92 :610:2006/01/02(月) 03:25:06.13 0
銀色の永遠 〜美容師は恋をする〜@
「しまった!寝坊した!」
枕元の目覚まし時計を見て美貴は慌てる
10時過ぎてるッ!あ〜もう!また無意識にベル止めちゃってたよ…
今日は土曜日、学校はもちろん休みだ
でも今日はもうちょっと早く起きなきゃいけなかったんだ!
この前学校帰りにレンタルビデオ屋で借りた『霊幻道士』(キョンシー最高!)
今日の朝10時半までに返しに行かなきゃなんないからだ
延滞料金とられるのは絶対イヤだし…めんどくさいけど急いで行かなきゃ!
美貴はベッドから飛び起きると身支度も程ほどにチャリに跨った
「飛ばすぜッ!うおっしゃああああッ!!」
・・・
「ふうっ…」
なんとか返却を終えた美貴はゆっくりとチャリを漕ぐ
よかったギリギリ間に合った!
でも寝起きに激しい運動はキツイな、頭がクラクラする…
無駄な体力使っちまったぜ
93 :610:2006/01/02(月) 03:27:54.98 0
「あれ!?」
そのとき街中で知った顔の二人組を見つけた
あれは亀井と麻琴じゃねーか?でもなんかいつもと雰囲気が違うような…!?
「あ!藤本さん」
「お〜うミキティ!」
二人が気付いて近づいてきた
「よォ!何やってんだよオメーら!?」
近づいてみて分かったぞ、雰囲気違うと感じた理由が…こいつら髪切りやがったな
「美容室に行ってきたんですよ、最近駅近くにオープンしたばっかりの」
「へーそんなの出来てたんだ、どこに?」
「『シンデレラ』っていうエステサロンがあった所だよォ!急に潰れちゃった店!
ドゥ・マゴのすぐ近くにあったじゃんかァ!」
「ああ!そういえばあったな、店主が行方不明になっちゃったんだっけ?」
「そうそう、しばらく空き家になってたけどそこに新しく出来たんですよ」
「へ〜…」
「それより見てくれよミキティ!あたしらイケてると思わないかァイ!?」
「前は東京で働いてたっていうカリスマ美容師に切ってもらったんですよ〜!」
94 :610:2006/01/02(月) 03:29:44.92 0
そう言って2人は頭を近づけてくる、う、ウゼー…
でもよく見てみると確かに変わったな…!
2人とも髪型自体は以前とあんまり変わってないんだけど、なんか洗練されたっていうか
一気に垢抜けた感じだ!都会のオーラが出てるッ!
麻琴なんかメッシュまで入れやがって…!
「うんまあ確かに良くなったな…美貴も行こうかな」
「そうだよォ!ミキティは行った方がいいよォ!内面が酷い分せめて外見くらい
気を使わないと…」
グシャ!
「麻琴いま何か言ったか?」
「NOォォォ――――!!せっかくセットしてもらった髪を掴むなーッ!!」
「でも確かに藤本さん美人だからちょっといじればすっごく変わると思うな〜ッ!
今だって髪ボサボサじゃないですか!本当もったいない…」
「亀井ちゃ〜ん!さすが分かってるじゃん!そうだよね、よし!行って来るぜ!」
あ、でもこの格好じゃヤベーな、なんかオシャレっぽい所みたいだし
流石にジャージじゃ行けないよね…髪も多少は整えたいな
一回家に戻って着替えてこよっと!
95 :610:2006/01/02(月) 03:32:37.12 0
「え〜と…サロン『Revolution(レボリューション)』ここだな!」
身支度を終えた美貴は教えてもらった店の前まで来た
思ったとおりオシャレな所だな
店のデザインは白でまとめられており、通りに面している壁はガラス張りになっている
お客さんは外の通りから殆ど丸見えだ、あんまり慣れてないなこういうとこ
外から見えるお客さんは2人くらい、今の時間はあんまり混んでないみたいだ
「いらっしゃいませ〜!」
店内に入ると店員のお姉さんが笑顔で挨拶してくる
しかしこういうとこの店員ってみんなオシャレだよな
「お客様、当店は初めてですか?」
「はい、初めてなんですけど…指名って出来ますか?」
「はい、出来ますよ」
「西川さんって方をお願いしたいんですけど…」
あたしは亀井に教えてもらった美容師の名前を告げた
「はい、わかりました、すぐお呼びしますのでそちらの席で少々お待ち下さい」
136 :610:2006/01/03(火) 01:11:50.33 0
銀色の永遠 〜美容師は恋をする〜A
・・・
・・・
「藤本さん、こちらへどうぞ〜!」
案内された席で雑誌を読んでいるとすぐに美貴の名前が呼ばれた
「初めまして〜、西川です〜」
美貴の目の前には茶髪の兄ちゃんが現れた
歳は20代半ばだろうか?髪はボブカットっぽくて顔立ちも中性的な感じだ
いかにも美容師って感じだな…服装が素肌に派手なジャケットってのは
ちょっとどうかと思うけど…
「こちらへどうぞ〜」
美貴は鏡の前の席へと案内される
立ってみて気が付いたけどこの人背低いな、美貴と同じくらいだ
しかも結構ゴツいブーツ履いてるじゃん
137 :610:2006/01/03(火) 01:13:25.63 0
「もしかして君もぶどうヶ丘高校の生徒さん?」
席に座った美貴に西川さんが鏡越しに話しかける
「あ、そうです!さっきここに来てた友達に教えてもらって来たんです」
「ああ!来てたよ、小川さんと亀井さんだったかな?」
「そうそう、その二人です!アイツらうるさくありませんでした〜?」
「ハハハ!確かに元気良かったな〜!しかしみんな可愛いね、今の女子高生は
みんなこんな感じなのかな〜」
「え〜そうですか〜?」
さすがカリスマ美容師、話も上手いな!お世辞だとは思うけど全然悪い気はしない
「でも今日はもっと綺麗になって帰ってもらわなきゃね!どんな感じにする?」
「え〜と…そうッスね〜」
138 :610:2006/01/03(火) 01:16:22.08 0
チョキ…チョキ…
