380 :364:2006/11/18(土) 05:08:21.20 0
銀色の永遠 〜道重さゆみは騒音に悩まされる@〜


<藤本美貴>


『女の子ォォ〜〜〜ウォウウォウウォウ〜〜ってェェ〜〜〜
 サイコォォォォ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!』


『女の子ォォォ〜〜〜〜〜ウォウウォウウォォォってェェェ〜〜〜〜
 ステェェェキィィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ィャッハッ!!』


おーおー…テンション高いこと…。
部室で台本読んでる美貴と小春の前では亀・ガキさん・さゆ・れいなが発声…というよりも歌を歌ってる。
今日は来てねー三好と岡田と辻ちゃんとで歌うミュージカルの挿入歌だ。
確かに今度のミュージカルはかなり大掛かりだから準備が早いのは分かる。
にしても気合入りすぎじゃねーか?特に亀。
つーか実感が篭り過ぎてるというか。
こないだ岸部露伴に精神を男にされてたから、女に戻れてテンション高いのをそのまま
歌にぶつけてるって感じだなw

つーかなんで美貴が魔女役なんだよ…
もうひとつ候補に挙がってた江戸時代物だったら美貴お姫様役だったのにさ。
たまには美貴もマジで女の子な役やりたいっつーの…orz



381 :364:2006/11/18(土) 05:09:16.55 0

バタン!


「亀ちゃんとシゲさん、ちょっといいか? 例の指令の話、許可出たよ」
寺田のおっさんの部屋から出てきたよっちゃんが二人を呼ぶ。
「ホントですか!?」
なんか亀のやつ妙に嬉しそうだな。さゆと二人の指令か?
目の前では小春がキラキラした目でよっちゃんを見つめてる。
そーいやコイツよっちゃんのこと好きだったんだっけ。
こないだはうやむやにされたけど改めて聞いてみる必要がありそうだなw


「分かりました!それじゃ行ってきます!ほら、さゆ行こっ!」
「う…うんッ!」
「気をつけて行っといでー」


亀とさゆはそのまま二人で部室を出て行った。やっぱ指令か?
「ねぇよっちゃん、二人に指令?」
「あぁ…珍しく亀ちゃんが自分から『指令やらしてください!』なんて言いだしてさ」
「珍しいね、アイツは演劇のほうやりたがるのに。さっきだって歌にえらい気合入ってたよ」
「よっぽどこないだの漫画家だっけ?の件堪えたらしいからなぁ。
 っつっても寺田のおっさんのところにも今は指令ないから、俺の友達ちょいと借り出して
 実戦形式やらす許可とったんだけどさ、お互い再起不能にしないって条件で」



382 :364:2006/11/18(土) 05:10:08.90 0
「マジで!?けっこう無茶するなぁ亀もその友達も」
「ま、たぶん大怪我はしないっしょ。それにあいつらのスタンド、
 あの二人には相性的にけっこうしんどいと思うぜ…」
「ねぇねぇよっちゃん、その友達ってどんな人?美貴知ってる?」
「あれ?ミキティ会ったことなかったっけ?あいつらは…」

「吉澤さーん!台本読み合わせしましょー!!」

「ちょ、小春、美貴まだ話の途中…」
「ああいいぜ、ちゃんと台詞覚えてんだろうな?」
「もちろんです!吉澤さんとの部分は完璧ですよ!」
「じゃあどこからいく?俺と麻琴の会話シーンに小春が割り込んでくるところからでいいか?」
「はいっ!」
「…………」

美貴はのけ者ですかそうですかorz
あーあ…帰ろうかな……



473 :364:2006/11/20(月) 22:35:36.80 0
<亀井絵里>

「ハァ…」

僕とさゆはいま、吉澤さんに教えられた、相手が待っているっていう廃倉庫に向かっている。
相手の人が忙しくてなかなか都合がつかないからっていうので、
急遽今日行くことになったんだけど…。
まさか吉澤さんから「さゆを連れてけ」って言われるとは思わなかった。
てっきり一人でやるとばかり思ってたから、2人って聞いたのも
その相手がさゆだっていうのも驚いたんだ。
どうやら相手が2人だからこちらも2人、ってことらしいんだけど…

「ハァァ……」
部室だとテンション高かったんだけど、周りが静かになるとやっぱり考え込んでしまう。

こないだの岸部露伴の一件、僕はさゆや小春ちゃんや藤本さんたちに
とっても迷惑をかけてしまった。
それだけじゃない、その前のれいなとガキさんと行った遊園地でも
僕はただ震えてるだけだったし、桜井さんの事件でもそうだ。
2月に後藤さんと戦った時だって、愛ちゃんやさゆとれいなやみんなが
あんなにボロボロになって戦ってたのに、僕はただ転がってただけだ。
僕はこの先みんなといっしょに演劇部にいてもいいんだろうか…

悩んだ結果、吉澤さんにお願いして指令を用意してもらった。
僕にスタンド使いとしての力がちゃんとあるのか、この先演劇部員として
やっていってもいいのかの再確認のために。
さゆといっしょの任務になったのは予想外だったけど、さゆと2人だったら
怖い物なんてない。
これまでだって何度もいっしょに戦ってきたんだ。
だけどもし、僕がまた足を引っ張ってさゆに迷惑をかけたら……



474 :364:2006/11/20(月) 22:36:28.25 0

「考えすぎはよくないの」
「え?」
「れいなもなんでもしょい込むクセがあるけど、絵里も相当なものなの。
 悩みがあるなら相談してくれればいいのに…」
「や、でもそれは…」
「いつもヘンな絵里がいつにも増してヘンなんだもん、気にならないほうがおかしいの」
うぇぇ!?悩んでるのバレてる!?
「何のためにさゆみが吉澤さんにお願いしていっしょの任務にしてもらったと思ってるの?」
ウソ!?この任務さゆがいっしょに行くのお願いしてたの!?
ってことはバレバレだったってことじゃんorz
「うぅ…このこと…っていうか僕が悩んでること、ほかのみんなは…?」
「知らないと思うの。まぁ何人かは悩んでることぐらいは気づいてるかもしれないけど」
「……まさかとは思うけど、悩んでる中身とか、さゆ気付いてる…?」
ここまでバレバレだったら僕はもう終わりだ、この部にホントに居られない。

「それはさゆみは知らないし、興味もないの」
「…そ、そう……」
あっぶなぁ〜!!
さゆだけには知られたくない!カッコ悪いところ見せたくない!
…まぁ、もう既にバレバレだった時点で見せてるけどorz
「…でも大体見当はついてるの。………ダッテ、サユミモ…」
「え?最後なんて?」
「なんでもない!早く行くの!」



475 :364:2006/11/20(月) 22:37:38.82 0

そういうとさゆは僕のほうを見ないで歩き出した。
と思ったらすぐに立ち止まってカバンの中をゴソゴソやりだした。

「はいこれ貸してあげるの。
 最近さゆみが持ち歩いてるおねえちゃんの写真の代わりのお守りなの」
「え!?でもこれ…」
「いいから、指令が終わるまで貸してあげるの!」
さゆは無理やりそれを僕に持たせると、今度こそ先に歩いていってしまった。

「さゆ……」
僕は『さゆのお守り』をしばらく眺めてから、それを大事にポケットにしまった。

なんだかさゆはこないだ僕たちが遊園地に行った事件のあと、急に大人っぽくなった。
こんちゃんから、フクロウのスタンドのことは簡単には聞いた。
でもさっきのさゆの言葉、聞き違いでなかったら、さゆも僕と同じ悩みを…

「絵里なにしてるのッ!?置いてくの!!」

「ごめん!すぐ行くーー!!」

悩んでたってさゆはさゆだし、僕は僕だ!
2人でいたら怖いものなんてない!
さゆを守るためにも…僕がしっかりしなきゃ!!


555 :364:2006/11/22(水) 22:01:54.23 0

     ◇     ◇     ◇

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

廃倉庫の重たい扉を開けると、真っ暗かと思ってた倉庫の中はちゃんと電気が
ついていて、中には2人の女の人がいた。
この人たちが今回の指令の対戦相手?

