796 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/01(火) 18:40:13 0

銀色の永遠 〜藤本美貴は演劇部をサボりたい〜


「ま、結局こーいう事になるっちゃね」

「でも大丈夫かなぁ。僕、ちょっと怖いなぁ…」

「三人で力を合わせれば大丈夫、無敵なの」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…





797 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/01(火) 18:43:22 0
キーンコーンカーンコーン…

今日も、しんどい授業が終わりを告げた。
でも今日は半分くらい寝てたな。
あたし毎日こんな感じなんだけど、大丈夫なんだろうか…人間として。
まあ、いいか。
せっかくの放課後だし、楽しまなけりゃ損だ。
「真希ちゃん」
「んぁ」
「遊び行こうぜ。こないだ遊んでくれっつってただろ?ドゥ・マゴで
お茶でもしようよ」
「ごめん、今日バイトなんだぽ」
「バイトなんかしてないじゃん」
「忙しいからじゃあねッ!!」
「あ、おい…」
…行っちまいやがった。
ったく、何が「今日バイトなんだぽ」だよ。
亜弥ちゃんももう帰っちゃったし…まだ男と続いてンのかな?
「あ、あのミキティ…」
同じクラスの男子が、あたしに声をかけてきた。
「なに?」
「あ、あのさッ!今度デートしてくんない!?」
「ハァ?うっさいバカ氏ね。じゃーな」
まったく、モテる女は困っちゃうね。
だからこそ、ほいほいデートなんかOKしたりしないのだ。
あたしは誰か一人の『藤本美貴』になるつもりはない。
あたしはみんなの『藤本美貴』になるんだッ!!!

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

なんたって、大スターになる女だからな。
アイドルスターってヤツ?


798 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/01(火) 18:45:21 0

下駄箱へ向かう途中、階段を上っていく高橋愛を見かけた。
そーいや、よっさんにボコされて以来、結局演劇部に顔出してねーな。
同期の連中とは会ったりしてるけど…すっかり幽霊部員だな、こりゃ。
大スターになる夢、近づいてこないなぁ。
む、むしろ遠ざかってるんじゃないかっ!?
「美貴姉」
だとしたら、なんのために演劇部に入ったんだ?あたしは。
「美貴姉ッ!!」
突然、誰かに呼ばれ、あたしは振り返る。
「おぉッ!びっくりした。なんだ、れいなか。いきなり怒鳴んないでよ」
「さっきから呼んでたと。今日も部活出んと?」
「そんなの聞くまでもねーだろ。じゃーな」
あたしはれいなに背を向け、手を振った。
でも、珍しいな。他メンに「部活出ないの?」なーんて聞かれるなんて。
「美貴姉ッ!最後にもう一度聞くとッ!!ホントに部活出ないっちゃね!?」
れいながあたしの背中に向かって叫んだ。
「ああ、出ないよ!!!」
あたしは振り返らずに答えた。
そんなにあたしに部活出て欲しいのか?
さて…今日は何すっかな〜。
授業中疲れるほど寝たし…一人でS市行くのも淋しいし…。
あ〜あ、さっきれいなをつかまえておけば良かった。
そんな自分勝手なことを考えながら、下駄箱の戸を開ける。
「ッ!!?」
あたしは、下駄箱の中の異様な光景に声も出ないほど驚いた。



799 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/01(火) 18:48:32 0

『ビィッ!!』

「こいつは…ッ!!」
亀井のサイレント・エリーゼッ!!?
あ、あたしのローファーを抱えて下駄箱の中に…何してんだコイツ!!
なんだか、すごく狭そうだな…。

ドヒュウウウウウウウウウウウンッ!!!

「あッ!!!」
サイレント・エリーゼが下駄箱から飛び出したぞッ!?
あたしのローファー、持ったままじゃねーか!!!!!
「おい、こら待てッ!靴返せッ!!!」
『( ´,_ゝ`)プッ』
サイレント・エリーゼが振り返り、あたしをバカにしたような声を出すと、
再び空を舞って移動を始めた。
亀井のヤツ、あたしのことナメてんのか!!?
…いい度胸してんじゃねーかッ!!
すれ違う生徒がサイレント・エリーゼを指差して奇異な声をあげていた。
いや、一般人にスタンドは見えないはずだから…コイツらには、ローファーが
空を飛んでいるように見えているんだろう。そりゃビックリするわ。
サイレント・エリーゼは、追いかけてくるあたしをチラチラと確認しながら飛行している。
こいつのスピードなら、一気にあたしを撒くことが出来るはずなのに。
…あたしの走るスピードに合わせてんの?
「どっかに誘い込もうってことか?」
エリーゼは生徒ホールへ入ってく。
それを追って、あたしも生徒ホールへと足を踏み入れた。



800 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/01(火) 18:53:29 0
サイレント・エリーゼが、本体である亀井の所へ戻っていくのが見える。
亀井は生徒ホールのイスに座って、呑気に缶ジュースを飲んでいた。
「ハァ…ハァ…亀井ッ!!!」
あたしはそんな亀井の前に立ち、睨みつける。
「美貴の靴返せッ!!」
「ご、ごめんなさい。無理なんですぅ〜」
ああッ!?無理だと!!?
ナメやがって…
あたしは亀井に詰め寄ると、グイッと制服の胸倉をつかんだ。
その拍子に、亀井は握っていた缶を落とし、床に中味をぶちまけやがった。

