556 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/27(金) 20:53:52.24 0

銀色の永遠  〜今にきっと…In My LIFE〜


『いやぁ、あっしもよくわからんのよ。ただな、あのおっさんが言うには
とにかく緊急事態なんだとさ』

「それで…私たち四人に声がかかったってわけですか」

『うん。で、今追ってるンだけどなァ、あの人…あっしがついてきてる事に
絶対気付いてるがし、こりゃあぶどうヶ丘公園の方角だネ。ふふふ…』

「ふふふって…愛ちゃん。あなた何を考えているの?」

『別にィ…なんも考えてないやよ。うひひ』

「まさか…私たちが辿り着く前に何かしかけようって考えているんじゃあないですか?」

『だったらどうするんだァ?寺田のおっさんは失敗は許さないって言ってたんやよ。
逃がすわけにはいかないとも言ってたなァ…もし、このまま逃げられたらあっしらが
こっぴどく怒られるやざ。足止めってやつやよ、足止め…』


557 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/27(金) 20:55:31.44 0

「…ダメです愛ちゃん!!四人揃うまで手を出すのは思いとどまって!!!
緊急の指令とはいえ彼女を攻撃する理由もよくわからないし…それになにより、
あなたのスタンドは屋内で最も力を発揮するスタンド!!!対するあの人は風を
自由自在に操る能力を持っています…」

『で?』

「圧倒的に不利だと言っているんですよ。相性が悪すぎる…例えるなら、広い空を
羽ばたき回る鳥に対して人間が網も持たずに捕まえにいくようなものッ!!!」

『それなら飛ばせなければいい話じゃんカ。あの人に風を使わせなければいい話やね…』

「愛ちゃん!!!」

『それにホラ、向こうはやる気満々みたいだがなァー?…電話代もったいないから
切るやよ。場所はぶどうヶ丘公園の時計台のある広場ダカラ。待ってるヨー』


ピッ!! ツー…ツー…



558 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/27(金) 20:57:33.34 0

携帯電話の向こうから、虚しく通話終了の音が鳴る。
好奇心旺盛で勝利に飢える高橋愛を、紺野あさ美は止めることが出来なかった。

「どうだったよ?まぁ今の会話でだいたい話は読めたけどよぉ」
「言わずもがな…ってところですか」

それを聞いた小川麻琴は、苦笑いを浮かべて頭を掻いた。

「oioi…さすが愛ちゃんだぜ。怖いもの知らずもここに極まれりだね。
コンコン、今回の話どう思うよ?」
「どうって?」
「後藤真希だよォ。愛ちゃんの話からすると、これは演劇部襲撃ってやつだぜ〜oi!!
寺田も必死みたいじゃネーか…こりゃあ覚悟を決めた方がいいかもなぁ?」
「…そうかもね。私たち四人で後藤さんを止めるっていうのはそういう意味なのかな。
だとすれば、悠長にはしていられない。寺田先生が必死になるということは…」
「向こうも命がけってことだよなぁ…ガキさんはどうしてんだ?」
「今ぶどうヶ丘公園に向かってるみたいだけど…愛ちゃんが後藤さんに手を出すまでに
間に合うとは思えない。それに、演劇部襲撃ときている…マコはあの子が冷静さを
保っていられると思う?」
「…思わネェ」

すでに駅前まで来てしまっていた小川麻琴と紺野あさ美の二人は、駆け足で
ぶどうヶ丘公園へと向かった。
高橋愛が勝つことへの執念に取り付かれ無茶をする前に、一刻も早くその場所へ
辿り着けねばならない。

「やれやれ…演劇部のエースってのは大変だなぁ…まったく、でしゃばりなんだから。
これがホントの『スタンド・プレー』ってか?oioi…」

そう呟いた小川麻琴だったが、彼女には一つ思案していることがあった。



559 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/27(金) 20:59:37.26 0

ゴシップ・セクシーGUYの能力の一つである<横浜蜃気楼>の効力は、ぶどうヶ丘高校の
門を抜けたあたりで効力が切れた。
風のプロテクターを纏う時間はやはりそう長くは持たないか…

「・・・・・やれやれ」

後藤真希は背後から迫り来る気迫を背中で感じでいた。
いつからだろう、門を出た辺りからだろうか。
寺田の刺客であることは間違いない。その刺客とは…

「高橋愛ちゃん…か。まったく、ごとーがせっかく『忠告』をしてあげたというのに…
無視するとは…」

風の流れは不自然なぐらいに穏やかだ。
嵐の前の静けさとは、こういうものを言うんだろう。
ぶどうヶ丘公園の時計台がある広場まで来て、後藤真希は足を止めた。

町の未来を守る。

そう決心した彼女の精神テンションは今!!
演劇部に所属していた時代に戻っているッ!!!
そう…むかし小室学園の連中を叩き潰したあの当時にだッ!!!
冷酷!残忍!!
その後藤真希が演劇部に立ち向かう!!!!
すべては黄金の意思から生まれた正義の心のために…


「部活はやめた身だけど…今一度舞台にあがるぽ!!惨劇という名の舞台にねぇーッ!!!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


651 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/29(日) 20:37:40.51 0

「ごとーを逃がすことは出来ない…その点に関して寺田は必死のようだね。
演劇部の現エースのきみが来たことを考えると…ね」

足をとめた後藤真希は、静かに高橋愛に向き直り言った。

「きみがヤツに指名されたのは単に『たまたま部室にいたから』じゃあない…
マジにごとーをヤるため・・・と、ごとーは読んでいるのだけれど」
「さぁ?あっしはなんでこんなことになったのかはちゃんと聞かされとらんし、
知る気もないやよ。ただ、ハッキリしていることは…」

高橋愛の側に紅い光が灯る。
それは彼女のオーラ、精神のビジョン!!
その名は…ライク・ア・ルノアール。

「あっしはさらに、さらに高みに上りたい…上り詰めたいんよ。よくみんなには
『闘争心むき出し』だの『闘いに飢えている』なんて言われたりするけどなァ…
あっしはただ『極めたい』だけやよ」
「極める…?」
「演劇部に入る前は、ここがこんな生傷絶えねぇ部活だとは思わなかった…
歌って踊って演じる…ただそれだけが目的だったのサ。それが、あっしの夢に
最も近い場所に立てる行為だったカラ」

そうさ、そもそもあっしは宝塚の舞台に立ってスポットライトを浴びるスターに
憧れていただけ…


652 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/29(日) 20:38:41.57 0

「きみぃ。それが今のこの状況となんの関係があるの?高橋愛ちゃん」

「『演劇部』はあっしが選んだ部活なんよ。命を賭けてやってる部活なんよ。
スタンドとかそんなもんは関係ネェ。この部に入った以上は、それがどんな
活動内容でも『極めて』みせるんだ。そのためには絶対に通過しなきゃならん…
いや、通過したい関門がある…それはッ!!!」


高橋愛は後藤真希を指差す。
彼女の紅く灯る精神のビジョン『ライク・ア・ルノアール』と共に!!!


「すべてにおいて、あんたを…元エース・後藤真希を超えることやよ!!!!」

現エースの高橋愛が、元エースの後藤真希に宣戦布告をした瞬間であった!!


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!



654 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/29(日) 20:39:40.77 0

「ごとーはさっき言ったはずだよねぇ?きみは部内でも最も死に急ぎすぎている…
能力の使い道を考えなおした方がいいよってさぁ。なのにきみはなーんにも!!
わかってないみたいだ。きみは生き方から変えなきゃダメだったんだよ?もう遅いけどね」

「あっしの生き方はあっしが決めるんやよ。あっしはあっしだけのものなのだから!!」

「ふん…バカは死ななきゃ治らない、か…」


後藤真希の背後から風と共に紫色の悪魔が出現する。
スタンド『ゴシップ・セクシーGUY』を持つ後藤真希もまた、高橋愛と同じように
勝利に飢えている人間であった!!!
彼女は町の未来を守るため!!!邪魔するものは決して許さないのだ!!!


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…



655 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/29(日) 20:41:52.32 0

「さぁ、どうしたの?きなよ、愛ちゃん」
「・・・・・・・」

ドン!シュバッ!!

高橋愛は何も言わず低い姿勢でパンチを繰り出す。
狙いは後藤真希の下腹部あたりだ。
もちろん、これで仕留めるつもりはおろか、当てるつもりもない。
いわば、牽制である。
彼女のスタンドの拳は、後藤真希のスタンドの槍の柄によってサバかれていた。
どちらも近距離型、スピードもほぼ互角…いや、多少後藤真希の方が勝っているか?

ドンドン!!シュバシュバッ!!!