2人とも長い髪とスラッとしたモデル体系で大人っぽい顔立ちをした人だ。
1人は髪をストレートにしててちょっと肌も焼けて活発な感じ、
もう1人は髪をゆる巻きにした少しお嬢様っぽい人だ。
そういえばどちらの人も部室にたまに来て吉澤さんと喋ってたことがあるような気がする。
2人ともスタンド使いだったんだ…。

「アロハ〜!アナタたちがよっちゃんの後輩のカメイちゃんとミチシゲちゃん?」
「そ、そうですけど…」
「よろしくね〜、ナイストゥーミーチュー♪」
「「な、ないすとぅーみーちゅー…」」
お嬢様っぽい雰囲気の人がフレンドリーに話しかけてくる。



556 :364:2006/11/22(水) 22:02:31.26 0

「ごめんねぇ〜、今年から私たち大学生なんだけど忙しくてなかなか時間が
 つくれなくて〜、よっちゃんにもものすごい催促されててさ〜
 あ、2人とも演劇部員なんだよね?私色んな舞台とか見せてもらったんだよ〜
 ほら、こないだやってたアレあったでしょ!よっちゃんや不良っぽい役やってたやつ!
 アレとかね〜、それはもうよっちゃんがカッコよくてさぁ…」
「ちょっと絢香ストップ!2人とも引いてるから!」
いきなりマシンガントークしだしたお嬢様っぽい人を活発そうな人が止める。
「あー、ごめんね?この子帰国子女だからか誰にでもメチャクチャ馴れ馴れしいんだよね」
「はぁ…」
「大丈夫なの」
確かに圧倒されたけど、何とか返事をすることができた。

「さて改めて自己紹介。私は里田まい、こっちは木村絢香ね。
 どっちもぶどうヶ丘のOGだよ」
「さっきはゴメンねぇ〜、あ、アタシのことはアヤカって呼んでね〜」
「あ…亀井絵里です」
「道重さゆみなの」
「アタシら2人ともS市の大学に通ってるんだ、だからなかなか時間とれなくてさ〜」
「高校も大学も新学期が忙しいのは変わらないねぇ〜」
思い出した!里田まいさんと木村絢香さん!
里田さんはテニスで国体に出場してるすごい人だし、
アヤカさんは学園祭とかで英語で弁論発表とかしてた人だったはず。
そういえば里田さんはスタンドの名前も前に部室で聞いたことあるかもしれない。
スタンドでとはいえ、そんなとんでもない人たちと戦うなんて…!



557 :364:2006/11/22(水) 22:03:21.34 0

「じゃあさっそく始めようか?私は2人可愛いからずーっと
 おしゃべりしててもいいんだけど、よっちゃん怒らせると怖いしね」
「2人ともこれ終わったらどうせよっちゃんに報告しに行かなきゃなんでしょ?
 …まぁ行けるなら、なんだけどさっ!!」
行けるなら!?もしかしてこの人たち、マジでやる気!?
訓練だし抑えるようなこと吉澤さん言ってたのに!!
「OK!Here We Go!! WOW×3!!」

ギュォォォォォォォン!!

アヤカさんが黄色のスタンドを出す!
人型の…近距離パワー型かな?
「サイレント…」
「シャボン・「Hey!」
僕らがスタンドの名前を叫ぶのを待たずにアヤカさんが指を打ち鳴らす!


ガシャーン!!


「なっ!?」
突然僕らの背後で蛍光灯が砕け散った!!
今のはアヤカさんの能力!?
近距離パワー型じゃなくて何かを飛ばす能力!?それとも何かを操る能力!?




558 :364:2006/11/22(水) 22:04:28.19 0

「ほらほら余所見してると踏み潰しちゃうよ!スタンピート&ダウンピート!!」

カロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッ!!

声に慌てて振り返ると、首無し馬にまたがった里田さんが
こっちに向かって駆けてくるところだ!
まるで本物の馬だ!これが里田さんのスタンドか!!
ものすごいスピードであっという間に近づいてくる。
さゆもびっくりしているのか全く動こうとしない。
このままじゃあ2人とも踏み潰される!!

「さゆっ!!」

ドンッ!

とっさにさゆを突き飛ばし、僕はそのまま反対側に飛ぶ。
里田さんのスタンドは僕とさゆの間を駆け抜けていく!
なんて速さだ!とにかくこちらの態勢を整えないと…

「サイレント・エリーぐぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

急に感じた首を絞められ宙に浮かぶ感覚!!
擦れ違い様に里田さんが僕の制服の後ろ首を掴んでそのまま引っ張ってるんだ!!
地面を引きずられてはないけど、く…首が絞まるっ!!

「絵里ッ!!」

あっという間にさゆとアヤカさんが遠くなり、
僕を引っ張ったまま里田さんは倉庫の外に飛び出した!


597 :364:2006/11/23(木) 11:02:44.30 0

<道重さゆみ>

「絵里っ!!」

パァン!

慌てて追いかけようとしたさゆみの足元で何かが爆発した。
それで足を止めた間に絵里たちは倉庫から出て行ってしまった。
振り返ると相変わらず笑顔のアヤカさん。
「置いてかないでよ〜」
BANG!と右手で作った銃でさゆみを撃つふりをする。

「まいちんはあっちの子が気に入ったみたいだし、ミチシゲちゃん私と遊ぼうよ?」
アヤカさんは相変わらずのニコニコ笑顔からキリッと真面目な顔を作ったの。
大人っぽい顔立ちしてるから笑顔よりもこういう顔のほうが可愛いかも。
まぁ、さゆみほどではないけど。

それにしても、事実上1対1にはなってしまったけど、これはチャンスなの。
さゆみか絵里か、どちらかが一人を倒してしまえば2対1になるの。
そして、さゆみのシャボン玉の威力なら、一気にアヤカさんを倒してしまえるの!!
さっきの爆発の能力はよく分からないけど、
見たところスタンド自体は遠隔操作できないタイプと見たの!
だから…さゆみのシャボン玉で一気に決めるの!!


598 :364:2006/11/23(木) 11:03:29.72 0

「シャボン・イールッ!!」

プッシュゥゥゥゥゥゥゥ!!

さゆみはシャボン・イールを出すと、アヤカさんめがけて3発のシャボン玉を放ったの。
弾数は少ないけど、破壊力は最大!
そしてシャボン玉自体のサイズも大きいから、ゆらゆらと外からの風で
揺れながらゆっくりとアヤカさんに向かっていくの。
3発のうち1発でも命中したらさゆみの勝ちなの!!

フワン…フワン……

「WOW!シャボン玉?可愛らしいけど…何かなぁ?」
ゆっくりと近づいていくシャボン玉にアヤカさんが手を振り上げる!
でも触れた瞬間大爆発を起こすシャボン玉の前には何をしても無意味なの!!
着弾まであと5メートル!!


パチンッ…


ドガガーーーーーーーーーーーーーーン!!




599 :364:2006/11/23(木) 11:04:24.15 0

突然、さゆみのシャボン玉が3発とも爆発したの!
アヤカさんは指を鳴らしただけで自分もスタンドももちろんシャボン玉には触ってない。
さゆみのシャボン玉には時限仕掛けの能力はない。
何かに触らない限り自分で爆発しないのに!!
アヤカさんのWOW×3も動いた様子はない。
何が起こったっていうの…!?

「WONDERFUL!!可愛いスタンドなのにすごい破壊力ねぇ〜」
アヤカさんが感心したようにニコニコしてる。
けど「アナタの攻撃は効かないよ」って感じのその笑顔がムカつくの!
そのオーバーリアクションがむかつくのっ!!

「これでも食らうのっ!!
 必殺!!シャボン玉ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

さゆみはアヤカさんに向かってシャボン玉を乱射したの!!
さっきほど威力は高くはないけど、その分弾数はメチャメチャ多いの!
これだけの数のシャボン玉、それこそ後藤さんのように時間でも止めない限り
捌ききるのは不可能!
ガードしたとしても再起不能のダメージは確実!!
スタンドの能力を使ってかわしたなら、その能力は見極めてやるの!!
さぁ…何か動きを見せるの!!

「EXCELLENT!!こんなにたくさんのシャボン玉… 爆発しなかったらキレイなのにね〜」
そういうとアヤカさんは着ていた上着を脱ぎ始めた。
やっぱりスタンドで何かするような様子は見せてない。
だけどこのまま何もしないとも思えない!



600 :364:2006/11/23(木) 11:05:25.60 0


パサッ…


ドバババババババババボゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーン!!!!!


