74 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/26(土) 03:24:46 0

銀色の永遠  〜血の渇き!part2〜


あぁぁぁぁぁ…orz
僕は…僕はもうダメだ。おしまいだ。
見られてしまった…一番見られちゃいけない人に見られてしまった!!
もう僕の学校生活はお終いだ。
これをネタに一生たかられ続けるんだ。
もうさゆのお婿さんになれない…。

「はあぁぁぁぁ…」

「亀ちゃん、さっきからタメ息ばっかですね」

「そうですか?気のせいですよ…」

僕は今、紺野さんと夜の杜王駅前にいる。
時刻は23時57分。

え、なんでそんな時間に僕が紺野さんと二人でいるのかって?

そりゃ決まってるじゃないですか、指令ですよ指令。
演劇部としては珍しい、夜中の活動だ。
お巡りさんに見つかんないようにやんなきゃならないのが、なんとも落ち着かない。
今日の指令は僕と紺野さんと、れいなが受けたんだ。
うーん、珍しい組み合わせだよね。
でも、肝心のれいなが来ない。今回の指令にはれいなの力が不可欠らしいのに。
まったく…待ち合わせは0時0分ジャストなんだけどなぁ…もう。



75 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/26(土) 03:25:50 0

・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・
…うぅ。


「はぁ…」

「ほらまたタメ息吐いた。いったいどうしたの?」

「見られたんです…本当にショックです…ハイ」

「見られたって?何を?」

「つまり…だからその…じ、じで始まる言葉で…じ、じ…自慰を…」

「え…Gショック?」

「違いますよ・・・」


時間は今日の放課後まで遡る。
僕が今夜の指令のことで落ち着かなくて、部室で心を落ち着かせていたときのことだ。
その日の部室にいるメンバーの中に、なかなかレアな人がいたんだ。




76 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/26(土) 03:29:28 0

「外はいい天気だなぁー。あたしもよっちゃんさんにマジってサッカー部に
出てみようかな。美貴、フットサルとかけっこう好きなんだよね」

「もっさん、逃げちゃダメです。あなたは立派なのだ…次の期末試験が
ヤバイからって、後輩に英語教えてくれなんて、なかなか言えることじゃあない。
『比較級』だってずいぶん覚えたじゃないですか…やる気があれば何だって
出来るのだ。あなたは…」

ホラ、珍しいでしょ!!
藤本さんが部室に来ているなんて!!!
話によると、今度の期末テストの英語で赤点を取ったら進級に関わってくるらしい。
下手したら、来年僕と同じ学年になっちゃうんだって。
そんなわけで、家が塾の新垣さんにこうして英語を教えてもらってるんだってさぁ。

「ここなの、ここの腰つきを滑らかにすることにより、より艶かしく幻惑するの。
その心は…『セクシー・アダルティー』ッ!!なの!!!!ンッン〜♪
さぁ小春ちゃん、やってみるの」

「1,2,3,4…ファイ!シッ!セブ!エイッ!!!こ、こうですかッ!?」

「違うのッ!!ここを…こうッ!!!そしてここは…こう突き出すのッ!!!
自分に酔うことが大切なの!!自分に酔えない奴がでかい事出来た試しはないのッ!!」

「はいッ!!1,2,3,4…ファイ!シッ!セブ!エイッ!!!」

「そッそれなの!!VERYYYY…YYYッ!!ビューティフォーなの!!!!」

いったいアレ、なんのダンスの練習してるんだろう。
とにかく、さゆはいつも小春ちゃんにベッタリだ。
たまには構ってよ…ここんとこ絡み少ないじゃんorz


77 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/26(土) 03:32:34 0

「じゃあもっさん、『tall』の比較級をここに書いてみるのだ」

「えぇっと…ちょっと待てよ。最上級が『〜est』だから…ゴルァッ!!さゆに小春!!!
てめーらさっきから気持ちわりー音楽流してうっせーぞ!!余所でやれ!!!」

「こっちは自主練中なの!!黙れなの!!!!」

「んだとこのッ!?厨房がッ!!!」

「いいから!!もっさんは勉強に集中するのだ」

「ったく…わかってんよ!!ふん…『tall』『taller』『tallest』!!どうよ!!!」

「そうッ!!やっぱり出来るじゃないですか!!!スペルも完璧なのだ!!!」

「だろだろッ!?いや〜さすがガキさんだぜ!!教え方がうめーな!!!
この調子ならマジでマスターできそうだよッ」

「いやもうマスターしたも同然ですよッ。どれ、じゃあ最後に『easy』の比較級を…」


賑やかだなぁ…。
かつて、こんな賑やかだったことが何回あっただろうか。
ホント、数少ないよね。
ま、今いるのはこの5人だけで、全員揃ってるわけじゃないけどさ。



78 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/26(土) 03:35:58 0

「おっしゃあ出来たぜェーッ!!!!」

藤本さんが歓喜の声を上げた。
どれ、することないし、僕も見てみようっと。

「ほれ、ガキさんどうよ?」

藤本さんが新垣さんに答えのスペルを書いた紙を渡す。
僕は新垣さんの後ろからそれを覗き込んだ。


『easy ‐ normal ‐ hard』


…何コレ?
僕は藤本さんのあまりのバカさに、なんだか楽しくなってきた。
なんで『easy』の比較級なのに別の単語がでてくるんだよ…( ´,_ゝ`)プッ

「どう?あってる??」

藤本さん、自信満々の笑みだな…痛すぎるよ!!
新垣さんは黙ってその紙を見つめている。そして…

バコォォォォォォォォォォォンンン!!!!!!!!!!!!!!

