銀色の永遠  〜ゴッド・スピード・ラブ〜


8月3日 pm8:52 杜王町市内

スピードと言う理念から切り離された様に村上愛の世界が急速に流れるッ。

「うわ 
    ァ   
       アアァ
           ァアアァ
                ぁああぁ
                      ああぁ」



     とッ


愛が地面にコロリと横たわる・・・・・
先程まで敵の剣撃を受けていた視界が行き成り地べたスレスレに『成っていた』
愛は慌てて身体を起こし素早く周囲を見回すが・・・雅や雅を戦闘をしていた者の姿は無いッ。

「な・・・・何が・・・・起きたの・・・・?」

狼狽えながら『サッドレディ』の切っ先を虚空に向け四方を威嚇する。

。 ・。・。・ ・。  ・・・。・。・ ・。


暗闇にキラキラとした蛍火が浮かんでは消える・・・・

「この光・・・・そうだあの時ッ。あの瞬間もッッ!!!!!!」
愛はこの状況に至る『刹那の光』を思い出した。

『ふ〜ん・・・・・あんな短い瞬間の事を覚えてるなんて・・・あんたって・・・『面白い』ねぇ・・・』

蛍火はその場で止まったと思うとその空間から黒髪の少女が現れる。

「初めまして。え〜と・・・『めぐ』さん?私は福田麻由子・・・・宜しく。」

『麻由子』と名乗った少女は恭しく頭を下げる。

「・・・・・・・・・・・」
愛はその行為に思わず言葉を失った・・・。

「ふふ・・・・そんなに緊張しないでよ・・・・そんなんじゃ私のスピードには追いつけないよ?」


銀色の永遠  〜ゴッド・スピード・ラブA〜


福田麻由子の頭上に白い球体に作業用のアームを幾つも付けたロボットのビジョンが浮かぶッ。

「白くて美しいでしょ?・・・これが私のスタンド『コールドプレイ』。」

「そ・・・・そんな白い蛸みたいな不気味なのが美しいものかッ!!!」
愛は『サッド・レディ』の竹刀を身構え、切っ先で麻由子を威嚇する・・・。

「蛸って・・・・・スタンドは精神の象徴なのよ?それが蛸って酷くない?」
麻由子は眉を吊り上げて見せるがその目に怒りの感情あは無い!揺らめくのは余裕ッ!
「まぁいいよ・・・・・『コールドプレイ』の能力は・・・・・」
そう言い掛けた途端、麻由子の身体が蛍火に包まれて       消えるッ!!???

「ッッ!???          ッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」

感嘆符を思い浮かべたッ! 次の瞬間、愛の身体に激痛が走る!

ボコボコボコボコォォオォオォッ。

感覚より遅れて『何発』も殴られた後は腹部に浮かぶ!!

「ぐぅうぅ・・・・    えっ!?」

フィルム編集でもされたかのように愛の身体は行き成り空中に飛び出していた!

「な・・・何が起きている・・・・・のッ!!??」

疑問符の終着点ッ・・・・突然、『何か』が迫り出して背中に激突した!という感覚に捕らわれたが
一杯に広がるアスファルトを爪で感じると『空中から叩き落された』という事が理解った・・・。

「あれれ?速すぎて何をされたか解らなかった?」

地面に倒れた愛に麻由子の声が冷ややかに降りかかる。

その声にギリッ ギリッ とアスファルトに爪を立て愛は怒りを全身に沸き立たせたッ!!

「ふざけんじゃネーわよッッ!!!!!!!!!!!!!」

身体をゆっくりと立ち上げると愛は麻由子を睨み付けた・・・・・その形相は普段の可愛らしい印象を
与えるモノから 血走り 畏怖を与えるモノに『変身』していた・・・・・。

「あ・・・あたしの事を・・・馬鹿にしやがったな・・・ぁぁあぁ?てめぇ何様だ?何様の心算だ?あぁ?
 許せねぇ・・・・あたしの事を見縊ったり貶すヤツは爪先から叩き潰し殺してやるだァーーッッッ!」

感情の隆起に合わせる様に『サッドレディ』の装甲がリフトする!