再び低姿勢で今度は右、左と交互に繰り出してみるものの、またも槍の柄で拳は
後藤真希という目標をそれて宙を切った。

「片手に持った槍だけであっしの拳をさばききるとは…スピード以前に、精密動作も
なかなかのもんやねェ…あんたのスタンドは」

「直線に進んでくるものってのはね、ちょっと力を加えて軌道を変えてやれば
いくら真っ直ぐでも全然違う方向へいってしまうんだぽ…真っ直ぐに進んだつもりでも、
1ミリでも角度がずれてしまえば到着地点がガラリと変わってしまうようにね」

「…なるほど、あんたの言う事は正しい。ただなァ、それはスタート地点が
わかっているから言えることであるんよ」

「んぁ?」

高橋愛がニヤリと笑ってみせた、その時である。


656 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/29(日) 20:43:17.93 0

ドゴォォォッ!!!!

鈍い音と共に、脇腹のあたりを打撃が後藤真希を襲う。
その衝撃は、彼女の視界を一瞬揺さぶった。
右側面からの攻撃?
バカな、愛ちゃんは正面に立っているのに…

バキィッ!!!
「ぎゃはッ!!!!!!!」

今度はさっきとは逆で左側面から打撃を食らう。
一体、なにが起こっている!?
その答えは、足元の地面が教えてくれた。

「せ、迫り出し…!!」

実に奇妙な光景だった。
左右の地面が、後藤真希を中心に挟むようにして斜めに飛び出していたのである!!!

「地面を斜めに角度をつけて凹ませておいた…アンタ、あっしの拳をさばいて
いい気になってたみたいやけどよぉ、あっしが仕掛けを作っといたのには何にも
気付かなかったなァ?」

なるほど…ごとーが風を操る能力を持っているように、この子にも『能力』がある。
最初に低姿勢で殴りかかってきたのは地面を殴るためだったのか。
しかしいつの間に地面を殴っていたのやら…ごとーとしたことが気付かなかった。
わかってはいたことだけど、舐めてかかれる相手ではないな…
そして、油断も出来ないッ!!!


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


657 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/29(日) 20:44:32.72 0

「迫りだす能力かぁ…なかなかの威力だぽ。けど!!今の攻撃を見る限り、
ここはきみのホームグラウンドではないと見た!!!!」

後藤真希が思うところによれば、高橋愛のスタンドは殴ったものを凹ませて
時間をおいた後で凸らせる能力である。
つまり、殴るものがあるからこそ力を発揮するのであり、今のようにこの地面ぐらいしか
殴る場所がない場合、彼女のスタンド攻撃は限定されるハズ!!!

「そうとわかれば…ッ!!!!」

後藤真希のスタンドが羽を広げた。
風を起こして攻撃をするのだ!!

「ゴシップ・ハリケ…」
「オラッハァ!!!!!」

グッボィイイイイイイン!!!!!!

風を吹かせる後藤真希に対し、高橋愛は地面を殴って大きく凸らせる。
その突き出した大地は、後藤真希と高橋愛の間に大きく立ちふさがった!!!


658 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/29(日) 20:46:14.93 0

「んぁッ!壁!?」

猛烈な突風を生み出すゴシップ・ハリケーン(風の噂)は迫りだした大地によって
ガードされ、空気中に散っていく。
ごとーの風をガードするとは…面白い!!!
だが、あまり余裕もないことに後藤真希は気付いた。


ドゴッドゴッドゴッ…グッボイン!!グッボイン!!!グッボイン!!!!


風を繰り出している間に、高橋愛は地面を叩きまくっていたのだ。
もちろんそれは大きく迫りだす。
しかし、なぜこんなガムシャラに地面を叩いているのか…その答えはすぐ出た。

「こ、これは…!!!!」

そう、高橋愛は決して何も考えずに地面を殴っていたわけではなかったのだ。
すべては計算された上での行動だったのだ!!!
後藤真希の背の倍以上にもなる高さの迫り出しが、彼女を中心に囲うようにして
そびえ立っていた…


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!


659 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/29(日) 20:47:41.77 0

「閉じ込めた?このごとーを…ん?」

その時である。
彼女の周りで突き出ていたいくつもの迫り出しの一つが、能力を解除されたのか
元の地面に戻っていき、出口ができたのだ。
とにかく、この『円』の中にいるのは何かまずい!!!
脱出しなければ…
だが、後藤真希には危険予測が足りなかった。


「おちょきんしねまあああああああああああああああああああああッ!!!!!」

「ぬるぽああああああああああああああああああッ!!!!!!!」

ガッ!!ガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッ!!!!!


出口から突然侵入してきた高橋愛が、物凄い勢いでラッシュをしかけてきたのである!!
咄嗟にスタンドの槍でそれをさばききるが…
この子、能力的にはこの状況、ごとーよりも不利なハズ!!!
それでいてここまでやってみせるとは…
攻撃が終わると、突き出していた他の迫り出しも、みるみるうちにもとの地面へと
戻っていく。

「あんたに風は使わせんよー…みんなが来る前に、あっしがカタをつけるがし」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


761 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/01(水) 05:17:28.28 0

「みんな…?それはきみ以外にもごとーを仕留めに来るってことなのかなぁ?」

「アァそうさ…けど!!心配せんでいいヨー…アンタは!!今ここでッ!!!
あっしに倒されるんダカラ!!!」


鳥を素手のみで捕まえるのなら飛ぶ前に捕まてしまえばいい。
それと同じで、後藤真希を仕留めるなら風を使わせなければいいだけの話!!!
高橋愛は考える。
彼女一人を四人で協力して倒すんじゃあダメなんだ。
自分ひとりの力で!!後藤真希を超えるからこそ…真の意味があるッ!!!!


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!!!!!!」

ドゴッドゴッドゴッ!!!グッボイングッボイングッボイン!!!!


高橋愛は地面を転がり、さらには宙返りをしながら機敏な動きで後藤真希を翻弄する。
もちろん、それをしながら彼女の『ライク・ア・ルノアール』は大地を叩き続け、
後藤真希を中心に凸らせた大地の囲みを作った!!!

屋外では不利だとコンコンは言っていたが…それなら!!!
迫り出しで部屋を作って敵を閉じ込めてしまえばいいだけやざッ!!!


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!



762 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/01(水) 05:20:23.19 0

迫り出しで作られた円形の部屋か…
後藤真希は静かに『ゴシップ・セクシーGUY』に風の流れを読ませる。

「う〜ん…いい感じだぽ」

またこの迫り出た大地の一つが元に戻って、高橋愛は急襲を狙っているのだろうか。
だとしたら、どこからくるのかわからない…次の攻撃に反応できるのかも微妙だ。
だが、しかし…

「二度も同じ手を使うなんてね。タネの暴かれたマジックは、もはや何の意味も
なさないんだぽ…それをごとーが教えてあげるよ!!!」

後藤真希の『ゴシップ・セクシーGUY』が槍をかまえた。
すると、どうだろう!?
槍の刃先に吸い込まれるように、膨大な量の風が取り込まれていくではないか!!


「さぁて、と…これはミスると槍がぶっ壊れちゃうんだけど…仕方ない!!!」
ギュルル…ギュルル…バシッ!!バシバシバシッ!!!!!


槍が風のうねりによって、音をたて軋む。
そして、それは完成した!!

「風の流法・奥義<渾楔颯>!!高橋愛…あんたになんて負けちゃいられないッ!!」


ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!



763 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/01(水) 05:23:59.94 0

槍が取り込んだ風はそのまま超圧縮され、刃の極限に狭い隙間から超高圧で
吹き出す…いわば『烈風のメス』!!!
しかし、その高速圧縮に伴う摩擦や熱は、スタンドの槍に大きな負担をかけてしまう。
それで槍が壊れてしまえば、『風を操り槍で切りつける能力』の後藤真希のスタンドに
とっては、いくら『神砂嵐』があるとはいえ接近戦では不利な状況に陥ってしまうだろう。
『神砂嵐』は、連続して出すことができないのだ。

槍の限界が来る前に…ヤツをぶった斬るッ!!!!


「どこから来ようが…無駄無駄無駄ァ!!!」


バッゴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!!


一閃。
バトンを回すようにして槍をクルリと右手から左手へと彼女自身も回転しながら渡す。
その姿は、まるで踊っているようであった。
迫り出していた大地は、一瞬のうちにすべて鋭利な風の刃によって空気ごと
切断されたのだ!!!


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!



764 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/01(水) 05:26:57.68 0

「…ふぅ」


後藤真希は『風の流法<コンケツサツ>』を解除した。
辺りの風は、元の静けさを取り戻していく…
風の刃は迫り出しを貫通、外にいた高橋愛も恐らくその崩れた大地の下で倒れているだろう。
身体を真っ二つに裂かれて。


「まず一人か…演劇部のエース『高橋愛』はこれでぶっ潰した!!!」


ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!



