銀色の永遠 〜エリックかめりんの冒険〜

僕の…いや、私の名前は亀井絵里。
今年の春、ぶどうヶ丘高校に入学したばかりの女子高生だ。
女子高生…うん、中学2年生くらいまではすっごい憧れてた言葉と身分だった。
昔ッから面食いで、中学の頃はカッコよくて人気のある男の子をよく目で
追っていたもんだ。そうしていっつもニヤニヤしていた。
高校生になったら、絶対イケメンの彼氏を作るんだッ!なんて思っていたなぁ。
そう、あの子に会うまでは。




216 :名無し募集中。。。:2005/09/15(木) 06:13:13 0
最近入部したばかりの演劇部の部室で、ぼ…いや私は
一人でダンスの自主連を始めていた。
ドルフィンっていうこの技、極めたらかっこいいだろうな〜と思ったからだ。
鏡に映った自分を見ながら、私は一生懸命身体をくねらせるがまだ動きが硬い。
「だめだな…こりゃ」
この部活、全員揃って活動することがあまりなくて、はっきりいってつまんない。
なんか…もうやめたいな。ドルフィンもうまくできないし。
まー私の場合、入部した動機が不純だからなぁ〜。
この前、高等部の三年生であり、入部する前に私の二次審査を
担当した安倍さんにポロッとそんな事を言ったら普通に怒られた。
入りたくてもその資格がなくて入れない子はいっぱいいるんだよ!だってさ。
資格ってのはたぶん、アレだ。入部届けを出しにいった時に寺田先生に汚い矢で
ブスリとお腹を刺されて以来発現した『能力』のことだ。
あの時、いっぱいお父さんのこと聞かれた。そしたら「素質あるかもしれへんなぁ」
とか言いながら、いきなりブスリ。
マジで死ぬかと思ったし。安倍さんの話だと、ここに入った子はみんな経験してること、
なんだそうだ。
じゃあ、じゃあ僕の大好きなあの子もあんな痛い思いしたんだ…可愛そう。



217 :名無し募集中。。。:2005/09/15(木) 06:15:06 0
そういえば、もうすぐあの子の誕生日だ。
日にちはそう、忘れもしない7月13日。
今年は何をして祝ってあげようかな〜、せっかく高校生になったんだ。
ちょっと大人になったわけだし、今までとは違ったプレゼントをしようッ!


学校を出て、私は通学路をタラッタラと歩きながら考えていた。
「具体的にプレゼントって何がいいんだろう〜…」
プレゼントは金額じゃあない…とは思うんだけどね〜。
「うん、でも安っぽいのはイヤだし」
そうだ、それじゃ自分が満足しない。
ぬいぐるみなんてどうかな?
「それだッ!おっきなウサギのぬいぐるみッ!!」
って、あの子の部屋、ぬいぐるみでいっぱいじゃん…。
「そーいや去年ウサギの小さなぬいぐるみあげたな」
余談ではあるが、自分でも独り言は多い方だなとは思う。
しばらくしてから、前方に見慣れない看板が立っているのに気づいた。
「イタリア料理…トラサルディー?」
ここ左折100m先って書いてある。
こんなとこにイタリア料理の店なんて出来たんだ。
「そうだッ!誕生日はイタリアンで食事…」
なんて思ったが、想像してみるとかなりナンセンスなことに気づく。
男女のカップルならともかく〜っ!
「そもそも、そんなお金ないじゃんッ!」
お父さんがいたら、あの子のお姉さんも呼んで食事できたかも
知れないけど(あの子のお姉さんはお父さんの愛人なのだっ)、
肝心のお父さんが突然の出張で杜王町にいないからなあ〜…。



218 :名無し募集中。。。:2005/09/15(木) 06:16:16 0
「あーあ、どうしよ」
策も尽きてガックリと肩を落として歩き出す私だったが、
珍しい光景を目にして気分は一転した。
電柱の隅にひっそりと置かれたダンボール。気になって近づいてみると、
そのダンボールの中にはポツンと一匹の白い生き物がいた。
こ、これは…間違いない。
「ウサギだぁッ」
なんでこんなとこにウサギがいんの?ダンボールをよく見てみると、
なにやら張り紙がしてある。