「・・・・・・キャスト・オフッ。」

愛の放つ『キーワード』と同時に『サッドレディ』を包む装甲が弾ける様に四散したッッ!!

『Change, ligt weight!!』

暗闇に装甲解除した『サッドレディ』の瞳が二つ浮かび上がる・・・・・。


銀色の永遠  〜ゴッド・スピード・ラブB〜


「・・・・・・何かと思えばヨロイを弾き飛ばしちゃって・・・・・・・リスクばかり大きくて実戦的には
 思えないけど・・・・いいの?」
麻由子は装甲解除した『サッドレディ』の姿を値踏みする様に観る・・・・。

「いちいち口が減らないヤツだなッ・・・・いいよ・・・・見せてやるッ!『サッドレディ』の真のスピード
 をッッ!!!!!!!!!!」
愛が言葉を言い終わるや否や『サッドレディ』の数が増えるッ!
いや・・・・「高速で動く『サッドレディ』の残像」!それが瞬く間に何体にも増えるッ!

「驚いた。『面白い』ね・・・・・・・・・じゃあ遊ばせて貰おうかな?」

「『袋』にしてやるだァーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」

蛍火に麻由子が包まれる刹那ッ。『サッドレディ』が周囲を囲み一斉に竹刀を振り下ろす!!!

八方向から『同時』のタイミングからの攻撃!

ダンッ
ダンッ
 ダンッ
  ダンッ
   ダンッ
    ダンッ
     ダンッ
     ダンッ

僅かな『間』を置いて竹刀が次々をアスファルトに叩き込まれるッ!




アスファルトを抉る竹刀・・・・・・・


会心の一撃

のはずが・・・愛は自分の目を疑う・・・・

目の前には麻由子が居た・・・・麻由子の足元には深く突き刺さった竹刀・・・・

「真のスピード・・・・・ねぇ?」

愛を見下す様な麻由子の視線・・・・・

麻由子は『その場』から『動いていなかった』・・・・・・。       


銀色の永遠  〜ゴッド・スピード・ラブC〜


「高速移動で私の周囲を囲んでの連続打撃・・・・発想自体は悪くない・・・けど」
麻由子は『その場』から一歩前へ出るとと溜息交じりで続けた。
「あくびが出る程でも無かったれど・・・・・遅いよね・・・・」



麻由子の言葉に愛は身体の奥からジワリと悪寒が湧いて来るのを感じた・・・・・。



「私には昔から・・・・・生まれた時から『私の世界』があったの・・・・」

「『わたしのせかい』?」
寒さに呑まれた愛は麻由子の言葉をオウム返ししていた・・・・・

「そう・・・でもその『世界』ってとっても鈍くて窮屈だった・・・・・」
麻由子は星空を見上げながら手を伸ばした。
「私ね・・・・雨ってキライなんだ・・・・雨水の一粒一粒が『見えてても』その全てを避けきれないし・・」
手で光を掴むような仕草をしながら麻由子は続けた!
「あんなにゆっくり落ちてくるのにその時に限って私もゆっくりとしか動けなくて・・・それで濡れちゃう・・
 ・・・」

「雨粒が・・・・見える?」
突然、実現しがたい事を話し始めた『敵』に愛は混乱するッ。

「それだけじゃ無いンだ・・・計算して答えを書こうとしてもゆっくりとしか動かないし、結構長い時間考え
 事した心算でも実際は何秒しかたってなかったり・・・兎に角、私が真剣に何かをやろうとすると必ず私は
 『私の世界』で行動しなくちゃ成らなくなる・・・まぁエライ大学のセンセイは私の脳のシステムは他の人
 と違って特別で何倍も早く処理出来る・・・『クロックアップ』出来るって言ってたけどね・・・」

そこまで言うと麻由子はニヤリと笑いながら愛を見たッ。

「私のスタンド『コールドプレイ』はその『世界』の中で『自由に動く力』を与えてくれる・・・・・
 私は『私の世界』を征服したの・・・・・・『あの方』のお陰でね・・・・」


銀色の永遠  〜ゴッド・スピード・ラブD〜


瞬く光に包まれ『敵』が消失しようとしているッ。

「くッッ!!!!!!逃がすかぁあぁああああぁあーーーーーーーーーーーーッ!」

愛の咆哮と共に『サッドレディ』の残像を残しながら高速移動する!