765 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/01(水) 05:34:05.52 0

「はぁイ。詰んだ」


その時である。
後藤真希のちょうど上空から声が聞こえたのだ。
バカな!!ありえない…ッ!!!
あの子は…あの子はあの地面の下で身体を両断されて死んでいるハズなのに!!
なんと、しとめたと思っていた高橋愛が『ライク・ア・ルノアール』を発現させ、
後藤真希に上空から飛び掛ってきていたのである!!!

「な、何ィーッ!!?」

同じ攻撃は二度通用しない…それを承知していたのは後藤真希だけではなかったのだ!!
高橋愛もまた、後藤真希が二度も同じ手にかかるとは思っていなかった!!
それにヤツは元エースの後藤真希…ならば尚更の事ッ!!!
そう思った高橋愛は、最初とは違う方法で攻撃に移ったのである。
それは…

「地面が反発して凸る勢いを使って高くジャンプしたんやよーッ!!
地面がぶったぎられた時はビビッたケド…近距離スタンドのアンタが
空を『跳んだ』あっしをしとめられるかネ!?後藤真希ィッ!!!!!!」

本当にツイていた…本来は迫り出しの囲いを飛び越えるためにジャンプしたのだが、
風の刃でそれらをすべて斬りおとすなんて…もし、こうせずに地上にいたら、あっしは…!!
高橋愛は『ライク・ア・ルノアール』と共に垂直落下をしながら眼下の後藤真希に
ラッシュを放とうと拳を構える!!
だが、そのとき高橋愛は奇妙なことに気がついた。
なんで…なんでこの女、防御の態勢も迎撃の態勢も…回避の態勢すらも取ろうとしないん?


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


839 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/02(木) 22:59:33.33 0

なぜこの女は動かないんだろう…まさか、なにか策があるとでも?
いや、でも考えてもみるんやよ、この状況を…

「今はッ!!あっしが上!!コイツが下だァーッ!!!!」


カチリ


何か、スイッチの入ったような音が高橋愛の耳に入った。
その時にはもう、すべてが遅かった。


ビュルオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!
「なッ!!!!?」


すぐ下にいる後藤真希を目の前にして、突如柔らかく、それでいて力強い
見えない何かに再び上空へと吹っ飛ばされたのだ!!
これは…風だ!!!
高橋愛の身体は、吹き上げる突風に呑まれ、きりもみしながら空へ押し上げられる。
その高度は、先ほど高橋愛がスタンドの能力を使ってジャンプした時よりも遥かに高い!

「うおぁああッ!!!これはーッ!!!!!」

「ゴシップ・シード(噂の種)!!風の爆弾をごとーの頭上に設置しておいたんだぽ。
高橋愛ちゃん、きみはよく機転の利く子だ…さすがは現エースってとこだね。
けど、その高さからの落下の衝撃に耐えられるかな?」


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!


840 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/02(木) 23:02:05.36 0

風に押し上げられた高橋愛の身体は、今度は引力にひかれて地面に向かって行く。
この高さだ、まともに地面に叩きつけられたらひとたまりもない。
もしかしたら、死んでしまうかも…
広くて硬い大地はグングン迫ってくる。

「考えてるヒマはねェ…ぬああッ!!!ライク・ア・ルノアールッ!!!!」


ドゴアアア!!!ボキッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・グッボイ〜ン!!!!!!!


「ぎゃああああああッ!!!!!!!」

あたりに高橋愛の絶叫が木霊した。
地面に激突する瞬間、彼女はスタンドの右腕で地面を殴ったのだ。
能力で凹まされた大地は、彼女を受け止めるように窪み、まるでトランポリンの
上を跳ねたかのように、凸りだした地面に吐き出されたのだ!!!だが…

「う、う…腕が…あっしの…ッ!!!!」

いくら身体を受け止められたとはいえ、あの高さだ。
高橋愛の右の肩は、極度の衝撃によって砕けてしまった!!
凹みの中に落ちたとき、右肩から落ちてしまったのである。
致命傷は免れたが…これは幸か不幸か…
近距離型のスタンドであり、主に『殴る』タイプの能力である『ライク・ア・ルノアール』
にとって、本体の腕の故障は致命的だ。
もはや高橋愛は、後藤真希に対抗できる身体ではなくなってしまった。
こんな…こんなにもあっさりと形勢を逆転させられるなんて…ッ!!!


841 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/02(木) 23:04:55.31 0

「あの高さから落ちて骨折で済むなんて…きみは間違いなく演劇部のエースだね。
けど残念だよ…右腕を失った人間は、自分の命を守ることが出来なくなる。なぜなら…」

使えなくなった右腕を抱え、尚も立ち上がろうと左腕をつく高橋愛を、後藤真希は
自らの足で蹴り飛ばした!!

「『左』にある心臓を守れるのは!!!『右』の腕だからだぁぁぁぁぁッ!!!!!」

ドシャアアアッ!!!
「うげッ!!」


「ごとーを超えるって!?笑わせんじゃねーよ猿!!!自分のことしか考えてない
クソガキのくせに!!この後藤真希の邪魔しようとしてんじゃあねえぇぇぇぇッ!!!」


ゴシャッ!!バキッ!!グショオ!!メシャッ!!ドガッ!!メタァッ!!!!


容赦ない浴びせ蹴りが高橋愛を襲った。
これが…これが元エースの力なのか!!!
この鬼気迫る猛攻、もはや一端の女子高生とは思えない。

あっしは…ここで死んでしまうん?
エネスコさんに守ってもらったこの命…ここで失うのかァ・・・・・・・ごめんやよ。

転がるサンドバックとなった高橋愛の意識はどんどん薄れていく…


842 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/02(木) 23:07:35.68 0

「DRYッ!!!!!!」
メメタァッ!!!ゴキン


「あぎゃあああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!」


断末魔にも似た叫びが風をビリビリと振動させる。
後藤真希は高橋愛の折れた右肩を踏みにじると、スタンドの槍を高橋愛の
身体に向けて掲げた。
その刃先が指している場所は…左胸!!!

「みんながここに来るって言ってたね。きみの命はここで終わるわけだけど…
これからきみの亡骸を見る他の部員は何思うんだろう?びっくりするかな?
やっぱブチ切れるかな?ごとーにびびって逃げたら、それはそれで面白いよねぇ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

制服もボロボロになった高橋愛は、口を開くことが出来なかった。
折れた右肩を強く踏みつけられたショックで骨折はさらに悪化し、その耐え難い
痛みの中で意識を失ってしまったのだ。


「死人に口なし…意味は違うけど、まさに今のきみの姿だね!!演劇部のエース、
高橋愛…これできみは死んだ!!!さよなら!!!!」

ブシュッ!!!!!!!!!!


ライク・ア・ルノアールによく似た色の、紅い血がふき出た。

844 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/02(木) 23:09:52.01 0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ポタッ・・・ポタッ・・・


845 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/02(木) 23:11:47.38 0

「んぁ…ぐッ…!!これは…?」


右腕の激痛に、後藤真希は苦悶の表情を見せた。
気付けば、ゴシップ・セクシーGUYが装備していた槍は、1メートル先に転がっていた。
さっきまで槍を握っていたスタンドの右腕は痺れ、さらに後藤真希自身の右腕から
血がポタポタと滴り落ちる。
どうやらスタンドの右腕から生えている奇妙な葉の形をした植物が直接的な原因のようだ。
スタンドに与えられたダメージは、本体に戻ってくるからである。
では、いったいこの腕から生えている植物はなんなのだろうか?
振り返ったその先に、その答えは存在した。

「間に合った…大変なことになる前でよかったのだ。いや…これは真の意味で
間に合ったと言えるのか?微妙なとこだが…それ以上愛ちゃんをいたぶる事は
このわたしが許さないのだ…ッ!!!」

5メートル以上向こうの方に、木のような精神ビジョンのスタンドを発現させている
少女が立っている。
その木人のスタンドは、穴の開いた指先を後藤真希に向けていた。

誰よりも演劇部を愛してやまない新垣里沙。
彼女は、高橋愛の窮地に間に合ったのだ!!!


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!


