!いまここで吹っ飛ばしてやるの!!!!!!!」


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!


524 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/11(土) 05:25:49.27 0


道重さゆみの突然の行動に、久住小春は驚いた。
まさかあの人が攻撃をしかけてしまうとは…この人の目的はまだ聞きだしていないのに、
それでいいのだろうか…?
まぁ、これで一件落着か…元演劇部のエース、あっけないものだ。

そう思ったとき、久住小春は後藤真希のスタンドが一瞬だけ、真金色に光り輝いたのに気がついた。


そして…




「マッキング・G・ザ・ワールド!!!!!!!!!」



ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーン!!!!!!!!!!!!





525 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/11(土) 05:29:42.05 0


「えッ!!!!!!!!!!?」


その出来事は久住小春をさらに驚愕させる。
なんと、目の前にいた後藤真希が忽然といなくなっていたのだ!!!

バカな!!一体どこに消えたんだ!?

ツタの先は、何やら引きちぎったような痕がある。
引きちぎったのであれば、久住小春の腕にその振動は伝わるハズ!!
なのに、突然音もなく振動もなく消えてしまったのだ!!
これは超スピードだとか瞬間移動だとか、そんなチャチなものでは断じてない!!!

『ヤツガ…ヤツがイネェーッ!!!!』
『ソンナバカな!!俺タチは一瞬デモ目ヲ離シタリハシテイナイゾッ!?』
『コ、コハルーッ!!!』

そして、道重さゆみの放った『シャボン玉』は一直線に久住小春へと向かってくる!!!
もはや避けることも間に合わない!!!!!!


「うわあぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!ミラクル・ビスk」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!


爆風が巻き起こった。


526 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/11(土) 05:33:11.32 0

誰もが目を丸くしていた。
道重さゆみが放った高威力のシャボン玉は、久住小春に直撃したのだ。
それは、みんなが見ていた事実だ。

「「こ…小春ちゃあああああああああああああああああああああんッ!!!!!!!!」」

亀井絵里のと田中れいなの叫び声が爆音の余韻として響き渡る。
爆煙が晴れると、数メートル先に吹っ飛ばされた久住小春が無残な姿で倒れていた。

「そ、そんな…さゆみは…後藤さんにシャボン玉を撃ったの…小春ちゃんに
当たるわけがないの…それがどうして!!?後藤さんは??さゆみは後藤さんを
吹っ飛ばすつもりだったの… なのに…

 ど こ 行 っ た ん だ よ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ッ !!!!!!!  」


「久住小春のミラクル・ビスケッツ…恐ろしいスタンドだぽ。もしもあの子が小室学園と
やりあってるとき演劇部にいたのなら…あれほどみんなは傷つかなかったかも知れない」

背後から聞こえる突然の声に、道重さゆみは寒気を覚えた。

「だけど、これであの子は倒したね。きみのシャボン玉が小春ちゃんを倒したんだ。
きみが悪いんだ。道重さゆみちゃん、きみの責任だ。これはきみのせいだ。
きみがやったんだ。きみが大人しくしていれば小春ちゃんはあんな事にならなくて
済んだものを…」


悪魔は不適に笑っていた。


ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!


579 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 06:27:26.64 0


大地に身体を委ねたまま、久住小春は考えていた。


後藤さんの能力を『経験』したいなんて思っていたが…
これで倒れてしまっては、それもいったい何のためだったのかわからないな。
そういえば、以前吉澤さんがこんなことを言っていた。

正義を貫くためには力が必要だと…
力がなければ、何も守り抜くことが出来ないと…!!

その通りだ。力のない正義は、力のある悪に打ち勝つことなど出来やしない。
気持ちだけで、何が守れるというんだ…ッ!!
だが、私は今、こうして倒れてしまった。
私は力のない人間なのか…?


580 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 06:28:51.03 0


時計台の針は4時15分を指している。

うぅむ…いつもなら駅前でギターを奏でている時間だ。
いや、そんなことはどうでもいいか。
問題は道重さんだ。演劇部でもどこか『末っ子』扱いの私だが、
そんな私よりも確実にあの人の方が精神年齢が低いことは誰の目にも明らかだ。
そしてそれは、子供のように純粋な精神を持っているという事!!
私を誤射してしまったことを、重く受け止めていなければいいのだが…
この惨状を、あの人は正面から受け入れることができるのだろうか?

