768 :915:2005/12/29(木) 21:54:30.65 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたい@〜
「また何か指令ですか?」
僕は少々うんざりした表情で吉澤さんから
差し出された紙を受け取りながら言った。
そう、それは年の暮れが迫った日の事だった。
クリスマス公演やらその前後のバタバタが一段落して、
さぁ冬休み、お正月だと思っていたところを
吉澤さんに呼び出されたのだった。
「違うって、まぁ読めよ」
吉澤さんは笑いながら言った。
「演芸・・・コンクール?」
渡された紙の見出しを僕は読み上げた。
「S市が市の主催で毎年文化ホールでコンクールをやっていてね。」
「はぁ・・・」
「俗に言う文化事業ってヤツなんだろうけど
賞金も出るしそれなりの大会なんだよ。
ただ一組10分って、演劇部として出場するには時間が短すぎてね。
だから腕試しって事で毎年新入部員を中心に任意で参加させてるのさ」
「それに・・・僕がですか?」
「あぁ、もし興味があるなら参加してみたら良い。
他の部員の誰を参加させるかや
どの作品を演じるかも含めて亀井主導でやってみなよ。
台本は部にいくらでもストックがあるからさ」
クリスマス公演を入院でフイにした僕には願ってもない話だった。
「はい!」
769 :915:2005/12/29(木) 21:55:19.34 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいA〜
そんなわけで、僕、亀井絵里はさゆとれいなを誘ってそのコンクールに参加する事にした。
正月はそれぞれ台本を読んで予習しておくこと、
三学期が始まったら稽古しようって事になっていた。
年が明けて、今日はコンクールの参加受け付けと説明会がある。
なので代表者の僕は学校が終わってからこうして
S市に向かう電車に乗っている。
まあS市に住んでいる僕には一石二鳥だ。
実は今日は大事なミーティングがあって
部員は全員出席を義務づけられている。その理由の一つは実は僕にある。
昨日、藤本さんに襲われた。
正確に言うと、藤本さんのスタンドに襲われたんだ。
僕は運良くとっさに避ける事が出来たんだけど
紺野さんと高橋さんは怪我もしたらしい。
とは言っても近距離型なのに本人が物陰から出てこないので
間を取った僕に近寄る事も出来ず、結局そのまま逃走されてしまった。
まぁそれだけでも犯人が藤本さんじゃないってのはわかるけどね。
何かトリックがあるんだろうなあ・・・・
とにかく説明会もあるし、吉澤さん曰く
無傷で済んだ僕はミーティングにいない方が都合が良い、らしいので
一人だけこうして抜けさせてもらっている。
吉澤さんにきっと何か考えがあるんだろう・・・・・。
S駅で降りた僕はいつも自分が通学に使っているのと違う、
文化ホール行きのバスに乗った。
770 :915:2005/12/29(木) 21:56:05.28 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいB〜
バスの中で座って、コンクールの参加用紙を読んでいると
目の前に立っているヨソの高校らしき制服を着た女の子に声をかけられた。
「あれ?アナタもコンクールに参加するの?」
「えぇ、学校の部活動の一環で演劇をするんです。アナタもですか?」
「演劇かぁ。私はマジックで参加しようと思ってね」
「マジック?へぇ〜、いろんな人が参加するんですね」
「なんだ、アナタ、コンクールの事あまり知らないの?」
「えぇ、クラブの部長から腕試しに参加してこいよって言われて。
他にどんな人がどれくらい参加してるのかよく知らないんですよ」
