359 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/02(金) 15:08:17 0

銀色の永遠  〜evergreenとReal Me〜


「えーっと…『eel』。読みは『イール』。意味は『ウナギ』だろ…よし合ってる」


まさか、このあたしがバスに乗りながら単語帳をペラペラ捲ってるなんてな…
これでメガネでもかけりゃ、どっから見ても『出来る女』だぜ。
ま、この手作りの単語帳はあたしが作ったんじゃなくて、亀井が高校受験の
勉強のときに使ってたらしい『お古』なんだけどな。
亀井…亀井かぁ・・・

その日の放課後、あたしは真っ直ぐ家に帰らず、普段あまり乗ることのない
バスに乗って、ぶどうヶ丘総合病院に向かっていた。
ちょっと、ある人と会わなきゃならなくてさ。


「次は…『duel』?デュエル?あれ、これれいなのスタンドと同じ名前じゃん。
あ〜…これなんて意味だったっけ…あぁ、『決闘』ね。決闘…よし」


でもさ、英語の勉強ってなんか違うよなぁ。
そもそも語学ってのは勉強して身に付けるもんではないと、この藤本美貴は思うわけ。
現にあたしの話している日本語は勉強して見につけたもんじゃないし、別に外人と
話そうと思えば、あたしってけっこう話せるほうなんだよ。
でも、こうかしこまって勉強するとダメだな。覚えらんねーや。
英語って数学とかと違って、頭で理解するより心で理解するもんだと思うんだよなぁ〜。



360 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/02(金) 15:10:16 0

「次はっと…『refrigerator』。なんだこりゃ、全然わかんね。何々…
読みは『リフリジーター』、意味は『冷蔵庫か』…ん?りふりじーたー?」

なんか変じゃないか?
スペルが長い割りには読みの文字数足りない気がするんだけど…
ま、いいか。


「おいキミ。勉強するのはいいが静かにしてくれないか?こっちは取材で疲れてるんだ。
落ち着いて本も読めない」

「あ、はぁ…すいませんッス」

「あぁ、わかればいいんだ」

やべやべ、前の座席に座ってる変な髪形の兄ちゃんに怒られちまったよ。
あたしってばそんなにうるさくしてたのか。
まぁいいや、勉強の続き続き。
あたしには後がないんだ。

「『skyscraper』…こらまたなっげー単語だな。えっと、読みは『スカイスクレイパー』。
意味は『摩天楼』…」

「…おい、ぼくの言ってる事がわかってるのか?静かにしてくれと言ってるんだぜ?」

「あ、ごめんなさい。気をつけます」

やっべ、また怒られちまったよ。
そんなに大きい声出してたのか、あたし。
まぁいいか、勉強しなくちゃ。



361 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/02(金) 15:11:34 0

「『jealousy』…あ、これわかる。読みは『ジェラシー』だったな。意味は…」

くるっと、前の座席の兄ちゃんがこちらを向いた。
やべ、またなんか言われる。


「キミ、こんな諺を知ってるかい?『仏の顔も三度まで』って諺だ」


「はぁ…『二度あることは三度ある』って諺なら知ってますけど」


何を言われるかと思えばそんなことかよ。
今は古典の勉強なんかしてる場合じゃないんだよなー。
あたしが危険なのは、現状ではとりあえず英語だけなんだ。
古典もギリギリだけど、まだなんとかなるし。
さて、英単語の続きっと…
あたしは再び単語帳に目を落とす。


「わからないなら教えてやるよ…ヘブンズ・ドアー(天国への扉)ッ!!!」


ドォォーン!!!!ピシィッ!!バラバラバラ…





362 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/02(金) 15:14:29 0

「…!?」
あれ、あたし今なにしてたっけ?
疲れてンのかな。勉強のしすぎかな…なんちゃってw
ささ、ふざけてないで勉強するか…

「…ん?」

なんだか急に勉強する気が失せてきたな。
やる気をなくしたわけじゃない。
今は勉強しちゃいけない気がしてきたんだ。
少なくとも、このバスを降りるまでは勉強しちゃダメな気がする。

『次は、ぶどうヶ丘総合病院前。ぶどうヶ丘総合病院前でございます』

あ、もうすぐ着くじゃん。
あたしは財布からバスカードを出して立ち上がる。
そうだ、前の座席に座って本を読んでる変な髪形の兄ちゃんに謝っておこう。
なんか迷惑かけちまったみたいだからな。

「あの、うるさくしてすみませんでした」

「わかればいいのさ。しかし意外なこともあるもんだな、キミのおかげで
いい体験が出来た。キミがぼくの敵に回らないことを祈ってるよ。と言っても、
もう書いておいたけどね」

「・・・・・・・・は?」

世の中、変なヤツって多いもんである。
バスを降りると、どういうわけかまた勉強しなくちゃと焦り始めてきた。
あたしはカバンの中から単語帳を取り出すと、病院までのちょっとの道のりを
ブツクサと単語の詠唱をしながら歩いたのだった。


406 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/03(土) 09:37:32 0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ぶどうヶ丘総合病院 533号室

一人ぼっちってつまんない。
テレビではドラマの再放送を毎日やっていたけど、あたしが見ていたドラマは
昨日でお終い。今日は穴埋めとして水戸黄門が二本立てで放映されている。

「あーあ、つまんない。やんなっちゃう。誰か抱きしめてくれないかしら」

まぁそんな生活ももうすぐ終わりよ。
もうすぐ退院できそうなの!!!
大事な高校生活、それも二年次という青春の一ページを病院でほとんど
塗り固めてしまったあたしだが、もうすぐ学校に行けるのよ!!!

コンコン…

誰かしら?ドアをノックしたヤツがいるわ。
あたしを置いて退院しちゃったあの二人かしら。

「どーぞ」

「おーっす」

「げ」

あたしの病室に入ってきた人物を見て、あたしは驚いた。
ミキティ…藤本美貴!!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



407 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/03(土) 09:39:34 0

「『げ』じゃねえよ。しばらく振りだなァー。傷の具合はどう?」

な、なんであんたがここに来るのよーッ!!
彼女からあたしに会いに来るなんて、何ヶ月ぶりだろう?
つーか、入院直後に『二次審査の合格』告げた時ぶりくらいじゃないかしら。

「おいおい、なんか言ってくれよな」

「いや、正直驚いているのよ。まさかあなたがお見舞いに来るなんて思わなかったから」

「なんだよ、美貴はそんな冷たい人間だと思ってたの?」

ええ、そうよ。
今の今までお見舞いなんか来なかったくせによく言うわよ、まったく。
まあいいか。この子にぶっ飛ばされたことは正直忌々しいけど、その気持ちだけは
ありがたく受け取っておこう。

「ところで梨華ちゃん。お腹空いてない?ん、これ安倍さんにお見舞いでもらった
りんご?美貴が剥いてあげようか?」

「え?」

「あ、それともこっちの桃にする?え、腹減ってないって?じゃあ肩揉んであげよっか?」



408 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/03(土) 09:40:45 0

…おかしい。
ミキティの様子がおかしすぎる。
明らかに不自然で気持ち悪いし、顔は笑っているが目は笑っていない。
こ、この女…ぜってェー何か企んでるわ!!!


「あーもうッ!!出血大サービス!!!お背中かいかいしてあげちゃう!!!」

「…あんた、なんか目論見があってここに来たわね」

「うッ!?」


どうやら図星だったようだ。
ミキティは騒ぐのをやめると、大人しくストンとベッドの脇にあるイスに腰掛ける。
そして、こんなことを口にした。


「わりぃ、指令代わって」


ドオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!



409 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/03(土) 09:42:47 0

な、なんですって…?
こいつ、今あたしに向かってなんて言った?

「なぁ、あんたしか頼める人いないんだよ。あ、これなんだけどさ」

頼んでもないのに、ミキティはその紙を広げ、あたしに突きつけてくる。


     吉澤ひとみ、藤本美貴、久住小春の三名に命ずる。
     街を飛び交うカラスを再調査せよ。 
   
     尚、スタンド使いと認知できた場合、捕獲すること。

                                 寺田      


「ってなわけで頼んだ。じゃ」

「なにが『ってなわけで頼んだ』よ!じゃ、じゃないわよッ!このデコッぱち!!
あんたね、あたしは病人なのよ!?ようやく退院できそうだってのに…ッ!!」

「おぉッ退院出来そうなのか!!!よかったじゃん!!いやーなんだか
あたしまで報われてきたぜ。今度ジュースでも奢ってやんよ」

「話を逸らさないでッ!!!!」



410 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/03(土) 09:45:05 0

何を考えてるんだこの女はーッ!!!
この子には人を貴ぶ気持ちはないっていうの!?
それに…何よ、何なのよこの指令はッ!!
要は『カラスを捕獲しろ』ってことでしょ!?
なんで以前と同じ指令が下るのよ!!!
大体、あたしの入院期間を延ばしたあのクソ腹立たしいカラスは『さゆのウサギ』が
偶然出会い、殺したらしいって報告があったじゃない。
アレはなんだったの?