…ん、待てよ。
4時15分だって?

私が家を出たのはいつぐらいだったか?
けんだまと一人奮闘していた時刻はいつだったか?
学校から帰ってきた時刻はいつだったか?


ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ・・・


581 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 06:30:12.86 0


いや、そんなバカな。あり得ない。
きっと時計台が壊れているんだ。そうに違いない。でなければ…
私は倒れたままチラリと白いベビィーG(腕時計)に目をやった。

4時15分。

どういうことだ?
おかしいぞ…計算が合わない。
家に帰ってきた時刻、けんだまをしていた時刻…そしてここに辿り着くまでの時刻。
すべてを計算してもこの時刻はあり得ない。
時間が…経っていなさすぎる。
気のせいか?私があまり時計を気にしていなかったからか…?

計算が合わない時刻…
時間が経っていない…

時間…時間…


時。


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


582 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 06:32:37.80 0


まさか…そんなワケが…
い、いやだとしたら全ての辻褄があう。
パズルのピースがガッシリとはまるように…説明がいく!!



高橋さんの受けた攻撃。

音も振動も立てずに腕に巻いてやったツタから逃れた後藤さん。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ!!!!!!



わ・・・・・・・わかった・・・・・・・・ぞ・・・・・

なんて・・・・・なんてことだ・・・・・・それしか考えられない・・・・・・




583 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 06:34:20.27 0


『ウ…ウゥ・・・ッ』


うつ伏せに倒れている私の制服の胸元の隙間から、悲しい泣き声が聞こえた。
『彼女』はヒョコッと顔を出し、私の顔にすがりついてくる。

『ウ、ウ…ウえェェェ〜ン…小春ちゃーんッ…』

ミラクル・ビスケッツのNo.4だ…
きみはふき飛ばされずに助かってくれたのか…よかった。本当によかった。

『小春ちゃぁーんッ!!立チ上ッテヨォーッ。アタシとNo.6以外みんなグチャグチャになって
動カナクナッチャッタケド、いつものヨウニ元気にナッテヨォー!!』

きみたちは…本当に素晴らしい…私の誇りだ。
私の…心から信頼できる友だ!!

「みんなは…よくやってくれたよ…迫ってくる『シャボン玉』の一部を三人が
『分解』して…きみらが瞬間的に『再形成』し、私に当たる前にシャボン玉に
ぶつけてそこですべて誘爆させ…直撃を防いでくれた…」

爆風とその熱波は避けられなかったけど…直撃を受けるよりも遥かに
ダメージを受けなくてすんだんだ。
あの勢いで迫ってくるシャボン玉を防ぐなんて…その能力もすごいけれど…
一番すごいのは、そんなみんなの『勇気』だ!!


584 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 06:36:03.90 0

「No.4…一つだけ…小春の頼みを聞いてほしいんだ…」

『うええええええーん!もう気持チはワカッテイルヨーッ!!いまアノ
「オンナ」に立ち向カオウとシテルみんなニ、ヤツの「能力」を伝えに
行ケッテことなら小春ちゃん!!No.6がモウすでに向かっていったヨーッ!』

「そうなんだ…No.6が…それならOKだよ…よかった…小春には…立ち上がる気力は
ないから…今は制服のポケットの中にでも隠れて…『その時』まで休んでいて…」

『デモッ!!No.6は無傷デハナインダヨーッ!!片腕モ、モゲチャッテルノ!!
ダカラ私ガ行くッテ言ッタノニ、No.6はカッコツケテ…』

「それは…正しい選択だね…今あの場に近付けば…確実にやられてしまう…覚悟は
していたけど…だからこそ…No.6が動けるのは本当に幸運だった…無傷のきみが
やられちゃったら…小春の命も消えてしまうもんね…それにNo.4…きみは…みんなが
託した切り札を…持って…いるらしい…その時まで…は…」

『コ、コハルちゃんーッ!!!』


私の身体のから出血しているこの痛みは、爆発の衝撃によるものではない…
これは…みんなの痛みだ!!ミラクル・ビスケッツの痛みなんだ!!!

