銀色の永遠  〜車と女@〜

12月21日 夜半

冬の乾いた空気に排気音が響く。

カレラGTは寒さに張り詰めた風を薙ぐように街を走る。

「今日は大変だったね〜。よっちゃん。」
「全く・・公演が迫ってるってのに二人も入院なんて・・・正直、どうしたもんだか・・」
吉澤ひとみは部員には言えない様な愚痴を木村絢香に漏らす。
「にしてもこの車、凄ェなぁ・・やっぱ車を運転できるって良いよなぁ・・」
「よっちゃんだって来年になれば取れるでしょ?」
「免許が取れたってこんな凄ェ車に乗れるとは限らねぇって」
ひとみは車窓からぼんやりと照らされる街灯を見ながらそう言った。
「絢香は大学に行くのも決まってるよなぁ?」
「うん・・もう決まってるけど?」
「じゃあさ。クリスマスの公演、ちょっと出てくれよ!なッ!」
「なッ!?・・・でも困ってる親友を捨てては置けないか・・」
「マジで!?有難う!恩にきるよ!」
ひとみは満面の笑みを浮かべた。
「それで?私一人じゃ足らないんじゃないの?」
「そうなんだ。だからまいちんに頼もうかと・・」
そう、ひとみが言いかけた途端。ガラスを叩く軽い音が車内に響いた。

「呼んだ?」

車上から覗き込むように女の頭が垂れ下がる。
「OHッ!!!!」
カレラGTは俄かに挙動が怪しくなった。
「脅かすなよッ!まいちん!」
怒鳴るひとみを余所に窓ガラスを勝手に下げその細く形の整った足を車内に投げ出した。
「も〜外は寒くてさぁ〜。待ってられなかったから追っかけて来ちゃったよ。」
「待つって、そんな距離じゃないだろ?」
ひとみは未だ窓の外にある里田まいの顔に向かって話しかける。
「『スタンピート&ダウンビート』の能力を使えば直線距離だしさぁ。」
「何時までそうやって窓に座って乗ってるつもりなぉ?捕まっちゃうよ?」
所謂ハコ乗り状態のまいに絢香は苦言を言う
「て言うかさ、絢香この車狭すぎ。ハイエースとかのが良くない?」
「ハイエースって・・」

まいの切り替えしに絢香はグッタリと項垂れた。


銀色の永遠  〜車と女A〜


―スポルトマティク―


ティゥリトゥリトゥリラー ティゥリトゥリトゥリラー

心が弾む。

トゥラーリー ティゥリトゥリトゥリラートゥラーリー

飲んでいるよ。だが好きで飲んでいる訳じゃない。
こう寒いとアルコール飲んで暖を取らないととても我慢できない。
俺は相変わらず宿無しで過ごしている。
こう毎日ホテルだのなんので貯金も毎日減る一方だ・・・
いつまでこんな事を続けるつもりなのか?俺。

やり切れない気持ちをアルコールで流し込む。

ティゥリトゥリトゥリラー ティゥリトゥリトゥリラー
トゥラーリー ティゥリトゥリトゥリラー ティゥリトゥリトゥリラー
アー ティゥリトゥリトゥリラー ティゥリトゥリトゥリラー
トゥラーリー ティゥリトゥリトゥリラートゥーレリラー

調子の外れた鼻歌を口ずさみながら冬の街を一人歩く。

今夜も冷え込むなぁ・・・
そう考えながら肩を窄めた俺は一台の赤い車に目を奪われた。
「こりゃぁ・・・どこの国の車だぁ?」
近づいて見てみてもなんだなかぁ・・
「Car・・・rera・・GT・・・?」
リアに付いているこれがこの車の名前なんだろうか?

「ちょっと!何をしてるンですかッ!?」
いきなり後ろから怒鳴られた。
俺は驚いて後ろを振り向く!