「アハハハ…なんでやねん!」
「ですよね〜!麻琴ってホント馬鹿で…」
西川さんのお喋りのおかげでいつの間にか結構時間経ってる
それでいて美貴の髪を切る手も流れるような動きだ
「ところで西川さんって時々関西弁出ますけど、関西出身なんですか?」
「ああ、僕はS県の生まれなんだ」
「S県…良く知らないけど確かでっかい湖がありますよね!?」
「そうそう、県の面積ほとんど湖!どうせ湖しか有名なモンがありませんよ!」
「あはは…!でも何で杜王町に来たんですか?最近まで東京で働いてたって聞きましたけど?」
「僕、生まれはS県だけど子供の頃に杜王町に引っ越して来たんだ。それで上京するまで
ずっとこの町で暮らしてきた。だからここは僕の第二の故郷だと思ってる。大好きなこの
町で一度は働きたいと思ってたからね〜」
「へ〜そうなんだ…」
「さあカットは大体終了だよミキティ!シャンプー台へどうぞ」
シャアアア・・・
139 :610:2006/01/03(火) 01:17:59.12 0
シャンプーを終えた美貴の髪を西川さんが手ぐしで整える
ドライヤーで乾かしてないけどいいのかな?あたしの頭相当濡れてるぞ
スッ…スッ…
美貴の髪がみるみるスタイリングされていく
西川さんが軽く指でつまんでるだけなのに、その部分の髪はパーマでもかけたみたいに
クセが付いてしっかりと固定されていく、しかもどういう訳か完璧に乾いてるみたいだ
「あとは軽くスプレーして…と…はい完成!どう!?」
パアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァッ!!!!
す、すごい!自分で言うのもなんだけど光り輝いてねーか!?あたし!
美貴の伸びかけの髪がここまで変わるなんて!
緩くかかったウエーブといい全体のシルエットといい完璧だ!エレガント!
「大満足ですよォ!いや〜やっぱりカリスマは違いますね!」
「それはよかった、そう言って貰えると嬉しいよ」
「ありがとうございました〜!」
美貴は気分良く『Rvolution』 を後にした
いい店教えてもらったな!しょうがない、今度あの二人に軽くお礼言っとくか
でも人気出そうだよなこの店…
140 :610:2006/01/03(火) 01:22:20.35 0
「お疲れ様です西川さん!いや〜流石ですね!見とれちゃいましたよ」
『Revolution』店内
まだ新人だろうか?美容師の1人がここの看板美容師に話しかける
「・・・。」
しかし話しかけられた西川は何も答えない
虚ろな表情でお客の女子高生が出て行った店のドアを見つめている
「西川さん!?」
「え!?ああ!そう!?」
「ところで何で西川さんってドライヤー使わなくても大丈夫なんですか?
それにあのスタイリングテクニック!器具も何も使わずにあんなクセ付けが
出来るなんて!俺にも教えて下さいよ!」
141 :610:2006/01/03(火) 01:23:18.01 0
「...。」
「ちょっと!西川さん!?」
「あ!?ああ今度教えるよ、俺ちょっと休憩とるから後はよろしく!」
そう言うと西川は店の奥へと入って行ってしまった
「どうしたんだろあの人?ボーっとしちゃって…」
「西川君…恋しちゃったわね」
受付の女性美容師が口を開く
184 :610:2006/01/04(水) 00:08:53.41 0
「こ、恋?」
「さっきの女の子に惚れちゃったのよ!あの人恋するといっつもあんな感じになるから」
「マジっすか!?でも西川さんなら大抵の女のコはゲット出来るだろうな〜」
「いやいや!それが全然ダメなのよ、あの人他人と喋るの苦手だから」
「え?どういうことっすか?いつもお客さんとメチャメチャ喋ってるじゃないですか」
「それは店の中だけ!あの人プライベートじゃすっごいシャイで無口よ
それに休日はほとんど部屋にこもってるらしいわよ」
「へぇ〜意外ですねそれは…」
店の奥の休憩室…
「藤本…美貴ちゃんかぁ…」
カリスマ美容師、西川貴教はひとり溜息をつくのだった
404 :610:2006/01/08(日) 21:32:17.01 0
銀色の永遠 〜美容師は恋をする〜B
「はぁ・・・」
美容師、西川は溜息をつきながら冬の街中を歩いていた
時刻はまだ夕方の4時、彼は『ある出来事』のせいで仕事が手に付かなくなり
店を早退したのだった。
今日接客した女性客の事が頭から離れないのである。
(まさか10歳近くも年下…しかも女子高生に一目惚れするなんて…)
彼は思った
あの子が次に来るのは一体いつだろう?美容室なんてしょっちゅう来る所じゃない
次に来るのは早くても一ヶ月後ってとこだろうな…
やっぱ店に来てくれたときに出来るだけ喋って仲良くなるしかないよな…
う〜ん…いっそ電話してみるか!
電話番号は分かるんだ、あの子うちの店の会員カードを作ったからな…!
405 :610:2006/01/08(日) 21:33:43.17 0
ぼんやりとそんな事を考えた西川だったがハッと我に返る
な、何を考えてるんだ俺は…仕事上得た個人情報をプライベートで利用しようだなんて…
それに向こうだって一回髪を切ってもらっただけの美容師から電話がかかってきたら
不審に思うに決まってる!
い、いや…もっと根本的な問題があった…
そもそも俺にはイキナリ電話なんてかける勇気は無いッ!!!
そう、彼には他人と、特に女性と上手く話せないというコンプレックスがあったのだ。
ましてや自分が好意を抱いてる女性となれば目を合わす事すら難しい。
ただ仕事中はそんな事はない、お客さんとの会話も仕事の内だと思っているからだ。
彼は美容師という仕事に誇りを持っている。仕事中の彼はまさにプロなのだ。
いつから自分はこんな性格になってしまったんだろう?