「梨華ちゃん…別にあたしは指令がだりーとか、そういうんじゃないんだ。
あたしな…後がないんだ。マジで部活どころじゃないんだ」


もっぱら普段部活に出てないって噂の女が言うセリフではない。
だけど、その声の重さは海よりも深いものがあった。


「でな、今だってこうやって…ホラ。亀井から譲ってもらったこの単語帳で
勉強してるんだよ…ん、亀井といえば」

「そんなこと言われても、あたしだってようやく退院できる身なのよ?
余計な波風は立てたくないわね。誰か他のメンバーに…」

「…つーか今思い出したんだけどさ。梨華ちゃん、一人でしたことある?」

「えッ?」


411 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/03(土) 09:46:21 0

一人でしたこと?
何を?
あたしは瞬きしてミキティに知らせた。
その心は『何の話なんだかわからない』よ。


「…あーめんどくせ。ハッキリ言うよ、ズバリ聞くけどオナニーよ。したことある?」

「4714!!あんた純真な乙女になんてこと訊いてるの?」

「…そうか、そうだよな。まぁ今の話は忘れてくれ。で、指令代わってくれんの?」

「コロコロと話変えないでよ!!代わるわけ…ん?」


その時、掛け布団の上で何かチョロチョロと視界に入るものに気付いた。
とても目障りで気分の悪い動きだ。
気になるのでよく見てみる。
足が八本、目が六つ!?
これは…これはまさか…!!!

「クモだわ!!!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


412 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/03(土) 09:47:53 0

「え、なんだって?」


黒いクモ!!
大きさはそこまでじゃないけど、見た目だけで破壊力は十分だった。
き、気持ち悪いッ!!!


「いやぁッ!!!!」


掛け布団を上ってくるので、あたしは思わず身を捩る。
すると、クモが反応してピョンと跳んだ。
ミキティの方へ。


「うわぁぁ!!!」


ミキティが慌ててそいつを叩き落そうとするが、クモは思ったより頑丈なやつで、
振り払うミキティの手に難なく着地したのだ。
そして…



413 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/03(土) 09:49:43 0

ヂクゥッ


「いてえ!!噛まれたッ!!!こいつ毒グモだぞッ!!!!」

クモはその一撃で満足したのか、ミキティの手から窓に跳び移り、
そのまま外にとびだして行った。

「こ、これやべぇかな?」

「さぁ?大丈夫?」

自分では大丈夫?とは言っているものの内心は『ザマミロ&スカッと爽やか』の笑いが
出てしょーがないといったところねw
自分に与えられた仕事を自分勝手に人に押し付けようとするからバチがあたったのだ。
神様が怒ったに違いないわ。


「ちょ、ちょっと手ェ洗ってくる!!!」


ミキティは立ち上がると、足早に病室を飛び出していった。

こうして、退院間近にしてあたしは再び災難に襲われることになる。

584 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/06(火) 02:40:32 0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

便所のトイレでクモに噛まれた手を洗う。
ったく…マジで気持ちわりーよ!!!!
でも、噛まれただけみたいだな。クモって刺したりはできないらしい。
そーいやクモって英語でなんつーんだっけ?
まぁいいや、さっさと代理頼んでズラかるとすっか。
梨華ちゃんとはあんま長く一緒にいたくない、どうも生理的に合わねーみたいだな。

五階のトイレが清掃中だったので、わざわざ四階まで降りてきていたあたしは、
五階へと続く階段を上りながら英単語のスペルを思い出していた。

「えっと…窓のスペルは『window』で合ってるハズ。ガキさんが『<indo>を<w>で
挟めばいいのだ』って言ってたよな。確かに…覚えたぞ」

ブツブツ…
端から見たらおかしいヤツだと思われそうだ。

カツカツカツ…

階段を上る。
そして中間の踊り場で180度進路変更、また階段を上る。

「・・・・・・?」

視界は天井だった。
一瞬、何が起こったのかわからなかったが、すぐに自分の置かれている状況に気付いた。

…倒れたのか?あたしは…?



585 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/06(火) 02:42:08 0

どうやら後ろにひっくり返ったようだった。
今にして思えば、躓いたならともかく何故なにもない階段で後ろに倒れたことを
疑問に思わなかったのか…まったく、らしくない。

「勉強のしすぎで前よく見てなかったかな?なーんてなw」

そんな能天気な自分がそこにいた。
あたしは再び階段に足をかける。
一段目…

スッテーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「・・・・・・・・・・・・・え?」

あたしの目には、病院の汚らしい天井が映っていた。
どうしたんだ…何してんだ。
あたしは起き上がると、もう一度、今度は手すりに掴まって階段を上る。
一段ずつ上って…

ドシャアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!


「な、なにィーッ!!!?」

またひっくり返った自分がいる!!
の、上れない!?
階段に上れない!!!!!
あたし…どうしたんだ!?

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッド…


586 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/06(火) 02:43:42 0

シャカシャカシャカシャカ…

仰向けに倒れているあたしの耳に、なにかを擦り合わせているような音が聞こえてきた。

シャカシャカシャカシャカ…

ど、どんどん近づいてくるようだ…

シャカシャシャカシャカシャカシャカ…

なんだよ…この胸糞悪くなる気持ちわりー音はよォ…ッ!!!
あたしは音のする方をチラリと見る。
すると…そこには…


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


『ウジュルウジュル』

く、クモだ!!!!!!!
しかも緑色で、超でっかいヤツ!!!!
毛の生えた足!!膨れた腹!!!身の毛も弥立つ縞模様!!!
そして…獲物を狙うたくさんの目!!


「な、なんだこいつはああああああああああああああああッ!!!!」



587 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/06(火) 02:45:18 0

その緑色のでかいクモは今し方あたしが上ってきた階段の手すりに足を絡めていた。
まさか…シャカシャカって音はこいつが…ッ!!!


「撃滅!!!!!!!!!!」


声が聞こえたかと思うと、そいつがあたしに飛び掛ってくる!!!
毛の生えた長い八本足であたしを捕獲しようとしているかのようだった。
まさか…この巨大グモはあたしを…!!?

「うわああああああああ!!!!!!!!!!!!」

クモの腹が迫ってくる!!
毛の生えたきッたねェ足があたしに触れようとしているッ!!
さ…さ・・・・・さわんじゃねえええええええええええええええええええッ!!!!!

「ブギートレインッ!!!!!!!!!!!!!」

パキョパキョパキョッ!!!!!!!

スタンドのラッシュをクモの腹に決め、吹っ飛ばした!!!
あたしに殴られ宙に舞い上がったクモは空中で体勢を立て直すと、
その長い足で壁にへばりつく。
その時、あたしは気がついた。
クモの背中に、女子高生が掴まっていることに。

「て…てめェッ…」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド


588 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/06(火) 02:47:08 0

「お前…ぶどうヶ丘高校の生徒じゃあねーなァ!!!」


クモに掴まってるそいつを指差し、あたしは怒鳴った。
こいつスタンド使いだ!!
その気持ちわりぃ緑色のでけぇクモがスタンドだな!!!


「あたしゃ他校のヤツに恨み買われるよーな事した覚えはねーぞ!!」

「キミが藤本美貴であってる?」


質問を質問で返されたあたしは呆気にとられてしまう。
なに…?
コイツ、なんであたしの名前を知っている…ッ!!?
つーかよ…なんだかあたし、この制服に見覚えがあるぞ…ッ!!


「キミが藤本美貴で合ってるか訊いてるんだけど」

「だったらなんだってんだ?それにお前…いったい誰だ?」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



589 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/06(火) 02:48:22 0

こいつとは初対面だ。
だけど、その制服には見覚えがある。
制服には、こいつなりの改造(クモの巣がプリントされていたり、カラーの部分に金色の
クモのピンバッチがついていたり)が施されているが、この制服の基本的な形は
どっかで見た事がある気がするんだ。

「ボクはね…あ、戻ってきた戻ってきた」

『ボク』だぁ〜!!?
女のくせにボクとかいって…なんだか亀井みてーなヤツだな。
きもちわり。
そいつの視線の先には、天井を這う小さなクモがいた。

「あ、あれはッ!!」

間違いない!!さっき梨華ちゃんの病室であたしを噛んだ黒いクモだ!!!!
そのクモはジャンプすると、その女の手に飛び乗る。

「この子『アカネ』っていうんだ。小さくて可愛いでしょ?」

「まさか…そのクモはお前の…ッ!!!」

そいつは黒いクモを、掴まっている緑色のでかいクモの額に乗せる。

ズキュゥゥゥゥゥゥゥゥンンンッ!!!!!!

小さなクモは大きなクモと同じ色に変わり、額の飾りと化した。


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!