・・・・何だ?この若造が俺に怒鳴りつけたのか?
俺に怒鳴りつけた相手は一回りは年が下に見えるガキだった。
おまけに女を2人も連れて居やがる。
俺は別に車に何かしようとかそんな気持ちはないのだ。
「いや・・何するもなにも俺はただ珍しいと思ったから見てただけで・・」
「そうですか!じゃあどいて貰えますか?」
そういって俺を押しのけて車に乗り始めた。

・・・・・コラァ!このガキィ!!!!!!!!!!

     シャキィィイーーーーン!

まぁ精々恥を掻きなよ王子様。

そう心の中で呟いて俺は踵を返した。


銀色の永遠  〜車と女B〜

酔っ払いを一瞥して車に乗り込もうとした瞬間。
ひとみの背中に突然痛い位の寒さが走る。

「ウゥッ?な・・何だ?!」

突然の事に狼狽しながら背中を触ってみる。
無いのだ。
布地が消えて無くなっているのだ。
「これは・・・どういう事?・・・だ?」
困惑するひとみを里田まいは車に押し込む。
「その格好じゃ、見てるほうが寒いよ!」
そうひとみに告げると後ろに視線を送る。
「絢香・・・今の。見た?」
「ええ。あの男・・・イキナリでッかい『鋏』を出してよっちゃんに切り付け来た・・」
「てことは『敵』だよね。」
「YES!」
「じゃあオトシマエつけてこようか。」

そういってまいは絢香の手を取って高く上げた。

「出ろッ!スタンピート&ダウンビートッ!!」
その声に連動して姿を見せた里田まいのスタンドは銀色の輝きを見せる。
「さぁ。絢香・・急ごう」
「焦らないで。まずはターゲットの動きを止めないと!」
「止める?」
「そう、止めるの!WOW×3!」
絢香の背後に黄色い人影が出現した。
人差し指を立ててターゲットへ標準を合わす。
「YESッ!」
パチィイィンッ!
WOW×3は右指を激しく鳴らす!
「うげぇえ!」
間を置かず革ジャケットの男は倒れた。
「よし!行こうか!」
まいは絢香の手を引き走り出しす。
スタンピート&ダウンビートは蹄鉄を高鳴らせて夜空を駆け出した。


銀色の永遠  〜車と女C〜

―スポルトマティク―

俺は突然、後頭部にテニスボールを打ち込まれた様な衝撃を受けてその場に倒れた。
直ぐに身体を起こして後方を見る。

・・突然の事に俺の意識は朦朧と・・・して・・・いるのか?

一瞬の出来事なんだが・・どうにも噛み砕け無いのでゆっくり行こう。

蹄の音が聞こえたんだ。ここ街中なのに!
聞こえた方向を見ると・・・何故か空中で・・・
それに乗っているのは先刻の車の女??

なんで馬が空を駆けている?

   なんで?

    良く見ればあの馬・・・首が無ェッ!!!

      っつうか俺の所に飛び降りて来たァァアァァアァア!!!!!

                   ふ・・・踏み潰されるッッッ!!!!

「ま・・間に合え!スポルトマティク・チョップ・シザースッツ!!!」

                                シャキィイィイィィン!!!

銀色の永遠  〜車と女D〜

「ハイヨーォ!スタンピート&ダウンビートォッ!!」
まいのスタンピート&ダウンビートは軽く嘶くと前足を力強く空間に打ち付けた。
カッカロッカロッカロッカロッ!
『空間を踏み固める能力』を使い、蹄の小気味良い音を立てて空を駆ける。

カロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッ・・・・

まいはSピート&Dビートの首の有ったであろう場所の穴に手を突っ込みさらに上方へ軌道を変更する。
二階建てほどの高度まで駆け上がると大きくジャンプして踏み固めた空間を飛び降りた!!

「ハィイヨォオォォオォオオオッ!!!」

目標の革ジャケットに向かってSピート&Dビート+里田まい+木村絢香の質量が加速する!

   ズシャァアァァァアァアァァアァァァアァアアッ!!!!!!!!!
土煙が夜空に舞い
蹄鉄の烙印は街道に深く刻みこまれた・・・・
がそこに標的の痕跡が無い!