64 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/03(金) 03:31:17.57 0

「きみは…新垣…里沙…?」

後藤真希は彼女の名前を口にした。
なぜ、後藤真希がまだ名乗ってもいない新垣里沙のことを知っていたのか。
それは彼女が演劇部をやめて、さらにしばらく経った後まで遡る。


「真希タン、自分のやめた部活の舞台なんか見に来て気まずくないの?」
「んぁ…別にぃ。みんな、成長してんのかなぁと思ってさ」
「そーいやあよぉ〜、また新しく部員入ったんだってなぁ〜」
「あれ?そーいや美貴タンこの間、入部させろーって演劇部の部室に
乗り込んだんだよね?なんで入れてもらえなかったの?」
「知らねぇ。あいつら見る目ねーんだよ」
「女の子らしくないからじゃないの?あの舞台に立つ子たちって、みんな
美貴タンみたく野蛮そうではないしさぁw」
「ハァ?あたしゃこれでも演技派だしw」
「あ、緞帳があがっていくぽ。始まるよぉ」

「へぇ、あの二人が新メンかよ。高橋愛に新垣里沙…パッとしねぇなぁ。
おいおい、パンフの写真見る限りじゃあ、ぜって〜美貴のほうがイケてるよな?なぁ??」
「まぁまだ入りたてだし、それが普通じゃない?ねぇ真希タン…真希タン?」
「新垣里沙…」
「なんだよ真希ちゃんよぉ、あのパッとしない一人がどうかしたのか?」
「あの子…何か…何かある…何かとてつもないものを持っている気がする…
オーラでわかる…寺田のヤツ…悔しいけど見る目がある…ッ」
「「え?」」
「んぁ…い、いや、なんでもないぽ…」
「変なヤツ。あーあ、なんとかしてあの舞台立ちたいなぁ…」
「美貴タン、そればっかり」
「だってよぉ〜…」
「あはは…あの部にはマジで入んない方がいいよ、もう普通には戻れなくなるから」


865 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/03(金) 03:32:34.90 0

そうだ…間違いない。

あの日に見た、新しい演劇部員の中でも彼女の中に強い印象を残したのが
目の前にいる新垣里沙だったのだ。
初時、大半の生徒が『どうしてあんな子が演劇部に入れたんだ?』なんて
よく口にしていたが…

後藤真希には一目でわかった。

必死に初の舞台をこなそうとしている彼女からは、演劇部に対しての
『愛』や『誇り』が身体から吹き出していたからである。
演劇部に所属していたからこそわかる感覚ではあるが、自分にも
あんな時代があった…そう純粋に思わせたのは紛れもない事実。

あの子は…時間はかかるかもしれないが確実に大きく成長するッ!!!

そう、後藤真希に思わせたのだ!!!


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…



866 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/03(金) 03:34:46.95 0

「あなたがわたしの名前を知っているだなんて…光栄なのだ」

新垣里沙は後藤真希を見据えて言った。
もはや、あの初めて舞台に立っていた頃の初々しい姿はない。
そこにいるのは、風格のある一人の演劇部員だった!!

「いやぁ、きみはごとーが見込んだ通りだ。成長したんだね。さっきこの子が
『みんなが来る』って言っていた…その一人がきみとはね」

後藤真希は足元の高橋愛を見下ろしながら、スタンドの右腕から生えている
スタンド植物を毟った。

「ごとーの見る目が正しければ…ここに集まるのは演劇部の中でも最もエース格の
連中と見たぽ…まぁ、ごとーをヤるつもりならそれくらいするよねぇ、あのおっさんは」


ブシュッ!ブシュッ!!


スタンドの腕から生える植物を引っこ抜くと、後藤真希自身の腕から血が吹き出す。
植物を操るスタンドか…その根は深く、太く強い!!
後藤真希は彼女から目を逸らさずに足元の槍を拾った。


867 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/03(金) 03:36:03.77 0

「あなたは…ぶどうヶ丘高校中学に『ファンクラブ』なるものが存在することを
知っているだろうか?」

「んぁ…突然なにを言い出すんだぽ?ファンクラブって、演劇部の?」

「そうなのだ。ほとんどは男子で構成されているのだが、昔は女子も
いっぱいいたもんなのだ」

「…どうしていきなりそんな話をするの?」


「うむ…ふふ、実はその昔、わたしは『ファンクラブ』の一員だったんですよ、後藤さん」


新垣里沙は敬意を表して言った。
そう、演劇部に入部するよりずっと前、初等部だった頃から新垣里沙は
演劇部に憧れを抱いていたのだ。
そのファン暦はかなり長く、ほとんど『演劇部』が出来た当初からと言ってよい。
真ん中でとても目立っていた現在高等部三年の安倍なつみに、ピアノを奏でていた
謎の女性・飯田圭織、そして目の前に立つ後藤真希…みんな、みんな知っている。

『演劇部』とは!!新垣里沙の青春の一ページそのものだったのだ!!!


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!


868 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/03(金) 03:38:33.87 0

「後藤さん、わたしはあなたにとても憧れていた…ファンだった!!
あなたのようになりたいとも思っていたのだ…」

新垣里沙の話を聞き、先ほど部室で高橋愛の言っていたことが頭を過ぎる。


『あんたは有名人やよー…この演劇部では特にねぇ。あんたのようになりたくて、
この部に入部した子は多いンじゃあないかァ?』


なるほど…愛ちゃんが言っていたことは正しいな。
この子がその一人だってわけか…
だが次の瞬間、新垣里沙は先ほどの表層をガラリと変えて言った!!

「しかし!!同時にわたしは演劇部を本気で愛している。誇りに思っているッ!!!
あなたを尊敬していたし、わたしにとって届くことのない目標であったが…
演劇部を『冒涜』したことは断じて許せない!!あなたはわたしの『誇り』を汚したのだッ!!」

「…なら、どうしたい?」

後藤の問いかけに、新垣里沙はスタンド『ラブ・シード(愛の種)』を前面に
構えて言った。


「あなたを…力ずくで懺悔させてやるのだ…ニィ」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


869 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/03(金) 03:42:15.13 0

「なるほど、面白いね…それなら!!この後藤真希も全力できみの相手をしてあげる!!
いくよ!!ゴシップ・セクシーGUYッ!!!!」
「おぉぉぉぉッ!!!ラブッ!!シイィィィィィィドッ!!!!!!!!!」

新垣里沙のスタンドが後藤真希に指先を向ける。
その穴の開いた指先の奥が、何やらキラキラと光った!!
あれは破壊のビジョン!!何かが放たれるッ!!!

「食らうのだ!!スプラッシュ・ビーンズ(鬼は外)ッ!!!!」
ドパパパパパパパパパアアアアアアアアアアアン!!!!!!!

いくつものスタンドの『豆』が、後藤真希に一直線に向かって行く!!!
飛び道具ッ!?ということはヤツのスタンドは恐らく中距離もしくは遠距離射程!!!

「そんな豆鉄砲でえぇぇぇぇぇッ!!!!!」
ドビュウウン!!!!

ゴシップ・セクシーGUYが腕を振り下ろすと突風が起こり、飛んできた豆は
すべて明後日の方向へと散り、地面に落ちた。

ビスビス…ミョミョミョミョミョ〜ン…
地面に落ちたスタンドの豆は、奇妙な形の植物となって成長する。

「なるほど!!さっき愛ちゃんにトドメを刺す直前、ごとーの腕にあの豆を
打ち込んだってわけかぁッ!!!」

後藤真希はさらに風を強く吹かせると、新垣里沙に急接近する!!
射程距離が長いという事は、接近戦でのパワーは格段に弱いと言う事!!!
少なくとも、近距離での槍捌きに敵う力は持ってはいないハズだ!!!
風が強くなると、ゴシップ・セクシーGUYのスピードもさらに加速!!
一瞬のうちに彼女は新垣里沙の懐に潜り込んだ!!!


870 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/03(金) 03:45:08.41 0

「DRYッ!!この攻撃がかわせるかぁ〜ッ!!?」

本気を出すからには一瞬で決める!!
後藤真希は槍を振りかぶり、突きの態勢をとった!!
その時、近付いて初めて気付いたことがあった。
先ほど新垣里沙のスタンドの指先の奥に見えたキラキラ光る破壊のビジョンが
彼女の眉毛にも存在していたことに。
どうする?このままゴシップ・セクシーGUYの槍で突きを繰り出すか…?
いや…その前に何かがくるぽ!!
この子の表情を見ればわかる…ごとーにいっぱい食わせてやったと、
そんな顔をしているッ!!!

「くらうのだ!!眉毛ビィィィィィッム!!!!!」
ドリュリュリュリュリュリュリュリュリュリューン!!!!!

突如、彼女の眉毛から爆発的に成長した鋭い枝が後藤真希を襲う!!!
スタンドの豆を体内に仕込んだッ!?

「んぁあッ!!!!」

危ないッ!!!
突き出してきたスタンドの枝をその軽やかな身のこなしでかわすと、後藤真希は
風を使って空高くジャンプし、新垣里沙を飛び越えた!!
最初の豆鉄砲は近付かせるためのオトリか…!?
こんな不意をついた攻撃をしてくるなんて、なかなか出来ることじゃあないッ!!!
けど、かわせればそれまでだぽ…正面からがダメなのであれば…!!!!
新垣里沙を飛び越えた後藤真希は、その姿勢のまま槍を腰に収め、両腕を突き出す!!

