745 :364:2007/01/05(金) 06:38:33.41 0

銀色の永遠第2部 〜ハーフ・ダズン・イヤーズ・ラン〜


「ただいまぁ〜…」
とドアを開けてみるけど、お父さんはまだ仕事から帰っていないらしく、
誰の返事もなかった。もちろん部屋も真っ暗だ。
「今日も疲れたあぁ〜!!」
カバンを床に放り投げると、スーツから部屋着に着替える。
部屋着に着替えると、夕食の用意のためにエプロンをつけて台所に立つ。
…っとっと、脱いだ服を片づけないと、またお父さんに怒られる。
片づけだけはいくつになっても習慣にならないんだよなぁ…。



僕の…私の名前は亀井絵里。
大学を卒業して、この春から社会人として働くことになった。
といっても、外回りの希望が通らず、OLをやってるんだけどね。
一人称が僕なのは気にしないで。
高校・大学と7年間ずっとそうだったからクセになってるんだよね。
会社では出してないけど、普段はクセでついつい使ってしまう。
社会人になって半年、カッコいいデキる女、ってやつを目指してるけど、
やっぱり仕事は大変だ。
学生時代が懐かしいよ…。

楽しかったなぁ…あの頃は。

大学……そして、高校…  みんな、元気かなぁ……。



746 :364:2007/01/05(金) 06:39:11.98 0


…っと、いけないいけない。
あの頃のことは懐かしいけど、思い出に浸るわけにはいかない。
あの部があって僕は変われた。大きく成長できたと思ってる。

けどあの部の最後は……僕は…


「やめよう!今のことを考えなきゃ!!
 さーて、今日のゴハンはどうしようかな〜!」
わざと声に出して僕は思考を切り替えた。
楽しかったことは多かったけど、思い出したくないことも多い。
一人で考え出すとキリがない。
僕は考え込まないようにテレビをつけると、夕飯の用意を始めた。


ピンポーン


玄関のチャイムが鳴る。
お父さん帰ってきたかな?今日は早かったんだねぇ…。
最近は外回りが終わった後も会社で働いてるから随分忙しそうなのに。
そんなことを考えながらエプロンで手を拭き、玄関へ向かう。

ガチャリ

ドアを開けると、そこに立っていたのはお父さんではなく、一人の少女だった。
ミディアムロングのストレートの髪、色白の顔。
一瞬保険の勧誘か何かかと思ったけど、着ているのはぶどうヶ丘の制服だ。
中学生ぐらいだろうか、少なくとも見たことのある子ではない。



747 :364:2007/01/05(金) 06:40:25.14 0

「あ、えっと…すみません、こちら亀井さんのお宅ですか?」
「ええ、そうですけど」
「あ、ひょっとして亀井、絵里先輩、ですか?」
「え、そうですけど…あなたは?」
僕に用事、何だろう?
僕はこの子を知らないし、どこかで会ったことあったっけ?
先輩って呼んでるのは、ぶどうヶ丘のOGっていう意味か?それとも…。
「すみません、私、岡田翔子っていって、ぶどうヶ丘の中等部の生徒なんですけど、
 亀井先輩にお伺いしたいことがあって。
 ホントは電話すべきだと思ったんですけど、電話番号が変わってて分からなくて」
ああ、そういえば携帯も家の番号も変えたから学校の名簿とかじゃわからないかもね。
それにしても、僕に聞きたいことって何だろう?
そんな特別なニンゲンなつもりはないんだけどな、『アレ』以外は…。




「私、『演劇部』員なんですけど、先輩たちの代の頃の活動のことでお聞きしたいことがあって」




……ッッ!!!
一瞬、自分の心臓が跳ね上がったのが自分でハッキリ分かった。
演劇部、あの部は5年前にあんなことになったけど、演劇部としての
活動資料とか日誌とか台本の類とかは処分されずにあの学校に残っているはず。
にもかかわらず、わざわざOGの僕を訪ねてくるということは、
訪問の用件は、『スタンド絡みの質問』ということになる。


748 :364:2007/01/05(金) 06:41:21.89 0

『弓と矢』がない今、この町でスタンド使いが増えることはないはず。
にもかかわらず、『演劇部』として、僕らの活動を質問に来た、ということは、
また演劇部はスタンド使いの集まりとしての活動をしている、ということ!
関わるべきじゃない、僕の第六感がそう警告を発している!

「悪いけど、私たちの代の活動っていっても、そんな特別なことはしてないよ。
 当時の活動日誌とかはまだぶどうヶ丘に残ってると思うし。
 私たちのしてた活動なら、それを見れば全部分かるはずだから」
僕はそう言い捨てると、岡田翔子、という少女を残して玄関のドアを閉めようとした。
そういえば、『岡田』……あの人はいま、どうしてるんだろうか?


グンッ!


閉めようとしたドアが途中で止められる。
見ると、少女の手にダブって見える半透明な白い腕がドアを掴んでいる。

僕はこの少女から出ている半透明な姿を知っている!
本人の精神力によって生み出されるこのビジョンを知っている!!
考えてみれば当然だ!ここに来る『演劇部』の少女が『それ』でないはずがない!
この少女は…スタンド使い!!
ま、まずい!!逃げ…


ドグシャァァァ!!


