413 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/25(水) 03:48:01.62 0

銀色の永遠  〜後藤真希、その黄金の意思〜


『裕ちゃん…もう我慢ならないんだよ。町が…杜王町が汚されていくのが
我慢ならないんだ』

「・・・・・・・・・・」

『確かに、今は何事もなく静かだよ…今はね…けど…町は確実に傷を深めていってる。
この町に…ぶどうヶ丘高校にいる怪物に…傷を増やされてるんだ』

「アンタ、まさか…」

『傷の痛みが深く現れてくるのはこれからだよ…もう回避することはできない。
その傷は、一体どうやって癒せばいいの?そんな傷を、いまだ増やし続けてるなんて…
だから…今ごとーに出来ることは…』

「バカな真似は考えなおしやッ!!!」

『ごとーがやらなきゃやる人がいないんだよ。この<痛み>は…いずれ町の未来にとって
命取りになる…ごとーの町を…みんなをこれ以上…ッ』

「…もう何を言っても無駄なようやな。声色でわかる…あんたは昔からそうや。
演劇部にいた頃も…自分が悪いと思ってなけりゃあ口では謝っていても声色は
ぶちキレっぱやったっけ…ただな、これだけは言わせてや。私自身<アレ>がどんなものか
わからんけど、コレだけは言える」

『んぁ…?』

「…殴られたら、すべて終わりやで。あんたも…杜王町も…」



414 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/25(水) 03:50:09.13 0

二月も終わりに近付いてきた、風の冷たい日のことだ。
帰りのHRが終わり、帰りの身支度を整えている時だった。

「あーやっと帰れるなぁ〜ッ。聞いてくれよ〜真希ちゃんに亜弥ちゃんよォ、二学期の
英語に引き続き、今度は古典でイエローカードもらっちまったんだよ〜ッ!!!」

クラスの友達であるミキティがごとーと亜弥ちゃんに泣きついてきた。
授業が終わったあとに古典の先生にちょっと呼ばれたのはそのためだったのかぁ〜。
そういえば、去年は11月くらいから必死で勉強している姿を見たなぁ。


「高校ってこんなに進級難しいもんだなんて入学当初は思わなかったぜ。なぁ?」

「いやぁ〜そう思ってるの美貴タンだけだと思うよ。いっつも寝てるか食べてるかだから
そういうことになるんじゃないかなぁ?ねぇ、真希タン」

「んぁ…あれ?でもそう言う亜弥ちゃんも前回の英語のテストで追試食らってなかったっけ?」

「その話は野暮ってもんだよ、ゴマキタン」

「ゴマキ言うな」


415 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/25(水) 03:51:10.05 0

「つーかさ、なんだかんだで真希ちゃんって追試食らってないんだな。あたしらン中では
最も先生に説教くらってるように見えるけど、言われてるのって髪の色だけか?」

「ん〜そうだねぇ〜」

「ずっと金髪だよね〜真希タンは。プリンになっては染めプリンになっては染め…」

「去年の春とかひどかったよなwでもよ、いっつも金髪って飽きないか?あたし、
いいサロン知ってんのよ。駅前にある『Revolution』って店なんだけどよぉ〜」

「いいんだよっ、ごとーはこのままで」

「「どうして??」」

「だって…これはごとーの『黄金の意思』の表れなんだから」


ミキティと亜弥ちゃんは、顔を合わせて首を傾げた。
…この二人と、またこんな風に話せる時がくるんだろうか?
それはわからないけど、今こうしているこの時間だけは…

思いっきり、思いっきり…愛したい。



416 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/25(水) 03:52:59.77 0


コンコン…

「しつれーします」

保健室に入ると、仲のいい保健婦のねーちゃんがマニキュアを塗っていた。
久々に入ったなぁ、ここ。
昔はしょっちゅうケガしてはよくお世話になったっけ。

「ってか…生徒入ってきたんだからマニキュア塗るのやめよーよ。けーちゃん」
「こぉら、ちゃんと『綺麗な保田先生』って言わなきゃダメでしょう?」
「もし今入ってきたのがごとーじゃなくて校長先生とかだったらどうするの?」
「甘声出して謝ってやりゃあいいのよw」