590 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/06(火) 02:50:33 0

「自己紹介が遅れたね…ボクの名前は高橋瞳。キミがあのクソッたれ上戸を
ぶっとばした藤本さんでいいんだよね?間違えたらどうしようかと思っちゃったよ。ウン」

クソッたれ上戸…そうか!!思い出したぞ!!!
こいつの制服…転入してきたばかりの上戸が着ていた制服と酷似しているッ!!!
まぁアイツの制服はブリブリな改造だったが…

「てめー…S市からわざわざ来たのかよ。仇うちか?」

「とんでもない!!!」
言いながら、高橋瞳と名乗った女が首を振った。

「キミには感謝しているよ…キミが上戸をぶっとばした事は風の噂で聞いている。
ボクね、上戸の能力に勝てなかったんだ。スーパー女子高生のこのボクが!!!
左手の生爪五本も剥がされたんだよッ!!!おかげで生えてきた爪が歪になって
しまった。悲しかった…」

「…じゃあ何が目的なんだよ」

「ボクは上戸にリベンジするつもりだったのさ。あの小汚い便所バエみてーな
口から一泡吹かせてやりたかったんだ。でも、その上戸はキミにボコされた。ボクは
上戸を超えなければならないんだ。悲しくて涙流しても、いつか輝きに変えて…」

「お前、なに考えてやがんだ…?」

まさか…こいつ…
高橋瞳は目つきを変えて鋭く言い放つ!!!

「上戸を超えたキミを超えにきた。そうすれば上戸を超えたことになる…ッ!!」

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…


591 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/06(火) 02:53:33 0

ふざけたことぬかしやがって…何であたしがそんなもんに付き合わなきゃなんねーんだよ!
あほらし、相手にしてられっか!!!!!

「あれ、どこへ行くの?」

「バカかオメー。他校の女の茶番なんかに付き合ってられねーんだよ、あたしはよォ」

ったく…最初はマジにビビッちまったよ、ありゃ子供だったら失禁してるぜ。
さっき手ェ洗うついでに小便もしといてよかった。
あたしは階段の一段目に足を乗せる。


スッテェーン!!!!!!


「うおぉぉぉッ!!!まただッ!!!!!」

このクモ女のせいですっかり忘れていたが、なんであたしは階段を上れなくなったんだ?
それを見て高橋瞳が高笑いする。

「アハハハッ!!無駄無駄!!無駄だよ!!!キミは『アカネ』に噛まれてる」

「な…に…!!?」


「キミはすでにボクのスタンド『evergreen』の毒に犯されたんだ。噛んでからなかなか
効力が発揮しないのがたまに傷だけど…スタンド毒は全身に回ったようだね!!!
ボクを倒さない限り、キミは二度と段差を上ることはできないッ!!!!!!!
やられないけどねェーッ!!!!!!!!!」



592 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/06(火) 02:55:17 0

す、スタンド毒だとぉぉぉッ!!!!
段差を上ることが出来なくなるってどういうことだ!?
つまり階段を上れなくなるってことなのか…?


「キミには上ることは許されない。下って下って、下るだけ…地獄の果てまでね」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


こっちは英語のテストのことで頭がいっぱいなのに…なめたマネしやがって!!


「だったらお望み通り、テメーをぶっ飛ばしてやるよ…!!!」

「お、やっとその気になった?」


「…おおおおおお!!てめー!!!あたしはもう知らんぞッ!!!!
ブギートレイン…オォォォォォォォォォォォォォォスリャアアアアアッ!!!!!」

プシュン…プシュン…



593 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/06(火) 02:56:32 0

あたしの雄叫びとは裏腹に、何か間の抜けた音がした。
おかしい、なんかおかしい。
なんだか闘志も湧いてこない。
マジでおかしいぞ、いつもと違う。


「ぶッ…!!!なにそのスタンド!!!!」


高橋瞳があたしのスタンドを見て吹きだした。
し、失礼なヤツ!!!
このあたしのイカした輝きを放つ銀色の『ブギートレイン03』を見て笑うなんざ…


「ああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!」


あたしの後ろに立っていた銀色の戦士は…輝きを失っていた。
そうだな、一言でいうと…


「ボロボロだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!!!!?」


ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!



666 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/07(水) 22:13:41 0

「なんじゃこりゃああああああああッ!!!!!」

あたしは自分のスタンドの変わり果てた姿に仰天した。
綺麗に輝いていた銀色は曇ってる上に所々錆びついてるし、肩や胴体の電車を
思わせる鎧はまるで廃車両のようだ。
ポイントとして身についてる時計の飾りは、長針が折れててイカれた時計と化している。
スタンドの全身には妙なヒビまで入っちまってるし…
こんなの、あたしの『ブギートレイン03』じゃない!!!

「どこでそんなボロボロにしてきたの?それとも元々そういうデザインなの?
…そのスタンド、ぶっちゃけ醜いよ」

「テメーに言われたかねぇッ!!なんで…なんでこんな姿に…ッ!!!」

かなり前にもこんなことがあった。
そう、あれはドゥ・マゴで三好絵梨香の攻撃を受けたときだ。
路地裏で発現させたあたしのブギートレイン03は、妙ちくりんな小さな紫の
球状物体群に食われて消えていた。
あれは確かアイツの相棒の能力だって言ってたような気がする。

でも今の状況は明らかにあの時とは違うッ!!
何か根本的なところからおかしくなっている!!!
スタンドとはそれを扱う人間の精神力のビジョンだ。
あたしの精神力が落ちぶれ腐ってしまったのか?
それとも…知らないうちにどこかでスタンド攻撃を受けてしまったのか…?
一体…一体どこで…


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



667 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/07(水) 22:15:00 0

「よくわからないけど、よくそんなスタンドで上戸に勝てたもんだね。
尊敬する…きっとキミは不屈の精神を持っているに違いない。けどね」

ワサッ…ワサッ…

クモの長い足が屈伸運動を始めた。
くる…何か仕掛けてくる!!!

「さっきキミがボクのスタンドの腹に決めた連続パンチ、蚊に刺されるほどの
痛みも感じなかったよ」


グワアアアアアアアアアアアアンッ!!!!


クモのスタンドが屈伸の勢いで跳ねて、あたしに飛び掛ってきた!!!
た、闘えるのかあたしは!?
あのでけぇクモの方に捕らえられたら、一体どうなるんだ?

こ…こいつはまずいぜーッ!!!



668 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/07(水) 22:16:18 0

「アハハハハハハハッ!!抹殺!!!!!!」


ドヒュンッ!!


その時、あたしの脇を何かが通り抜けた。
木の…人形?

ドシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!

「うげッ!!!」

どこからともなく現れた木の人形達が、高橋瞳の『evergreen』を上方へと弾き飛ばす!!
人形が五体!!五体いるぞッ!!!!
天井に激突する寸前で、クモのスタンドは体制を替えて天井にへばりついた。
高橋瞳もソイツに掴まりぶらさがっている。


「やれやれ、誰かと思えば上級生の高橋瞳さんじゃないですか」


「キ、キミは…ッ」

高橋瞳が一瞬狼狽した。
その女は、カツカツとローファーの踵で音を鳴らし、階段を上ってくる。
…ガキ?中学生くらいだろうか?
助けて…くれたのか?

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…



669 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/07(水) 22:18:08 0

「キミは…中等部の上原奈美!!なんでキミがここにいるッ!!?」

「そんなことあなたには関係ないんですよ…しかし驚いた。まさかあなた程の
スーパー女子高生と言われる人が、こんなとこで他校の女子生徒に
襲い掛かっているなんて」


なんだ?こいつら…知り合いか?
何がなんだかよくわかんねーけど…この隙にこの状況をどうするか考えるんだッ!!!


「ふん、どーせキミもボクと同じ考えのくせによく言うよ」

「見ず知らずの、しかも他校の生徒を攻撃してる暇なあなたと一緒にしてもらいたくは
ないですね。まったくもって心外だわ。私の狙いはただ一人…ここに入院している
上戸彩に復讐しにきたのよォーッ!!!!!」


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!



670 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/07(水) 22:21:08 0

こいつも上戸の知り合いか?
考えながら一部始終聞いていたけど…
上戸のヤツ、一体どんだけ恨み買ってるんだ?
まぁ、あの裏の性格を知ってるヤツはみんなムカッ腹を立ててると思うけどよ。


「バカちんだなキミは。動けないヤツをぶっとばしたって何も面白くないじゃん。
そんなのただの弱いものイジメだし!!スーパー中学生とは言われても
結局のところ所詮は厨房、まだまだ発想がアレだねバァーカ!!」

「なんですって!?」

「ボクは真の意味で超えるよ『上戸彩』をね。この藤本美貴を倒してさ!!!
だいたいキミは一度上戸に人形にされた負け犬じゃないか。そんなヤツが上戸を
超えるなんて無理無理無駄無謀ッ!!腹がよじれるよ…アハハハハハハハハ!!!!!」

「ぐ…ムカつくな…みんな戻ってきなさい!!『Real Me』!!!」

ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンッ!!!!


五体の木の人形が上原奈美の元に戻っていく。
こいつのスタンド、五体いるのか?
いや、違うか…五体で一つのスタンドなんだ!!!