「ひゃあぁああぁ・・・」
手足をバタつかせて革ジャケットはその場から逃げ出す。

「・・・何で避けれたのか知らないが!逃がすか卑怯者!!!」
「oh!yes!!あんな腰抜けは許しちゃ置けないッ!」

カロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッ・・・・

「何なんだ?あの馬?もしかして・・俺の『スポルトマティク』みたいな特別な能力なのか?」

カロッカロッカロッカロッカロッカロッ・・・・

「くそぉ!蹄の音が近づいてくる・・・・こうなったら俺の十八番ッ!!」

菅沼の右横に銀色に煌く『スポルトマティク』が翻る。
                 シャキィイィィィインッ!!
鋏の開閉音が響くと身体は吸い込まれ様に右に移動する。
吸い込まれた先には細い路地!
「三十六計逃げるが勝ちだぜッッッ!!!」
脱兎の如き速度でその身を路地に滑らせる。

手を伸ばせば追いつく所まで追い詰めたはずだったSピート&Dビート。
だが革ジャケットの急な横移動に対応できず追い抜く形で逃してしまった。

「道が狭すぎるッッ!!!」
  ドグゥォオッ!!!
まいはスタンピート&ダウンビートの蹄鉄を路地の壁に叩きつける!
「人をいきなり襲ったり、逃げ失せようとする卑怯者がぁッ!」
「Be settiedown!また頭を打ち抜いて足を止めてやるから大丈夫!」

絢香の指は乾いた音を響かせた。

銀色の永遠  〜車と女E〜

 パチィィイイン

細い路地に音が響く。
絢香のスタンド『WOW×3』の能力が音を衝撃波に変える。
デジャグゥの様に衝撃波が革ジャケットに襲い掛かる。

ガイン!

「痛ェッ!」
衝撃波は菅沼には当たらなかった。
後ろからの追撃に備えてスポルトマティクを自分の背後にうろつかせていたのだ。
偶然だがそれに衝撃波に当たって直撃を防いだ形になった。
だが悲しいかな彼のスタンドには防御の概念が無く。スタンドに攻撃が加わればやはり痛いのであった・・

「ちきしょう・・・痛いじゃねぇかッ!」
絢香の方に振り向きスポルトマティクを構える。
「逃げるにしても・・・あの飛んでくる何かを使う姉ちゃんをどうにかしなきゃなぁ!」

路地に冬に風が抜ける。

「絢香。あいつこっちに向かって構えてるけど・・・・」
「Excellent!やる気が満ちてる感じね!だったら全力で行かないと!」
絢香は深く呼吸をすると爆竹の様に音を『造った』
音の弾丸が唸りを上げて路地に奔る!

「おぉおおぉおぉおおぉぉぉおおおぉおおぉぉぉぉおおおぉぉおッ!」

煌きが軌跡を残し銀の鋏は開閉を繰り返す。
スポルトマティクに『断ち切られた』衝撃波は次々と霧散する。
「へへ・・・こんな事に能力使ったのは初めてだけど・・俺ってやるじゃん!」
菅沼は鋏を閉じて頭上で旋回させる。
「おらぁ〜。顎の姉ちゃん!アクビが出るほど退屈だぞぉ〜!!」

・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・顎ッ?」
「あの馬鹿ッッ!!禁句をッッ!!」
絢香の額に血管が浮かぶ・・・
   ギャァアン!!!

「な・・なんかヤバイ雰囲気・・・・」
た・・確かに調子に乗っている場合じゃなさそうだな・・
そろそろ逃げたほうが・・良いな・・

「SHIT!・・・・調子に乗ってッ・・・だがそれも終わり・・・」
絢香のWOW×3は両手を前面に出して構えを取った。
WOW×3の掌からスピーカーが迫出てくる。
  スゥッ!
ソレをゆっくりと交差させる。
「絢香!熱くなるなッ!!」
まいの忠告も絢香は届かなかった・・・
「共鳴重低音衝撃刃<ハウリンガー>!!!!!!!!」
WOW×3の掌から出る重低音。この二つを共鳴させた所から異常な振動が発生する。
言うならば音の振動のノコギリだ!
振動は路地の壁を切り裂きながら標的に伸びる!
  ビィイィイイィィィィィイイイイィイイイイィイイ
削られた粉塵が飛散する。