持っていた分厚い参考書を丸めて、藤本さんの頭を殴った。



79 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/26(土) 03:39:45 0

「いてえええッ!!!超いってええええええええええッ!!!!!!!!!!!!」

「貴様わたしをバカにしてんのか!?えぇッおい!!?『〜er』か『〜est』を
つけりゃいいってさっきから何べんも言ってんだろうがこのデコ助野郎ッ!!!
なのに…なんで関係のねぇ他の単語が出てくんのだ!!!ゲームのやりすぎか!?
テメーん家のプレステに種植え付けんぞゴルァ!!!!!!」

「わわわわわわわ…新垣さん落ち着いてッ!!!」

「デコ助野郎って言ったなこの野郎ッ!!だいたいテメーはいっつも必要以上に
相手をぶちのめし過ぎなんだよ!!オメー手から生まれてきたろ!!なぁ!?」

うわあああッ一触即発だ!!!
この二人がここでケンカしたらえらいことになるぞ!!
まぁ、新垣さんがキレるのも無理ないとは思うけど…。


「ささ小春ちゃん、休憩にするの」

「わーい!!私、ミラクルセーキが飲みたいですね!!!」

「ミルクセーキね。じゃあ生徒ホール行こっか!!ジャージ暑いから脱いでくの」

バサッ…

「だーッもう!!やめやめ!!!!美貴も休憩にするわ!!!!!」

「もっさん待つのだ!!カバン持ってどこに休憩しにいくつもりなのだ!!!!」


ドダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ…


80 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/26(土) 03:43:04 0

ポツーン…

なんか…いきなり静かになっちゃったな。
あっという間にみんな部室から出て行ってしまった。
なんだか嵐が去ったあとみたい…ん?
ありゃりゃ、さゆのジャージ、床に落ちちゃってんじゃン。
まったく…さゆってば、あわてんぼなんだから…
彼女のジャージを拾い、イスにかけてやろうとした時だ。

…ホワーン

このジャージ…うっすらとさゆの香水の匂いがついてるな…
さゆの香水、確かフィオルッチだったかな?
すごい女の子らしい匂いするなぁ…なんだかドキドキしてきちゃった。
手に持ったジャージを顔のほうに持っていく。

…ってコラコラ!!!何してんだ僕は!!もう…ッ!!!

でも…こんなチャンス滅多にないよな…。
理性が崩れるのは自分でもビックリするくらい一瞬だった。
僕は衣裳をかけるために用意されていたハンガーをロッカーから出すと、
部室のドアノブにかける。

よし、これでいい!!!

僕は再びさゆのジャージを握り、椅子に座ると今度は躊躇なくジャージを顔に押し付ける。
…男の子が好きな子のリコーダー舐めるのってこんな気分なのかな?

なんだか変な気分になってきた。
どーせしばらくはさゆ達も藤本さん達も帰ってこないだろうし…うん、しちゃおう。



81 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/26(土) 03:45:08 0

ゴソッ

爪切っといてよかった。
噂だけど、好きな子をネタにするのって悪いことじゃないらしいよ。
そうすることによって、そういった目標に近づけるよう、無意識に…がんば…れ…ッッ

「…うくッ」

ハンガーかけてあるし…大丈夫だよね。
やばい、超いい感じかも…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・



ガチャアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!カツーン!!!!


「なんで追いかけっこぐれーでスタンド使うんだよ!!反則だろ・・・あれ、ハンガー?」

「drftgyふじこッッ!?」

「亀?…なッ!!お前・・・」

「もっさん、早く部室入って欲しいのだ」

「あ、ああちょっとだけ待ってな、うん…」

ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!


82 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/26(土) 03:48:46 0
ああああッ!!こうしてる今でもあの時の藤本さんの顔が鮮明に思い出せるッ!!
『ウッソー!!』ってな感じのあの表情!!!うぎゃーっ!!!!!

「もうダメだ…あの人に大きすぎるカシを作ってしまった!!さゆが好きだってことも
確実にバレた!!オーマイガッ!!!むしろ変態扱いだッ!!うわああああ」

「あははははははwww」

「あははーじゃないですよ!!これ、紺野さんだから言うんですよ!!!?
絶対れいなには内緒ですからねッ!!!」

「何が内緒なん?」

「うわああああああああああッ!!!!ビッたアアアアアアアッ!!!!」

背後から聞こえるれいなの声に、僕は死ぬほどビビる。
いつからいたんだ!?
さゆのジャージでオナ(ryあたり聞かれてたら死ぬほどヤバイ!!

「こんばんは。ずいぶん遅かったですね、10分遅れですよ」

「来る途中お巡りさんがウロウロしてたばい、ちょっと遠回りしてきたと。
で、なにが内緒なん?」

「い、いや今晩のオカズの話…」

「ふ〜ん…まぁそういうことにしとくっちゃ。それより、今晩の指令の件やけど…」

ご、誤魔化しきれた…のかな?
とにかく、こうして僕ら三人の長い夜が始まろうとしていた…。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


72 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/28(月) 05:06:38 0

早い話、吸血鬼がこの杜王町にいるらしい。
そいつはえらく狡猾で頭のいい奴なんだって。
いったいなんのこっちゃ。

「しまった!僕、十字架を忘れてきた!!!」
「私はニンニクがいっぱい入った味噌ラーメン食べてきたから大丈夫です☆」
「それなら僕だってお昼にお肉食べました」

「二人とも何言っとると。そんなもん、吸血ゾンビに効くわけなか…
あ、まぁニンニクは嗅覚の関係があるから何とも言えんけど」

寺田先生の話によると、今その吸血鬼(ゾンビ?)を倒せるのはれいなしかいないんだそうだ。
なんでも『波紋』とかいう呼吸法が太陽の息吹でなんちゃらかんちゃら…。
まぁよくわからないけど、僕と紺野さんはそのサポート役ってわけ。

「その化け物は人間を食料とすると。恐らく、この杜王町の行方不明者が多い
原因のその一端には、そいつも関わっているハズたい!!」

実はその化け物、半年ほど前に一度、演劇部の柴田さんに追い詰められている。
だが波紋力を持たない柴田さんは、組織を壊滅させるものの、すんでの所で
化け物に逃げられてしまったみたいなんだ。
その時、柴田さんは不気味な石仮面を廃墟の中から拾ってきたらしい。
そうそう、ちなみにその化け物は、石仮面に柴田さんの血をかけて人間から化け物に
変身したらしいよ。信じられないけど。

それから月日は経ち、再びその化け物がこの町に災いを齎そうとしているらしかった。
そして寺田先生が、その化け物が潜伏している隠れ家をつきとめ(どうやってつきとめ
たんだろう…?)こうして僕らに指令が下ったって次第さ。

で、その隠れ家ってのが、今僕らの目の前に立っているこの屋敷なんだけど…。
とりあえず僕ら三人は、近くの茂みに身を隠し、様子を見ることにした。


73 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/28(月) 05:08:06 0

「ねぇれいな。その吸血ゾンビって、太陽の光に弱いんだろう?だったら
朝日が昇るまで待ってもいいんじゃあないの?」

「いや、相手は人間の中にまぎれて一年も生き続けている、頭のいい奴たい。
日が出てから襲い掛かっても、下手したら感づかれて蛻の殻かも知れん。
この会話だって、もしかしたら聞かれてるかも…」

「えぇッ!!…じゃ、じゃあ屋敷にに火を放とうよッ。化け物と闘うだなんて僕怖いし」

「亀ちゃん、それじゃ周りの住宅に住んでる人々を巻き込んじゃうじゃないですか。
そんなことしたら、私達みんなお巡りさんにタイーホされちゃいますよ」

うぅ…確かに紺野さんの言うとおりだ。
何も知らない人から見たら、僕らはただの放火魔にしか見えないよなァ…

「とりあえず、れいなが屋敷の中に潜入すると。絵里、サイレント・エリーゼを
連れていきたいんやけど。連絡を取り合うために」

「あ、うん。いいよ」

僕はスタンドを出すと、それをれいなについて行かせることにした。
れいなじゃないと、倒せない化け物…か。
いったいどんな奴なんだろう?



