銀色の永遠   〜ミッドナイト・スピード・スター!!@〜


「ちょっと!れいな!」
田中れいなは久しぶりに他人から声を掛けられた。
振り向いてみると、それは上級生の安部なつみだったのでちょっとがっかりした。
「安部さん?何と?」
余り変な用事だったら断る心算で返事をしたが・・・
「今夜ね〜、バイクに乗るの!良かったら一緒に走らない?」
安部の言葉に
「バイクですかッッ!!!行きます!あ〜でも、れいな、バイク持ってないっちゃ・・」
れいながしょんぼり答えると安部は
「大丈夫だって!なっちのに乗ればっ!ネッ!いいでしょ?」
・・・二ケツかー。
「はい!じゃあそれでお願いします。」
じゃあ決まったね。と言い残し安部はニコニコしながら言ってしまった。
「人は見かけによらんね〜」
あの人が暴走とは意外だな。
と思いつつも久々の暴走行為に心をときめかす
れいなであった。

深夜 S市郊外

「・・・安部さん・・コレ・・・」
顔を引き攣らすれいなの問いに
「どう?なかなか、かわいいでしょ?」
安部は満面の笑みだ。
「なんすか〜このごく普通のスクーター、こんなんじゃ暴走れないっちゃッ!!」
「何言ってんの!これは「ジョルカブ」って言ってね〜安倍さんが廃車工場から貰って来て
丹念に、丹念に修理して乗れるようにしたんだよ。そこいらのと一緒にされたら困るべさッ!」
安倍のあまりの激高ぶりにビビッたれいなは
「じゃあなんでれいな、呼んだんですかぁ?折角、特攻服まで着てきたのに・・」
れいなは赤い特攻服の裾をヒラつかせて安倍に問うた。
「ふふん。それはね・・・」
安倍は笑顔で答えた、が目は笑っていなかった

銀色の永遠  〜ミッドナイト・スピード・スター!!A〜

風になる。気まぐれにピョンと飛び出したら大怪我をするだろう。
そのスリルが堪らない。やはりバイクはいいなと、田中れいなは思った。

安倍さんが言うにはバイク型のスタンド使いがこの辺で暴れているらしい。
どこかで聞いた話やったがどこやったかわからんちゃ・・。
きっと似たような奴がいるのだろう。
その暴れている奴を追い払うとか安倍さんは言っちょるがそんな薄っぺらい
正義感で動いているようには見えん。
もっと、スタンド本体への恨み、というか女の情念を感じるッちゃッ!

峠を随分と巡回した。静かすぎる。
「ん〜。やっぱり何か有るわね〜。」
安倍が愛車を止めて田中に話しかける。
「そうやね。いくらなんでもこれはおかしいですよ。」
れいなが言うように後ろにも付かれていないし、対向車にも会っていない。
車が全く通っていないのだ。
「これだけ、いい峠だったらもっと攻めるヤツがおってもイイはずやけど・・」
「そういう奴から蹴散らして行く様な奴。・・・・なんじゃない?」
「?なんか。随分、本体の事を知っているような感じやけど?」
「んぉ〜ッ!いいじゃないッそんな事ッツ!はやく探しに行くよ!」

安倍がアクセルを吹かして愛車を出そうとした矢先、一台のトラックが横切った。
「・・・安倍さん、れいなの気のせいかも解らん。」
「・・・嫌、気のせいだよ・・・」
「先刻のトラック。人が乗って居なかった・・・?」
「・・・・・・・」

銀色の永遠  〜ミッドナイト・スピード・スター!!B〜

「・・・帰ろっか?」
「そうするっちゃ。」
『関わりたくないな。』
という同じ意見に達した二人は
バイクの向きを換え来た道を戻った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・プァン・・・・・・

杜王町 ぶどうヶ丘高校
「ねぇねぇ、聞いた?幽霊トラックの話?」」
藤本美貴が嬉しそうに話す。
「幽霊トラック?なにソレ?」
松浦亜弥が聞き返す。
「亜弥ちゃん、知らないの?ほら最近、話題じゃん!」
「子供の列に突っ込んできた乗用車を跳ね飛ばして止めたり」
「市内で大騒ぎしているナントカ族を蹴散らしたりしてるんだ。」
と美貴が言った。
「でねでね。現れたらすぐに消える。これミステリーだよね〜。」
美貴の言葉に
「へぇ〜。そんな話があるんだ?」
と亜弥は特に感情を込めず答えた。
「なんなんだよ〜。こんな面白れー話だってのにッ!」
亜弥の態度に美貴はふくれて続ける。
「それでね。いま山の峠道にも幽霊ライダーとか言って暴れ廻ってンのがいて。」
「その幽霊ライダーと幽霊トラックがいつか激突するんじゃないかって持ちきりなんだよ?」
美貴は嬉しそうにはしゃぎ回った。
「その幽霊ライダーって?」
亜弥の言葉に美貴は
「おッ!乗ってきたじゃん。亜弥たん。」
「幽霊ライダーっのは自分が一番だー。みたいな感じで走り屋をケシかけて」
「何十台も事故らせてるっつー、とんでもない奴でさ。」
「腹立てた走り屋が、ぶつけて転倒させたら、すぐに起き上がって走りはじめたって。」
「それであれは幽霊だー。みたいな事になってんの。」
と捲くし立てた。
「ふーん。そんな奴が居るんだ・・・。事故らせるなんて、悪い奴だね。」
亜弥はそういって右手の親指を軽く噛んだ