アヤカさんが上着を洗濯物みたいにバサッとはためかせた瞬間!!
さっきと同じようにさゆみのシャボン玉が一発残らず爆発したの!
爆煙がアヤカさんを覆い隠す。
けどやっぱり爆発した瞬間、WOW×3にはには動きはなかったの。
これはスタンド能力じゃあないとでもいうの!?
そんなはずはないの!
スタンドじゃあないならアヤカさんがスタンドを出している必要はないの!
ゆえにこれはスタンド能力!!
でも、その能力は…?

パチンッ!

「うげぇぇぇぇ!!」
アヤカさんが指を鳴らすと、煙の中から何か小さな弾が飛んできたの!
さゆみのおなかに命中したせいで思わず可愛くないうめき声を上げちゃったの。
でもぶつかってきた弾は転がってない。
「HIT!ダメージ1はこちらのほうが先だったみたいね?」
さゆみがおなかを押さえて立ち上がると、アヤカさんがさっきと同じくニコニコしてた。

何か…この攻撃、スタンドには謎があるの…
それをとかない限りはさゆみに勝ち目はないかもしれないの…



601 :364:2006/11/23(木) 11:06:00.31 0

<亀井絵里>

このままじゃマズイ!
さゆから引き離されるのもそうだけど、このスピードの相手にこのまま捕まってるのはマズイ!!
曳き回されるか、叩きつけられるか…それ以上にこの慣性で絞まる首がヤバイ!!
「…ァイレント・エィザベス!!」

ドガドガドガッ!

ドサッ!

僕はエリザベスでスタンピート&ダウンピートに蹴りを食らわせる!
スタンドのダメージは本体に還る。
里田さんは蹴りの衝撃で僕の後ろ首を離し、そのまま駆け抜けていった。
倉庫を出てほんの30メートルほどで何とか振りほどくことができた。
もちろん地面にそのまま落下した僕もただでは済んでいない。
お尻が痛い!でも足から落ちたら捻挫してまともに走れなかったはず!

「さゆっ!!」
僕はすぐさま倉庫に戻るために駆け出した!
僕が行かなきゃ…僕がさゆを守らなきゃっ!!


602 :364:2006/11/23(木) 11:06:52.25 0


カロッカロッカロッカロッ…

ん…何この音……

カロッカロッカロッカロッ……

後ろから聞こえてくるこの音は…まさかっ!!

カロッカロッカロッカロッカロッカロッ!!

里田さんのスタンピート&ダウンピートだぁぁぁ!!

カロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッ!!


背後から走ってきた里田さんはあっという間に僕を追い抜き、僕と倉庫の間に立ちふさがった。
「やだなぁ〜、せっかく2人で風になろうと思ったのに飛び降りちゃうんだもん
 ちょっとは私にもかまってよ〜」
でも僕はいまそれどころじゃないんだっ!!
「くらわせろ!エリザベスッ!」
『R・o・g・e・r!了解シマスタ!』
そのままエリザベスがスタンピート&ダウンピートに蹴りを食らわす!!


603 :364:2006/11/23(木) 11:07:55.40 0


スカッ…


エリザベスの蹴りは空振りした。
『イマセン…消エチマイヤガッタ』
そのままキョロキョロと左右を見回す。エリザベスは相手を見失ってる!!

「着地しろ!スタンピート&ダウンピート!」
「エリザベス上だァァーーー!!」
『エ?』
エリザベスの蹴りが命中する瞬間!!
里田さんのスタンピート&ダウンピートは後足立ちになって攻撃をかわした!
そしてそのままエリザベスはスタンピート&ダウンピートの前脚の下にいる!!
エリザベスが……踏み砕かれる!!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁよけろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッン!!!!!


「ハァッ…ハァッ…ハァ…」

間一髪!ギリギリでエリザベスは前脚をかわし、スタンピート&ダウンピートに
飛びつくと、三角飛びの要領で僕のところに戻ってきた。
けど危なかった…!
競走馬の体重は約450キロっていわれてる。スタンドだから実際の重さは
分かんないけど、そんなものをまともに食らったら僕は再起不能じゃ済まないぞ…


604 :364:2006/11/23(木) 11:08:53.83 0

「へぇ、けっこう勘も冴えてるし、走るのもなかなか早いじゃん。
 見た目的に運動あんまりできないのかと思ってたよ」
「うへへ、これでも元陸上部なもんで…ってそんなことはどうでもいいんです!!
 殺す気ですか!!?」
一番最初に突っ込んできたときも今も、ブレーキとか手加減とか
そんな意識は一切感じられなかった!
吉澤さんだって模擬戦形式で必要以上にブチのめしたり再起不能にしたりするの
禁止だって言ってたのに!!

「あぁ、よっちゃんから大怪我はダメって聞いてるかもしれないけどさ、
 残念ながら私も絢香も手加減って苦手なんだよね、スタンドの能力的に…」
ま、まさか…

「だからさ、全力でやらせてもらうから、本気できたほうがいいよ」

やっぱりぃぃぃぃぃ!!
しかも里田さんのこのスタンドだ!負けたら再起不能では済まない!
ヘタしたら即死だぞ!?
吉澤さん…話が違う!!


ドバババババババババボゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーン!!!!!


そのとき、倉庫の中から爆発音が響いた。
たくさんの爆発…さゆのシャボン・イールだ!
まさか、アヤカさんだけじゃなくてさゆもマジになってるっていうの!?

「向こうも本気で始まったみたいだし、こっちも手加減無しでいかないとね…」

くっ…やるしか、ないのか…?


47 :364:2006/12/03(日) 05:30:19.06 0

<道重さゆみ>

「もう1回くらうのっ!
 必殺!!シャボン玉ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

シャボン・イールが大量にシャボン玉を吐き出す。
このスタンドの謎はまだ解けてないけど、攻撃をやめるわけにはいかないの!
攻撃こそが最大の防御!!

「HAHAHA!何度やっても同じだよ〜!!」
アヤカさんは変わらず余裕な表情を見せているの。
けどもうそんな表情はおしまいなの!
さゆみがただ同じ攻撃を繰り返すと思ったら大間違いなの!
さゆみの連続技…受けてみるがいいの!!

パチンッ…

ドゴゴゴゴゴゴゴゴガガガガガガガガガーーーーーーーーーーーーーン!!!!!

やっぱりアヤカさんが指を鳴らすとシャボン玉はひとつ残らず爆発した。
けど元よりこの攻撃が通るとは思ってないの!
一度防がれた攻撃でダメージを与えられるとは思っていないの!!
爆煙がアヤカさんを覆い隠すけど、それこそがさゆみの狙い!!
こちらからアヤカさんが見えないということは
向こうからもさゆみの姿は見えていないはず!
相手よりも常に先手を取り続けることがさゆみの必勝法なの!!


48 :364:2006/12/03(日) 05:31:33.21 0


ドスゥゥゥゥッッ!!


「うぐぅぅ!!」
またアヤカさんのほうから見えない弾丸が飛んできた。
大きさはテニスボールからソフトボールくらいかな。
でも耐えられないほどじゃない。
目に見えない何かを飛ばしてきたんだとしたら、さっきのシャボン玉の爆発も説明がつくの。
おなかを押さえつつ、煙が晴れて見えてきたアヤカさんを睨みつける。

「ダメージ2!同じ手を食らっちゃうなんて応用力が足りないよぉ?」
「ハァ…ハァ…そう言いながらアヤカさん本気出してないの。足元掬われて転んでも知らないの」
「あー、だって私が本気出しちゃうと大怪我させちゃうもん、
 ミチシゲちゃん可愛いからケガさせたくないなーって」
「じゃあ本気を出す前に再起不能になるといいの。
 さゆみの攻撃は……既に完了しているの!!!!!」



49 :364:2006/12/03(日) 05:32:21.36 0


フワン…フワ……フワン……


「WHAT’S!!?」


上空より降ってきたシャボン玉がアヤカさんを包囲する。
先ほどの爆煙が姿を覆い隠している間に上空にシャボン玉を放出した。
一方向からの爆撃には対応できたとしても、多方向からの一斉爆撃は
連鎖爆撃を巻き起こし、中央にいるアヤカさんを炎の渦に巻き込むの!!
爆撃の威力は抑えておくの…せめてものさゆみからの情け!
アヤカさんは動揺して左右を見回すが、もはや回避する道筋もない!
これでこの勝負も…決着ッッ!!