74 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/28(月) 05:09:26 0

「じゃあ行ってくるたい!!」

勇ましいよ、れいな。
頑張って!!!


「…ちょっと待って」

そう言って茂みから抜け出そうとしたれいなを止めたのは紺野さんだ。

「どうしたと?」

「一人で行く気ですか?」

「えぇ、そうですたい。…何か?」

「危険です」

「…はい?」

苦笑いでれいなは答える。
けど、紺野さんは真剣な表情だ。

「あなたはさっき言いましたよね。そいつは人間の中にまぎれて生き続けている
頭のいいやつだ…と。コンコンもすごくそう思う。油断は禁物です。一人じゃ…」

「危険だ…って?」

紺野さんはコクリと頷いた。



75 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/28(月) 05:12:15 0

ところが、そんな彼女を、れいなは軽く笑い飛ばした。

「何言っとるとねアンタ。相手はゾンビ、それに対抗出来るのは太陽エネルギーの波紋、
つまりれいなだけばい。それに、れいなには『デュエル・エレジーズ』もあると。
負けるわけがなか」

「私が言いたいのはそんなことじゃないんです。いいですか?もう一度
言いますよ?相手は人間の中にまぎれて生き続けている化け物なんです。
太陽の光を一度も浴びずに生き続けてるんです…そんな奴が、そう簡単に
葬られることを許してくれるんでしょうか?」

「…わかった、わかったと。もう話はすんだとね?アンタはれいながピンチに
なったら助けに来てくれればよか。そのためにエリーゼを連れて行くっちゃよ。
ま、お世話になることはないと思うけど」

「それなら、初めから三人で屋敷に忍び込んでもいいんじゃないんでしょうか」

「アンタもわからん人っちゃねェー…んなことしたら気配で気付かれちまうと!!
もう…アンタ、あまり戦闘経験ないやろ?そういえばれいな、アンタのスタンドだけ
まだ見たことがなかとね」

な、なんだこの険悪なムードは…うわあッ!重い!!重いぞッ!!!
エリーゼACT3の能力でこの空気を軽くしたいぃッ!!!!
それにしても、先輩に対して『アンタ』はまずいよれいな。

「こないだの演習の時だって、アンタの勝ち方にはれいな疑問を持ってるとよ。
どっかに隠れてたんと違う?」

「・・・・・・・・・・・・・」

あ、あれ?紺野さん…なんで黙るのさ!!!


76 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/28(月) 05:15:54 0
「ちょちょッ、れいなッ!!落ち着いて。なんでこんな時にこんなとこで
口論しなきゃなんないんだよ」

僕は何も答えない紺野さんを、とりあえずフォローする。

「ふん…十分以内にカタをつけてくるばい」

カサカサッ…
れいなはあまり音を立てないように、茂みから抜け出した。
紺野さんは黙ってれいなの背中を見つめている。

「あの…れいなの言ってたこと気にしないで下さいね。あの子、こないだの
演習のとき自分だけ部員のみんなと闘えなかったこと悔しがってて、まだちょっと
根に持ってるだけなんです。紺野さんの一人勝ちだったし…それにあなたは大人だから
甘えてるんですよ、たぶん。でも、別に隠れてたわけじゃないんだから、ハッキリ
言えばよかったのに…」

僕は紺野さんがいたからさゆと闘う決心がついたんだ。
それに、狂った高橋さんに攻撃を受けているところを助けてくれたのも紺野さんだ。
そんな恩人を、自分の友達が誤解していることが…僕にはなんだか悔しかった。

「田中れいな…か」

紺野さんがボソッと呟いた。

「今は直感で行動しているみたいだけど、あの子…きっとエースになるでしょうね」

あんな言いたい放題言われたのに、どうしてそう思えるのかが不思議でならなかった。
…時刻は0時42分。
僕らの長くて短い夜は始まったばかりである。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


132 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/29(火) 02:02:46 0

この指令、三人も必要だったのかな。
れいなが屋敷に侵入してから三分も経たないうちに、僕はそんなことを思い始めた。
化け物を倒せるのはれいなだけなんだしね。
れいな以外のメンバーは僕や紺野さんじゃなくてもよかったんじゃないんだろうか。
寺田先生、もしかして適当に決めたのかな…。
れいなの方はどうなっているのか…視界をサイレント・エリーゼにまわしてみる。


…真っ暗。


すぐ側に、れいなの気配を感じる。
懐中電灯を使わないのは、吸血ゾンビに感づかれないためかな?
ま、なんかあったられいながエリーゼに話かけるだろうから、それまで
大人しく待っていよう。
呼ばれることはないと思うけどね。

あーあ、気が抜けたら今日の放課後のこと思い出してきた。
いいわけも何もせず部室をを飛び出してしまったからなぁ…
藤本さん、さゆにチクッてなきゃいいんだけど。
…チクッてそうorz
絶ッ対!!面白おかしく言ってるに違いないよ…涙。



133 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/29(火) 02:06:08 0

「はぁ…」

「亀ちゃんのため息、止まらないですね」

「え、僕ため息なんてしてました?」

「うん、コンコンまでどんよりしてきそうな強烈な奴」

「あはは、ほっといて下さい」

あーあorz
なんだか一人になりたいよ、帰りたい。
でも今日は電車終わっちゃっただろうしな…

「まぁ、それだけ落ち込んでればラッキーです」

「え?」

落ち込んでることの何がラッキーなんだか。
相変わらず紺野さんの考えてることはわからないな。

「今が不幸なら、幸せってことですよ」

「なんでですか?」

「『不幸』って二文字には『幸せ』って漢字が入ってるでしょう?だから
不幸ということは、幸せということなんです」



134 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/29(火) 02:10:38 0

「意味わからないし…僕は全ッ然幸せじゃないですけど」

「それも今だけ。幸・不幸は紙一重なんですからね。『不幸』がなきゃ『幸せ』なんて
ものは存在しえないんです。太陽があるから月があるように、朝が来るから夜が明ける
ように、そして『仙道』と『石仮面』のように幸・不幸とはいわば表と裏。つまりあなたは
ツイている!!着実に幸せの道を辿り始めている!!!」

…わかるような、わかんないよーな。
それにしても、紺野さん節は相変わらずだなァー。
なんてポジティブ思考なんだろう、僕には真似できな


ジンワリ…


「…ん?」

お腹の辺りがやけに生暖かい。
生暖かいもんが…僕のお腹から…?
え…なま?

