219 :610:2006/11/15(水) 00:21:01.71 0
銀色の永遠 〜藤本美貴は真心を伝えたい〜@

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ああ〜何度見てもいい言葉だなぁ〜」
「ん〜?ガキさん何見てんの?」
「おぉもっさん!安倍さんが部活最後の日にみんなにくれた言葉なのだ。
私はその言葉をいつも持ってる手帳に書き留めてあるのだ」
「ふ〜ん…なんて言ってたっけ?」
「ええー!ちょっとぉー!覚えてないんですかぁー!
私なんかもうそらで言えますよ〜!よく聞いてくださいね!ええと…

―『このぶどうヶ丘の演劇部を引退するにあたって…みんなにひとつだけ言える事を見つけたよ
この部活の部員は『黄金の精神』を持っているという事だべ
なっち達もかつて先輩達から受け継いだ…
「正義」の輝きの中にあるという『黄金の精神』をなっちはみんなの中に見たよ

この部は普通の部活動とはちょっと違うところもあって、戸惑うこともあるかもしれない
この杜王町もちょっと変わった町かもしれない

でもそれがあるかぎり大丈夫だべさ
みんなが持ってるその「精神」は、周りの人々の心の中にも、教えなくとも自然と
しみわたって行くものだべ…そして次なる世代にもね…』―

あ、ああ…また涙が…」

「…黄金…『黄金の精神』ねぇ…」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


220 :610:2006/11/15(水) 00:23:35.41 0

「今日は…やる気しないなぁ〜…部活」

一日の授業が終わり、あたしは真っ直ぐに学校を出ようとゲタ箱へ向かった。
こういうのを自分で言うのも何だけどさぁ…最近美貴は自分でも思うんだ。
自分は『やるときゃやる女』だって。
やる時ってどんな時かって?まあそれは…あたしの気分次第だけどさ。
少なくとも今はそんな時じゃあないのさ。

「藤本せんぱぁ〜い!」

廊下を歩いていると背後から美貴を呼ぶ声がした。
誰だろう?演劇部の誰かが美貴を呼びに来たのかな?めんどくさいなぁ…
だけどこの声、誰の声だっけ?聞き覚えはあるんだけど…いつも聞いてるって声でもない。
そんな事を思ってチラリと後ろを見る。
…そこに立っていたのは美貴の予想だにしない人物だった。

そうだ…この声!このブリブリの改造制服…!
髪型は前とは違う奇抜なアシンメトリーなものに変わってるけど…

「藤本さん久しぶり〜!!」

上戸彩…!!!

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


221 :610:2006/11/15(水) 00:25:10.64 0

間違いない、こいつはあの上戸彩だ!!
何しに来たんだ!?か、関わりたくねぇ…!
あたしは再び前を向き歩き始めた。

「ちょっとぉ!無視しないで下さいよ〜ッ!!」

コイツ…!まさか美貴に復讐しに来たんじゃあないだろうな!?確かにあたしはコイツを
思いっきりブチのめしてやったけど、それはお互い様だ。
そもそもこの上戸(イカレ)彩がこの学校で無茶苦茶やりやがったのが悪いんだ!
美貴は知っている!コイツの異常な本性と、演劇部を壊滅寸前にまで追い込んだ凶悪な
スタンド能力を…!
もしコイツが復讐をしに来たんならヤバイぞ…!美貴は既に包囲されている可能性が
ある!いま美貴の周りを歩いてる生徒達には注意した方がいいな…!

「ねえねえねえねえ!!ちょっと話聞いて下さいよ〜ッ!!久しぶりに会ったんだから
さあ〜ッ!!」

上戸は美貴の後ろにピッタリとくっつき話しかけてくる。う、うぜえ…!!


222 :610:2006/11/15(水) 00:26:44.91 0

「最近調子どうですかぁ?元気バクハツ〜!?」
ピトッ!
「ヒッ!?」

美貴は頬に感じた冷たさに思わず声を上げる。

「あ、飲みますこれ?『オラナミンC』!」

み…美貴はキレた。

「うるせェ――――――――――――ッ!!!!あたしに話しかけんなッ!!!!
今頃何の用だッ!!?逆恨みの復讐かッ!!?」

「なッ…!!復讐だなんてとんでもない!!」

上戸はブンブンと手と首を振る。

「恨むどころか…感謝してるんですよ藤本さんにはッ!今日はその…お礼を言いに来たん
です!」
「お礼…!?」

何言ってんだコイツ?美貴はコイツをぶん殴ってはやったけど、感謝されるようなことを
した覚えはねーぞ?


223 :610:2006/11/15(水) 00:27:58.53 0

「あなたにやられて入院してわたしは気付いたんです。自分の生き方は間違っていたって」
「…どういうことだよ?」
「病院のベッドの上はつまんなくて…寂しくて…だけど誰もお見舞いになんか来てくれな
いし、電話もメールもくれない。わたしは他人に注目されて賛美される事が喜びだった…
でも気付いてしまったんです。わたしには心から信頼しあえる友達なんか一人もいないっ
てことに。そんなとき藤本さんに言われた言葉がぐるぐると頭の中を駆け巡って…

―『いくら外見が良くても愛想振りまいても、あんたのやってることは全て上辺だけだ…
その他人を見下すことしか出来ない心じゃ、あんたのことを心から好きになって
くれる奴なんて絶対に現れないぜ…!一生、心を操って無理矢理従わせるだけだ…』―

…その通りだなって思い知らされました。そしてわたしも変わろうって思ったんです!」

「マジで?あんたそれマジで言ってんの?」
「マジマジ!大マジです!!」

美貴はキョトンとしてしまった。てっきり復讐しに来たと思ったのに。本当に美貴の言っ
た言葉でコイツが変わったんならちょっと嬉しいかな…だけど相手が上戸だけに、これが
本心だとは信じきれない。また猫かぶってるんじゃあないのか?


224 :610:2006/11/15(水) 00:29:39.40 0

「やっほ〜彩〜!何してんの〜?」

その時、上戸の後ろから女子生徒が手を振りながら近づいてきた。

「おぅベッキー!いま終わり〜?」

ベッキーと呼ばれたハーフっぽい顔立ちの女子生徒は、上戸と仲良さそうに話し始めた。
う〜ん…2人ともマジで仲良さそうだ。上戸の奴マジで変わったのかな。

「あ、ゴメン!わたしこの人ともうちょっと話があるから、また今度ね!」
「うん!じゃあまた彩ん家に遊び行くからね〜!」

ベッキーちゃんが去っていった後、上戸は再びあたしに向き直る。

「スイマセン話の途中で…!わかってくれました?わたしは気付いたんです!
友情という物の素晴らしさにッ…!」
「あ、ああ十分わかったよ。良かったじゃん!美貴も嬉しいよ」

なんかキャラ変わり過ぎな気がするけど…、あの異常な性格が直ったんなら本当に喜ばし
いことだ。うんうん我ながら良い事したな。


225 :610:2006/11/15(水) 00:30:43.12 0

「じゃあな。もう前みたいに悪さすんなよッ!」
「ちょっと待ってくださいッ!」

背を向けたあたしを上戸が呼び止める。

「なんだよ。まだ何かあんの?」
「ええ…実は藤本さんにもう一つ大事な用があるんです」
「大事な用?」

「指令を伝えに来ました…寺田先生からの」


483 :610:2006/11/21(火) 00:45:16.20 0
銀色の永遠 〜藤本美貴は真心を伝えたい〜A

「なッ…!」

なんだってェ〜!!?
コイツいま何て言った!?『寺田先生からの指令を伝えに来た』だってェ!?