けーちゃんの色仕掛けに惑わされる男なんているのかな…?
でもちょっと見てみたい気もする、すっごいウケそうなんだけど。
まぁでも、けーちゃんは性格いいから生徒からは人気あるんだよね、男女問わず。

「しばらく見ないうちにマニキュア増えたんだね〜。ねぇねぇ、ごとーに一つ頂戴よ」
「ダメよ、マニキュアは校則で禁止されてるでしょーが」
「けちんぼ。誰も守ってないじゃん」
「で、何しに来たの?何か用があったんじゃないの?」

そうそう、そうだった。
小室学園といろいろあった頃、よくお世話になったけーちゃんに、ごとーは…


417 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/25(水) 03:54:18.12 0

「どうしたの?」
「な、なんでもないぽ!!あのさ、カバンを置かせてもらいたいんだけど〜…
教室じゃちょっと不安でさ」

ごとーは誰も寝ッ転がってない布団の上にカバンを放る。
このベッド、よく横になったな…

「じゃあね、けーちゃん」
「どこ行くの?」
「んぁ…そうだね…」

何も言わず、指を上に差してみせる。

「なにそれ?」
「ま、そういうことだぽ」
「どういうことだかわかんないってwホントにカバン置いていくの?
もし私が勝手に開けて中身チェックしたらどーする?」
「そうだねぇ…うーん…まぁ一つ言えるのは…」

ごとーはドアノブから手を離し、変わらぬ体勢でマニキュアを塗り続ける
けーちゃんに身体を向けて言った。

「けーちゃんが…ごとー以外の誰かがカバンを開けることがないように…
強く願っていることにするよ」

そう言って、ごとーは保健室をあとにした。
涙が出た。


436 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/25(水) 15:22:34.16 0

演劇部の部室の前で、ごとーはそのドアを見つめていた。
ここには…いろんな思い出がいっぱいある。
入部した当初は毎日緊張しながらここで深呼吸を繰り返してから中に入ってたっけ。
二次審査落ちした來未ちゃんがごとーを待ちぶせしていたこともあったな。
なっちとここで大喧嘩したこともあった。年下だからって過剰にバカにしたからだ。
今となっちゃ、懐かしい思い出だなぁ…
そして退部した時…二度とここにくることはないと思ってたけど…
ごとーは呼吸を整えると、ドアノブに手をかけた。
気持ちで負けるわけにはいかない。
心が負けを認めたとき、その魂は腑抜けとなって、死んだも同然のものとなる。
ごとーの…ごとーの黄金の意思は…決して屈服するわけにはいかないッ!!!


ガチャリ


ノックもせずに入った部室の中は、えらく殺風景だった。
部員が誰もいないからだ。
やっぱりごとーのいた頃とは違うな…あの頃の部室はそれなりに賑わっていた
気がしなくもない。なっちも今年で卒業か…
衣裳も綺麗で可愛らしいものが増えたもんだね。
部室の中も、戦闘の繰り返しで前よりずっとグズグズだ。



437 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/25(水) 15:25:02.12 0

「誰?」

突然発せられた声に、ごとーは振り返る。
なんだ、人いたんだ。
その声の主は、部室の隅っこで雑誌を読みふけっているようだった。

「ン?あんた…」

その女の子は、ごとーを怪訝そうな表情で見つめた。
あぁ…この子は確か…うん、知ってる。
ミキティから話を聞いたことがある。

「…きみ、一人だけなの?今日部活に来ている人は…」
「ん…まぁ、じきに誰かくると思うけどネェ。ってかヨ、その金色の髪の毛…
アンタ、後藤真希じゃネ?」

ごとーはその子にコクリと頷いてみせた。
隠す必要はない。

「きみ、高橋愛ちゃんでしょ?ミキティから話は聞いてる…強いんだってねぇ、
この部でもトップレベルだとか。ごとーとはほとんど入れ違いで入部したみたいだから、
きみはごとーのこと知らないかもね」

そう言うと、彼女は静かに首を振った。
ごとーのこと、知ってるのかな?