「シャボンッ……イィィィィィィィィィーーーールッ!!!!!」

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガーーーーーーーーーーーンンンンンッ!!!




50 :364:2006/12/03(日) 05:33:24.93 0

<亀井絵里>

「第2R…ひょっとしたら最終ラウンドになるかもしれないけどね。
 さぁいくよ!スタンピート&ダウンピー…」
「里田さん!1つだ!1つ、聞きたいことがあります!」
スタンピート&ダウンピートで僕に突っ込んでこようとした里田さんを止める。
「何?手加減とかつまんないことだったら聞かないよ?」
里田さんは不機嫌になりながらもスタンドで駆け出す構えを解く。
「里田さんが本気なのも、僕も本気でやらないと危ないのも分かりました。
 ……僕が『サイレント・エリザベス』で里田さんを何度蹴ったか覚えてますか?」
「はぁ!?そんなの覚えてるわけ…」
「答えてください!」
不満そうな里田さんを強い口調で抑えながら、ゆっくり、ゆっくりと距離をとる。
文字通り目と鼻の先にいる里田さんを見上げる格好だったけど、少しだけ離れることができた。

「何度って…『3回』じゃないの?
 さっき引っ張ってたときにスタンピート&ダウンピートのおなかを
 蹴ってくれちゃったやつ…あれけっこう痛かったんだけど」
そう、確かにエリザベスはその時に3回スタンピート&ダウンピートを蹴った。
でも…

「違いますよ…『4回』ですよ…。
 今さっき、踏み潰されそうになったのをよけてから4回目を蹴ってます」
「あのさぁ…何が言いたいわけ?
 回数とかさ、たくさん攻撃当ててるから勝ちだとでも言いたいの?」

「僕のスタンドの特殊能力の発動条件は整ってるんですよ!!エリザベス!!」
『ウェー!ウェー!!』


51 :364:2006/12/03(日) 05:34:15.40 0

フワ…フワ……

「なっ…これは!!?」
里田さんのスタンピート&ダウンピートはエリザベスの能力で宙に浮かび上がる。
「サイレント・エリザベスの特殊能力…4回蹴ったあとに呪文を唱えることで、
 相手を無重力にするんです。もがいても無駄ですよ、能力は解除されません」
浮かんだ状態でひたすらもがく里田さん。
エリザベスで3回蹴ったあと、里田さんはエリザベスの射程距離外に駆け抜けていったけど、
そのままでもう1回蹴ったことで発動条件を満たした。
多分エリザベスを解除してたり、別なものを蹴ったり浮かせてたらダメだった気はするけど。

「再起不能にはしません…ですが、戦闘はできないようになってもらいます!
 エリザベス!!いっけぇぇぇぇぇっ!!」

エリザベスが里田さんに突っ込む!
狙うのは里田さん本体の腕だ!
馬っていう動物は足が一本でも欠けたらまともに走ることはできない!
里田さん…申し訳ないけどその腕1本いただきます!!


52 :364:2006/12/03(日) 05:34:55.87 0


スカッ…


エリザベスの蹴りはまたしても空振りした。
里田さんのスタンピート&ダウンピートが『何もない空中を蹴って』飛び上がり、そのまま空中を走っている。
そんな!空中を走る能力だなんて!
これじゃあエリザベスの能力も効かない!!
それ以上に…地上だけじゃなくて空も走れるとなるとあのスピードがある分圧倒的に僕が不利だ!!

「ちょっとびっくりしたけど残念だったね!空中戦のほうがあたしも得意なんだよ!」
里田さんが空中を奔り、僕のほうへと駆け下りてくる!!


カロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッ!!


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!


間一髪スタンピート&ダウンピートの着地点から飛びのくと、僕はさらに数歩距離をあける。
「くっ、さ、サイレント・エリドリアンッ!」
僕はエリザベスを引っ込めてエリドリアンを出すと、そのまま里田さんに突っ込ませた。
何とか里田さんの動きを止めないと…エリドリアンの小回りで勝負だ!!


53 :364:2006/12/03(日) 05:38:09.93 0

<道重さゆみ>

アヤカさんを包囲したシャボン玉は確かにアヤカさんを巻き込んだ。
アヤカさんは回避せず、そのままシャボン玉の結界の餌食になったはず!


なのに…なぜ……



さゆみが倒れているの!!?



さゆみは結界の爆発にはもちろん巻き込まれていない。
さゆみの至近距離にはさゆみにまで威力の及ぶシャボン玉は配置していなかったはずなの!!
なのに、まるで結界のシャボン玉が爆発した瞬間、
まるでさゆみも『爆風に吹っ飛ばされた』ような衝撃を受けて吹き飛んだの!
まるで『さゆみ自身がシャボン・イールの結界の中にいた』ように!!

もしもこれがアヤカさんのスタンドの能力だとしたら…
さっきの『指を鳴らしたら爆発したシャボン玉』は…!
『爆風を縫って飛んできた見えない弾丸』は…!!
『上着を一煽ぎしたら爆発したシャボン玉』は…!!!
『結界の中にいるように爆風を受けたさゆみ』は…!!!!

アヤカさんの能力は…音を衝撃波に変えて射出する能力!!


54 :364:2006/12/03(日) 05:39:28.80 0

こ…これはまず過ぎるの!!
さゆみのシャボン玉は爆発するときに『爆音』を発するの!
今のように『爆音』を衝撃波として打ち込まれたら…良くて相打ち!!
さっきまでの『必殺・シャボン玉』を爆発させるに留めて『衝撃波』を打ってこなかったのが手加減…!
さゆみのシャボン・イールと…相性が悪すぎるっ!!
何か…何か、手を考える必要があるの……!

「イタタタタ…ホントにすごい威力だね…ミチシゲちゃん…
 咄嗟に爆発と同威力の衝撃波を設置してなかったら多分やられてたよ…」
爆煙の中からアヤカさんが姿をあらわす。
服はボロボロで、あちこちから血が滲んではいるけど、火傷の跡はない。
シャボン玉の結界が連鎖爆発を起こす瞬間、同威力の衝撃波を結界の内側に設置して
衝撃で結界の爆発を相殺軽減したみたいなの。
結界の威力は半減!アヤカさんはまだまだ戦えるはずなの。

「これで分かったかなぁ?アタシが本気出すとミチシゲちゃんは勝てない、って言った意味。
 でも、正直、アタシも相打ちとかヤだし、ミチシゲちゃんも痛い目見るのヤでしょ?
 自分の爆弾で自滅しちゃうとかさ」
「………」
さゆみはシャボン・イールをアヤカさんに向けたの。
でも…どう狙ってもアヤカさんだけを爆撃できるイメージが沸かない…
勝ち目が…見えないの…!
「ほら〜、そんな物騒なものしまっちゃいなよ!SMILE!可愛い顔が台無しだよぉ?」
「………」
とはいっても…シャボン・イールを解除するわけにはいかないの…
どうする…?


55 :364:2006/12/03(日) 05:40:55.58 0

「しょうがないなぁ〜、ちょっとだけ…ちょっとだけ痛くするよ?
 ちょっと動けなくなってもらうから…」


ギィッ……バタン!!


アヤカさんがすぐ傍に立てかけてあった板を倒した。
思わず身構えたけど、衝撃波は飛んでこなかったの。
アヤカさんはその板の上に乗ったの。

板…まさか!!


「ミチシゲちゃんはさ、タップダンスって知ってる?
 金属の板を打ち付けた靴を履いて、床を踏み鳴らして踊るの、リズミカルな音が鳴るんだよ」


やっぱりそうなのっ!!
アヤカさんは踵の高いブーツを履いてて、タップダンスのような軽快な動きはできない。
けど、その分踵は高い音を出すはず!
『連続したリズミカルな音』の衝撃に襲われたら!?
これは…まずいのっ!!

「SHALL WE DANCE!ミチシゲちゃん!!」


タンタンタタンダンタタンタンタンダンダダンダタンタンタタンタン!!




56 :364:2006/12/03(日) 05:42:19.42 0

「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
アヤカさんが板の上を飛び跳ねる!!
それに合わせ、硬いボーリングの玉のような衝撃波がたくさん飛んでくるぅぅぅ!!
シャボン・イールで受け止めるけど、一撃一撃が重いのっ!!
打撃のダメージは受けないけど、腕が痺れるっ!耐え切れないっっ!!