「ハァ!?ちょっと待て!なんで部外者のお前がそんな事やってんだよ!?」
「まあまあ、立ち話もなんだからちょっと出ましょうよ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

…そんな訳で美貴は上戸に連れられドゥ・マゴにやって来た。
やれやれ、まさかコイツとこんなとこ来るなんて思ってもみなかったよ…
テーブルの上、上戸の前には納豆スパゲッティーにサラダ、デザート…
大量のメニューが並んでいる。コイツ金持ってんだな…美貴はいつものように
アイスコーヒーだけだっつーのに。

「なあ、食うのもいいけどそろそろ話してよ。なんであんたが演劇部の『指令』なんかを
伝えに来たのか?そんでもってそれはどんな指令なんだよ?」
「まあまあ落ち着いて!順を追って話しますよ!」

上戸は口の中の物をゴクリとオレンジジュースで流し込むと、静かに口を開いた。

「実はわたし去年の冬、退院してすぐに…寺田先生に演劇部に勧誘されたんです」


484 :610:2006/11/21(火) 00:47:06.33 0
「ぶッ…!!?」

思わず美貴はコーヒーを吹き出しそうになる!!
マジかよ!?何考えてんだあのオッサン!?
美貴と上戸との戦いの後、上戸のことは当然部員の誰かから寺田に報告が行ったはず…
自分の部活を潰そうとした奴を勧誘するなんて!

「『お前は演劇部に必要な人材なんや』って…『スタンド能力』についても詳しく聞かれま
した」
「そ、それでお前はなんて答えたんだよ!?」
「いや、実はわたし藤本さんと戦ってからスタンド能力がちょっと変わっちゃったんです
よ。弱まったっていうか…。心境の変化が原因ですかね?能力で『虜』に出来るのは
『一度に一人だけ』になっちゃって…。そのことを寺田先生に話したら『そっか、そん
じゃあやっぱり今の話は無しやw』って…」

ということは…寺田は上戸のスタンド能力を目当てに演劇部に勧誘したってことか?

「まあわたしは最初から、演劇部に入部するつもりなんか無かったですけどねッ!
わたしはあなた達とは別の道でスーパーアイドルを目指しまふッ!!」

上戸は口からスパゲッティーをぶら下げながら美貴にフォークを突きつける。
性格は変わってもその野望は変わってないんだな…


485 :610:2006/11/21(火) 00:55:28.70 0

「それからしばらくは寺田先生とは何も無かったんですけど…今週の頭にまた「話がある」
って言われていろいろ聞かれたんですよね。『お前がスタンド能力を身に付けたきっかけは
何や?』とか『ぶどうヶ丘の者以外で知ってるスタンド使いはおるか?』とか…
一通り話し終わった後、指令を藤本さんに伝えるよう頼まれて…」

「そういえばあんたがスタンドを身に付けたきっかけは美貴も知らないな。(寺田の仕業で
も無いみたいだし…)生まれつきなのか?」
「いいえ、寺田先生にも話したけど生まれつきじゃあありません。そこでこの『指令内容』
と繋がるわけです」

上戸は制服のポケットから一枚の紙を取り出す。いつもの指令が書いてある紙だ…!
上戸はその紙を広げ、美貴に差し出した。そこに書いてある言葉は…!


藤本美貴に命ずる。
上戸彩と共にS市『涙山(なみだやま)』を調査せよ。
案内及び詳しい調査内容は上戸に聞くこと。
                       寺田


「涙山…!?なんじゃそりゃ?つーかなんでお前も一緒なんだよッ!?」
「その場所が、わたしがスタンド能力を身に付けた場所なんです」


749 :610:2006/11/26(日) 18:24:31.14 0
銀色の永遠 〜藤本美貴は真心を伝えたい〜B

「えーッ!スタンド能力を!?」
「わたしも確信は持てないんですけど…多分そこだと思うんですよね…。
だから調査しに行くんです」

上戸がスタンドを身に付けた場所か…
指令っていうから覚悟はしてたけど…やっぱりスタンドがらみだったか!

「涙山ってその…いわゆる普通の『山』なの?」
「はい、わたしがぶどうヶ丘に来る前に通っていた学校の、ただの裏山なんですけどね。
古くから地元に住んでる人は『涙山』って呼んでるらしいんです」
「ふ〜ん、なんでよ?」
「なんでもその山は『天からの涙が降る山』だったとか…」
「天からの涙…!?」
「ずーっと昔、何百年も前…。よく流れ星がその山に落ちるのが見えたんですって。
そんな痕跡もないし、迷信だと思って誰も調査なんてしませんが…。まあどうでもいい
話でしたね」
「…それでその山でどうやってスタンド能力を身に付けたんだよ?」


750 :610:2006/11/26(日) 18:26:26.96 0

「前の学校では、『歩行祭』とか言ってその山に登るのが毎年の恒例行事なんです。
わたしその時転んでケガしちゃって。あ、あと偶然見つけた湧き水も飲みましたね」
「それがスタンドと関係あんの?」
「その後、すっごい熱を出して3日くらい寝込んだんですよ。そして熱が治まって目が
覚めたとき…こいつが枕元にいたってワケです」

上戸は自分の背後を指差す。

シュアアア…

そこにドレスを纏った女のようなビジョンが現れる。
上戸のスタンドだ…!確か名前は『プリティ・アイドル』

「ケガか湧き水か…それとも別の何かか?わたしが高熱を出した原因がスタンド能力と
関係あると思うんですよね〜」

高熱を出してスタンド能力を身に付けた…?どっかで聞いたことある話だぞ?
美貴は聞き覚えのあるエピソードに記憶を辿った。
そうだ!大谷雅恵さん…!あの人も高熱を出してスタンド能力を身に付けたって聞いた。
たしかその原因はアメリカの隕石…!
涙山…天からの涙…流れ星…隕石…そしてスタンド能力…


751 :610:2006/11/26(日) 18:27:57.35 0

「どうしたんですボーッとして?」

上戸の言葉に美貴はハッと我に帰る。
せっかく美貴の頭にしては珍しく何かが浮かびそうだったのに…
もういいや、めんどくせ。

「おっと!しまった友達に合う時間に遅れる!」

ガタン!
上戸はチラリと腕時計を見ると当然立ち上がる。

「オイなんだよ!?こっちにはまだ聞きたいことが…!」
「すいませーん!!わたしちょっと約束があって…!続きはまた今度ってことで!
あ、これわたしの連絡先ですッ!!」

上戸は何かの紙にサラサラとメモをするとそれを美貴に渡す。

「それじゃあサヨナラでーっす!!」

そう言うと上戸は駆け足で去って行ってしまった。
やれやれ、自分勝手な所は相変わらずだな…


752 :610:2006/11/26(日) 18:29:03.44 0

「あ、あれ!?」

そこで美貴はハッと気が付いた!!
上戸が連絡先を書いてよこした紙!これレシートじゃねーか!!!
そういえばアイツ…金払ってねェ―――――――ッッ!!!!!