「あんたは有名人やよー…この演劇部では特にねぇ。あんたのようになりたくて、
この部に入部した子は多いンじゃあないかァ?」
「ふーん…」
「…で、元エースのアンタが何しにきたん?」


438 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/25(水) 15:27:43.16 0

高橋愛が雑誌をパタンと閉じた。
あーあ…ミキティの言ってた通りだな。闘争心ギラギラさせちゃって。
強い者に飢える狼、高橋愛か…スタンド使いになる前はどんな子だったんだろう。
この子も、寺田に人生を狂わされた一人か…本人はまだ気付いていないようだけど。
ごとーは両手を挙げてみせた。

「なんネ?そのポーズは」
「んぁ、見てわからない?あなたとやり合う気はないってことだよ、愛ちゃん」
「それじゃあ…アンタいったい何し来たんだァ?」
「顧問の先生、いる?」

寺田の部屋のドアを親指で指して、ごとーは言った。

「寺田のおっさんか…たぶんいるんじゃネ?」
「そう…わかったぽ」
「え…あ、アンタ!!!」

高橋愛がごとーを呼び止める。
何か驚いているようだった。


439 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/25(水) 15:28:19.02 0

「なぁに?」
「この部をやめたアンタが寺田センセに何の用なんだ?アンタ…何を企んでる?」
「企んでる??なんだかごとーが悪いヤツみたいな言い方するんだねぇ」
「いいから答えるがし。さもねーと…」


彼女の背後に紅い人影が灯る。
やれやれ…狂戦士っていう話は噂以上だぽ。


「そうだね…簡潔に言えば、ごとーはこの杜王町を守りに…救いに来た…この命、
この能力は…そのためのものなんだ…」

「…?」

「きみもその命と能力の『使い道』を考え直した方がいいぽ…これはごとーの勘だけど、
愛ちゃん、きみはこの部で最も死に急ぎ過ぎてるんじゃないかな?」


そう忠告すると、ごとーは彼女に丸腰の背中を向け、寺田の部屋のドアノブに手をかける。
後ろにいる高橋愛は、黙ってごとーの背中を見つめているように感じた。



440 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/25(水) 15:30:07.13 0

「おおぉぉぉぉッ!?後藤やないか!!!」


寺田はごとーが部屋に入ってくるなり、椅子から立ち上がって目を丸くした。
このおっさん、相変わらず調子が軽いな。
こんなおどけた表情の裏側で、どんな残忍極まりない事を考えているのか…
考えただけで虫唾が走るぽ…反吐が出るッ!!!
腋臭くさい親父のつまった満員電車に放り込まれた方がマシだ!!!

「どないしたんや?お前が<ここ>に現れるなんて…まぁまぁ、そこ座りや」

「その必要は…ないッ!!!」


ドヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!!!!


風が吹いた。
締め切った部屋の中で、一陣の風を吹かせてやったんだ!!!

「来て早々、そう熱くなるなて…とりあえずその物騒なもん仕舞えや。お前、
お母さんに言われなかったか?刃物は人に向けちゃいけませんってなぁ…」

寺田がごとーのスタンド『ゴシップ・セクシーGUY』の構えた槍を指差して言う。
このうさんくさい関西弁教師が…ッ!!!