西川貴教は考える
(あのときだ、前付き合ってたあの子…ユミちゃんに振られた時からだ…それ以来
ショックで女の子と話せなくなっちまったんだ…)
406 :610:2006/01/08(日) 21:34:50.48 0
そんなことを考えながら自宅に向かっていると
通りの向こうにコンビニ『オーソン』が見えた
「コンビニで飯でも買って行くか…男の1人暮らしは寂しいぜ」
西川は道路を横切ろうと足を踏み出した
(ああッ!!!!!)
西川の足が止まる
も、もしかしてオーソンで立ち読みしてるあの女のコ…!!
藤本美貴ちゃんじゃあないかッ!!?
間違いない!昼間と服装も一緒だ!!ど、どうするッ…!?
心の準備が出来てないけどこれはチャンスだぞッ…!!!
407 :610:2006/01/08(日) 21:36:54.05 0
今日はインドア派の美貴にしては良く動いた日だったなぁ
美容室に行った後、亀井が
「せっかく3人とも可愛くなったんだからプリクラでもとりましょうよ〜!」
なんて電話かけてきて…結局小川と3人でS市内をフラフラして…
あの二人はまだ遊んでんのかな?あたしは一足先に帰っちゃったけど
アイツらのテンションには長時間付いていけねーっつーの
「う〜寒い!早く家に帰ってテレビ見よ!」
美貴は冬の街を足早に通り抜けた
「やれやれ…」
帰り道、途中にある公園の前に差し掛かかったとき、美貴は思わずつぶやく
早く帰りたかったけどどうもそうは行かないみたいだ
誰かが後を付けて来ている…!!
ちょうど『オーソン』を出た時くらいから気配を感じてたんだ
しかもこの状況…あの時とまったく同じ状況だ!大塚愛とかいう泥棒女に襲われた時と…
あの時襲われたのもこの公園の前だった
今度は一体何だってんだ?あ〜面倒くさい面倒くさい面倒くさい…
408 :610:2006/01/08(日) 21:40:34.62 0
「おい!誰だか知らないけど付けて来てんのは分かってんだ!出て来なッ!!」
美貴は意を決して後ろを振り返り叫んだ
「…いやいや!すまないね!後を付けるつもりは無かったんだ!」
曲がり角の壁から人影が現れる
…オッサンだ
スーツを着てメガネをかけて口髭を生やした…フツーの中年のオッサンが現れた
「あたしに何か用ですか?」
美貴はそのオッサンに尋ねる
「いや…君があんまり可愛いもんだからさァ…つい見とれちゃってね!
今からおじさんと遊ばないかい?…お金なら…あるよ…!」
オッサンが小声で囁いた
なるほど、コイツはそーゆー奴か!うら若き乙女のカラダを金で買おうという…
最低のエロジジイ!!
「ふざけんなよオッサン!誰があんたなんかの相手するかよ!そこの『木』にでも
話しかけてろ!」
美貴はそう言い放つとオッサンに背を向けた
ガシイッ!!
美貴の腕が掴まれる!
409 :610:2006/01/08(日) 21:42:17.83 0
「まあそう言わずにちょっとだけでも付き合ってよ…!君の事気に入っちゃっ
たんだよ」
「いくら欲しいんだい?私はこう見えても会社の社長をやってるんだ」
こ…こいつッ…!!!
ボグッ!!
「おぐッッ!!!?」
美貴はオヤジの腹に肘鉄を食らわしてやった
「おいこのエロオヤジ!金なんか関係ねーんだよ!あんまり女をナメてんじゃねー
ぞ!!」
「ぐ…ふふ…元気のいい子だ、ますます気に入ったよ」
オヤジは自分の腹を押さえながらもニヤついている
やべぇ…!こいつマジで変質者だ
「え〜と…名前は野田義治…住所は…と」
美貴がそうつぶやくとこの変態オヤジの顔色が変わった
「なッ!!それは私の免許証…!いつの間にッ…!!?」
「あんたがあたしにやった事は間違いなく犯罪だからな!あんたのことは警察と
学校に報告させてもらうよ」
410 :610:2006/01/08(日) 21:43:45.86 0
「…。」
ショックからかオヤジは黙りこくってしまった
ざまーみろ!社会の敵め!
「…バカな女だ…!」
オヤジがボソリとつぶやく
「大人しく私の言いなりになっていれば良かったのに…
余計な事を!『口封じ』しなくちゃあならなくなったじゃないか…!!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ・・・・
ズギュウウウウウウウウン!!!!!
「なッ!?なんだッ!!?」
突然オヤジの足元に何かが集まり始める!
これは…『土』だ!!周囲の土が集まって来ているんだ!
そしてその土はオヤジの足を上っていく!
そしてその体に纏わりつきアメフトのプロテクターのような形状に変化した!
…こいつスタンド使いだッ!!!
411 :610:2006/01/08(日) 21:45:46.40 0
ヒュンッ…!!
ガッシイイッ!!!
オヤジはあっという間に接近し美貴の首根っこを掴む!
は…速いッ…!!
「考え直すなら今だよ、私がチョイと力を入れれば君の首は小枝のようにポキリだ…!」
「考え直すのはテメーだ…!後悔する事になるぜ!あたしに手を出した事を…!」
445 :610:2006/01/09(月) 22:10:21.43 0
銀色の永遠 〜美容師は恋をする〜C
「おらあァッ!!!」
ドゴドゴオォッ!!!
ブギートレイン03の拳が『土』を纏ったオヤジのボディに炸裂する!
「ぬおおッ!!??」
もろに食らったオヤジは後方に弾かれる
ズザザザッ!!
しかしオヤジは踏み止まった
「何だそれは…!?お前も私と同じような能力を持っているのか…!!」
オヤジは何事も無かったようにブギトレを見つめながら言う
こいつ…渾身のパンチをブチ込んでやったのに!まるで効いてない…!