『捨てウサギです。可愛がってください』

捨て犬とか捨て猫とかならわかるけど、ウサギ捨てる人なんているんだ…。
まるで雪のように白い毛の気品溢れるウサギはダンボールの中で静かに眠っていた。
「そうだッ!この子をあの子にプレゼントしようッ!!」
なんだか都合の良すぎる展開のような気もするけど、生きているウサギをプレゼント
されたらきっとあの子喜ぶだろうなぁ〜ッ!!
そうだ、これはきっと神様が絵里にくれたチャンスなのかも知れない。
私があの子を喜ばせてあげられるように…。



219 :名無し募集中。。。:2005/09/15(木) 06:18:59 0
「…ん?」
ふとウサギの顔を見やると、ウサギは目を覚ましていた。
赤い宝石のような目をしている。
そーいや子供の時、お父さんが「昔ウサギは寂しさのあまり、泣きすぎて目が赤く
なったんだよ」なーんて言ってたっけ。
「もう大丈夫だよ、絵里とさゆがずっと一緒にいるからね、ウサギさん」
そう言ってウサギを抱こうと手を伸ばしたその時だ。
「!!」
ウサギの耳がピンと立った。

ペリペリッ…

「え?」
あれ、地面が…せり上がっていくような…?
次の瞬間、勢いよくコンクリートの地面は私の足元から反り返ったッ!
「うひゃあッ!?」
私はすっ転がり、ずてーんッと尻餅をつく。
「いたた…なに今の」
見ると、反り返った薄いコンクリートの地面が、まるで本を閉じるかのように
元に戻っていくじゃーないですか。
「これッ…まさかスタンド能力…ッ!?でも、こんなウサちゃんが…?」
確証が持てない私は、そこら辺に転がっていた小石をウサギ目掛けて投げてみる
ことにした。
「ウサちゃん、ごめんねッ!あなたの心にドライブシューッ!!!」
やばッ強く投げすぎた!!これ直撃したら絶対ケガしちゃうじゃんッ!
ベリッ!!!!!…コンッ
…どうやらいらない心配だったらしい。
ウサちゃんはショベルカーのようなスタンドを発言させ、コンクリートの地面を
まるで本のページをめくるかのようにしてめくってガードした。



220 :名無し募集中。。。:2005/09/15(木) 06:20:28 0
「うへへ…マジっすか」
私は、調子乗ったウサギが皮を剥がされて大黒様に助けてもらうって
内容の歌をなんとなく思い出した。この能力はその由縁かァ〜?
まあでも、動物にもスタンド使いがいるなんて知らなかった。スタンド使いは
引かれ合う…って話は聞いたことあるけど、まさかウサちゃんのスタンド
使いと出会うなんてなあ。
ウサちゃんは再び瞳を閉じた。
どうもこのウサちゃん、人が近づいたら攻撃を始めるみたいだ。
またさっきのように眠った様だが、ピンと立っている耳がどんな抜き足
差し足にも反応しそうでスキがない。
寝ている姿も堂々としていて、まさしく俄然強め?そんな雰囲気を
漂わせる不思議なウサちゃんだった。
こりゃ、飼い主も捨てますよ…。



221 :名無し募集中。。。:2005/09/15(木) 06:21:34 0
「でも諦めないしッ」
私は…僕はあの子の笑顔が見たいんだッ!これだけは譲れないッ!!
「サイレント・エリーゼッ!」
ドヒュウウウウウウウウウウウウウウウン!!!!
あの子のこと考えていると絵里…いや僕は男の子の気持ちになっちゃうよ。
この好きな子のために何かがしたいというこの感情ッ!闘志ッ!
今ッ!この亀井絵里の情熱はッ!!
紛れもなく男の子のものとなっているッ!!!
「行くよッ!サイレント・エリーゼ!!」
僕はウサギに飛び掛った。
ウサギは当然気配かなんかで反応し、目を開けるとスタンドを発現させ、
さっきのようにコンクリートをめくろうとする。
「エリーゼッ!!!!!!」
すかさずサイレント・エリーゼで、ウサギがめくろうとしている地面を
押さえつけたッ!!