671 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/07(水) 22:22:11 0

「…で、上戸のボケナルシストをぶっとばしたのはこの女なんですね?」


上原奈美があたしを指差して言った。
やべぇ、結局考えがまとまらなかった上に…なんか変な展開になってきてるぞ。
コイツ、何をしようってんだ?
ま、まさか…


「だったらどうするんだい?…ん、まさかキミ…ッ!!!」

「じゃあこの人は私がぶっ倒します。そして真の意味で上戸を超えてみせましょう」


ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!



672 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/07(水) 22:24:03 0

や、やっぱりィィィッ!!!


「ふざけないでよ!!これはボクが考えたことだ!!!キミは適当にそこら辺で
キモチわりぃギャル男でもつかまえて遊んでりゃいいんだよッ!!カエレ!!!」

「うるさいわね!!邪魔すんだったらあなたのその下品なクモの足、ぜ〜んぶ
引っこ抜いちゃいますよゴルァ!!!!!!!」


「…おいテメーら!!!!あたしを無視して話進めてんじゃあねーぞ!!!
上戸と何があったんだか知らねェーがなァ!!んなくだらない理由であたしを
狙ってんじゃあねぇーッ!!!」


あたしは二人を一喝した。
人をバカにするのもいい加減にしてくれ!!
なんであたしが関わりもないこいつらに狙われなきゃなんねーんだ!!!
それも上戸彩のことで!!!


「「…くだらない?」」


二人が声を合わせて言った。
やけにトーンの低い声だ。
あたりの空気が…なんだか変わってきている。
な、なんかやばかったかな…?

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



673 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/07(水) 22:25:14 0


「くだらない、か…確かにくだらないかも知れないですね…だけど!!!」

「これはボク達の誇りに関わる問題なんだ!!!迷いながら辿り着く場所を探し続け…
そしてその果てに辿り着いた場所はッ!!!」


「「藤本美貴!!!お前だッ!!!!!!!!」」


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!


状況は最悪な方向へ向かい始めた。
二対一…だとぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!!!!
こいつらはどうやら仲間同士ではないようだが…あたしをぶっ倒すという目的は
同じなようだ。
しかも忘れてはならないのが、高橋瞳のスタンド毒の影響で、どういう原理かは
知らないが、あたしは今、階段を上れない!!!!
唯一の逃げ道である下り階段には上原奈美が仁王立ちしている。
は、挟まれた…ッ!!!
万事休すってぇのは…この事なのか…?


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…



674 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/07(水) 22:26:07 0


「ミキティ?」


ふいにあたしのあだ名を呼んだヤツがいた。
それは可愛らしい声色で、だけどどこか音痴な感じがしそうな…
そいつは五階の柵から身を乗り出して、踊り場にいるあたし達を見下ろしている。
そう、そいつは…その女の名は…


「梨華ちゃん!!!!」


ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!


690 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/08(木) 05:14:45 0

「誰よ、その子たち。他校の友達?スタンド使いみたいだけど…」

梨華ちゃんが天井にぶらさがっている高橋瞳を見つめて言った。
こいつはラッキーだ!!


「いいところにきた!!梨華ちゃん助けてくれッ!!!!」

「え?」

「攻撃を受けているんだ!!階段を上れないッ!!!!」

「何を言ってるの?どういうこと?」


だああああッ!!もう!!!!
一から事の成り行きを説明してる時間はないのに!!!!!

「なんだ、仲間がいたのか…」

高橋瞳が掴まっているクモのスタンドの口がウジュルウジュルと動き出す。
気持ちわりぃな。


フシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウーッ!!!!1

「きゃああッ!!!」

梨華ちゃんが黄色い悲鳴をあげた。
クモが梨華ちゃんに向かってケツから糸を吐き出したぞ!!!
状況を知らない梨華ちゃんは、反応する事が出来ずに糸で雁字搦めにされてしまう。


691 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/08(木) 05:16:30 0

「うわあああああ何よコレはーッ!!なんかバッチィッ!!!!!!!!」

「『evergreen<グレイプ・ニール>』!!藤本美貴に使った子クモ『アカネ』の能力は
一人しかハメられないんでね!!!キミには恨みはないけど大人しくしていてもらうよッ!!」


な、なんだとぉぉぉぉッ!!
マジであいつ、役に立たねェ!!!!
あれで本当にエースだったのかよ!!!!


「よしッ!でかしたわ瞳先輩!!あとは私がゆっくりと藤本美貴を…」


上原が操る五体の木の人形『Real Me』が迫ってくる。
くそッ!!やるしかないのか!!!
このズタボロのブギトレでどこまで出来るか…わかんねェけどよォ!!!!!!


「やりなさいッ!!タクヤ!シンゴ!!ツヨシ!!ミホ!!ノリカ!!!!」


こ、こいつら全員名前あんのか!?
見分けつかないけど…全員ぶっ飛ばしてやんぞゴルァ!!!!!!!!


「おぉぉぉぉぉぉッ!!ブギートレ…」



692 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/08(木) 05:18:51 0

ドシャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!

「みぎゃああああああああああッ!!!!」

五体のスタンドはあたしの元には辿り着かず、本体と共に吹っ飛び階段から転げ落ちた。
高橋瞳が吹っ飛ばしたのだ。
クモのスタンドのケツから出した糸を利用して、まるでターザンのように上原奈美に向かって
一瞬のうちに迫っていき、その勢いで本体に蹴りを入れたのだ。

「何すんのよ!!」

階段の下から上原奈美が叫ぶ。

「何べんも言わせないでよ!!!こいつはボクの獲物だ!!!キミには引っ込んでいて
もらいたいッ!!!!上戸を超えるのはこのボクだッ!!!!!」

怒鳴りつけている高橋瞳をよそに、あたしは床にたれている金色の紐に気付いた。
その紐は、階段を伝って五階へと続いている。
…やってくれるじゃんか!!
あたしはヤツらに気付かれないうちに、紐をつかんだ。


「このドテナスビが…爪剥がされたぐれーで泣き叫んだくせに超えるだの
偉そうなこと言ってるんじゃないわよ!!説得力ねーんだよ!!!」

「うっせうっせボケ!!化粧ケバイんだよ!!その階段に足をかけるんじゃあねェッ!
ボクは上!!キミは下だ!!!それ以上グダグダとうるせーこと言ってるなら!!!!
テメーも瞬殺ッ!!!!!!!」


ドゴオォォオォォォォオォォォォォォォォォ…


693 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/08(木) 05:20:23 0



「ハァ…ハァ…それにしてもよく引き上げてくれたな…梨華ちゃん。どうやって
あのクモの糸から逃れたんだ?」

「あたしのスタンド攻撃は主に『切りつける』ものよ。糸を切り裂くなんて
ことぐらいワケないわ」


指や身体が伸縮自在な梨華ちゃんのスタンド『ザ☆ピース』。
さっきあたしを引き上げてくれた金色の紐は、ザ☆ピースの伸ばした腕だったのだ。

梨華ちゃんの病室に戻ったあたしは、床に尻餅をついていた。
イスに座ろうとしたらひっくり返ったんだ。
どうやら射程距離に関係なく、一度かかったら元には戻れないらしい。
おそらく、高橋瞳を倒すまで。
あたしは経緯を簡潔に梨華ちゃんに述べた。


「それにしても重かった…『ない』からもっと軽いかと思ってた」

「ん?何が『ない』って?」

「いや、なんでもないわ。気にしないで」




694 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/08(木) 05:21:27 0

とにかく、自分の力で階段を上ることは出来ないが、第三者の力を借りて
上に登ることはできるようだ。
つまり、段差を上らなければいいんだと思う。
坂道やエレベーターを使えば、上り下りは自由だと思うが…

だああああああああッ!!!ざけんなああああああっ!!!!!

なんでこの勉強に関して切羽詰まってる時期に、こんなめんどくせーことに
巻き込まれなきゃなんねーんだっ!!!
このあたしが珍しく勉強に精出そうと努力してんだぞ!?
これから先あるかないかわかりゃしねーことなによ…
神様も酷なことしやがるよ!!!


「で、スタンドはどこでそんなボロボロにしてきたのよ?」

「わかってりゃ苦労しないよ」

「あれじゃないの?さっきのクモ女の能力の副作用とか」

「いや、たぶんそれはねェ」


最初はそれかと考えたりもしたが、あたしのスタンドを見て高橋瞳は
驚いていたし、何よりボロさが半端じゃない。
そして実感としてあるのが…時間を戻せる気がまったくしない。
満月の流法すら危ういな。
あくまでこれはあたしの第六感が教える直感だが…



695 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/08(木) 05:23:01 0

「…これからどーするつもりよ。あの子ら、たぶんミキティを追って、
いずれここにくるわ」

「わかってる。まぁでもあいつらも仲間同士ではないみたいだし、ここは
とりあえず頼りたくはないけど、上戸に会ってあいつらの弱点でも聞き出そうかと
思ってんだけど…上戸ってどこの病室なの?」

「あたしが知るわけないじゃない。その上戸って子を再起不能にしたのあなたでしょ?
…まったく、攻撃されるのは勝手だけど、あたしを巻き込まないで欲しいのよね」

「えっ?」

「大体自分で巻いた種じゃないのよ。生えてきた雑草は自分で責任持って毟れば?」


むっかああああああああ!!!!!!
何こいつ!!ちょっといい気になってねーか!?
そりゃ、梨華ちゃんに助けられたのは事実だけどよ…こいつムカつく!!!



