716 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/14(月) 11:43:20 0

銀色の永遠  〜青春アミーゴ〜


「ねぇねぇ、こないだ先生に頼まれて英検の申し込み用紙
整理してたんだけどさぁ。すごいやばいもん見ちゃったんだけどー」
「なになに?どうしたの?」
「亀梨くんの誕生日ね、私らより一年早かったの。一個上みたいなんだよねー」
「えーっ!マジで?あの人留年したのかな?」
「あ、そういえば入学式の時いなかったよねー」

ったく、年上だったらなんだってんだよ。
あーいう風に人を半分以上うわべで判断するヤツは嫌いだ。
好きで留年したんじゃねーっつーの!
バイクで事故ったからだっつーの!!
あーあ、気の合う連中はみんな二年生になっちまって…orz
去年、バイクとりに行った。高校生活エンジョイするつもりでさ。
でも、事故って終わった。
それもこれも全部あのわけわからん『お化けバイク』のせいだ!!
骸骨が乗ったバイクが俺に突っ込んできたんだ。
おかげで俺は半年のあいだ入院、中古だったとはいえバイクは大破。
ローン、まだ残ってんだぜ…親に金も返さなきゃなんねーし。
それ以来、俺の人生はブルーよ…イヤなことしかねーぜ。
…わり、嘘だ。イヤなことだけじゃなかった。
事故ったおかげでいい思いしたこともある。
一つは、顔面怪我して手術した際、なんか前よりカッコよくなっちゃった事。
そしてもう一つは…

「おい亀井、放課後いつもの4人でドゥ・マゴろうぜ。お前のおごりで」
「そーやって毎日のよーに僕にたかるのやめて下さいッ!!!」

…なかなか好みの女の子と同じ学年になれたことだ。


753 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/14(月) 20:57:15 0

初めてあの子のことを知ったのは四月の終わりくらいだった。
ちゃんと進級した赤西が俺のとこへ遊びに来たときに言ったんだ。

「おいおい、1年A組にけっこう可愛い子いんじゃん。え?お前
C組なの?ふざけんな」

そう言われて一緒にその女の子を見に行った。
その子は黒髪ストレートで、なんつーか影のある感じがした子だった。
教室の隅で、友達と騒ぐことなく、ポツンと席に座っていた。

−暗そうな女−

最初はそう思っただけだった。
ところが数日後、その子を廊下で見かけたんだが…ガラッとイメチェンしていたんだ。
アンチ黒髪ストレートとも言える、茶髪ショートに変身してたんだよ。
中等部の女の子と笑いながら話しているその姿に、俺はやられてしまった。
ありゃあ一撃だったな。
やっぱり女の子は笑うと可愛い、そう思った。
特にあの子は。
俺、年下に惚れちまったのか?
そう思うと、当時はマジでショックだったな。
でもさ、暗くてパッとしない子が人気者になる…マジで素晴らしいことだと思わない?



754 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/14(月) 20:59:36 0

あれから数ヶ月。
もうすぐ11月になろうとしてるのに、あの子とまったく進展がない。
きっかけもないし…顔見知り程度にはなれたんだが、それだけじゃ満足できない。
来月にはクリスマス、年末、正月、バレンタインと行事が続くのに、こりゃやばいよ。

…そろそろマジで動かねーと!!


ある日の昼休み。
俺は意を決してその子に話しかけることにした。
中等部のガキが二人ほど一緒にいたが、もうそんなことは構わない。
そんなことで躊躇してたら、いつまで立っても何もかわりゃしないだろう。
またこの次はないかも知れない、逃した魚って大きいんだぞ。
出会い頭が大切なんだ。

「ねぇ、きみ」

後ろから声をかける。
反応はない。
気付いてないのか、シカトしてるのか…
「ねぇ」
気を引き締めて、もう一度。
すると目当ての子ではなく、一緒にいた中等部の生徒がこちらを振り向いた。
「…?」
「あの」
その中等部の生徒は、俺の格好を見て高等部の生徒だと判断したのか、
彼女の腕を引っ張る。
「ん、なに?小春ちゃん」
「亀井さん、ホラ」
小春と呼ばれた女子生徒に指差され、彼女はようやく振り返った。
やっぱりキュートだ。


755 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/14(月) 21:02:34 0

「あ、亀梨くん。こんにちは」
その女の子、亀井絵里がちょこっと頭を下げる。
俺も「おぅ」と言って頭を下げた。
「僕になんか用?」
「うん、今夜あいてる?」
「へ?」
彼女は俺が何を言ってるんだかよくわからないといった感じだった。
そりゃ無理もない、大して親しくもない同級生の男にこんなこと訊かれたって…なぁ?
「ご飯でも一緒にどう?」
俺の心臓の鼓動は、もうバックンバクンだ。
だが、きょどったらダメだ。
挙動不審はいくら顔がよくてもかっこ悪いものだし、何しろ頼りなく映る。
ちょっとぐらい横暴に見えるくらいが、女の子にはちょうどいい…ハズ。
「うーん……」
亀井絵里は首を傾げて、隣の口元にホクロある子をチラチラ見ながら苦笑いしている。
おいおい、なんで悩むんだよ。
なんか…断られそうな空気だな。

「行ってきたら?」
「え?」

一緒にいたもう一人の子が、亀井絵里にそう促した。
「男の子がこうやって女の子を誘うのは、相当な度胸がいるハズなの。
その想いを無駄にしちゃいけないの」
「え、え、別にそーいうことじゃないと思うんだけど…ねぇ、亀梨くん?」
そんなこと訊かないでくれ。
なんて答えたらいいか、わかんないじゃん。
「亀梨くん?」
「来れんのかよ、来れねーのかよ」
やべッ、思わず強い口調で言ってしまった!!
冷静になれよ、俺…orz


756 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/14(月) 21:03:50 0

「ごめんね、今日はちょっと…」

…ほれみろ、終わったな。
でも、お前が悪いんだぞ…と心の中で誰かに言われた気がした。
俺はガクッと肩を落とす。
あー…面白くない。

「…なんて言ってるけど、絵里ホントは行きたいんですなの」
「え?」
「ちょ、さゆ何を言って…」
「あ、そういえば亀井さん、さっき『今日一日なーんもすることない』って
言ってましたもんね」
「小春ちゃんまで何を…」

な、なんだこの話の流れは。
これはもしかして…

「だから絵里、行ってきたらいいの」
「すこし色気づいた方がいいですよ」

「うぅ…まぁさゆがそう言うなら…」

や、やったああああああああああ!!!!!!!!!!
中等部の二人GJ!!マジでGJだぜ!!!!



757 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/14(月) 21:04:41 0

「じゃ、じゃあ夜の七時に杜王駅前のバスのロータリーんとこで待ってるからさ!!」
「うん、わかったよ」
「あ、絶対私服で来てな!じゃあまた後で!!!」

俺は彼女にそう告げると、俺は緩みきる顔を見られたくなくて、背を向け
急いで教室に戻っていった。

「あれ、亀梨なにやってんだ?帰りの準備?はえぇだろ」
「わり、今日もうふけるわ。替え玉よろしく」
「どうやってだよ…」

マジ、バリバリにセットしねーと!!!
ん、こーいうときってやっぱ俺の会計もちかな?
まぁいいや☆今月分のローンはもう払ったし!!