…が。

「お、おぉぉッ!!?」
ダメだ〜っ!ウサギのスタンドの方がパワーが圧倒的に強いッ!!
僕はめくられた地面を転がって、再び尻餅をついた。



222 :名無し募集中。。。:2005/09/15(木) 06:23:04 0
「くそ…うざいなぁ…ッ」
うっかりしてた。僕のスタンドはパワーが全ッ然ないんだった。
サイレント・エリーゼは力もないし、その体格も小さい。安倍さんが
「暗殺に使える」なんて言ってた能力もイマイチ使いどころがわからないし、
長所といえばせいぜい50m先まで行けるくらいか?
まあトランペットのホーンの穴から手が生えてるのはシャレてるとは思うんだけどね。
ウサギが僕をバカにしたような顔で見ている。
ウサギがバカにしてる顔がどんなものか説明できないけど、そんな感じがした。
「どうせ、絵里はうっかりものですよ…」
でも、もう次のアイデア思いついたもんねッ!
僕はサイレント・エリーゼをウサギのすぐ上方に飛ばした。
いくら力がないとはいえ、ウサギを抱きかかえて運ぶことくらいはできる!
そして抱きかかえてしまえば僕の勝ちだ〜っ!その後からするウサギが攻撃
しようとすれば、それはウサギ自身を攻撃することになるからだッ!!
「ゆっくり…ウサギに気づかれないように…」
「!」
う、ウサギが目を開けたァ〜ッ!でも大丈夫だ、ヤツは気づいてないッ!!
よし今だッ!
そう思ったとき、僕はすでにウサギがスタンドを発現させていたことに気がついた。



223 :名無し募集中。。。:2005/09/15(木) 06:24:50 0
「な、いつの間にッ!?」
ウサギのスタンドはすぐ横の電柱を、まるでセロハンテープを
取るかのように剥がすと、それをそのままサイレント・エリーゼの
背中にぶつけてきたッ!!!

バリバリバリバリバリバリッ!!!!!!!!!!

「うげッ!!!」
背中にダメージを受けたエリーゼは地面に叩きつけられ、
そのダメージは僕に返って来る。
痛い…ッ。気持ちだけ男の子になってもやっぱり絵里は女の子なんだッ!
フフンと鼻で笑…ったかはわからないが、ウサギはまた瞳を閉じた。
女の子か…確かに絵里は女だし、昔はカッコイイ男の子にしか
興味なかった…ケドッ!!
「今の男たちはッ!優しさばかりッ!笑顔ばっかりッ!!!!!」
優しさで愛が守れるかッ!
笑顔で愛が救えるかッ!!
そんな男達なんかにあの子は渡せないね!!
「僕が…絵里があの子の王子様になるんだァーッ!!!!」

バーン!!!!!!!!!!!



224 :名無し募集中。。。:2005/09/15(木) 06:27:44 0
「サイレント・エリーゼッ!!!!!!!!!!!!!!」
絵里はスタンドを構えた。手首を引っ込めると、エリーゼの
両腕はトランペットのような形になる。
イマイチ使いどころのわからなかった能力、今使う時がきたッ!!
「ミュージックゥッ!スッタァートッ!!まいどありぃ〜ッ!!!!!!!!!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シーン

何も起きてないじゃないかって?
違うね、サイレント・エリーゼの能力は発動したんだ。
絵里とこのウサちゃんがいる、ここら一帯の『音』をすべて消した。
これを使ってる最中は、エリーゼは他の行動を取れなくなっちゃうけど、
あとは生身で十分だろう。

私は、ウサちゃんを抱きかかえた。
ウサちゃんはビックリしていたけど、負けを認めたのか観念して、
私の腕の中でうずくまった。
負けを認めるなんて、ウサギのくせにやけに『誇りの高い精神』を
持ってるんだなァ〜…。

で、これからこのウサちゃんをどんなシチュエーションであの子にプレゼント
するか考えなきゃいけないわけなんだけど…

…それはまた別の話ということで、ね。




225 :名無し募集中。。。:2005/09/15(木) 06:28:51 0


亀井絵里(エリックかめりん)
スタンド名:サイレント・エリーゼ

ウサギ(名前はまだない)
スタンド名:ブック・サーカス(と亀井に名づけられた)

TO BE CONTINUED・・・