498 :364:2006/05/02(火) 22:36:28.05 0
銀色の永遠 〜高橋愛はルノアールを男役にする〜@


「あれー?今日みっちゃんどうしたのー?」
「あー、何か昨日の寺田先生の指令のときに腕の骨にヒビ入ったって、今日ガッコ休んでるっしょ」
「マジで?なんでみっちゃんってスタンドはあんなにスゴ腕なのに
 あんな指令のたびにケガするんだろ?」
「何か指令は無傷で済んだらしいけど、帰り道で階段踏み外したらしいべさ」
「マジで、指令関係ないじゃんw」
「ドジというか、何というか…」
「いい子なんだけどねぇ…」

「ねぇよしこー、悪いけど着替えるからちょっと出ててくれないかな?」
「飯田さん!よしこ言わないでくださいって言ってるじゃないですか!」
「ほら、いいからよしこ早く出てったら!」
「梨華ちゃんまでぇ!
 うぉぉっ!!って飯田さん!何もう脱いでるんですか!」
「あれ?まだいたんだ?何、もっと見たい?いいよ、よっすぃなら」
「ちょ、飯田さん!何言ってるんですか!」
「もう真っ赤になっちゃって〜可愛いなぁ」
「もう飯田さん何やってるんですか!よっすぃも早く出てって!」
「はいはい…orz」




499 :364:2006/05/02(火) 22:36:45.55 0
「あれ?柴田さんちょっと髪の色変えて、イメチェンですか?」
「あ…うん、ちょっとね…」
「すごい似合ってますよ!大人っぽくキレイになって…
 絵梨香が男だったら放っときませんよ」
「えぇ!?やだなぁ、何言ってるの…」
「本気ですよ、絵梨香はもう、柴田さんしか見えない…」
「や、やだってば!三好ちゃん!」
「うわ!ちょ、10倍なんですから勘弁してくださいよ!
 かわしてなかったら絵梨香骨折じゃ済まないですよ」
「ご、ごめん…でも三好ちゃんがそんなこと言うから…」
「ですから絵梨香の柴田さんへの気持ちは本物だって言ってるじゃないですかぁ…」
「また…誰にでもそんなこと言ってるくせに…」

小室学園との抗争後、一時期は片手に欠けるほどまでに部員が減少していた演劇部も、
1年弱の月日の間に少しずつ部員も増え、再び舞台を行えるほどの人数に
なって活気を取り戻していた。
2、3人集えば姦し姦し、とよく言うが、10人近い少女たち(と1人の男子生徒)
が騒いでいる演劇部室で、その騒ぎを収束できる者はもはや存在していなかった。




500 :364:2006/05/02(火) 22:37:21.58 0

もっとも、全員が全員練習前のこのひとときに騒いでいたわけではない。
部室の隅のほうで小さくなって、こうした少女たちを眺めている二人の少女が居た。




「なぁ里沙ちゃん……台本、覚えた?」
「……ゆうべ1回は暗唱できたけど…自信ない。愛ちゃんは?」
「…あかん、あの1ページの長セリフ覚えきれんかった」
「……先輩たち、何であんなワイワイ遊んでられるんだろ?」
「………そりゃあ、やっぱりみんな台本とか完璧に覚えとるからやない?」
「「………………」」


「練習始まるまでだけでも、もうちょっと台本読んでよっか?」
「…………ほやね…」
「「………………ハァ…」」






501 :364:2006/05/02(火) 22:37:56.36 0
演劇部の中でも新参の2人、高橋愛、新垣里沙。
入部する前から、特に新垣は初等部の頃から演劇部に憧れていただけに、
入部できた感動はひとしおであったが、慣れないダンスや発声、厳しい練習は
初心者の彼女らにとってはなかなかにつらいものであった。
舞台で見る華やかな公演、そしてその裏側にある厳しい稽古も彼女らは
重々分かっていたつもりだったが、いざ自分たちがやるとなると
それはそれは大変なものであった。
演劇部が大好きな彼女らだからこそ、「こんなはずじゃなかった」と
後悔することはなかったものの、先輩たちの足を引っ張るような真似を
したくないだけに、自分たちの無力さを噛み締めていた。