「ふ、ふざけんなよッ…!!」
あいつの性格、ある意味余計悪くなってんじゃあねーのか!?
またすぐに友達なくすぞッ…!!くそ…手持ち間に合うかな…!?

「今日は散々だッ!!めんどくさい指令は任されるし、金は払わされるしよーッ!!」

ギリギリ支払いを終えた美貴は、重い足取りでドゥ・マゴを後にした…のだった。


353 :610:2006/12/10(日) 00:45:42.44 0
銀色の永遠 〜藤本美貴は真心を伝えたい〜C

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ちょっとぉ〜!そんなに怒んないで下さいよ〜!
ちゃんとお金返したじゃないですか〜!!」
「うるせー!!お前改心したと思ったら全然変わってねーじゃねーか!その性格ッ!!」

商店街は休日だけあって結構な人で賑わっている。
S駅で待ち合わせした美貴と上戸は、上戸が前に通っていた学校の裏山、
通称『涙山』に向かってS市内を歩いていた。
その山にはスタンド能力が身に付く何かがあるらしいけど、そんなもん見つかるんだろう
か?
めんどくさいし、こいつと一緒ってのが余計に美貴のやる気を削ぐ…

「わざとじゃないんですって!つい忘れちゃったんですって!友達にも良く言われるんで
すよ、『彩って天然だね』って!えへ!」
「…」

何が『えへ!』だ!コイツのこのキャピキャピの笑顔は前と同じように演技なのかぁ?
それともマジで天然なのか?ああコイツの性格がわからないッ!!
美貴こいつ苦手だよぉ…!仕方ない、今日一日の辛抱だ!!

「そう言えばさぁ、お前なんで寺田先生の命令なんて引き受けたんだ?
演劇部員でもないのによ」

美貴は唐突に、前から気になっていた疑問を上戸にぶつけてみた。


354 :610:2006/12/10(日) 00:48:02.85 0

「わたし長い間入院してたじゃないですか。それで結構単位ヤバかったんですよね。
でも寺田先生がいろいろ他の先生にも口聞いてくれて、なんとか進級できたんです。
その恩があるんですよ」
「アイツがそんな事をねぇ…よっぽどアンタを演劇部に入れたかったんだな」
「そういう事だったんですかねぇ?でもわたしはやっぱり演劇部は無理だなぁ」
「無理?何でよ?」
「寺田先生から聞きましたよ!ぶどうヶ丘の演劇部は表向きはただの演劇部、だけどその
真の姿は町の平和を守る、正義の秘密集団なんでしょ!?」
「へ!?」

コイツ何言ってんだ?確かに特殊な活動もたまにあるけど、この部はれっきとした
演劇部だ。そこらへんの学校よりいい成績も残してるぞ!

「部員が全員スタンド使いなのはそういう事だったんですね!普通の演劇ならともかく、
わたしはそんな活動は出来ないな〜。一体誰の任務で動くんですか?国家?警察?
いや!これ以上は聞かないでおきます!なにしろ秘密集団ですからね!」

「そ、そうだな!まあよろしく頼むよ」

そうか…上戸には演劇部はスタンド使いの集まりって事がバレちまってる。
だから寺田はそんな風に上戸に説明したのか。まあ信じる方も信じる方だけど。

「えーと、そろそろ見えてくるはずですよぉ〜。あそこが学校だからぁ〜…」」

そうこう言ってるうちに目的地に近づいてたみたいだ。住宅街を抜けると、上戸が通って
いたであろう学校が見えてきた。辺りには家も少なくなってきて、学校の裏には林も見え
る。でも山らしき物はまだ見当たらないんだけど…


355 :610:2006/12/10(日) 00:50:46.16 0

「あ、あれ!?無い!?」

突然上戸が素っ頓狂な声を上げる。

「あ?どうしたんだよ?」
「無いんですよッ!!裏山が!涙山が無くなってるッ!!」
「はぁ〜!?無いってどういうことだよ!?」
「と、取り合えずもっと近づいてみましょう!!」

何がなんだか分からなかったが、美貴たちは木々を潜り抜けて山があるべき場所に
向かった。
そして近づいてみて理解した…

涙山は文字通り無くなっていたのだ!!
山があったであろう場所はキレイに整地され、所々金網で囲われてしまっている。
そしてそこに立っている看板には「住宅地 開発予定地」と書かれている。

「マジでぇ!?裏山無くなっちゃったのぉ!?全然知らなかった…」
「やれやれ…!無駄足になっちまったな」

と言いつつ美貴はホッとした。
ラッキー!めんどくさい山登りをしなくて済んだぜ!

「あ〜あ。特別思い入れは無かったけど結構ショックだなぁ〜」
「でも結局何だったんだろうな?スタンドが身に付く理由って…」


356 :610:2006/12/10(日) 00:52:48.71 0

まあ…それは美貴が気にする事じゃないか。指令には『涙山』を調査しろ、としか書いて
なかったもんな。
美貴たちは駅へと戻るため、また林を潜り抜ける。
ザクッザクッと落ち葉と枝を踏む音が当たりに響く。

…!?
美貴はそこで何かの気配を感じた…!!
何か…いる!?

「どうしたんです藤本さん?急に立ち止まって?」
「あたしさぁ、いいのか悪いのか、最近こういうのにどんどん敏感になってきちゃって
さぁ…」
「??」
「後を付けてきてんのはわかってんだッ!!!出てきなッ!!!」

美貴は振り返って叫んでやった。

「えッ!!?誰かいんの!?」
「ああ…たぶん美貴たちが引き返したあたりからだな…!」

美貴と上戸は黙って辺りを見回す…!


「あ〜あ…見つかっちゃったか」



357 :610:2006/12/10(日) 00:54:31.72 0

美貴たちの後方の木の上から声がした。
そして何者かがその木から飛び降りる!

ザンッ!!!

「久しぶりだね藤本美貴…そして上戸彩ッ…!!」

姿を現したのは…女子高生だった。その黒い制服には無駄に鋲やバンドが付いていて、
まるでパンクロッカーの衣装のように改造してある。しかも何かボロボロになったような
デザインだ。

「お前ら…今ボクを笑ったね…?」

そいつは卑屈っぽい目で良く分からない事を呟き始めた。
誰だコイツ?美貴たちの名前を知ってるってことは、前に会った事あるヤツか!?

「なぁ上戸!こいつ誰だっけ!?」
「さぁ…?わたしも知りませんよこんな奴…」


269 :610:2006/12/25(月) 01:25:52.67 0
銀色の永遠 〜藤本美貴は真心を伝えたい〜D

「な…!!お、覚えてないだとッ…!?」

突然現れた奇妙な女子高生は、顔を見合わせる美貴と上戸を見てショックを受けている。

「キミ達の眼中にすら無かったってことか…そうだよね…どうせボクなんか…」

女は美貴達から視線を外し伏目がちにつぶやく。
すげー暗い雰囲気の女だなぁ…。なんつーか負のオーラが出てるぞ。
しかしコイツの女のクセに自分のことを『ボク』って呼ぶ呼び方…、引っかかるな。
亀井の他にもそんなヤツがいたような…?