「そうなんだ。結構大きなコンクールだよ。
私みたいなマジック以外にも漫才とか楽器演奏とか色々いるし」
「うわ〜、そうなんだ。僕たちなんか参加して大丈夫かな・・・・」
796 :915:2005/12/30(金) 22:26:31.67 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいC〜
「オープン参加なんだからそれは大丈夫よ。
あ、私、栄米大付属二年の嘉陽愛子。よろしく」
「僕、ぶどうヶ丘一年の亀井絵里です」
なんか感じが良さそうな人だな。
「へぇ、ぶどうヶ丘なんだ〜
私、ぶどうヶ丘って受験で落ちてるからうらやましいな」
「でも僕の先輩で栄米大落ちた人もいますよ。
ここらへんの学校って基準がよくわかりませんね」
そんな他愛のない会話をしていると嘉陽さんのケータイが震えた。
「あ、ごめん」
と言いながらケータイのメールを確認していた
嘉陽さんの顔色が一瞬変わったのを僕は気づかなかった。
「ねえ、さっき部活動の一環って言ってたけどさ」
メールを読んでいた嘉陽さんに突然話を振られた。
「はい?」
「部活動って何してるの?演劇部?」
「はい、うちの演劇部は歌ったり踊ったりもするんですけどね」
「へぇ〜、演劇部って人数多いの?」
「そうですね、結構幽霊部員とかマジメに参加しない人多いんで
全部で何人いるかわからないけれど30人くらいはいますよ。
今回は今のところ3人か4人で参加の予定ですけど」
「ふ〜ん、多いんだねえ・・・・」
それだけ言うと嘉陽さんはまたケータイに向かった。
何かさっきのメールに返事しているようだ。
797 :915:2005/12/30(金) 22:27:04.06 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいD〜
嘉陽さんがメールを送信してすぐに文化ホールに到着。
僕たちを含めて何人かがバスから降りた。
建物を見ると「演芸コンクール受付」の案内看板が見える。
僕はバスから降りた流れに沿って、
その看板の示す方向に向かおうとしたそのときに嘉陽さんに呼び止められた。
「ちょっと待って」
「はい?」
「ちょっとこっち、つきあって欲しいんだけど。
まだ時間あるでしょ?」
「はぁ・・・・・」
何だろう?
そう思いながらも嘉陽さんについて、文化ホールの裏側に回った。
「どうしたんです?こんなところで・・・」
「ちょっと待ってね」
そう言って、嘉陽さんはケータイに電話をかけた。
「もしもし、嘉陽です。
・・・・はい。今裏手に来ました。
・・・・はい、二人です。
・・・・・はい、・・・・はい、
相手を無重力にする能力・・・・、蹴られたらアウト・・・・。
わかりました。ありがとうございます」
の、のうりょく????????
そ、それって・・・・僕の・・・・・!!!!!
798 :915:2005/12/30(金) 22:28:22.75 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいE〜
「か、嘉陽さん!!!!!」
「亀井さん、聞いたとおり私もスタンド使い。
アナタとこれから闘わなきゃいけないの」
「何でですか!初対面のアナタに恨まれる覚えなんか!!」
「恨みとかそんなんじゃないのよね。
アナタがぶどうヶ丘の演劇部だから仕方ないのよ」
「ど、どういう事ですか?」
「いやね、さっき学校の先輩からメールが来てさ、
うちの学校とアナタのところのクラブが闘う事になったんだって。
その演劇部の人とちょうど今一緒ですってメールしたら
とりあえず倒せって返事が来ちゃったのよ・・・・」
ガーン!!!!!!