「あぁぁぁぁぁぁっ!!シャボン玉ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


ドババババババババァァァァァァァァァン!!!!!!


さゆみは飛んでくる衝撃波にシャボン玉の砲撃を打ち込んだの!
衝撃波はさゆみのシャボン玉に命中して爆散する!!
これでタップの音の衝撃波は防げ…ッ!!


ドババババババババァァァァァァァァァン!!!!!!


さゆみが打ち出したシャボン玉の爆発の衝撃波に吹っ飛ばされたの!!
自分のスタンドながら大した威力なの…
この場所はまずいの。早く…距離をとらないと、爆煙が隠しているとはいえ、いいマトなのっ!!
アヤカさんの気づかない場所から砲撃でもしない限り…さゆみの勝ち目はないのっ!!

「逃がさないよ!共鳴重低音衝撃刃(ハウリンガー)!!!!!!!!」

アヤカさんが叫ぶと同時に、爆煙が晴れていく!
いや…何か風のようなものに煙が吹き飛ばされていくの!!
地面を目に見えないノコギリのようなものが切り裂きながら走ってくるのっ!!!
これも衝撃波!!?


57 :364:2006/12/03(日) 05:43:13.13 0


ギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリ!!!!!


衝撃波のノコギリはまっすぐにさゆみのもとへ走ってくる!!
このままじゃあ切り裂かれちゃうのっ!!
「しゃ、シャボン・イールッ!」
爆発で衝撃波を爆散させなければっ!!
シャボン玉を衝撃に向かって打ち出すっ!!


シュパッ……ドッゴォォォン!!


そんなっ!衝撃波はさゆみのシャボン玉を切り裂き、そのまま突っ込んできたの!
切り裂かれたシャボン玉はもちろん爆発したけど、衝撃波を止められなかったの!!
衝撃波のノコギリがっ…うぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!


シュパァァァァァァァァァッ!!


59 :364:2006/12/03(日) 06:27:35.78 0

<亀井絵里>

「上っ!右!!そのままくぐって反対側に!」
僕はサイレント・エリドリアンに細かな指示を出し、スタンピート&ダウンピートの動きを撹乱する。
一人一体が原則のスタンドなのに、僕がエリザベスじゃあないスタンドを出したことに驚いたのか、里田さんの反応が一瞬遅れ、エリドリアンは里田さんの周りを飛び回って動きを制限している。
といってもいつまでも逃げ回っているつもりもない。
狙いは…一瞬!!

「このっ…チョコマカとぉぉ!!」

カロッカカッ!!

痺れを切らした里田さんはスタンピート&ダウンピートを操り、高く飛び上がる!
でもそれは僕の狙い通り!!
飛び上がってからしばらくは空中であれ地上であれ、体制を整えるのは難しいはず!
そして…エリドリアンのスピードはラッシュ・フォーメンに…バイクに匹敵するほどに早いっ!!
「何っ!?」
「食らわせろっ!エリドリアン!!」

ベッシィィィィィィィィン! …ポーン

やったぞ!音の概念を奪ってやった!!
そのまま空中に静止しようとした里田さんはいきなり体制を崩し、地面に落ちてきた。
そうか!馬って動物は走ると当然かなり揺れる!
振動を含めた音を概念を奪われたから、空中を走るバランスを崩したんだ!
スタンピート&ダウンピートは無事に地面に着地したけど、里田さんも何が起こったのか分からず動揺している。
このチャンスは逃さないっ!!
「おぉぉぉぉぉっ!!デェラデラデラデラデラデラデラデラデラデラ!!」
エリドリアンが両手で里田さんの音の概念を抱えたまま、里田さんにしっぽのラッシュを繰り出す!!


60 :364:2006/12/03(日) 06:28:11.91 0


ドババババッ…カロッカロッカロッカロッカロッカロッ!!


畜生、惜しいっ!!
数発は叩き込んだけど、スタンピート&ダウンピートはそのまま駆け出すとエリドリアンの射程距離外へと逃げ出してしまった。
あれじゃあ戦闘不能のダメージには全然軽いっ!!
同時にエリドリアンの持っていた里田さんの『音の概念』が空中に溶けるように消え去った。
エリドリアンの射程距離外に行ってしまったから音の概念が里田さんに戻ったんだ!

カロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッ…

走り去った里田さんとスタンピート&ダウンピートが戻ってくる。
少し距離を置いたところで立ち止まった。
あの距離…エリドリアンのギリギリ射程距離外だ…
さっきのあの格闘だけでエリドリアンの射程距離まで見切られるなんて…
これでこの手も使えない…どうする…亀井絵里っ!!

「ちょっとー、びっくりするじゃん!スタンドがいきなり変わったのもそうだけど、今の能力!
 スタンピート&ダウンピートが空を駆けられないなんて初めてなんだからね!」
「その割には対応が早かったじゃないですか。もうちょっとで勝てると思ったのに…」
「ほらー!こんなアザになっちゃってんじゃん!どうしてくれんのさ!」
里田さんが腕を捲ってみせる。そこには青々とエリドリアンのしっぽ型のアザがついている。
「里田さんが本気でこいって言ったんじゃないですかぁ!」
「そうだね、それに…亀井ちゃんもアタシの能力を全部見切ったわけじゃないんだよ!」
「えっ!!?」
ま、まだ他にも能力が!?
「ただの馬じゃないってことだよ!!ハイヨーォ!スタンピート&ダウンピート!!」



61 :364:2006/12/03(日) 06:28:55.44 0


カロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッ


里田さんがスタンピート&ダウンピートを馳せる!!
咄嗟に横に飛び退こうと身構えたが、どういうわけか里田さんは
斜面を駆け上がるように僕の頭の上を駆け抜けていった。
な、なんだ…?何をする気だ…?
僕はスタンピート&ダウンピートを目で追うために里田さんを振り返る。


カカッ!!


振り返った僕の目に映ったのは、僕に向かって飛び降りてくるスタンピート&ダウンピートだっ!!
今の蹄の音!空中を駆けるためじゃあなく、転回するための着地音!!
水平にではなく、垂直に空中を蹴ったんだ!
そしてこの場所はまずいっ!!
このままじゃあ踏み潰される!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ズドォォォォン!!  カロッカロッカロッカロッ…


横に飛び退き、間一髪かわす。
スタンピート&ダウンピートはそのまままた空中へと駆け上っていく!
まさか…里田さんは…この動きはまさかっ!!
慌てて僕は手を突いて立ち上がり、里田さんに向き直る。


62 :364:2006/12/03(日) 06:29:48.51 0


カカッ!!


やっぱりだっ!!
里田さんはまたしても垂直に壁を蹴ると、転回して僕のほうに跳んでくる!
普通の馬じゃあなくてスタンドだからできるこの動き!
三角飛びで常にヒットアンドアウェイを繰り返す!!
一撃でももらったらアウトだ!!
攻撃をかわし続けるしかない!


ズドォォォォン!!  カロッカロッカロッカロッ…


また飛び退いてかわし、体制を整える。
里田さんは背後で三角飛びでまたこちらに飛んでくる!!
何とかしなきゃ…スタンドを出す余裕すらない!
しかも出したところでエリドリアンもエリザベスももう攻撃は読まれてる!
残るエリーゼでどうやって……
って考えてる場合じゃない!!
よけないと…ダメだ距離が近すぎるぅぅぅぅっ!!


ドバッシィィィィィィィィィィィィィン!!