スタンドの腕が僕の身体を貫いた。
「『ストゥーカス・ロビン』…すみません、亀井先輩、私たちと来てもらいます」
薄れゆく意識の中で、少女がそう言ったのが聞こえた。


778 :364:2007/01/05(金) 20:22:44.91 0




……

………

「…ハッ!!」
目が覚めて辺りを見回すと、そこは真っ白な部屋だった。
20畳ほどの広さ、天井も壁も床も真っ白。
あるのは、同じく真っ白なテーブルと、2脚の椅子。
そして……先ほど僕の家を訪ねた岡田翔子という少女。

「目が覚めましたね、すみません、手荒な真似をしてしまって。
 ですが、こうでもしないとまともに会話ができないと思いましたので」
起きあがった僕に岡田が頭を下げる。
貫かれたはずのお腹に手をやるが、痛みも、傷跡一つない。

「ここはスタンド空間?」
「そうです」
「あなたのスタンド?」
「そうかも…」
「僕の家に来たのは、あなた一人?」
「言う必要はありません」
「演劇部には、今何人のスタンド使いがいるの?」
「言う必要はありません」
「つまり、こういうこと?
 『自分もしくは仲間を倒すまでこの空間から出ることはできない』」
「That's Right!!」



779 :364:2007/01/05(金) 20:23:22.80 0

僕は一度深呼吸をすると、目を閉じ、数度舌打ちを繰り返す。
チッ…チッ……チッ。
見えてはいないけど、岡田が困惑している空気が読みとれる。


…なるほどね。


「…そこと………、そっちの後ろ側と……あと、そっちの奥に、見えないけど人がいるね」
僕は目を開くと自分の左側と右後ろ、そして岡田と机のさらに奥を指さす。
その度に岡田の目が驚きに見開かれる。
「…ど…どうして?スタンドも使ってないのに…」
そんな表情で僕の指先の延長線上を見るところを見ると、図星みたいだね。
「『エコーロケーション』…これはスタンドじゃない、『技術』だよ。
 まこっちゃんや愛ちゃん…小川麻琴や高橋愛は自分の流法でスタンドの能力を
 極限まで伸ばしたけど、僕は僕自身の技術を伸ばした。
 こんな密閉された空間だったら、音の反響で位置関係を探るのは難しくないよ」

フワッ……

僕の言葉に応えるように、まるで透明なヴェールを剥ぐように
3人の女の子が姿を現した。
ぶどうヶ丘の制服、ということは演劇部か。
「この手の空間能力は本体も空間内にいるのがセオリー。
 貴女…岡田さんの能力は少なくとも近距離タイプだろうから
 ほかに1人以上いるのは簡単に見当がついたしね」


333 :364 ◆5QP4YFlyRI :2007/02/05(月) 09:09:44.61 0
岡田が気圧されたように息を飲む。周囲の少女も同様に僕に圧倒されているみたいだ。
でも、愛ちゃんや藤本さんならともかく、僕ごときのプレッシャーで圧倒されるようじゃ
まだまだスタンド使いとしては未熟、というか、まだまだ普通の中学生だね。
スタンド使いとして未成熟なのか、それとも今の演劇部は戦闘をするような部ではないのか。
「で、どうする?聞きたいことがあるって言ってたけど、腕ずくで僕に口を開かせてみる?」
僕は挑発するように4人に問いかける。
精神的優位に今のところ立ってはいるけど、自分で言ってはいるけど勘弁願いたい展開だ。
さすがに年下とはいえ、アウェイで4人相手に勝てる自信がない。
僕は挑むように試すように…岡田を見やった。

「…別に先輩に勝負を挑もうとか、そういうつもりはありません。
 繰り返しますが、私は…私たちは先輩に伺いたいことがあるんです」
「でもこちらも繰り返すけど、質問を聞くつもりはない、だったら?」
「本当なら腕ずくで…と言いたいところですが、それをするわけにはいきません。
 戦いに来たんじゃないですし、そうして言わせても、それが真実とも限らない」
「……正しいね。確かに、僕はそんなことでは本当のことは言わない。
 君たちは知らないと思うけど、心理駆け引きとポーカーフェイスは部内でもトップだったからね」
「………」
岡田が眉を顰めてうつむく。
言葉に詰まってる…ということは、もともとこの襲撃自体が入念に考えられたことではないってこと?
だとすると、よほどの考え無しなのか、あるいは「考える余裕もないうちに起こした行動」か。
「例えば。僕が君たちの誰かか1人を人質に捕まえ、そのままスタンドで誰かを攻撃する。
 ここまでの行動が完了するのに約5秒、4対1だった形勢はそこで逆転する。
 拮抗でも君たちの絶対的優位でもない。今優位なのは僕だよ」
畳みかけるように僕は岡田に問いつめる。
岡田の視線が動揺から周囲の仲間を彷徨う。



334 :364 ◆5QP4YFlyRI :2007/02/05(月) 09:10:08.54 0
…本当に、ぬるいよ、今の演劇部。
何がしたいのか分からないけど、そんなんじゃ外の敵どころか、学内の演劇部外の
スタンド使いにすら勝てないんじゃないの?
僕は先の話を実行に移そうと、もはや動揺で僕を目に写してない岡田に狙いを定めた。

「それ以上動かないでください!亀井先輩!!動いたら攻撃します!!」

背後にいた少女が走り出そうとした僕にダーツのようなものを投げつけようとしている。
それが彼女のスタンドかな。
けど…ぬるい。
この状況で脅迫は無意味だよ。
やるなら不意打ちでも何でも、確実に実行しなきゃダメなんだ。
僕は岡田に向かって駆けだした。



ドシャァァッ!!