私は…小春は『彼ら』と一つであることに喜びを感じ、そして…

目を閉じた。


サアァァァァァァァァァァァァァァ・・・・・・・・・・・・・・・



585 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 06:39:07.55 0


  ―アビー・アド・フォルミーカム―

「あのですね、先日お貸し致しましたお金の方なのですが、まだ振り込んでなさって
もらってないようなので、お伺いにあがりました…いらっしゃいませんか?」

俺はペコペコとお辞儀をしながら、ドアの向こうで息を潜めて居留守を使って
いるであろうこの家の主に聞こえるように喋り続ける。
ぎぎぎぎ…ッ!!これじゃドアに話かけてるみてーじゃあねぇ〜か??
ったく!!家にいるのはわかってんだ!!!
俺の『ニグラ(黒)』でたった今偵察したんだから間違いねぇ!!!!
あのおっさん、コタツでヒッソリとみかん食ってやがった!!!
こっちは寒い中お勤めしてるってぇのによぉ…あーッ!!!ドア蹴破りてーなッ!!!
ただでさえ、好きじゃねー敬語使ってやってんだ!!
返せねぇ金なら初めッから借りんじゃねーぜ、このド低能がよぉー!!!!
…お、他会社の同業者さんがお見えなすったようだ。
金融会社のハシゴかい…こりゃあ、あのおっさんブラック・リスト入り決定だな。
さて、次の貧乏人のところへ行くか…取立てもラクじゃあねーのよ、ホント。
6時までにあと三件。
絶対間に合わないな、こんなことならここはオミットしときゃあよかった…
30分は粘り続けたからな…もう4時半だぜ…って、ん?

4時15分。

なんだぁ?
たったの15分しか経ってなかったのか?。
じゃあまだ1時間45分は余裕があんのか。
なーんだ…って気ィ抜いてる場合じゃあねーよなぁ。
さっさと次のバカたれ債務者のとこへ向かうか…まったく、やれやれだぜ…



586 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 06:42:08.80 0


  ―ヒート・キャパシティ―

「やぁ、久し振り☆ずいぶん伸びたねぇ〜!!前回はウルフだったけど、
今日はどんな感じにする?ふむ…ふむふむ…おぉッ!?アシメやっちゃうの!!?
沙希ちゃん大きく出たね!!」

なんでだろうなぁ〜、仕事中ならこんな普通に女の子と会話出来るのになぁ〜…
ミキティ、次はいつ髪切りに来るんだろう?
ちゃんと髪セットしてるかな?
好きな人とはどうなったんだろうか?うぅ…って何考えてんだか!!
今は仕事中なんだぞッ!!!
目の前の沙希ちゃんを美しくすることに集中するんだ!!

シャキシャキシャキ…シュッシュッシュッ…


「西川くん、4時半から西川くん指名で予約があるんだけど、大丈夫?間に合う?」

沙希ちゃんの髪を切ってる最中に、受付の女性美容師が小声で伝えてきた。
今、4時13分だから…

「あと7分だから平気さ」

7分もあれば、沙希ちゃんを魅惑のマーメイドに変えられるかな。


587 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 06:44:12.37 0

シャンプーを終えて…スタイリングしてと…


「ハイ完成ッ!!どう?」

「きゃあー!!やっぱり最高ですッ!!ありがとうございますゥ!!!」

「どういたしまして!じゃあお会計の方はあちらでお願いしまーす!!また来てね☆」


さて、次の予約は4時半だったなぁ。
ミキティだったりして…なんてね。さ、10分間だけ休憩するかな。
もう4時15分だもんね・・・・・・・って、えぇッ!?
あの時計、止まってるんじゃないの?
俺の腕時計は…