「そんなむちゃくちゃな!!!」
「んなこと言わないでよ。私だって先輩には逆らえないし」
「だからってなんでうちと・・・・!」
「アナタのところの演劇部がスタンド使い集めてるから
敵対関係とか出てくるんでしょ、たぶん」
うぐっ、たしかに・・・・
僕は普通に演劇部で部活動したいだけなのに・・・
「あ、あの〜、僕負けた事にしても良いからもうやめません?こういうことは・・・・・」
「じゃあ再起不能になってくれる?それはイヤでしょ?」
「はい・・・・・・」
「私だってそんな事してあとでバレて先輩に怒られるのイヤだもん。
観念して闘いましょうよ」
はあ、結局こうなるのか・・・・・・
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいF〜
「スタンド使いとスタンド使いは惹かれあう運命って言うしさ、
お互いスタンド使いの身の不幸を呪うしかないでしょ」
「いやそうですけどね・・・・・・・・・」
なんか納得いかないなあ・・・・・
「でさ、アナタの能力は聞いての通り、
先輩が知っていて教えてくれたのよ、さっき」
「はぁ・・・・・」
だいたいうちの部って能力とか顔とか割れすぎだよな・・・・
「心配しないで。私の能力も単純でさ、
隠しても仕方ないんだよね・・・・」
そういうと嘉陽さんは人型のスタンドを出現させた。
なんか、いまいち緊迫感がわかないなあ・・・・
「マジシャンが見せる前から種明かしするのもおかしな話だけどね・・・
って、ぼ〜っとしてないでアナタもスタンド出しなさいよ」
「はいはい・・・」
もうど〜でもいいや。適当に相手して隙見て逃げようっと。
そう思いながらとりあえず僕はエリザベスを出現させた。
「それがアナタのスタンドね。
私のスタンドはラビリンス・イン・アイズって言うんだけどね、能力はさあ・・・」
そういうと嘉陽さんのスタンドがパンチを打つ格好をした。
78 :915:2006/01/01(日) 20:28:19.64 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいG〜
と・・・・・
「うわぁ!!!」
僕の目の前をスタンドの腕が現れてパンチが耳元をかすめた。
「こ、これは・・・・!」
嘉陽さんのスタンド本体の腕は途中から消えている・・・
「私のスタンドの能力はさ、空間の好きな所に入り口と出口を作って
スタンドや私の身体を自由に出入りさせる能力なの。
範囲はそんなに広くは無いんだけどね、
パンチやキックも自由なところから出せるから避けるのに苦労するよ」
そう言いながら嘉陽さんのスタンドはまるで何かに突っ込んだ腕を
抜くように身体を動かすと、するすると腕が出てきた。
それに比例するように僕の目の前の腕が根本から消えていく。
う〜ん、直接攻撃型のスタンドなんだね・・・・。
とにかく蹴りを入れて空中に浮かせてしまえば良いか・・・
「それじゃあ始めましょうか」
嘉陽さんのラビリンス・イン・アイズが身構えた。
スタンドは身体にまるで宝石や鏡がちりばめられたような
デザインなので、夕日に反射してキラキラする。
「はいはい・・・・」
そう言って僕もエリザベスを身構えさせた。
うわ、自分やる気ねえ・・・・・
79 :915:2006/01/01(日) 20:30:22.31 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいH〜
「いくよ〜」
嘉陽さんが言った。嘉陽さんとの距離3メートル。
僕の射程距離内だけどおそらく向こうもそれくらいかなあ・・・
ブンッ!!!
そんな事を考えているとラビリンス・イン・アイズが腕をふるった。
ドゴッ!!!!!!!
突然エリザベスのすぐ横から腕が出現してエリザベスの脇腹にパンチがヒットする!
「ぐふっ!!!!」
僕は一瞬呼吸が止まりそうになりながら思わず飛び退いた。
やべえ!のんきに構えていたけれど・・・・
このスタンド・・・・
結構危険だ!!!!!!
「その顔、ようやくスイッチ入ったようだね」
嘉陽さん、いや・・・・、嘉陽が不敵に笑った。
80 :915:2006/01/01(日) 20:31:28.17 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいI〜
そしてラビリンス・イン・アイズがパンチを繰り出す!!
ドゴッ!ドガッ!バゴッ!
繰り出したパンチの数だけ、エリザベスの前から、横から、後ろの方から、
次々とヒットする・・・・・!
パンチ一つ一つの威力は人並みだけど・・・
どこからパンチが出てくるかわからないから
避けることが出来ない・・・・!