「キミ達は覚えてなくてもなぁ…!!ボクはずっとキミ達の事を考えていたよッ!!!」

ズゾゾゾゾゾ…!!!!

なんだッ!!?
どこから現れたのか突然女の背中を緑色の固まりが這い登ってきて、肩からその姿を覗か
せる!!

「あ…!!」
「あ〜…」

その光景を見て美貴と上戸は同時に声を上げた。
思い出したぞッ!!
この女の背中にしがみ付いているのは巨大な蜘蛛だ…!!そう…『スタンド』のクモ!!

「思い出したようだねッ!!この高橋瞳と『evergreen』をッ!!!」

バアアアアアアアアアアアアアアア――――――――――ンッ!!!!!



270 :610:2006/12/25(月) 01:27:26.97 0

「お前はッ…!病院であたしと梨華ちゃんを襲ったッ!!」
「あれ?なんで藤本さんがアイツを知ってんの!?」

上戸が不思議そうに美貴に尋ねる。そっか…コイツ知らないんだっけ…!

「上戸ォ…いま思い出したけどよ。美貴はお前にすげーデカい貸しがあるんだから
なッ!!」
「へ?」
「お前がぶどうヶ丘病院に入院してる時に、美貴はアイツに襲われたんだよッ!!
『藤本美貴を倒せば上戸彩を超えられる』とか言ってよォ〜!!
もう一人いたな…!!え〜となんて名前だったっけ!?そいつはお前を狙ってた!
とにかく結果的に美貴はお前を守ってやったんだぞッ!!」
「ええッ!!!マ、マジで!?」
「マジだよマジ!!とんだ災難だったぜ…!」
「そりゃ〜迷惑かけましたぁ!すみませぇ〜ん!!」
「だけど何でアイツがここにいるんだ?嫌な予感がするぜ…!」

美貴は高橋瞳を睨みつける。

「驚いたよ、まさかキミ達が仲良しになってるとはね…」
「別に仲良しになったわけじゃあねーよ!そんなことよりよ〜!
お前待ち伏せしてたな?何で美貴達がここに来るって分かった?」
「キミ達の事をずっと見ていたからさ…!」
「見てただって…?」
「そうさ…!ここ最近のキミ達の行動は監視していたよ!この『アカネ』がね!」

ズズズズズ…!!!

高橋の肩に乗った『evergreen』の額、そこに付いている飾りが子グモに変化し、高橋の
掌に飛び乗った。


271 :610:2006/12/25(月) 01:29:28.58 0

「会話もずっと聞いてたよ…。そうかぁ、涙山がスタンド能力と関係あったのか…
そういえばボクもこの山で転んだ事があったけなぁ…。無くなっちゃって残念だよ…」

ズキュウウウウンッ!!!
高橋の掌の子グモは再び大グモの額に戻り、飾りと化す。

「てめー、一体何企んでやがるッ!!」
「藤本美貴…見ろよこれをッ…!!」

高橋は自分の制服の裾を捲くり上げる。
あらわになったその腹には、斜めに走った大きな傷跡が残っていた。
ヤツのスタンドの腹にも同じ傷跡が付いている。
これは…たしか美貴が梨華ちゃんのスタンドで付けた傷…!

「キミにやられてから…ボクはもうスタンド使いに関わるのは懲り懲りだと思ったよ。
思い知らされたんだ、どんな事でも上には上がいるってね。
それからというもの、何に対しても自信って物が無くなっちゃって…勉強も、運動も、
全てが上手く行かなくなっちゃったよ。
ボクの事を『スーパー女子高生』なんて呼ぶ人は今じゃ一人もいないよ…。
ハ…ハハハッ…!!キミ達も笑いなよ!この惨めなボクをさぁッ!!!」

高橋は自虐的な笑いを林に響かせる。
あーイライラする!美貴はこういうウジウジした奴が一番嫌いなんだよッ!!

「だから何だっつーんだよ?自分が弱いのを人のせいにするんじゃねーよ」
「そうそう!もっとポジティブに考えなさいよ!そうだ!あんたもたくさん友達作りな
よッ!」

イラついた美貴と上戸は高橋に非難の言葉を浴びせる。


272 :610:2006/12/25(月) 01:31:37.94 0

「ボクだって何度も立ち直ろうと頑張ったさ…!でもこのお腹の傷を見るたびに頭に浮か
んでくるんだ!キミ達2人の顔がッ!!それがいつもボクの心を乱していくッ!!
精神の問題なんだ…!!やはりボクはキミ達2人を乗り越えなければならないッ!!
もう一度『スーパー女子高生』に戻るためにッ!!!」

シャアアアアアッ…!!!

『evergreen』が鋭い牙の付いた口を開く!まるで高橋の気持ちの昂ぶりを表している様
にッ!!なんてこった…!やっぱりコイツ襲ってくる気だ!!

「そこまでにしたらぁ?前にわたしに触れることすら出来ずに負けたくせに…。
また生爪剥がされて泣き叫びたいのぉ!?」
「そんな事を言っていいのかな上戸彩?言っただろ?キミ達の最近の行動は監視してい
たって!知っているんだよ!お前の能力が弱体化してるってことはなーッ!!!」

あ…!確か美貴とドゥ・マゴで話した時言っていた。上戸の能力、『虜』として操れるの
は一度に1人だけになっちゃったって…!

「いつもお前を守っていた虜どもがいないんなら、お前なんか簡単に倒せるぞーッ!!!」

高橋が上戸を睨みつける!今にも襲い掛かりそうだ!
ちッ…!めんどくさいけどやるしかないみたいだな…!!

「待てよ高橋瞳!こっちにはあたしも居るんだぞ!1人で勝てると思ってんのか!?」
「ふん!藤本美貴、お前の貧相なスタンドなんか恐くないねッ!!」
「な、なんだとぉ〜!!?」

美貴のスタンドが貧弱だとォ〜!!こいつ誰に向かって…!
…!!
美貴はここであることに気が付いた。
高橋瞳、こいつもしかして…!


273 :610:2006/12/25(月) 01:33:59.97 0

「そう思うんならかかってきなッ!!!スーパー負け犬女子高生ッ!!!」

美貴はクイクイと手招きして高橋を挑発してやる。

「ぐッ…!!言ったなッ!!それじゃあ望みどおりお前から始末してやるッ!!!」

高橋は怒りの形相で美貴の方へ走り始めた!もちろん奴のスタンドはその肩に乗って
いる!!

「報復ッ!!!!!!!」

シャアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!

『evergreen』が牙を剥いて跳びかかってくる!!

「おらぁッ!!!!!」

バシイイィッ!!!!!

しかし『evergreen』の牙が届く前に美貴はブギートレインを出現させ、その顔面に鋭い
ジャブを食らわせた!


274 :610:2006/12/25(月) 01:34:48.83 0

「べぶッ!!!?」

高橋の顔面が後ろに弾ける!

「な…今のはッ!?見えなかったッ…!!ハッ!!?」

高橋が美貴のほうを見て驚いている。ふふん!やっぱりそうだ!