ビシャッ…。

「冷てぇ…上履きにかかってんじゃねえかああああああああああああッ!!」
しかもオレンジジュースだ。確実にシミになりそうだぞッ!!
「テメーはやっぱ一度シメてやんねーとわかんないみたいだな」
「うわぁッ暴力反対ッ!!」
「オメーがワケわかんねーことする上に美貴の上履き汚したからだろうがッ!!
このド低脳…」
「ワケわからないって?本当にワケがわからないんですか?」
あたしの口を遮り、急に冷静な顔つきになって亀井はあたしの目を見つめた。
いつものクネクネした眼つきじゃない、なにか信念を持っているような目だ。
「…何が言いたいんだ?」
「あなたは大した度胸の持ち主だ…自らの意思で入った部活なのに、自分の方から
バッくれ続けるなんて、なかなかできることじゃない…しかも、そのことに対して
これっぽっちの罪悪感も抱いてないようだ」
な、何を言ってるんだ…コイツ。
今の今まで、あたしが部活に出ようが出まいが何も口出ししてこなかったくせに…
「つまり、あなたの『誇り』なんてそんな程度なんですよ。面倒なことから逃げ回って
ばかりのくせに、あなたの言う『大スター』になんかなれるわけな…」

ボゴアアアアアアッ!!!!!!!!!!


801 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/01(火) 18:57:03 0

「ぶげぇッ!!!!!」
亀井が言い終わる前に、あたしは空いていた左の拳でコイツの右の頬を殴り飛ばした。
もちろんグーでだ。
右手で胸倉を掴んでいるので、亀井は吹っ飛ばない。
そんな光景を見て、生徒ホールにいた他の生徒たちがざわめき始めた。
だが、あたしにはそんなもん関係ない。
「このクソガキが!美貴をなめてんのかッ!?靴取ったり説教始めたり、
随分とエラくなったなあ!?ええッ!!?」
終いにはあたしの『誇り』とやらを見下しやがって…!!
「いででッ…部活出る気になりました?」
「ハァ?誰がテメーなんかと同じ部活に出るって?」
むしろ元からなかった出る気がマイナスになったわ!!!
ああああッ!!腹が立つッ!!!
大スターになれるわけない…だって?
もう一発ぶん殴ってやらないと気がすまない!!!
「あ、出る気ナッシングですね」
「ねェよッ!!!」
あたしは拳を振り上げる。
その時、亀井が叫んだ。

「れいなッ!!!!!!!!!!!!!」

え、れいな?

ドガッ!!!!!ッシャアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

「うげっ!!」
殴るときに胸倉をつかんでいた右手を離したので、亀井は大きく後ろに仰け反って
イスから落ちた。


802 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/01(火) 18:58:30 0

ちっ…ぶん殴ってやったはいいものの、鬱憤がおさまらないな…。
イライラさせやがって、まったく。
でも、なんでこいつ「れいな」だなんて言ったんだ?
まあいいや、靴は返してもら…
…あ、あれ?
足が…動かないッ!?
「ハッ!!」
あたしは自分の足元に起きた出来事を見て仰天した。

「い、石になっているッ!!」

いや正確には、地面を這った石があたしの足に絡み付いて、動けなくしているッ!!
これは…この能力は…ッ!!!
「れいな…遅いよ」
「ごめんっちゃ。ジュース、なかなかこっちまで広がってこなくて…」
あたしの後ろに…スタンドを発現させたれいなが立っているだとぉッ!?

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!


803 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/01(火) 19:00:15 0

「ま、まさか…さっき亀井がこぼしたジュースを…ッ!!」
石に変えたのかッ!!?
上履きにジュースをかけたのも、これのためにワザとだったのか!?
「お、おめーらッ!一体なんのつもりだぁ!!こりゃあッ!!?」
あたしは動かせぬ足でもがきながら、れいなに問う。
「いや、別に美貴姉に悪気があってこんなことしてるんじゃないとよ」
「そうそう」
悪気がない…?靴持ってったり、あたしになめた口聞いたりしたくせに悪気はないって?
「…れいな、この石化能力をとけ。今すぐだ」
「それは出来んばい。れいなは…れいな達三人は…」

ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…

「首に縄つけてでも美貴姉を部活に連れてくるよう、指令を受けてるとよ!!!!」

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!


808 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/01(火) 20:05:45 0

首に縄つけてでもだあ!?
そんなこと言われると…余計に出たくなくなってくるっての!!!
「ふぬおぉぉぉぉぉッ!!」
あたしは足に絡みついた石から逃れようともがく。
くそッ…石の面積も厚みも大したことねェのに、なんでこんなに硬いんだッ!?
「無駄っちゃよ!れいなのデュエル・エレジーズで石にしたもんの硬さは
ダイヤモンドの何十倍ッ!!美貴姉もよく知ってるハズとよ!!
さぁ…観念して『部活に出ます』って言うたいッ!!!」
こ、このあたしがそんな指図受けてたまるかッ!!
美貴は…美貴のやりたいようにやる!!!
「ブギートレイン03ッ!!」
ドギャンッ!!
あたしは銀色のスタンドを出すと、れいなが石に変えたジュースを殴った。

ゴンッ!!