僕は必死になってエリザベスにパンチやキックをさせるけど
なんせ向こうのパンチのタイミングはわかっても
どこから出てくるのかわからないから当てる事が出来ない。
ボゴッ!!!!
うげえ・・・・・・・・ッ!
やっべえ・・・・。みぞおちにモロに食らってしまった・・・
「結構がんばるね」
嘉陽はそう言うけれど・・・・
足がガクガクする。結構気持ち悪い。吐きそう。
仕方ない、ここは一旦間を取るか。
でもこの四方からの攻撃、そう簡単に逃れられないぞ・・・・・
あれを・・・・試してみるか・・・・
156 :915:2006/01/03(火) 14:06:54.24 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいJ〜
僕は横の方をちらっと見た。
植えられた木が等間隔に並んでいる。
その木の向こうには3階建ての文化ホールがそびえている。
こっちは裏手だからいくつか窓があるだけで一面壁と言って差し支えない。
建物自体そこそこの高さだな。何メートルくらいだろう?
「よそ見なんかして余裕だね。
でもそろそろとどめいくよ?」
余裕の表情で嘉陽が言うと、ラビリンス・イン・アイズが身構えた。
僕もエリザベスに身構えさせる。
そこへ、ラビリンス・イン・アイズの右腕が振るわれた。
来るッ!!!
僕はどこから来るかわからない腕に当てるために
エリザベスに蹴りを入れさせる!!
しかし・・・・!
当てずっぽうの蹴りが当たるなんてそんな都合良くいくはずもなく。
むなしくエリザベスのミドルキックは空を切った。
157 :915:2006/01/03(火) 14:08:07.44 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいK〜
ボゴッ!!!
ラビリンス・イン・アイズの腕は
僕の右肩のすこし上から出てきて僕の肩甲骨のあたりを痛打した。
「あきらめが悪いね!」
嘉陽はそう言って、続いて左拳を前に突き出す・・・
「え???????????」
嘉陽が思わず声をあげた。
ミドルキックをからぶりしたエリザベスは
まるでバレリーナのように左足を軸にしてそのままくるっと後ろを向いた。
エリザベスの後ろには・・・当然僕がいた。
「ここからだあーッ!!!!!!!!!!」
僕はそう叫ぶと、エリザベスの右足が僕の左腕にヒットした。
ドガッ!!!!
228 :915:2006/01/04(水) 20:37:39.98 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいL〜
「何やってんのよッ!?」
嘉陽がびっくりして腕の動きを止める。
僕はエリザベスの蹴りが入ると同時に自分の足で地面を強く蹴った。
そして、エリザベスが僕にそのまましがみつく・・・・
そう、ほんの一瞬、このタイミングとこの角度だ・・・・・・・
地球の重力から解放される瞬間と
無重力になり力が入れられなくなる瞬間・・・・・・・・
ドヒュウウウウウウウウッ!!!!
僕はまるでロケットのようにものすごい勢いで空に飛びあがった!
「え?ウソ・・・・!!!!」
嘉陽がびっくりしている間に僕は文化ホールの屋上の高さにまでたどり着いた。
すこし角度をつけて飛んだので、
ちょうど建物の端に手を付けるくらいの絶妙の角度・・・・!
「アナタ、空を飛べるの!?」
嘉陽がびっくりしている間に
僕は無重力を解除して文化ホールの屋上に降り立った。
229 :915:2006/01/04(水) 20:38:18.60 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいM〜
前々から試してみようとは思いつつさすがに怖くて実行に移せなかったんだよね・・・
そう、僕自身の身体を無重力にさせつつ勢いをつける事で推力を得て
空に飛び上がるという事を!!
よし、逃走成功!!そう思って首を出して下をのぞき込む。
「空を飛ぶ能力だなんて聞いてないわよ!!」
って嘉陽が叫んでる。
「能力じゃなくて応用ですよ〜だッ!!」
僕はそう言って屋上の入り口へと向かおうとした。
「ちょっと!逃げる気!?」
あぁ、逃げますよ。こんな無益な争いやってられるかってんだ!