「なんだそのスタンドはッ!!?前に見たときと違うぞッ!!?」
「お前は初めて見るんだよなァ…!よぉ〜く見なッ!!これが美貴の『ブギートレイン03』
の本当の姿だぜッ!!!」


840 :610:2007/01/07(日) 03:37:54.28 0
銀色の永遠 〜藤本美貴は真心を伝えたい〜E

「本当の姿ッ…!?」

白銀に輝く美貴のスタンド、『ブギートレイン03』!
高橋瞳はその姿を見て明らかに動揺してる。
そう、奴がこの姿を見るのは初めてなのだ!
前に奴と戦った時は、美貴のブギトレは岸辺露伴によってボロボロにされていたから…

「前にお前が見たブギトレは本当の姿じゃあないんだよ!訳あってボロボロにされてた
んだ。他のスタンド使いにな!」

「なんだって…!みっともないデザインのスタンドだと思ったら…そういう事だった
のかッ…!!」
「どうする?今の美貴は絶好調ってヤツよ!それでもかかってくる?」
「うるさいッ!!お前なんかよりボクの方が上だァ―――――――ッ!!!!」

シュバアッ!!!

高橋は再び『evergreen』をけしかけて来るッ!

「遅えッ!!!」

ドッゴオオッ!!!!!

美貴は飛び掛ってくる『evergreen』の下に素早くブギトレを潜り込ませると、
そのガラ空きの腹に拳を突き上げた!!


842 :610:2007/01/07(日) 03:40:30.34 0

「ぐええええええッ!!!!??」

高橋は腹を押さえて地面をのたうち回る。

「逆恨みで襲ってきた事は許してやるよ。もう帰りな!
まだ諦めないってんなら、こっちも降りかかる火の粉は払わせてもらうぜッ!!」
「うぐぐッ…屈辱ッ…!!!藤本美貴…!!
なんでお前がボクを見下ろしているッ…!?諦めるもんかッ…!!
ボクはお前を超えるッ!!ボクが上!!お前が下だァ―――――――ッ!!!!」

ブッシュウウウウウウウウウウッ!!!!!

「『evergreen』<グレイプ・ニール>ッ!!!」

クモが糸を吐き出してくるッ!!!
しかし前に一度見た技ッ!!今のブギトレに見切れない攻撃じゃあないぜッ!!

「ブギートレインッ!!!」

バキイッ!!!

美貴は側に生えていた木から枝を一本折り取ると、それを大きく振りかぶった!

「せぇ〜〜〜〜のッ!!!」

シュバアアアアアアアッ!!!!!!

そしてそれを薙ぎ払うように振るう!
クモが放ってきた糸は全てその枝に絡め取られた!!


843 :610:2007/01/07(日) 03:42:04.84 0

グイイイイッ!!!!!

さらにその枝を思いっきり引っ張ってやる!

「なにいいいいいいッ!!!???」

ドグシャアアアアアアアッ!!!!!

高橋は『evergreen』と共に宙を舞うと、美貴の頭上を通り越して激しく地面に叩き付け
られた!!

「が…はァ…ッ!!!」

これで決着ッ!!…と思った美貴だったけど甘かった!
高橋瞳!!なんて奴だ…!!まだ立ち上がろうとしてるぞ…!!
アイツの美貴を見る目…!まだ死んでねえ!!

「フゥーッ!フゥーッ!まだだッ…!!ボクはスーパー女子高生なんだッ…!!!」

高橋は物凄い形相で自分のスタンドに飛び乗る。
そしてそのクモスタンドはピョンピョンと小刻みに跳躍を始めた!

「藤本さーん!!もう決めちゃって下さーいッ!!手加減なんかしなくていいですからー
ッ!!」

傍から見ていた上戸が美貴に叫ぶ。こいつ完全に飽きてきてるな…。


844 :610:2007/01/07(日) 03:44:30.26 0

「そうだな…手加減する余裕があればいいんだけどなッ!!」

高橋瞳…!!コイツの執念は半端じゃあない!!
どうやら美貴も本気で相手をしないとダメみたいだな…!!

「行くぞ藤本美貴ッ!!これで最後だァ―――――――――ッ!!!!」

バシュッ!!!!!!

高橋を乗せた『evergreen』が大きく跳躍したッ!!!

バッ!!バッ!!バッ!!バッ!!

そしてそのまま美貴の周囲の木を次々に飛び移る!
速い!!以前見たときと同じ、かなり俊敏な動きだ!!
待てよ…!!以前と同じ動きということは…まずい!!
確か前もこんな風に飛び回りながら罠をッ…!!!

「今さら気付いてももう遅いッ!!!お前にもう逃げ場は無いーッ!!!」

しまった!!!
いつの間にか美貴を囲うように、周囲の木々に『糸』が張られているッ!!
美貴は『糸の檻』に閉じ込められてしまっていたッ!!!


845 :610:2007/01/07(日) 03:46:12.87 0

「喰らえッ!!!!!」

ブシュウッ!!ブシュウッ!!ブシュウッ!!ブシュウッ!!!

クモが空中でさらに糸を発射する!!美貴の周りを飛び回りながらの4連射だ!!
4方向から糸の塊が向かってくるッ!!
さっきみたいに枝で絡め取ることは出来ない!!一度に絡め取れるのはせいぜい1つか
2つだ!他のに当たっちまう!!かといって横に逃げる事も出来ないッ!!

「上に逃げるしかねえッ!!!」

バシュウッ!!!

美貴はブギトレの力を借りて大きくジャンプした!!

「…かかったね!!身体の自由が利かない空中に逃れるとはッ!!!」

美貴の背後から高橋の声が聞こえた…!!
なんとか後ろを見ようと首をひねると、かろうじて高橋が視界に入る!!
奴はクモの背に乗って木にへばりついているッ!!!

「終わりだ!!!はあ――ッ!!!!」

ダンッ!!!!!!!

『evergreen』が木を蹴って物凄い勢いで突進してくる!!!
美貴の背後からッ…!!!


846 :610:2007/01/07(日) 03:48:13.10 0

「勝ったッ!!!!!撃墜ッ!!!!!!」

ドシュウッ!!!!!!!



「え!?」

高橋が素っ頓狂な声を上げる。
大グモの牙は美貴を捕らえる事は出来なかった。
美貴の身体は地球の重力を無視して空中で横滑りしていたのだ!!!

「な…なんだこの動きはッ!!?足場も無い空中でッ!!?」
「『満月の流法』…!!折った枝の時間を戻した!!この枝は木と繋がったていた時間に
戻る!!」

掴んでいる枝に引っ張られ美貴は空中を移動する!!
そして『糸の檻』から出たところで枝を離し着地した!
高橋も勢い余って糸の檻から出たところに着地しようとしている…!

「空中で体勢が崩れたのは…高橋!!お前の方だったなァ…!!」

ドンッ!!!!!!

美貴は地面を蹴って一気に高橋との間合いを詰める!!
まだ空中にいる高橋はまともに防御体制をとる事も出来ない!!


847 :610:2007/01/07(日) 03:49:15.03 0

「お前の根性には少し感心したぜ…!!じゃあな!ゴールデンゴール決めてッ…!!!」
「しまッ…!!!」
「VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVッ!!!!!!!!」

ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴォ!!!!!!!!!