この態勢は知っている!!
我々はこの大技を知っているッ!!
そう、それはッ!!『風の流法<神砂嵐>』の構えである!!!


871 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/03(金) 03:48:28.73 0


「言った通り、全力で相手してあげるよ…」


これをまともに食らって生きていた者はいない。

彼女に行く手の邪魔と判断され、無残にも殺されてしまった東俣野健太のように。

腕を突き出した後藤真希の目がギラリと光った。

そして…


「風の流法『神砂嵐』」


ギャロンギャロン…ドグシャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!



872 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/03(金) 03:53:04.60 0

「う…あ…あ?」

新垣里沙は『神砂嵐』の影響で腕や足など所々から出血をしている。
だが、呻き声を上げているのは彼女ではない。
むしろ新垣里沙は、傷だらけの身体で笑みさえ浮かべていた。

「んぁ…バカな…」

ブツブツと何かを口走り、虚ろな目で地面に倒れているのは…
ズタズタになったスタンドの腕に黄色い花の咲いた太いツタを絡め、
自身の腕から激しく流血させている後藤真希だった!!!!
その黄色い花の咲いたツタを辿っていくと、そこにあるのは…新垣里沙の頭部!!!
眉毛ビームなどの、体内にスタンドの豆を仕込む技、通称『福は内』。
なんと彼女は、自分の頭皮にもスタンドの豆を仕込んでいたのだ!!
そしてその豆の正体は、もっともタフで強い植物!!!
仕込んだ植物が彼女の髪の毛の中から爆発的に成長し、後藤真希のスタンドの
両腕に『神砂嵐』を放つ直前に絡みつけたのである!!
髪の毛を振り乱した新垣里沙の姿は、山岸由花子の『ラブ・デラックス』を思わせた。

「草ごときに…ごとーの『神砂嵐』が破られるなんて…あ、あああ…」
「これは…タンポポのツタなのだ…デコボコ道や固い道でも力強く咲くタンポポ…
そのタンポポが『風』ごときに屈服したりはしないのだ…ッ!!!」

シュルシュルシュルシュルシュル…バシィッ!!!
新垣里沙の髪の毛の中から、さらにタンポポの咲いたツタが伸びる。
彼女は、後藤真希をツタによって動けないようにスタンドごと縛り上げた!!!

「捕まえてやったのだ後藤さん…さぁ、懺悔してもらおうか…ニィ!!!!」


ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!


7 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/04(土) 02:10:21.77 0

「コンコン見ろよッ!!!ガキさんが…後藤真希を縛り上げてるぜぇーッ!!!!」
「間に合ったんでしょうか…見た感じかなり優勢のようですが…あッ!!マコ!!!」
「なんだヨ?」
「愛ちゃんが…ッ!!!」

ようやく辿り着いたぶどうヶ丘公園の時計台がある広場の入り口で、
紺野あさ美は無残な姿で倒れる高橋愛を発見した。
着ている制服はボロボロで砂埃にまみれており、右腕は肩から変な方向に
折れ曲がっているようだ。
だが、ここからではまだよくわからない。

生きているのか、死んでいるのか。

近付いて彼女の意識を確認したいが…今出て行くことは戦闘中である
新垣里沙の注意をそらしてしまう原因になりかねない。
仮にも、後藤真希は演劇部の元エースなのだ。
今は優位に立っているように見えるが…もしかしたら一発逆転の可能性もあり得る。

「愛ちゃん…?あそこでボロ雑巾みたいにぶっ倒れてるのは愛ちゃんかヨ…oi!!」

慎重に行動しようと思案している紺野あさ美をよそに、直情型の小川麻琴は
すぐさま高橋愛のもとに向かおうとした。
そんな小川麻琴を紺野あさ美は制止する。


8 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/04(土) 02:11:51.66 0

「な、なんなんだよコンコンッ!!!」

「叫ばないで!!…あそこにいる二人はまだ私たちが来たことに気付いていない」

「だからなんだってんだ?」

「おバカッ!相手は後藤さんなんだよ…確かに、今は優位に立っているようだけど…
あの子の注意をそらす事は出来ないッ」

「はぁ?さっきと言ってることが違うじゃんかよ。コンコンらしくねーぞoioi。
だいたい、緊急の指令とはいえ後藤真希を攻撃する意味がわからないとか
言ってたじゃないか。ワタシはてっきりあの人を潰す気はないもんだと思ってたゼ」

「そうじゃない…マコには、あの愛ちゃんの姿が見えないの?あれは間違いなく…
半殺しにされている…!!後藤さんは、やはり殺すつもりで闘っているッ!!
いつあの子のスキをついて、後藤さんが行動に出てもおかしくはないんです…!!!」


これは考えすぎかもしれないが…
だが、こういう時こそ慎重に行動せねばならない。
何かが起きてからでは遅いのだ。
だが、それでも小川麻琴は歩き出した。
その先にいるのは…新垣里沙と後藤真希!!!

「マコッ!!」

「止めんなよ、コンコン…ワタシがどうして『演劇部』にいるのか…
コンコンは知ってるハズだろうがヨォ」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


9 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/04(土) 02:13:48.76 0

新垣里沙のスタンド『ラブ・シード』の生み出したタンポポのツタに拘束された
後藤真希は、虚ろな表情で考えていた。

そーいえば昔…そう、小室学園と抗争があった頃だ。
来る日も来る日もいつ襲われるのかと神経使うのがだるくなって、攻めてくるのを
待つくらいなら、いっそのこと一人ででもこっちから乗り込んで急襲してしまおうと
考えた事があったな。
当時はやらなきゃやられる、それだけだと思っていたから。
なっちにその話をしたら、めちゃめちゃブチ切れられて、むかついて口論になったっけ。
一人で闘えるわけがない…そんなことを言われた。
その時はその言葉を軽く聞いていたが…今ならよくわかる。
ごとーは自分の腕には自信があったけど、なっちの言っていたことは
そういうことじゃあなかったんだ。
エースの高橋愛を倒しても、彼女には仲間がいる。
新垣里沙に深手を負わせても、彼女の仲間はすぐそこまで来ているようだ。
どんなにごとーが東奔西走しても、彼女らにはそれを支える仲間がいるんだ。
次の走者にバトンを渡すかのように、この子たちには仲間がいる!!!

けど、ごとーには…もう仲間はいない。


ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…



10 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/04(土) 02:16:06.69 0

…でも、それはわかっていたことなんじゃあないか?
ごとーは…この町を守るために仲間を捨てたんだ。
この杜王町を守るために、演劇部を捨てたんだ!!!
少々気ままに遊んできたのは、演劇部の様子を見るため…この町を守るため!!!
夢がたくさんあったからだ!!!
このままじゃいけないこと…演劇部をやめた時から、ごとーはとっくに気付いてた!!!


「ハァ…ハァ…どうしたのだ後藤さん…わたしはあなたに懺悔をしてもらいたいのだが…?
それとも、そんな体力はもうないか?…ハァ…ハァ…」

新垣里沙は息を荒くして後藤真希に言った。
実は、彼女の体力こそすでに限界だったのだ。
直撃とはいかないまでも『神砂嵐』を食らい、彼女の頭部から生えた後藤真希を
拘束しているツタは、新垣里沙自身の身体から養分を吸収しているのである!!!
このままでは、こちらの体力がもたない…ッ!!!

「後藤さん…あなたはわたしの憧れの人だ…だが!!私たちが寺田先生から受けた
指令は後藤真希を止めること!!生死については聞かされていない…本望ではないが…
こちらにももう余裕はないのだ…だからッ!!」

新垣里沙は『ラブ・シード』の指先を構えた!!
その指先がキラキラと光りだす…生命が生み出される!!
スタンドの豆が後藤真希の身体に打ち込まれる!!!

「始末させてもらうのだ!!後藤真希ッ!!!」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


11 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/04(土) 02:17:13.84 0


ごとーの『神砂嵐』は破られてしまった…これは精神的にもかなりショックだった。
こんな経験はッ!こんな屈辱はッ!!
『自信』と『誇り』が同時に崩れて消し飛んでしまったみたいだ。

けど…ごとーは決めたんだ。
この町はごとーが守るって決めたんだ!!!

向こうからは、ごとーを止めるためにまた新たな刺客が現れたっていうのに…

こんなところでッ!!立ち止まっているワケにはいかないッッ!!!!



「とどめくらえッ!!スプラッシュ・ビーンズ!!!」

「き…貴様なあぁぁんぞにィッ!!!!!!!!」



ビスビスビスビスッ!!!!!




12 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/04(土) 02:19:09.05 0

それは一瞬の出来事であった。
新垣里沙が後藤真希に放った豆の弾丸は、虚しく地面に撒かれ、
奇妙な形の葉を持った植物を生んだ。

「ば、バカなッ!!!」

新垣里沙が狼狽する。
なんと後藤真希はツタから一瞬で脱出してしまったのだ!!
度肝を抜いた方法で!!!