・・・・・・・・・・・・・・。
しまった・・・・・・・・・・。
入り口、鍵がかかってる・・・・・・
そうだよな、ドラマとかマンガとかだと建物の屋上のシーンって多いけれど、
普段から屋上を使うようなところ以外は
鍵かけて立ち入り禁止にしてるのが普通だよな・・・・・・・・・
念のためエリザベスに入り口のドアの向う側を確認させる。
ドアノブならともかく南京錠だよ・・・・。
エリザベスの力じゃ破壊させることも無理だよな・・・
230 :915:2006/01/04(水) 20:39:39.16 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいN〜
じゃあどうしよう・・・・・・。
ここから飛び降りて、直前で無重力になって
地面との激突を避けるって手もある。やっぱり怖いけど。
逆に、さらに浮上して隣の10階以上あるだろう企業ビルの屋上に行ってしまうのもアリだな。
それで屋上の鍵閉まっていたら今度こそホントに飛び降りなきゃいけないけど・・・。
そう思いながらもう一度下をのぞき込んだ。
げっ!!!!!!!!!!!!
さっき僕は空を飛んだのは能力じゃなくて、能力の応用だと言った。
そして・・・・彼女も応用しているッッッッッッ!!!!!!!!
256 :915:2006/01/05(木) 21:01:14.54 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいO〜
彼女はまずスタンドの背中におぶさって、
ラビリンス・イン・アイズがまるでハシゴを使ってるようにして空中を登ってきている。
そして手と足は空中で消えて、すぐ近くの木の枝を握ったり足の踏み場にしている。
なんてこったい!
確かにアレなら手でつかんだり足で踏んだりする「出口」は常に同じ場所でも、
手や足をつっこむ「入り口」さえ上に上にと持って行けば登っていく事が可能なんだ!!
やばい!僕はもう一度状況を整理する。
まずはまた逃げるという方法だ。
逃走経路は二つ。一つは登ってくる嘉陽と入れ違いに飛び降りる。
ただし建物の二方は道路に面していて人通りも多いからあとが面倒くさい。
一方は建物の裏手。今さっき僕たちが闘い、今嘉陽が登ってきているところ。
こっちの動きが丸見えだから向こうもすぐ降りてきて追いかけてくるだろう。
そして最後の一方は隣のビルと隣接している。
結構高いビルだけど屋上まで推力保ってたどり着けるのかな?
あんな高さまで試したこと無いからわかんないや。
むしろ文化ホールと違ってあの高さまで生えている木は無いから
嘉陽がハシゴにするものがなくて逃げ切れるかもしれない。
いや、ホントにそうか?
窓の出っ張りとかを利用して登ってくるって事も考えられるな。
いやいやいや、問題はそこじゃないッッッッッッッ!!
飛び降りて逃げるにしても、空を飛んで逃げるにしても、
僕の逃走先は嘉陽に知られているんだ!
257 :915:2006/01/05(木) 21:02:04.12 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいP〜
そう・・・・・、今ここにいる真下の・・・コンクール受け付け会場!
さゆは僕と一緒でクリスマスの公演に参加出来なかった。
だから今回の挑戦を楽しみにしていた。
れいなも舞台を経験して色々思うところがあったのだろう、
正月もかなり真剣に練習していたようだ。
そして、僕だってやっぱり舞台に立ちたいッ!
僕は自分の腕時計を見る。
受け付けの時間まであまり余裕も無い。
やっぱりここでカタをつけるしかないのか?
僕はもう一度下をのぞき込んだ。
嘉陽はもうすぐそこまで来ている・・・!
あれ?
僕は奇妙な事に気づいた。
なんか・・・変だ!!!
そう思ってラビリンス・イン・アイズを見直した。
嘉陽をかついだラビリンス・イン・アイズは
上半身を妙な方向にねじらせた上で空中を登っていた。
なんであんなしんどい格好しているんだ?