慌てて横に飛び退いたけど、反応が遅かったせいで完全にかわしきれなかった。
踏みつけられはしなかったけど、スタンピート&ダウンピートの胴体に
まともにタックルを食らう形になった僕の身体は、まるで紙切れのように吹っ飛んだ。


191 :364:2006/12/05(火) 23:10:01.26 0

<道重さゆみ>

うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!痛いっ!痛いのっ!!
振動のノコギリはさゆみの右足を切り裂き、衝撃で仰向けに倒れた
差ゆみの右腕を文字通り轢き裂いていったの。
骨とか神経までは達してないとは思うけど、痛みで立ち上がれないし、
右腕が上がらない。
シャボン・イールでまともにアヤカさんを狙うのもできそうにないの。

「…ね、もうやめようの?あんまり私もこういうのイヤだしさ、
 ミチシゲちゃんももう動けないでしょ?PLEASE GIVE UP!降参して?」
アヤカさんは血で染まったさゆみの手足を見ながら眉を顰める。
「…っ、絶対、やなの…どうしてもっていうなら、さゆみを再起不能にすればいいの…」
「Ummmmmmm〜…それがヤだって言ってるのに〜…これ以上は無意味じゃない?」
「そんなことはないの…まださゆみは起死回生の一手を隠してるかも…」
「あのねぇ、ミチシゲちゃんのスタンド攻撃が私に聞かないのは
 何度もやってるから分かるでしょ?相打ちにもならないよ?
 大体ミチシゲちゃんもう戦える身体じゃないじゃない!スタンドも消しちゃってるし…」
何とか身体を起こしたけど、立ち上がることができないの。
「…シャボン・イールを消してなんかいないの、ちゃんと右腕に巻き付いてるの」
…この人には、正攻法じゃ勝てないの。裏を、虚を突かないと勝てないの。
「そんなこといったって、いないよ?もうスタンドパワー残ってないんだから
 無理しないほうが…」


「……アヤカさんの右腕に!!」




192 :364:2006/12/05(火) 23:10:35.81 0


「WHAT’S!!!??」
アヤカさんが慌ててWOW×3を振り返る。
WOW×3の右腕には、さゆみのシャボン・イールが巻き付いてるの。
それも普段さゆみの腕に巻き付いてるのとは逆に、口をアヤカさんの身体に向けて!
おしゃべりは傷で動きの鈍ったシャボン・イールを辿り着かせるための
時間稼ぎプラス、さゆみに意識を向けてシャボン・イールを見失わせるため!
十分にスキは突けたの!この至近距離では衝撃波で相殺して防御することも不可能!
爆音の衝撃波を放ってくることもないの!
反撃を考えたら確実にアヤカさんも再起不能になる、相打ちになるから!
今のさゆみにできる最後の反撃を食らうのっ!!

「シャボン玉ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」



ドッゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーン!!!!



ハァ……ハァ……これだけは本当に使いたくなかったさゆみの最後の切り札なの。
一度取り付かせてしまえば体液のビジョンでヌルつくシャボン・イールを
引き剥がすのはほぼ不可能とはいえ、スタンドを自分の身体から離すから
失敗したら自爆技にもなりかねない。
おまけにシャボン・イールが巻き付いてる相手を爆破するから
威力調整に失敗したらさゆみにもダメージがきかねない。
ま、今回はかなり加減したから致命傷にはなってないと思うの。
しかし参ったの…こんなにボロボロになるとは思わなかったの。



193 :364:2006/12/05(火) 23:11:33.03 0

「戻るのっ!シャボン・イールッ!」
爆煙の中からシャボン・イールが飛び出してきて、さゆみの左腕に巻きついた。
右腕はもう使い物にならないの。左腕で使ったことはないけど、扱えなくはないはずなの。
勝負はついたはず…。外へ行って絵里と合流しないと…
ってこの足じゃ無理っぽいの。絵里が来るまで待とうかな…。



ギャリギャリギャリギャリギャリィィィィィィッ!!!



突然衝撃波のノコギリが前から走ってきて、さゆみのすぐ左をかすめていったの。
今のは…さゆみの右手足を切り裂いたアヤカさんのハウリンガーとかいう技!!
まだ終わってないの!!当たらなかったけど、この技は危険なの!!
咄嗟に左腕のシャボン・イールを正面に構える。


「ハァ…ハァ…ハァ……ホントに死ぬかと思った…」
煙の中から出てきたアヤカさんは、片方の肩から腕とほっぺたが火傷だらけになってたの。
でもそれほど重症とも思えない。
やっぱり威力が少し弱かったみたいなの…!


194 :364:2006/12/05(火) 23:12:46.46 0

「シャボン・イー…」
「WOW×3!!」


ギュィィィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!


アヤカさんのWOW×3が両手を正面に突き出して構えると、耳障りな音を発しだしたの!!
耳が、耳が痛いのっ!!
耳が痛くて頭がおかしくなりそうなのっ!!
これはスピーカーにマイクを向けたときになる『ハウリング』なのぉぉ!!
さゆみがさゆみがアヤカさんに打ち込もうとしたシャボン玉は狙いが大きく外れて
天井に向かっていって爆発した。

パチン!!

アヤカさんが指を鳴らすと、ハウリングの音は止まったの。
「THIS IS LAST CHANCE…PLEASE GIVE UP?
 さっきの共鳴重低音衝撃刃(ハウリンガー)はわざと外したけど、次は狙うからね」
アヤカさんの顔にももう余裕とかはないの。
WOW×3が掌を開いてさゆみに向けて見せてきた。
掌には網目のついた穴…スピーカーがついているの。
「WOW×3はこの掌のスピーカーから音や衝撃波を出してるの。
 この掌から出る共振し合う重低音の振動を衝撃波に変えたのが
 『共鳴重低音衝撃刃(ハウリンガー)』。
 もし今度ミチシゲちゃんがシャボン玉を打とうとしたら、今みたいにハウリングを
 起こして狙いを狂わせた上で、共鳴重低音衝撃刃(ハウリンガー)でミチシゲちゃんを切り裂くよ。
 もしさっきみたいにWOW×3にそのスタンドを巻きつけてくるなら…」




195 :364:2006/12/05(火) 23:13:51.83 0



ズガァァァァン!!


WOW×3が地面を殴りつけた。
地面はWOW×3の拳よりも一回り大きく凹んだの。
「掌のスピーカーから出る重低音の波を直接対象に打ち込む『重低音干渉波掌(ズーンホーン)』…
 これで直接スタンドを殴りつける。
 もちろん私自身にもダメージは来るけど…スタンドのダメージは本体に還る。
 人間の身体は水分が多いから、今殴ったコンクリートよりも威力は数段上だろうね」
確かに…シャボン・イールは殴ったダメージは無効化するけど、
音波とかそういうダメージは防げないの。
もし殴られたら…さゆみは確実に一撃で再起不能にさせられるの!

「ミチシゲちゃん、5秒あげる。今からアタシが5秒でミチシゲちゃんのほうに
 歩いていくから、それまでの間にギブアップして。
 しなかったら…重低音干渉波掌(ズーンホーン)でミチシゲちゃんを殴って気絶させて
 おしまいだけど、痛いし、どうなるかは分かんない…」
アヤカさんはギブアップを勧告する優しい顔から真剣な顔になると、
ゆっくりとさゆみに向かって歩き始めたの。


「5……」





196 :364:2006/12/05(火) 23:14:32.35 0

<亀井絵里>


ドサァッ!!

スタンピート&ダウンピートに吹っ飛ばされた僕は、数メートルも吹っ飛んで地面に落ちた。
い、痛い…!
狭い範囲で飛び回ってたからスピードは出てなかった分、それほどひどいダメージは
受けなかったけど、それでもこの威力、衝撃!!
撥ね飛ばされたからこれだけで済んだけど、全力疾走のこれをまともに
食らってたらこれで決まってた!
吹っ飛ばされた右肩を押さえて立ち上がる。


カロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッ!!


里田さんは僕を撥ね飛ばした後、そのままずっと遠くまで走りぬけた。
そして転回すると、速度を上げて一気に僕に突っ込んでくる!!
速い!!あっという間に距離が詰まってくる!!
里田さんはこれで決める気だ!!



197 :364:2006/12/05(火) 23:15:05.21 0

だけど…僕にとってもここが逆転のチャンスなんだっ!!
里田さんは気付いてない、さっき僕が吹っ飛ばされたときに、
スタンピート&ダウンピートの腹にサイレント・エリーゼをしがみつかせたのを!
エリドリアンやエリザベスよりも射程距離の長いエリーゼだから、僕を跳ね飛ばして
走り抜けた後もスタンピート&ダウンピートに引き剥がされずにへばりついている!!
加速がついた状態でエリーゼが里田さんに近づけるこのチャンスを待ってたんだ!!
僕はスタンピート&ダウンピートの進路から横っ飛びに飛びながらエリーゼに命令を出す!!


「いっけぇぇエリーゼッ!ミュージックッ!スッタァートッ!!」








エリーゼの周囲の音が消える!
横っ飛びに飛んだ僕に合わせて進路を変えようとしていたところで、
突然音が聞こえなくなったことに驚いた里田さんが目を丸くしている。
その顔にスタンピート&ダウンピートの腹から飛び出したエリーゼがへばりついた!!
里田さんは振り払おうとするけど、スタンドにはスタンドでしか触れない!
里田さんはエリーゼには触れられない!
聴覚と視覚の二つを奪われた里田さんはスタンピート&ダウンピートを止めようとする。
けど、これだけスピードが乗った状態で簡単に止まれるわけがない!!