「がばあああああああああああああああッ!!!!!!!!!!」

メシャアッ!!!!!!

ブギトレのラッシュを浴びた高橋瞳は、吹っ飛んで木に叩きつけられる!!

「梨華ちゃんじゃないけどよォ〜!!何事もポジティブに考えなきゃ駄目だぜ!?
その根性があればきっと立ち直れるさ、お前なら…」

聞こえてるかどうかは分かんないけど…美貴は倒れて動かない高橋瞳に言い放った。


281 :610 :2007/02/03(土) 22:47:17.15 0
銀色の永遠 〜藤本美貴は真心を伝えたい〜F

「あう…ぐぐ…」
高橋が地面に頬を着けながら呻く。
ブギトレのラッシュを喰らっておいて、まったくタフな奴だぜ。
まあこのぶんならこのまま放っておいても大丈夫だろう。

「行くか上戸、とんだハプニングだったな」
「藤本さん手加減したでしょ?こういう懲りない奴は徹底的に痛め付けといた方が
いいよ〜!」
「美貴はお前と違って弱い者イジメは嫌いなんだよ。ほら、なんかの昔話にもあったじゃ
ん!クモを見逃すといいことがあるって」
「『蜘蛛の糸』ですか…そうですね、その話の主人公も乱暴者ですしね。藤本さんにピッタリ!」
「うるせー」
そんなことを言いながら、美貴と上戸は倒れている高橋瞳に背を向ける。
せっかくの休日なのにこれ以上面倒なことに巻き込まれたくない、さっさと帰ろう。

「ま、待てよ…」

背後からあたし達を呼び止める声がした。
やれやれ…本当に執念深い奴だ。この執念を他のことに使えば良いのによ。
美貴は振り返り、立ち上がろうとしている高橋を見る。


282 :610 :2007/02/03(土) 22:50:57.68 0

「高橋瞳ッ!お前は美貴には勝てねーよ。
考えても見ろよ、お前はスタンドがボロボロだったあたしにさえ負けてるんだぞ。
そしてあたしはその時よりもずっと強くなってる。もしあの時、万全な状態だったと
してもそれ以上にな!」
「なるほどね…ボクが暗闇の底でもがいている間、キミはさらに上へ上へと昇ってい
たわけか…」
高橋は悔しさからかダメージからか、ブルブルと肩を震わせる。
「確かにボクはキミには勝てないだろう…。だけど『上』ばかりを見ている者は、どうし
ても足元がおろそかになる…!そう思わないかい?藤本美貴…!」
そう言う高橋の口元がニヤつく。

「あ?何が言いてーんだおま…」
と、美貴が言いかけたときだった。

ザッバアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!

な、なんだッ!!?突然辺りの落ち葉や枝が舞い上がった!!
美貴の周りの地面がせり上がってくる!!?

「危ねえッ!!」
ドカッ!!!
「きゃあ!!?」
美貴はとっさに隣にいた上戸を突き飛ばす!


283 :610 :2007/02/03(土) 22:52:42.99 0

ガササアアアアアアアアアッ!!!!!!!

「こ…これはッ!!!?」

次の瞬間…美貴の身体は宙に浮かんでいた!!

「い…糸…!!」
地面がせり上がったんじゃあない!地面に仕掛けてあった糸が、一気に上に持ち上がった
んだ!網のようになった糸が美貴を包むように身体に纏わりついてくるッ!!
言うなれば地面に敷かれたクモの巣…!美貴はそれに見事に引っかかってしまったのだ!
「くそッ!!いつの間にこんなものをッ…!?」

「いつの間にだって?最初からだッ!!!キミに殴られている間ずっと糸を張り巡らして
いたんだ!!キミは自分の方が強いと思って油断したアッハハハァ――――ッ!!!!」
高橋の不快な高笑いが響く。
ムカついたぞッ!!見てろよッ!この程度の糸、すぐにぶっちぎって…!!

「そしてぇッ!!!」
ブッシュウウウウウウウウウウウウ!!!!!

高橋の大グモがさらに糸を吹き付けてくるッ!!!
「うわああああッ!!!?」
美貴は糸でがんじがらめにされてしまった!!頭だけが糸から出て、枝にぶら下がってい
る状態だ。これじゃあまるでミノ虫じゃねーかッ!!
「ぐぐぐッ…!!!」
ちくしょう!!ぜんぜん身動きがとれねえッ!!ブギトレすらガッチリ捕まえられて動か
せないッ!!!


284 :610 :2007/02/03(土) 22:54:42.16 0

「くくくッ!!いい姿だね藤本美貴ッ!!
腹の底から『ザマミロ&スカッと爽やか』の笑い出てしょうがないよッ!!!!」
「くッ…!!!」
やられた…!!あいつの言うとおり、美貴は余裕ぶっこいていい気になってた…!!
二重に罠を張っていることに全然気付かなかった!!

「さーて…!!これからボクが受けた痛みを、ゆっくりとお返ししてあげるよ…!!
キミを完全にぶちのめして!!ボクはスーパー女子高生として返り咲くんだッ!!」

高橋が目を輝かせながらこっちに向かってくる!!大グモも糸を伝って美貴に近づいてく
る…!!ヤ、ヤバイぞッ!!!

「ちょっと待ちなさいよこのイモ女ッ!!!」

「イ、イモだとッ…!!」

高橋が向けられた言葉に怒りの形相で振り返る。その視線の先には…
上戸ッ…!!

「やっぱりこのクモは踏み潰しておいた方がよかったですね…!藤本さん!
待っててください、すぐ降ろしてあげますから!」

上戸、まさかあたしを助けようと!?
でもお前のスタンドで…!コイツに勝てるのかッ!?


59 :610 :2007/03/04(日) 16:29:09.63 0
銀色の永遠 〜藤本美貴は真心を伝えたい〜G

「踏み潰す…!?いったい誰のことを言ってるのかな上戸彩ァ…!!」

高橋瞳…!!
自分が優位に立ったせいか?コイツ元気を取り戻してやがるッ…!
上戸…!!お前、余裕そうに見えるけど大丈夫なのかッ!?

「アンタに決まってるでしょ、このネクラ女!言っとくけどこんな卑怯な手で藤本さんに
勝ったなんて思わないでよ!藤本さんが手加減してなければ、アンタなんかとっくに再起
不能になってたんだからね!」
上戸が高橋を指差しながら叫ぶ。

「言ってくれるじゃないか…!しかしキミはいつからそんなに甘ちゃんになったんだ?
勝負ってのは『どんな手を使っても勝てばよかろう』だろ!!まさにキミ自身がこの言葉
通りの戦いをしていたじゃないか!?それに一度キミをボコッた藤本美貴をなぜ助ける?
なぜそんなに仲良くしているんだッ!?」

「私はこの人のおかげで目が覚めた。変われた…。それだけよ」

上戸…お前、マジでそう思って…!?美貴はちょっと感動してるぞッ…!!

「ハハハッ!!あの上戸彩が随分腑抜けになったもんだ!!おまけにスタンド能力まで
弱体化してるらしいねぇ〜!残念だよ!ボクはあの冷酷で高慢で強いキミを乗り越えたか
ったのに…!!」


60 :610 :2007/03/04(日) 16:30:07.40 0

シャカシャカシャカ…!!
美貴の側まで来ていた大グモが、木をつたって下に降りていく…!