776 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/15(火) 02:26:58 0

午後4時。
ちょっと早めに家を出たのにはワケがある。
俺はぶどうヶ丘総合病院の前に来ていた。
もうすぐ退院できるらしい親友のお見舞いのため、そして、
今日の報告をするためだ。
自動ドアをくぐり、エレベーターの上ボタンを押し、降りてくるのを待つ。
「えーっと…確か五階だったかな?」

チーン…

お、意外と早くきたな。
エレベーターの扉が開く。
「…あれ?」
中から出てきた人物に、俺は見覚えがあった。
Gジャンにベロアのスカート、黒いハンチング…私服でわかりづらいが間違いない。
さっき亀井絵里といっしょにいた中等部のガキの一人だ、たぶん。
中学生とは思えない表情をしていたが…誰かここに知り合いでも入院してんのかな?

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

…まぁ、俺には関係ないか。
それにしても、女のオシャレってわからん。
あれって、良いの?

チーン…

五階についたところで、俺は考えるのをやめた。


777 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/15(火) 02:31:00 0

『527号室  山下智久 成宮寛貴』


「よーっす」
俺はノックもなしに、その病室に入った。
「おぉぉぉッ!!びっくりした!!!」
「よぉ山下。もうすぐ退院らしいじゃんか。あれ、成宮は?」
「お、あいつなら下で平山さんと会ってるよ」
へぇ、あいつらデキてんのかな。
「成宮は退院まだなのかよ」
「アイツは…拙者より重傷だったからな」

ふ〜ん。
それにしても、こいつらはいったい何してこんな重傷を負ったんだろう。
いつもヘラヘラしてるこいつらがどっかの誰かとケンカするとは思えないし…。
山下たちは、なぜかケガの理由を一切教えてくれない。
事故ったなんて言ってたけど、たぶん嘘だろう。事故で火傷するかよ。

「つーか、なに?そのテーラード。亀梨、お前…もしかしてキメてる?」
山下が声の調子を変えて、俺のジャケットを指差す。
「ん、かっけーべよ。ワインレッドだぜ、ちょっと流行りに乗ってみた」
「お前、拙者らのお見舞いにわざわざキメてきたのか…」
「んなわけねーだろw」
立ちっぱなしもアレなんで、俺は成宮のベッドにドスッと腰掛ける。
「つーか聞いて驚けよ!!俺ついに誘っちまったんだ」
そうそう!
俺はこの話を聞かすためにここに来たんだ!!
「誰を?何に?」
「言わすなよわかってるくせに。あの子だよ、前に言ったべ。一年生の亀井絵里!」

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!


778 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/15(火) 02:34:36 0

…って事実上は俺も一年生だけどさ。
「亀井絵里…あぁ『亀』」
「『亀』?まあなんでもいいけどさ。今日これからお食事だぜ!!俺、いい居酒屋
知ってんだ!!熱いだろ?なぁ?」

それから俺は、親友の山下に今の興奮をありったけぶつけたのだった。
もう今から楽しみでしょうがないからな!!

しばらくして落ち着いてきた頃、山下がこんなことを口にし始めた。
「拙者、やばいかもしれん」
「何が?」
やばいって、何がやばいのだろうか?
「ああ…ちょっと今狙われててな」
「狙われてるって…?誰に?なんで?」
山下はあさっての方向に視線を向ける。
俺は、前々から思っていたことを口にしてみた。
「…なぁ、お前たちのその怪我、ホントは誰かになんかされたんじゃないのか?」
「・・・・・・」
「おい、いいかげん教えてくれよ。黙るってことはそうなんだろ?もしかして、
俺らと同じような力を持つヤツとか…」

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッド…



779 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/15(火) 02:36:29 0

「本当にやばいヤツらだ…やっぱり気が変わった、お前を巻き込むわけにはいかん」

「何言ってんだよ!なんなら二人で仕返ししに行こうぜ!たまには頼ってくれよ。
俺たち、いつか二人でビッグになるって約束したじゃんか!!それに、
地元じゃ負け知らず…そうだろ?」

ガチャ…

俺が意気込んで立ち上がると同時に、誰かが病室に入ってくる。
「いや〜やばい、やばいですよ。平山タン!ハァハァ…って、よう亀。おひさ」
おひさ、じゃねー。
顔面ゆるゆるにしやがって…まぁその気持ちわかるけどさ。
「まぁ、いいや。山下、また報告にくっからよ…俺のラブストーリーのな」
そう言って、俺は病室をあとにした。

バタン…

「あれ、もう帰っちゃうのかよ亀…ん、そういや亀梨も『亀』なんだな。
なぁ山P」
「・・・・・・」
「山P?」
「成宮。明日、外出許可でももらって買い物行けよ」
「松葉杖でかよwめんどいwww」
「いいから」
「…あ?あぁ…わかった」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



780 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/15(火) 02:40:41 0

山下達の病室を出てすぐ、俺は懐かしい顔に出くわした。

「あれッ!チャーミーじゃん!!チャーミー石川!!!」

石川梨華。
こいつは去年同じクラスだったからよく覚えている。
確か、演劇部だったかな?

「はい、どーも」
「浮かない顔してんね。つーかまだ入院してたの?ウケるw」
「うるさいわねー!このままじゃあたし留年よ。どうしよう…」

半年以上入院してたら、そりゃ単位終わってるだろうな。
チャーミー、乙。
でも、仲間が出来て俺は正直嬉しいw

「ま、いいじゃん。そしたら来年一緒に二年生やろうぜ。じゃーな、グッチャー」
「それあたしのネタなんですけど!!」

笑いながら彼女に手を振ると、俺はエレベーターに乗った。


784 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/15(火) 03:49:10 0

夜、七時。
亀井絵里はちょっと遅れてやってきた。
「ごめんね、待った?」
「いや、今来たとこ」
大嘘。
俺はかれこれ一時間以上前からバスターミナルにある池の前で亀を観察していた。
ま、基本だよな。

「なぁ知ってる?この池、亀がいるんだぜ?」
「知ってるよ〜。こないださゆとね、ここの亀つついて遊んでたんだ」
「おい、そりゃ弱いものイジメだよw可愛がってやんねーとさぁ。
ほら、俺らの名前も『亀』がつくし、絶対いいことあるぜ」
「あ、そういえばそうだね!!奇遇だねェw」
「だろだろ…あのさ、俺、君の事なんて呼んだらいい?」

これこれ、この流れ。
さっきずっと、池の亀を見て考えてたんだ。彼女のこと、なんて呼んだらいいかなーって。
『さん』付けは何か遠い感じするし『ちゃん』付けは俺のキャラじゃない…。
かといって、いきなり呼び捨てっつーのもなぁ。
彼女はなんて答えるだろう…

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



785 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/15(火) 03:49:45 0

「僕のこと?なんでもいーよ☆」

そういう返答が一番困るってことが、わからないのだろうか?
つーかこの子、自分の事『ボク』って呼んでるんだ…

…可愛い!!!