696 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/08(木) 05:25:03 0

「て、テメー…あたしが上品にかまえてりゃ言いたいこと言いやがって!!!
ナメてんじゃあないよッ!!!草むしりで話例てるみてーだけどなぁ!!!
わかりづれェーんだよ黒んぼ!!!そもそも別にオメーなんかに助け求めたり
してねーしなァ。ふん、こっからはあたし一人で闘いますよ!!!臆病者は
歯ァ磨いてクソして寝てろ!!ついでに目も覚ますなッ!!!!!!!」

「あーそーですかッいってらっしゃい!!!ついでにもう戻って来ないでね!!
あ、階段上れないんだっけ?地獄までの片道切符ごくろーさま!!!!
あと、あたしゃクソもしなきゃオナニーも47…」

このアマ…こいつがここまで性根腐ってると思わなかったぜ!!!
あたしはベッドの脇において置いたカバンを取ろうと屈む。

ドガッ!!!!!

そんなあたしを、梨華ちゃんが突き飛ばした!!
その勢いであたしは床に尻をついてしまう。
こいつ…マジでケンカ売ってんのか!?
あたしのスタンドがボロボロだからって調子に乗ってンのか!!?

「何すん」
バリィィィィィィィィィィッンンン!!!!!!!!!!!!!!!!!!


あたしのセリフは、勢いよく音を立てて割れ砕け散ったガラスの音に
かき消されてしまう。
何が起きたのか、把握するのに数秒かかった。
目に映ってる光景だけで言えば、ズタボロになった一体の木の人形が、梨華ちゃんの
身体にめり込んでいるっていう状況で…

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


730 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/09(金) 02:53:10 0

「うげえええええええええええッ!!!!!!」

ドッシャアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!


梨華ちゃんが木の人形を腹に食らいぶっ倒れた!!
それを見て、あたしは思わず窓に目を向ける。

「やれやれ、やっと見つけたよ。病室に逃げ込むとは…外から探すというのは
マジで骨が折れる事だね、まったく。上原奈美のドテカボチャもしつこかったし。
ま、ボクの敵じゃあなかったけどさ」

高橋瞳が割れた窓の外に立っている!?
いや違う!!クモが糸を使ってぶら下がっているんだ!!!!
屋上の手すりか何かに糸を引っ掛けているに違いない!!
そのクモの尻の上に、ヤツが立っているのか…?
そんなところから攻めてくるなんて…なんてヤツだ!!!

「た、高橋瞳!!てめええええッ!!!!!!!」

「憤激!!!!」

ガシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

高橋瞳が外から窓を蹴破る!!!
ビョオォッと寒い冬の風が入り込み、病室を一気に冷ました。
そして、クモが振り子のような運動を始めると、その勢いで病室に飛び込んできたんだ!!
あたしの頭上を飛び越えて、ヤツは病室のドアの前に立ちふさがった。

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…


731 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/09(金) 02:54:47 0

「もう逃がさないよッ!!!!アハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!」

ムカつく笑い方だぜ…野郎ッ!!!

「く…」

梨華ちゃんが腹にめり込んだ木の人形を雑に投げ捨てると、呻き声をあげながら
立ち上がった。
どうやらミゾオチに入っちまったらしいな…


「梨華ちゃんアンタ…あたしを助けてくれたの?」

「この木の人形…妙だわ。本当にスタンドの残骸?変な実態感がある…これはいったい…」


ちッ、あたしの話聞いてないのかよ。
まぁいいか。

「あれれれ?立ち上がっちゃうなんてトンだ計算外!!いや〜患者さんのクセに
タフだねぇキミは!!!!」

「ふん、当たり前よ。あたしを誰だと思ってるのかしら。演劇部の元エース、
チャーミー石川よ。ハッピー」

「え、何々?別にキミに興味はないから変な自己紹介はいらないよ。ボクの狙いは
ただ一つなんだから。ねぇ藤本美貴さん?」

「何よ、何なのよバカにして。目に物見せてあげるわ…」

キラッ…キラッ…


732 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/09(金) 02:56:54 0

梨華ちゃんのスタンド『ザ☆ピース』の右手の指が黄金の様に輝きだした。

あたしは…あたしはこれを知っている!!!
この煌く破壊のビジョンを知っている!!!
あらゆるものを切り裂きそして貫く、梨華ちゃんの必殺技!!
その名も…


「久々にイクわよーッ!!!必殺!!!チャアアアアアアアアアミングッ!!!!
フィンガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーッ!!!!!!!」


ズッキュウウウウウウウウウウウウウウウン!!!!!!!!!!!!


梨華ちゃんの指先が眩いばかりの光を放ち、高橋瞳に迫っていく!!!
あたしにへし折られたその右手…すでに完治していたのか!!!!!


「刺されろ!!あたしの指に刺されて足縮めてろ!!この女郎蜘蛛があああッ!!」


ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!


ドスドスッ!!!!!!!



733 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/09(金) 02:58:27 0

梨華ちゃんは貫いた!!!

…病室のドアを。

き、消えた?
あのクモ女…消えやがった!!!!!!!!

「なッ…!?」

あたしも梨華ちゃんも驚きを隠せない。


「やれやれ、これだから素人は困るよ」


天井から聞こえた声に、あたしらは一斉に反応した。
へ、へばりついている…しかも無傷で!!!


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



734 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/09(金) 03:00:38 0

「クモの瞬発力を舐めないで。こんなに華奢な足をしているけど、その力は
笑えないくらい強いんだ。そして、早い。さらに、コイツ自身もデカいだろう?
いいかい?強くて早くてデカい事、これだけ揃えば負けはないッ!!!!!!」

ピュンッ!!ピュンッ!!!

高橋瞳のクモスタンドがヤツを背に乗せたまま病室を跳びまわり始めた!!
は、早いッ!!!!
こいつ、こんな狭い病室の中で、どうしてこんな機敏な動きが取れるんだ!!!!

「な、なんて速さなのよッ!!チャーミング・フィンガーの狙いが定まらない…ッ!!!」

「そして患者さんに教えてあげるよ。必殺技とはッ!!!『必』ず『殺』す『技』と
書くんだ!!!こんな風に!!!!!」

シュルシュルシュル…

な、なんだ…あたしの足元から…変な音が…!!!!

ギュルンッバシィィィッ!!!!!!!!!!!!

「な、何ィッ!!!?」

い、糸オォォォォォッ!?
あたしの足にクモの糸が絡み付いて…し、縛りつけやがった!!!
機敏に動きまくっていたのはこのためかッ!!?
すごい速度で跳ね回り、あたしの足元に拘束するためのトラップを
しかけていたというのかよ!!!

ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!


735 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/09(金) 03:02:23 0

「evergreen<グレイプ・ニール>のイカした使い方さッ!!そしてぇぇぇ…ッ」

「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!」


高橋瞳を乗せたクモスタンドが迫って…うわあああああああああああッ!!!!!


「このまま決着!!!!アハハハハハハハハハ!!!!!」

「ミ、ミキティッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ドゴシャアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!


真正面から体当たりを受けたあたしは、寒空の中に放り出された。



736 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/09(金) 03:07:38 0

「う、うああああああッ!!ブギートレイン03ッ!!!」

ガシィッ!!!

寸でのところで、あたしは窓の桟につかまる。
あ、あぶねぇ!!マジにやべぇぜコイツはーッ!
チラリと下を見ると、眩暈のしそうな高さの恐怖に背筋を支配された。
くそ…絶叫マシーン乗ったとき以上にお腹がヒュンッとなったぜッ!!
下には池があるみたいだけど…あそこに落ちたとしても大怪我は免れないだろう。
ま、待ってくれ…マジで勘弁しろよ!!!

「畜生…このまま落ちてたまっかよ…ッ!!!」

あたしはボロボロのスタンドでなんとか踏ん張り、腕だけで身体を引き『上げる』。
い、一刻も早く病室に戻るん…


「…え?」


視界は、眩しい水色の大海原でいっぱいになった。
あちらこちらに白い島が見える。

ひっくり返った?…そうだった、あたしはこいつの能力にハマッていたんだった…
あたし…ここで死ぬのか?