そう思いながら今度はラビリンス・イン・アイズの手と足の方向を見た。
・・・・・・・・・!!!!!!!!!!
258 :915:2006/01/05(木) 21:03:02.64 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいQ〜
僕は自分の背中を触ってみる。
そして攻撃を受けた時の事を思い出す。
それから僕はもう一度隣のビルの方向を見た。
あそこなら・・・・・ッ!!!!
「ふう、やっと登れたよ。面倒くさい事させないでよ」
振り返ると、とうとう嘉陽が登り切って、屋上に自らの足で降り立っていた。
「やっぱりね〜、鍵かかっていて逃げられなかったんだ?
まあ、ここなら誰にも見られる事ないし、落ち着いて闘えるね。」
そう言ってから嘉陽は自分の腕時計を見た。
「そうは言っても時間を気にしてるじゃないですか?
いい加減コンクールの受付時間ですからね・・・・・・・」
「あら、わかってるじゃない」
「ねえ、ここは一時休戦して受け付け終わってから
仕切り直しってわけにはいきません?」
「う〜ん、そんなこと言ってアナタを逃がしたら私だって後が怖いしねえ。
それだったらここでアナタを倒してしまう方が早いじゃない。
アナタだってそんな甘いこと言ってられない状況だってわかってるでしょ?」
やっぱりダメか・・・・・・・・・
259 :915:2006/01/05(木) 21:03:55.07 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいR〜
「え〜」
僕はブーイングしたあと、ビルの方向に走り出した。
走り出したと言っても建物の屋上の話なので数メートルだけなんだけど。
足を止めてビルを改めて見上げる。
「今度はそのビルに逃げる気?」
追いかけてきた嘉陽がそう言った。
「そうさせてもらいますよ・・・・」
僕はそう言って身構えた。一か八かだ・・・・
「そんなことさせないって言ってるでしょ」
言いながら嘉陽が歩み寄った。お互いの能力射程距離圏内!
ラビリンス・イン・アイズがパンチを繰り出そうとした。
今だ!!!!!!!
僕は足下の雪を蹴り上げた!
今年は結構雪が降る日が続いている。
だけどお正月からここ数日は割と良い天気が続いていた。
道路の雪は完全に解けきっていたし、
歩いている限りにおいてはあまり雪は残っていない。
でも、こういう人が立ち入らない屋上なら・・・・
その中でも日中の何時間かをビルの日陰で過ごすこの場所なら
まだ雪は解けずに残っていた・・・・・!!
雪がラビリンス・イン・アイズの前方に激しく舞い上がる!
260 :915:2006/01/05(木) 21:06:28.78 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたいS〜
「小細工をッッッッッッ!!!!!」
嘉陽が叫びながらパンチを繰り出した。
今度はバレてるからカモフラージュ無しだ!
僕は直接エリザベスのミドルキックを僕自身にたたき込んだ。
そして僕は左足で思いっきり地面を蹴る!
「また飛んで逃げる気?」
空中からラビリンス・イン・アイズの右手が出てくる!
その手は空中に飛ぼうとする僕を捕まえようとした・・・・・・・!!
「なッッッッッッッッ!!!!!!??????」
嘉陽が驚きの声をあげた。
ラビリンス・イン・アイズの右手はむなしく宙を空振りしていた。
そう、僕は空中を飛ばずに右方向にステップを踏んで、
僕の左上方に手が出てくるのを待ちかまえていたんだ!
さっきの僕自身への蹴りはダミー!!!!
もちろん僕は無重力化なんてしてない!
「くらえぇぇぇぇぇッ!!モグモグモグモグッ!!!」
バシィッ!!!!!!!!
空中に出現していた右手にエリザベスが蹴りをたたき込んだ!!!