「ま、まぁあれだよな。君、まわりの友達から『えりりん』って呼ばれてんだろ?
『亀井』と『えりりん』で、親しみを込めて『かめりん』って呼ぶよ」
「じゃあそれでいいんじゃないかな?」
「お、おう!じゃあ行こうか!!」

俺、なんか気持ちわりーな…そう思いつつも、気持ちは有頂天で、
そんなこと考えてる暇もなかったのだった。

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッド…



786 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/15(火) 03:51:05 0

「えぇッ!!ダメなんすか!?」
「はぁ…身分証明書を出していただかないと…」

居酒屋の姉ちゃんに身分証明書をせがまれてしまった俺は、激しく焦っていた。
とりあえず、かめりんには外で待っててもらっているが…
マジふざけんなよ…orz
どうしても、この店に入らなきゃならないんだよ俺らは!!

ちなみに、居酒屋に来たのには変な意味はない。
酒は気持ちをハイにさせるために使う。
そうすれば、例え微量の酒でも初対面という<壁>はなくなるハズなんだ。
よく、女を酔わせてホテルへGo!なんてヤツがいるが、俺はそういうんじゃないよ。
そんな手を使わないと女を抱けないみみっちぃ男じゃないからな。
下心か…そんなもんのために酒を使うなんて実にくだらない。
誇りのないバカのすることだ…酒が可愛そうだぜ!!

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!!


787 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/15(火) 03:53:28 0

とにかく、こうなったらお諮問等だ!
これで負けたら、他に行くあてがなくなっちまうからな!!!
くそ…こないだ赤西と来たときはすんなり入れたくせに…ッ!!!!

「わかりました、じゃあ古き中学時代の担任に電話して証明してもらいますよ。
ええっと、本田先生の電話番号はと…」
「いえ、そういうんじゃなくて…なんにせよ、身分証明書お持ちでないなら
ちょっと無理ですね」

くそッ、ハッタリ失敗か。
それにしてもこの姉ちゃんむかつくなー!!接客態度わりィよマジで。
なんか腹立ってきた。

「申し訳ございませんが、お引取り下さい」
「わかりました。じゃジュースでいいです。もち、お姉さんのジュースで」

バチコーン…


801 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/15(火) 18:15:46 0

「へぇ〜亀梨くんって野球出来るんだぁ」
「うん、こう見えても元選抜メンバーだからさ。しかもピッチャーですよ。
もう昔みたいに早い球は投げられないけどね」

結局あのあと、杜王町の駅前にあるファミレスで晩御飯を食べながら
おしゃべりするにとどまった。
打ち解けてしまえば意外とベラベラ話す子だったので、わざわざ居酒屋に行く
必要はなかったようだ。
腕時計の針は、十時五分を指している。
そろそろ帰宅時間か…もう少しくらい一緒にいたいな。

「なぁ、このあと…」
「・・・・・・・・・・」

ちぇッ…またか。
かめりんは会話の途中でも、たびたび携帯電話を取り出してはカチカチやっている。
誰かとメールでもしているんだろうか。
ちょっと不快だ、俺は彼氏じゃないとはいえ、男といる時くらい控えることは
できないもんかなぁ…ん?男!?
もしかして、彼氏とメールしてたりすんの?
えっ、つーか彼氏とかいんのかな!?
一度考えたらなかなか離れない。
ぎ、疑心暗鬼にかきたれられる…ッ!!

「ね、ねぇ、さっきから誰とメールしてるの?」

俺は勇気を出して訊いてみることにした。
「…ん?さゆだよ」
その一言で、不安が一発で取っ払われるから不思議だ。



802 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/15(火) 18:17:03 0

でも、ずいぶん仲いいんだな。
レストランでも、この子の話す内容は八割方その『道重さゆみ』のことだった。
以前一緒に観覧車乗ったとか、お弁当作ってもらったーとか、まるでカップルの
ノロケ話を聞かされているような、変な感覚に陥ってしまったくらいだ。
あと、前に変なイケメン二人組に襲われて、二人で入院してたことがあるとか。
あの時はさゆを守りたい一心だった…なーんてくすぐったい事言ってたな。
つーか君、女だろって話だ。
でもやっぱりこの子可愛いもんな、襲いたくなるヤツもいるだろう。

「これからどうする?」
「どうするって?」
「どっかでちょっと話していかない?うーん…そうだ、ぶどうヶ丘公園とかどうよ?」
「えぇッ、あそこ幽霊出るらしいよ。ハサミを持った女の幽霊…先輩が言ってたんだ。
あ、亀梨くんには見えないかも知れないけど」

見えない?
そりゃ幽霊なんて霊感強いヤツくらいにしか…なぁ?

「じゃあ肝試し感覚で…」
「やだ」

そんなハッキリ断られると、へこんでしまうよorz
まぁ、いいや。
今日は一緒に食事したという、大きな一歩を踏み出したんだ。
それだけでも、かなりでかいよな。

それから俺は、かめりんを駅まで送ると、浮かれ気分で家路についた。
たった一日だけの、幸せな気持ちの余韻に浸りながら。



803 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/15(火) 18:19:04 0

『527号室  山下智久 成宮寛貴』

次の日。
大寝坊して昼に起きた俺は、まっすぐ学校へ行かず、山下に昨晩の報告を
するため、ぶどうヶ丘総合病院に来ていた。
「おーっす…って、あれ?」
なんだ…誰もいないのかよ。
どーせションベンにでも行ってるんだろう。
「どっこらせっと」
あいつら…随分いい布団に寝てるんだな。
病院ベッドって、こうなのか?
あー…このまま横になったら、一眠りできそうだぜ…
「…ん?なんだこれ」
テレビの台の上に、無印良品かなんかで売ってる安モンの小さなアルバムを発見した。
これ、女子高生とかがよくプリクラ手帳代わりにするんだよな。
あいつ、そんな趣味あったのか。初めて知ったしw
「どれどれ、ちょいと拝ませてもらうよ…・」
俺は、適当に真ん中のページを開けてみることにした。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

パラッ…パラッ…

「おい…なんだよこりゃあ…」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



804 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/15(火) 18:21:42 0
ガチャッ…

固まった俺のいる病室に、誰かが入ってくる。
「わーすれもん、わすれもん〜」
「成宮…」
「あれ、亀じゃん。何してンの?てかお前、学校は?」
「これ、なんだよ!!!!」
俺は今見ていた小さなアルバムを成宮に突きつける。
「…お前、見たのか?」
「見たのかじゃねーよ!なんだよこの写真はよ…!!!」
そのアルバムに収まられていた写真はほとんど女。一人だけ男子生徒が
含まれているが、すべてぶどうヶ丘高校・中学の生徒だ。
最初は盗撮とか、やばい系の写真なんじゃないかと思った。
だが、ちがう。
写真の裏に、奇妙な追記がされていたんだ。
こんな感じに。