突然、脚から力が抜ける!
駆けだした僕はバランスを崩して床に倒れ込んだ。
い、今のは…?ビジョンは見えなかったけど、やはり誰かのスタンド能力?
僕は震える脚を押さえつけて何とか立ち上がる、けど全身が気怠い。
これじゃあまともに走るのはできなそうだ。
何だ…?この能力…



335 :364 ◆5QP4YFlyRI :2007/02/05(月) 09:10:36.86 0
「亀井先輩、動かないで下さい。といっても動けないとは思いますけど」
左側に立ってた少女が数歩前に出ると僕を見下ろしてくる。
彼女の能力か…!
「ダメだよかえでちゃん!亀井先輩を攻撃しちゃダメだって!」
岡田が左側の少女を止める。
「分かってるよ!でもこうしなきゃロビン危なかったんだからね!」
ロビン?岡田のこと?
「それはそうだけど!でもこれからはダメだからね!」
「分かってるよ…何もなかったらもうこんなことはしないよ」
な、何なんだ…この子たち。
単に仲良しグループでここに来た、ってわけでもなさそうだし。
何だか一枚岩でないっていうか、このかえでって子は昔の『三好さんと岡田さん』みたいな、
ちょっと浮いた雰囲気を感じるぞ…。
「…ッ、亀井先輩は気づいてなかったかも知れないですけど、
 一番最初にロビンが部屋にお邪魔して攻撃したとき、私のスタンドを仕込ませてもらいました。
 抵抗しなければスタンドは発動させません。
 けどロビンや私たちに万一のことがあったら……先輩がミイラになるまで能力を使いますから」
スタンドを『仕込んだ』だって!?
この亀井絵里が命を握られていると!?
さっきの力が抜けた感じはそういうことか!相手の体力を奪う能力?
でもどうしてそんなことまでしてるなら、さっさと最初からその能力でギリギリまで
僕の力を奪ってしまわなかった?
僕に単に話をするだけの目的だからか、それとも…

「じゃあロビン、あとは任せるから、お願いね」
『かえで』はそれだけ言い残すと、後ろに歩いていって壁にもたれて手帳とペンを出して目を落とした。
彼女の役目は終わり、ってわけか。あくまでも僕への脅迫要員、交渉は岡田(ロビン?)がやると。
「ユキもおいでよ!これちょっと見て!」
「ごめん無理ー!動いたら解除しちゃうよー!」
『かえで』が岡田の背後の少女を呼ぶが、『ユキ』は泣きそうな声でそれを断る。
彼女がこの空間の本体、ってわけか。



336 :364 ◆5QP4YFlyRI :2007/02/05(月) 09:11:25.78 0
「…すいません、ちょっと取り乱しましたけども。
 そういうことなので、できれば抵抗せずに、話をさせてください」
何とか復活したらしい岡田が改めて僕に語りかけてくる。
その側には、さっきダーツを投げようとした少女が立っている。
「といっても、ただ教えてもらおうとは思ってないんです。
 というか、教えてもらったとしても、それが真実かどうか、私たちは分かりませんし。
 嘘でもつかれて、それを鵜呑みにして私たちが痛い目を見る、ってのもごめんですし」
なるほどね…確かに、僕が真実を話すとは限らない、
というか、内容次第では真実を話すつもりなどないということも予想済みってわけだね。

「話をする、にしては随分物騒な歓迎のしかただね。
 いきなり攻撃してスタンドを仕込む…そして自分たちのホームグラウンドに連れ込む…
 何のために?」
「念のために」
念のため?
「誰の邪魔も入れたくないんです。
 繰り返しますけど、私は亀井先輩に教えてほしい情報がある。
 ですが、正直に言ってしまうと、私たちのこの行動は演劇部に対しての裏切りともいえる行為です。
 高等部の岡井先輩や萩原先輩の命令無視でもありますし」
岡井ちゃんや萩原舞ちゃんが今、演劇部に…?
「万一のことがあったら、場合によっては私たちも『始末』されるかもしれません。
 ですから、正確な情報がほしいし、他人の邪魔も入れたくない、こういう形で
 亀井先輩に来てもらうことになりましたが」



337 :364 ◆5QP4YFlyRI :2007/02/05(月) 09:12:00.14 0
話が見えてきたぞ。
岡井ちゃんや萩原舞ちゃんが今演劇部を取り仕切っている。
けど、何らかの事情でこの子たちはその二人についていけない理由あるいは行動するには
理不尽な何かがあり、行動に疑問を持っている。
そしてそれは僕らの時代の活動に、あるいは僕の世代の誰かに関わる、
僕が口を閉ざす可能性のある物事だということだ。
そういえば昔、浜崎あゆみたちと戦ったとき、昔の栄高ことを知りたくて
まこっちゃんとこんちゃんが市井さんを捜して、後藤さんに襲われたことがあるらしい。


…歴史は、繰り返してる…。


「一つ、ゲームをしましょう。ゆりか!」
「うんっ!」
『ゆりか』と呼ばれた少女は何もない空間からカードの束を二つ取り出した。
さっきはダーツ、今度はカード。この子の能力は具現化?
岡田は『ゆりか』からカード束を受け取ると、それをテーブルに広げる。

「スタンド能力は本体の精神的なエネルギーが実体化したもの…ってことで合ってますよね。
 このゲームにはこうして人間−本体−とこうしてスタンドの能力が書かれてます」
確かに…こっちのカードにはさゆ、これには僕が、こっちは…まこっちゃん、こんちゃんも。
「こうしてカードを出していって、能力を使える分だけの枚数精神エネルギーを集めたら
 スタンドの能力を出して相手を攻撃できる」
似たようなゲームとかならあるのは知ってる。昔さゆもカードを集めるのが好きだったっけ。
「相手にダメージを与えて、10点分ダメージを与えたら勝ち。
 私が勝ったら…私の『能力』で亀井先輩は私に逆らえなくなります。
 『質問』をさせていただいて、聞きたいことを聞かせていただいたら、
 ちゃんと無事にお返ししますよ」
つまり、岡田の能力は昔戦ったことのある赤西くんと同じようなタイプ、ってことか。



