銀色の永遠  〜永久と刹那のカフェ・オレ〜

 8月3日 pm8:33 杜王町市内

バス停に三分遅れでバスが到着し皆、足早に乗車する・・・・。
車内は座れる位の余裕の有る込みようで夏焼雅は奥の窓際の席に座った。

「ふぅ〜・・・・・・」

学習塾に夏季短期講習を終え、雅は軽く息を吐いた。
車窓から流れる景色をぼ〜と見ながら雅は遅れた夏休みを実感していた・・・・。


ピンクのかわいらしい腕時計に目をやり到着時間を割り出すと雅はバックの中から文庫本を取り出
し読み始めた。

『ハバネロ練金術師』

中世を舞台にハバネロの仮面を付けた錬金術師が二挺拳銃で大暴れするクライムアクションノベル
巨編・・・・・雅は愛読書を貪るように読み始める。
現在5巻まで発刊しているが雅は2〜3巻の盛り上がり方が好きで常に携帯をしていて空いた時間を
見ては読み耽っているのだ。

ページは進み雅の最も好きなシーンに移る!
錬金術師が窮地に追い込まれ地上1000mからダイブしつつ空中要塞を二挺拳銃で破壊するシーン
・・・・・・・何度読みながらも・・・展開を知っていながらも、雅は目を輝かせて活字を追う!

錬金術師の最後の弾丸が放たれ、要塞動力炉に直撃し大爆発が起こるところでバスは停留所に止まる。
その振動に雅は興を削がれた気持ちになり無意識に乗車して来た客を軽く睨みつけて読書を再開した・・・。


銀色の永遠  〜永久と刹那のカフェ・オレA〜

・・・・・・・・

・・・・?

活字を追いながら雅は視界に妙なモノが映った?・・・・・という事に気付く・・・・
視線を再び先ほど睨み付けた『乗車して来た客』に移す。



ショートカットのその少女を目が合う!
いや・・・・吊革に掴まった彼女は自分と『目』が逢う人間を探していたのかッ!?

彼女の手から伸びる剥き身の刀身ッ。
40cmは越えようかと言う刃物を手に持ったままバスに乗車している彼女を誰も咎めようとはし
ない。

左右を見回しても誰も反応していない

「・・・・・まさか」

・・・・・そう、雅以外には見えていないのだッ!

「スタンド・・・使い・・・」

雅の咽喉がコクリと鳴る・・・・・・。

ショートカットの少女の大きな目は雅を捉えたまま動かない・・・・。

窓際の席に座った事でどう動こうとも立っている彼女の動きに一手も二手も遅れを取る。
その事に唇を噛み締めながら緊張の色を濃くする・・・・・・

キキッ

ブレーキ音を立てバスは小さく揺れ停留する。

ショートカットの少女は口元を緩め笑顔を造ると顎先で雅に降りるように促す。
抜き差しなら無い状況だと悟った雅はその行為に逆らう事無く席を立ち、予定より三つも前の停留
所に降り立った。


銀色の永遠  〜永久と刹那のカフェ・オレB〜


8月3日 pm8:42

「あたしって隣町から来たから杜王町はあんまり詳しくは無いんだよね〜」
少女は雅の方を向かずに独り言の様に喋り出す。
「・・・・・・・・・・」
雅はその言葉に答えず沈黙を守っていた・・・・

いや黙らされていた・・・・・先ほどから何回も飛び掛ろうとしているのだが隙の無い挙動に
その機を逸しされ続けている・・・・・。

少女は人通りが少なそうな路地を選ぶと初めて雅の方を振り向いた。
「・・・・・・ここなら大丈夫かな?・・・・まぁ良く解らないけど。」
少女は微笑みながら切っ先を雅に向ける!