「じ、自分で自分の肩を外したのかッ!!?そうして出来た隙間から一瞬の
うちにツタから抜け出すなんて…早すぎるッ!!!!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


13 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/04(土) 02:21:20.99 0

「あんたになんて負けちゃいられない…ッ!!!!」


背後から聞こえる冷たい声。
いつの間に…は、早いッ!!!!!
そう思って振り返ったが、すでに遅かった。
後藤真希のスタンドは、槍で新垣里沙のスタンドの背中を大きく切り裂いたのだ。


ザシュッ…バリバリ…ブシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!

「ああぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁああああああッ!!!!!!!!!!!」


「…さよなら」


スタンドのダメージは本体へと返っていく。
背中から鮮血をほとばしらせ、新垣里沙はその身を大地に預けてしまった。
外した肩を乱暴にはめて、後藤真希は呟く。

「痛い…痛いよ…ごとーをここまでマジにさせたのは…きみが初めてかも知れないなぁ…
しかも切りつける寸前にスタンドを前に出してダメージを軽減し急所を外すとは…なんという判断力!!
だけど新垣里沙…きみはこれで倒したぽ。そして…来たね、きみは何度か会ったことが
ある…ごとーと同じ『金髪』の…小川麻琴ッ!!!」


ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!


54 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 02:06:14.58 0

目の前に立つ後藤真希はボロボロだった。
制服の両袖はズタズタに裂けており、指先からは血が滴り落ちている。
きっと、激しい戦闘だったのだろう。意識を失って倒れた高橋愛と新垣里沙を
見ればそれは一目瞭然だ。
その前にも、彼女は演劇部の顧問『寺田光男』と交戦したと聞いている。
今日だけで、三度も激戦をくぐり抜けてきているのだ。
そんな彼女の瞳は…鋭く光っていた。

「さぁ…来るならとっととかかってくるがいいぽ…」

小川麻琴がここにいる理由はもうわかっている。
今は自分がすべきことは…飛び掛る火の粉を払うだけだ!!!
後藤真希は、スタンド『ゴシップ・セクシーGUY』を構えた。

「ガキさんを倒したアンタの闘い…見事だったゼ」

ポツリと小川麻琴が呟く。
その表情は、尊敬の気持ちで溢れていた。
突然何を言い出すんだ?後藤真希は数回瞬きをすることで
小川麻琴に疑問の念を訴えかける。

「その腕…あんたの大技が破られた痕だな。ワタシを病院送りにしたっていう…
まぁ、よく覚えてないけどヨ。さぞショックだっただろうなぁ?すげー自信なくしたろ?」

「…何が言いたいの?」

「もの凄い強靭な精神を持ったヤツだなと思ったのサ。一流のスポーツ選手には
『スイッチング・ウィンバック』っつー精神回復法があるが…アンタはそれを
やったワケだ。肩を外す…自分で自分を痛めつけることによってスイッチを切り替え、
闘志だけを引き出したんだ…なかなかできることじゃあねーよなぁ?oioi…」


55 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 02:07:20.16 0

この女、何を言っているんだ?
これからぶっ潰そうと思う相手を褒めることに何の意味がある?
後藤真希には、その心理が理解できなかった。

「後藤さんよぉ…あんた、演劇部を襲撃したそうだな」

「んぁ…うん」

やっと本題に入ってきたか。
さて、一気にカタをつけたいところだが…今度はちとやっかいだ。
小川麻琴はいい、問題は向こうで高橋愛の意識を確認している紺野あさ美だ。
ヤツの能力は謎につつまれている。
だが、ここで負けるわけにはいかない。
どんな能力を持っていようが、ごとーの風で吹っ飛ばしてやる。
邪魔するヤツはみんな消す!!
後藤真希はそう思った。
ところが、小川麻琴の口から出た言葉は予想だにしないものであった。


「ワタシは…そんなアンタに『カリスマ』を感じた!!!」


ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!


56 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 02:09:14.79 0

なんだって?
こいつ、さっきから何が言いたいんだ!?
ますますワケがわからなくなり、後藤真希は不覚にもうろたえてしまう。

「アンタの目的は知らないけどよぉ〜…ワタシも目的があって演劇部にいんのヨ。
そして、あんたが今日行った行為はッ!!ワタシの最終的な目的に最も近いものッ!!!」
「きみは…何が言いたいの?ごとーにはよくわからない…」
「oioi…少しは察してくれヨ。場合によっちゃあ…アンタと手を組んでもいいんだぜ?」
「!!!!!!!!!!!!!!!!」

驚く後藤真希をよそに、小川麻琴はさらに続ける。

「ワタシは…この町が好きだ。人が好きだ。そして学校が大好きだ。だがよぉ、
去年の春から段々と町の空気が変わってきたよなぁ?それが何だか最初はわかんなかった
けどよぉ〜…やっぱり演劇部が関係してると思うんだよなぁ?なぁ、そう思うだろ?oi」

後藤真希は何も答えない。
ただただ、小川麻琴の言うことに耳を傾けていた。

「ワタシは演劇部を内側からぶっ潰そうと考えている」

ッ!!!!!

「だからよぉ、アンタの目的がワタシと同じものだとするなら…目的は
一緒だってことになるなぁ?そこんとこどうなんだよ、oi」

目的が…一緒?
後藤真希は、同じ金髪の小川麻琴を見つめた。
こいつは…ごとーと同じなんだろうか。
この子の髪の色は…ごとーと同じ黄金の意思の表れなんだろうか?


57 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 02:10:13.95 0

「マコ、愛ちゃんは無事です…恐らくこの子も…けど、再起不能は確定ですね。
できる事なら早いところ病院に連れて行ってあげたい…」


対峙している小川麻琴に、紺野あさ美は近付いてそう語りかけた。
彼女は小川麻琴の目的を知っている。
今の話も聞こえていたが、その辺りの事情は知っているので口を挟まなかった。

私は、まだ演劇部を裏切るワケにはいかないが…後藤さんはマコに
どういった返事をするのだろうか?

…いずれにせよ、すべてはなるべくしてなるのだ。
初めから決定付けられていることなのだ。
私には関係ない。
今、私がすべきことは…倒れている大事な友達を一刻も早くラクにしてあげることだ。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



58 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 02:12:30.08 0

「きみに一つ訊く」

後藤真希が口を開いた。


「なんだい?何でも訊いてくれヨ」

「もし、きみと手を組んだとして…きみはそれからどうする?前に会った時も
そこの可愛らしい子といたけど…彼女はごとーたちとは関係がない。つまり、
その子とは敵同士になるってワケだ」

「そうなるなぁ」

「きみは、その子を討つことが出来るの?」


さて、今の後藤さんの質問に、マコはどういった返事をするのだろう。
頷くのだろうか?
私はあまり彼女と睨み合いたくはないが…私はマコの目的を知っている。

マコは私の親友なんだ。彼女の考えを理解できなくて何が親友か。

もし敵対することになるのなら、なにも言わずにすべて受け入れよう。
あとの事は、またあとで考えればいいのだ。


そして、小川麻琴はこう言った。


「いや、無理だね」



59 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 02:14:10.31 0

予想外のセリフに、紺野あさ美は目を丸くした。

何を言っているんだ、マコは。
目の前にいる後藤さんは仮にも元演劇部のエース!!歴戦の勇士なのに。
危険な人ではあるけれど、目的さえ一致していれば、これほど心強い人はいないハズだ。


「無理?じゃあ、ごとーがその子をヤるって言ったらどうするの?」

「その時は、ワタシがあんたをぶっ潰す」

「何それ?はは、お笑いだね。きみ、言ってることがおかしいんじゃあないかな?」


「別におかしくなんかないサ。コンコンはワタシの親友だからな」


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!



60 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 02:16:47.89 0

親友…親友か。
ごとーにも親友がいるな…

ミキティ…亜弥ちゃん…

確かに、この子と目的は一致しているみたいだ。
町を…みんなを守りたい…この子からは、黄金の意思が感じ取れるッ!!!
だけど、細かいところでごとーとこの子は考え方が違う。
ごとーは…何事もなく平和を取り戻したいだけだ!!
大事な友達を巻き込むようなマネはしたくない!!アンタとは違うッ!!!
目的のために利用しあう仲間なんているもんか…そんなの、犬のクソ以下だ!!!
それなら一人で闘った方がいい。
町は静かに平和を取り戻していくんだからッ!!!