「ク・・・くぉおぉぉぉおおッッッ!!!スライド・シザースッ!!」

共鳴重低音衝撃刃<ハウリンガー>とスポルトマティクが接触する。
摩擦音が響く。
ギィヤリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリ
不快音が鳴り止むを大量の粉塵が路地を埋め尽くした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・

粉塵が消え去った頃には革ジャケットの男の姿は無かった・・・
「闘わないで逃げ出すなんて・・・なんて卑怯な・・・」
絢香は苦々しく歯を噛み締めた・・


銀色の永遠  〜車と女F〜

―スポルトマティク―

「ひぃはッ!ひぃはッ!!」
何とか・・逃げ切れたか?
派手に粉塵を撒き散らしてくれたお陰で助かったぜ。

それにしても初めて同じ様な『能力』を持っているヤツに合ったなぁ
まさかイザコザになるとは・・・まぁ俺が悪いンだけど・・・
・・短気は損気だな・・

軽く自己嫌悪を抱えながら『オーソン』にチョコレートを買いに寄った。
高い栄養が手軽に取れるこの上なく便利な食べ物だ。

198円を支払って『米次BLACKチョコレート』を買う。
ミルクは甘すぎて駄目だ!

さてとこれから何処をネグラにするか。
考えながら店のドアを開けた。

ガッ!

足が何かに引っかかった?
俺は派手に転んだ。

冬のアスファルトの冷たさを味わう。
叩き着けられた部分の痛みが冷たさで倍加する・・・・

「いてぇーーーッ何すんだよッ!アァッ?!!」
ロン毛の男が喚き立てた。
「あぁ〜・・こりゃぁ折れてるなぁ・・どう責任とるんだぁ?」
「おい!どうすんだって聞いてるんだよォコラァ?」

・・・俺は数人のガラの・・いや頭の悪そうな小僧共に囲まれていた。

「おい?どう責任取るかって聞いてんだよ?」
ロン毛のガキが俺の襟首を掴んで引き上げた。
お前の足・・折れてんじゃなかったっけ?
「ほらぁ!答えてみろよォ」
後ろから蹴りを入れたヤツが居やがるッ!
「素直に誠意みせれば痛い目に遭わずに済むぜぇ。」

・・・・あぁ!そうかこいつ等は金が欲しいのか・・人から強奪しても・・・
稼いだ事も無いくせに・・・稼ぐ辛さも知らない小僧が

ふざけるじゃねェぞォォォォォォォオオオオオオオオオオッ!!!!

「スポルトマティクッ!」

シャキィン!シャキィイン!シャキィィィイン!
鋏の開閉音が響く。
ロン毛の鬱陶しい髪は一瞬で消え去りバッキリとした角刈りに変わっていた。いや変えた。
「これならバイトの面接にも1発で通るだろ?金が欲しかったら自分で稼げ!」
そういって短くなった頭をポンポンと叩いてやった。
俺って良いヤツだろ?

「テメェ!フザケやがってェェェエ!!!!」
俺の目の前で銀色の曲線が走る。
ナイフなんて出すなよ・・・周りを見回しても、バットだナイフだ警棒だ・・・
・・・・こいつら・・・・頭悪過ぎだろ?

「ほら!どうしたビビってんのか?おい!」
いや、お前らの頭の痛さに参ってるんだよ・・・・
しょうがねぇなぁ・・やるか・・・

「しゃお〜!」

パッ!パッ!パッ!