「・・・・・・・・あんた何者なの?何が目的で私を・・・・・」
雅はバッグを地面に投げつけて猫足立ちの構えを取る。

「名乗りが必要なの?・・・・・・まぁ・・・良いか・・・・・名前は『志田未来』・・・
 3日前に能力を身に付けた『スタンド使い』・・・能力名は『タヒチ80』・・・」

ヒュンッ!

そう言うと志田未来は雫を払う様に『タヒチ80』の切っ先を地面に向かって振り込むッ!

「『セクシー・アダルティ』ッッ!!!」
掛け声と共に雅の手から発現した朱の長槍が暗闇を切り裂くッ!!
「夏焼家槍戯継承者『夏焼雅』ッ!アンタの目的如何では只では済まさないッ!」

未来は『タヒチ80』の切っ先を雅に向けクルクルと旋回させる・・・・・。

「・・・・別に目的って言われてもね・・・・私達は特に何も言われてないし・・・・そ〜だ・・
 強いて言えば・・・夜空が綺麗だったから・・・・誰かに『力』を使ってみたかった・・カナ?」



銀色の永遠  〜永久と刹那のカフェ・オレC〜


『・・・・・・こ・・・こいつ・・・マトモじゃない・・・・・・』

未来の独白を聞いて雅は戦慄を覚えた。

「ねぇ?だから相手をしてよ・・・・もっとも勝つのは私だろうけどさ」
硬直した雅に未来は笑いかける。
剣が帯びる邪悪さを打ち消す様な無邪気さで・・・・・・・

「アンタ・・・・・頭がイカレてるって言われた事無い?」
雅は邪気に眉を顰め言葉を紡ぐ。
「?・・・・・何、言ってんの?」
突然の雅の発言に未来は目を大きくさせる。
「だから病院行ってイカレ脳を調律して貰えって言ってんだよッ!!!!!」
怒号と共に朱の閃光が奔るッ!

夏焼家槍戯の鋭い突きが未来の胴体を一直線に狙うッ!

「ッと!」

頭部では無く胴体部を狙った攻撃を未来は簡単に見切り京劇かバレエの様な身体を回転させる足運
びで難なくかわすッ!

「お返しッッ。」

身を翻しながら突き出された『タヒチ80』は急加速に伸びるッ!
切っ先は瞬く間に雅の目前に迫るッ。

「なッ?この『能力』ッ????」

雅は『セクシー・アダルティ』の柄を跳ね上げ剣の切っ先を打ち上げる様に捌く。

硬い金属音を鳴らし夜空を泳いだ『タヒチ80』は2mの長さからシュルシュルと音を立てて未来の
手元に戻った。
「突然でビックリしたけど・・ナツヤキさんの『能力』と私の『能力』って随分と似てるんだ・・ ・・・・・もっとも私の方がスピードは速いみたいだけど。」
未来は再び切っ先を雅に向けながらクルクルと玩び笑顔を浮かべた。

夜風に吹かれ雅の髪の毛が数本、宙に舞う・・・・・・

未来の剣撃を捌ききった心算で居た雅の心に鉛をぶち込まれた様な悪寒が奔った。


銀色の永遠  〜永久と刹那のカフェ・オレD〜


夜風が雅の額を撫でる・・・・本来なら涼やかな風も雅の心を心底まで冷やした・・・。

その風に前髪を揺らしながら未来はにこやかに笑いながら『タヒチ80』の刃先を玩ぶ。

「ねぇねぇ?アンタのチカラってそんなモンじゃないんでしょ?」
嘲る様な未来の言葉が雅の心を逆撫でるッ。
「〜〜〜〜〜〜〜ッッ!」
ギリッと歯を喰いしばると雅は『セクシー・アダルティ』を水平に構える。
「・・・・なら善いよ。見たいだけ見せてやるさ・・・・・夏焼家のワザをッ!!!!!!」
槍を握る雅の手に力が入る・・・・・・・・
その挙動に未来は満足そうに微笑む・・・・・

雅の手が亜高速に動き朱の閃光が空間を埋める。

「おぉぉおぉぉおッ!!夏焼家槍戯!雅棟燐虞槍ッッッ!!!!!」

秒間60連打の槍撃が未来に降りかかるッ。

「わぁ!すごいねぇ?だけど・・・・・」
未来は感嘆符を上げると避けるどころか槍の雨に踏み込む。
「ッ!? コイツ! ふざけやがってッ!!!!!」
未来の行動で一層激しさを増す雅の槍ッ!