「逃げないよ・・・・・・そっちのレベルに合わせてあげるね・・・」
麻由子の言葉が切れると同時に愛の周囲を人波が囲うッ。

「ばっ ばかなッ!!」

愛の『サッドレディ』の残す残像は精々8〜9体が限界・・・だがどうだろう・・・この100体近い残像の集団は・・・・・

「良く見える?・・・・まぁこの位『ゆっくり』動くってのも大変なんだけどね・・・・」
福田麻由子の『集団』は持て余しながら笑みを造っていた。

「てめぇッッッッ!!!!『また』あたしを笑ったなーーーーーーーッ!!!!!数が多い位でッッ!!
 勝った気になってるんじゃねェェェえええぇえええぇええぇええぇええぇええええぇ!!!!!!!」

『サッドレディ』は竹刀を滅多振りに打ち出し残像の集団に切り込む!

竹刀の切っ先は霧散する影を追うだけで虚しく空を斬る・・・・・
「そ・・・・そんな・・・・今迄だってこんな事は・・・・あたしの速度で斬れなかったモノは・・・」

「貴女は今迄、自分より速い相手と対峙する事が無かった・・・・・・ソレだけ・・」
麻由子の背後に灯る『コールドプレイ』が一斉にアームを突き出す。
「・・・・・・終わりだね・・・・・・・・・・」

その時間は永久に感じたのか?それとも一瞬だったのか?

『コールドプレイ』の打撃の嵐が愛の身体を吹き荒び幾万の打撃痕が痛みを浮き上がらせる・・・
  
 愛はアスファルトに転がった姿勢のまま・・・・
                      ぼんやりと夜空を眺めていた・・・・。



銀色の永遠  〜ゴッド・スピード・ラブE〜


無限に広がる星屑・・・・・

その朧げな輝きが愛の瞳に映り込む・・・・・

「期待はずれだったというか・・・・・想像してた通りというか・・・『めぐ』さんは所詮『敵』では
 無かった・・・・私達、「ライナーノーツ」の先達は随分と杜王町の『スタンド使い』に倒されたって
 聞いたけど・・・貴女達が強かった、じゃなくて彼等が弱かった。って事で理屈が通るね・・。」

愛の身体に麻由子の嘲笑が降りかかる・・・・・。

「貴女がこの位じゃあ他の能力者達も大した事無いね・・・・・」

愛はアスファルトを引掻く様にしながら身体を起こす。
「ふざけろ・・・・・まだ・・・・・終わりじゃ・・・・・ねェ・・・・・」
膝に手を突き今にも落ちそうな腰を必死で堪える・・・・

「未来ちゃんはどー考えてるか理解らないケド私は『力』を与えてくれた『あの方』に報いる必要がある
 ・・・・『コレ』はその為の演習にしか過ぎないの・・・・・だからもう・・・・貴女は『終わり』。」
そう呟くと麻由子はくるりと踵を返した。

 ギリッ 
    ギリリッ・・・・・

麻由子の後ろ姿を見ながら愛は歯を軋ませ怒りを滾らせる。

怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒
怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒
怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒
怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒
怒怒怒怒
怒怒


「が・・・・・・・ぁあぁあああーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!!!!!」

感情を爆発させ愛は震える身体を制したッ!