「…亀ちゃん?」

ナマ…なまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!!!!!!!
トロッ…

「ち…血が出てるだってぇぇぇぇぇぇッ!!僕のお腹からああああッ!!!!?」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



135 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/29(火) 02:14:36 0

「なんじゃこりゃあああああああああああッ!!!!!!!!!」

い、痛いッ!切られているのか!?
見ると、僕のニットのお腹あたりが黒く滲んでいた。
なぜ!?いったい何故僕はお腹をケガしている!!?
いつの間に…こんな!?
ここには僕と紺野さんしかいないんだ!!何かされたならすぐ気付くはずなんだ!!


ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…


『ぎゃああああああああああああッ!!!!!!!!!!!』

スタンドを通して、耳を劈くようなれいなの悲鳴がスタンドを通して
僕の耳に聞こえてきた!!!

「れ、れいなああああああッ!!!!!!」

「亀ちゃん!?その出血はッ!!?それにあの子…あの子になんかあったんですか!?」

視界をサイレント・エリーゼにまわしてれいなの姿を探す。
だ、ダメだ!!屋敷の中は暗すぎて何も見えないッ!!!


シュッ!!


なんだ…?空を切るような音が聞こえた。
何かがサイレント・エリーゼの肩をかすめたようだぞ…ッ!!



136 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/29(火) 02:17:59 0

バリバリッ…ブシュウウウウーッ!!!!

痛ッ!!?
か、肩から血がッ!!!!!!!!!!

「うわああああ!!切られたッ!!!!!」

「な、なんてこと…私としたことが…!!!どうして予想できなかったんだろうかッ!?
なぜこの事態を予測できなかったんだろうか!!亀ちゃん!エリーゼを戻すんですッ!」

「だ、ダメです!!れいなが…叫び声が…いない!!れいなの気配を感じられないッ!!」

探さなくちゃ!!早くッ!!!!
れいなが…れいながやられてしまうッ!!!!
いったい何が…何が起きているんだ!!この屋敷の中で何が…!!!

「彼女を一人で行かせるべきではなかった…これは…私の落ち度だ!!!」

「こ、紺野さん…ッ」

「なぜ、疑問に思わなかったんだ…私は…最初に気付かねばならなかったんだ!!
柴田さんをスタンド使いにしたのは中にいる吸血ゾンビだとわかっていたのに…
なぜ敵が『スタンド使いかもしれない』という推測が出来なかったんだ…ッ!!!!!!」


ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!


173 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/30(水) 03:13:32 0

敵は吸血ゾンビでありスタンド使い!!
戻ってきたサイレント・エリーゼの肩や腹には、僕と同じところにナイフで
切られたような傷があった。
間違いない、スタンド攻撃だ…僕はスタンド攻撃を受けたんだ!!


「れいなは…無事なんだろうか…?」

「亀ちゃん、屋敷に突入する前に一つ言っておきます。もし私が足を引っ張って
しまったら…あなたは私を助けないで下さい」

「・・・・・・・・・え?」

僕はその言葉の意味がわからず、彼女をジッと見つめた。
助けないでくれ…だって?

「冷酷な発想ですが…私達は『吸血鬼を葬れ』との指令のためにここに来ています。
ですから私がやられても助けようとしないと約束して下さい。もちろん、私のほうも
あなたがやられたり、はぐれたりしても助けません。どっちかがやられたら、この場から
逃げ出すということを約束してください」

「そ、そんな…」



174 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/30(水) 03:14:41 0

「ここで一人逃げ出すことは『敗北』じゃありません。『勝利』のための逃走です。
いいですか?自分を第一に考えるんです。あの子の消息がわからなくなった今、
下手な助け合いで全滅することは絶対避けなくてはならないッ!!そしてこんなことは
考えたくありませんが…もし!あの子がやられていたとしたら…」

ゴクリ…
れいなが…やられていたら…
お願いだよ紺野さん…そんなこと言わないで…


ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…


「例え二人でも、いったん退きましょう」

ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!


「さぁ、行きますよ」

こんな…こんな重い任務になるとは思わなかった。
吸血鬼を葬る…れいなの波紋とかいう能力があれば簡単に遂行できると思っていた!
僕の考え方は甘かったんだろうか。
れいなの力がなくては、まだ見ぬ吸血鬼は倒せない。
わかっているけど…もしれいなが無事じゃないとわかったとき、僕には逃げ出すなんて
ことができるのだろうか…。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



175 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/30(水) 03:15:38 0

屋敷の中は暗いな…それに空気も冷たい。
なんだかこの屋敷の中に、ドス黒くてムカッ腹の立つ気配を感じる。
この屋敷のどこかに吸血鬼がいるんだ…ッ!!
れいな…どうか、どうか無事でいて…

ガクガク

「亀ちゃん、怖いの?」

「へ、へっちゃらです」

なんて、ちょっと強がってみせた。
短い廊下なのに、ゆっくり歩いているから長く感じる。
よし…だんだん目が慣れてきたぞ…。
キシキシという音からもわかるように、どうやら床はフローリングじゃなくて
木の板で出来てるみたいだ。
触れている壁は、なんだかザラザラしている。
なんていうんだっけこーいうの。『数奇屋住宅』っていうんだったかな?



176 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/30(水) 03:17:21 0

「…あれ?」

急に目の前が真っ暗になった。
おかしいな、今の今まで目が慣れて薄らと床や壁が見えていたはずなのに…
いきなり暗くなったぞ。

…おかしい!!
バカにおかしすぎるぞ!!!
いくらなんでも暗すぎやしないか!!!!!!!!!?

ピチャッ…ポチャッ…


水…音?