305 :915:2006/01/06(金) 21:46:58.76 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたい21〜
『ウェー・ウェー(上へ上へ)!!!!!!!!』
サイレント・エリザベスがいつもの言葉を唱えた。
「しまったあッッッッッ!!!!」
手に攻撃を受けて、嘉陽本体もスタンドも宙に浮かび始めた。
こうなればもう何も出来ない!
「なぜ・・・・・、何故ッッッッッッ!!!!!」
「アナタ、マジシャンですよね。
マジシャンが最初にネタばらしするなんておかしいなと思っていたんですよ」
彼女は最初、確かに自分の能力のネタばらしをしていた。
でも、彼女は一つだけ、小さなウソをついていたんだ。
「さっきアナタが登ってくる時、木をつかんでいる腕や足が
日陰なのに光に照らされていたんですよ。それで気づきました。
アナタの能力、空間に自由に出口を作れるというのはウソだッ!」
嘉陽のスタンドは、あちこちに宝石のような装飾が入っていた。
でも、それらはカモフラージュなんだ。
一番大事なのは・・・・!!!!!
「その胸に張り付いている鏡に映っているところにしか出口を作れないんですね。
何かで死角になっているところや鏡の向いてない方向に出口を作る事は出来ないんだ。
だから僕の背中へのダメージはフックパンチばっかりでストレートは無いし
さっき登ってくる時に胸を木の方向に向けておく必要があったから
だんだん高い所に来て木の高さを越えると無理な体勢で身体を向けて、
木を鏡に映す必要があったんだ。僕が見たのは鏡に反射した光だったんですよね」
306 :915:2006/01/06(金) 21:47:54.47 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたい22〜
「そこまでばれてたの・・・・」
「はい。だから雪で死角を作って腕が出てくる方向を一方に限定させたんです。」
エリザベスが蹴り上げた雪はラビリンス・イン・アイズの身体の
左側に一瞬白い壁を作るかのように舞い上がった。
鏡は左半分を雪の壁に覆われて、右半分しか僕を映していなかった。
そう!つまり、向かい合った僕の身体の左側。
出口の場所が特定されなくても、だいたいの方向さえわかれば
いくらなんでも避ける事は可能だ。
そして僕はもう一つ罠を張っていた。
ビルを見る演技をして、僕がさらに空を飛んで
ビルの屋上に逃げてしまうつもりだと思いこませた事だ。
彼女も僕を逃がしたくなかったのは明白だ。
じゃあどうするか?
浮かび上がろうとした所を捕まえてしまうのが一番手っ取り早いだろう。
だから、少しでもつかむ確率の高い上の方から
僕の身体をつかみにかかってくる事はわかっていた。
エリザベスの蹴りを僕が受けたのを見た彼女は
何の疑いもなく僕が空に浮かぶものだと思っていたのもトリックだ。
307 :915:2006/01/06(金) 21:49:07.88 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたい23〜
「ラビリンス・イン・アイズの能力の魅力は
どこから手が出てくるかわからないところなのに
どこからどうするつもりか全部誘導させられていたのね・・・・」
「そうですね。手が出てくるだいたいの場所がわかっていて
さらにアナタの予想していた動きと反して僕は空を飛ばずに、
むしろ下の方から待ちかまえていたわけですからね」
そう言いながら僕はラビリンス・イン・アイズ本体と嘉陽本人に近づいた。
「トドメ、刺させてもらいますね・・・・!!!」
彼女は観念したかのように目をつぶった。
「トゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥ
トゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥキティアァッッッッッ!!!!」
バリイイイイイイイイイイイイインッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!