スッ
   ススッ
  スススススッッッ!!!
油が水を弾く様に『セクシー・アダルティ』の朱は未来の身体に弾かれる・・・

「な?」

「見えてるンだから不思議なことないでしょ?」

未来の身体を旋回する銀色の軌跡・・・・・
その軌跡に『セクシー・アダルティ』が尽く弾かれるッ。


銀色の永遠  〜永久と刹那のカフェ・オレE〜


朱の直線が白銀の曲線に弾かれ火花を散らす・・・・・・

志田未来は夏焼雅の高速で打ち込まれる槍撃をそれを越す速度で弾き飛ばし続けるッ!

「そ・・・・そんな・・・・理解出来ない・・・・私の突きより・・速いなんてっ!?」
雅は本気で突き刺す心算で『セクシー・アダルティ』と突き出すもまるでリハーサルでも有ったか
の様に、その舞踏の如き挙動に弾き飛ばされている・・・この行為は彼女を支えるモノ、信念を揺るがし続けた。

「あんたって自分の事をあまり理解って無いみたいだね・・・・?」
未来は超速で『タヒチ80』を振り回しながら続けた。
「突き出す回転速度を意識しすぎて後ろ足に体重が乗りすぎてるの?解る?」
白刃の回転は更に加速し『受けている』ハズの挙動が雅の突きを圧倒し始める。
「だから一突き一突きが軽すぎる・・『速さ』さえ有れば片手でも簡単に弾ける・・更に言えば
 私の剣の振りも最小限度の円運動で動かしてるからアナタの突きより早く動かせる・・・解った?」
未来は笑顔を見せると掬い上げる様な軌道で雅の『セクシー・アダルティ』を打ち上げるッ!
「うぁあッ!」
カウンターの様に突いた勢いのまま上方に弾かれた槍の異常な手応えに雅は叫び声をあげた。

「ナツヤキさんの悪い癖を直すとこんな感じかな?」

未来は右足を強く踏み込むと『タヒチ80』を振るい始めるッ!
白銀は凄まじい勢いで空間を染める・・・・・・『セクシー・アダルティ』よりも遥かに速い速度で・・・・・

「う・・・・・うわぁあぁあぁあッ!夏焼流槍戯!痲彌臼玖來韻!」
雅は『セクシー・アダルティ』の長さを縮め八の字に振り回し防御姿勢を取るッ!


銀色の永遠  〜永久と刹那のカフェ・オレF〜


「へぇ〜?槍をバトンみたいに使うなんて面白いね!・・・だけど何時まで耐えられる?」
未来は突き出す手の速度を速める、その突きの重さに雅の身体が仰け反るッ!
「片手剣のはずなのに・・・・・何で・・・・・何でこんなにパワフルなのッ!!?????」
槍の回転速度が剣の突きの速度に遅れるッ!

ッ!

    ッ!