441 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/25(水) 15:33:59.57 0

「テメーのせいで…いろんな人間が傷ついていった!!!市井ちゃんやおねえちゃん…
よっすぃ〜に山Pも!!」

「山P?誰やそいつwそれに吉澤は好きで部長やってるんとちゃうか?」

「ゴタゴタ抜かすんじゃあねーッ!!あんたは…ミキティまでスタンド使いに変えやがった!!
ごとーはいい!ごとーのは生まれついたものだから!!でもミキティや…他の部員は
みんなテメーがこんな化け物みてーな力を与えたんだろうがぁーッ!!!」


スタンド使いは惹かれあう。
この定義を梨華ちゃんに教えたことがある(あの子、まだ覚えてるかな?)。
それは敵か友人か…バスの中で足を踏んづけたヤツか…それはわからない。
だが、一つ言えることは…こんなものを持っていては、いつか幸せになれるとは思えない。
小室学園とのことを思い出せばよくわかる。
敵として出会い、それを倒しても…さらにもっともっと強いヤツが現れて…
闘いは永遠に続く。

「だから…ごとーはアンタを止めなくてはならない。これ以上誰かが…
町が傷つかないためにも…ッ!!!」

「フン…何を言ってるンや。後藤…そう言うお前はその手で何人傷つけてきた?
何人殺してきた?自分勝手な正義感も大概にせぇよ…物事はな、もっと長い目で
見なあかん。目先の感情で行動するなんて実に下らんな、バカのすることや…」

「なんとでも言ってるがいいよ。ごとーはアンタを許さない…野放しにしているワケには
いかない!!!さぁ!!弓と矢を渡してもらおうか!?粉々にぶッ壊してやるぽ!!!!」



442 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/25(水) 15:38:48.25 0

せめて、せめてスタンド使いが増えるのだけは止めなくちゃ…!!!
ごとーがこの悪魔から杜王町を守るッ!!!
きっと、この生まれついた能力は…この時のためのものだったに違いない!!!
みんなを救うために、神様が与えてくれたんだッ!!!

「オォォォォォルナイロォォォォォォォォングッ!!!!!」

紫色の、悪魔の姿をした天使は、そのコウモリのような羽を大きく広げた。
寺田の行いは被害者自身にも法律にも見えないしわからない…だから!!!

「てめーは真希が裁く…!!!」



「ったく…どうしようもないヤツや。お前はもう賞味期限切れやな…こうなってしまっては…


   死 ぬ し か な い な !! 後 藤 真 希 ッ !!!!!  」



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!


468 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/26(木) 04:53:16.90 0

寺田の背後にユラリと出現したヒト型のスタンド!!
初めて見たぽ…目がチカチカするような装飾がギリギリのセンスで保たれている、
いかにもコイツらしいスタンドだ!!!

「それが…それがお前のスタンドだなぁーッ!!!」

電話で、裕ちゃんが『殴られたら終わり』だと言っていた。
彼女自身も仕掛けはわからないらしいが…とにかく殴られたら終わりなんだそうだ。
かなり強力な能力だということか…だけどそこにネックがある!!
ごとーを攻撃するには殴る必要がある…つまり!!コイツは近距離パワー型で、
遠くまではいけないということ!!!

「ゴシップ・ハリケェェェェェェェェンンンッ!!!!!!!」


ドッヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウンンン!!!!!

ごとーの起こした烈風は、室内のありとあらゆるものを震撼させる。
机の上の書類は舞い上がり、椅子は壁に激突して音をたてた。
あくまで中〜遠距離を保つんだ!!
ほんの僅かな風をも集めて、空気の渦を作り近づけないようにするッ!!
敵は恐らく一撃必殺!!それを狙ってくるに違いない!!!
だから風で距離を置きつつ翻弄して…派手に『神砂嵐』を決めてやるんだ!!
弓と矢はその後でいいッ!!!


469 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/26(木) 04:54:31.50 0

「凄い風圧や…近づけへん。なんちゅー原色ギャルや…せやけどなァッ!!!!」

風を正面から受けている寺田が、スタンドの両の腕を掲げた。
そして、その両手は眩いばかりに光りだす!!
な、なんだ…何をするつもりなんだ…!?

「あの頃のオーラはなくなったなぁ後藤!!!例えるなら牙を抜かれた犬や!!!
気迫も伝わって来んでぇーッ!!伝わって来ない来ない来ない来ない来ないィィイッ!!!!」

「みょ…妙な動きを見せるんじゃあねぇぇぇぇッ!!!」

「Bye-Bye」


コンッ!!!


