銀色の永遠 〜紫陽花の追憶@〜

杜王町 ぶどうヶ丘総合病院 533号室 深夜

岡田唯は寝付けなかった。

憤りを感じていた。

自らの「能力」は強すぎるモノ。だとばかり思っていた。

だが、負けた。

相棒の三好絵里香も重傷を負った。

何故、負けたのか?その事ばかり考えている。

    「有り得へん。」

何度考えても、この答えにしか行き着かない。

唯は唇を噛み締め、思い返した。

初めての「能力」と使った時の事を・・・


銀色の永遠 〜紫陽花の追憶A〜

時間は数ヶ月前に遡る。

岡田唯は演劇部に入部しようしていた。

唯は子供の頃から悩みがあった。
本人の意思とは無関係に成長する身体。
中学に入ると「それ」はさらに顕著になった。
本来なら「それ」は誇るべきものなのだろうが
彼女はその事に萎縮するようになってしまった。

唯はよくモテた。
何人も付き合いはしたが。
「肉付きのいい身体」目当てばかりだったのだ。

外面でしか見られない。自分を知ってもらえない悲しさを知るだけだった。
どうやったら、自分というものを知ってもらえるのだろうか?
どうやったら、自分を・・・・

とにかく自分を変えたかった。
演劇など人前に出る様な事は出来るのだろうか?
不安は有った、だがやるしかないのだ。
今までの自分を変えるためには。


銀色の永遠 〜紫陽花の追憶B〜

唯は意を決して部室のドアを開けた、が入部の手続きはあっさりと済んだ。
たかだか高校の部活で審査をしなければならないのは驚いた。
一次、二次と審査があるようで唯は別室に呼ばれた。
「よろしく、お願いします。」
唯は緊張しながらそう言い。部屋に入った。
「おぉ。お前が・・・・岡田・・・唯か?」
自分と同じ関西の言葉を話す教師だった。
二、三、質疑があった。コレとない話で極普通であった、が
そこから先は異常極まりないモノだった。
「コレ?なんやわかるかぁ?」
唯は
「弓・・・・?ですよねぇ?舞台の道具?ですか?」
「道具?・・・というよりは・・・試験器具やなぁ?」
と教師はそういった途端、
弓で刺してきた。
     ドゴォオォオォッッツ!
唯の肉厚の胸を貫通し肺、心臓に届くほど深く貫かれた。

最初は痛みを感じなかったので手品か何かと思ったが、
痛みが出てくるとソレが現実だという実感が湧いて出て来た。

      ズゴォオォッツ!!

教師は唯の胸から弓を引き抜くと、出血はしたが傷は無くなっていた。
「ほぉ?なかなかええやん!一次は合格。明日、二次、ウケに来い」
そう教師は言った。
唯は悪い夢を見ているようだった。


銀色の永遠 〜紫陽花の追憶C〜

二次審査・・・・唯は昨日の体験で受ける気などなしなかった。

何度もこのままやめてしまおう。と思ってはいるのだが
身体が、何故か部室に向かっている。
心ではもう係わり合うのはもう懲りているハズなのに・・・

こんな時なのに、歩みが力強いのは、何故だろう。

部室に入ると一人の上級生が居るだけでほかには誰も居なかった。

「あぁ?いらっしゃい。一次の合格者ね?」
釣り目の細い女だった。
同じ関西の言葉だったので、唯は親近感を覚えた。

それに唯は落ち着きを取り戻し、昨日の出来事全ては何かの間違いだった。
ここは至極普通の所なのだ・・・・・そう思えた。

「あの、二次審査をどういった事をやるのでしょうか?」
唯は自らの思い違いを恥、もっと積極的にならねばと思い発言した。

「あ?聞いてない?こういう事をして欲しいんやけど・・・・」
         ギュウュンッ!!
釣り目の上級生の背後に人影が灯った。

「ひぃッ!」
唯はその現象、その姿、悲鳴上げた。
子供の頃、怪談に出て来た「落ち武者」そのモノの姿に。


銀色の永遠 〜紫陽花の追憶D〜

「これは『スタンド』ってゆーてね」
「『弓と矢』の試験を受けていてば出来るはずなんやけど?」
女の言葉に

唯は反応ができなかった。

何が起きているのか?昨日の出来事が現実だったのか?
白昼夢のなかを彷徨い歩いている様だった。

「いきなりやってみせろー言われても、無理かー・・・」

「じゃぁ・・・ちょお堪忍ねぇ。」

     スッ
「ッッツ!」
唯は腕を斬り付けられた。
そして「スタンド」は返す刃で唯の咽喉元に冷たい白刃を押し付けた。

「解るよねぇ?スタンドで攻撃されたら怪我をするの?」
「で今、岡田さん?貴女は殺されかけているのッ。解る?」
「『スタンド』を出さないと貴女、死んじゃうよ?」

その言葉に唯は嘘などなく咽喉元の冷たさが動けば死ぬことを悟った
「死、死、死、死、死、死、死、死、死・・・」

「嫌だ・・・」
「嫌だ・・・嫌だ・・・」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だァアアァアァッ!」


銀色の永遠 〜紫陽花の追憶E〜

     ドギュュユュンンッッ!

「それ」は唯の右手に現れた。
右手の甲に花のつぼみの様な物があり、蔦が右腕を覆った。

「おおぉ〜ッ!出た出た!やっぱり「死を乗り越えさせる」っーのが一等、効果的やねぇ。」
「しっかし、ちんまいねぇ?ソレ。あ〜、そのタイプだと能力は判別しずらいなぁ」
「能力の解明はまた後日で。もう今日は帰ってええよ。」

「・・・・・・・・・・・嫌・・・」

「ん?」

「・・・嫌ぁッ!」
プシュ!
「!痛ッ!ちょ!なにすんねんッ!!」
「嫌ぁ!嫌ぁ!嫌ぁ!嫌ぁ!嫌ぁ!嫌ぁ!嫌ぁ!嫌ァッ!!」
プシュ! プシュ! プシュ! プシュ! プシュ! プシュ! プシュ! プシュ!
唯の感情に合わせ右手のつぼみから射出される種子が女を襲う!
「痛ッ痛ッ痛ッ痛ッ痛ッ痛ッ痛ッ痛ッ!!!」
耐えられない程の痛みではないがこう喰らい続けては身が持たない。
取り合えずこの場は気絶でもさせて収めようとスタンド「ムラサキシキブ」を出した
その瞬間、異常に気付いた。
「あ・・・・・・?」
ムラサキシキブが欠けていた。どう表現したらいいのか?侵食されている?
「もしかして貴女のスタンド能力は・・・?」
スタンドを喰う?そんな・・・スタンドを喰われたらどうなるの?

「嫌だ・・・・来るな・・・来るなァアァアアァアアァッ!!!!!」

唯が気が付いた時には数人の演劇部員に連れられて部室から出された後だった。

審査をした女生徒はその後見かけては居ない。


銀色の永遠 〜紫陽花の追憶F〜


杜王町 ぶどうヶ丘総合病院 533号室 深夜

・・・・あの時と状況は同じだったはず。

近距離ならば無尽蔵に相手の精神力を喰らい尽くすハズの自らの「能力」。

だからこそ、力を押さえて使わなければならない・・・そう、ずっと思っていたのに。


アイツのスタンドは「何故」喰らい尽くせなかったのか?


「・・・松浦・・・亜弥・・・ッ!」

その名を呟くと岡田唯は目を瞑った。

自らの再起を信じ・・






   ?    死亡?

スタンド名 ムラサキシキブ

TO BE CONTINUED…