石にはヒビ一つ入らない。
さすがは、れいなのスタンドと言ったところか。
その能力は、本物のようだ。
「無駄無駄ッ!硬度はダイヤモンドの何十倍と何度言えば…」
「確かに、あんたの能力は本物だ…めちゃくちゃ硬いな。でもッ!!」

ピシャンッ!!!

あたしの足に絡みついていた石は、一瞬にして液体化する。
「なにィッ!!?」
「れ、れいなッ!なんで技を解除したんだッ!?」
「絵里…違うと!!れいなは技の解除なんてしてないっちゃ!!!」



809 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/01(火) 20:08:54 0

確かに、れいなは技の解除をしていない。
液体化したのは…あたしが技をかけたからだッ!!!
「ブギートレイン03<満月の流法>ッ!!このジュースの時間だけを
石化する2分前に戻した!!!!」
よって、ジュースはただの液体に戻る!!

ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!

「な、なんというとやああああああああああああッ!!?」
「こんな事であたしを捕まえられるとでも思ったのか!?じゃあなッ!!!」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!

「うおわぁッ!!?」
あたしはうろたえている二人に向かって生徒ホールに置いてあった丸いテーブルを
投げつけると、ローファーを持って裏口から外に抜け出した。


「く、くそ…ッ!あれが美貴姉の新しい能力…さすが、一筋縄ではいかん
みたいじゃけん。すぐあとを追うとッ!!!!」
「待ってれいな!慌てなくても大丈夫ッ!!なぜなら…」

ざわざわ…

「絵里…どうでもいいけど、み、みんながウチらを見てると…」
「あ、え、えーッと…すいません、これ、演劇部のレッスンなんでーす!!
気にしないでくださいねーッ!!!」


825 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 00:38:55 0

なにが、れいな達三人は首に縄つけてでもあたしを部活に連れて
くるように指令を受けた、だッ!!
「やり方が破天荒なんだよ!!」
おっと、今のうちにローファーに履き替えとかなきゃな。
二分後には、この上履きの塗れた部分が石に戻るわけだし。
…ん、待てよ?
あの場には、れいなと亀井しかいなかったよなぁ…。
でもれいなは『れいな達三人』って言っていたような…!!!
ふと、上空を確認する。
「シャボン玉…しまったッ!!」
空に浮かぶ、無数のシャボン玉のレンズ。
そうだ…あいつら三人っつーと、残る一人は…。
それらはゆっくり下降して…あたしの周りを囲った。
「れいな達、よくやったの…あとはさゆみに任せるの」
み、道重さゆみ!!
そして、そのスタンドが作り出した爆弾シャボンだッ!!!!!!!

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!

「さゆみの『シャボン・イール』、威力が調節できるとはいえ爆弾なの。
屋内では使えない…でも、屋外なら…?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…




826 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 00:43:07 0

「さゆ、あんたもあたしの首に縄つけてでも部活出させようってわけか」
「首に縄つける?まさかそんなこと。むしろ…」
さゆは、ウネウネと右腕に絡みついた自身のスタンドの顔をこちらに向けた。
「…鼻に輪をつけるの」
ちっ…実はコイツが一番性格に問題があんのかもしんねーなッ!!
どうやら実力の差ってヤツを見せ付けてやらないといけないらしい。
とは言ったものの…どうやってこのシャボン玉を切り抜けるかだ。
…そうだッ!!
「さあ、早く『今日はちゃんと部活にでます』って言うの。そうすればシャボン玉は
全て解除してやるのッ」
「さゆ…『ゆうばく』って、意味わかる?」
あたしは静かな声でさゆに訊いた。
「『誘爆』?爆発の衝撃で次々爆破する…こと?」
「違うね。耳かっぽじってよく聞きな。ここでいう『ゆうばく』とは!!」

シャッキィィーンッ!!!

ちょうどいいタイミングで、上履きが石に戻った!!!
おかげで、上履きをダメにしないで済んだな…。
「いいか?ここで言う『ゆうばく』とはッ!!<勇>気をだして<爆>破するッ!!!」
あたしは手に持っていた上履きを、周りを囲っていたシャボン玉の一つにブチ当て
爆破させ、すぐ身を伏せた!!

ドゴアアッドガガガドグオォォオォォォオォォォォガゴォォォォオオォォッ!!!!!




827 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 00:45:22 0

「……ッ!!?」
と、とんでもねー威力ッ!!
幸い、スタンドでもガードしたし、ダメージは皆無なんだけど…
あたしはさゆが『脅し』のためにシャボン玉を作ったもんだと思ってた。
だから、万が一爆発してしまってもいいように、威力の低いシャボン玉であたしを
包囲したもんだと思っていたッ!!
そう、さゆの良心に賭けていたのだ…
それが、なんだ今の爆発の威力はッ!!!
「殺傷能力MAXじゃねえかああああああああああああッ!!!!」
ケガはしなかったからいいようなもののッ!!
どいつも…どいつもこいつもおぉぉぉぉぉッ!!!

フシャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!