338 :364 ◆5QP4YFlyRI :2007/02/05(月) 09:12:40.76 0
「じゃあもしも僕が勝ったらどうする?勝負ってのは対等なモノを賭けるものだよ。
 君たちが欲しいのが僕の持っている『情報』。
 君たちは僕にそれと対等なモノか僕が欲しいと思ってるモノが差し出せる?
 出せないなら勝負この勝負は受けないし、君たちにもこれ以上は付き合えないね」
「…ここに、『矢の欠片』があります、これじゃあ、ダメですか?」
『矢の欠片』だって!?あのスタンド能力を引き出す!?
「私…私たち、ゆりかもかえでもユキも、この欠片でスタンド能力を身につけました。
 普段は岡井先輩が持ってるんですけど…拝借してきました」
この子正気か!?
これじゃあ無断行動どころか完全に部を敵に回してるようなものじゃないか!
ここまで本気なのか…こりゃさっきまでの話しも本当の可能性が高いな…。
それ以上にこの欠片…。
浜崎が昔持ってたものなのか、それとも別の…どちらにせよ、どうして岡井ちゃんが?
「これじゃあ…ダメですか?」
岡田が僕を見上げてくる。

演劇部が今どうなってるか…確かに気になる。
岡井ちゃんと萩原舞ちゃんが何をしようとしているのかも!

もしもさゆがここにいたら、僕のこの決定を笑うだろうか。
あれだけの目に遭って、つらいこともたくさん経験した『演劇部とスタンド使い』に
関わることをさゆは笑うだろうか。
いや、きっとさゆならこう言うんだ。

『やっぱり絵里はバカなの、何でも首を突っ込んで、背負い込んで。
 1人で抱えきれないことならさゆも半分付き合ってあげるの』

だから…『今、この瞬間』、僕は今一度戦いの道に踏み込むんだ。

「…いや、受けるよ。僕の『情報』と君の持つ『矢の欠片』を賭けて!」


375 :346 ◆5QP4YFlyRI :2007/02/06(火) 22:43:04.31 0




「このカードを使ってください」
ゆりかと呼ばれた少女が僕にカードの束を手渡してくる。
ざっとカードの中身を確認する。
数種類のカードが大体同じような枚数ずつ入ってるみたいだ。
向かいに座っている岡田も同じようにカードを確認している。
「このカードにイカサマなんか仕組まれてないだろうね?」
「ないです…確かにこのカードは私の『能力』で作りましたけど、
 私は『造った』モノに手を触れないと形を変えたりとかできないんです」
「岡田ちゃん、あなたは?」
「私は…いや、私と先輩には同じ監視役を付けます。かえでちゃん!」
岡田は壁のほうを見て少女に声をかける。

「…ホントに知らないからね!『ドリーム・リアル』…、行けっ!」
壁にもたれていた『かえで』が小さなアンテナのようなスタンドを出す。
それを岡田のほうに飛ばし、岡田はそれをスタンドの腕で受け止めた。
「さっき言ってたかえでちゃんのスタンド…、亀井先輩に仕込んだのと同じ物です。
 これを…『ストゥーカス・ロビン』!!」


ドスゥゥッ!!


岡田は自分のスタンドで自分の身体を貫いた。
いや、『かえで』のスタンドを自分の身体に埋め込んだんだ!
「うっ…く、これで、亀井先輩と条件は、同じです…」



376 :346 ◆5QP4YFlyRI :2007/02/06(火) 22:43:31.48 0

さっき僕が攻撃されたときと同じく、彼女の身体に傷跡などは見えない。
だけど、間違いなくスタンドは身体を貫いていたし、間違いなく『かえで』のスタンドは
岡田の身体の中に入っている、とみて間違いないだろう。
「万が一、ですけど、二人がイカサマしようとしたら、身体の中のスタンドを発動します。
 これは二人の思考に反応して自動的に発動しますから、私は関係ないですからね」
壁にもたれた『かえで』が発言を補足する。
なるほどね…これで条件は同じ、ってわけだ。


カードは全部で45枚ずつ。
最初に手持ちとして5枚持っていて、お互いに自分の手番(ターン)のときに1枚補充する。
そのカードを使って相手を追いつめて倒していくみたいだ。
やっぱり、昔よく似たゲームが流行ったことがある。
お父さんがそういうカードを商品として売ってたこともあると思う。
カードの絵柄として僕自身や演劇部の仲間が描かれているのは奇妙な感じだけど…。
当時の演劇部の部員の資料は確かに残ってないけど、岡井ちゃんや萩原舞ちゃんは
部員の何人かのスタンドを目撃してる。
どうやらそれを元に能力をゲームのカードとして再現した、ということらしい。
もっとカードの種類とかあれば自由にカードを組み立てることもできるんだろうけど。
今はこの45枚のカードだけが僕の運命を握ってる、ってわけだ。

お互いに入念にカードを切り、カットをする。
机の上には、カードの山が2つ、そして『矢の欠片』。



377 :346 ◆5QP4YFlyRI :2007/02/06(火) 22:43:58.22 0
「用意はいいですか?先攻と後攻、どうします?」
「僕はあとでいいよ、大体は分かるけど、細かいルールちょっと自信がない部分もあるし」
「そうですか?じゃあ、遠慮なく、先攻いかせてもらいますけど…」