『高等部1年 高橋愛…殴ったもんを凹ませて、倍化して凸らせる』
『中等部3年 道重さゆみ…シャボン玉のような爆弾を出す』

そして、こんなのも…
『高等部1年 亀井絵里…遠くまで飛ぶ。音を取る。宙に浮かす。いきなり進化した』

中には、裏面が名前だけで白紙な写真もあるが…今はそんなことどうでもいい!!
なんだか嫌な予感がしてきた。
バラバラのパズルのピースが出来上がっていくようだ。
嘘だろ…まさか…ッ!!
「成宮答えてくれ!この写真の奴らは…みんなスタンド使いなのかよ!!」
「…やれやれ。山Pには黙ってろって言われたんだけどよ…まぁ、お前には
知る権利があると俺は思ってるから…教えてやる」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


805 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/15(火) 18:23:16 0

俺は、一目散にぶどうヶ丘高校を目指す。
畜生…なんで俺に何も教えてくれなかったんだよ山下!!
成宮は「親友だからこそ、危険なことに巻き込みたくはないって
山Pが言ってた」なんて言っていたが…

「そんなの優しさでもなんでもねェだろうがよぉぉぉぉぉッ!!!!!!」

成宮の話によると、このアルバムに載っている写真は演劇部の者で、
全員スタンド使いだということだ。
しかも、山下と成宮をやったヤツも演劇部だそうだ。
なぜか、部員の写真が一枚だけ抜けているようだが、そんなこと考えてる余裕は
今の俺にはなかった。

聞きたくなかった…こんな話は。
まさか…かめりんとさゆってガキが…あいつらを…山下をヤッたなんて…ッ!!!
この写真の裏の追記を見て、あいつらのケガのキッカケがわかったよ。

『前に変なイケメン二人組に襲われて、二人で入院してたことがある』

そうか…そういうことだったんだな…亀井絵里ッ!!!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



806 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/15(火) 18:25:47 0

昨日、山下が言っていた。
ちょっと今狙われててな、と。
今朝の11時ごろ、山下は外出許可をもらって病院を出たそうだ。
そして、成宮にも早く出かけるように促していたという。
俺の推理が正しければ…山下を狙ってるのは、山下をヤッた演劇部の亀井と道重!
きっと山下はこの二人が学校にいるうちに隠れ、ヤツらから逃げるつもりだ。
携帯の電波が届かないので、電話して本人から直接聞けないが…
たぶん間違いない!!
俺にはわかるんだ!長年あいつと一緒にいる俺には!!

キーンコーンカーンコーン…

学校の前まで来て、終業のチャイムが鳴り響いた。
「くそッ!!放課後になっちまう!!!!」
畜生…ヤツらに山下は…俺の親友は追わせねぇッ!!!!!!!!

「俺がここで食い止めてやるからな…『ミ・アミーゴ』ッ!!!!」
ドギュウウウウン!!!

「追跡を開始するッ!!!!!!」

俺は大きく振りかぶって…投げた!!

ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!!!!!


842 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/16(水) 05:26:51 0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

キーンコーンカーンコーン…

帰りのHRが終わり、僕は帰る身支度をしていた。
最近寒くなってきたからな、マフラーマフラーっと…
こないだバーバリーのマフラー買ったんだけど、色失敗したかなぁ。
ベージュってけっこう定番すぎたかも。いろんな人とカブってるんだ。
グレーにしとけば良かったかな?

さて、今日は部室に顔出さなくっていっか。
さゆが学校来てないみたいなんで、さっき電話してみたら、今日風邪ひいて
学校休んだのって言われたし、なぜか小春ちゃんも休んでるようだし。
あ、でも待てよ。
もし帰りにどこかで藤本さんと出くわしたら、どうせまたたかられるに違いない。
藤本さんが部活に出るわけないから…部室にいた方が安全だな。
うん、やっぱ部活出よっと。ドルフィンの復習でもしよう。
僕は教室を出ると、部室のある棟へ足を進めた。


演劇部のある棟の廊下を歩いている時だ。
僕は奇妙な音を耳にした。

ヒュン…トッ!…ヒュン…トッ!…

…なんだろうこの音。
まるで壁にボールをぶつけているような音だけど…

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


843 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/16(水) 05:28:24 0

だれかが一人でキャッチボールでもしてんのかな?
…って校舎の中でか!?
その音は次第に近づいてくる。

ヒュン…トッ!…ヒュン…トッ!…

ヒュン!!!!!!!!!!!!!!!!!

「うわあッ!!!!!!!」
それは突然現れた。
後ろから、僕の顔のすぐ左横をかすめて、すごい速さで野球のボールみたいな物が
通り過ぎていったんだ。
そのボールは、僕の前方にある壁に激突する。

キュルキュルキュルキュル…ッ!!!!!

す、すごい…すごい勢いでボールが壁にスピンしているぞ!!
まるで勢いが止まらないようだ、ボールがどんどんめり込んでいくじゃないか!!
そして…

ガオン!!!!!!!!!!!!

壁に、そのボールと同じ大きさの穴がポッカリ開いて、ボールは姿を消した。



844 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/16(水) 05:29:33 0

「なんだ…この穴は…」
これは…ただのボールじゃない!!
辺りを見回してみるが、僕以外に誰かがいる気配はないようだ。
お、おいちょっと待ってよ…じゃあ、あのボールはどこから来たんだ?

ヒュン…トッ!…ヒュン…トッ!…

「またこの音…ッ!?」
壁をぶち抜いて外に飛び出てったハズのボールが、また校舎の中に戻ってきたのか!?
再びキョロキョロと辺りを見回す。
だが僕の周りには、やっぱり人っ子一人、亀一匹いない。
だとすると…これは間違いない!!
いや、それしか考えられないッ!!!!

「え、遠距離からの…スタンド攻撃だッ!!!!!!!」

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッド


872 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 02:50:33 0

ヒュン…トッ!…ヒュン…トッ!…

壁や天井をバウンドしながら僕の方へと迫ってくる。
弾速はかなり早い!!
いったい何が目的でコイツは…演劇部を狙ってるヤツらと
何か関係があるのか?

ヒュン!!!

「おっと」
クネッ

迫ってきたスタンドボールを、僕はドルフィン・ダンスで滑らかにかわす。
うへへ…腕は落ちてない、完璧にマスターしたねこれは。

トッ!!

何かに激突してバウンドする音がした。
しまった!!跳ね返って戻ってくる!!!
「うわッ!!」

クネッ

あ、危ない危ない…
こいつ、いったい何を探知して僕を襲っているんだろう?

押尾のように、音や振動?
山下のように、第三者に頼って?

わからない…わからないけど、これだけは言える…ッ。
「けっこうヤバイかも!!!」


873 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 02:52:42 0

ヒュン!!
クネッ

かわしてるだけじゃダメだ!
なんとかしないと…もしかしたら消耗戦に持ってく気かもしれない。
とりあえず、この場は逃れるんだ!!
演劇部の部室はすぐそこ。とりあえず一時的に避難しよう!!!

ヒュンッ…ヒュンッ…
クネッ…クネッ…

スタンドの猛攻を華麗に掻い潜り、部室へ逃げ込むと、僕はドアをピッタリしめて
もたれ掛かった。
「ふぅ…危なかったな…」
まだ誰も来てない…なんだか変に落ち着いてる自分がいる。
僕も闘い慣れしてきたってことか…あんま嬉しくないけど。


ガスゥッ!!!!!!!!!!!!!