小僧どもの凶器が根元から消えてなくなる。
「な・・何だ?これ?」
「なんとすいちょうけん!」
小僧の質問に答えてやった!どうだ!解りやすく答えてやったぞ!
「なんと?・・何それ?」
「・・・・北斗の拳も知らない世代なのか?」
これがジェネレーションギャップってヤツか?
なんだか俺は馬鹿馬鹿しくなって踵を返した。
「待てよ!まだ終わってねぇゾ!」
叫び声が響く。
「・・・・お前等はすでに・・・この場合はなんて言うべきか?」

小僧達は自分の服が四散しているのに気付くと一目散に逃げ出した。
「・・・・俺は静かに過ごしたいだけなんだよ・・・頼むよ・・」

事も無事に収まったな・・・さてと今日はどこで・・・
「コラァーッ!」
え?なに?俺?怒られた?
声のする方を向く。
何だ?あのショートカットの女の子か?
一緒に居る黒い髪の女の子もすっごく睨んでる!
「見たぞ!お前、スタンドを使って悪い事していたな?そんな事はボクが許さない!」
・・・・・・・おい・・・・ちょっと・・・・・勘弁してくれよ・・・・


銀色の永遠  〜車と女G〜

12月21日 夜半

「すっかり遅くなってしまったの!」
「本当だね。今日は色々ありすぎたから」
ボクとさゆは帰路を急いだ。
ボク達、演劇部は25日のクリスマス公演に向けて大忙し・・のはずだった。
だけど今日、いきなり先輩2人が大怪我をして入院騒ぎになってしまって
準備がさらに忙しいものになって今日の分も今迄掛かってしまった・・・・
不謹慎だけどこうやってさゆと一緒に入れる時間が増えたのは嬉しいな。

冬の夜空はボク達のぬくもりを奪っていく。
「ねぇ。何か暖かい物でも食べていこうよ。」
そう言ってボクはさゆの冷たくなった手を取って『オーソン』に急いだ。


『オーソン』の明かりが夜の暗さを紛らわす。
ボクは嬉しくなって明かりに急いだ!

突然、ボクの手が後ろに引かれる。
さゆが足を止めたからだ。

「あれ?なにやっているの?」
さゆが指差した所を見ると『オーソン』の入り口から離れた所で
数人がなんだか言い合いをしている・・・
いやな所に遭遇してしまったなぁ〜。
こんなトラブルには巻き込まれたくない、ましてやさゆと一緒なのだから余計だ!

ボクは膨らんだ風船がしぼんだようながっかりした気分になっていた・・・・
が、すぐに状況の異常さに気付いた。

言い争いをしている中心の革のジャケットを着ている男の右手が銀色の光を放った。
     「スポルトマティクッ!」
そう叫んだと思うとその銀色の刃物の様なもので切りかかった。
周りの男達はソレが見えていない!
「絵里!アレは・・・」
ボクとさゆだけに見えた『銀色の巨大な鋏』・・・

しばらくして男達は逃げ去り革ジャケットの男だけが残った

さゆの手がボクの手を強く握ってきた。
・・・・その強さがさゆの恐怖を物語っていた。
そうなんだ・・さゆのお姉さんはある日突然居なくなってしまったんだ。
もしかしたら、もしかしたらだけどああやってスタンド能力を使って暴れている
そんな凶暴なやつに・・・

・・・ボクもあの革ジャケットの男に恐怖を感じていた。
昔、イギリスで大量殺人を犯した「切り裂きジャック」・・
それを連想させる・・・あいつの巨大な鋏・・・

ボクの呼吸が乱れる・・・
「 ヒャークマーミ ピートゥーパー」
ボクは御嶽に宿る神霊の加護を唱える
呼吸、呼吸を整えるんだ!
呼吸をみだすのは『恐怖』! だが『恐怖』を支配した時! 呼吸は規則正しく乱れない!
人間賛歌は『勇気』の賛歌! 人間の素晴らしさは勇気の素晴らしさ!

ボクは恐れを薙ぎ払って革ジャケットに怒鳴りつけた!
「コラァーッ!」
革ジャケットはビクついたようにこっちを向いた。
ボクは溢れ出んばかりの正義の心を言葉に込めた!

「見たぞ!お前、スタンドを使って悪い事していたな?そんな事はボクが許さない!」


銀色の永遠  〜車と女H〜

「おい・・君、なにか勘違いしてないか?」
革ジャケットはこの期に及んで言い訳をしようとしている・・・
「それに・・すたんど?何なんだ・・もしかしたら君も俺と同じ・・・」

「一緒にするなァッ!」
怒号が夜空に響く。
お前とボクが一緒?ふざけるな!!
「だから・・・俺の話も聞いてくれるか・・・?」

「オマエの悪事はマルっとお見通しだッ!」

   バァアァアアアァンッッ!!!!!