「まあいい…どちらにせよその程度の攻撃は私には通じないよ」
「うるせえッ!!そーゆーことはコレを食らってから言いやがれッ!!!」
美貴は拳に渾身の力を込めた!
「ゴールデンゴール決めてッ…」
「VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVィッ!!!!!!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッ!!!!!!!
オヤジの全身にB・トレインの拳が降り注ぐ!
「なッ!!?」
美貴は愕然とした
オヤジは平然とその場に立っている!相変わらずイヤらしい笑みを浮かべたまま…
それに殴った拳の感触が何かおかしいぞ!?
446 :610:2006/01/09(月) 22:11:53.92 0
「だから効かないって言っただろう?」
ブンッ!!
土を纏った巨大な拳が美貴を襲う!
ドゴオオオォッ!!!!
「ぐうッ!!!?」
美貴はとっさにB・トレインでガードするが公園の敷地内まで吹っ飛ばされてしまった!
な…なんて威力!こいつ美貴のブギトレより確実にパワーは上だ!!!
「まったく…こんな面倒なことになるんだったら素直に自分の好みどおり胸がでかい女
を選べば良かったよ…!胸の小さい女にロクなのはいねえな…」
そう言いながら奴が公園に入ってくる
何言ってやがんだコイツ!!胸は関係ねーだろうがよッ!!!
「てめーはこのあたしに最も言っちゃいけない事を言った!!!もう許さねーか
らなッ!!!」
「ほほう!どう許さないのか教えてもらおうか?」
オヤジはゆっくりと近づいてくる
よく見るとこいつが身に纏った土の鎧にはブギトレの拳の跡がくっきりと残っている
そうか!この分厚い土の鎧がクッションになって衝撃を吸収してるんだ!
しかしその拳の跡も一瞬にして元通りに消えてしまった
「今教えてやるよッ!!おらァッ!!」
ズドオッ!!!!
あたしは再びオヤジのボディにB・トレインの拳を打ち込んだ
447 :610:2006/01/09(月) 22:14:05.77 0
「何度やっても無駄だよ!!」
「それはどうかな?<満月の流法>ッ!!!」
ズギュウウウウン!!
オヤジが纏った『土』の時間が戻る!
「何ィィッ!!??」
鎧のようにオヤジのボディに固定されていた土がドサリと落ち、胸から腹にかけてが
ガラ空きになった!!
「くらえッ!!!」
美貴はすかさず第二撃を打ち込む!
ドグシャアアアアアッ!!!!!
オヤジはB・トレインの拳がみぞおちに突き刺さり悶絶しながら崩れ落ちる…
はずだった!!しかし…!!
「なッ!?これはッ!?」
あたしは相変わらず土の鎧を殴っていた!
「こいつ鎧が元通りになってる!?時間を戻して解除させたはずなのにッ!?」
「危ない危ない…!なるほど…それがお前の能力か!
だが無駄だよ!わたしの能力『ロック・ヘッド』!!発動中は私の意志とは関係なく
破壊された部分を自動的に修復する!」
なんだって!?だからってブギトレのパンチより速いスピードで修復するなんてッ!!
ヤッベ…!!これじゃあ美貴の攻撃が通じない!『土を身に纏う』なんて単純な能力が
こんなに厄介だとは!
448 :610:2006/01/09(月) 22:15:10.41 0
「諦めなさい…!!ふふふ…!!」
奴が迫ってくる…!ど、どうするッ!!?
「とお―――――――――――――――うッッ!!!!!!!!」
ドッガアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!
「…えッ!!?」
なんだッ!?突然目の前のオヤジが吹っ飛んでいく!!
そして美貴の目の前に空中からスタリと誰かが降り立つ!
この人がオヤジを蹴り飛ばしたんだ!誰だ?なんか見覚えある服装だけど…
「大丈夫かい?美貴ちゃん!」
こちらを振り向いたその顔はッ…!!
「に、西川さん!?」
この人は『Revolution』の美容師西川さんだ!
何でこの人がここに居るんだ?
「たまたま公園の近くを通りかかったら君が変な格好したオヤジに殴り飛ばされてるじゃ
ないか!びっくりしたよ」(本当は声をかけようとして後を追いかけてきたんだけど…
449 :610:2006/01/09(月) 22:16:50.59 0
「あ、ありがとうございます!助かりました!」
「ケガは無い?」
「大丈夫です!それよりあの…寒くないんですか?」
このひと美容室にいたときと同じ服装じゃん…!真冬だぞ!?
素肌にジャケットって…いろんな意味でどういう神経してんだ?
「く…そ!何者だ…?」
吹っ飛ばされたオヤジが立ち上がる!やっぱりダメージは無いみたいだ
「何なんだあのオッサン?美貴ちゃん、ここは僕に任せて早く逃げて!」
「いや!でも西川さんアイツはッ…!!」
ダメだ!あのオヤジはスタンド使いなんだ!普通の人間が勝てる訳が無いッ!!
どうしよう?西川さんが来た事で逆に厄介な事になったぞ…!!
「大丈夫、僕も能力を持ってる…!」
「えっ!?」
今なんて言った?…能力!?
まさか西川さん…!!この人もスタンド使い!?
633 :610:2006/01/14(土) 02:49:17.45 0
銀色の永遠 〜美容師は恋をする〜D
「貴様もスタンド使いかッ…?私の邪魔をしようってのか!?」
エロオヤジ野田は怒りの表情で西川さんを睨みつける。
「スタンド使い…?」
西川さんは不思議そうにつぶやいた。
この人スタンドって言葉を知らないのか?
「お前達も『矢』に刺されてスタンド能力を身に付けたんだろう?」
「確かに俺は人とは違う『能力』を持ってるけど…『スタンド』って言うのか?
『矢』?『矢』ってなんだ?」
西川さんは何がなんだか分からないと言った表情だ。
「私は学生風の男に『矢』で射抜かれてこの能力を身に付けた!お前たちも
そうなんだろう?」
学生風の男?誰だ?寺田先生以外にも『矢』を持ってる奴がいるのかよ…!