突如、脇腹に重たい衝撃が走った!!!!!
「う…え…?」

シュルシュルシュル…

ぼ、ボールが…スタンドのボールが僕の脇腹に…?


874 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 02:54:03 0

「めり込んでるううううううッ!!!バカなあああああああああッ!!!!!!!!」

そんなバカな!
ここは密室のハズ!!ドアはちゃんと閉めたんだから!!!
入ってこれるわけない…
「ハッ!!」
まさか…壁に穴を開けたようにドアに穴を…?
で、でもドアには穴どころか、傷一つついてないぞ。
それに穴を開けてきたのなら、ドアにもたれ掛かっていた僕の背中に
その衝撃が一瞬でも伝わってくるはず!!
なのになぜ…なんの抵抗もなかったかのように…
まさか…

「すり抜けたのか…ドアを…ッ!!」

まずい…この回転力はまずいぞ…!!
穴を開けられてしまう!!僕の身体に…穴をッ!!!!!!

「う…があああああああああああああああああッ!!!!!!!!!」

さゆ!!!!
もうダメだと感じて、彼女の顔を頭に思い浮かべたその時だった。

シュルルルルル…トンッ!!

どういうわけか、ボールの回転が収まり、僕から弾かれるように飛んで離れたんだ。
なぜだ…?
なぜ僕の身体を削り取って穴を開けなかったんだ…?

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッド…



875 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 02:56:48 0

身体から離れたボールは、部室の中で激しくバウンドを始めた。
なんだかよくわからないけど…とにかく、こいつをなんとかしなくちゃ!!

「サイレント・エリーゼッ!!!」
バヒュウウウウウウンンン!

このスタンドの本体がどうやって僕を察知してるかはわからない。
けど…イチかバチかだ!!
僕は教室の中心にサイレント・エリーゼを這わせ、能力を発動させる。

「ミュージック…いらっしゃああああああい!!音は消える!!!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

音で探知しているとしたら、これでこいつは僕を見失うことになるはずだ!!
…だが、スタンドのボールは依然部室内を跳ね続け、僕の方へ向かってくる。
違うのか!?音じゃないのか!!?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「うぅっ戻るんだエリーゼッ…あッ!!!!!!!!!!!?」

ヒュンッ!!

急いでスタンドを戻そうとしたのが、失敗だった。
もっと、敵の動きを予想しておかなければならなかったんだ。
スタンドボールが天井に当たり、スピードはまったくそのまま跳ね返っていく先は…

エリーゼの頭部だッ!!やばい!!!!!!



876 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 02:58:23 0

スタンドのダメージは僕に返ってくるんだ!!!!
まずい!頭部にあんな速さの球を食らったら…ッ!!!!!!!
ところが、またここで奇妙なことが起きる。

スッ…トッ!!

エリーゼをすり抜けて、ボールは地面にバウンドしたんだ。
な、なんなんだコイツは…攻撃する意思は…本当にあるのか?

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

このスタンドの本体の目的はなんだろう?
こうやって攻めに来たって事は、僕を…演劇部を潰したいからなんじゃないのか?
だが、どうもやってくることが生ッちょろい。
僕は試しに、スタンドのボール目掛けて、側にあった机を一つ投げつけてみる。

「くるりんぱッ!!」

キュルキュルキュル…ガオン!!!!

投げつけた机はボールのスピンで激しく音をならし貫かれた。
床に落ちた机には、スタンドのボールと同じサイズの穴が開いている。
まるでコルク栓を抜いたようだ…
これだけの恐ろしい威力があるのに…なぜさっき僕を貫かなかったんだ?



877 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 03:00:29 0

ヒュンッ!!
クネッ

「おっと…!!」
だが、僕に迫って飛んでくる時は、急所を狙ってきているように感じる。
何回かかわしてるからわかる、たぶんミゾオチあたりを狙っているぞ。
やっぱり相手がやる気なのは間違いないようだけど…
「ハァ…ハァ…」
そろそろ疲れてきたな…このままじゃこいつの思うツボだ。
そうか…きっと疲れたところで、急所を貫いてくるに違いないッ!!

…覚悟を決めるか!!

本体がどうやって僕を察知してるのかはわかんないけど…
でも穴を開けるのに、ちょっとでも時間があるのなら…やってやる!!!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


882 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 05:17:06 0

俺は…とんだアマちゃんだな。
頭では山下を助けたいと思ってるのに、心では亀井絵里を
攻撃していることに抵抗を感じている。
さっき亀井の脇腹に一撃入れたときだって、結局ためらってしまい
ヤツからつい離れてしまった。
俺のスタンド『ミ・アミーゴ』は、それ自身が<目>なので、校舎の裏から亀井を
ヤるなんてことは朝飯前なんだけど…なかなか決心がつかず部室内を跳ねてるばかりだ。
それにイラだって、亀井の投げた机に思わず穴をあけてやったが…

くそッ!!

「俺…やっぱり亀井のこと傷つけたくねェーよッ!!!」
あり得ない!山下と亀井じゃ、俺にとっての存在の大きさは月とスッポンの
はずなのに…ッ!!

ピリリリリリリリリリリッ…ピリリリリリリリリリリッ…

その時、俺のポケットから、無機質な電子音が発せられた。

鳴り響いた携帯電話…嫌な予感が胸をよぎる。
冷静になれよ…俺。

俺は恐る恐る携帯電話を取り出す。

『山下智久』

アイツから電話…くそッ!冷静になるんだ!!


883 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 05:18:18 0

「はい」
『亀梨…すまん。どうしてもお前だけは巻き込みたくなかったんだが…
でももう他に頼れるヤツがいないんだ…すまない』
「な、なんだよ…どういうことだ?」

『情けないぜ…助けてくれ。例のヤツに追われてるんだ…
もう、ダメかもしれない…拙者』

「どういうことだよ!追われてるだって!?」
そんな…山下、アイツすでにもう誰かに追われてるのか!?
じゃあ、今回山下をやろうとしてんのは亀井ではない…?

「今どこにいんだよ!!」
『杜王グランドホテルの近くの…わかるか?ちょっと暗い路地う

ドカアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!ブツッ…』

なんだ…今の電話越しに聞こえた爆発音は…ッ!?
「山下?山下!!?」
…ダメだ!繋がらなくなっちまってる…ッ!!!

二人を裂くように、電話が切れた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


884 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 05:18:53 0

畜生!!!早くアイツを助けにいかねぇと!!!
もう亀井にかまってる暇はないッ!

「…クソッ!ちょっとだけ眠ってくれ!!!」

狙うは…亀井のミゾオチだ!!一撃で決めてやるッ!!
許してくれよ…亀井。
俺、どうしてもアイツを助けたいんだ!

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッド…


898 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 18:29:45 0

「くらえッくらえぇ!!この野郎ッ!!!」
だが焦っているせいか、俺の攻撃は幾度となくクネクネとかわされてしまう。
なんて滑らかな動きをしやがる…まるでダンスを踊っているようだ。
ちッ…遊びに付き合ってる暇はねェんだよ!!!