「これじゃああまりにも簡単に済んじゃいそうじゃあないかッ…!!」

シャアアアアッ…!!

言葉とは裏腹な嬉々とした笑みと共に、高橋の大グモが牙を広げる!
上戸のスタンドは接近戦には向かないはずッ!!あたしとの戦いのときも、上戸は決して
スタンドで格闘しようとはしなかったし、現にあいつのスタンドはスピードもパワーも並
だった!

「そーれ行くぞォッ!!」
バシュッ!!!
大グモが上戸に飛びかかる!!

「プリティ・アイドルッ!!」
ゴッ!!
上戸はスタンドを出現させ、その拳で大グモに殴りかかる!!
しかしッ…!!

バシイッ!!!
その拳は大グモの8本ある足のうちの1本で簡単に振り払われてしまった!!
牙が上戸の顔面にッ…!!


61 :610 :2007/03/04(日) 16:31:49.89 0

ガッシイイイイイイイッ!!!!
いやッ!!上戸は片腕でとっさに大グモの牙をガードしてるッ!だけどその腕に牙がッ…!!
「うああッ!!!」
上戸は腕から血を流しながら吹っ飛んだ!!

「やっぱり『虜』のいないキミなんてこんなもんかぁ〜!!
さっきの攻撃、ものすごくパワーが弱かったぞ…!!バッティングセンターの初心者コー
ス打つよりも簡単に弾き返せた…!やっぱりボクの『evergreen』の方がパワー、スピード
共に上だッ!!!」

「ふん!まだまだこれからだっての!…とりゃあああッ!!!!」
ババババババッ!!!!!
上戸がラッシュを仕掛ける!!
だけど…そのパンチのスピード!お世辞にも速いとは言えないッ…!!

ヒュンヒュンヒュンヒュンッ!!!

案の定、上戸のスタンドのパンチは、大グモはおろか高橋本体にすら当たらないッ…!
「遅い遅い遅いッ!!鈍重ッ!!!」
メシャアアアッ!!!!!

大グモの足が鞭のようにしなり、上戸の顔面を叩く!!
「ぶはッ!!」
ズザザァッ…!!!
吹っ飛ばされた上戸はなんとか片膝をついて体勢を立て直す。


62 :610 :2007/03/04(日) 16:33:10.36 0

だめだッ…!!やっぱりアイツじゃ高橋瞳には勝てないッ!!
美貴がなんとかしないとッ…!!!
「うおおおおおおおおおッ…!!!!!!」
あたしはがんじがらめにされた身体とブギトレに力を込める!!

「何やってるんだい藤本美貴ッ!?無理無理無駄ッ!!!
ボクの<グレイプ・ニール>ッ!!鋭利な刃物で『切り裂く』のならともかく、『力で引き
ちぎる』なんていくらキミでも絶対不可能ッ!!!!」

「ちっくしょおおおおおおおッ…!!!!!」
くっそぉッ!!!奴の言う通り全然切れねえッ…!!!
このままだとマジでヤバイッ…!!!

「そして上戸彩ッ!!!キミがボクに勝つことも絶対不可能ッ!!!」
高橋が得意げな顔で上戸を指差す。
「今のうちに土下座でもしたらどうだい?そうすればあんまり酷いことはしないかもよ?
ボクは優しいからねェ!!アハハハッ!!!」

「土下座すんのは…てめーの方だッ!!!」
上戸が再び飛び掛っていく!!この口調…!こいつブチ切れたかッ!?


63 :610 :2007/03/04(日) 16:35:37.32 0

「うらぁッ!!!!」
「遅い遅いィッ!!!!」
『プリティ・アイドル』の拳と『evergreen』の足が交差する!!

メシャアアアッ!!!!!
ポコン!

またしても上戸に大グモの足が直撃するッ!!
いや!上戸の拳も高橋の顔面を捉えてはいる!!けど…
「ん〜!?なんだい!?このハエがとまったようなパンチはァ〜!?」

あまりにも力が…無さ過ぎるッ!!!

「ま・さ・に!!貧弱ゥッ!!!!!」
バッシイイイイイイッ!!!!!
大グモの足が再び上戸を薙ぎ払って吹っ飛ばす!!
「ぐはッ…!!」

「上戸ッ!!もういい逃げろッ!!美貴は自分で何とかするッ!!!」
これ以上見てられなくなった美貴は思わず叫ぶ。

「逃げる?私が逃げたら藤本さんはどうなるんです?その糸は切れない。
コイツに再起不能にされてもいいって言うんですか?」
「い、いや…そうだ!お前誰か助けを呼ぶんだ!演劇部員の誰かは学校にいるかも…!!」
「今から助けを呼びに行っても間に合いませんよ…。私に気を使わなくても大丈夫です。
このクソ女は…私がやっつけますからッ!!!」

ダッ!!!!



64 :610 :2007/03/04(日) 16:36:49.61 0

「なッ…!!」
何やってんだ上戸!?お前と高橋瞳のスタンドの力の差は明らか!!なのにまた真っ直ぐ
突っ込んでいくなんて!!

「だああああッ!!!!!」

ポコポコポコポコポコポコッ!!!

上戸のラッシュが高橋瞳に炸裂した…!!けど…!!

「ハァ〜…。正直ガッカリだよ。ボクはキミを恨んではいたけど、その強さにちょっとは
憧れてもいたのになぁ」

全然効いてないッ…!!避けるのさえ面倒くさがってるッ…!!

バチイイイイイイイッ!!!!
また上戸が吹っ飛ばされ…!!

「クククッもう終わりにしてあげるよッ!!!」
高橋が陶酔しきった笑みを浮かべ、倒れた上戸に襲い掛かる!!!

「今こそ復讐の時ィッ!!!その顔を!!この牙で噛み砕いてェ―――ッ!!!!!」

シャアアアアアアアアアアッ!!!!!!

もうダメだッ!!!!上戸の顔に大グモの牙がッ…!!!!!


65 :610 :2007/03/04(日) 16:38:02.68 0

「……!!」

辺りを静寂が包む…。
終わった…!!美貴は思わずつぶってしまった目を恐る恐る開けてみる…。

「…え!?」
これは…どういうことだ!?
仰向けに倒れた上戸の顔に、大グモの牙が食い込む寸前…!
美貴はそこで目をつぶっちまった。そして今広がっている光景は…
目をつぶった時と全く同じだったのだ!!
ビデオの一時停止を押したように、2人ともピタッと動きが止まっている!?

「な…何だ!?これはッ…!!身体がッ…!?」
不自然な格好で硬直したまま、高橋が呟く。
「ふ〜。やれやれ」
上戸が何事も無かったかの様に起き上がり、パンパンと制服の汚れをはたく。
な…何が起こってるんだ!?


66 :610 :2007/03/04(日) 16:39:22.15 0

「身体が動かない?動かしてあげよっか?ほれ!」

グイン!

「うっ!!?」
上戸のスタンドがチョイと指を動かすと、高橋がいきなり『気をつけ』の姿勢をとる。
「さっき土下座しろとか言ってたよねぇ…!!」
クイッ!
ズザアッ!!!
「ううッ!!?」
またしても上戸のスタンドの指の動きと共に、高橋が土下座の姿勢をとる!