『・・・死ぬ気か?』

「ッ?!」

夜の闇から誰かの声がするッ。
愛は辺りを見回すが人の気配は無い・・・・・。

「誰?!・・・・誰か居るの・・・・?」

『・・・・俺が誰か・・・・・そんな事はどうでも良い・・・・・』

「ッ・・・・・・?」

『行ってどうする?・・・今の儘ではお前は勝てない・・・・』

「勝てない?・・・・・・だと・・・」

『お前には隠された可能性がある様だ・・・・だが今のお前ではそれを見出す事は出来ないだろう・・・』

「・・・・・可能・・・性・・・?見出す事が出来ない・・・だと?」

『怒りに任せるだけが戦いではない・・・・。わだかまりや・・・やましさの無い・・・澄んだ心・・・
 ・・・・すなわち明鏡止水・・・・・・』

「明鏡・・止水・・・」

『曇りなき鏡、波立たぬ静かな水の如く・・・・・・』

「・・・・・・・・ッッッ!!!!!!」

『忘れるな・・・・村上愛よ・・・怒りに身を任せるな・・・明鏡止水の心を・・・・』

その声は遠く消え行く・・・・

「待ってッ!お前・・いや・・・・アナタは何で私の名前を!!アナタはッッッ!!!!???」

『・・・・・・・・俺の名は『ディープ・パープル』・・・・・それ以上の事は知る必要は無い・・
 ・・・・道を・・・踏み違えるな・・・・・・村上愛・・・』


銀色の永遠  〜ゴッド・スピード・ラブF〜


「・・・道・・・道を踏み間違えるな・・だと?・・・『ディープ・パープル』・・何者なんだ?」

突如、現れた声の正体に疑問を感じながら愛は照準を『福田麻由子』に合わせた!

「・・・・・・・・」

愛の気配を感じた麻由子は首だけを後ろに向けて軽く溜息を吐いた。
「『終わり』って言ったじゃない・・・・・私の目的は『あの方』に楯突いた『愚か者』の粛清ッ。
 スタンド能力者との『演習』が目的で貴女達には興味も無いの・・・・」

「・・・・・ッッ!!!!」

麻由子の言葉に怒りを感じた愛に同調するように『サッドレディ』が赤く光を放ち始めた。

「興味も無い?ぁあ?『演習』だぁ?てめぇ等はあたしやみやにそんなハンパな理由で襲いかかった?はあぁ??」

「なにか不満でも?私は命は取らないってそう言う心算で『演習』と言ったの?本気だったらアナタ如きは
 最初の一手で絶命してる・・・・・そんな事にも気が付かない位、頭が悪いの?」
麻由子は腕を組んで愛を一笑した。
「・・・・・・・・・御高説有難うよォォォオォッッ」

紅の稲光が奔るッ。

「ッッッ!????」

「・・・・どーした?お得意の『ワタシノセカイ』は?」
笑みを浮かべ『サッドレディ』の竹刀をクルクルと回す愛を麻由子は激しく睨みつける。

その頬には腫れ跡が浮かぶ・・・・。

「・・・・・単細胞の事は良く解らないケド・・・・感情の昂りで能力が上がった・・・・とか言うの?
 前言撤回するわ・・・貴女に興味が涌いてきた・・・何か・・貴女を生かしておきたく無くなった・・」
麻由子の身体が蛍火に包まれる・・。

「生かしておかない?それはこっちの科白だっつーの!」
愛の感情を表現するように『サッドレディ』は紅く紅く光を放つ・・・・・。


銀色の永遠  〜ゴッド・スピード・ラブG〜


。 ・。・。・ ・。  ・・・。・。・ ・。


薄緑の煌きを放ちながら麻由子が消えるッ!!!!

「はは・・・・・・見える・・・見えるよ・・・・・お前の動きが・・先刻は霞もしなかったお前の動きが
 ・・・・・・・ブチ殺してやる・・・・ブッチ殺してやるだァーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」

赤色の稲妻が奔るッ!!!!

「ふ・・・んッ!『私の世界』を追えるなんて・・・・・ッ!!!!!生意気なんだよッッッ!!!!!!」
『コールドプレイ』のアームが愛に放たれるッ。
「くッ・・・・・おぉ!!!」
必死で回避するも愛の腹部に数発の打撃がのめり込む!
「・・・・・・がぁあぁぁッ!!!!」
打撃を受けたまま愛は身体を翻し袈裟に斬りかかる。

ヒュ         ュン

袈裟斬りは大気を切り裂き空振った!