あたしは立ち上がると、爆煙が晴れるその前にさゆに急接近する。
「のッ!!?」
「おぉぉぉぉぉぉッ!!ゴォォォォォォルデンッゴォォォォル決めてッ!!!…」
久々に行くぜッ!!高速ラッシュ!!!!
でも相手はさゆだ、ちゃんと手加減にしてやるッ!!
まぁ再起不能にはしねーよ!!
美貴は大人だからな!えっへん!!
「VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVッ!!!!!!!」
「シャボン・イィィィィィィッッッッル!!!!!!」

ズリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュ〜ン


828 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 00:47:16 0

「んだとぉッ!!」
あたしの拳が…全部スカッった!!!
いや、正確には全段命中したんだ…だが、全段スカッた。
理解し難い話だが…あのスタンド、殴れないッ!!
殴っても、あのヌルッとした粘液のようなビジョンのせいで滑ってしまうんだッ!
そう、まるで…なかなかつかめないウナギのように…ッ!!!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

「みんな忘れてしまっているようだけど…シャボン・イールのもう一つの能力ッ!!
それは!!『打撃をすべて無効化する』能力なのッ!!」

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!


ま、まんまウナギじゃねえかッ!!
とにかく、広いこの場所では、さゆのスタンドが圧倒的有利!!
シャボン玉の射程距離も伊達ではない。
ここは…ここはお母さんから授かったこの足を使って…
逃げるんだッ!!!
「あ、待つのッ!!!」
「ブギートレインッ!!!!」
満月の流法で、地面に触れるッ!!

ピシュコアアアアアアアアアアッ!!!!

「うわああッ!!煙幕なのッ!!!!」
煙幕?違うなッ!!!



829 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 00:48:51 0

「地面の<砂>を爆風で宙へ舞っていた三十秒前に戻したッ!
さゆ、それはあんたがシャボン玉が爆風で巻き起こした砂煙なんだよッ!!」
つまり、自分で自分の首を絞めたってことだなッ!さゆのバーカ!!
「に、逃げるななのッ!!う、うえぇっ、ケホッケホッ…」
さ、今のうちにトンズラこくとしますか。
でも、こっからじゃ校門は遠い。
また演劇部の連中に見つかってしまう可能性もある。
…隠れよう!!
隠れてやり過ごすんだッ!!!!!!
そう決めると、あたしはダッシュで…おっと上履きを忘れるとこだった。
ンッン〜さすがれいなが石化しただけあって、上履きには傷一つついてないな。
よかったよかった。
気を取り直して、あたしはダッシュであの場所に向かった。


「ハァハァ…あれが藤本さんの新しい能力…なんだかわけわかんないの」
ギューン…
「あ…さすが。とりあえず、今はまかせるの。後は、さゆみとあの子でハメる」


836 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 02:49:20 0

「ハァ…ハァ…ここなら大丈夫だろう…」
あたしが逃げ込んだ場所。
ここは、よく真希ちゃんや亜弥ちゃんと訪れる校舎裏だ。
普段、あたしらはここで昼飯を食べたり、授業をふけていたりする。
意外とここ、穴場なんだ。
全然生徒が寄って来ない、奇妙なものだ。
まあ、ここには…反吐も腐っちまうくらいゲスな殺人鬼、吉良吉影に一度
殺された思い出もあるけど…。
とにかく、ここは憩いの場なのだ。
あたしにとって、安らぎの場所なのである。
しばらくはここで鳴りを潜めて…あの3バカをやり過ごすとしよう。
あたしは芝生の上にドーンと寝そべった。
こうやって…静かにしていると…自然と詞が浮かんでくるなぁ…。

ごらんよ青空が笑っている
きみと僕の心に笑ってる
大きな青空を眺めてると
誰かさんの笑顔に見えてくるよ…

あ、あたしって詩人だなぁ…ッ!!
どっかで聞いたことあるような気もするけど。
安倍さんも、こんな感じだったんだろうか?
ま、どうでもいっか…静かだなぁ。
こうやって静かに眠りにつくのも悪くねーよな。
「……」



837 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 02:52:11 0

………
……


や、やけに静かすぎやしねーかッ!!!?
おかしい!絶〜ッ対におかしい!!!
あの鳥を見てみろよッ!!
鳴き声どころか、微かな羽音も聞こえてこねぇじゃねえかあああッ!!
こんな…こんな静かな空間を作れるのは…アイツしかいないッ!!!!!!

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
(亀井のサイレント・エリーゼACT1!!!)

自分の声すら聞こえないッ!!これは間違いねェッ!!!!
「・・・・・・・・・・・・(ケッタイな技使いやがってッ!!!)」
亀井のヤツッ!!
あたしは飛び起き、スタンドを出してヤツの姿を探し…
「・・・・・・・・・・・・・・(うおぉぉッ!!これはああああッ!!!!?)」
飛び起きたあたしの目に飛び込んだのは、自分の背丈ほどはあるであろう、
でかいシャボン玉であった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(これはさゆの…ッ!!?うあああああッ!!)」
ぶ、ぶつかるッ…大爆発するゥッ!!!!
威力は強いか弱いのかッ!?でも、さゆのことだから、たぶん…
「・・・・・・・・・・・・・・・(うわああああああああああああああッ!!!!!)」

ボワァンッ

な、なんだこりゃ…
シャボン玉が…割れずにあたしを飲み込みやがったあああああああッ!!!!

ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!!


838 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 02:54:37 0

「なんじゃこりゃああああああああああッ!!!!!」
あ…亀井が術を解いたのか、音は元に戻ったようだが…
このシャボン玉はなんだ!?
さゆのシャボン玉であることは間違いない。
でも、だとしたら何故割れないんだッ!!?
なぜ割れずにあたしを包み込んでいるッ!!!!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

「どうッちゃ美貴姉ッ!」
れいなとさゆがすぐ前方に立っている。
音がなくなっていたから…こんなにまで接近させてしまったのか…ッ!!
「さゆッ!!れいなッ!!!なんだこれはッ!!!」
シャボン玉の内側の壁に触れると、ビリッと痺れた。
「これがれいなとさゆの<友情>の合体技…奥義合体必殺シャボンバリアーッ!!!」

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!

れいなは、とても感無量な表情をして言った。(特に<友情>のあたりで)



839 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 02:59:29 0

んなことより…シャ、シャボンバリアーだとぉッ?
しかも合体必殺だって!?
れいながシャボン玉に捕らわれたあたしを指差し、解説を始めた。

「さゆのシャボン・イールが作り出した巨大なシャボン玉に、れいなが波紋を
流した込んだとよッ!!スタンド能力とはいえシャボン玉はシャボン玉ッ!!
だが波紋を帯びているから割れることなしッ!!はるかな昔、イタリアの波紋戦士が
使ったとされている、奥義必殺シャボンランチャーの応用技たいッ!!!!」

「初めてだから…ちょっと怖かったの…ドキドキ」
なに、波紋…?
波紋疾走だとぉぉぉぉぉぉぉッ!!?
れいなのこの波紋という力…こんなことまで出来るのかッ!!!
さゆもさゆで、処女喪失したような顔しやがって!!
「波紋力を持たない美貴姉には、このシャボンバリアーから逃れることは不可能たい。
さッ、おとなしく部活に出るとよ…」

ピッタアアアアアアアアアア…

あたしを包み込んでるシャボン玉が…れいなの右手に吸い付いたッ!!
「これで運ぶたい」
「待てよれいな。あんたの波紋効果が切れたら、このシャボン玉はどーなるんだ?」
れいなは派手な制服のポケットに突っ込んでいた左の掌を出し、
『ドッカーン』とやってみせた。
すなわち、爆発…。



840 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 03:02:01 0

「まあ、部室までは割れることはなか。こうしてれいなが波紋を
流し続けているたい。でも、部室に着いたら…」
「部室に…着いたら?」
聞き返し、あたしは唾を飲む。
そんなあたしに、れいなは無表情で答えた。
「爆発するっちゃ。これ、さゆのシャボン玉じゃけん。カンッペキに包み込まれ
ちゃっとるから、もうれいなにも、どーすることもできん。我慢すると」

ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

「でも、美貴姉が悪いとよ。素直に部活出てれば、こんなことには
ならなかったんとちゃうね?」
「れいなの言う通りなの。バチが当たったの」


859 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 17:45:04 0

こんなことで…屈するのか?
このあたしが?
まだ中学生の後輩たちに…いいや!!例え相手が二人いようが
三人いようが、負けるわけにはいかないんだ。
それだけは、美貴のプライドが許さない!!
「れいな」
「美貴姉、まだなんかあると?」
「あんた…覚悟して来てるんだよね?」
「え?」
「さゆもよく聞けよ。こうやって、あたしを『力ずく』で捕まえて部活に連れて
行こうとするってことは、逆に『力ずく』で抵抗されるかも知れない…
っつー危険を、常に『覚悟して来てる』ってことなんだよな?」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…

そっちがその気なら…あたしもマジでやってやる!!
「ブギートレイン03ッ!!!」
ドヒュン!!!
シャボン玉の中で、あたしはスタンドを発現させた。
そして、シャボン玉の内壁に触れる。
ビリッと来たが、そんなものは我慢だ。
「美貴姉ッ!それ以上妙な動きをするのは許さんとよッ!!スタンドを
しまうと!!でなければ…このシャボン玉は今すぐに爆破させるっちゃ!!」
「爆破?爆破させるかぁ…でも、どうせ最後は爆発させなきゃ美貴は
こっから出れねーんだろ?」
「な、何を…まさかッ!!」



860 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 17:48:41 0

ピシュコアアアアアアッ!!!

ブギートレイン03、満月の流法。
これがなければ…あたしはすぐに捕まっていただろうな。
あたしは部長(リーダー)の吉澤瞳に、心の中で感謝する。
「シャボン玉の時間を戻した。つまりこのシャボン玉は、まだ波紋が流れ込む前のものだ。
どうだ?二人とも…これが、あたしの覚悟さ」
「れ、れいなヤバイ!!離れるのッ!!!!」
「しまっ!!デュエル・エレ…」

ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!!!!!