「美貴ちゃん…こいつの言ってる事分かる?」
西川さんが美貴に尋ねる。
「学生風の男ってのは知らないけど…確かにあたしも『矢』で射抜かれてスタンド
能力を身に付けました!」
「ふ〜ん…僕は何年前だったか、ふと気付いたら…スタンドだっけ?不思議な力が
使えるようになっていたんだけど…」
この人は『矢』でスタンド使いになった訳じゃないんだ…!
生まれついてのスタンド使い…!
634 :610:2006/01/14(土) 02:52:04.02 0
「まあいいや…それよりオッサン!あんたこういう事よくやってんのか?
女の子を襲って抵抗されたら『口封じ』なんて事を…」
「私にはそれなりの社会的地位って物があるんだ、口封じと言っても『殺し』なんて
荒っぽい事はしたこと無いよ。ただ今回ばかりは仕方ない!君たちが私の障害となるの
なら『始末』するしかないなァ!」
「まあこの事をすべて忘れるなら見逃してやってもいいがね…」
「…イヤだね!こんなチャンス滅多にあるもんじゃない」
「チャンス?言っている意味がよく分からんが…?私に立て付くという解釈でいい
のかな?」
チャンス?美貴にも分かんない…どういう意味だろ?
「ああ、早くかかって来いよ」
西川さんの目つきが変わった…!
「なら仕方ない!!!」
ドンッ!!!
オヤジが地面を蹴った!
速い!!一瞬にして西川さんの目の前まで接近している!
「死ねッ!!!」
635 :610:2006/01/14(土) 02:54:25.96 0
メッギャアアアアアアッ!!!!
オヤジのハンマーのような拳が西川さんの顔面を直撃した!
「西川さんッ!!!」
美貴は思わず叫ぶ。
何まともに食らってんだ西川さんッ!!あんたスタンド使いじゃないのかよッ!?
「ふっふっふ…!!その細い体じゃあ即死かな?」
オヤジが余裕の笑みを浮かべる。
嘘だろ!?ホントにやられちまったのか!?
「へへ…」
いやッ…!この人やられてないぞッ!!
「何ィ〜ッ!?」
オヤジの笑みが消える。
この人無事だ!オヤジの拳をギリギリの所で受け止めている!
しかも生身の片手でッ…!!
636 :610:2006/01/14(土) 02:55:50.40 0
ジュアアアアアアアッ・・・!!!
「ムゥッ!?」
何だ!?西川さんが受け止めているオヤジの拳、それを包んでいる『土』がどんどん
乾いたような色になっていく!
「『ヒート・キャパシティ』…!!」
ボッゴオォォォォオオオン!!!
そしてオヤジの腕の鎧はバラバラに砕け散った!!
何が起こったんだ!?
「今度はこっちの番だな…うおおおおおおッ!!!」
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!
「ぬああああああああッ!!!??」
西川さんの嵐のような拳や蹴りがオヤジに襲い掛かる!
すごいラッシュだ!美貴のブギトレ並だぞこの速さはッ!!
そしてその攻撃がヒットするたびに土の鎧は砕け、辺りに飛び散っていく。
どういうことだ!?ブギトレの攻撃は全てあの鎧に防がれちまったってのに!
土の鎧に衝撃を吸収されて全然効かなかったんだぞ!?
637 :610:2006/01/14(土) 02:57:37.04 0
「これはッ…!?あ、『熱い』ッ!!」
オヤジが呻く。
熱い…?
「くらえッ!!!」
ドッゴオオオオオオオオン!!!!
西川さんの蹴りがオヤジの顔面に炸裂し、頭部を覆っていた土の鎧が砕け散る!!
オヤジはガクリと膝を付いた。
「悪いねオッサン!昔『ロック』をやってたせいか戦いになるとつい熱くなっちまうんだ」
「貴様ッ…その能力…『熱』か!!体温を上昇させているのか!?」
「おッ!良く分かったな!そう…今の俺の体温は500℃位かな?
熱を一点に集中させれば1500℃くらいは出るけどね」
「な、何ッ!?」
オヤジと一緒に美貴も驚く。
体温が500℃!?西川さんの能力は自分の体温を上げる能力だったんだ…!!
そうか!その熱で土の『水分』を蒸発させたんだ!
だからオヤジの土の鎧は弾力を失って脆くなったのか!
25 :610:2006/01/16(月) 00:04:14.94 0
銀色の永遠 〜美容師は恋をする〜E
「このッ…!!!」
オヤジの拳がことごとく空を切る。
全て西川さんに紙一重のところで見切られてしまっている!か…華麗だ!
ヒュンッ…!!
西川さんがオヤジの後ろに回り込み、背中に跳び付いた。
そして首に腕を回し、しっかりと組み付く!
ドジュウウウウウウウウウウウウウッ…!!!
「ぬわあああああああああッ!!!!!」
悲鳴が響き、土の鎧がボロボロと崩れる。
無理もない、今の西川さんの体は超高熱なんだ!ありゃあキツイぞ。
「ぬおおおッ!!」
オヤジは小さく飛び跳ねると自分から後ろに倒れ込んだ!
西川さんを押し潰す気だ!
しかし…
既に西川さんはオヤジの背中にはいなかった。
仰向けに倒れ込んだオヤジの真上にいた!いつの間に空中にッ!?
ドッゴオオオオッ!!!!
逆に西川さんの蹴りがオヤジを地面に叩き付ける!
26 :610:2006/01/16(月) 00:05:29.72 0
すごい…!スタンドのビジョンは無いけど、本体自身の動きが尋常じゃあない!
今の動きなんか殆ど見えなかったぞ!