身体はすでに引力に引っ張られ、垂直落下を始めていたのだった。


ゴワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・・・・・・・


857 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:16:49 0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

落ちる!!
ミキティが落ちてしまう!!!
窓の桟に手をかけ、腕の力だけで上ろうとしたミキティは、なんとも奇妙な
体勢でひっくり返っまったのよ!!!
さすがのあたしもその光景には青ざめた。
それと同時に窓に向かって走り出していた。

「ハッピィィィィィィィィィーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ギュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!!!!!!!!!

あたしの掛け声と同時に『ザ☆ピース』の腕が急激な速度で伸びた。
間に合うッ!!!!

ガシィッ!!!!!!

「り、梨華ちゃん…ッ!!!」

つ、つかめた…危なかったわ…!!!
ミキティの足に絡みついたクモの糸を無理矢理つかみ、落下を阻止する。
彼女の身体は四階のあたりで静止した。
危機一髪ってとこかしら…



858 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:18:14 0

「よく…よくつかんでくれた…心から礼を言うぜ…」

「落としてたまるもんですか…あなたとは合わないけど…ミキティはあたしが『合格』に
導いた『演劇部員』なのよ…ッ!!!こんなところで死なせるもんですか!!!
死ぬならそれなりの働きをしてから死ぬのねッ!!!!!!」

そう、ここで彼女は死なせるわけにはいかない!!
この子、憎たらしいとこばっかだけど…それでも今はまだ死なせるわけにはいかないわ!
例え、彼女に一度再起不能にさせられた身とはいえ…!!

「友情だネェー。素晴らしいネェー…」

く、クモ女ッ!!!
あたしの耳元で静かに囁いてきやがったわ!!こそばゆい!!!!
この…クソガキがあああッ!!!!

「こんな状況でどうするつもりなんだい?ボクはフリーでいいのかな?」

バギィッ!!!!!

「ぎゃああああああッ!!!!!」

か、肩パンんんんッ!!!!!!
握っている手の力が思わず緩みかけるが、あたしは耐えた。

「あららら。患者さん、頑張るじゃないか。じゃあ賭けてみようよ。あと何発で
キミが藤本美貴を落っことすか…うーん、あと4回くらいかな?」

こ、この女…恐ろしいッ!!!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


859 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:19:58 0

バギィッドガッメタァッバスゥッ!!!!!!!

お、女のくせになんて馬鹿力なのよ…青痰、いくつできたかしら?
それでも尚、彼女は殴り続けてくる。

「驚いた…もう10発目突入だよ…キミ、マジでタフだねぇ…」

高橋瞳というクモ女が感心している。
負ける…もんですか!!!


「梨華ちゃん、もういいよ。離してくれ」

「負けない…このくらい…なんてことはないッ!!!」

「オメーまでやられちまうっつってんだよアゴ!!あたしはいいんだ!!!
もう覚悟は出来てる!!!」

「アゴ?ざけんじゃないわよ!!!あんたは…あんたはねェ…ッ!!!!」


あたしは『ザ☆ピース』の腕に力を込めた!!!


「このチャーミー石川が雪辱晴らすまでは死ねないのよーッ!!!!
おぉぉぉぉッ!!!引き上げるのよ『ザ☆ピース』ッ!!!!!!!」


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!



860 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:22:13 0

「キミ、まだそんな力が…やば、遊びはこれくらいにしよう…」

高橋瞳がクモスタンドを近づけてきたわ…どうする…どうするの石川梨華!!!!

ガッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!

その時だわ。
勢いよく病室の扉が開いたのよ。

「高橋瞳ィ…ッ!!!!!」

こ、こいつはさっき踊り場でミキティを襲っていた中学生だわッ!!!!
木の人形を操っている本体!!!!
彼女の周りを、4体の人形が取り巻いている。

「う、上原奈美…キミまだ諦めてなかったのかい!?」

「諦める?そんな単語、辞書登録してないですね!!!!」

くッ…仲間同士ではないが目的はこのクモ女と同じヤツね。
でも、ここに来たのが運のツキよ。
…せいぜい利用させてもらうわ。

ニュルニュルニュル…バシィ!!!!!!!!!!!!!!

「…へ?」

上原奈美が右足に絡みついた金色の紐を見つめた。
あたしのザ☆ピースは…伸縮自在なのよ!!
身体のどの部分であろうと…!!!


861 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:23:56 0

「こ、このロープは一体…?」

「引きよせなさい!!ザ☆ピースッ!!!!」


ギュウウウウン!!!!!!!ドシャアアアアアアッ!!!!!!!


上原奈美の右足に絡みついたザ☆ピースの紐状に伸びた右足を元の長さに縮める!!!
その勢いで、上原奈美はひっくり返り、床に頭をぶつけたようだわ。
そして、尚も足を縮め、彼女は仰向けのまま床を引きずらせるッ!!!

「な、何よこれはああああああああッ!!!!!!!」

「ザコが…あんたら仲良く落ちちゃいなさい!!いくわよザ☆ピース!!!
おりゃーッ!!!!Y字バランスッ!!!!!!!!!!」

ギャンッ!!!!!

あたしの動きに合わせて、ザ☆ピースが上原の足に絡みついた右足を高々と上げた。
これぞY字バランス!!!!
足の長さ、勢い…全てにおいてベストだわーッ!!!!!

「なんですってえええええええええええええええええええええッ!!!!!?」

ビュオォォォォォォォッ!!!!!!!!!


862 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:24:59 0

上原奈美を、あたしのY字バランスの勢いで投げてやるのよッ!!!!
窓の外へ捨ててやる!!!!!!

ポイッ…

「いやああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

「ぼ、ボクの方に…ッ!!?」

高橋瞳、あんたも巻き込んでね!!!!!!
二人仲良く浪漫飛行でもしてなさいッ!!!!!!

「落ちなさい!二人揃って脳天から飛び降りなさい!!このドクサレがああああッ!!」


ドガシャアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!

「「うぎゃあああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!」」


あたしの足で放り投げた上原奈美は派手に高橋瞳と衝突すると、彼女を巻き込んだまま
二人で仲良く五階の病室からダイブしていった。
その時、上原奈美のスタンドのデク人形4体が力なく床に倒れたが、あたしは
あまり気にしなかった。

「みたかしら…これがあたしの…元エース石川梨華の実力よーッ!!!」


ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!


863 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:25:58 0

「あああああッ!!!落ちてしまうわ私!!!!」

「この厨房が…あんたはロクな作戦も考えずドカドカ真正面から突っ込んで
来すぎなんだよバァーカ!!!!!!!」

「なんですってぇ!!!!?」

「落ちるなら一人で落ちてってよねェ!!ボクは知らないよ〜ッ!!evergreen!!!」

ガシィッ!!!

高橋瞳のスタンドが、外の壁に引っ付いたわ。
ちッ助かりやがった!!!
突き落としてやりたいが、あたしの両腕は依然ミキティをつかんでいるので精一杯だ。

「一人で落ちてたまるもんですかああああッ!!!!!!!!!」

むんずっ…グイィィィィィィィィッ!!!!!!!!!!!!!!!!

「え…う、うげげげげげげッ!!!ボクの制服にィッ!!?」

う、上原奈美まで助かりやがったわ!!!
高橋瞳のブレザーの襟首を無理矢理つかんで!!!!
な、なんて無茶苦茶な奴らなのよ…ッ!!!!



864 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:27:04 0

「か、勝手につかまんないでよ!!!この野郎ッ!!!!!」

「うるさいわね!!いいから病室に戻りなさいよ!!!アンタもそれじゃあ、
しょーがねェでしょッ!!!」

「くそッ!!!!!」


高橋瞳がクモのスタンドの力で上原奈美と共にゆっくり這い上がってきたわ。
このゲテモノスタンドが…ッ!!!
上原奈美を背中にぶらさげたまま、ヤツが窓から身を出した。

…かかったわね。


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


「チャーミング・フィンガー!!!!!!!!!!!!!!!!」


「え?」


ドスドスドスドスドスドスドス!!!!!!



865 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:28:05 0

あたしの左手の指が高橋瞳の身体に突き刺さる。
彼女は目を丸くして驚いていた。
窓の桟をつかんだ手も、恐らく痛みによって震えてしまっている。

「き…みは…藤本美貴を…つかんでいたはずじゃ…ぐええええええッ!!!!!」

「ええ、つかんでいたわ。たった今までね」

「見捨てたのか…仲間を…ッ」

見捨てた?
…違うわね!!!!
あたしはザ☆ピースの握っている右手を見せてやった。

「それは…糸?ボクの…ハッ!!!!」

そして、地獄から這い上がってきたアイツが語り始める。


「こんな言い伝えがある…地獄に落ちた罪人が、生前たった一つだけ言いことをした。
村火事を狙って盗みを働こうとした罪人の行く手に、大きなクモの巣があったんだ。
道は一つしかなく、そのクモの巣を踏みつけなければ村へは辿り着けなかった」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


866 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:28:48 0

「罪人は、クモを殺す事が出来なかった。実は、そのクモは神の使いだったのさ。
クモは地獄に落ちた罪人を天国へと導くため、地獄に糸を垂らし、罪人はその糸に
つかまって天国に引き上げてもらったという…」

「ふ、藤本美貴ィッ!!!!!!?」

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



867 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:29:37 0

「き、キミ…ボクの糸を使って…!!!!!!?」

助かったぜ…
梨華ちゃんがあたしの足に巻きついていた糸を切り、その端をあたしに持たせ、
もう一方を梨華ちゃんが握り、引き上げてくれたのだ。
やれやれ…力のないザ☆ピースで、よくここまでやってくれたもんだぜ。
あたしのすぐ隣には、背中に上原奈美をぶら下げた高橋瞳がいる。


「「ば、バカなッ!!」」


二人は目を丸くしていた。
ったく…めちゃくちゃ怖ェ目に合わせやがって!!!!