そう言って、寺田は…
すぐ側の机を軽く叩いた!!!…そう思った。
いや、ごとー自身もなんて説明すればいいのかわからないんだ。
ただ…アイツが叩いたと思った机がどこにもないんだ…ッ!!


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



470 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/26(木) 04:56:03.67 0

これが…寺田のスタンド能力?
けど、今アイツは何をしたんだ?
叩いたと思ったら、その机はなくなっていたんだ。
ごとーは自分が知っている範囲でいろいろな『可能性』を考える。
新参の久住小春は、ものを『分解』して一時的にこの世界から消せるとい
話を聞いているが、コイツもそれと似たような能力なんだろうか?
いや、基本的にはまったく同じ能力を持つことは有り得ない。スタンドとは、
それぞれの操る人間の精神のビジョンだからだ。精神構造がまったく同じ
人間など二人といないんだ。まれに例外もあるようだけど…
くッ…わからない!!ただ、一つだけごとーがわかっていることといえば…
机がこの部屋から一瞬で消失したということだけだ!!!


ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!


471 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/26(木) 04:57:01.18 0

「…なんや?顔色が悪いで後藤。こんな強い風の中で、そんな冷や汗かいて
もうたら確実に風邪ひくと思うけどなぁ」

「あんた…何で…」

「あン?なんや?」

「なんで…なんでスタンドを引っ込めてるんだよォォォッ!!!!!」


ごとーの方は、依然風を起こすのを止めてはいない。
起こしている風がごとーの前髪を跳ね上げて、嫌な汗を冷やしていく。

『殴られたら、すべて終わりや』

この言葉が頭から離れない!!
まさか…もう攻撃は終わったとでも言いたいのか!?


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…



472 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/26(木) 04:58:23.18 0

「そうやな、あと…10秒、いや5秒くらいか」

寺田が腕時計に目をやった。
5秒…?
一体なんの話だ?

「実を言うと俺な、うまくスタンド使いこなしてないところがあってなw『じっくりと
やれば』調整できるんやけど、咄嗟に使うとどうもそういった計算ができん」

じっくりやれば?
計算?

「いったい…何を言って」

その時だ!!!
一瞬にしてごとーの起こしている風のノリが変わった!!!
その原因は、運良く視野に入ったのですぐに反応することが出来た!!!

「んぁあああああああッ!!!!!!」

机が…さっき部屋から一瞬で消えた机がごとーの風に流されてこっちに飛んできた!!!
これは…いったいどういうことなんだ!?
消えた机がいきなり現れるなんて…ッ!!!!


473 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/26(木) 04:59:21.47 0

「ぽぁああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」


ズバアアアアアアアッ!!!!!!!


スタンドの槍で激突しかけた机を真っ二つにし、ギリギリで難を逃れる。
危ない…いくら物理的攻撃はスタンドに通用しないとはいえ、こんなもんが
生身のごとーに当たったら大きな隙が生まれてしまうぽ!!!その隙をつかれて
接近されたらマジで危険だった…!!!
しかも、これでまた余計にわからなくなったよ。
消えたハズの机がなんの前触れもなく再び現れるなんて…ッ!!


『殴られたら、すべて終わりや』


裕ちゃん…それはいったいどういう意味なの…?


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


521 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/27(金) 03:35:31.05 0

「な〜る…あのくらいの強さで叩けば5秒後にはそこに行くことになっていた
わけやな。ふむふむ、理解したわ」

寺田が一人で納得している。
あのくらいの強さで叩けばそこに行くことになっていた…だって?
真っ二つに切断した机は、引き出しの中身をぶちまけて、派手に床に落ちて砕けた。
いろいろなものが床に散らばっている。
万年筆、名簿、CDケースに汚れたCDウォークマン、レポート用紙、
その他もろもろのガラクタ…

「こ、これは…!!!」

そして、その中にごとーが追い求めていた物もあった。
今の衝撃で折れてしまった弓と…奇跡的に無傷だった矢だ!!!
矢のやじりのもどりの部分が欠けているが…これは今欠けたものではないと思う。

「後藤…お前は俺を倒し、その矢を破壊しにきた…そうやな?」
「ふん、だったらどうするの?」

なんて、強気に答えてみせる。
そうでもしていないと、ヤツの圧倒的な精神力に飲み込まれそうになるからだ。
そんなごとーに向かって、寺田は予想だに出来ないセリフを吐いた!!