ポタッ…

「うぇッ?」

なんかホッペに垂れてきた!!
天井から水漏れしてんのかな…空き家なのに?
よし…明かりをつけてみようかな。

「明かり点けても平気ですかね?なんかここ、水漏れしてるようなんですけど」

「…どうぞ」

紺野さんの了承を得ると、僕はポケットからペンライトをとりだし、天井に
かざしてスイッチを入れた。



177 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/30(水) 03:18:19 0




                       パッ








178 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/30(水) 03:20:13 0


「わあああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!」

僕は泣き叫んだ。
こんなに心底恐怖したのは生まれて初めてかもしれない。


ポタッ…ポタッ…


真っ黒の天井から、上半身だけ身体を力なく逆さにぶら下げたれいながいた。
下半身は真っ黒の天井に飲み込まれているようだった。
れいなの左の手首は大胆に裂け、そこから流れ落ちる血は僕の頬に垂れている。
気を失っている…た、助けなくちゃ!!!れいな!!!!

「れ、れい…」

ガボオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!

「なッ!?」

突然、足元から何かが生えてきた!!!!!!!
手!?手なのか!!!?

バシィ!!!

その手が僕の足首を掴む。
す、すごいパワーだ!!!

「なんだこの手は!!!うわあああああああああああああああッ!!!!!」



179 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/30(水) 03:23:04 0

その時、僕は気がついた。
ペンライトで照らされている床が…木で出来ているはずの床も天井と
同じように真っ黒なことに。
床だけじゃない、白いはずの壁も真っ黒だ!!

ズルズルズル…

な、なんだこいつはーッ!!!!
引きずり込もうとしているのか…僕の足を掴んで…真っ黒な影の中に引きずり
込もうとしているのか!!!

「うあああああああッ!!!!!!!」


「ニューオーダーッ!!!!!!」
バヒュン!!!


グショオォォォッ!!!!バキィッ!!!!!!!

紺野さんがすかさずスタンドを出し、その足で影から伸びてきた汚らしい手を
容赦なく踏み潰す!!!!
何かが砕ける音がした。

「UREEYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYィッ!!!!!!!!!」

凄まじい咆哮が屋敷の中を木霊し、手は影の中に戻っていく。
なんだ…なんなんだ今のはッ!!!!!!
まさか…今の奴が吸血鬼!!?

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


183 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/30(水) 04:55:34 0

紺野さんのスタンド、初めて見た。
黒地にピンクのラインが入った、アディダスのジャージを彷彿とさせる
痩身の筋肉質なスタンド。
近距離型タイプだろうか…?


「こ、紺野さんッ!!!」

「まずいですこれは…彼女は生きているの?それとも…」


「安心しな。そのガキは生きているよ」


どこからともなく聞こえる若い男の声。
僕はペンライトを前にかざす。


ズズッ…


信じられない光景だけど…真っ黒な床から一人の男がゆっくりとせり出してきたんだ。

こいつが…吸血鬼?

それは僕が想像していたよりも『人間』であった。
こんな普通っぽい若者が…吸血鬼なのか?


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…



184 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/30(水) 04:57:50 0

「そのライト、眩しいな…明かりを目の当たりにするのは久し振りなもんでね」

その男は微かに笑ってそう言った。

「…あなたが吸血鬼ですか?」

紺野さんの問いに、そいつは静かに頷く。
吸血鬼って、もっとオドロオドロしてるもんだと思ってたけど…
案外と人間臭くて、なんだか拍子抜けするな。


「『つんく』のヤツが最近ここら一帯をうろついていたから、これは何かあるなと
思っていた…なるほど、俺をかぎ回っていたってことか」


…つんく?
つんくってなんだ?

「まぁここに来たのは一人ではないと思っていたけどさ、まさか三人もいたとはなァ…
そのジャージ着たようなスタンドといい…お前等『つんく♂プロデュース』ってやつか?」

「何の話だか存じませんが…あなたが柴田さんを『新たなパワーを手に入れる』
なんてポスターで騙し、スタンド使いに変え、自らも吸血鬼となった生きるカスで
間違いありませんね?」

「柴田?…あァ、去年研究所に来たバカな女子高生か。うん…確か『新たなパワーを
手に入れる』ことが出来るって本当ですか!?なーんて必死そうな目して転がり
込んできたっけェ。俺は嘘ついてないよ、こうして俺が『新たなパワーを手に入れる』
ことができたんだからな。つーか、あの女子高生生きてたのか。スタンド使いに
なったということか…」



185 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/30(水) 04:59:31 0

紺野さんと吸血鬼の睨みあいは続く。
れいなを指差して紺野さんは言った。

「この子を返して下さい」

「…さっきからキミ、この『しゅう』に対してずいぶんと偉そうだねェ。
なぜ、このガキを殺さずにおいたか…わかってるのかい?」


ボシャンッ!!


『しゅう』と名乗った男が黒い床にいきなり沈んだぞ!!
な、なにをしたんだ!?

「…ハッ!!まずいッ亀ちゃん!逃げるんです!!!」

「え、えェッ!!?そんな!!れいなは!!!!!?」

「今は逃げるんです!!さっきも言ったでしょう!!!二人ともやられるのだけは
避けねばならないと!!!このままではやられるッ!!!!気付くのが遅すぎた!!!
私達は…私達はすでにッ!!!!!」

「俺の『シングルベッド』の領域に入ってるんだよぉぉッ!KUWAAAAァッ!!」

紺野さんの声を遮って、吸血鬼が叫んだ!!!
どこだ!どこにいるッ!!!!



186 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/30(水) 05:01:16 0

その時、突然床が揺れ、僕の目の前に吸血鬼が立ちはだかった。
一瞬だった。


「教えてやろうッ!!なぜあのガキを殺さなかったか…それはお前達をまとめて
血祭りにあげるためだ!!!まとめてこの『しゅう』が平らげてやるためだああッ!!」


この瞬間、ようやく僕は理解した。
床や天井が黒くなっているワケを。
紺野さんが今立っている位置の床は、木で出来ているみたいだ。
ペンライトで照らしているのでわかる。
僕が立っている床は真っ黒だ。
あの床のあたりから、まるで黒いグラデーションがかかって影が出来ているんだ。
ペンライトの光りでも照らせない影が。
そしてこいつは…この真っ黒な影の中を自由に移動出来るんじゃないんだろうか。
それがこの吸血鬼の…『シングルベッド』とかいうスタンドの能力!!
僕はシングルベッドが作り出した影の中に立っていたんだ!!!

「UREEYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!!!!!!!」

でも紺野さんの言う通り、気づくのが遅すぎたな…僕は。
そいつが手を振り上げる。
手刀で切りかかるつもりだ。
吸血鬼のパワーは尋常でないものと聞く。これを食らったら、いったい
どんな激痛に襲われるのだろうか。
それとも、切断されて即死かな…
なんてこった…さゆ…

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



187 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/30(水) 05:02:26 0

「正中線三段突き!!ハッハッ…チェストォォッ!!!!!!!!!!!」

ドギャアアアスッ!!!!!!!

僕の目の前に立っている吸血鬼の腹から、黒い拳が突き出してきた。
紺野さんの掛け声と同時に!!!

「…なんだ?貫いたのか?この俺を?」

吸血鬼が腹から突き出た紺野さんの『ニューオーダー』の拳を眺めて言った。
こ、これは致命傷のはず…

「腕が抜けない…亀ちゃん逃げて!!早くッ!!!!!!」

「え?」

ズボォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!!!!!

吸血鬼が…紺野さんに腹を貫かれたまま黒い床に沈み始めた!!

「わあああああああッ!!!!!!」

「こ、紺野さん!!!」

なんてことだ…紺野さんが…黒い床に沈んでいく!!!
ぼ、ぼ、僕のせいだ!!!!!
僕は紺野さんを引き上げようと、彼女の服を掴もうとするが…

「さわらないで!!!」

彼女はそれを止めた。


188 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/30(水) 05:05:55 0

「な、なぜ!!!?」

「こいつにつかまれたら終わりです…つかんだものを引きずり込んで…早く逃げて…
サイレント・エリーゼで音を消して…こいつは…音で…ガボッ」

ジャプン…

紺野さんが真っ黒い影の中に飲み込まれてしまった。

「あ…あ…」


あなたは…お人好しすぎる。
言いたい放題喋るれいなに何一つ言い返さないし…
それにあなたはここに入る前に言ったじゃないか!!
お互い助け合いはしない…って!!!!
なのに…僕を助けようと自ら吸血鬼のスタンドの領域に入ってくるなんて…
あなたともあろう人が…口だけなんて行動をとるなんて…ッ!!

…僕はそんな人の言う事なんてきかない!!!

逃げたりなんか絶ッ対にするもんか…僕はあなたが生きてると信じてる。
僕が…僕が紺野さんとれいなを助け出してやる…ッ!!!!!!!!!


ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…


282 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/01(木) 17:00:00 0
「・・・これで二人、だな。一人になっちまって可愛そうにそうにそうにそうに…」

吸血鬼『しゅう』の低い声がどこからともなく響き、反響した。
こんなヤツに僕らの新鮮な血をチューチュー吸われてたまるか。
お腹や肩の傷が痛むが、そんなの意に介してる暇もない。
…見てろよ。

「サイレント・エリーゼ!!!!」
ギュウウウウンッ!!!!

「ふん、そんな小便くさいスタンドで何ができるできるできるできる…」

「ほざけ吸血鬼!!!ミュージック…(こちらに)いらっしゃ〜い!!音は消えるッ!!!」
パヒュンッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして、屋敷は無音の世界へと変わった。
僕の耳にも、おそらく吸血鬼の耳にも、床が軋む微かな音すら聞こえなくなる。
紺野さんはヒントをくれた。
こいつは音で…と。
(音…音ですね紺野さん)
吸血鬼が影の中に潜り込んだ時、一体どうやって僕らの位置を察知しているのか。
それは『音』だ。
最初に足をつかまれた時、僕は影の上で足音を立てた。
その次に逃げようか躊躇していたときも、僕は足音を立てた。
恐らくれいなも、なにも知らずに影の上で足音を立てたに違いない。
紺野さんはそれを見切ったんだ。
たった数分の間に、敵の攻撃する法則を見切ってしまうとは…
実はかなり実力あるんじゃないのか?脳ある鷹は爪を隠すってやつかな…
さぁ…音の無い世界で、僕を探すがいいさッ吸血鬼。
僕を見失ったお前が次に影の中からそのシラミがタマってそうな頭を出したとき!!
僕はお前に大打撃を与えてやるッ!!!!


283 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/01(木) 17:01:26 0

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・

「・・・・・・・・?・・・・・・・・!!?(音が聞こえない・・・?どこへ言ったクソガキがあッ!!?)」

出した!!!
ヤツの頭は三歩先!!しかも後頭部をむけているぞ!!!
僕は音も無く急接近し…そして!!!

「くらえぇッ!!!デラデラデラデラデラデラデラデラデラデラデラデラックス!!!」

エリーゼの攻撃力は皆無に等しい。
だけど敵は吸血鬼だ!!
本体になら通常の打撃がきくハズ!!
だから僕自身の足の連撃でぶっ飛ばしてやる!!!!
中学のころ陸上部で鍛えた足だッ!!決して柔じゃないぞ!!!!

「潰れろッ!!僕の足で潰れろドクサレがあああああああああああッ!!!!!!!」

グシャゲシャメシャゴシャグショゲシャアアアアアアアアアッ!!!!!

「・・・それで?」

吸血鬼は涼しそうな声で言った。
…まったく効いてない?

「この俺に…吸血鬼となったこの俺に…そんな生易しい攻撃が通用するとでも
思ったのか?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


284 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/01(木) 17:02:36 0

ガシィッ!!!

吸血鬼が僕の足を掴む!!
影の中に引きずり込む気か…ッ!!?

「まぁおかげで肩こりが取れたよ…とでも言っておこうか」

「このまま…僕を引きずり込むのかい?」

「このまま血を吸ってやってもいいが」

「やめた方がいいんじゃない?」

「何を言ってるんだお前は。お前たちはここで全員死ぬのだ」

「見逃してくれるつもりはないんだね?」

「ああ、まずはお前のうまそうな肉体から食らってやるぞ」

「こんなに頼んでも?」

「しつこいぞガキんちょ」

「…じゃあアンタの負けだよオッサン!!サイレント・エリザベス!!!」
ドギュウウウウウウウウン!!!!!!

『R.O.G.E.Rッ!!了解シマスタ!!!!!!』


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!