「今の体温は600℃くらいかな…熱が上がれば上がるほど調子いいんだよね〜俺!」
「ぐ…きさまッ…」
オヤジが立ち上がる、同時に土の鎧も修復されていく。
あれだけ攻撃を食らってるのに…しぶとい奴だな。
「西川と言ったか?確かに君の動きは大したものだ、熱の能力も素晴らしいよ。
だがそれでも私に致命的なダメージを与える事は出来ない…」
オヤジは笑う。
た…確かに!西川さんが圧倒的に押しているように見えてたけど、
オヤジは今だピンピンしている!もしかして破壊されてたのは鎧だけだったのか!?
本体自身に打撃の威力は伝わって無かったのか!?
「それに君ィ…余裕ぶってはいるが随分息が上がってるじゃあないか!その能力…
長くは持たないんじゃあないのかね!?」
「ハア…ハア…へへっ」
本当だ!!西川さん、本当に息が上がっちまってる!
見るからに辛そうだぞ…!
ズギュウウウウウウウウウン!!!
そしてオヤジの体にさらに土が纏わり付いていく!
オヤジの鎧は前より一回り大きく、よりゴツイ形状に変化した!
27 :610:2006/01/16(月) 00:06:10.14 0
「ふふふ…ここからが本番だよ!!」
ヤバイぞ!このオヤジ…思った以上に強敵だ!
「…美貴ちゃん!悪いけどもうちょっと離れててくれないか?」
西川さんはオヤジと対峙したまま美貴にそう言った。
「えッ!?どういう意味…?」
「いいから離れて、巻き添えを食らわしちゃあ悪いからね…」
「は、はい…!」
美貴は素直にその場から離れた。
巻き添え…?あの人一体何をするつもりなんだ!?
252 :610:2006/01/21(土) 18:16:26.20 0
銀色の永遠 〜美容師は恋をする〜F
「君の能力、最初に食らった時は少々驚いたが…」
ズズズズズズ・・・
野田の土鎧が蠢きながら重量感を増していく。
その姿はもはや巨大な石像のようだ。
「私の『ロック・ヘッド』はその程度では突破出来んよ!」
「へへ…」
対峙している西川は肩で息をしながら微笑を浮かべる。
「ではそろそろ終わりにさせてもらうぞッ!!」
ドンッ!!!!!!
巨大な土の塊が一直線に西川に突っ込んだ!
そしてその巨大な拳を繰り出す!
「ムゥン!!」
ドシュウウウウウッ!!!
西川はそれを紙一重でかわし、野田に向かい大きく踏み込む!
「ヒート・キャパシティ!!!!」
ズドオオッ!!!!!
西川の拳がカウンターで野田のボディに炸裂した!
「ふふッ」
しかし野田は全く動じずニヤリと笑みを浮かべる。
そして丸太のような腕で西川を薙ぎ払った!
253 :610:2006/01/21(土) 18:17:43.30 0
ドグシャアアアアアッ!!!
「ぐあッ!!?」
西川は大きく吹き飛ばされ、その身体は何度も地面を跳ねる。
「君ィ〜!なんだね今の攻撃は?ぜんぜん『熱く』なかったぞ!」
西川に歩み寄っていく野田。
そして足元の西川を見下ろしながらイヤらしい笑みを浮かべる。
「本当にスタンドパワーを使い果たしてしまったのかね!?」
「うおおおおおッ!!!!ヒート・キャパシティッ!!!」
ズドドドドドドドドッ!!!!!!
起き上がりざまの西川のラッシュが野田に炸裂した!
シュウウウウウウウウウ・・・・
野田の全身から蒸気が上がる。
しかし野田は何事も無かったように立っていた。
鎧も蒸気が上がっただけでヒビすら入っていない…!!
「ふふふ、やはり君は限界のようだね!パワーもスピードも落ちている…!」
ドゴオオオオオッ!!!
「うぐえッッ!!!」
野田の蹴りが西川の腹にメリ込む!
254 :610:2006/01/21(土) 18:19:15.16 0
ドゴッ!!バキッ!!
さらに野田の攻撃が続く。
西川はかわす事すら出来ない、打たれるがままだ。
「ど、どうしたんだ西川さんッ!?急にやられ始めたぞ!!」
公園の隅で二人の戦いを見つめていた藤本は思わず口走る。
何かとっておきをやるんじゃないのかよッ?
もしかしてスタンド力(パワー)を使い果たしてそれすら出来ないのか!?
「ふふ…!思い知ったかこの若造が!でしゃばった真似をした事を後悔しながら
死んで行きたまえ!!」
野田は西川を片手で掴み上げる。
西川の身体はボロボロで、もう熱すら発していないようだ。
「じゃあな!君の死体は『土』で固めて埋めて処理するとしよう…!」
野田がトドメとばかりに拳を構える。
「むぅッ!!?」
何が起こったのか?
突然野田は掴んでいた西川を放してしまう。
255 :610:2006/01/21(土) 18:21:16.68 0
「なんだこれは?私の手が…『冷たい』!?」
「俺は自分の体温を自力で上げている訳じゃないんだ…」
地面に座り込んだ西川が口を開く。
「周囲の物の『熱エネルギー』を全身で吸収して身体に取り込んでいるんだ。
それを体内で蓄積、燃焼させることで体温を上げている…」
「ちょっと『熱』が切れちまったんでね…補給してるんだよ。」
「なんだと…!これはッ!?気温がッ…!?」
野田はある異変に気付く。
西川を中心として周囲の気温が急激に下がり始めているのだ!
「オッサン、『メルトダウン』って知ってるか?」
西川は唐突に尋ねる。
「原子力発電所なんかで、耐熱限界を超えて原子炉自体が崩壊しちまうことだ…
今からそれを見せてやるよ…!!」
「な…これは!?」
離れた場所にいる藤本も異常に気付いたようだ。
な…なんか急に寒くなってきてねーか!?
こんな急激に気温が下がることってあるのか?
256 :610:2006/01/21(土) 18:23:13.12 0
「…!!」
野田に焦りの色が見え始める。
「オッサン!逃げるなら今のうちだぜ…!」
「ふ…ふふふ!逃げる!?そんな事をする訳が無いだろう!?