「ぶっ壊したかったらぶっ壊してもいいねんで?その『矢』をなぁ」
「えッ!?」

なんだって!!?
『矢』をぶっ壊してもいいだなんて…どういうこと!?


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


522 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/27(金) 03:39:31.01 0

「なんでそんな顔してんねや。口が開きっぱやで?」

「あんたは…あんたの考えていることはまったく理解できない…一体何を
企んでいるの?これを壊せば、あんたはもうスタンド使いを増やすことはできなくなる…」

「なんか勘違いしとらへん?俺がなんの目的もなしにスタンド使いを増やしていたと
思うとるんか?」

「…それはどういうこと?」

「目先のことしか見えとらんお前に説明してもわかるんかな?」


この男、それじゃあ一体なんの目的でスタンド使いを集めているの?
待てよ…冷静になって考えるんだ。
スタンド使いを集めるだけなら、何も演劇部に限定しなくてもいいはずだ。
誰でもいいハズなんだ!!
けど、それをしないのは何故か…
ふと、よっすぃが昔この部活のことを『組織』って解釈をしていたのを思い出した。
なるほど…顧問という立場を利用して上下関係を作り出しやすくしているのかな…?
それに、二次審査ってのも考えてみれば奇妙だ。
スタンド使いを増やすだけなら、二次なんてものはいらないんだ。ごとーは一次とか
二次とかよく知らないけど、スタンド使いになった時点で才能は開花したことになる。
審査落ちとか、意味がわからない。
こいつ、ホントに何を企んでいるんだ…?
二次審査に受かった人間と落ちた人間の差っていうのはなんなんだ…!?


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


523 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/27(金) 03:42:28.93 0

「俺はすでに最強の『尖兵』を手に入れている」
「なんだって!!!?」
「せやけど、アイツはまだ自由にその能力を使いこなしておらへん。忠誠心も
ほとんど感じん。だが、もしその力を自由に使いこなし、尚且つ俺の考えを理解して
ついてこれるようなら…この町の未来は保証されたようなものや」

この町の…未来?
この町の未来といったのか、この男は。
それに『アイツ』って誰?
寺田光男…あんたはいったい何を考えているんだ!?

「しかし…どうにも不安定な保証なんや、今は。なにがキッカケで崩れ落ちるか
わからん。人間、些細なキッカケでガラリと考え方を変えてまうからな。
そうそう、そうや。久住なんかがいい例や。あいつは小学生の頃に心に大きな傷を
負ったらしく…って、久住を知らんお前にこんなこと語っても時間の無駄やな」

とにかく…と付け足すと、寺田の背後にヤツの名も知らぬスタンドが静かに現れる。
何かしかけてくるぽ…やばい!!!

「アイツに敵に回られると、とんでもないことになる。アイツをスタンド使いにした
俺がこの町の首を締めることになってしまう!!!そして後藤、お前にはアイツを
唆すだけの強い影響力を持っているんや!!!ほれ、早くその矢を拾えや。
ぶっ壊しに来たんやろ?気が済むまで壊すといい。だがな、お前が俺を討つと
決心をした以上は…」

そう、寺田が言いかけた瞬間。
ごとーは自分の目を疑った。
そんなバカな…寺田が…


寺田が消えた!!!!


524 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/27(金) 03:44:58.31 0

おかしいッ!!
ごとーは今、ヤツをずっと睨んでいたはずなのに!!!
瞬きするより早く、この部屋から音も無く消えるなんて…いくらごとーが風を使って
部屋を荒らしたからといって、一瞬で隠れる場所なんてないはず!!!