『ハァ…ハァ…』

亀井が息を切らし始めた。
こいつ、そろそろ体力の限界か…俺もだんだん疲れてきたよ。
「終わりにしようぜ…ッ!!」
俺はミ・アミーゴを亀井のミゾオチ目掛けて突進させる!!

なんでだよ…なんでこんなことになんなきゃなんねーだ!!!!
神様も酷なことしやがるよな…
「ドクサレがァァァァァァァッ!!!!!!!!!!」

その時、俺はミ・アミーゴをキッと睨みつける亀井の目つきに気が付いた。
憎しみとか、悔しさとかそういう目つきではない。

これは…なにか信念を持っている目だ!!
そして、何か覚悟を決めた目つきだ!!!

その一瞬だけだが、俺には亀井が女子高生…いや、女に見えなかった。

う、うろたえるな俺!!
冷静になるんだ!いつでも冷静にならなければ…ッ!!



899 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 18:31:12 0

「ミ・アミーゴ<ア・クロス・ボンド(強い絆)>!!!」

スタンドを超高速回転!!
これで亀井のミゾオチを撃つ!!!
だが穴は開けない…常識では計り知れないほどの回転力の球をミゾオチに
めり込ませ、そのショックで気絶させる!!!
そして…俺は山下の所へ行くんだ!!!!!

ギャッギュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウンンン!!!!!!

グシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!

ヒット!!!
亀井は一瞬白目を剥いて…え?

ブシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!

俺のスタンドの視界が赤く染まった。
なんだこれは…血?
「やべぇッ!!」
俺は急いでミ・アミーゴの回転を止める。
バカな!俺は穴を開ける能力なんか使っていないぞ!!!

「…ハッ!?」

こ、こいつ…なんてことを…
俺のスタンドを両の掌(手の平)でガードしてやがる…ッ!!!!

ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!


900 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 18:33:48 0
『敵の二段攻撃を防ぐには三段攻撃しかないらしい…まぁ、これは別に
二段攻撃でもなんでもないけど、僕の両手は塞がったんだ…だから同じことさ。
そして最後の攻撃は…』

ドヒュンッ!!

亀井の背中に背の低いスタンドが浮かび上がった。
さっきのと形が違う…スタンドは一人一体のはずじゃないのか!?
そのスタンドは一瞬で亀井の前方に移動する。

『そう、足だ!!ACT3サイレント・エリザベス!!!やれぇェェェェッ!!!』
『R・O・G・E・R!!了解シマスタかめりん様!!!!!』
『『でぇぇぇぇぇいッ!!モグモグモグモグモモグモグモグモグモググモグモグ
モグモモグモグモグモグモグモグモグモグモグモググモグッ!!!』』

げえぇぇぇぇぇぇッ!!!!
こいつ、俺のスタンドが掌にくっついたままなのに蹴りをッ!!!!!!!!

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガッ…メメタァッ!!!!!!!!!!!!

「う…げ…ッ」
蹴りのダメージは、本体である俺のところに返ってくる。
威力は大したことない…
「いてぇ…唇の端切れたぜ…ッ」
背中とかもアザになってるかもな。
ちょっとまずいぜこれは…

『『ウェー・ウェー(上へ上へ)!!!!!!!!』』
亀井とそのスタンドが、いきなり意味がわからない単語を吐いた…その時!!!
信じられないことだが、俺の身体がフワリと宙に浮き始めた。

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!


901 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 18:34:52 0

ガシィッ!!!

亀井が血まみれの手で俺のスタンドを掴む。
い、いでで…ギュッと握りやがって…

『このパワーだ…本体は近いぞ!!今頃無重力状態になってるはずッ!!』

そうだったのか…亀井のその形のスタンドは無重力化能力…か。
術にかかっちまったせいか、スタンドが自由に動かない。
そして、俺自身も…

…ちッ、けっこういい勘してんな。真っ直ぐこっちに来やがる。
山下、許してくれ…俺、助けにいけそうもないぜ…

ザザッ!!!!

そして、彼女の到着か。
昨日、次の日こんな風になるなんて誰が予想できただろう?
俺も亀井も、まったく予想できなかった事態だ。

「きみがこのボールの本体…?そうか、そういえば言っていたね。
野球で選抜メンバーに選ばれたことがあるって」

ふん…携帯ばっかいじくってて聞いてないような感じだったのに覚えてたんだな…
ビックリだよ。



902 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 18:35:45 0

ドサッ!!!!

突然、無重力効果が解けて、俺は地面に落下する。

『R・O・G・E・R!解除シマスタ!!』
ドッヒュウウウウウウウウウウウウウウウーン!

・・・・・・・・・・・・!!?
どういうことだ…?
なぜ能力を解除した?

バアアアアアアアアーン!!!

「何をやってる?亀井絵里…どうして俺を下ろした!?なぜトドメを刺さない?」

俺がものすごい剣幕で亀井を怒鳴りつける。
亀井は血まみれの手を気にしながら、指先で髪の襟足をいじっていた。
そして、こう言った。

「きみがいい人だからさ」

…え?
予想もしていなかった言葉に、俺はキョトンとしてしまった。


903 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 18:38:42 0

「僕を襲ったけどイイ人だ・・・・・・・・きみは何度も僕を殺すことが出来たハズなんだ。
もし、きみがその気だったなら僕は三回死んでいるからね。理由は知らないけど、
きみは何度も僕への攻撃をためらった…だから僕も攻撃するのをやめることにしたんだ。
さっきだって、僕の手から吹き出た『血』にショックを受けて、すぐに攻撃をやめた…」

「・・・・・・・・」

「きみが攻撃を何度もためらっていたから僕は覚悟を決める時間が出来たわけだし、
きみが攻撃をすぐにやめたから、僕は『サイレント・エリザベス』を叩き込む事が
出来たんだ…きみが最初からマジで殺す気だったら、僕は今頃身体に穴を開けられて、
部室で死んでいたよ…きみは、僕を攻撃することに抵抗を感じているんだ」

「だとしたら…どうするんだ…ッ!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

「お前がッ!お前たちが山下をヤッたことには変わりはねーんだぜーッ!!
お前が攻撃をやめたからって、いま俺がその気になったらどうするつもりなんだ!?」

「いいや、きみは絶対にその気になったりなんかしないね。なぜなら…」

亀井は表情を変えず、でも優しそうな目つきで言った。


「きみと僕は友達だからさ」


バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!