私は君を倒してこれからも何事も無かったように生活を送るんだからね!!!
…スタンド力を全開だッ!!!『土』よ集まれィッ!!!!」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・!!!
野田の鎧は更に巨大な物となり、その手に巨大な『盾』を形成した!
「防ぎきってやる!!防ぎきれば私の勝ちだッ!!!」
「へへ…オッサン、いい根性してるじゃないか!ちょっとは見直したよ!」
気温の低下が止まり、西川が両足を開きドッシリと構えた。
「じゃあ行くぜ…!ヒート・キャパシティ!『ホット・リミット』ッ!!!!」
ゴオオオオオオオアアアアアアアアアア!!!!!!
西川の全身から強烈な熱と光が発せられる!!
506 :610:2006/01/26(木) 22:43:40.82 0
銀色の永遠 〜美容師は恋をする〜G
「ハアアアアアアアアアアアアアア…ッ!!!!!」
西川のカラダは内側から輝き、焼けた鉄のような色を発している!
1500℃以上は出ているだろうか?
側にあった鉄棒はまるで飴細工のようにグニャリと垂れ下がる。
「うわああッ!!?」
藤本は吹き荒れる熱風に思わず顔を覆う。
…これだけ離れてるってのになんて熱さだ!!ここまで体温を上げられるなんて!!
その時だった。
バリッ…バリバリッ…!!ブシュウウウッ!!!!
突然西川の頬が裂け血が噴出す!!
頬だけではない、胸、腕、西川の身体のあちこちから出血が始まる!
「なっ!!?」
…どうしたんだ!?西川さんの身体がッ!?
も、もしかして…!
西川さん、体温を上げ過ぎてるんじゃないのか…!?
自分自身が耐えられる熱の限界を超えてるんじゃあないのか!?
507 :610:2006/01/26(木) 22:44:46.30 0
「ヌウウウウウウウウウウウウウウウッ!!!!!!!」
野田の構えた盾の表面がチリチリと焦げ、細かな破片が熱風に舞っていく。
「ムウウッ…この程度でッ…!!私の『ロック・ヘッド』は最強だッ!
どんな攻撃も受け付けんッ!来いッ!若造ッ!!」
「行くぜ、覚悟しな…!!」
ドゴオッ!!!!
西川は地面を蹴り、野田に突っ込んでいく!
「WOOOOOOOOOッ!!!燃え尽きるほどッ!!!!!」
そして全ての力を込めた拳を突き出す!!
「ヒ――――――――――――――――――ト!!!!!!!!!!」
バッグオオオオオォォォォォオオオオオン!!!!!!!!
「うわああああッ!!?」
強烈な熱風と土の破片が藤本の身体を打つ!
508 :610:2006/01/26(木) 22:45:55.25 0
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ・・・・
「ど、どうなったんだ…!?」
辺りには土煙が立ち込め、西川さんとオヤジの姿は見えない。
…西川さん血を吹いてた!美貴のためになんでそこまで…
頼む!無事でいてくれッ!!
徐々に土煙が引いていき二人の姿が見え始めた。
こ…これはッ…!!!
オヤジが立っている!!
しかも構えた巨大な盾も、身体の鎧も殆ど壊れていない!!
西川さんは…!!
オヤジの盾に拳を打ち込んだ姿勢のまま動かない…!
ブシュウウウッ!!
「ああッ!!」
西川さんの拳から血が迸った!そして両膝を付いてガクリと座り込んでしまった!
顔もうなだれていて意識があるのかどうかも怪しい!
「ふははッ…!!私の勝ちだ!!」
オヤジが拳を振り上げる!
「やめろぉッ!!!」
美貴は助けに入ろうと駆け寄るが…
ダメだ!間に合わない!やられるッ!!
509 :610:2006/01/26(木) 22:46:51.85 0
その時だった!
…バキィ!!!ビシビシッ!!!
オヤジの纏った鎧が一瞬にして乾き、ひび割れていく!!
「なぁにいいいいいいいいいいッ!!!?」
「俺の全ての熱を送り込んだんだ…土なんか『焼き物』になっちまうぜ…!」
西川さんが目を開き静かに言い放った。
「ぐうああああああ!!熱いッ!!バカなッ!!?この私が…!!
この私がァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!」
ドッパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!
土の鎧は粉々に砕け散った!!
そして生身のオヤジはドサリと地面に倒れ込む!
「ハアーッ…ハアーッ…!」
オヤジは汗だくで苦悶の表情だ。
無理も無い、今のオヤジの鎧は全てのスタンド力を注ぎ込んだものだったはずだ。
それを一撃でぶっ壊されちまったんだ!もう戦う力は残ってないだろう…
510 :610:2006/01/26(木) 22:48:09.36 0
「すごい!すごいッスよ西川さーん!」
美貴は西川さんに駆け寄る。
「さて美貴ちゃん、コイツどうしようか?警察にでも突き出そうか?」
西川さんがオヤジを見ながら言う。
「た、頼む!私が悪かった!見逃してくれ!金ならいくらでも…」
オヤジは態度を一変させ命乞いを始めた。
やれやれ、やっぱり最低なエロオヤジだぜ。
「あんたさぁ、あたしの事を襲った上に胸がえぐれてるだの散々なこと言って
くれたよなぁ〜〜!!!」
「え!えぐれてるなんて言ってな…!!」
「とぼけんじゃねえッ!!あたしは覚えてんだよッ!!」
「ひいいッ!!!すいません!!」
511 :610:2006/01/26(木) 22:49:09.91 0
「でも良く考えたら、被害届けとか面倒くさいし…警察は勘弁してやろうかなぁ〜」
「ほ、ホントに!?」
「その代わり…二度とこんな事をしようっつー気が起こらないように…
身体に刻み付けてやるよ!!!」
「なああああッ!!!ま、まさか…!!!!??」
「VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVV!!!!!!!」
ドッギャアアアアアア―――――――――――――――ン!!!!!!!!!