銀色の永遠  〜ミッドナイト・スピード・スター!!C〜

峠を下る風が心地いい。
何も収穫は無かったが田中れいなはそれだけで満足だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・プァン・・・・・

「安倍さん、先刻のは何だったんやろねぇ?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・プァン・・・・

「やっぱり、おばけだったんじゃ・・・・」

・・・・・・・・・・プァン・・・・・

プァン

「!!!ッ!!!」

殆ど照明が無いはずの山道が照らされる!

「・・・安倍さん、後ろ・・・やけに明るかね?」
れいなの声はうわずっていた。
「れいな・・・早く帰ろうか?」
なつみはれいなの問いに答えるようにアクセルを捻る。

なつみの「ジョルカブ」はCDIやBIGキャブ、ハイカム、マフラーは
勿論の事、エンジンをMD90に乗せ変えてなお且つボアアップした
原付一種ではなく、普通二輪小型なのだ。
下り坂であれば尚の事、スピードが乗る。
件の光源を瞬く間に置き去りにする。


銀色の永遠  〜ミッドナイト・スピード・スター!!D〜

「んもぉ〜。れいながあんな事いうから来たんじゃないのッ?」
恐怖を裏返すようになつみがれいなに当たる。
「れいなだってそんなつまりじゃなか・・・・」

プォン

「!!!ッ!!!」

「そんな・・・ミラーには何も・・・」
なつみがミラーを見ると
「写ってる?・・・ウソさっきまで何も無かったのに?」
トラックが写ってた。運転席にはやはり誰も居ない。
         プォン
「?・・安部さん。この感じ。何か解った気がすると・・」
      コォオォオォオォオオオォオ
れいなは「波紋」の呼吸を整え、シートの上に立ち上がった。
赤い特攻服がはためく。
「ちょッ!れいなッ何やってんのよッ!!」
なつみはいきなり曲乗りを始めようとしている後輩を咎めた。
「れいなは「くっつく波紋」・・・いや「能力」を使うから大丈夫たい。」
キャリアに足を掛け、れいなは
「バランスが後ろにいくけん。踏ん張っててくださいねッ」
と言い後ろに居る「幽霊トラック」に手を伸ばす。
「デュエル・エレジーズ!」
     ギュンッ!
D・エレジーズの手でそろそろと「幽霊トラック」に接触してみる。
「!!」
予感が確信に変わった!
「安倍さんッ!こいつスタンドたいッッ!!」

銀色の永遠  〜ミッドナイト・スピード・スター!!E〜

「スタンドって・・・・・」
と言いかけたなつみの身体が前のめりになる。
「れいなッ!あんたッ!!」
「れいなは悪くなか!こいつが押してきよぉ!」
スタンドトラックに押される度になつみのジョルカブが前後に激しく揺れる。

「くッ!このままだと転倒するッ!」
「安倍さんッ!れいなにおまかせたいッ!」
   コオォオオォオオォオオォ
「刻むぜッ!波紋のビートッ!!」
「橙色の波紋疾走ッ(サンライトオレンジ・オーバードライブ)!!!」
     ドグゥォオオォオオン
「?おぁッ!!」
れいなの波紋攻撃がトラックに当たったと同時にジョルカブのバランスが崩れる。
「だからもぉ〜ッ!走行中なんだから前から叩けば「反動」ってものが生まれるでしょうッもぉ〜バカッ!」
緊迫した走行状況でなつみは大分キレ気味だった。
「バカッて酷いですよ!じゃ〜後ろから叩くとッ!」
あまりにあっけらかんとしたれいなの口ぶりだった
「後ろって。二車線ほとんど使ってるようなトラック相手にどうやって周るのさ?」
「どいてもらうと!」
「はぁ?」
「車間を取って雑木林の方によって貰えます?」
なつみは速度を上げ右に寄った。
「合図したらフルブレーキングしてくださいね。」
なつみは不安を感じていたが従うことにした。
「行きますよ〜。」
れいなは全身に闘志を漲らせる。
    コオォォォォォォォオオオ
「燃え尽きるほどヒートッ!!」
「橙色の波紋疾走&デュエル・エレジーズッッッ!!!!」
   ドッゴォオオォオンッッ!
れいなは雑木林に向かってズームパンチとデュエル・エレジーズ
を打ち込むッ!
    ズゴォオォオオム!!
一テンポ間を置いたあと、波紋効果で仰け反った雑木林が反動でトラックを
襲う。デュエル・エレジーズの効果付きで!
   ドゴォスッッッ!!!
トラックは衝撃で左に逸れる。
「今たいッ!」
れいなの合図でなつみは急制動する。
トラックは左を泳ぎ、吸い込まれるようにジョルカブはトラックの背後に付いた。