904 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 18:41:04 0

「教えてほしい…誰に頼まれたの?山下って…きみは彼の友達だったのかい?
きみたちを動かしているのは一体誰なんだ?」

「動かしている…?これは俺自身の意思によるものだ…ッ!!」

「そうか…ならいいんだ。僕とさゆはね、入院中、彼に問いただしたことがあったんだ。
なぜ僕らを襲ったのかって。彼は何も答えてくれなかったよ。
でも退院してから、ある日後輩の女の子がこんなことを言ったんだ。
『バックに誰かいるんじゃないか』…ってね」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

どういうことだ…?
山下たちが襲われたんじゃなくて、山下たちが襲ったのか…?
俺は山下を信じたい…が、亀井が嘘を言ってるとは思えない。

「スタンドを持っているとはいえ、無関係の人間を巻き込むようなヤツを、
僕は絶対に許さない。誰なんだ…山下って人たちを動かした輩は…」

そういえば、山下に「お前を巻き込みたくはない」みたいなこと言われたっけ。

でも、なんだか…わかりかけてきた。
山下を動かしたヤツの話のことではない。
いま山下を追っているヤツのことが…な。



905 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/17(木) 18:42:42 0

「…おい一つ聞かせてくれ。いま、お前たちの中で山下を動かした
ヤツってのを調べてる人間はいるのか?」

「いや、いないと思う。これはあくまで僕やさゆの妄想にしか過ぎないから。
彼に事情を聞きに行ったのだって、僕らが勝手にやったことさ。先生から
そんな指令は来てないしね。さゆはあまり納得いかなかったみたいだけど…」

そうか…これでやっと完璧にわかったよ。
山下が追われている理由がな…。

ムクッ
俺は立ち上がると、よろよろと歩き出す。
「どこへ行く気?」
「わりぃな、どいてくれ。親友がやばいんだ…」
そう言うと、亀井は俺にスタンドを差し出してきた。
「はい、きみの守護霊様。事情はよく知らないけど、頑張るんだよ」
「…サンキュー。じゃあな」
「うん、また今度」

また今度か…ありゃいいけど。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


978 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/18(金) 22:33:43 0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「杜王グランドホテルの近くの…わかるか?ちょっと暗い路地う」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!

「げぇーッ!!!」
拙者の手元で起きた大爆発。
握っていた携帯が、めちゃくちゃに吹っ飛んだ。
右手と右耳が痛いッ!!…血が出てるじゃないか!!!
「あー、あー…」
だが鼓膜は破れていないようだな、よかったよかった。
…いや、全然よくないな、この状況では。
それに拙者は、すでに『シャボン玉』を一発左肩に食らっている。
今ので通算二発目なのだ。

「くそ…なぜだ…なぜあの女がシャボン玉を…はッ!!」

静かな路地裏の先に立つ一人の女。
いや、女と呼ぶにはまだ幼すぎる…しかし、そいつにはそれでも『女』と
呼ばざる終えないほどの凄みがあった!!

ズモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモ…



979 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/18(金) 22:35:29 0

「なぜ…なぜ拙者の前方に…ッ!!!」
今のシャボン玉は背後から食らったもの!!
この女…いったいどこからシャボン玉を放っているのだ!!!?

「あの人に渡されたシャボン玉はあと一発…まぁ十分でしたね。あなたはもう
ここから逃げる事はできませんよ。で…そろそろ口を開く気になりましたか?」

「そこを…そこをどけぇぇぇぇッ!!!!!メタルマサカー!!!!!!」
バビュンッ!!!!

拙者のモグラ型スタンド!!
地中に潜るとスタンドの目が見えなくなるが…今は目標が目の前にいるので、
もうそんなことは関係ない。
地面に散らばる少量の砂鉄を一瞬にしてかき集め、鋭利なナイフに変えて放つ!!!

「いけぇぇぇぇぇッ!!!!」
「無駄なことを…No.2!No.4ッ!!お願いッ!!!!」

『BREAK THROUGHッ!!』
バヒュッ!!
『自分ヲブチ破レェッ!!!』
ズビュンッ!!

「な、なにぃ〜ッ!!!!!!?」
女に放った砂鉄のナイフが、宙で消されたかと思えば、刃先がこちら向いて
再び出現した!!

ドォォォォォォォォォォーン!!!!!!


980 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/18(金) 22:37:50 0

拙者の能力は拙者自身がよく知っている!!
元は砂鉄とはいえ、スタンドが作りだしたナイフ。
めちゃくちゃ硬く、とてつもない切れ味を持っているのだ!!!
いったいどうやって跳ね返したのだ…一瞬消えたような…って、
そんなことは今はどうでもいい!!

「か、解除しろメタルマサカァーッッッ!!!」
ザサァッ…

掛け声一つで、ナイフは一瞬にして砂鉄に戻る。
その時、拙者は気がついた。
砂鉄のナイフの柄の部分に小人のようなスタンドがつかまっていたことに。
抜け目ない…この女抜け目なさ過ぎる!!!

『オメービビッテンナァー?俺タチノご主人に激しくビビッテルナァ?』

頭にNo.5と書かれた小人が拙者の顔前で言った。
「お、お前の…お前の能力は一体ッ!?」

『ハジケタイ!Uh!!』
ピシャアアアンンン!!!

今、何をした…ハッ!!

「シャボン玉だとぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」

足元にいるメタルマサカーのすぐ側を、シャボン玉が浮遊している。
「か、隠れろメタルマ」
だが、気付いたのが遅すぎたようだ。

ボッフウウウウウウウウウウウウウウウウウウンンン!!!!!!!!!!!!


981 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/18(金) 22:41:02 0

バリバリバリバリ…ドッパアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!

「うぎゃあああああああああああああああッ!!!!!」
ダメージが…ダメージが跳ね返ってくる!!
全身がはちきれんばかりの激痛に襲われ、バリバリ血をふいて
拙者は勢いよく後方に吹っ飛んだ。
その時チラッと、ボロボロになって宙に吹っ飛ばされた拙者のスタンドが
見えた。これでは…当分使い物にならないだろう。
退院間近だっていうのに何やってるんだろうな…拙者は…。

ドサアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!

「こうやって闘うんですね…彼らを2グループに分ける事がこんなに効果的だったとは…
やはり吉澤さんの教えは素晴らしい。尊敬に値します」
「ハァ…ハァ…一体何匹いるのだ貴様のスタンドは…ッ!?」
「何匹?<匹>で数えないで頂きたい。彼らは私と同等なんですから
<人>で数えてもらいたい」

ザッザッ…
女が倒れている拙者に近づいてきた。
「さて…シャボン玉も尽きてしまったことだし…そろそろ吐いてもらいますよ。
道重さん達を襲った理由、そして主犯を…ね」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


15 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/19(土) 01:36:02 0

目の前が霞んでいくようだ…もはや立ち上がる気力さえなかった。
「なぜだ…なぜそんなことを調べる必要があるのだ?」
ここでゴマキの名前を出すわけには行かない。
そもそも、あれは拙者が成宮を巻き込んで勝手にやったことなのだ。
ただ、ゴマキの力になりたかっただけなのである。
…いや、多少なりともその報酬に目がくらんだってのもあるが。
女が口を開いた。

「これは私に課せられた指令…『心の姉』からの指令なんですよ。正直な話、
私はあなたのバックについてる人間が誰なのか…はっきり言って興味などない。
ですが、道重さんを大怪我させたことは許しがたい事。だからあなたを動かした
人間を許さない。そして…」

ドギャス!!!!!!!

「げあッ!!」
女の右足が拙者の顔面を襲った。

「…あなたも許さない」

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッド…


16 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/19(土) 01:36:49 0

「さぁ、雑談の時間は終わりです。早く話して下さい」
「…いやだと言ったら?」
「はぁ…あなた、何か勘違いをなされているようだ…」

グシャ!!!!