285 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/01(木) 17:04:50 0

「な、何ィッ!!!なんだこのスタンドは!!!!!!」

「『音』が戻っていたことに気付かなかったのか?お前に蹴りのラッシュを
お見舞いする直前にエリーゼを引っ込めておいたのさ。だから音が戻った!!!
そして…攻撃力を持つエリザベスに切り替えてお前の後ろにつかせておいたんだッ!!」

「き、貴様…今のお前自身の攻撃はフェイクだな!!それにどういうことだ…
スタンドは一人一体のはずッ!!!?」

「ああ、一体さ。僕のスタンドは進化するスタンドなんだ!!!!
そして改めて僕の蹴りの連撃を…食らえッ!!!!!」

形勢は逆転したね…!!
うりゃあああッ!!僕自身とスタンドで挟みうちにしてやるーッ!!!!!

「『モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグモグッ!!!!!』」

ドガガガメシャバキゴシャアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!1


「お、お、おべれえええええええええええええええッ!!!!!!!!!!?」


「『ウェー!ウェー!!(上へ!上へ!!)』」


ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!



286 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/01(木) 17:06:34 0

決まった!!!!!
吸血鬼に僕の必殺技が決まったぞッ!!!
やつの身体は重力の抵抗に逆らい、引力を無視して宙に浮かび上がった。

「げぇーッ!!なんじゃこりゃああああああああッ!!?」

「どうだッ!!僕のエリザベスは蹴ったものを無重力にする能力!!!スタンドの
自由も利かなくなるんだ!!!一度に一つしか軽く出来ないけどね!!!!」

ドシャッ!!

天井の真っ黒い影から逆さ吊りにされていたれいなが床に落下し…

プカー…パシャン!!!

そして影の中に引きずり込まれた紺野さんが水面から浮かび上がってくるようにして
床から吐き出された!!

「ウ…ウゥ…」
「ハァ…ハァ…」

ふ、二人とも無事だ…ッ!!!
やった!!!

「見たか吸血鬼!!!二人は返してもらったぞ!!!」

勝った!!
あとはれいなが目を覚ますまでこうやって動きを止めていれば…
このクソッたれを倒せる!!!

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…


288 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/01(木) 17:10:09 0

ところが、意外なことが起きた。
僕の予想では、かなりの動きを制限された吸血鬼は焦り、もがくかと思っていた。
だが僕の考えとは裏腹に、この吸血鬼は…

「くふふふふふふ…ははははははははッ!!!!」


大きな声で笑ったんだ。


「うははははははははははははははは!!!!!」

「な、何がおかしいッ!!?」

「いやな、昔聞いたことのある有名なセリフを思い出したんだ。しかしこれには驚いた。
地に足がつかないということがこんなにムカッ腹立つことだったとはな…うん、
さすがの俺もマジに焦ったよ」

「お前がもうこの地球の大地を踏みしめることはないけどねッ!!」

「…お前、勝ったと思っているだろう?」

おかしい…何かおかしい!!!
状況的にはこいつの圧倒的不利!!…というより僕らが勝ったようなもの!!
なのに…なのになんだ?
こいつの余裕っぷりは…こいつの涼しそうな表情は!!!


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



289 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/01(木) 17:11:33 0

「何十年も前の話だが、とあるイタリア人がこんな言葉を口癖にしていたそうだよ」

そう言うと、吸血鬼は僕のことをジッと見つめた。
な、なんて気迫だ…ッ!!
でも気迫なんかで負けるもんか!!勝ったのは僕らだ!!!
そして、吸血鬼は言った。

「『勝ったと思ったとき、そいつはすでに敗北している』となァ!!!」

ババリッ!!!!!!!!!!

その時、吸血鬼の目が光った。
いや…光ったんじゃない!!!
なにかを発射した!?

シュゴォォォォォォォォォォォォォ…!!!!!!!!!

超スピードで何かが向かってくるッ!!!
これは…光線ンンンッ!!!!!!!?



290 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/01(木) 17:12:47 0

ボゴボゴォォォォォォッ!!!!!!!


「うぎゃああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!」


反応する間もなく、僕は吸血鬼の目から発射された光線に撃たれてしまった。
なんという威力!!!
右の鎖骨の下辺りをもろに貫かれ、僕は血をバリバリ噴出しながら吹っ飛んでしまう。
ヤツから離れてしまう…僕の…射程距離が…ッ!!!


「これぞ『空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)』!!高圧で体液を
目から発射してやったのだ!!!詰めが甘かったな『つんく』の送り子よ!!!
スタンドなどというチャチなもんだけに頼っている『しゅう』ではないわァ!!!」


ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!

316 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/02(金) 01:08:10 0

こ、こんな…バカな…ッ!!!
勝利はすぐ手の届くところまで来てたのに・・・
せっかくれいなと紺野さんを助け出す事が出来たというのに!!!

『忠告シマスかめりん様。今吹ッ飛バサレタノデ、アナタハ射程5mの外ニ
出テシマイマスタ。クソッタレ吸血鬼ガ復活シマス!!』

ち、血を流しすぎた…意識が朦朧とし始めてきたぞ。
気分も悪い…最悪の状況だ。

「さーて…再びこうして地面に足をつけることが出来たことに、俺は感激している。
幸せって意外なところから学ぶものよのぉーッ!!礼を言うぞ、『かめりん』とやら」

そして再びその木の床を、壁を、天井を、真っ黒い影のスタンドが覆い始める。

「我がスタンド『シングルベッド』…領域は約3mが限界だが、十分な広さだ。
相手が死に掛けの弱ったメス猫どもなら尚更な。さぁ、誰から引きずり込んでやろうか。
シングルベッドの作り出した影の中に、一人ずつ招待してやろう」


ヨロ…ヨロ…

「ふん…吸血鬼の分際でスタンドとは…油断してたばい」

れいなが…れいなが立ち上がった!!
けど、手首をバッサリ切られているれいなは、相当な血を流してしまったハズだ。
今だってフラフラしているじゃないか…
そんな身体で波紋が放てるのか!?

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


317 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/02(金) 01:10:53 0
「二人をこんな目に合わせたたのも全部れいなのせいっちゃ。未熟だったと…
この責任は…必ず取ってやるたい!!例えこの命が燃え尽きようとも…!!!」

「む…ネコ足立ちの構えか。中国拳法の一つだな…では望み通りお前から
葬ってやるとしよう…お前は血を吸って殺すと予告するッ!!!!!」

ジャポン…ッ
吸血鬼が地面の中に潜った!!
ネコ足立ちの構え…きっと本能でやってるんだろうな、れいにゃは。
しかし…どう見てもれいなは今ヤケになっているッ!!!
恐らく、自分の慢心が招いた事態だと思い込んで…
吸血鬼を倒すには直に波紋を流さねばならないと聞いたけど、まさか…れいなのヤツ、
吸血鬼と心中するつもりじゃないか!?
わざとヤツの攻撃を食らって相打ち覚悟のつもりなんじゃないか!!?