銀色の永遠  〜ミッドナイト・スピード・スター!!F〜

「れいなッ!エライッ!!良くやったッ!!!」
「もっと褒めてくださいッ!」
安倍なつみはバイクの速度を上げ。トラックの後ろにピッタリ付ける。
「よぉ〜し。久しぶりに暴れちゃうカナ?」
「チェインギャングッ!」
    ドァアアァッ!
なつみの頭上にピンクと白の人影が浮かぶッ!
「これが安倍さんのスタンドですかぁ〜。」
始めて見る先輩のスタンドを見上げて言う。

「特別なのお見舞いしちゃうぞ〜ッ!!」

「ちゅららららぁあらららああぁぁらッッッ!!!!!」
  ダガガッガッガガッガガッガガッガガッッッ!!!
なつみのチェインギャングの連撃がトラック後部に降り注ぐ。
トラック後部は薄氷を割るように「亀裂」が入る。
「!ッ安倍さんッこれはなんやと?」
「物体を叩いて亀裂を入れる能力!スタンドだってバラバラになるんだから!」
なつみはケラケラと笑ってみせた。
「じゃ〜。もう一丁。いっちゃおうか?」
チェインギャングに力を込める。
「ちゅららっららっらら〜?」
チェインギャングの拳が空を切る。
攻撃に耐えかねたのか?トラックが速度を上げて逃げたのだ。
「このぉ!待ちなさいよぉーッ!」
気分の高揚を害されたなつみはアクセルを捻る。
「ちょ?安倍さん?駄目ですよ!」
後輩の意見はなつみには届かず速度は上がる。

銀色の永遠  〜ミッドナイト・スピード・スター!!G〜

トラックは左右に小刻みに揺れると、いきなり減速し右側に傾いた。
速度を上げていたジョルカブは先程の苦労空しくトラックを追い抜いてしまう。
トラックを抜けたその先には、
   急カーブが待っていた。
「drftgyふじこッッ!!!」
「だからいったっちゃッ!!安倍さんッ!」
ジョルカブのスピードメーターは90km/hを指していた。
迫るヘアピンカーブ。
「こうなったら曲がる。絶対曲がるッッ!いくべさッッ!」
「バリバリ伝説たいッッッ!!!!!」
     ギァリギャリギャリギァリギァリッッ!!
限界まで車体を傾け、タイヤを焦がす。
「おぉぉぉおぉおおぉおぉぉぉおおおぉおおおッ!!」
なつみの雄叫びを裏切るように後輪が滑り出す。
「れいなの出番たいッ!」
れいなはアスファルトにその身を投げ出した。
   コォオオォオオォオオオオォオオオ
「つま先でシートにくっつく波紋ッッッ!そして!」
身体を思いっきり伸ばしガードレールに指を伸ばす。
「指先でガードレールにくっつく波紋ッッッ!!」
くっついた場所を支点にふりこの軌跡を描きジョルカブはコースを変える。
「そしてはじく波紋ッ!」
はじけた勢いでバイクは立ち上がり事も無くヘヤピンを抜けた。


銀色の永遠  〜ミッドナイト・スピード・スター!!H〜

「はぁ〜。あんたと一緒でよかった〜。」
「じゃあもっと仲良くしょうと。」
「帰りにごはんでも食べ行こうか?」
「肉がよかッ!」
「じゃあその前に?」
なつみはバイクの速度を上げ後方のトラックとの距離を測る。
「れいな、先刻のヤツで『仕掛ける』よッ!」
「はいなッ!」
雑木林の側にバイクを寄せる。
「よーし。いいタイミングっちゃッ」
     コオォオオォオオォオオォ
「刻むぜッ!波紋のビートッオ!!」
「橙色の波紋疾走ッ&D・エレジーズッッッ!!!」
ドグォオオォオオオォオオンンンッッッ!!
雑木林がD・エレジーズの能力で硬化し、波紋の力で仰け反り反動を付ける。
トラックに当たる瞬間、トラックは急制動しソレを避けた。
「!」
その『読み』を見逃さずバイクをスピンターンさせ、
急制動し動きが鈍化したトラックに迫る。
ジョルカブは間隙を縫いトラックの側面を突く
「チェインギャングッッツ!」
「ちゅゆららららっらぁぁあああッッ!!!」
ドガガッガガガッガガッガガッガガガッ!
亀裂は稲妻の様に縦横に走る!
   コオオォオオオオオォオオオオオ!!!
「轟けッ!生命のビートッ!橙色の波紋疾走ッツ(サンライトオレンジ・オーバードライブ)!!!」