「ふう、スッとした!」
「み、美貴ちゃん…こういう性格だったのか…」
「え?西川さん、今なんか言いました?」
512 :610:2006/01/26(木) 22:50:15.36 0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「助けてもらった上わざわざ送ってもらってすいません!」
「い、いや気にしないでよ!」
激しい戦いも終わり、藤本は西川とともに自分の家に向かって歩いていた。
しかし藤本は何か不自然な空気を感じ取っていたのであった。
(西川さん…戦いが終わってから何か様子がおかしいんだよな。
店にいたときより無口だし…どこか怪我が痛むのかな?)
「西川さん…病院行かなくて大丈夫ですか?」
「う、うん大丈夫!こんなのカスリ傷だよ」
「ホントですかぁ〜!?ちょっと良く見せてくださいよ!」
藤本は西川の腕を掴んで袖をめくり挙げた。
「うわあああdvんぎgv!!!??」
513 :610:2006/01/26(木) 22:51:35.01 0
「え!?どうしたんすか?痛かった?」
「イ、イヤ…ナンデモナイデス」
「…? 」
「うん、血も止まってるし…大丈夫みたいですね」
「うん、ホントに大丈夫だから…!!」
西川は自分に言い聞かせる。
(…落ち着け、落ち着くんだ俺!せっかく作ったチャンスなんだ!ここで男見せな
いでどうするッ!!)
586 :610:2006/01/28(土) 15:41:44.39 0
銀色の永遠 〜美容師は恋をする〜H
「あの…美貴ちゃん!突然だけど質問していい?」
西川は始めて藤本の目を見て語りかけた。
「え?なんですか!?」
「今…彼氏とかいるの?」
そう、西川は大事な事に気が付いたのだ。
…俺は「美貴ちゃんに彼氏がいるかも」なんて全然考えてなかった…!
なんで考え付かなかったんだろう?充分あり得るじゃないか!!
予想だにしない質問をぶつけられた藤本は無表情で西川を見つめているだけだ。
西川も固唾を呑んで返答を待つ…
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
な、なんだこの沈黙は…!!早く答えてくれッ!!!
「なぁ〜に言ってるんですか〜!いないっスよ〜〜!」
「 ・・・・え!?あ!!そうなんだ!!」
西川はほっと胸を撫で下ろす。
587 :610:2006/01/28(土) 15:43:33.01 0
「いきなりそんなこと聞くからびっくりしましたよ〜!でも欲しいなぁ〜彼氏!」
「ははは…きっと美貴ちゃんにはすぐ出来るよ!あ〜俺も彼女欲し…」
「まあ好きな人はいるんですけどね!」
突然の告白が西川の言葉を遮った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今なんて言った?「好きな人」?美貴ちゃん…「好きな人がいる」って言ったのか?
そんな…!!嘘だ…!!
「それはあなたですよッ!西川さん!」なんて言葉は…出てこないよな…
俺の恋はもう終わりなのか?バカな!簡単すぎる!あっけなさ…過ぎる…
「でも最近思うんですよね、もしかしたらこれって「好き」とは違うのかもって。
最初は間違いなく恋してたんですけど…。その人美貴の部活の部長なんですよ。だから
一緒に居るうちに「愛情じゃなくて友情かも」って思うようになったっていうか…」
「ってあれ!?西川さん聞いてます?」
西川は藤本の後方で時間が止まったかのように硬直していた。
588 :610:2006/01/28(土) 15:45:41.49 0
「じゃあ美貴の家すぐそこなんで、今日は本当にありがとうございました!」
「どういたしまして、またね。」
西川は何とか平静を装い笑顔を見せる。
…結局何も出来なかったな、そういや電話番号すら聞いて無いや。
「襲われている所を助ける」なんて夢のようなシチュエーションがあったのに…
俺はいつまでこんな意気地無しなんだ…。
西川が自己嫌悪に陥っていたその時…
「あッ!!そうだ!!」
藤本が西川の方へ引き返してくる。
そして携帯電話を取り出しながら言った。
「西川さん、番号交換しましょうよ!」
「えッ!!?」
藤本の言葉にあっけに取られる西川。
「ダメですか?」
「だ、ダメだなんてとんでもない!」
「西川さんは来たばかりだから知らないと思うけど…、最近の杜王町には出るんですよ。」
589 :610:2006/01/28(土) 15:47:25.92 0
「で、出るって何が…?」
「スタンド使いですよ!今の杜王町には何人スタンド使いがいるかわからないんです!
西川さんも変な奴に出くわすかもしれない。
その時は呼んで下さいよ、今度は美貴が助けに行きますから!」
「そうなんだ…わかったよ!」
「そうそう!『スタンド使いは引かれあう』運命らしいから…マジで気を付けた方が
いいッスよ!」
「ありがと、気を付けるよ。」
「それじゃあさよならッス!!」
「うん、バイバイ」
藤本の背中を見詰める西川、その背中はどんどん小さくなっていく。
「…美貴ちゃん!!」
今度は西川が藤本を呼び止めた。
「また店に来てね!!いつでも空けとくからさぁ〜!!!」
遠くで手を振って答える藤本。
590 :610:2006/01/28(土) 15:48:42.40 0
『スタンド使いは引かれあう』運命…か。
じゃあ君と出会ったのも運命だよな。
あの子は…俺を変えてくれるかもしれない、例え恋人にはなれなくても…
あの子の純粋さなら、俺の心の傷を癒してくれるかもしれないな。
是が非でもお願いしたい、君が夢のカギになるから!
「ちくしょ〜!!でも諦めないからなッ!!」
藤本を見送った西川は一人思うのだった。
西川貴教 スタンド名:ヒート・キャパシティ
野田義治 スタンド名:ロック・ヘッド
再起不能
美容室『Revolution』――営業中
火曜定休 杜王駅から徒歩2分
→TO BE CONTINUED