「オルァ!!!!!!!!!!」

シュパッッッ!!!

ブギートレイン03で、クモスタンドの壁に引っ付いている足を払うように
チョップするッ!!!
スタンドがボロボロで力はないが、これぐらいは出来るぜーッ!!!!

「う、うわわわわわわわぁッ!!!!!」

壁から離れてしまった高橋瞳は、空に投げ出された形になった。
ま、死なないことを祈ってるよ!!!



868 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:30:24 0

「へッ!!!バカはあなたの方じゃないか瞳先輩ッ!!!!」

「な、なんだと…う、上原奈美!!何を…ッ!!!」

「落ちるのはあなた一人ってことよ」


ドゲシャアアアアアアッ!!!!!!!!!!

上原奈美が高橋瞳を踏み台にして、病室に飛び込んでいった!!
やはりこいつら、仲間じゃねぇみてーだな。
しかし、敵同士ってわけでもないハズだ。それを平気で…ッ!!!!


「ぼ、ボクを踏み台にッ!!うあああああああああああああああああっ墜落!!!!」


ヒューン…バッシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!


クモ女、高橋瞳は大きな水しぶきをあげて池に落ちた。
あれなら命は助かっただろう。
再起不能、もしくはそれ以上だろうが。

「なんかあまりいい気分じゃねーが、さて…あとはケバイ厨房だけだな」

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!



869 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:31:15 0

窓の桟に足をかける。
ひっくり…返らないッ!!!!
よっしゃ、クモ女の術は解けたみたいだな!!!!

「いやぁ、あんたらにはマジびっくりだわ。さすがは上戸をぶっ飛ばしただけはある」

「…お前、ずいぶんと気楽だな。あたしと梨華ちゃん相手に、お前のその木偶の坊で
いったい何ができんだ?それにどうやら、一体はあのクモ女にぶっ壊されてるじゃねーか。
そんなヤツが…ん?」

自分で言ってて奇妙な感覚にとらわれる。
なんだ…この違和感は。
あたしは床に転がっているぶっ壊された木の人形を見た。
左手はなく、両足も砕けてなくなっている。頭部にはヒビが入っているし、
見るも無残な人形の死骸といったところか。
でもよ、なんでだ?
なんで上原奈美は、傷一つなくピンピンしてやがんだ?
それに、この人形の妙な実態感は…


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



870 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:32:53 0

ガッシャン!!!!

何かが大きな音をたてて、割れた。
窓ガラスではない、何が割れたんだ?
病室から聞こえたような…

「う…あ…」

梨華ちゃんが膝をついて呻き声を上げていた。
なにが起きた…彼女の足元に散らばる白い破片はなんだ…?

「お、おい梨華ちゃん?」

何が起きてやがんだああああああッ!!!!!!!

「高橋瞳先輩は…かなりの使い手だったわ。それを葬ったあなた達はそれを
超えている。なかなかやるじゃない。だけど藤本美貴、あなたは世界じゃ二番目よ」

「貴様…梨華ちゃんに何をした!!?」

「まだわからないの?私の『Real Me』の能力が…」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


871 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:33:29 0

ガタッ…ガタッ…

床に倒れていた木の人形が四体起き上がった。
そういえばコイツ、スタンドを引っ込めていたハズの状態で、なぜ木の人形は消えずに
存在していたんだ…?

「この破片は…花瓶?」

「ミホの人形は使い物にならないし、花瓶も使っちゃったから…次はこれにしましょ」

フワアアアア…

テレビの脇に転がっていたボールペンが、静かに浮遊する。
まさか…まさかコイツの能力は…!!!

「さぁて!!ミホの新しい身体も手にいれたことだしッ!!!やっちゃいなさい!!!
私の『五つ子』たち!!!!!!!」


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!



872 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:34:40 0

物体に憑依する能力!!!!!!!!!!!!
こいつのスタンドは木の人形なんかじゃあねェーッ!!!!!!
どんなデザインなのかは知らないが、こいつのスタンドは物体に憑依して
自由に操る能力なんだ!しかも五体も!!!
そういえば、部室の資料で読んだ事があるぞ。
昔、恨みのパワーで自分のスタンドを操るアメリカインディアンの呪術師という
ふれ込みで商売していた殺し屋がいたと…
確か、そいつのスタンドも人形に憑依させてスタンドを操っていたと聞く。
だから一般人には呪い殺されたように見えるわけだ。
もしかしてコイツは、それと同じタイプのスタンドなんじゃあねーのか!?

「愉快だわ…これで上戸彩を超えられる!私は世界一のスーパー中学生になるのよ!
くふふッ…ふふふふふふふふふふーんッ!!!!!!!」

「イカれ女が…無関係な梨華ちゃんまで襲って何がそんなに楽しい!?」

「楽しいわけじゃない、自由にあなたをヤれるのが嬉しいのよ!!!高橋瞳も
私がぶっ倒した!!中学生にしてこの実力!!もう私以上の天才はいなくなるッ!!!」

上原奈美は満面の笑顔で言った。
こいつ…もうあたしをぶっとばした気でいやがる。
だいたい高橋瞳を倒したのはあたしらだっての、テメーは踏み台にしただけだろうが。

「天才か…」

「ん?」

「そんなの、大昔の負け犬が作り出した言葉じゃねーか。美貴が教えてやるよ。
本物の実力ってやつをなァーッ!!!!!!」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…


873 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:35:33 0

「ブギートレイン03ィッ!!!!」

「そんなズタボロのスタンドで何ができるのよーッ!!Real Meッ!!」

バァーンッ!!!!!!!!!!

ちッスタンドは依然ボロボロのままかよ!!
やっぱり高橋瞳のチビグモが原因じゃなかったらしいな。
あたしのブギートレイン…なんでこんな姿になっちまったんだ?

「タクヤ!ツヨシ!シンゴ!ヤツを捕まえなさい!!!!」

三体のデク人形が迫ってくる。
のんびり考え事してる暇じゃねーかッ!!!


「おぉぉぉぉぉッ!!!ゴールデンッゴォォォォォル決めてッ!!!!!!!!
VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVV
VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVV
VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVッ!!」


ドバキグシャアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!

得意ぼ連続突きを出してやったが…
くそッ!!
今のあたしには一体ぶっ壊すのが精一杯だぜ!!!!
しかもいつも以上に多く殴ってやっとだ。パワーも大分落ちてしまっているッ!!!



874 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:37:03 0

「貧弱貧弱ゥ!!!シンゴ!!ツヨシ!!!まずはそのウザッてぇ両腕を止めなさい!」

「んだとぉッ!!?」

デク人形をぶっ潰してもコイツにダメージはねぇーのかよ!!!
畜生!!なんかずるくねーかッ!!?

ガシィッ!!!

「しまった!!!」

二体のデク人形がブギートレイン03を羽交い絞めにする。
た、大したパワーじゃねーけど…今のブギトレにはこいつらを振り払うほどの
腕力はねェーッ!!!

「離れろこのデクの坊があああああああああああああッ!!!!」

「ホント、人形って便利。なんたって手が使えるもの…今よ、ノリカ行きなさい」

さらに人形が迫ってくる。
腕の二体は振り解けない!!!
負けて…負けてたまっかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!!

「んどらぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!!!」

グシャアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!

あたしはブギートレイン03の足で、迫ってくるデク人形の顔を蹴り上げる!!!
渾身の一撃だ!!!
いつものパワーなら今のでメチャクチャになっていただろうが、さすがにそれだけの
パワーはなく、顔を吹っ飛ばして天井に突き刺さったくらいだ。


875 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:37:38 0

「どうだッ!!!」

「ミホ!!!」


グサッ!!!!!!!!!!!!


「…え?」

腹に激痛が走る。
胃に入ってるもんが喉まで込み上げてきた。
な、何をした…コイツ…ッ!!!
あたしは何かが突き出ている腹に視線を落とした。

「ぼ…ボールペンだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!」

そうだ…コイツさっき、ボールペンにもスタンドを憑依させていた…!!!!
足元がふらつく。
急所に入った?そんなバカな…ッ!!!!!!!!

「さて、終わりにしましょう…タクヤ、新しい身体よ!!!!!!!」


ドドドドドドドドドドドドドドドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンン!!!