「さぁ…早く引きずり込みにくるとよ…」

スッ…
その時、紺野さんが意識を取り戻し、立ち上がった。

「覚悟とは…犠牲の心ではない…」

「…紺野さん、これはれいなのオトシマエたい。アンタたちは死なせないと。
たとえ刺し違えてでも…れいながヤツを葬るばい」

「それは…追い詰められた根性ですよ。そんなものは今必要ありません。
今、この状況下で必要なのは…真の覚悟です」

「覚悟ならもう決めてるっちゃ!!」

「覚悟とは…犠牲の心ではないッ!!!ニューオーダー!!!!」
バヒュン!!!!


318 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/02(金) 01:12:25 0

紺野さんがスタンド『ニューオーダー』を発現させる。
そして次にとった行動に、僕とれいなは震え上がるほど驚いた!!!

「むぅッ!!!!!!!!!」

トシュッ…ブッシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!!!!!!!

それは物凄い勢いでほとばしった。
紺野さんが…スタンドで自分の左の手首をザックリ裂いたんだ!!!

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!

「う、うぐ…ああッ!!」

紺野さんの腕から噴き出す鮮血は、壁や床、天井を赤く染めていく。
とんでもない光景だった。
自分でも血の気が引いていくのがわかる。

「あ、アンタなにやっとるんとやあああああッ!!!!?」

「覚悟とは!!暗闇の荒野に!!進むべき道を切り開くことですッ!!!自分の運命に
『賭け』などと下らないことをしてはいけないッ!!!私達は…必ず勝つんです!!
全員無事に生き残るんです!!!!!」

そう言うと、紺野さんは走り出した!!!
影の中でジタンダと大きな足音を立てて!!!

「やるんですッ!!!!!あなたの力で…道を切り開くんですッ!!!!!!」

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッド…



319 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/02(金) 01:13:34 0

「UREEYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYィッ!!!!!!」

紺野さんが叫んだのと同時に、吸血鬼が影の中から姿を現した!!
彼女の足元に!!!!
や、やられてしまう!!
紺野さんが吸血鬼に血を吸われてしまうッ!!!!!

「デュエル・エレジーズッ!!!!!!!!!!」


バキ…バキバキパキバキパキパパパパアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!


吸血鬼は動きを止めた。
れいなのスタンドが床を殴り…紺野さんが作り出した血の池を石に変えたんだ!!!!


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!



320 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/02(金) 01:15:24 0
「な…んだ?これは…石?」

そうか!そういうことだったのか!!!
紺野さんが床や天井に血をかけていたのはこのためだったんだ!!!
吸血鬼は影の中に潜んでいられることが出来るが、僕らを倒すための決定的な
一撃を加えるためには影の中からその身を出さねばならない!!!
血溜まりの床から身体を出すという事は、紺野さんの血を頭からかぶる事と同じなんだ!
その血を石に変えることにより、ダイヤモンドよりも硬い拘束具を作ったんだ!!!

「ぬッ…か、硬いぞ!!こいつはあああああッ!!!!!」

その隙をれいなは逃さなかった!!!
れいなは吸血鬼に向かって走り出す!!!!

「コオォォォォォォォォォォォ…」

「その呼吸…は、波紋ッ!!?」

「その忌まわしき存在ッ!!この闇の中に沈めてやるたい!!!」

「ほざけこわっぱ!!パウッ!!!」

ビスビスッ!!

ああッ!吸血鬼が牙を吹き飛ばしてきたぞ!!
だが、その牙はれいなの頬をかすめただけだった。

「小細工に堕したか…食らえ!!橙色の波紋疾走(サンライトオレンジ・オーバードライブ)!!!!」

「WWWREEYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!!!!!!!!」

メメタァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


321 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/02(金) 01:17:28 0

「NUGAAAABAAAAAAAAAAAッ!!!!!!!」

「どぉぉぉぉぉッ!!!ぶっ壊すほど…シュートッ!!!!!!!!!!!!」

バリバリバリ…ドッパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!

決まった!!!!
れいなの拳が、吸血鬼の顔面を捉えたんだ!!!

「MMMMMMMMOOOOHHHHHHHHHHHHH!!!!」
ボシュッ!!!

「吸血鬼が…塵になっていく…」

光の粒がプツプツと吸血鬼の身体から弾け、溶けているみたいだ。
これが…これがれいなのもう一つの能力の真の姿。
太陽エネルギー…波紋!!!!!

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!

「あ、熱いィ!!この『しゅう』が…この『しゅう』がああああああああッ!!!!
『つんく』の送り子なあああんぞにィィィィィッ!!!!!」

「なんのこっちゃわからんけど…ヴァポライズ(気化すると)」

「KUWAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!!!!」

ボアッ!!ドシュウウウウッ!!!!!!!!!パラパラ…


吸血鬼は一際眩しい光を放ったあと、暗闇の中に消えた。


322 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/12/02(金) 01:20:02 0

「やりま…したね。さすがは…」

ドサッ…
紺野さんはいい終える前に、力なく座り込んでしまった。
この人…僕と共に戦闘したことは全然なかっただけにわからなかったけど…
とんでもないことを考え実行する人だ。
助けないと言いつつ僕のことを助け、れいなのサポートを捨て身で行うなんて…
僕とれいなはこの人に助けられたんだ。
そしてその行為には『信頼』できるものがある!!
揺るぎのない、真実の信頼がこの人にはあるッ!!!

「紺野さんッ!!」
れいなが直立不動で叫んだ。

「あなたの命がけの行動ッ!れいなは敬意を表するたいッ!!!」

「いえ…命がけとはコンコンのことじゃないです…いてて。命がけというのは…
亀ちゃんのことです。私達を助けるために一人で闘い、恐らく一番重傷なのは
あの子ですよ」

こ、紺野さん…あなた、人間出来すぎだッ!!!
やっぱり僕には、この人が同じ学年だなんて思うことは出来そうにないな。
けど、僕もいつかこんな器の大きい人間になりたいと思った。

指令『吸血鬼を葬れ』は遂行したッ!!


吸血鬼しゅう 死亡
スタンド名  シングルベッド

TO BE CONTINUED…