お互いに最初の手札5枚を引く。
僕の手札は僕(亀井絵里)の『本体カード』が2枚、小春ちゃん(久住小春)の『本体カード』が2枚、
そして『再形成・電話ボックス』のカードが1枚。
電話ボックスを再形成して相手を閉じこめる…小春ちゃんの切り札だ。
このカードを使ってどう戦っていくか…

「用意はいいですか?亀井先輩…」
岡田が今までとは違う、ギラギラした目でこちらを見てくる。僕も気を引き締める。
「いいよ、それじゃあ…」


「「ゲーム・スタート!!!!!」」


13 :364 :2007/03/02(金) 23:32:20.15 0



<Turn 1>

「私の先攻ですね……」
岡田が手札を眺めながら呟く。
最初のターンはカードを引くことができないので、手持ち札からカードを出さなくてはいけない。
「私はこのカードを場に出して、ターンを終了します」
岡田が場に出したのは、まこっちゃん(小川麻琴)の『本体カード』だった。
このゲームでは、基本的に本体のカードを揃えてスタンドを発動させなければ
相手にダメージを与え、攻撃することができない。
だから本体のカードとスタンド能力のカードを均等にバランスよく出していかなくちゃいけない。


コァァァァァァァッ!!


突然、岡田の背後にスタンドビジョンが浮かび上がる!
驚きに身構えようとするが、それは岡田のスタンドじゃない。
そのビジョンは…まこっちゃんの姿になった。
金髪の髪、キリッとした意志の強い瞳。
ぶどうヶ丘の制服を着たまこっちゃんは何故だかとても幼い印象を受けた。

「亀井先輩…それ私の能力ですっ。私たちはそのカードの先輩…小川麻琴先輩の姿って
 当時の演劇部のビデオでしか知らないですから当時のものですけど…」
岡田の後ろにいた『ユキ』が汗だくになりながらも喋りかけてくる。
「ちょっとした雰囲気作り、ですよ。この通り、実体はありません」
岡田も僕の視線に気付いたのか、自分の後ろの空間に手をやり、自分の手が
まこっちゃんの身体をすり抜けるのを僕に見せてくる。


14 :364 :2007/03/02(金) 23:35:34.79 0

つまり、あのまこっちゃんはこの空間の本体の『ユキ』の能力で生み出した
ホログラフとかプラネタリウムとかそういうもの、ってことか。
とりあえずゲームを続けるのに支障はなさそうだから放っておいても大丈夫そうだけど。
「とりあえず早くしてもらえませんか?『ユキ』がしんどそうですし」
確かに…というか、能力のキャパを超えてるんじゃないか…?

※1ターン経過時点の戦況※

ライフ ロビン 10点
    亀井  10点
手札  ロビン 4枚
    亀井  5枚(久住本体・久住本体・亀井本体・亀井本体・再形成電話BOX)
場   ロビン 小川X1
    亀井 


<Turn 2>

「僕のターン…ここからはお互いデッキ(山札)からカードを引ける、ってことだよね」
僕が引いたカードは『サイレント・エリドリアン』、相手のターンを飛ばす能力カード。
僕のスタンドのカードまで…。ということは、僕のスタンドの能力も彼女たちには
ばれていると考えたほうがいいはず。万一の時にどこまでやれるか…。
とりあえず、僕の手札にはまだ能力を発動させられるカードはない。
ここは本体のカードを出しておくのが得策か…。
「僕の本体カードを場に出して、ターンを終了するよ」

コォォォォァァァ!!

僕の後ろのほうに何かの気配が現れる。
振り向いてみると案の定、ぶどうヶ丘の制服を着た、今より幾分幼い僕の姿があった。
ショートカットで黒髪、今はお化粧覚えたからあんまり普段は分からないけど、
確かに僕はお父さん似だなぁ…。
自分の立体的な姿のビジョンを見る、というのはものすごく奇妙な気分だけど。

これでお互いの場には本体のカードが1枚ずつ。
場に本体がたまればたまるほど有利なこのゲーム、今は落ち着いてるけど、
ここから先はターンが進めば進むほど荒れそうだなぁ…。

※2ターン経過時点の戦況※

ライフ ロビン 10点
    亀井  10点
手札  ロビン 4枚
    亀井  5枚(久住本体・久住本体・亀井本体・再形成電話BOX・サイレント・エリドリアン)
場   ロビン 小川X1
    亀井 亀井X1


77 :364 :2007/03/04(日) 21:20:10.59 0

<Turn 3>

「私のターン…ドローします…」
岡田が自分の山札からカードを引く。
ここからはお互いにカードを引いて勝負が展開していくことになる。
岡田は手札を見つめながら暫く悩むと、1枚のカードを場に出した。
「本体のカードを出して…ターンを終了します」
岡田の背後には、まこっちゃんと並んで藤本さん(藤本美貴)のビジョンが現れた。
藤本さんもまこっちゃんや僕の背後の小春ちゃんのように、制服姿で、今の僕よりも幾分幼い顔立
ちをしている。
恐らく、彼女もまたぶどうヶ丘時代の姿なんだろう。
同期といいつつ先輩だった藤本さんは破天荒な人ではあったけど、とんでもないスケールの考えと
実行力を持った人だった。
卒業してからは全然連絡は取っていない、杜王町にまだ住んでいるのかも分からない。
今でも敵に回したくない人の1人だ。

「…亀井先輩?」
いけない、やはり当時のことを思い出すと、懐かしさに思考に手が止まる。
どんなに時間が経ったとしても、僕の中で当時の出来事はハッキリと形に残っている。
「あぁ…ごめんごめん。何でもない、次は僕のターンだね」