「悪事て・・・」
ボクは革ジャケットににじり寄った。
「オマエがさゆのお姉さんや鈴美さん!舞波ちゃんを手にかけた犯人だろう!」
「絵里?そうなの?」
「あぁ!コイツのスタンドを見てピンと来た!スタンドは無意識の才能さ!
 そのスタンドがあんな禍々しい形をしているんだ!コイツが杜王町の連続殺人鬼だ!」
「ちょっと待てよ・・・俺は・・・」
「こいつ・・・におうの!ゲロ以下のにおいがプンプンするの!」
「ああ!ボクもこんな悪党に出会ったことがない!こいつは生まれ付いての悪党だッ」
ボクとさゆの気持ちは同調した。

「お前達・・・・いいかげんにしろよ?」
革ジャケットから出る空気が変わった!
これがコイツの・・・殺人鬼の本性だッ!!!

ドドドドドドドド ドドドド ドドドド

「シャボンイールッ!」
  ドギュンッ!
さゆのシャボン玉が戦いの口火を切った。
空間をシャボン玉が走る
「な・・・なんだ?コレ?これがお前の能力なのか?」
革ジャケットは怪訝な表情をしている。
何なんだ?この緊張感の無さは?

「スポルトマティク!」
そう叫ぶと革ジャケットの右前方に鋏が踊る
  シャキィイィイン!!
・・・何だ?アイツ!今・・何を切ったんだ?

 スィーーーーーー・・・
さゆのシャボン玉が右に反れる。
  
   ボグォォオン!
吸い込まれるような勢いで壁に激突してシャボン玉が爆裂する。

「・・・・おい・・コレ・・シャレになってないぞ・・・
 さっきの馬と顎の姉ちゃんもそうだけどな・・・」
ざわ・・・
    ざわ・・・・
         ざわ・・・・
「いいかげんにしろよぉおぉぉぉおおおおおおおおお!!!!」

この雰囲気!この威圧感!!ボクの読みは間違いないコイツは・・・・・

「行けェ!サイレント・エリザベス!!」
    ビュン!
「フン!遅い!チョップ・シザーズ!」
またもヤツのスタンドが虚空にハサミを入れる
サイレント・エリザベスはハサミを入れた場所に引き込まれ攻撃は空振りする。
やっぱりそうだ革ジャケットのスタンド能力は空間を切り取る事が出来るんだ!
「なかなか凄い能力だね!殺人鬼さん!だけどね。」

    ドッゴオオオオォオオン!!!

革ジャケットは爆風を帯びて吹っ飛ぶ!
「わたしもいる事を忘れてもらっては困るの!」

―スポルトマティク―

い・・・痛ぇ・・・なんだ?何が・・起きた?
あのガキの能力を空間を切り取って引き寄せた・・
そしたらあのガキは大きく飛び退いたと思ったら・・爆裂するシャボン玉を喰らっちまった・・のか・・
俺は痛みを堪えて立ち上がろうとするが、痛みでぎこちない。

一歩間違えば同士討ちに為りかねない事を・・
「何なんだ・・・?お前等のその息のあったコンビネーションは・・」
「オマエの様な卑劣な人間には到底解らないだろうボク達の『絆』の力さ!」
言うねぇ・・・ボクよ・・・・

まぁ確かに逃げてばかりの俺にはな・・・人を信じるってのは出来ないなぁ・・
「フフフフ・・・アッハッハッッッッ!」
笑いが込み上げて来た。
「面白いモノを見せて貰った!だから俺も取っておきを見せてあげよう!」
そう・・・取って置きをな・・・


銀色の永遠  〜車と女I〜

「ふざけるなよ!人の『心』が!『絆』がそんなに可笑しいのか!」
ボクは革ジャケットの人を嘲笑した態度が許せなかった。
こんなヤツが生きているから人はいつまでも幸せにならないんだッ!!