ほんの短い時間、雅の腹部はガラアキになる・・・・・・・
その刹那を見逃さず未来の『タヒチ80』の突きは腹部に目掛け叩き込まれれたッ!
「うげぇぇえぇぇええぇええぇえええッ!!!」
肋骨の軋む音を聞きながら雅は衝撃にのたうち廻る。

その姿を見下しながら未来は満足そうに『タヒチ80』を虚空に振りかざす。

「刃先は鈍らせて有るから安心してよ、でないと遊べないし・・・それよりこんな凄いワザ作っち
 ゃったからには名前付けないと・・・・どんなのがいいかなぁ?う〜ん・・・・・・
 そうだなぁ・・・・名付けて『ミリオネア・ゲイル』・・・・・こんなんどうかな?」

雅は胃液を吐きながら未来を睨み付けた。

「知った名前かと思って手心を加えればッ・・・・・・・図に乗るンじゃねえッッッッ!!!!」
地に伏した状態から伸び上がるような勢いで雅の手から朱が爆ぜる!
「夏焼家槍戯!牌屡蕃珂ァアァッ!!!!!」
唸りを上げて伸び上がる朱ッ!

「ほッ!」

超速の槍撃ッ。   がカチンと軽い音を立てると未来はその槍撃を簡単に捌く!

「初見の突きがオーバーモーションになっただけじゃん!」


銀色の永遠  〜永久と刹那のカフェ・オレG〜


雅の渾身の突きを軽々と舞い避けた未来は着地と共に強く右足を踏み込むッ!

「『渾身の一撃』ってのはこうなんじゃないのッ!?」
踏み込みから1テンポ遅れ捻りを効かせた剣が空間を掻きまわしながら弾きだされた。

「『パンツァー・クレイヴ』ッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」

未来の手から伸びる白銀ッ!
その白銀の一閃は雅の朱の一撃を遥かに越える速度で迫るッッ!!!

雅の世界はスローに変わり片手剣の白刃がゆっくりと迫ってくる・・・・
「くッッ・・・・・避け・・・・なければ・・・」
反応しようにも身体がゆっくりとしか動かない・・・・・・
空気の流れすら抵抗に感じる。

その世界で
       雅は終わりを
    
             感じていた

「十郎・・・・じいさま・・・・・」

『己の負けを潔く受け入れるも武に生きる者の心得』

雅は目を瞑り、己の散り際を潔く受け入れた。







ッッッッギィイィイイイィイン!!!!!!!!!!!


金属と金属の衝突音に似た音が響く
その音に雅は閉じた目を開いた・・・・・・・・

「・・・偶然・・・本当に偶然ここを通りがかったら・・・・・・何でこんな事に巻き込まれてるのよ・・・・・」

雅の前に遮る様に立つ人影・・・艶やかな黒髪を雅は知っていた・・・・

「め・・・めぐ・・・・・・・・」


銀色の永遠  〜永久と刹那のカフェ・オレH〜


8月3日 pm8:52

地面に投げ出された自転車がカラカラと車輪を鳴らす・・・・・・

村上愛は滑り込んだ様な姿勢で白刃を受け止めていた。

「ふ〜ん・・・行き成り飛び込んで来て私の『タヒチ80』を受け止めるなんて・・アンタ凄いねぇ・・・・・」
そう言うや志田未来は白銀の片手剣『タヒチ80』に力を込めて押し出した。

ギチィイイ・・・・・ギチチィッ!!

鈍い音を立てて愛の『サッド・レディ』の竹刀が軋むッ!!
「何なの?!!コイツ・・・腕一本で・・・こんなの!??? みやッ!コイツはッッッ???」
耐え切れない様な物理的圧迫に愛は悲鳴にも似た声を上げる。