波紋を帯びてないシャボン玉は、いとも簡単に割れた。
音は派手だったが…今回の威力は大したことない。
だが、それも予想していたことだ。
最終的に爆破させることが前提のシャボン玉、まさか威力を高めにしている
わけがないと思ったのだ。
さゆだって、そこまで基地外なヤツじゃないだろうと信じていたから出来た行為なのだ。
だが、シャボン玉の外にいたれいなはどうだろうか?
シャボン玉の中にいたあたしと違い、シャボンの爆発する衝撃をもまともに受けたはずだ。
威力は低いとはいえ、無傷では済まなかっただろう。
だが、あたしはれいなの容態を確認してる暇などない。
あたしだって、無傷じゃないんだ。
あたしはシャボン玉の起こした爆煙を背に走り出す!!

ふと、あたしは思った。
なんでここまでして、部活に出ることを拒んでるんだろう。
意地?もしかして、ただ頑固ちゃんなだけなんじゃないか?
それとも、この状況を面白がってる?
いや、ただ年下に屈するのがイヤなだけかもしれないな。
あたしにだって『誇り』があるんだ。


861 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 17:49:43 0


「れいなッ!大丈夫!?」

「ハァ…ハァ…エレジーズでガードしたと…うッ、でも足をやられたばい。いでぇ…
なんちゅー無茶苦茶やる人っちゃ…自らシャボン玉爆発させて逃げるだなんて…
自爆と変わらないッちゃ!!」

「れいな、立てる?」

「でも…さすが美貴姉ッ!れいなに出来ない事を平然とやってのけるッ!!
そこにシビれる!!!憧れるゥッ!!!」

「…さて、さっさと追いかけるとするの」

「あ、待ってさゆ、足が…ね、れいなケガしたとね、ね…あ、お、
置いてかないでほしいとーッ!!!!!!!」


883 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 23:07:36 0
あたしは校舎の中へ逃げ込んだ。
外はまずい、広すぎる。四方八方が無防備だ。
だが校舎の中なら大丈夫!壁もあるからな。
あたしは二階へ駆け登り、罠をしかけ、角を曲がる。

ギャンッ!!!!!

「うおぉぉぉッ!サイレント・エリーゼだとぉッ!!!!?」
亀井のスタンドと鉢合わせてしまった!!
だが亀井のサイレント・エリーゼは、あたしの顔を見るなり、背を向けて逃げ出す。
ちッ…エリーゼのACT1は遠隔操作型のスタンドだから、亀井のヤツがどこに
隠れているんだか・・検討もつかないッ!!!
だが、アイツは相手じゃないだろう…力のないACT1で、あたしに対抗できるわけがない。
わかっているから逃げ出したんだろうよ。
もし、ACT2のエリドリアンやACT3のエリザベスで近づいてきたら…
その時は!!力いっぱいぶっ飛ばせばいいッ!!!

タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ…

軽快な足音が聞こえてきた。…こりゃあ間違いない、さゆだな。
「藤本さんッ!!待つのッ!!!」
「やっぱり」
「シャボン・イールッ!!!」
ズリュンッ!!
「屋内で、あんたのスタンドに何が出来るっての?」
あたしはさゆに訊いた。
「…わからないの。ここじゃあ、派手にシャボン玉は使えないし。でも、あえて
その質問に答えるとするならッ!!」
「答えるとするなら?」
「これはッ!!女の意地なのッ!!!!」

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!


884 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 23:08:53 0

…なめられたもんだなぁ。
策もなしに…この藤本美貴を出し抜こうってええええええええええッ!!?

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

「覚悟するのッ!!」
「ちょーっと待ちな、さゆ!!あんたの足元のそれ、なんだかわかる?」
あたしは、さゆが踏んづけている奇妙な破片を指差した。
「破片なの…鉄?アルミ?これは…」
そして、あたしはポケットに隠していたそれらと同じ破片の一つを取り出して見せた。
「あ、一応説明するけど、これもその破片の一つね」
「いったい何なの?」
「…ブギートレイン03ィッ!!!!」

ドギャスッ!!!!

あたしはスタンドの拳で、持っていた破片を殴りつけ、それをさゆに向かって投げる。
するとそれは…
「足元の破片が…動きだしたのッ!!なんじゃこりゃあッ!!!!!」
「時は戻る!!」
「か、欠片がまとわりついてぎゃあああああああああああッ!!!!!」

ドワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!



885 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 23:11:00 0

「グッド!!」
さゆの身体は、掃除用のロッカーの中に入ってしまった。
逃げてくる途中、あらかじめ廊下の隅に置いてあった掃除用のロッカーの中身を全部出し、
ロッカーをぶっ壊して、その破片をそこの床にバラ撒いておいたのさ!!
そして、破片の時間を四分くらい前に戻したから、ロッカーは元通りになったってわけ!!
しかも、散らばった破片の上に立っていたさゆを巻き込んでね!!
「どうだッ!これがあたしの作った罠だッ!!策もないのにあたしに勝とうなんざ
百年早いんだよッ!!!」
あたしはさゆの入ったロッカーの背中を蹴っ飛ばし、倒す。

ゴォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!

「fじぁsdftgい6hじこlp;@:ッ!!!!」
ロッカーの扉側が地面とキスするように、大きな音を立てて倒れた。
これで、しばらくは出れまいw

ガンッゴンッガンッガンッ…

ロッカーの中で、さゆが暴れてるみたいだな。
「まぁ安心しろよ、四分くらい立てばまた粉々に戻るからよー。じゃあなッ!!!」

ゴガアアアアアアアンッ!!!!!