※3ターン経過時点の戦況※

ライフ ロビン 10点
    亀井  10点
手札  ロビン 4枚
    亀井  5枚(久住本体・久住本体・亀井本体・再形成電話BOX・サイレント・エリドリアン)
場   ロビン 小川X1 藤本X1
    亀井 亀井X1


<Turn 4>

デッキからカードを引く。引いたカードは小春ちゃんの本体のカードだ。
これで僕の手札には僕の本体カードが1枚、小春ちゃんの本体カードが3枚、『サイレント・エリ
ドリアン』が1枚、
そして『再形成・電話ボックス』が1枚。
「僕は小春ちゃん(小春ちゃん)のカードを場に出すよ、それでターンを終了する」

僕の背後に、また1人黒髪の少女のビジョンが現れる。
小春ちゃん…彼女も当然ながら当時と寸分変わらない姿をしている。



78 :364 :2007/03/04(日) 21:21:03.58 0

入部当時は大人っぽい、というか冷めた印象を感じた彼女だったけど、それから彼女はどんどん変
わっていった。
女の子らしくなって、可愛らしくなっていった。

でも…あの子は……

いけない!ゲームに集中しないと!
僕は思考から小春ちゃんの思い出を追い出し、再び手札に目を向ける。
それにしても、相手を攻撃できるカードがなかなか引けてないことが少し気になる。
本体カード3枚を捨てることで相手に2点のダメージを与えられる。
とはいえ、1ターンに1枚しか本体カードを出すことはできないからダメージ効率は非常に悪い。
デッキの中身を見ていないのが、手札のカードを見てる限り、僕のカードは相手の妨害をするため
のもので、
攻撃をするタイプのカードではないような気がする。
他のメンバーのカードが入っているのなら話は別だが、小春ちゃんのカードのコスト次第では攻撃
手段が
かなり狭まってくることになる。
大丈夫か…?

※4ターン経過時点の戦況※

ライフ ロビン 10点
    亀井  10点
手札  ロビン 4枚
    亀井  枚(久住本体・久住本体・亀井本体・再形成電話BOX・サイレント・エリドリアン)
場   ロビン 小川X1 藤本X1
    亀井 亀井X1 久住X1


<Turn 5>

「私のターンです…ドロー!」
岡田がデッキからカードを引く。
そのカードを見た岡田の目が細まった。何かいいカードを引いたのか…。

「亀井先輩…さっきのターン、攻撃しなかったですけど、攻撃しなくて大丈夫ですか?」
唐突に岡田がそんなことを言い出した。
確かに彼女の言うとおり、このゲームは相手に攻撃していかないと勝負に勝つことはできない。
しかし、手札に攻撃カードがない以上、僕は攻撃できない。
「このカードゲームは運要素も絡みます…。カードの引き次第では何もできないまま、一方的に攻
撃されることになりますよ…。
 藤本美貴先輩の本体カードを場に出し!場にある藤本美貴先輩、小川麻琴先輩のカードをリバースします!」



79 :364 :2007/03/04(日) 21:22:15.92 0

岡田の背後に立っていたまこっちゃんと藤本さんのビジョンが身構える!!
「カードをリバースすることで生み出される本体カードの精神エネルギー!!
 発動させる能力は…『VVVラッシュ』!!!」
岡田が手札の一番端、今のターンに引いたカードを場に出す!
カードから光が溢れ、そこから放たれた光が岡田の背後へ…藤本さんのビジョンへと吸い込まれる!
それと同時に、藤本さんのビジョンからさらにもう一つのビジョンが現れた!!
あのビジョンは…何年も見ていないけど、忘れるわけがない!!


「「『ブギートレイン03!!!』」」


僕と岡田、そしてもう一つの声が重なった。
この声は…この声はまさかっ!!!


『ゴールデンゴール決めてっ……』


藤本さんだ!!ビジョンだというのに、その声は間違いなく藤本さんの声だ!!
藤本さんのビジョンから出たブギートレインが僕に突っ込んでくる!!

「VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVV!!!!!!!!!!」

ドシャァァァァァァァァァッ!!

僕は藤本さんのラッシュの迫力に吹っ飛ばされた。
直接殴られたわけじゃない、けど、胸の辺りが衝撃でズキズキする。
あくまでもあれはビジョンだ、けどその威圧感、迫力は本物だ!!
『カードで攻撃する』というのは、こういうこと…!



80 :364 :2007/03/04(日) 21:23:25.45 0

「驚いたみたいですね。攻撃が発動した場合、こうしてビジョンが発現します」
岡田がテーブルから身を乗り出してこちらを見ている。
僕の手札はテーブルに伏せられていて、岡田に覗かれることはない。
椅子を起こし、再びテーブルについて岡田と向かい合う。
「『VVVラッシュ』で亀井先輩は3点のダメージです。
 私はターンを終了しますけど…攻撃を受けると、亀井さん自身もダメージを受けていきます。も

ちろん私も。
 ライフが減れば減った分だけ、実際にダメージを受けていきますから…気をつけてください」
つまり、さっきの胸の痛みはそういうことか!ブギートレインに殴られた箇所とは違うと思ってたけど…。
万が一、ライフが0点になったら…さすがに死ぬことはないだろうけど、このゲーム、危険だ…!

※5ターン経過時点の戦況※

ライフ ロビン 10点
    亀井  7点
手札  ロビン 4枚
    亀井  4枚(久住本体・亀井本体・再形成電話BOX・サイレント・エリドリアン)
場   ロビン 小川X1(1枚リバース) 藤本X2(2枚リバース)
    亀井 亀井X1 久住X1

使用カード:スタンドカード:VVVラッシュ  コスト:藤本A+他@  
テキスト:相手プレイヤーに3点のダメージを与える、もしくは相手の本体カード1枚を再起不能に出来るッ。


<Turn 6>

胸の痛みが収まらない。このままゲームが終わるまでこのままなのかもしれない。
甘く見てた…、ゲームとはいっても、あくまでもこれはスタンド勝負なんだ!
そして運要素が絡むとはいっても、あくまでもカードゲームだ。
現役時代に最も僕が得意としていたジャンルじゃないか!