「コイツは・・・・」

雅が愛の問いかけに答えようとした瞬間ッ。
蛍火の様な粒子が瞬き、何も無かったハズの空間に突然!人影が灯る。

「・・・・・・まさかあと一人釣れるなんてね、未来ちゃん!この子は私が処分しとくよッ!」

光粒子を纏った黒髪の少女は出現するや否や愛の襟首を掴むとまた光を放ちながら愛共々消えてしまった・・・・・・
「め・・・・・・・めぐッ!!!!」
雅は伽藍堂の虚空に愛の名を叫ぶ・・・・・・
「あ〜ぁ・・・・ナツヤキさんよりあの子の方が楽しめそうだったのに・・・麻由子ちゃんズルイよぉ・・・・・」
未来は頬を膨らませて不満を顔全体で表現した。
「ふざけろ・・・・・」
雅は槍を構え闘志を再点火する。
「お前・・・いやお前達は・・・本当に友里奈の友達の『志田未来と福田麻由子』なのかッ!?」
突き刺す様な視線・・・・その視線に未来は笑みを浮かべる。
「友里奈・・ちゃんか・・・久々に聞いた名前だね・・・そっか・・・ナツヤキさんの友達なら友里奈ちゃんは
 『スタンド能力』を持ってるのかな?・・・だったらまた会ってみたいかな?」
その冷たい笑みが雅の背筋を凍らせる・・・・。
「友里奈に会ってどうする心算だッ!!!」
雅は乾く咽喉を絞るように叫ぶッ。
「・・・・・どうすると思う??」
未来は嘲る様な表情を造る。

「こッッッこぉぉぉのおぉぉぉおぉぉぉぉおおぉおおッッ!!!」

雅は感情の爆発、その全てを長槍『セクシー・アダルティ』に装填し弾きだすッ!

「乱雑な身体軸移動・・・・・力みすぎてスピードロスばかりの腕の動き・・・・不安定な足の
 位置・・・・・・どこもかしこも不完全・・・・・」

未来は水面を滑るような動きで激情をやすやすと避ける・・・・

「未熟!未熟!!未熟千万!!!!!!!!」

白銀の剣の雨が雅の身体に降り注ぐ!
穿つかれた雅の身体は地面に2〜3回軽くバウンドした・・・・・・・・

「やはり・・・ナツヤキさん・・・あなたは何も解ってない『未熟者』にすぎないッ!
 そうやって感情を振りかざせばどうにか成ると思ってる・・・汚らわしいッ!
 そんな攻撃なんかは私には当たる訳も無いッ!!!」

未来は不愉快そうに踵を返した。

「興が冷めちゃった・・・・・見逃してやるからこの場から居なくなってくれない?」


銀色の永遠  〜永久と刹那のカフェ・オレI〜


未来の土を蹴る音を聞きながら、雅は『セクシー・アダルティ』にしがみ付きながら身体を起こす。
腹部に受けたダメージが呼吸を乱す・・・必死で荒れる呼吸を整えながら自らに言い聞かす様に足腰を振るい立たしていた・・・・。
そんな雅の行動などまるで無視する様に未来は足早に歩みを進める。

ザッ
    ザッ
  ザッ

雅は未来の背中から進む先に視線を移す・・・・
80mほどの所でキラキラと光が付いたり消えたりしている・・・その残光を追う様に武者が竹刀を振りかざす
・・・・・・。
「め・・・・めぐ・・・・そして『福田麻由子』・・・・・・や・・やばい・・・・志田はあそこに・・・」
槍を杖の様に使いながらヨロヨロとした足取りで雅は歩き始める。

『まさか孫娘よ、まだ闘う心算ではないだろうな?あの村上愛を救う為に』 

その声に雅は辺りを見回すッ。

『雅よ・・・・行ってはならぬ、行けば負けるぞ・・・』

「十郎おじいさま・・・・・」
雅の祖父である夏焼雅十郎のヴィジョンが夜の闇に浮かぶ。

『それはお前自身そう感じて解ってるハズだッ。自分ではヤツには勝てないと・・・』

「・・・・・・・」
心の底に有る弱い意志を突かれ雅は押し黙る・・・・・
そんな孫娘に雅十郎は尚も問い掛ける。

『「闘う」理由はなんだ? それは「自惚れ」だからだ。だから負ける。』

『自分なら「友」を助けられるという「自惚れ」 「自惚れ」はお前の心のスキ間に入り込み隙を生む!』

『夏焼流槍戯継承者としての「自惚れ」はお前自身を破滅に追いやるぞ!』

『闘っては成らない! お前には「勝利」など必要な無い事だッ! 所詮は「戯れ」!「技」に有らずッ!
 戦闘する技術では無いのだ。』

『黙ってこの場から逃げ去れ。お前の力なら逃げ切れるハズ!これは命令だ!お前は夏焼家の長子!』

『しかも言ったハズだ!戦う技術などが存在し続けるからこの世から戦争が無くならない!
 槍技の道を絶やす為にお前に教えたのだ!道を「戯れ」と濁し絶やす事がお前の使命なのだ!!』