「はいみんな準備できたー?そろそろストレッチ始めるよー」

部長の飯田の声で部員たちの目つきが変わる。
高橋と新垣も慌てて立ち上がった。
新人のお披露目公演まであと半月。
今日も演劇部の部活動が始まる。



      ◇      ◇      ◇




580 :364:2006/05/04(木) 10:36:33.20 0
銀色の永遠 〜高橋愛はルノアールを男役にする〜A


ぶどうヶ丘高校の校舎裏。
二人の少女が身振り手振りを加えた演劇の練習をしている。
大仰な身振りと必要以上に抑揚を強調した発音は舞台演劇のそれである。
しかし、彼女らには奇妙な部分があった。
それは、二人しか居ないにもかかわらず、彼女たちが目に見えない
何かに向かって話していたり、寄りかかり、あるいは抱き上げられたかのように
宙に浮かび上がったりすることである。
それは二人の少女たちの持つ不思議な力故であるのだが、その力の原理を
知らぬ者がもし見かけたとしたら、それはこの世ならぬ奇妙な物に見えたに違いない。



581 :364:2006/05/04(木) 10:37:05.52 0

「本当に行ってしまうの?」
「ええ、私は今宵、森を抜けてこの方と一緒にどこか知らない土地に
 旅立って永久の誓いを立てるの!
 さようなら、貴女にも幸せが来ることを願ってるわ!
 ……えっと、『ごきげんよう、君が彼のことを想っているように、
        彼も君に夢中になることを祈ってるよ!』」

「ああ、何ということでしょう!
 あの子たちが遠くへ行ってしまったと知ったら、
 あの方はきっと追いかけて旅立ってしまうに違いないわ!
 こうしてはいられない、森であの二人とあの方が鉢合わせないよう
 私も行かなければ!」


目に見えない何か…いや、彼女たちの目に写る『ライク・ア・ルノアール』と
手を繋いで校舎へと走り去ったのは高橋愛であり、
その後大仰な台詞を吐いて高橋とは反対側へと走ったのは新垣里沙である。

演劇部の部活は比較的早い時間に終わり、セットの準備をする一部の部員以外は
解散となったのだが、まだまだ自分の演技に自信のない彼女たちは自主的に
練習するために、自分たちのスタンドを配役の一部をに見立てて練習していたのだ。



582 :364:2006/05/04(木) 10:37:47.37 0

「大丈夫だよ、愛ちゃん訛ってなかったし、それくらい大げさにやっちゃっても
 大丈夫だと思うよ」
「んー、それならええけどさ、実際にはルノアールやなくて吉澤さんに抱かれて
 こーんな近くで話すんやろ?いろんな意味で不安やわ…」
「大丈夫だって!じゃあやっぱり吉澤さんにお願いして練習付き合って
 もらったほうがよかった?」
「無理無理無理無理!そんなん無理やって!」
「でしょ?それだったらちょっとでも練習して慣れとかないと…」
「ほやって、ライク・ア・ルノアールやったらなぁ…」
「じゃあ私のラブ・シードにする?」
「や、そういう問題やないやろ。
 大体ラブ・シードに人一人抱き上げる力なんてなかろう?」
「もう…それじゃあどうするのさ?」
「……ちょっと考えさせて」
「そだね、ちょっと休憩しよっか?」

二人はすぐそばのベンチに腰掛けた。
演劇部に入って間もない彼女らにとって、必然的に二人きりのときの話題は
演劇部の先輩のこと、そしてスタンド能力のことになる。



583 :364:2006/05/04(木) 10:38:38.90 0

「部室に資料残ってたけど、昔演劇部と他の学校でスタンドの戦いとか
 やったんでしょ?
 やっぱこういう力身についたってことは、またそういうのやったりするのかなぁ?」
不安げな顔で新垣が聞く。
「んー、でもこんなチカラ持った人が大暴れしたらそれこそ大騒ぎになるしナー
 普通の人には見えんからな、これ。
 そうそうそんなことはないんヤない?」
高橋は楽観的である。
「私たちと入れ違いに辞めちゃったっていう後藤さんもスタンド持ってたってことでしょ?
 舞台の後藤さんしか見たことなかったけど、スタンドもすごかったっていうし」
「何か資料だと風を使ってかまいたちとか竜巻とか起こせたらしいしな。
 何十人も纏めて吹っ飛ばしたりしたって書いてあったし」
「ホントに?どこにあんの?それ」
「んー?部室の戸棚にあったやよ」
「そうなんだ…ねぇねぇ、今からそれ見に行ってきていいかな?」
演劇部のこととなると目の色が変わる。新垣は今にも立ち上がって駆け出しそうだ。
「えぇ?練習どうすンの?」
「あとでちゃんとやるから!ね!」
自分ひとりでは練習にならない。高橋も引き止めようと必死である。



584 :364:2006/05/04(木) 10:39:16.20 0





「……後藤は辞めちゃったのか……好都合だね」







!!!!!!!!!!!????