砕けるような音とともにラビリンス・イン・アイズと嘉陽が
吹っ飛んでそのまま地面に叩きつけられた。
「ふう、終わった・・・・・・・・。
さて、どうやって下に降りようかな・・・・・」
僕は思案した。
308 :915:2006/01/06(金) 21:50:19.22 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたい24〜
と・・・・・・・・・・
「どうして?どうしてトドメを刺さないの?」
嘉陽・・・・さんがよろよろと立ち上がってきた。
「充分トドメを刺したじゃないですか。もう当分は闘えないでしょ?」
「アナタの今の攻撃、胸のあたりしか攻撃しなかったじゃない・・・
鏡が割れて当分は能力使えないしさ、
私だってそれなりにダメージ受けているけれど・・・・・
まだ・・・・・、こうしてなんとか立ち上がれるじゃない・・・・!!!」
「嘉陽さん・・・・・・・・・。アナタ、勝負を焦っていましたよね。
僕が雪を蹴り上げた時、攻撃の手を一瞬で良いから止めれば
雪の煙幕は無くなって、またどこからでも攻撃出来たんだ。
なのにアナタは攻撃の手を止めることが出来なかった・・・・」
「それは・・・・・」
「勝負の最中に焦りすぎですよ。焦りは敗北につながります。
でも本当にマジックが好きなんですね。
だから、今回のコンクールに参加したいと心底思っている。
次はコンクールで勝負しましょう、マジシャンなんだから手は大事にしてくださいよ。」
僕はそう言って建物の縁に立った。
「僕はこのまま無重力になって下に飛び降りますね。
嘉陽さんのスタンドのパワーなら入り口の鍵を壊せると思うし。
なんか事情は知らないけれど敵同士になるらしいから
ここは協力は無しって事で、お互い自分でなんとかしましょう」
そう言うと、僕は建物から飛び降りた。
309 :915:2006/01/06(金) 21:51:21.03 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたい25〜
「亀井さん・・・・・・・・・・・・」
嘉陽さんのつぶやく声がかすかに聞こえた。
あれからすぐに無重力状態になった僕は無事着地した。
コンクールの受付にはなんとか間に合った。
受付を済ませて、注意事項等の説明会で話を聞いていると
会場の後ろの扉からよろよろしながら嘉陽さんが入ってきた。
係員に遅れた事を謝っているけれど、
あの様子だと受付は受理されたようだな。
結局、説明会が終わってからも僕は嘉陽さんに近寄らず
そのまま文化ホールを後にした。
バスを待つ間、僕はさゆに電話する。
「もしもし、さゆ?うん、絵里だけど。
うん、ちゃんと申し込み済ませたよ。
それよりも聞きたい事があるんだけどさ・・・・」
310 :915:2006/01/06(金) 21:51:55.29 0
銀色の永遠 〜亀井絵里は部活動にはげみたい26〜
「へぇ〜、それじゃあその二人組ってのが・・・」
話を聞いていた僕はふと、少し離れた所に止まっている車が目に映った。
車の後部座席には誰かがしんどそうに座っている。
そして車にもたれかかって立っているのは
見るからにゴージャスな格好をした派手な女の人。
さらに、文化ホールからその車に近寄ってくる二人は同じ高校の制服を着ている。
一人は・・・・嘉陽さん!
もう一人の高校生に腕を捕まれて歩く嘉陽さんの姿は
まるであの車に連行されるようだ・・・・。
一瞬、僕と目があった嘉陽さんはあわてて視線をそらせた。
そして車に乗せられて、そのまま三人は去っていった・・・・
僕は・・・・背筋が凍るのを感じた・・・・・ッッッ!!!!
『絵里?どうしたの?』
電話の向こうでさゆの声が聞こえる。
「う、うん・・・・・。かばってもらったみたい・・・・・」
『絵里?』
「その二人組に僕を知られないようにかばってくれたみたい・・・・」
嘉陽さん、ちゃんとコンクールに出られるかなあ・・・・。
一瞬、彼女の心配をしたあとに自分の事が心配になってきた。
僕、普通に演劇したいだけなのに、面倒な事になりそうだなあ・・・・
嘉陽愛子:再起不能
スタンド名:ラビリンス・イン・アイズ
TO BE CONTINUED…