「ハァーッ!!!ハァハァハァハァッ!!!!!!!!!!」

呼吸が荒くなる!!
恐怖しているのか…このごとーが!?
し、しっかりしなくちゃ!!気持ちで負けるわけにはいかないんだって!!!

「ゴシップ・セクシーGUY!!!」
ドヒュン!!ビュルオォォォォォォォ…

スタンドが起こしていた風を微風にして、部屋の状況を探る。
寺田がどこかにいるとしたら、風はヤツの体温の影響で表情を変えるんだッ!!!
風の動きを読み!!空気の囁きを聞き!!
レーダーのように寺田の呼吸のうねりをとらえる!!
これで捜し出すんだ…落ち着くんだよ、ごとー。
大丈夫、きっと大丈夫…ぜんぶ自分次第…ッ!!!

「…な、なんで?」

そう思ったのもつかの間、ごとーは驚愕した。
ばかな…風が…風がまったく表情を変えない!!!
この部屋から、ごとー以外の人間の気配が…呼吸が感じられない!!!!

「そんな…風は嘘をつかない…この部屋に寺田はいないッ!!」



525 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/27(金) 03:46:26.48 0

ビュオッ…

その時だ。
突然、ごとーの背後の風が変わった。
人の気配を感じたんだ。

「ん〜いい感じや。ちゃんと計算すれば思い通りに『辿り着く』ことができる…」

て…寺田!!!
なんなのよこれはァーッ!!!!!
風は今、二人分の呼吸を感知している…こいつ、今の今までどうしていたんだ!!
呼吸を止めていた?いや違うッ!!!なら体温で感知できる!!!
だとすると…もはや、この部屋から消えていたとしか思えない!!!!



526 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/27(金) 03:47:30.87 0

「俺がここに来るまでに矢は破壊しとらんかったか…最大のネックは、自分に使った
場合はそれまでの時間に起きた状況を知ることができないこと…」

寺田のスタンドの両手が光りだす。
『殴られたら終わり』の攻撃がくる!!!

「まぁ、さっきの続きや。お前が俺を討とうとした以上は…向こうへ
消えてもらう!!!!!!!!!!!!」

「んぁあああああああああッ!!!!!!寺田ァッ!!!!!!!」


寺田が両の腕を振り上げた!!!
攻撃を避けるか!?いや間に合わない!!!
この光る拳で殴られたら…ごとーはどうなる?



死ぬの?



「うわあああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」



527 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/27(金) 03:48:52.05 0

そこからは無意識だった。
迫り来る寺田のスタンドを前にして、ごとーは逃げることはしなかった。
出来なかったといえばそれまでだけど…ごとーの黄金の意思がそれを許さなかったんだ。
そういうことにしておきたい…いや、きっとそういうことだったんだ。
だって、ごとーには闘志と正義の心があったんだもの。

逃げるわけには行かない。
ごとーが杜王町を守るんだ。
この町の未来を…みんなの未来を!!!

我に返ったとき、ごとーのゴシップ・セクシーGUYは、ヤツに向かって両腕を向けていた!


「おぉぉぉッ!!!必殺流法<神砂嵐>ィッ!!!!!!!!!!!!!!!」

ギャロンギャロン…ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!


ごとーのスタンドが作り出した風による圧倒的破壊空間は、ごとーの足元から
寺田の立っている場所まで、すべてを抉り取るかのように粉砕した。
その際、足元の『弓と矢』が歯車のような空気の流れに巻き込まれて砕け散った。

間に合った…寺田の攻撃を受ける前に…ごとーの<神砂嵐>は間に合ったんだ!!!


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!