ロッカーの側面を一発蹴飛ばし、あたしはその場を後にした。



886 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 23:15:00 0

さて、さゆを足止めしたところで…こっからどうするか。
れいなはシャボン玉の爆発でたぶんケガしただろうから、もう追ってはこないだろう。
さゆもロッカーに閉じ込めてやった。
すると、残る一人は…

『ビィッ』

亀井のサイレント・エリーゼ、ただ一人ッ!!
だが亀井のスタンドは、あたしに見つかったとわかると、すぐさま身を隠してしまう。
さっきから、チラッと姿を現しては、隠れてしまうんだ。
でも…あいつのやっていることはわかったぞ…。
ヤツは…ああやってあたしの居場所を確認してはれいなやさゆに伝えに行っているッ!
「亀井絵里ッ!!貴様見ているなッ!!!?」
れいなはどうかわからないが、さゆは確実にあと数十秒でロッカーの呪縛から
脱出してしまうッ!!!
その数十秒の間に外へ出て、さゆを撒くのは不可能だ。
屋外はさゆのオールラウンド…まずい…まずいぞ…。
こうしている今も、時間は刻々と過ぎているのだ。
さゆが動き出す前に…亀井を出し抜かなければッ!!!
だが…どうする?

「あーあ、まさか補習受けるハメになるなんて思わなかった。これだから英語は
嫌いなんだ…ブツブツ」

ふと、一年生の教室から、一人の男子生徒が出てきたのが見えた。

887 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 23:16:46 0

…へへへ、閃いちゃったもんね。
辺りに亀井のスタンドがいないことを確認すると、あたしは愚痴を
こぼしながら教室を出てきた男子生徒に声をかけた。
「おい、そこのあんた」
「え…あの…ぼくですかぁ?」
その男子生徒は、自分を指差してあたしに訊いた。
「そうだよ、他に誰もいねーだろうが。あのさー、いきなりでわりーんだけどさ、
あたしの頼みを聞いてもらえないかな?」
「頼み…ですか?あのォ〜…あなた、誰です?」

だあああああもうッ!!
なんでこんなゆったりペースで会話しなきゃなんねーんだッ!!!!
こっちはめちゃめちゃめちゃ急いでんだ!!!

「名前なんて後でいいだろうがッ!!あたしの頼み、聞いてくれんのか?
くれねぇのかッ!?」
「ええっでも…ぼくでなんかの役に立つのかなぁ…お金なら千円ぐらいまでなら
なんとかなるけど…」

じれったいなぁッ!!もうッ!!!!
あたし、ホントこういうタイプはダメなんだ!!
こういう亀井みたいなタイプのヤツはッ!!!


888 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 23:19:16 0

あたしはそいつに頼みの内容を説明した。
「ああ、簡単なことだよ。その制服貸してくれ」
「…は?」
男子生徒は意味のわからなそうな顔をしている。
まぁ、無理もないか。
「その制服、今すぐ脱いであたしに貸してくれ。それだけでいいから。
明日には返すからさ」
そう、やつらを撒くには、まず亀井の目を欺くのが先決だ。
よって、男装する。
突拍子もないアイデアかもしれないが、誰もが思いつかないことをすることが、
一番ばれにくい…ハズだ。
「ちょ、ちょ…何を言ってるんですかッ?なんでぼくが見ず知らずの女の人に
制服を貸さなきゃならないんですか!?だいたい…制服脱いだら、ぼくは
どうやって帰ればいいんですかッ!!」
「…裸で帰れ。ってのは言い過ぎにしても、体操着ぐれーあるだろ?
それでいーじゃんよ」
あたしはその男子生徒に詰め寄って言う。
「さぁ、早く脱いでくれ…こっちは時間がないんだ…」
ガバッ!!
あたしはその男子生徒のふいをついて、ブギートレイン03の腕を使い、
そいつの手からカバンを引っ手繰った。


889 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 23:22:35 0

「あッ!!!」
「ほらッこれは制服貸してくれたら返してやるよッ!!だから早く脱ぎな!!!
あたしには時間がねーんだ早…」
その時、向こう側の窓からサイレント・エリーゼACT1が校舎に入ってきたのが見えた。
や、やべえ…ここに長居はしてらんねーな…。
とりあえず一端隠れなければ。
制服の受け渡しが目撃されちまったら、元も子もない。
「おい小僧っ!制服脱いだら便所に来いよッ!!そこでカバンと交換なッ!!!」
あたしはそいつのカバンを持ったまま、走り出した。

ダッ!!!

そろそろ、さゆもロッカーから抜け出しちまったころだろう。
こ、こいつはまずいぜーッ。
この小僧が早いとこ制服脱いであたしに届けくれないと…。

ドォォォォォォォォォォォン!!!!!

「…え?」
ビックリするかもしれないが…今のは、あたしが派手にこけた音だ。
意味が…わからない。
別に何かにつまずいたってワケでも、廊下にバナナの皮が落ちていたってワケでもない。
心辺りのある原因といったら、それは…
カバンを持っていた右手が…重くなったってことだ。

『ACT3FREEZE!!射程距離ギリギリ5メートル内ですS・H・I・T!』

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!