「僕のターン…カードをドロー…」
僕の引いたカードは『シャボン玉』。相手を爆撃するさゆの『シャボン・イール』の能力だ。
さゆのカード…コストバランスから見て、僕、さゆ、小春ちゃんの3人のカードでこのデッキは構
成されてる可能性が高い。
となると、さゆのカードが攻撃の要になる可能性が高いな。
しかし僕の手札にはさゆのカードは存在しない。
「僕は手札から小春ちゃんの本体カードを出して、ターンを終了するよ」
「………」
岡田が「攻撃しないのか?」とでも言いたげに僕の顔を伺ってくる。
でも僕はそれをすました顔で見つめ返してやる。
こういう勝負は堂々としてたほうが勝つんだよ。さっきも引いたカードで顔色変えたし、やっぱり、
まだこの子は温い。
だからといって気を抜くわけには行かないけども。
それにしても、僕、さゆ、小春ちゃん…ずっと昔、紺野さんの指示で岡井ちゃんを捕まえた3人の
カードで 岡井ちゃんの後輩たちと戦うなんて…運命の奇妙さを感じるよ…。

※6ターン経過時点の戦況※

ライフ ロビン 10点
    亀井  7点
手札  ロビン 4枚
    亀井  4枚(亀井本体・再形成電話BOX・サイレント・エリドリアン・シャボン玉)
場   ロビン 小川X1(1枚リバース) 藤本X2(2枚リバース)
    亀井 亀井X1 久住X2

277 :364 :2007/03/11(日) 08:25:38.70 0

<Turn 7>

「私のターン、まずリバース状態の本体カードをアンリバースします」
岡田が伏せられているカードを元の状態に戻す。
これでまた本体カードを使って攻撃ができることになる。
防御カードがあれば攻撃を防ぐこともも可能だけど、生憎僕の手札には防御カードはない。

「カードをドロー……私は小川麻琴先輩の本体カードを1枚場に出して、
 小川麻琴先輩を2枚、藤本美貴先輩を1枚リバースします!」
カードをリバースする…それは攻撃が始まる合図!
前のターンに続いて岡田が攻撃を発動させようとしている!!
まこっちゃんと藤本さんのビジョンがまたも身構える!
「小川麻琴先輩2枚、藤本美貴先輩1枚の精神エネルギーで発動させる能力は…
 小川麻琴先輩のFRIENDSHIP!!」

コォォォォォォォォ!!

出されたカードから溢れる光が光球となり、まこっちゃんと藤本さんのビジョンに吸い込まれる。

『往くぞォォォ!FRIENDSHIP!!』

まこっちゃんの声が響き、緑色のフードを被ったスタンドビジョンが現れる!!
「FRIENDSHIPのカードは相手にダメージを与えるか、相手の場の本体カードを
 1枚再起不能にする…私は、亀井先輩に攻撃します!!」
岡田の宣言と同時にFRIENDSHIPが身構え、こっちに向かって飛び上がる!!
まただ…さっきのブギートレイン03の時と同じだ…ということはこれから起こることも…!!

『ユゥゥゥゥキャンドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!』




278 :364 :2007/03/11(日) 08:26:29.73 0


ドグォォォォッ!!


うぐぁ……
飛び込んできたFRIENDSHIPは組んだ両手を落下の勢いに乗せて振り下ろした。
咄嗟に身を庇ったけど、両腕に鈍い痛みが走る。
スタンドビジョンだけど、その痛みは本物だ…。思わず両腕を抱いて座ったまま蹲る。

「今ので亀井先輩は2点のダメージです。…大丈夫ですか?
 小川麻琴先輩のスタンドは強力らしいですからね」
岡田は、まこっちゃんのカードを使い慣れているのか、不思議なことを言う。
両腕と胸がズキズキと痛む。だけど、耐えられないほどの痛みではない。
僕は顔を上げると岡田の顔を睨んでやる。
「どうしても痛みに耐えられないようなら、サレンダー(降参)してもいいですよ?」
「誰がっ!!」
「そうですか、私はこれでターンを終了しますけど」
岡田はFRIENDSHIPのカードを再起不能場に送ると、片手を僕に差し出す。
正直、しんどいな…ライフも半分になったし、このまま削られていくわけにはいかない。
何とかしないと…。

※7ターン経過時点の戦況※

ライフ ロビン 10点
    亀井  5点
手札  ロビン 4枚
    亀井  4枚(亀井本体・再形成電話BOX・サイレント・エリドリアン・シャボン玉)
場   ロビン 小川X2(2枚リバース) 藤本X2(1枚リバース)
    亀井 亀井X1 久住X2

使用カード:能力カード:FRIENDSHIP コスト:小川@+他A
テキスト:相手の場にある本体カードを1枚、再起不能に出来るッ。
     もしくは相手プレイヤーに2点のダメージを与える事が出来るッ。


<Turn 8>

「僕のターン、ドロー…」
痛む左腕で手札を持つと、右手でデッキからカードを引く。
引いたカードはさゆ(道重さゆみ)の本体。
手札にはさゆの『シャボン玉』があるけど、これはさゆの本体カードが2枚必要だから
このターンでさゆの本体カードを出したとしても発動させることはできない。
僕の手札にこのターンにダメージを与えられるカードはない…



279 :364 :2007/03/11(日) 08:27:27.98 0

とはいえ、2ターン連続で攻撃をされてる。
何とかして反撃しないと…。

…待てよ?このカードを出したら、これが出せるな…。

「僕は、僕の本体カードを場に出すよ。これで僕の場には僕が2枚、小春ちゃんが2枚。
 この4枚のカードをリバースする!」
カードを裏返した僕に岡田が目を見開く。
僕はデッキからさらにカードを1枚出し、高らかに宣言する!!