ビュオォォォォォォォォォォォォォォォォォ…


乾いた風が吹いた。
後藤真希の『ゴシップ・セクシーGUY』が起こした風だ。


「交渉決裂…か。わかりやすいぜ…oioi」

小川麻琴は、静かにスタンド『FRIEND・SHIP』を発現させた。


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…



70 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 03:48:07.83 0

「マコ」

「ん?なんだよコンコン」


これから戦闘が始まるというこの緊迫した空気の中、紺野あさ美は
場違いなおっとりした声で彼女を呼んだ。

「正直、驚いたよ。あっさり言うんだもの」

「何を?」

「私を討つのは『無理』だって」

「何言ってんだよ、oioi。別に驚くようなことじゃあねーじゃんかヨ。普通だろ。
飯のときに水を飲むのと同じくらい普通だろうがよぉ」


冷静を装ってはいたが、彼女のそんな一言が紺野あさ美には嬉しかった。

親友かぁ…マコもそう思っていてくれたのか。
いつも一緒にいたけど、本当の意味で心が通じ合ったような気がした。
友情を感じたッ!!
きっと、これもなるべくしてなったのだろう。
私は、マコと共に歩んでいく運命にあるんだ!!!


ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…


71 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 03:50:36.58 0

「おしゃべりしてるヒマがあるのかぁ〜ッ!!?」


後藤真希が叫ぶ。
その叫びに乗って、突風が巻き起こった。

「うぉッ!?」
「わぁ!!」

『神砂嵐』が封じられたとはいえ、後藤真希の『風を操る能力』は健在だ。
二人は後方へと押されてしまう。


「大技はなくてもこれだけの力を持ってるとはなぁ…oioi」
「そんなこと言いながら、いつになく穏やかな表情じゃあないですか」
「コンコンこそ、いつになくイイ顔してんじゃんか。何かイイ事でもあったのカイ?」

二人はお互いを見て、ニヤッと笑った。
それを見た後藤真希は、なんだか不愉快な気持ちになってくる。


「あまったれだね…そんなんでごとーと手を組もうとしてたのかよぉぉっ!?」
ビュオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!


風はさらに強くなる!!
正面からモロに受ける風は呼吸を難しくし、ヤツらは下を向くはずだ。
そのスキをついて風に乗り、ヤツらを接近戦で仕留めるッ!!!
そう思ったのだが…
彼女達は下を向かなかった。
それどころか、悠々と顔を真っ直ぐ向けてこちらを見ていたのである!!!


72 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 03:54:27.68 0

「バカな…ごとーの風を真正面から受けて平然としてるなんて…ッ!!!」

ところが、それだけではなかった。
何かがおかしい…奴らは顔を上げているだけではなく、風に流されなくなっている!!
そんなバカな…一体何が起きているんだッ!?

「あんたとやり合うのは三度目だが…いや、一回目は記憶が曖昧だし、二回目は
竜巻を起こされたぐらいだがよぉ…なんで今まで気がつかなかったんだろうなぁ?
ワタシの能力は『抵抗や摩擦をなくす』能力だったんだヨなぁ…しかし、正面からの
風ってのはやっぱきついぜーっ。呼吸がしづらいなぁ〜oi」

そう、小川麻琴の能力は『抵抗や摩擦をなくす』能力!!
彼女の身体は今、いかなる抵抗も摩擦も受けない。
よって、風による抵抗を受けないので、風に押し流されることもない!!!
そして、紺野あさ美は…

「私はあまり能力を使うのは好まないのですが…状況が状況ですからね。
そっと『ある仕掛け』を施させてもらいました」

なんと風を浴びていなかったのだ!!!
風が、まるで彼女を避けて吹いているかのようである。
一体…これはどういうことであろうか。


73 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 03:56:19.73 0

「おぉぉう、コンコンっ!!!なんだいその能力はッ!!どうやってやってんだ?」

「あらかじめ『能力』によって空間に歪みを生じさせておいたんですよ。
これに巻き込まれたものは、いかに運動エネルギーを持っていようと、
大半のものはそれを保つことが出来ない…」


そう言って、紺野あさ美はチラリと背後に立つスタンドを見た。
それは、黒地にピンクのラインが入った、アディダスのジャージを彷彿とさせる
人型の精神ビジョン!!!

スタンドの名は…ニューオーダー。


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!!!

77 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 05:29:36.03 0

演劇部の現エース高橋愛に、後藤真希自身が見込んでいた新垣里沙。
その二人を蹴散らして、彼女は軽く安心していたところがあった。
小川麻琴は去年の12月に軽く交戦しているし(邪魔が入ったが)、紺野あさ美には
以前自分がトチ狂って起こした竜巻の中に入ってくるという謎の能力を見せられたが、
正気を保っていれば謎が多いとはいえぶちのめせるものだと思っていた!!
しかし、そう甘くはなかったのだ。

「寺田が差し向けた四人の刺客…か。みんな、決してごとーにひけを取らない使い手だぽ。
きみたち四人は間違いなく演劇部の『一軍』だね…ということはつまり!!残るきみら二人を
倒してしまえば!!!もう演劇部に怖いものはないッ!!!」

寺田を除いてね…

後藤真希は起こしていた風を弱める。
やつらにこの突風『ゴシップ・ハリケーン』は通用しない!!
ならば…闘い方を変えるだけ!!!


「風が弱まりましたね…」

「行くなら今だよなぁーッ!!!!!」


小川麻琴は地面を滑走した。
彼女のスタンドは近距離パワー型だ。接近戦で、初めてその能力をフルに
活用することができる。

「んぁッ!?なかなか早いッ…けど!!!」

後藤真希は回避行動を取ろうと身体を動かす。
だが、小川麻琴が滑走してくるスピードの方が速い!!


78 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 05:32:55.20 0

「oioi後藤さんよぉ〜!!遅いぜッ!!!!」

そして繰り出す右ストレートはッ!!!


スカッ

「え?」


虚しく宙を切ったッ!!!
いや、それは間違いだ。
確かに後藤真希には当たっている。
だが、当たっていない…それはどういうことか。

「な、なんだコイツはぁ〜ッ!!実体がネェぞ!!oiッ!!!!」

もっと詳しく言えば、近付いた分だけ後藤真希が離れてしまうのだ。
彼女が後ずさりしている様子はない。
だが、殴るために近付こうとすれば、向こうの足は動いていないのに
後方へと移動してしまうのだ。

「ゴシップ・セクシーGUY<横浜蜃気楼>ッ!!透明になるための風のプロテクターを
利用して光を屈折させてるんだぽ!!きみが殴ろうとしているのはごとーの幻影だよッ!
逃げ水(蜃気楼)が殴れるわけないじゃあぁ〜んッ!!近付くのも不可能なのに!!!」

後藤真希の声がどこからともなく聞こえる。
目の前にいる後藤真希の幻影の口は動いているが、声は違うところから聞こえた。
<横浜蜃気楼>とは姿を消すだけでなく、名前の通りこういった使い方も出来るのだ!!
彼女のスタンドが槍を構えているが…見えるのはその幻影だけで、本体がどこに
いるのか、まったく見当がつかない。


79 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 05:34:01.08 0

「なんだとぉーッ!!こ、こいつはまずいぜ〜oi!!!」

「今度はこっちから行くよッ!!オォォォォルナイ…」


「ニューオーダー!!!」
ガキュウウウウ!!!!


紺野あさ美の声と共に、なにかが軋むような音が響いた。
それは能力を使用した音!!
空間に歪みを作った音!!


「…ぽ?」

後藤真希は姿を現した。
彼女は、小川麻琴の左後ろにいたのだ。
いま消された幻影と同じポーズで、スタンドの槍を小川麻琴に向けていた!!
<横浜蜃気楼>を解いたわけではない…なのに何故、ごとーの幻影が消えた!?
その疑問が、一瞬のスキを生んだ。


80 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 05:35:25.74 0

「oiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiッ!!!!!!!!!」

バキィッ!!!!!

「んぁあああああああっ!!!!」


スタンド『FRIEND・SHIP』の回し蹴りを左肩に食らい、後藤真希は吹っ飛ぶ!!
さすがは近距離パワー型、吹っ飛んだ後藤真希は地面を転がり倒れてしまった。
バカな…ごとーの<横浜蜃気楼>に弱点はないハズ…ッ!!!

「いったい…いったい何が起きたんだよぉッ!!!」

額に焦りの汗を浮かべながら、後藤真希は叫ぶ。
それに答えたのは、紺野あさ美であった。


「空間を歪ませたんですよ。空間を歪ませるということは…太陽光線に振動を
加えるということ!!!蜃気楼は太陽光線なくして生まれることは出来ないッ!!!
歪んだ空間の中では、蜃気楼なんて生まれやしないんですよ!!!」


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!