4時15分。

マジかよ…
おいおい、シャンプー始めたのは4時13分くらいだったんだぞ?
2分で全部終わらせたのか俺は…やけに長く感じたなぁ。



588 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 06:45:24.48 0


  ―プリンセス・コリン―

「やっぱ春はパステルカラーを基調にコーデできるようにしないとね☆
それが当店のファッション・スタイりんこ♪」

ザガガガガガガガガガ…

ミシンの音が心地よいなぁ〜♪
発注かけてた新商品は4時頃届いたんだ。
キャミとカーディガンは予想以上に可愛いし、ハーフパンツも千鳥柄だったから
期待してなかったけど、意外とスタイリッシュで素敵だったし、いいことだらけ☆
それに何より、ゆうこりんの見繕ってるサンプル商品の出来が良すぎッたらもう♪
これは間違いなく売れりんこ!!
コリン星のみんなにも見せてあげたいなぁ〜春になったらまた星に帰ろう!!
東北新幹線で。

さ〜て、ちょっと休憩してお菓子でも食べよっかな。
ずっと働いてたもんね〜新商品届いてから、裕に30分以上は経過して…あ、アレ?

4時15分。

意外と時間経ってなかったんだぁ…よし!!
4時半まで頑張りんこ!!それまでお菓子はガマンガマン!!!



589 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 06:50:28.39 0


  ―すぽると☆摩天楼―

俺は机の引き出しからチョコレートを取り出し、齧った。
そして口の中でゆっくり溶かす。
…これ、いつのチョコだったっけ?まぁいいか。


「ティゥリトゥリトゥリラー ティゥリトゥリトゥリラー♪」

「…下手な鼻歌唄ってないで、原稿を仕上げてもらえませんか?あなたは
もう『プロ』の小説家の仲間なんですから」


編集部の兄ちゃんが俺を急かす。
俺がなんとかって賞を手にしてデビューした作品『千年紀末に降る雪は』が
雑誌掲載されたわけだが、どうも評判がとてつもなく良かったらしい。
それでハードカバー版を発行することになったんだが…
まぁ、それはやはり処女作ってもんだからさ。
加筆や修正が必要になってくるわけだな。


590 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 06:51:59.04 0


「修正の方も残り僅かですし、5時までに仕上げてもらえますか?」

へいへい、まだ挿絵描いてくれる人も決まっちゃあいないのに…何をそんなに急ぐんだか。
時刻は3時半…つまり、あと一時間半で仕上げろと。
…やってやろうじゃないか。俺はこれでも数々の修羅場を潜り抜けてきているのさ。
山で野犬の群れに囲まれたこともあったし、モルディブで蚊の大群に襲われたこともある。
見てろよ編集部の兄ちゃん…俺の生き様、とくと味わえ。
それまでゆっくりと茶でも飲んでいるといい。

カリカリカリカリ…

なんだか、ここの表現足りないよな。
最近の女子学生はけっこうイイ肉付きしてたからな。

カリカリカリカリ…

疲れたな。
一通り終わったところで、俺は残りのチョコレートを口に持っていった。
けっこう加筆しちまったぜ…チラリと時計を見やる。

4時15分。

う…嘘だろ…おい…
たった45分間で…これだけ仕上げたっていうのか?

俺って…すごいんだな!!


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!



591 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 06:54:15.71 0


そして、ぶどうヶ丘公園の時計台がある広場…

「小春ちゃんはきみのことをお姉さんのように慕っていたと聞いていたけど…
まさかそのお姉さんのスタンドで吹っ飛ばされるなんて思ってもみなかっただろうね、
あの子は。たぶん、死んじゃったぽ。運が良くて再起不能か…いや、運が悪ければ…かな?」

後藤真希は淡々と言葉を連ねた。
それは嘲笑うかのようでもあったが、哀れんでいるようにも思える。

「まぁ、後藤の邪魔をする者はみんな消す気でいたし…余計な手間が省けたよ。
ありがとう、道重さゆみちゃん」

「う…うぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!!!!!!!!!!!!!!」

「んぁ…そこで泣いちゃうの?それは悔し涙?悲し涙?なんにしても…
溢れちゃってるよ」

後藤真希の口調は、道重さゆみを精神的に追い詰めているように見えるが…
そんな彼女の心は、『仲間』…いや『心の妹』を撃ってしまった少女に同情もしていた。


きみの気持ちはよくわかるぽ…
ごとーは…その涙の味を知っているッ!!!
ボロボロになった市井ちゃん…それを見て…ごとーは…!!!!!!!!!!!!!!