528 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/27(金) 03:50:23.94 0

寺田はどうなったんだ…?
<神砂嵐>の回転圧力が生み出した真空の刃にズタズタにされて、
そこに倒れている…ハズなんだけど…

「い…ない…?」


「<神砂嵐>か…柱の一族である風の戦士が闘技として使っていた必殺奥義やな。
後藤、見事だったで。死ぬか思た…」

寺田は、部屋の隅で壁に持たれかかっていた。
多少、風の影響で切り傷を負ったみたいだけど…どれも浅いようだ。
あの状況で、ごとーの<神砂嵐>をかわすなんて…有り得ない!!!
瞬間移動でもしない限りは…ハッ!!!
瞬間移動…?
もしかしたら、それに近いものなのか?
でも、瞬間移動だとしたら消えてから現れるまでのタイムラグはなんなのか…
待て…待つんだよ!!!
もしかして、ごとーはほとんど答えに近付いているんじゃあないのか?
お、思い出してみるんだ!!!
机の時も、神砂嵐の前も、その後も…!!!!


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



529 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/27(金) 03:52:01.56 0

「なんや、急にしゃがんだりして?」
「これを…拾っていたぽ」

つまんだ鉄クズの破片を寺田に見せ付ける。
これは…紛れもない…

「砕け散った矢の破片…?後藤…貴様、何を考えてるンや?」

「もしごとーの考えてる通りだとするなら…今のごとーではアンタにうち勝つことは
難しすぎる話だぽ…だから今は退かせてもらう。目的の一つでもある『弓と矢』の
破壊も出来たからね…それがアンタにとって痛手になったのかはわかんないけどさ、
これでもう無駄にスタンド使いが増えることはない…」

そう言いながら、ごとーは改造したセーラー服の内ポケットに『矢の破片』をしまった。

「その『矢の破片』…どうするつもりや」
「わからない…けど、矢がごとーを呼んでいる気がするんだ。自分でもわからない、
奇妙なことだけど…でも、例えアンタにとってもう必要ないものだったとしても、
これは寺田、アンタの側には置いておけない」

「…置いておけないかァ。お前まちがっとるよ、マジで。だって俺はな…」
ドギャン!!!

寺田が壁から離れ、スタンドを発現させた!!!

「お前を今ここでここから消し飛ばすつもりなんやからなぁぁぁッ!!!!」


ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンンッ!!!!!



530 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/27(金) 03:54:37.03 0

「<横浜蜃気楼>!!!」


ゴシップ・セクシーGUYの身体から水蒸気が発生し、それがウズを巻いてごとーと
スタンドにまとわり着いていく。
光の屈折現象だぽ…ゴシップ・セクシーGUYの作り出した水蒸気のウズは
風のプロテクターとなって、太陽光線を屈折させ、ごとーを光の当たらない体にした。
よって、ごとーの身体は透明のようになる!!!

「な、なに…見えないやとッ!!逃げるンやないで後藤!!!!!!」

「また来るからね…寺田光男!!!」

そういい残し、透明になった身体で窓を開けるとそこから外へ飛び出した。
この能力はあまり長い時間持続させることはできないんだッ!!
ちょっと怖いけど…ごとーの風を使えばこの高さでもなんとか着地できるだろう。
今、最も近い逃走経路さ…

さて、謎はまだ多いけど…絶対にアンタを討ってやるから!!
この後藤真希がね!!!


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!



531 :1 ◆I7CTouCqyo :2006/01/27(金) 03:57:19.03 0

「チッ…まずいな。今!!後藤を逃がすわけにはならん…ヤツが俺をやりにきたと
いうことは…少なからず『アイツ』に影響を及ぼしてしまう!!!もし、アイツが
敵に回ってもうたら…この町は…」

「なんだかでっけー物音すんなァと思ったら…なんネ?これは…」

「高橋…」

「寺田のおっさん、どうしたんだァ?この部屋の有様…それにアンタのケガも。
後藤真希ッスかね?ってか、それしかないカァ??」

「緊急事態や…ヤツを追うンや!!」

「…どういうことかネ?」

「説明してる時間はあらへん!!そうやな…新垣と小川、それに紺野も呼べ!!!
四人でアイツを確実にしとめるんや!!!ええか?失敗は許さへんぞ!!!
この町の…未来がかかっとるんやからな!!!!!!!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



TO BE CONTINUED…