81 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 05:38:37.05 0

後藤真希は考える。

なんということだ…甘く見ていたぽ。
追っ手の中でも厄介なのは、演劇部の現エースであり最強クラスの高橋愛でも、
ごとーの『神砂嵐』を破った新垣里沙でもなかった。
真に厄介なのは…この『抵抗や摩擦をなくして』風の影響を受けなくなる小川麻琴とッ!!
『空間を歪ませて』ごとーの技を無効化させてしまう紺野あさ美だった!!!

まずい…非常にまずい…!!

こんなところで止まるワケにはいかないのに…
ごとーはこいつらに負けるワケにはいかないのに!!


ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!



82 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 05:41:09.06 0

小川麻琴は考える。

この人と闘うことになった時は、正直少しビビッていたんだ…
町を守りたいという思いは同じかもしれないが、ワタシはみんなも守りたいんだ!!
この人は町を守れる人かもしれない…だが!!
そのためなら、コンコンや…演劇部の仲間を傷つけちまうだろうヨ!!

演劇部は内側からぶっ潰す、この思いに変わりはない。
だけど、ワタシの愛した人々を傷つけるのは許さないッ!!!

愛ちゃんにガキさんよぉ…あんたらは無茶苦茶なヤツラだが…
おめーらは!!ワタシの愛してる人々であることは間違いネェーッ!!!!

仇はとってやるぜ…このワタシがなぁーッ!!!!


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!



83 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 05:44:54.97 0

紺野あさ美は考える。

この勝負、もはや圧倒的にこちらが有利だ。
後藤さんは疲れきっているし『神砂嵐』とやらも使えないであろう…
だが…本当にこれで終わりだろうか?
あの日、市井さんの名前を聞き、狂って私たちに見せた大竜巻…彼女は間違いなく
爆発力を持っているハズなんだ…まだ勝ったと思ってはいけない。

相手が勝ち誇った時、そいつは既に敗北している…これはとあるイギリス人の
名文句であるが、決して間違ったことは言っていないだろう。

後藤さんは、もう私たちに対抗する術は持っていない。
私たちは風を封じることができるのだから。
しかし…万が一という事もある。こういう時こそ慎重に行動せねばなるまい。
それに、なんだか嫌な予感がするのだ…私のスタンドには『予知』などという
能力はないが、私自身の第六感はそう教える。
大切なのは、あとに残そうとする意思!受け継ぐ意思なのだ!!
何も起きないかもしれない。だが何かが起きてからでは遅い。

私は少し短く切って改造したスカートのポケットから、淡く桃色がかった
銀色の携帯電話を取り出した。
そして素早く文章を打ち込み送信…しかし、どうやらその行為がまた嫌な予感に
拍車をかけてしまったようだ。
今の行動によって、私はこれから起こる出来事を見ずして認めてしまったかのような…
前向きに生きてきた私だが…今の私は、とても『らしくない』…


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…



86 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 06:52:00.38 0

「ごとーは…ごとーは負けるワケにはいかないんだ…例えボロボロになっても!!
きみらに『風』が通用しなかったとしても!!立ち止まるワケにはいかない…ッ」

後藤真希はよろよろと力なく立ち上がる。
状況は絶望的。
小川麻琴と紺野あさ美の能力を打ち破る術も思いつかない。
しかし!!彼女は立ち上がらないワケにはいかない…なぜなら!!!
後藤真希には『町を守りたい』という黄金の意思があるからだ!!


ビュルオォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!


後藤真希の『ゴシップ・セクシーGUY』が再び強烈な風を生む!!!
まるで、彼女の思いを叫ぶかのように!!!

「oioioi!!きかねぇって…ん?」

ビシュッ…ビシュッ…

能力を使って風による抵抗を受けない身体にしたものの、何か妙な音が聞こえてきた。
何かが、切れているような…

ビシュッ!!
「いでッ!!!」

突如、小川麻琴の頬に浅く傷がついた。
傷口からタラリと血が垂れる。


87 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 06:54:19.27 0

「oioi…なんだぁ、こりゃあよぉ…血?」

ビシュッ…ビシュッ…

制服にも、奇妙な傷がついていく。
まるで、刃物でちょっとずつ切られているような…

「まさか…これは『カマイタチ』ってヤツじゃあねーのか?
真空状態になると起きるっていう…」

この人、こんな力も持ってるのかよ…oioi。
小川麻琴は空間に歪みを起こして風を避けている紺野あさ美を見やる。
どうやら、奇妙な切り傷をつけられている様子はない。
やはりカマイタチか…


「けどよぉ…そんなもんでこのワタシが参るとでも思っているのカイ?後藤さんよぉ!」

「んぁああああああああああ〜ッ!!!!!!!!!!」

「…そろそろ休みなヨ」


小川麻琴はポケットからいつものベアリングを取り出す。

「このベアリングがアンタの風を切り裂くことができるのは…
すでに証明済みだよなぁ〜ッ!!!!!!!」

彼女は、力いっぱい握ったベアリングを後藤真希に投げつけた。
抵抗や摩擦を失ったベアリングは、後藤真希の風による影響を受けることなく
空を裂き、後藤真希の身体に打ち込まれる!!!


88 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 06:56:02.15 0

ズビッ!!ズバッ!!ズキュウウウウウウウン!!!!


「ぎゃあああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!」


後藤真希の、声にもならない悲鳴があたりに轟いた。
小川麻琴の放ったベアリングは、後藤真希の腕、肩、腿、腹を…容赦なくえぐったのだ。
すでに、無数のベアリングを槍ですべて捌ききるだけの力も残っていなかった。
そんな彼女から目を逸らさず、小川麻琴はその能力で後藤真希に急接近する!!!


「殺しはしねぇヨ…だが再起不能にはなってもらうゼェ〜ッ!!!!」

「こ、このバカちんどもがぁああああああああああああッ!!!!!!!!!」

後藤真希は叫んだ。
それが、もはや負け犬の遠吠えであったことは自分でもわかっていた。
こんな…こんなところで終わるなんて…
ごとーが町を…みんなを守らないといけないのに…


「ユゥウウウゥウウウウウゥキャァアアアァアアアアアァアアアンンンドゥゥゥウウゥウウウッッッ!!!!」


ドドドドドドドッドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!


小川麻琴のラッシュが、後藤真希のボディに決まった!!!



89 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 06:58:09.89 0


ああ…終わった…
ごとーはコイツに負けたンだ…
あと何発、拳を叩き込まれるだろう…いっその事、ごとーを死なせてほしい…

もう、町を守ることはできそうにもないから…

もう一度学校行きたかったなぁ…資格もいっぱい取りたかった…
そういえば、あの時の漢検あと3点で準2級受かったんだよね…リベンジしたかったなぁ…

ミキティ…亜弥ちゃん…


ズキッ…


痛い…何かが胸に刺さったような…

ああ、そうか。胸の内ポケットに破壊した『矢』の破片を入れていたんだ…
こんなところに入れてたらケガするよねぇ…こうなった時のこと、考えてなかった。

痛いなぁ…地肌に…食い込んで…



90 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 07:00:16.60 0


ボゴォッ!!!!!!ブシュウウウウッ!!!!!!!


その時、異変が起きた。
小川麻琴が殴りつけていた後藤真希の身体から、突然血が噴出したのだ。

「えっ!!?」

まず驚いたのは小川麻琴である。
バカな…身体に穴を開けちまうようなパワーで殴っちゃいねぇーぞ!!oiッ!!!

「んぁ…?」

もちろん、当の後藤真希も驚いていた。
胸が痛い…何かが…何かがごとのーの身体を貫いた…の?


ドシャアアアアアアアアッ!!!!!!!!


後藤真希は、胸から血を派手にぶちまけて吹っ飛び、地面に倒れた。
その時、彼女は『ゴシップ・セクシーGUY』の胸にも穴が開いていることに気付く。


んぁ…穴かぁ…
何がなんだかわからないけど…
これで…ラクにな…れ…




91 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 07:00:56.80 0

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・ドクン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ドクン・・・・・・・・・・・・・・・・ドクン・・・・・・・・
ドクン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ドクン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ドクン…・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・パラ…パラ…


92 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 07:02:07.36 0


「こ、コンコン…これは…どういうことだ…?」


「わ、わかりません…見当もつかない…いったいこれは…!!?」


「なんだよ…この『抜け殻』みてーなもんは…それに…後藤真希は
どこにいったんだヨオォォォォォォッ!!!!!」




93 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 07:03:45.39 0


今に見ててよ…


ごとーにだって…出来るの絶対…


あんたらになんか…負けちゃいられない!!!!




94 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/02/05(日) 07:05:12.85 0


ドゴォォォォッ!!!!!!!!


「うげえええええええええええええええええッ!!!!!!!!!」

「ま、マコ!!!そんな…い、いきなり…吹っ飛ばされているなんてッ!!!!!」


ドシャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!





レクイエム
鎮魂歌は静かに奏でられる…



TO BE CONTINUED…