198 :364:2006/12/05(火) 23:16:18.40 0


ドゴォォ…   シーン





背後のほうで聞こえたさゆのと思われる爆発音が消えた。
里田さんが近づいてきて僕も能力の効果範囲に入ったみたいだ。
里田さんの直進の軌道は僕を轢くには少しずれている。
そしてその先にあるのは…倉庫の壁!!
このまま激突したら…僕の勝ちだっ!!


カロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッカロッ!!


スタンピート&ダウンピートが僕のすぐそばを通り抜けた。
それを追いかけて振り返ろうとする僕の目に奇妙なものが映った。




199 :364:2006/12/05(火) 23:17:19.18 0


スタンピート&ダウンピートが通り抜けた横、向こう側。

何で里田さんが錐揉みしながら転がってる??

顔にはエリーゼがへばりついたままだ。アレは偽者とか目の錯覚とかじゃあない。

……まさかっ!!

慌てて背後を振り返る。




スタンピート&ダウンピートも、激突した跡もないっ!!!!!




音を消していたから確かに激突した音は聞こえなかった。
けど激突していない!?
考えられることは一つ!
里田さんは壁に激突する前にスタンピート&ダウンピートから飛び降りて、スタンドを消したんだ!!
そのまま消しても、慣性で里田さん自身は激突する。最短で最小ダメージのかわし方だ!
…じゃあ今スタンピート&ダウンピートはどこに!?
音が消えて蹄の音が聞こえない。とすると!僕が里田さんだったら!!



「……………!!(上だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!)」



200 :364:2006/12/05(火) 23:18:31.48 0

スタンピート&ダウンピートはまっすぐに僕の上に飛び降りてくるところだ!
左右にかわしてるヒマはないっ!!
正面に飛び込むしかないっ!!


(ズッゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッン!!!)


僕の背後でスタンピート&ダウンピートが着地した気配がした。
エリーゼの能力が聞いてるから僕には着地音は聞こえない。
でも蹄の音で場所が分からないのは危険だ!
エリーゼの能力を解除して、戻さないと…っ!!


(ドスゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!)


「…っぁぁぁァぁぁあああああああああっ!!!!」
突然、背後から重い打撃が2発、同時に背中に入り、僕は吹っ飛ばされてうつ伏せに倒れた。
前に飛び込んで、スタンピート&ダウンピートの着地からは逃れたものの、
ちょうどスタンピート&ダウンピートの後方にいる形になった僕は、後足で蹴りつけられたらしい。
痛い…身体を起こすことができない!
あばらにヒビくらい入ってるかもしれない。

「危なかったよ、スタンピート&ダウンピートから飛び降りるのがあと1秒でも遅かったら、
 勝負は逆転してただろうね。
 それにしても、変形するスタンドなんて、かなり厄介な能力持ってるよねぇ」
何とか顔を動かすと、スタンピート&ダウンピートを隣に従えた里田さんが
僕のすぐそばに立っているのが見えた。

「さて、チェックメイトかな?」


89 :364:2006/12/13(水) 00:03:58.79 0

<道重さゆみ>

アヤカさんがゆっくりと距離を詰めてくるの!
シャボン玉で足を止めようにも音が邪魔で狙いが定まらないの!
そしてこのままギブアップしなければさゆみはまた衝撃波を食らうの!
かといってギブアップなんて絶対に嫌なの!


「4…」
あと数メートルしかないの!
さゆみ1人では…もう…逆転の手は……ないのっ!


「3…」
「ち、ちょっと待ってほしいの!」
さゆみはアヤカさんを刺激しないためにシャボン・イールを左腕から消して話し掛けたの。
「なぁに?ギブアップする?」
「う…ちょっと、それ以上、近づかないで欲しいの…」
「mmmmmm…理由のない行動なんて存在しないよ、ミチシゲちゃん。
 近づいて欲しくないなら、その理由をはっきりさせてほしいかなぁ?」
「…理由は………射程距離に入るから…」
「可笑しなこと言うね、ミチシゲちゃん。
 近付いてるんだから射程距離に入るのは当たり前でしょ?
 勝負してるんだし、『勝てないから』近付かないで、ってのは聞くわけにいかないなぁ」
「…………」
アヤカさんは止めた足を再び動かし始めたの…。




90 :364:2006/12/13(水) 00:04:48.06 0

<亀井絵里>

「いやー、しっかし面白い能力だよねー。
 3種類の形と、3種類?の能力かー、よっちゃんやアヤカとは全然違うねー」
里田さんが僕を見下ろしながら楽しげに喋っている。
「けっこう射程距離長いから焦ったよー。
 最後に使った音を消す能力?かな、ホントギリギリだったし、
 相手を浮かせる能力だって、あたしじゃなきゃ多分負けてたね」
「何を感想戦に入ろうとしてるんですか!まだ勝負は…ついて、ません!」
僕は必死に両手をついて起き上がる。
痛い…立ち上がるのは無理そうだけど、里田さんを真っすぐに見据える。
「そんなこと言ったって、亀井ちゃんもう動けないでしょ?
 もう戦えないじゃん、勝負はついてるよ」
「この指令…勝負はもともと2対2のはず…まだ…勝負は…ついてません!」
僕の言葉に里田さんが少しキョトンとした目を向ける。

「2対2?確かにそうだけどさぁ、じゃあ何?道重ちゃんがアヤカを倒して助けにくるとでも?」
「それは分かりません…さゆだって苦戦してるかもしれない…
 勝ったとしても、僕を助けにこれるとは限らない」
「…ッハハハ!それじゃあダメじゃん!道重ちゃんがアヤカに負けてたらどうするのさ!?」
「でも、あくまでも2対2の勝負ですから、里田さんたちが勝つためには、
 戦闘不能の僕と、さゆの両方の姿を見届ける必要があるんじゃないですか」
「まぁそうだけどね、勝ったほうが出てくるでしょ、あたしはアヤカが勝つと思うけど」




91 :364:2006/12/13(水) 00:05:30.85 0

<道重さゆみ>

「…さゆみの能力じゃあアヤカさんには勝てないの…」
さゆみの言葉にまたアヤカさんが足を止める。

「それはGIVE UPって意味かなぁ?ミチシゲちゃん?」
「…違うの…まだ負けてないの……さゆみと絵里はまだ負けてないの!!」
「…あのねぇ…ミチシゲちゃん……」

「……ホントはさっきのシャボン玉、ハウリングで狙いが狂ったんじゃなくて、
 始めから天井を狙ってたの」
「……?」
アヤカさんはわけが分からない、といった表情をしているの。
「シャボン玉は目印……以前にもそういえば目印として使ったことがあったの…」
「……!!」
アヤカさんが気付いたようなの!!でももう遅いっ!!


「人は『来い』と言うと用心して入らない。『来るな』というとムキになって『近づいてくる』の!!
 アヤカさんは既に『射程距離』に入っているの!!」
さゆみの背後からスタンドが飛び出すっ!!
さゆみのシャボン・イールとは違う、甲羅のような鎧に身を包んだスタンド!!
アヤカさんのWOW×3が身構えるけど、もう遅いのっ!!!

「WOW×3!!共鳴重低…」
「サイレント・エリーゼACT2!サイレント・エリドリアン!!」


ベッシィィィィィィィィィン!!!!! ポーン…




92 :364:2006/12/13(水) 00:07:32.07 0

<亀井絵里>

「…さゆのスタンドはシャボン玉型の爆弾を吐き出すスタンドなんです」
「は?何?いきなり仲間のスタンドバラしたりして」
「シャボン玉爆弾はすごい破壊力なんですよ。
 まともに食らったら確実に再起不能になるでしょうね」
「何?だから道重ちゃんが勝つとでも言いたいの?
 道重ちゃんの能力がそれだけならアヤカは負けないよ。
 アヤカの能力はどんな能力にも対応できる」
「おかしいんですよね…さっき、僕が背中を蹴られてエリーゼの能力を解除して
から、爆発の音が聞こえないんですよ…」
「勝負がついたからじゃないの?道重ちゃんがその爆弾を打てなくなって」
「さぁ…どうでしょう…」
僕は里田さんに意味深に笑みを見せる。

「!! まさか亀井ちゃんあなた、中の音を消して!?」
里田さんが倉庫を見つめて狼狽する。

この瞬間を待ってたんだ!!
里田さんの思考がそちらに向くように僕の能力を全て見せ、中に注意を向けた!
「違いますよ…さゆのスタンドの爆発音が聞こえないわけは!!」

僕は『それ』が巻きついた右腕を里田さんに向ける!!!