890 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 23:24:53 0

な…
「なんじゃこりゃああああああああああッ!!!」
手の重みに耐えられず床に寝そべっているあたしの上空を、少年体系の…
スタンドが舞っていた。
「スタンド…?あんた、スタンド使いだったのか…ッ!!」
「……」
あたしは無表情で近寄ってくるそいつを睨んで言う。

「変だと思ったんだ…あなたにカバンを引っ手繰られたとき、妙な違和感を感じたんだ。
手がもう一本生えていたような…まあ、ぼくの読みは正しかったんですけどね」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

「あなたはスタンド使いだなッ!!スタンドを使って悪さするなんて…許さないぞ!!!
ぼくの制服なんか借りて、あなたはいったい何をするつもりだったんだ!!!」

バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!


893 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 23:29:38 0

ち、畜生…あと少し…あと少しであいつらを撒くことが出来るっていうのに…
「くそぉぉぉッ!!!こんなことでえええええええッ!!!!」

ズリッ…ズリッ…

ダメだ、あたしの右手は床にヒビが入るほどの重さになって、めり込んでしまっている。


「スタンド使い同士っていうのはね、なんでかわからないけど…引かれ合うものなの」


梨華ちゃんの言っていたこの言葉が、久し振りに頭を過ぎった。

「藤本さんッ!!」
ここにきて、亀井がついに姿を現してきた。
サイレント・エリーゼであたしの無様な姿を確認してから出てきたのか?
なんにせよ…これでゲームオーバー。
「きみは…同じクラスの広瀬くんじゃないかッ!!いったいなにを…それに
まさかこれは…きみも僕らと同じ…」
「ええッ…まさか、きみにも見えているって言うのかい?ぼくのエコーズが…ッ」
なんだこいつら、同級生だったのかよ。
「きみの…きみのその能力はなんだッ!?なぜ藤本さんを攻撃しているッ!!!」
「そ、それはぼくのセリフだぞっ!この人がいきなり制服を貸せと言ってきたり、
スタンドを使ってカバンを引っ手繰ったり…」
「…えッ?」
驚いた表情で亀井があたしを見つめる。
捕まったも同然のあたしには、もはや苦笑いをすることしかできない。


894 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 23:36:00 0

「藤本さん、あなた何しようとしてたんですか?」
「うっせーな…おい、もうカバンは返すよ。制服も必要ない、だから
この重くする能力…解除してくれないか?」
あたしは広瀬という名の男子生徒に、技の解除を頼む。
それに従おうとする広瀬を、亀井が止めた。
「ちょっと待って!!」
「え、なんで?」
な、なんなんだ亀井のヤツは〜ッ!
早くラクにしてくれっての!!
「藤本さん、あなたは抜け目ない人だ…こうしてる今も、僕を出し抜こうと何か
考えているのかもしれない」
「別にしてねーよッ!!」
こればっかりはマジだ。
「そうですか。まぁ口ではなんとでも言えますからね。だから念のため、僕も技を
かけさせてもらいますよ。サイレント・エリーゼACT3…サイレント・エリザベスッ!!!!」
ドギュン!!!
「これが…きみのスタンド。なんだか似ているぞ、ぼくのエコーズに…」
広瀬が亀井のスタンドに釘付けになっている。確かに似てるな。
スタンドが『チビ』なところが。
しかし、亀井のACT3…何をする気なんだッ?

『モグモグ・ウェーウェー(上へ上へ)!!!』

サイレント・エリザベスが呪文を唱えたッ!!!

ドガドガドガガドガドガッ!!!

うわああああああッ!!!
こいつッ!!あたしの重くなった手を蹴って…


895 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 23:39:17 0

フワッ…

あれ…?
「軽く…なった」
右手が軽くなったぞ…?
「えッ!?ぼくは技の解除をしてないのに…なんでッ!?」
「僕のエリザベスの能力は蹴った物を軽くして浮かせる能力…広瀬くんの
それは重くする能力?それじゃあきっと、これはその<相乗効果>だね」

…うーむ。
よくわかんないけど、重くしたものに軽くする能力をかけたから、
プラスマイナスゼロになった…ってことだろうか?
そんな単純な理屈でいいのかよ。

「変なことに巻き込んでゴメンねッ!!じゃあまた明日…さっ、藤本さん、行きますよ」
亀井は広瀬に手を振ると、あたしの左腕をつかんで引っ張り歩き出す。

…あっけなさすぎるだろ。
しかも…まさかコイツに捕まるなんて…orz
でも、なんだって今日に限って、あたしを無理矢理部活に出そうとしたんだろ。
こいつら三人に指令まで出すなんて…。
何か、重要な活動でもあるんだろうか?
いろんな思惑を巡らせながら、あたしは亀井に演劇部の部室へ連れて行かれた。


フワアァァァ…


「あ、あ、亀井ちょっと。手が浮き始めたぞ手が」


896 :1 ◆I7CTouCqyo :2005/11/02(水) 23:40:57 0


藤本美貴…亀井に捕まる
田中れいな…足をケガする
道重さゆみ…ロッカーが倒された時、おでこをぶつける
亀井絵里…藤本に2発殴られた

指令:藤本美貴を部活に出席させる  成功


TO BE CONTINUED…