「いい気になるなッ!!早くなったって言っても『多少』なんだよ!ヌケサクッッッ。」

麻由子は愛の剣戟を避けると大きく踏み込み拳を奔らす。


パァアアァ              アアアァン・・・・・・


「・・・・・・・な・・・・なんで・・・・・・」


胴体を打ち抜かれた麻由子はガックリと地に膝を突ける・・・・・・
地に突き疑問符を投げかける麻由子に竹刀を向けながら愛は冷淡に答えた。

「・・・・別に不思議なんかないよ『最初から』狙ってたんだよ・・・・お前のスピードなら初弾は避けるだろうってね!
 あとは袈裟斬りを避けてヨユーくれてるお前に踏み込んでの『斬り上げ』の攻撃をブチ込むだけ・・・・
 お前はこの連続技に見事にハマってくれた・・・・・・・それだけだ・・・・・このヌケサクが。」
 

銀色の永遠  〜ゴッド・スピード・ラブH〜


「・・・・・この・・・・ド低脳のカスが・・・・・殺す・・・・・殺してやるッ。」

麻由子は打ち抜かれた腹部を押さえながらヨロヨロと立ち上がる・・・。
その不安定な足腰とは裏腹に眼光は鋭く血月の様に真っ赤に血走っていたッ!!

「なんだぁそのキメェ目付きはぁ?あぁッ!?『殺す?』『殺してやる』だと?てめーこそ『因幡の白兎』
 みてーに生皮剥いで一夜干しにしてヤンぜーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」

愛は麻由子の言葉に激情し怒鳴り声を上げたかと思うや否や、赤い稲妻に『変わる』ッ!!

ド         ビュッン!!!

有りっ丈の『怒り』を込めた打ち込みッ!!!

・・・・・・・・・・が・・・空を切る。

「あぁ・・・・・・・?」



「遅いンだよ。この鈍亀ッ!」

その声が背後から聞こえた      その瞬間。

愛の身体は車に撥ねられた様な勢いで夜空に舞っていた。




・・・・・・・メシャァ!!!!!!!!!!
アスファルトに肉の叩き付けられた鈍い音が響く。

「ぁぁあ・・・・・あぁあぁああぁぁ・・・・・」

激しく全身を打ち付けた愛はピクピクと痙攣しながら呻き声を上げるばかりだった・・・・。

「手間掛けさせやがってクズがッ・・・・・このまま苦しんで死ね。」

麻由子の声が何処までも・・・何処までも遠くへ聞こえる・・・・・
愛の精神は夜の暗黒に溶けていた・・・・・。


銀色の永遠  〜ゴッド・スピード・ラブI〜


『・・・・・・愚か者・・・・』

愛の頭の中に紫の光が浮かぶ

「・・・・・ディ・・・プ・・・パァ・・・プ・・・ル」

『言った筈だ・・・・・・『怒りに身を任せるな』と・・・・感情の昂りで得る様な『力』など
 風に煽られて舞い上がる蝋燭の炎・・・・・一時的に伸び上がったと感じるだけだ・・・・』

頭の中を『ディープパープル』の言葉が響く。

「う・・・・・五月蝿い・・・あたしはまだ負けちゃいない・・・・あたしの怒りはまだ収まらない・・・」

「怒りの感情はあたし自身なんだ・・・・あたしはあたしを守る為に・・・・怒りを糧に・・・戦うッ!」

『・・・・・・未熟な・・・・』

「未熟で結構ォだ・・・・・お前なんかにあたしの怒りが理解出来るかッ・・・・・・」

『・・・・・』

「・・・・・あたしは愛されなかった・・・・パパにも・・・ママにも・・・・二人にとってあたしはお荷物
 だった・・・・・・邪魔だった・・・・」

「実の親から愛を与えられなかった・・・・このぽっかり空いたアナを・・・悲しさを何で埋めたらいい!?
 怒りや憎しみの感情以外で埋められるかッ!!怒りや憎しみ感情以外で自分を守れるかッ!!」