うぐ…ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

けどね。
それで悲しみに埋もれて動けなくなるようじゃ…きみは全然だね。
そんなんで、よく『スタンド』なんか発現したなぁ…ホント、関心するぽ。


592 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 06:57:39.30 0

「サイレント・エリザベスッ!!!!!!!」

「んぁ…っと」

『B・A・D!!ハズシテシマイマシタ!!!』


唐突に再び攻撃を仕掛けに行ったサイレント・エリザベスであるが、
後藤真希はその攻撃をあっさりかわしてしまう。
それでも尚、亀井絵里は叫んだ。

「お前ッ!!それ以上の戯言は僕が許さないぞッ!!!小春ちゃんが倒れたのは
さゆのせいなんかじゃあない…後藤真希!!お前のせいじゃないかーッ!!!」

「ごとーのせい…?別にどう思おうが勝手だけどさ、許さないからどうするの?
ごとーを倒す気?きみのスタンドで?」

「そうだッ!!!」

「ハッキリ言うよ、無理だね…無理無駄無謀だねェーッ!!!!」


ごとーはすべてのスタンド使いを超越したんだ…
町を守り抜ける力を手にしたんだ!!!
これは神様がごとーに与えた黄金の意思による力!!真金色の精神ビジョン!!!
ごとーはずぅーっと杜王町を守っていくんだ…そのためには!!!
邪魔する者はすべて排除するッ!!!!!

この…ごとーの黄金の意思の表れ『マッキング・ゴールド』で!!!



593 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 07:02:13.41 0


「ヒャークマーミピートゥーパー…!!!」


亀井絵里は勝利の呪文を唱える。

絶対…絶対この人だけは許さないぞ…

四人の友達に酷い事をして…小春ちゃんを罠にハメて…さゆの心をなじった!!!

この人を地獄に叩き落すことが出来るなら!!僕は悪にでもなるッ!!!



「でえぇぇぇぇぇいッ!!!!サイレント・エリザベスッ!!!!!!!!!!!!」

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄…ッ!!!!」



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!



594 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 07:04:46.35 0


後藤真希と亀井絵里がぶつかり合おうとした、まさにその時!!


「待つばい!!!!!!!!!!!!!!」


突如、二人の間に割って入るものがいた!!!
それは…


「れ、れいな…?」


田中れいなは無言で亀井絵里の前に立ちふさがる。
まるで、後藤真希を攻撃するなと言わんばかりに両手を広げて。
その状況が理解できないのは亀井絵里だけではなく、後藤真希もまた同じであった。

んぁ、いったい何のマネ…?

不思議に思った彼女は、一歩身を引いた。


595 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 07:06:00.47 0


「れいな、何してるのさ…?そこをどいてよ」

「ダメたい」

「ダメたいじゃないよ、意味わかんないから。悪いけど僕はメチャクチャ頭に
来てるんだ…れいなには付き合っていられない。だからそこをどくんだ」

「・・・・・・・・・っ」


すると田中れいなは、くるりと振り向き後藤真希を見つめた。
そして、いきなり両膝をついてしまう。
何が起きたんだろうか…その場にいた誰もがそう思った。
田中れいなはさらに地面に両手をつけると、地面に額まで押しつけてこう言った!!


「お願いっちゃ!!もう見逃して欲しいと!!!!!!!!!!」


ドッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!


596 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 07:08:32.26 0


田中れいなの突然の行動と発言に、亀井絵里は仰天していた。


な、何を言ってるんだれいなは!!

見逃して欲しいだって…?

い、いったいどういうつもりなんだよ!!!土下座までしてッ!!!


「愛ちゃんやマコっちゃんはソイツにやられたっていうのに…れいなきみはッ!!!!」


僕は…年下のきみを尊敬していたんだ!!
歌もうまいし、スタンドだって、波紋だって…僕と違って戦闘の天才じゃないか!!!
れいなみたいに強ければ、大事な人を守ることだってできるッ!!!

それなのに…きみは…


悪魔に土下座までして、何の許しを請おうっていうんだ!!!!!!!!!!!!!!