「いでぇぇぇぇぇッ!!!」
この女なんてバイオレンスな…怪我している左肩をブーツで蹴りやがった!!!

「言っておきますけど、ここでは法律なんて適用されません。よって黙秘権もない。
いいですか?質問は拷問に変わっているんですよ」

バキィッ!!!

「ぎゃあッ!!」
「道重さんを傷つけた悪い手はこれですか?」

ドチャッ!!!
「うげェーッ!!!!」

「フン!フン!フン!フン!フン!フン!フン!フン!フン!フン!…」
バギバギバギバギバギバギバギバギバギバギバギバギバギバギバギバギバギバギ…


17 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/19(土) 01:37:50 0

女は執拗に拙者の傷ついた右手を踏みにじる。
このまま…このままやられてたまるものかッ!!
せめて…せめてその顔だけでもしっかり見てやる!!
まぁ、おおかた予想はついているが。

「メタル…マサカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
フシャン!!!!

スタンドでやや大きめの『クギ』を作り出し、女の顔目掛けて投げる。
「うわっ…」

パスンッ

クギは女の被っていたハンチングのツバを貫き、その勢いで女の頭から脱げた。

「やはり…やはりお前か。写真で見たぞ…さっきまで持ってた。
爆発で焼けてしまったがな。貴様、演劇部の…」

「まだそんな余力があるなんて…私は驚いている。さすがは道重さんを追い詰めた
だけのことはある…これは悠長にはしてられませんね」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



18 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/19(土) 01:39:17 0

まさかとは思っていたが…本当にこの女だったとは。
確か、新参の…名前は忘れた。
これで本当に中学一年生だというのか…?
写真ではヘラヘラしているようなショットだったのに、この凄みはなんなのだ!
80年代後半のアイドルみたいな顔しやがって…
なるほど…演劇部の『ミラクルエース』という話は伊達じゃないらしいな。

「お遊びは終わりにしよう…No.2!3!4!5!6!」

そして、これがそのミラクルなスタンドってわけか。

「あと五秒以内に主犯の名前を言ってください。五秒過ぎたら、
この二人がまずあなたの『小指』だけを分解する」

『ワオォォォォッ!!我ラの御主人モ随分ト猟奇的ニナッタナァァァ!!』
『ヤレェェイ!!ムシロ三秒でイイダロウ!!』

「二人とも静かにして。それでも言わないようなら次は薬指、それでもまだ
言わなければ次は中指、人差し指…と分解していくとしよう」

「そんなハッタリに…拙者が動じると思うのか?お前は拙者に
顔を見られているんだぞ?」

「私の心配なんかしなくていい…あなたが心配するのは…
バラバラに分解されて、ぶどうヶ丘公園の池に捨てられた時のことだけだ…」

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッド…


19 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/19(土) 01:40:09 0

こいつ…拙者を殺る気だ。
『マジ』だ…
小僧のくせに、この拙者を始末しようとしている…
こいつにはやると言ったらやる…

『スゴ味』があるッ!!!!!!

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!

「5ォ…」

か、数え始めた!!
どうする…どうすればいいんだ!!!

「4…」

打開策は…ないのか…

「3…」

拙者、童貞のまま死んでいくのか…

「2…」

成宮はまだ買い物しているんだろうか?
ゴマキはどうしているのかな…

「1…」

亀梨…すまん。



20 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/19(土) 01:41:19 0

「ゼ…」

『オイ!!!見張りノNo.7ガ、コノ路地裏に誰か入ッテ来ヨウト
シテイルト言ッテイル!!』

「なんだって…No.5、それはホン…」

ブシュッ!!!!
「うっ…」

拙者にも、状況がよく把握できなかった。
ただわかるのは、コイツの左手首がいきなり切れて血を流し始めたということだ。

『ナンテコトダ!!コレハスタンド攻撃ダゾ!!』
『ダ、大丈夫カッ!!?』

「私は大丈夫…それよりNo.7は…ッ!」

『足ヲ削ラレタダケダソウダ!!!敵ハボールミタイナスタンドダトNo.7ハ言ッテイル!』

「そうか…じゃあ、侵入を許してしまったってことだね…」

『No.7がスマネェと言ッテイルガ…』

「いや、これは私責任だよ…ごめんね。道重さんの指令…『未』完了…か。
でも私は諦めない。またいつか…またいつか来ますよ…あなたの元へね…
戻って!ミラクル・ビスケッツ!!!!」

ドヒュン!!!!!

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21 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/19(土) 01:42:43 0
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変な小せェスタンドを倒し、俺は走ってその道を進む。
「ハァ…ハァ…・・・・・・・・・ッ!!!」

辿り着いた暗い路地裏。
しゃがみ込んだアイツがいた。
「間に合わなかった…ごめんな…」
「やられちまった…あの日交わした例の約束守れないけど、
お前が来てくれて嬉しいよ…」

ひ、ひでぇ…こんなボロボロにされちまって…。
もうすぐ、もうすぐ退院だったんだぞ…ッ!!

「誰だ!?誰にやられた!!?その火傷…道重さゆみか!!!?」
「いや違う…名前はわからんが新参だ…お前を巻き込みたくないって言ったのに
これじゃあな…スマン、ありゃ嘘だったことにしてくれ。ところで…昨日デート
だったんだろ?どうだったよ?」
「お前、今はそんなことどうでもいいだろうが!早く病院に…」
「どうだった?」
「…すげー楽しかったよ。前より好きになった。アイツ、お前を大怪我させた
ヤツだってわかってるだけどさ…それでもまだ好きだ。クソッ…許してくれ」
「何を謝ってるんだか…好きならそれでいいだろう?好きな気持ちに理屈が
あるか。羨ましい限りだな…素敵な恋しやがって。この野郎」
「…お前、また入院だな。これじゃ」
「下手したら留年だ。まぁいいか、お前と同じ学年なら絶対面白いしな」
「そういやチャーミーも留年っぽいぞ。三人で仲良くやるか?」
「そうだな…」

山下が手を差し出してきた。
震える掌で…強く握った。



22 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/19(土) 01:45:27 0

次の日。
今日はちゃんと起きて学校に向かった。
山下は再び入院した。
学校のヤツのファンは、さぞ残念がっていることだろう。

「小春ちゃん、その手の包帯どうしたの?」
「ちょっと転んじゃったんですよ。亀井さんこそ、その両手どうしたんですか?」
「うへへ、チャリでコケた☆」

廊下で中等部の生徒と話している亀井絵里が、俺の前にいる。
…アイツも俺に気付いたみたいだ。
教室、ここ通らないと行けないんだよ…気まずいな。

「おはよう!」

先に挨拶をかましてきたのは亀井だった。
「お、おう!」
俺はぎこちなくだが、それに答えたのだった。


俺は…これからも変わることない未来を山下や亀井と追いかけられると…夢見てる。


亀梨和也
スタンド名 ミ・アミーゴ

山下智久 再起不能
スタンド名 メタルマサカー