『お前に戦いを強いる演劇部なと直ぐにやめてしまえッ!』

言葉だけを残し、雅十郎のヴィジョンは夜の闇に吸い込まれる様に消える・・・・

「お言葉ながら十郎おじいさま 「自惚れ」ですと・・・・!!それは違います。」

瞳に強い信念の光を宿しながら雅は歩き始めるッ。
「しかもあの女!私の事を『未熟者』だと?偉そーーーーーーーによォ!くだらねー事言いやがって!」
雅は強い足取りで走り始めた!
「私は『探求』したいだけだ!自分の可能性を!そして夏焼家の歩んで来た道が本当に間違っていたのかを!
 『探求』は全てに優先するッ!でないと私は『前へ』進めないッ!『どこへ』も『未来』への道も探す事
 は出来ない!だから演劇部にも入部した!」
雅の手に力が漲る。
「見えたぞ!見えてきた!十郎おじいさま!」

ドドド
   ド
 ドドドド

「私の『流儀』がッ!『勝利』の感覚が見えてきたッ!!」


 
銀色の永遠  〜永久と刹那のカフェ・オレJ〜


「オラァァアァァァアァアァアァアァッッッ!!!!!!!!!!!!」

雅は駆け出した勢いのまま『セクシー・アダルティ』を袈裟懸けに振るうッ。

シュコォォオオ・・・・・・

風切り音も空しく、槍先に居た未来はふらりと身体を揺らし何事も無かったかの様に斬撃をかわす!

未来は足を止め、雅の方を振り返った。
「まだ居たの?    お前何かの行為は何事でもない・・・・・さっき言ったハズだけど?」
白刃を雅に向け未来は続ける。
「スタンドのパワーやスピード。本体の能力もこっちのほうが数段上・・・・・・『ライナーノーツ』は
 アイツに繋がりが有りそうなヤツはついでに処分しろって言いそうだけど私にとっては何の価値も無い」

ヒュンッ!

白刃を右に払うと吐き捨てる様に放つ。
「逃がしてやるッつてんだからシッポを巻いて消えろよッ。」



「・・・・何かさァー 気のせいか随分と上から見下されてるみたいなんですけどぉぉおーーーーーー」
雅は尚も歩き続け間合いを詰める。
「おたくさん・・・・・・私の『技術』の一部分をパクったくらいで全てを見切った心算で居るみたいだけど
 ・・・・・・・・私の『流儀』はそんなに浅いモンじゃねーーーんだよッ。」

「『流儀』・・・・・・?」

「そうさ・・・・・・私の『私だけ』の流儀ッ。」

ゴゴゴゴ  ゴゴ

   ゴゴ

    ゴゴゴゴゴ

雅は槍を水平に構えるとその身をバネの様に低く捻る。
「見せてやるッ。夏焼流槍技改メッッ!!!!!!」
乾いたアスファルトが爆発した様な音ッ。
「天上天下雅流ッ!凄杯螺琉武零華亜ッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
雅の絶叫と共に突風が吹き荒れる!

槍を中心とした超速の旋風ッ!

「螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺螺ァァァァアアァアアァアッッ!!!!!」

「こ・・・・・・・・・・・・こんな程度でェェェエエ!!!!!!!!!!!」

雅の朱の螺旋に未来の白銀が突き刺さる!

ギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリ

スタンドのパワーとパワーが真っ向からぶつかり合い軋み合うッ。

「く・・・・くあぁあぁああぁああッ!!!」
廻る螺旋の朱に未来は弾かれ宙を錐揉む!
錐揉んだ身体は数メートル程、吹き飛び地面に強かにその身を打ち付ける・・・・・

「・・・・・・・・・・ぅうぅ・・・・」

未来は強打した箇所を押さえながらゆっくりと立ち上がる。

「やっぱりよォォォ・・立ち上がったな・・・・・で・・どうする?「続ける」のか?」

「まだこんな「ワザ」が・・・・・面白いッ!夏焼雅ッ!!!」

未来は『タヒチ80』と突き出すと身体を斜に構えながら叫ぶッ!
「少しはいい「眼光」になったッ。だがまだ所詮は『未熟者』ッッ!!!」
雅は『セクシィ・アダルティ』を右手一本で持ち替えると弓なりに身体を反らすッ!
「決めるのは お前じゃないィィイィイィィイィーーーーーッ!喰らえ!天上天下雅流ッッ!!!!!」


          『虚 耶 卦 濡 痲』


槍投げの様に!雅は渾身の力を込めて朱槍『セクシィ・アダルティ』を投げ放つ!

「こんな自暴自棄な「ワザ」がッ!通るとッ!?」

朱の一閃を未来は体捌きのみ軽々と回避した・・・
「やはり『未熟者』は『未熟者』ッ。絶命してその未熟さを後悔しろ!!!!」
未来は駆け出し白銀の剣を振りかざす!
「・・・・未熟者・・・・未熟者ねぇ・・・私がそーだったら志田!お前は・・・・・・
 『マヌケヤロウ』だァーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」


「何ッ!−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ッッ!?」

雅の言葉に反応した瞬間。未来の背中を『何か』が突き押すッ!
その圧力に押され未来の身体はドンドン加速するッ!!!!!
「なッ・・・・・・・ま・・・まさか!?????????????」
未来の足はアスファルトを離れその身体は雅に向かって加速する。
その姿を見て雅は口端を緩める!

「そうさ・・・・地面に刺さった『セクシー・アダルティ』の柄が伸びてお前の身体を押しているッ。
 最初の投槍は『セクシー・アダルティ』をお前の背後に設置する為の行為!
 アレを攻撃と読んだお前こそが『未熟』だったなァッーーーーーーーーーーーーーーーッ!」

「お・・・・お前・・・如きにィイッ・・・・・・・・・・・・・・・!!!」

『セクシー・アダルティ』に突き出された未来の身体は雅に数十センチの所にまで迫る!

「これで終わりだ・・・・・天上天下雅流拳術!」
雅は迫る未来の身体に向かって大きく踏み込む。
「零距離 牌瑠夏駈屡ッ!!!!!!!」

                              メシャッ。




夜の闇に枯れた枝が折れる様なイヤな音が響く・・・・・

「ぐ・・・・ェエ・・・・・・・・」

拳撃であばら骨を折られた未来は腹部を押さえ痛みに地面をもがく。

もがく未来に雅は槍を立て敬意を払いながら語りかけた。
「・・・実際、あんたの方が腕前は数段上だったよ・・・・・けれど私には行かなきゃならない『道』が
 有るんだ・・・・・・確かめなきゃならない『道』が・・・・・その為にはここで負ける訳には行かない。
 それをあんたに思い出させて貰ったよ・・・・・」

その言葉を聞くと未来は絞り出す様な声で笑い声を上げる。
「プ・・・・・・・・・・プハァアアァハハハ・・・・・・・」

狂気を孕んだようなその声!雅は激昂し『セクシー・アダルティ』を未来の咽喉元に突き当てる!

「フ・・・フフフ・・・・・凄んだ所でどうなるのサ?『道』だなんてそんなの跡形も無く消えるよ・・・」



TO BE NEXT SIDE・・・・・