「やっぱり土下座すんのはお前の方だったなァ〜〜ッ!!!」
「ば、馬鹿なッ…!!何だこれはァ〜〜〜〜ッ!!?」

「何なんだよこれはァッ?上戸、お前いったい何をッ!?」
美貴は上戸に問いかける。
「藤本さんよぉく見てください。私のプリティ・アイドルの指先を…!
そこから見えるかな?」

スタンドの指先…!?あッ!!これはッ…!!?


67 :610 :2007/03/04(日) 16:41:11.80 0

上戸のスタンドの指先、その1本1本から銀色に煌くワイヤーの様な物が出ている!
あまりに細くて光の加減でやっと見える程度だけど…!
そしてその10本のワイヤーは高橋の身体に繋がっているように見える!

「見えましたか藤本さん?言いましたよね、私、能力が変わって『虜』に出来るのは一度
に1人だけになっちゃったって…!!『能力が変わって』ここがポイントなんだな〜!!」

「な…!!」
上戸の能力は「自分自身を『かわいい』と賛美した者の心を支配する」ことだったはず!
その能力自体が変わっちまったってことか!?

「プリティ・アイドル『マリオネット・ラヴァーズ(操り人形の恋人)』!!!!
お前の全神経は支配したッ!!!もう私の完全なる『虜』ッ…!!!」

グシャアアアッ!!!!!

上戸は、残虐な笑みと伴に高橋の頭を踏みつけた!!


251 :610 :2007/03/26(月) 22:23:05.61 0
銀色の永遠 〜藤本美貴は真心を伝えたい〜H

「おらおらおら!!どうなのッ!?頭を踏まれてるのに全く身動きが取れない気分は!?
自分の身体を他人に支配されてる感想はッ!?何とか言えよッ!!」
グリグリグリグリィ!!!!
上戸が高橋の顔を容赦なく地面にめり込ませながら叫ぶ。
当然この状態で高橋が何かしゃべれるはずも無い…!
おいおい、あのままじゃ息が出来なくて死んじまうぞ!

「…ふん!」
「がっはあァァッ!!!はあッ…!!」
またしても上戸のスタンドがクイッと指を動かすと、高橋の顔がガバッと上がる。
高橋の身体は、完全に上戸の思い通りに操られてるみたいだ。

「し、神経は支配しただとッ…!?銀色の糸がボクの身体の中にッ…!!」
「そうそう。文字通りアンタは私の『操り人形』ってワケ!」
「バカなッ!!上戸彩、キミの能力はキーワードによって心を操る能力だったはずッ!!」
「言ったでしょ?私は変わったって。私はもう人の心の支配なんて望まない…。
そう思ったら今までの能力は消えちゃってね、代わりに心じゃなく身体を支配する能力
を手に入れちゃった。スケールは小さくなったけどなかなか素敵な能力でしょ!?」


252 :610 :2007/03/26(月) 22:24:31.62 0

やっぱり上戸の能力は前とは変わっちまったみたいだ。
スタンド能力が変わるコトってあるのか?待てよ…!スタンドの力は精神の力…!
やっぱり心境の変化が原因なのか?
まあ、そのおかげで高橋をハメることが出来たからいいんだけど…。

「さっきはよくも私の顔を散々ぶってくれたね〜!さぁ…お仕置きの時間だよベイビー!!」
「ちょ…ま…!!!」

高橋の顔が恐怖に引きつる。上戸…こういうトコは変わってねーのな。

「確か前は生爪引っぺがしてやったよねぇ…!じゃあ今度は…!人差し指と中指を!!」

ズボォッ!!!

「こいつの目の中に!突っ込んで…!!引っ張り上げるッ!!」
グイイイイイイイッ!!!!
「ギニャ――――――――――――ッ!!!!!!」

「うわ…!」
ひで〜!上戸は膝立ちになっている高橋の両目に指を突っ込み、上まぶたに引っ掛けて
上に引き上げているッ!

「このまままぶた引っぺがしてサカナみたいにしてやろうかぁッ!!!」
「や、やめええええ…!!!!」

「おいおいッ!!!もうやめろ!!!そいつはもうボロボロだ!!
それより早く美貴を自由にさせろよッ!!」
美貴は上戸に叫ぶ。切れたアイツはホントに何するかわかんねーからな!


254 :610 :2007/03/26(月) 22:26:31.32 0

「おっと、そうでしたね!夢中になって忘れてました!でも藤本さんも甘いなぁ…!
オイッ!さっさと藤本さんの糸を解きなッ!!」
「うぐぐぐ…!!」
「さっさとしろよッ!!」
「ぎぎぎ…!!」

…?高橋瞳、何を我慢してるんだ?何故早くあたしの糸を解かない?
もうお前に勝ち目は無いんだぞ!!
「ん〜!?この期に及んでまだ抵抗する気?本当に引っぺがすぞッ!!」

ゴロゴロゴロ…

「…!?」
その時ふいに美貴の耳は妙な音を捉えた。
何だ?何かが転がってる…?

ゴロゴロゴロ…

その音はどんどん大きくなってくる。
必死に音の出所を探してみると…美貴は実に奇妙な光景を見た!!
上戸の背後だッ!!
上戸は山の頂上に対面して立っている。つまり上り坂にいるということ。
その背後から…ゴロゴロといくつもの岩が転がって迫って来ているのだ!!
何だこれはァッ!?1、2、3…5つもの人の頭ほどの大きさの岩が、斜面をスゴい
スピードで跳ねながら登ってくるッ!?


255 :610 :2007/03/26(月) 22:28:53.53 0

「上戸ッ!!!後ろだァッ!!!」
「え!?」

ゴッ!!!!!

上戸が振り返ったときには、もう岩は眼前に迫っていた!!
「なッ!!?プリティ・アイドルッ!!!」
ゴッ!!ドゴドゴドゴ!!!メシャアッ!!!
「うぐう!!?」

なんとかスタンドでガードするけど、あいつのは元々非力なスタンド!
弾ききれなかった岩が肩や脚にッ!!
ドッシャアアアアア!!!!
吹っ飛ばされた上戸は、高橋を飛び越して地面に倒れこむ!!

「うぐぐッ…!!」
あ…高橋が立ち上がりやがった!!どうやら今ので上戸は能力を解除しちまったらしいな…!
しかし何なんだ?岩がまるで生き物のように斜面を登ってくるなんて…!!

「ハアー!!ハアー!!待ってたよ…相棒…!!」

高橋が岩の来た方向を見ながら呟く。


256 :610 :2007/03/26(月) 22:30:23.94 0

…相棒?相棒って誰だ?誰か仲間が来たってのか!?
美貴は岩が登ってきた方向に目を凝らす。
…登ってくる!!誰かがこっちに向かってきやがる!!

「遅れてごめんッ…姉さん…!!」

そいつは高橋と同じようにボロボロの制服を着ていて…そして全ての希望を失くしたよ
うな暗い目をしている…!!
マジかよ…!!美貴はコイツにも会った事がある!!もしかしてアイツじゃあないのかッ…!?