「あたしだって愛されたかったんだッッッッ!!!!!!!!!!!!!」



『・・・お前の境遇がどうであるか・・・・それは他人の俺が量る事は出来ない・・・だがお前はこの先も
 そうやって生きる心算なのか?』

「・・・・・・・?」

『愛に飢え怒り憎しむ・・・・・・・そんな終わりの無い地獄を続ける心算なのか?』

「な・・・・何を言っている!!?」

『怒りや憎しみで心を曇らせるな・・・・糧などでは無い・・その感情こそがお前を追い詰めている・・・・』

「あたしは・・・追い詰められてなんかいないッ。」

『怒りを捨てろ・・・・蟠りや疚しさに心捕らわれるな・・・・全ての澱みを脱ぎ去れ・・・・・』

「解らないよ・・・・そんなの・・・そんな生き方・・・・解らないよ・・・・」

『その答えなら既に解っている筈だろう?お前は自らを省みず友人の夏焼雅を助けた・・・・
 それは怒りの所為か?憎しみの所為か?』

「違う・・・・・・・あたしは『みやを助けたい』・・・・そう・・・思った・・・」

『人を振るい立たせるのは勇気!そして勇気は愛!その事は誰よりもお前自身が良く知ってる筈だ・・・』

「・・・・・『ディープパープル』・・・アナタは何者だ!なんでそんな事を!?」

『「明鏡止水」・・・・・それがお前の歩む道・・・・・』

紫の陽炎が揺らめいて消えるッ。

「待ってッ!!」

愛は残光を追う様に手を伸ばす。



「〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!な・・・何なんだ・・・・お前は・・なんで未だ動けるッ!???」
麻由子の声に愛は我に返る・・・・

「ここは・・・・・『ディープパープル』は?」
愛は呆けた様に辺りを見回す。

周囲は夜の黒が覆う・・・・・愛の精神は再び戦場に舞い降りた。


銀色の永遠  〜ゴッド・スピード・ラブJ〜


キリ・・・・
   キリ・・・・


虫の音が暗闇に染み渡る・・・・・。


「・・・・・・・何なんだ?お前はッッ!!!!!・・・まさか・・・・まさかお前も・・・・」
血塗れの愛を見て麻由子は激しく動揺するッ。

「・・・・・・・・おばぁちゃんが言っていた・・・勝負はビビッたほうが負けると・・・・」
愛は血に塗れた右手を天に向けた。


「ふざけるな・・・・その身体で・・・・何が出来るッッ。」
『コールドプレイ』の能力が発動し麻由子の身体が消える!
血塗れの愛に向かって拳が踊る。

「・・・・・・・・・・・ッ!」

愛の顔面を捉えた筈の拳。・・・・がその場に愛の姿は無い!

「こっちだ・・・・福田麻由子・・・・」

麻由子の背後から愛の声が聞こえる・・・

「何でそこに居るッ!」
麻由子の拳が背後の愛に突き刺さる。

「・・・・・・どこを見ている」

目の前の残像が消え右横に愛が姿を現す

「こんな事は有り得ない・・・有り得ない・・・・・何で・・・何でお前が私より早く・・・」
狼狽し呼吸の荒くなった麻由子が愛に怒鳴りつける・・・・
「くもりなき鏡、波立たぬ静かな水の如く ・・・・・蟠りや疚しさの無い・・・・澄んだ心・・・・」
『サッドレディ』が金色に輝き始める。

「見えた・・・・水のひと雫ッ!!」
愛は剣を横に構え麻由子に身体を向ける。

「く・・・・・・・殺してやる・・・・お前なんか消えてなくなれ!!!!!!」
その姿勢、態度に逆上した麻由子は低い姿勢で駆け出す!!

「我が心、明鏡止水・・・・・されどこの剣は烈火の如くッ!!!!!」

  止      明
    
       
         
  水      鏡


「超級!覇王!日輪斬!!!!!!!!!」




TO BE NEXT SIDE・・・・・