「サイレント・エリーゼACT2!サイレント・エリドリアン!!」

カードから出た光が僕の背後に飛び、背後にひとつ、気配が増える。
振り向かなくても分かる、長年ずっと僕ととも駆け抜けてきた存在。
岡田が顔を引きつらせ、慄く。
…そんな顔するなよ…これは真剣勝負だ……そして、君が始めた勝負だろ!!
「いけっ!サイレント・エリドリアン!!」
『ビィィィィィィィィィッ!!』

ベッシィィィィィィィィィィィィィィン!!

「うぁぁぁぁぁぁっ!!」
岡田が打たれた衝撃に叫ぶ。
「サイレント・エリドリアンの能力で岡田ちゃんの次のターンはスキップされる。
 次も僕のターンになるけど、まずはこのターンを終了するよ」
耳も聞こえているようで、僕の言葉に相槌を打ってくる。
エリドリアンに打たれた腕を押さえているところを見ると、ライフ変動はなくても
ダメージは行くみたいだな。
さて、次はどうするか…。

※8ターン経過時点の戦況※

ライフ ロビン 10点
    亀井  5点
手札  ロビン 2枚
    亀井  4枚(久住本体・道重本体・再形成電話BOX・シャボン玉)
場   ロビン 小川×2(2枚リバース)・藤本×2(1枚リバース)
    亀井  亀井×2(2枚リバース)・久住×2(2枚リバース)

使用カード:スタンドカード:サイレント・エイドリアン コスト:亀井A+他A    
テキスト:指定した相手の次のターンをスキップするッ。


281 :364 :2007/03/11(日) 08:29:17.08 0

<Turn 10>

「そして次のターン、まずは僕の場の本体カードをアンリバースして、ドロー!」
岡田のターンはスキップされているため、場の本体カードはリバースされない。
さっきのターンと同じ状況で僕のターンが続けられる。
場の僕の本体カードを表返し、デッキからカードを1枚引く。
このカードは……。

「手札からさゆのの本体カードを1枚場に出して、
 小春ちゃんを2枚、僕を1枚、さゆの本体カードをリバースする!」
僕の背後に、さゆの姿が現れる。さゆもまた、当時と変わらない姿だ。
僕の背後にいる3人のビジョンが身構える。
「そして手札から『分解』を発動させる!!」
今のドローで引いたカードだ!これで岡田を攻撃する!

『ミラクル・ビスケッツ!!』

バヒュゥゥゥゥゥゥン!!

『イィィィヤァァァァァァァァッ!』
『イックワヨォォォッ!!』
『……フッ』

小春ちゃんが叫び、ミラクル・ビスケッツのNo.1〜No.3の3人が現れる!
そのまま岡田の周りを飛び回ると、一斉に岡田に殺到し、眩い光に囲まれる!!




282 :364 :2007/03/11(日) 08:30:14.87 0


「う…あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


光ともにミラクル・ビスケッツが消滅し、両手で自分を抱きしめている岡田だけが残される。
震えているその姿は目の焦点が合ってない。
よっぽど『自分の体が分解されるビジョン(幻覚)』がショッキングだったみたいだ。
『ゆりか』と『ユキ』が不安げに岡田を見ているが、声をかけたりはしない。
あくまでもこれが岡田と僕の決闘だということを心得てはいるみたいだ。
「今の攻撃を僕はコスト3点で発動させたから、岡田ちゃんに3点のダメージだよ」
『分解』は注いだ(リバースした)精神エネルギーの分だけダメージが増加するカードだ。
僕・さゆ・小春ちゃんの3人のカードを敢えてリバースした。
僕らは離れ離れになっても、いっしょに戦ってるんだ、という実感を感じるために。

「僕はこれでターンを終了するけど…大丈夫?まだやる?」
「ハァ…ハァ…大丈夫、です……うぅ…
 すごい、ですね…本体カードを出してから私のターンを飛ばし…、さらに本体を出しての
 攻撃…見事なコンボです………うぅ…よくも…よくも……」
岡田が涙目ながら怒り、というよりは憎しみに近い目で僕を睨んでくる。
息も切れて、口調も僕に敬語で話してはいるけど、視線だけはそうは言ってない。
体が痛むか、分解されて身体がスカスカ頼りないことになってるだろうに。
よっぽど今の攻撃がショックだったか。屈辱的なダメージ初体験、ってところか。

とはいえ、反撃にも成功した。ライフはまだ負けてるけど、まだまだここからだ!。

※10ターン経過時点の戦況※

ライフ ロビン 7点
    亀井  5点
手札  ロビン 2枚
    亀井  4枚(久住本体・道重本体・再形成電話BOX・シャボン玉)
場   ロビン 小川×2(2枚リバース)・藤本×2(1枚リバース)
    亀井  亀井×2(1枚リバース)・久住×2(2枚リバース)・道重X1(1枚リバース)

使用カード:能力カード:分解 コスト:久住@+他x
テキスト:相手の場にある本体カードをx枚、再起不能に出来るッ。
     もしくは相手プレイヤーにx点のダメージを与える事が出来るッ。
     ただしxに費やせるコストは最大3点までとする。