「だからそんなに熱くなるなよ!コレを使うのは2回目!人間相手には初めての取って置きだ!」

革ジャケットのスタンドが本体に纏わり付く様に旋回し始めた!
シャキィイン!シャキィイン!シャキィイン!シャキィイン!シャキィイン!シャキィイン!
「なんなの?絵里?」
「ボクにだって・・・解らない。」
・・・こんなオゾましい光景・・・理解できないよ・・

「これはお前達への・・・敬意だ・・・ぜ」





「き・・・・消えた?」

「い・・いないのッ!」

み・・・見失う・・訳が無い。目の前にいたアイツが突然消えた!!

「獣  を 超   え 」

アイツの声が途切れ途切れに響く

「人   を   超え る  」

何を言っているんだ・・・アイツの能力は何かを切断するだけのはず

「神      速    の 流   法   」

何かを切り取って『姿を見えないように』しているんだッ!何をッッ?

「断      空  の     流      法    そ  う    名  付け    てい  る!」

も・・もしかして・・・アイツが切り取っていたものは・・・

シャキィィィィィィィイイイインッッ!!!!!

突然、ボクの目の前に銀色の物体が横切ったッ!

それが12月21日の最後の記憶になった・・・・

―スポルトマティク―

シャキィィィィィィィイイイインッッ!!!!!

俺の『スポルトマティク』は二人の目の前の『酸素』を僅かに断ち切って消した。
ちょっと間、寝てろよ・・・

しかし、人間相手に『断空の流法』を使うとは・・考えもしなかったぜ。
昔、山で野犬の群れに囲まれた以来・・・・あッ!モルディブで蚊の大群に襲われた時にも使ったな!
じゃ3回目か!こりゃうっかりしてた・・・今日は呑みすぎだな・・・



しかし最近の女子学生はいい肉付きをしているな・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・
・・・
・・


「後学の為に拝ませて貰うか・・・」
敗者には選択権はないのだ・・・すまない・・・なんて非情な世界だ・・・
俺は黒い髪の方のスカートをスポルトマティクで軽く啄ばんでめくり上げた・・・

「なにしてりんこ?」
後ろから声を掛けられて俺の身体は軽く跳ね上がった!
恐る恐る振り返ると・・・
長い黒髪をした何だか変な格好した女が立っていた。
何をしているも・・スカートをめくっています!
とは言えない・・・これはヤバイ・・展開だ・・

「そのハサミ・・・で・・・もしかして!」
・・・こ・・・コイツも俺のスポルトマティクが見えるのか!なんて街だ!杜王町!!
「へ・・・変態!キャーーーーーーッ変態ィィイイイイ!!!」
・・・・さ・・・叫ぶなよ・・・
遠くから・・・警官の・・見回りが!!
俺が絡まれているときは誰も来なかったのに!
警察に捕まるのは・・・身元が割れるのは困る!

俺は全速力でその場を後にした・・・・
・・・・・
・・・
・・

「はぁハァ!ここまで逃げれば大丈夫だろう・・・とりあえず・・あそこの公園で休むか。」
ベンチにドッカリと腰をつけて一息入れる。
「色々・・有ったが・・今日も・・星がキレイだなぁ・・」
そう言いながら周りがとろけたチョコを齧った。

シャキーン・・・シャキーン・・・・・・・・

「何だ?」
何か金属が擦れる音が・・聞こえてきたぞ?

シャキーン・・・シャキーン・・・シャキーン・・・・・・・

「な・・・何なんだッ!」
ちょッ!どんどん近づいてくるじゃねえか!

シャキーン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「何なんだッ!お前等ーーーーーーーーッッ!!!!!!」



亀井絵里 寒さにやられ風邪を引き入院
スタンド名:サイレント・エリザベス(サイレント・エリーゼACT3)

道重さゆみ 寒さにやられ風邪を引き入院
スタンド名:シャボン・イール

菅沼英秋 ハサミ女と交戦中
スタンド名:スポルトマティク


TO BE CONTINUED…