597 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 07:10:16.57 0


そんな亀井絵里の気持ちを余所に、田中れいなは額に地面を押し付けたままだ。


「田中れいなちゃんといったね、きみ。何をいきなり言い出すんだぽ…?」

「もうみんなを傷つけないで欲しいばい…これ以上傷つけられたら…れいな…
頭の火山が噴火してしまうっちゃ!!!」

「んぁ?じゃあ、きみがやってることはなんなの?そんなことして、自分にも
腹立たない?」

「…立つっちゃよ。ハラワタがグツグツ煮えくりかえって反吐が出そうたい。
けど…けどアンタは…ッ!!!!」

「アンタは?」

聞き返された田中れいなは…

顔を上げ!!
後藤真希の目を真っ直ぐに見てッ!!
こう言ったのだッ!!!!


「アンタはッ!!!美貴姐の『友達』たい…『親友』たいッ!!!!!!!
先輩…いや!!友達の『友達』を傷つけることは出来ないっちゃ!!!!!!」


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!


598 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 07:19:15.08 0


「だから…お願いするたい。れいなが…プッツンしてしまう前に…したからって
後藤さんに勝てるなんて思っとらんけど…もうお家に帰って欲しいと…これから
ここに来る美貴姐がこの有様を見たら…いくら後藤さん相手でもキレてしまうっちゃ…
れいな、二人がやり合うとこなんて見たかないと…ッ!!!!」


この状況下で、よくそんなセリフが吐けたもんだな…
後藤真希はそう思った。

きっと彼女は…田中れいなちゃんは『友情』を大切にして生きているに違いない。
それも、他人の『友情』まで!!

そしてミキティ…やっぱりここに来るんだ。

ホント…いい後輩を持ったね。

純粋に、羨ましいぽ…



599 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 07:21:50.55 0



だけどねぇ。



「友達の友達を傷つけることは出来ないかぁ…確かに、きみはいいことを言ったぽ。でもさ、
『友達』さえ傷つかなければそれでいいの?」

「え…?」

「町を傷つけることはいいの?寺田の元にいる限りッ!!きみらは、いずれ町を
傷つけていく存在なのに…!!!」


後藤真希の『マッキング・ゴールド』がグッと拳を握りしめる。
…田中れいなの想いは、受け入れられなかったのだ。
それは、醸し出すオーラで十二分に伝わる。

そして、後藤真希はこう言った。


「だから悪いけど…きみたち演劇部には…一人残らず消えてもらうぽ…」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


600 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 07:23:43.02 0


友達…

れいながそんなことを考えていたなんて…
なんだか…マグマのように噴火していた僕の気持ちが…段々落ち着いてきたよ。

不思議な気分だ…冷静になれた気がする。

マコッちゃん達に酷い目に合わせたことや、さゆにひどい事を言っていたのは
やっぱり許せないけど…でも!!きっとコンちゃんならこう言うと思うんだ!!!


『怒り』は正常な判断力を奪う。


そうさ…今はこの人だけを倒すことだけを考えよう。
倒れてしまった四人や、小春ちゃんの奮闘を無駄にしないためにも!!!
僕と!!さゆとッ!!!れいなが!!!!
後藤さんの横暴を止めるんだッ!!!!!!!!


そうだよ…三人の中で最年長の僕がしっかりしなくてどうするんだ!!!!


ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…


601 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/12(日) 07:29:11.92 0

その時である。
どこからか…か細く弱々しい声が聞こえてきたのだ。
それは、後藤真希の耳にも入ってきた。

『ハァ…ハァ…!!!!』

それは、久住小春の『ミラクル・ビスケッツ』そのNo.6であった!!!!
その姿は目をやれないほど惨く、右腕から半分がすっとんでいた。
これは、かなりのダメージを受けている証拠だ。
だが、それは同時に久住小春は無事だという証明にもなる!!!

「び、ビスケッツじゃないか…どうしてこっちにきたんだ…?」

亀井絵里が訊くと、No.6は最後の雄叫びとでも言うかのように叫んだ!!!


『ソノ「オンナ」の能力がワカッタンダッ!!!!!小春が突キ止メタッ!!!
ソイツノ…ソイツの能力ハッ!!!時間ヲとm』



ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーン!!!!!!!!!!


そして、また時は止まる…
後藤真希のスタンドの謎に近付いた久住小春の叫びは届かないのだろうか…?



TO BE CONTINUED・・・