876 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:38:23 0

梨華ちゃんがいつも寝ていたベッドの足が静かに浮き上がる。
まさか、これにも憑依させたっていうのか!!?
物体ならなんでもスタンドが入り込んじまうっつーのかよ!!!!!

「捻り潰れろおぉぉぉッ!!!このデコすけ野郎があああああッ!!!!!!」

や、やべぇ…ッ
この女、ベッドであたしを押し潰す気だぞ!!!
このまとわりつかせた人形ごとあたしを押しつぶすつもりなんだ!!!!
ぼ、防御も何もできやしねーッ!!!


あのクモ女さえ倒せばもうあたし達の勝利かと思っていた…
だが、甘く見ていたぜ。
この病室の中で本当に厄介なのは『段差が上れなくなる能力』の女の方ではなかった。
真に恐ろしいのは…

この『五つの物体に憑依する』女の方だった!!!!!!!!!!!


ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!



877 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:39:08 0

どうすればいいッ!!?
ベッドがまるで口を閉じるように倒れてくるぞ!!!!
まともに潰されたら、確実に首の骨は折れるだろう。

「勝ったッ!!私が上戸を超えたァーッ!!!!!!!!!!」

負け…るのか?このあたしが…
…こうなれば見せつけるしかない!!!
この女の能力を倒すには!!こいつ以上の『覚悟』があるってことをな!!!

これでも毎日無理して牛乳飲んでるんだ!!
胸はいっこうにでかくなんねーけど、骨は丈夫になってるハズだッ!!!!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



878 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:39:54 0

「…ミキティ、無茶しなさんな」

倒れたまま、梨華ちゃんが言った。
突然何を言い出すんだ…?
そのまま休んでればいいのに…

キラッ

ん、何か視界に光の反射みたいなもんが見えたような…
ふと、あたしは天井を見上げた。

こ、こいつは…グレートだぜ!!!!

「半径5メートル!!チャーミング・フィンガーッ!!!!!!!!!!」

ドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカッ!!!!


「うわぎゃああああああああああああああああああああああああッ!!!!!」

断末魔にも似た叫びを上げたのは他でもない、スーパー中学生上原奈美だった。
病室は、まるでいくつもの細い金の柱が突き出したようになっていたッ!!!
ベッドも、木の人形も、その他もろもろ全部貫いたんだ!!!
ボールペンは砕けて床に落ちている。
貫かなかったのは、あたしと梨華ちゃん、そして上原奈美だけ。
だが、上原奈美は身体からバリバリ血を噴き出した。
スタンドにダメージを与えることが出来たようだなッ!!!!


879 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:40:39 0

バリバリ…ブショォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!

「なんだこの血はッ!!!私の血だっていうの!?バカな…そんなぁ!!!!」

「その木の人形やベッドごと、あたしの『指』で串刺しにしてやったわ。スタンドごとね。
また別の物体に入れないよう、この病室の物体という物体は全て串刺しにしといたわよ」

それにしても、よくあたしにまとわりついていたデク人形や刺さっていたボールペンも
破壊できたな。かなり精密な動作が必要なハズ。
梨華ちゃんの『指』、そこまで繊細な動きと切れ味を持っているとは…恐るべし。

「な、なんてこと…病人ごときに…わ…たしがッ!!!」

ドシャアアアアアアッ!!!

上原奈美は力尽きて倒れてしまったようだ。
ハァ・・・ハァ・・・
降りかかる火の粉は…すべて振り払った!!!


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!



880 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:41:08 0

「どうなるかと思ったぜ…梨華ちゃん、サンキュー」

「まったく…あたしの右手が完治してなかったら確実にやられてたわよ。
あーあ、どうしよう。看護婦さんになんて説明したらいいのよ。この有様…」

シャカシャカシャカシャカ…

確かに…ベッドも小さい穴開いてるし、病室の窓ガラスも割れちまってる。
おまけに中学生が血ィ流して倒れてるときた。
うわッ、いいわけ難しそう。

シャカシャカシャカシャカ…

「ん?」

「どうしたのよ?」

「シッ…なんか聞こえる」

シャカシャカシャカシャカ…

「ッ!!!」

こ、この何かを擦り合わせているような、胸糞気分悪くなってくる音は…!!
まさか…な。
あたしは静かに振り向いて、ガラスのはってない窓を見た。


ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…



881 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:42:18 0

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」

「た、高橋瞳ッ!!!!?」

な、なんでコイツが!!!
さっきこっから…五階から落ちたんだぞ!?
死んでないにしても、動けるわきゃねーんだ!!!

「ハァ〜ッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」

高橋瞳が目を引ん剥いてあたしを見る。
む、むご…ずぶ濡れだし、頭から血ィ出てんぜコイツ…

「ミキティ、この子…ッ!!」

「ああ…完全に狂ってるな」

「ギャーッ!!!!ハァ…ハァ…ボクは…ボクはねぇぇぇぇ!!!!!!!!」

シュバッ!!!!

窓から入ってきたクモスタンドが大きく跳ねた。
突っ込んでくる…狙いはもちろんあたしオンリーだ。



882 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:43:40 0

「アハハハハハハハ!!!ウエトブッコロスーッ!!!!!!!!!!!」

「梨華ちゃん、そいつを貸してくれ」

「え、ちょっと…」

あたしはブギートレイン03の手でザ☆ピースの左手をつかむと、迫ってくる
クモスタンドをその指で大きく切り払う。

ブシュッ…
「アヒャァ…ッ」

クモの腹を…切ってやったぜ。

ドシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!

高橋瞳は派手に病室の壁に突っ込み、腹から出血して倒れた。

これで、ようやく決着…だな!!


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!



883 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:44:48 0

「で、どうすんの?美貴の指令、代わってくれんの?」

「代わらざる終えないでしょーが!!そんなボロっちいスタンドじゃあ、よっしーや
小春ちゃんに負担がかかるじゃないのッ!足手まといにしかならないわ!!!」

「そうだよな、そうだよな。あんがとよ、この恩は忘れるまで忘れねーよ」

それにしても、あたしはどこでブギートレイン03をボロボロにしてしまったんだろう。
結局、ヤツら二人の能力じゃあなかったようだし…
今日みたいなこともあるからな…このままじゃまずい。

「まぁ代わるけど、交換条件よ」

「交換条件?」

「ええ、ほらコレ」

梨華ちゃんがピンク色のカーディガンのポケットから出した紙切れをあたしに渡す。
なんだよ、コレ。
ん…まさか…
開いて確認してみると、こう書いてあった。


     石川梨華に命ずる。
     ぶどうヶ丘幼稚園で紙芝居を上演してきて欲しい。 
     日時は追って通達する。
     
     必ず園児達を楽しませてあげること。

                                 寺田      



884 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:45:31 0

「…ぶッ」

コイツも指令受けてたのかよ…
つーかこのオッサン、こんな指令出したりもするのかよ。

「ちなみにコレ明後日だから。昨日連絡きたのよ。あ、紙芝居は自作でよろしくだってさ」

「明後日ェ!?カラスの指令も明後日だったんだけどよーッ!!」

これじゃ何のために代わってもらったんだかわかんねーじゃんか!!!
しかも自作で紙芝居ってなんだよ!!!
畜生…あたし、何しにきたんだ?
指令交換するだけって…あたし、この病院にケガしに来たのか?
勉強しなきゃなんないのによー…



885 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:47:59 0

「…ああああああああッ!!美貴のカバンが穴だらけじゃねーか!!!
オメー上原にトドメさした時、あたしのカバンまで貫いたのかよ!!!!」

「そうよ」

「い、石川!!!てめぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!!!!!」

「ちょッ!!しょーがないでしょーが!!!緊急事態だったんだから!!!!!」

「ざけんな!!弁償しろ!!!」

「イヤよ!!あんたが狙われるよーなことばっかしてんのが悪いんでしょうッ!!!?」

ああ、お気に入りだったキティちゃんの手帳にまで穴が…orz
皮肉なことに、亀井から借りた単語帳だけは傷一つつかず鞄の底に眠っていたのだった。
うぅ、梨華ちゃんめ…マジむかつく!!!






トゥルルルルルルル…トゥルルルルルッガチャッ…

「もしもし、康一くん。ぼくだよ、露伴だ…ちょっときみに調べて欲しいことが
あるんだ。おいおい、そう嫌そうにしないでくれよ。きみしか頼める人がいないんだ。
うん。で、用件なんだがきみの学校の…何だったか…えぇっとそう、演劇部だ。
その演劇部に関してなんだけどさ…」



886 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/12(月) 10:48:55 0

高橋瞳  再起不能
スタンド名 evergreen

上原奈美  再起不能
スタンド名 Real Me

藤本美貴
スタンド名 ブギートレイン03(何者かによってボロボロにされている)


指令;『再びカラスを捕まえろ』…藤本美貴 → 石川梨華へ
指令;『幼稚園での紙芝居上演』…石川梨華 → 藤本美貴へ


TO BE CONTINUED…