「シャボン・イールッ!!」


ドッゴォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!


93 :364:2006/12/13(水) 00:08:27.18 0

<道重さゆみ>

アヤカさんは『絵里のスタンド』に強かに尻尾で打ち据えられ、崩れ落ちた。
かろうじて共鳴重低音衝撃刃(ハウリンガー)の発動前にこちらの攻撃を叩き込むことができたの。
「い…今のスタンド…!?何が…!?」
アヤカさんが起き上がり、WOW×3を構える。
「共鳴重低音衝撃刃(ハウリンガー)!! ………!!?」
WOW×3が両手を振り下ろす!
けど衝撃波のノコギリは出現しないの!
「もうそんな技は効かない…というか使えないの。
 最初の指を鳴らすのといい、ハウリングといい、さゆみの爆発といい…
 衝撃波の発動の前に、『音』が発生していたの」
「衝撃波が…音が…聞こえない!?」
さゆみのすぐ上には、絵里のサイレント・エリドリアンがアヤカさんの
『音の概念』を持って浮かんでいるの」
「だから絵里の能力で音を奪えば、アヤカさんはもう衝撃波を打てないってわけ。
 …って、こうして解説してるのも聞こえないんだったの」
危なかったの…絵里と2人でなかったら、勝てなかったの…。
聞こえてないなら、これ以上のおしゃべりの必要はないの。

「再起不能にはしないの…けど、ここまでやられた分のお返しはさせてもらうのっ!!
 絵里っ!セリフを借りるのっ!!ラデラデラデラデラデラデラデラデラデラッ!!!」


ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!


「…デラックスッ!!」

ドッギャーン!


94 :364:2006/12/13(水) 00:09:33.94 0

<亀井絵里>

僕の右腕に巻きついたシャボン・イールはスタンピート&ダウンピートの右前脚を爆撃した!
これが…さゆのスタンド……。
ヌルヌルするビジョンに覆われてて、ヌルついてはいるけど、不思議と不快な感じじゃない。
きっとスタンドが離れたなら、このヌルヌルもなくなっちゃうんだと思う。
それにしてもこれまで隣で戦ってきて、何度も見てたけど、何て凄まじい威力だろう。

「うっぐぅぅぅぅぅぅっ!!う、腕がっ……!!」
里田さんが右腕を押さえて苦しんでいる。その腕は火傷でボロボロになっている。
これじゃあもうスタンピート&ダウンピートで走ることはできないだろう。

「僕のスタンドもさゆのスタンドも遠隔操作ですからね。
 お互いの場所さえ分かれば、スタンドを入れ替えることは可能なんですよ」
「で、でもっ!倉庫の中の様子なんて…!」
「言ったじゃないですか、『音』ですよ、シャボン玉の。
 里田さんは聞こえてなかったかもしれないですけど、けっこう中の音聞こえてましたよ」
 さゆの居る方向に蹴られるのも計算どおりだったんですけどね、
 これほど痛いとは正直思ってなかったですけど…」
「あ、あれさえも計算だったってこと…!?」
「…さ、里田さん、降参してください。中の勝負もついたみたいです」
僕はシャボン・イールを里田さんに向けて構える。
「な、何言って…お互い動けない、これは引き分けじゃ…」
「同じ遠隔操作といっても、サイレント・エリーゼと違ってさゆのシャボン・イールは
 視覚を本体と共有してないんです。倉庫の中にいるさゆにはここの様子は見えない…。
 シャボン玉を吐くのは2秒後かもしれないし1分後かもしれないんですよ!」
「ちょっ……!」


95 :364:2006/12/13(水) 00:10:06.80 0

「降参してください!これは僕のスタンドじゃないんです!
 僕の言うことを聞くわけじゃない!!」
シャボン・イールが口を開くっ!!シャボン玉が発射されるぅぅ!!
今の里田さんが必殺・シャボン玉を食らったら…!

「わ、分かったよ!参った!!まいったって!!」


プッシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!


里田さんのギブアップの言葉より一瞬早く、シャボン・イールからシャボン玉が吐き出された。




96 :364:2006/12/13(水) 00:11:27.03 0

     ◇     ◇     ◇



「引き分け、って感じかな…あたしら的には勝負に負けて試合に勝った、みたいな?」
僕に肩を貸しながら倉庫に入った里田さんがぼやく。
倉庫の中には、血とススまみれのさゆと、ボコボコになったアヤカさんが倒れていた。
里田さんは僕を床に下ろすと、携帯を出して電話を掛け始めた。


そう、里田さんは最後のシャボン玉の爆撃を受けなかった。
シャボン・イールからシャボン玉が発射される直前に、ここに来る前に
さゆから預かったお守り、「シャボン玉セット」のストローをシャボン・イールに咥えさせた。
吐き出されたのは爆弾じゃなくて普通のシャボン玉、だから爆発はしなかったんだ。

僕はそのまま地面を這ってさゆたちに近づく。
アヤカさんはあちこちに火傷の痕はあるけど、見た目ほど重症ではないっぽい。
「Nice Reversal!びっくりしたよ〜!」
なんて笑ってる。
さゆはススまみれで、腕と足を切り裂かれている。
「絵里遅いの〜、もっと早く来てくれないとさゆみもこんなボロボロにならなかったのに…」
これだけ話せれば大丈夫だとは思うけど、随分怪我させちゃったな。
4人の中で一番ボロボロだし、僕がもっとしっかりしてれば…
「まぁでも、合図も分かってちゃんと来てくれたし、
 さすが絵里、さゆみのことよく分かってるの」
さゆの言葉に、ちょっとだけ心が軽くなったような気がした。


97 :364:2006/12/13(水) 00:12:11.22 0


「あーもしもしよっちゃん?あーうん、終わったよ。
 悪いけど救急車呼んで救急車。4台ね、もう全員ボロボロでさ。
 えー!?やだよ、もうスタンド絡みは当分コリゴリだよ。
 うん、じゃあ待ってるよー」


吉澤さんに電話を掛けてたらしい里田さんが電話を切る。
「あの…今回はいろいろすいません、かなりやり過ぎちゃったし…」
「あー、まぁお互い様だしね、アヤカやり過ぎだよ、道重ちゃんボロボロじゃん!」
「ホントごめんね〜、ちょーっとやり過ぎちゃったしね…」
「かなり痛いけど、これくらいなら舞台までに治るし、平気なの」
4人でお互い謝って、苦笑いを繰り返す。
「でも戦い慣れてるのもあって、かなり手強かったと思うよ。
 亀井ちゃんはそうだなぁ、ちょっと小手先に頼りすぎかな、って思ったけど。
 柔よく剛を制すって言うけど、スタンドだと逆もありえるしね、ほら」
里田さんがアザになってるエリドリアンで叩かれた腕を見せてくる。
「剛よく柔を断つ、ってこともあるの」
そっか…特に僕みたいなタイプのスタンドは柔と剛を使い分けなきゃいけないんだなぁ…。
今回はさゆを守る、っていうよりさゆといっしょに戦う、って感じだったし、
これまでさゆといっしょのときに難しく考えすぎてたのかもしれない。


ピーポーピーポーピーポー…


救急車がやって来て、僕らをそれぞれ病院に運んでいく。
里田さんやアヤカさんとはその後入院中に仲良くなれたし、ちょっと自信もついたし。
大怪我はしたけど、配役の変更もなかったし、それほど不運ってほどでもなかったの…かな?




98 :364:2006/12/13(水) 00:13:27.31 0


亀井絵里  入院 全治3週間
スタンド名:サイレント・エリーゼ
道重さゆみ 入院 全治4週間
スタンド名:シャボン・イール

里田まい  入院 全治2週間
スタンド名:スタンピート&ダウンピート
木村絢香  入院 全治3週間
スタンド名:WOW×3

TO BE CONTINUED・・・