585 :364:2006/05/04(木) 10:40:33.77 0

突然あさっての方向から声が聞こえた。
「誰やっ!!」
思わず振り向いた二人の目に映ったのは、髪の長い、自分たちより少し年上の
女であった。
Tシャツにロングスカートでブーツという格好ではあるが、年齢的に高校生であろう。

迂闊だった。
いくら話に熱中していたとはいえ、こんなに近くまで近づかれていたこと。
そして構内で油断していたとはいえ、スタンドのことを話していたことを
聞かれていたなんて。
新垣の額に汗が流れる。

「後藤のスタンドは面倒だし、いなくなってるならそれにこしたことはないや。
 でも参ったなぁ…部活終わっちゃってるのか…ってことは無駄足かな」
「誰やって聞いとるんや!」
謎の女性の威圧感に気圧されたか、高橋が叫ぶ。
女性はそんな高橋を無視してゆっくりと近づいてくる。
「それ以上近づくなや!」
「ま、とりあえず二人……本当は後藤を第1号にしてやりたかったが、
 アンタらにぶどうヶ丘演劇部の犠牲者第1号にになってもらおうか!!」
「なッッ!!」
二人が絶句するのと同時に女が強烈な殺気を放ちだす!!



586 :364:2006/05/04(木) 10:41:20.94 0

「『オーシャンズ・ストーリー』!!」

女が叫ぶと同時に、青いスタンドが姿を現すっ!

「ラ、『ラブ・シードッ』!」
「『ライク・ア・ルノアールッ!』」

ギュァァァァァァァァンッッ!!


二人も慌ててスタンドを出した!
「お、お前が何者か知らないけどっ!演劇部を潰すなんてっ!絶対させないっ!!」
新垣のスタンドが両手を交差させ、高橋のスタンドがファイティングポーズをとる。
演劇部の敵だ!
演劇部を潰そうとしてるこいつを私たちは止めなくちゃいけない!

「何か勘違いしてない?私は別に演劇部を潰すつもりはないよ。
 ………皆殺しにするんだからなぁァァァァ!!」



587 :364:2006/05/04(木) 10:42:17.86 0

「おおおおぉぉぉぉぉぉっ!!スプラッシュッ!!ビーンズッッッッ!!」

ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!

ラブ・シードの両手から輝く豆が発射される!

「Come With Me!『オーシャンズ・ストーリー』ッッ!!!!」

ゴボゴボゴボゴボゴボゴボゴボッ!!

女が叫ぶと同時に、女のスタンドは地面に染み込むように消えた。
いや!地面に水溜りのようなものができている!水溜りとなったのだ!
新垣のスプラッシュ・ビーンズは水溜りの上を通り過ぎていく。

「私の名前は未来玲可!!
 お前たちがさっき話していた小室学園の生徒だよ!!」

未来が叫ぶと同時に、未来の足元の水溜りが大きく伸び上がる!!
元の人型の数十倍にまで膨れ上がったオーシャンズ・ストーリーは
巨大な津波となって二人に襲い掛かった。


ドバッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!


146 :364:2006/05/12(金) 03:09:48.22 0
銀色の永遠 〜高橋愛はルノアールを男役にする〜B


「ライク・ア・ルノアールッ!!」

ドゴドゴドゴドゴッ……グバババババババババーーーン!!!!

高橋は波が到達する前に高速で地面を殴る。
一瞬凹んだ地面は次の瞬間、高橋の身長以上の高さにまで凹り飛び出す!
迫り出しで作った即席の堤防だ!!
津波は堤防にぶつかって盛大な音を立てると引いていき、
再び未来のそばで人形を形成する。
高橋の作った堤防もルノアールが触れることで再び地面に戻っていく。
津波に飲み込まれたのか、2人と未来の間の地面は地面は削られ、
雑草や芝生は剥がれて地面が剥き出しになっていた。

「なんヤァ!?なンで小室学園の生徒が今更演劇部を襲うンや!?」
動揺しながらも津波を防ぎきった高橋が叫ぶ。
新垣は高橋の隣で警戒しながらスタンドを構えている。
「そんなこと今から死ぬお前らには関係ないんだよっ!
 オーシャンズ・ストーリー!!」
再び未来のスタンドが水溜りのように潰れると、
今度はさっきよりも大きな津波を形作り、再び2人に襲い掛かる!

ゴォォォォォバッシャァァァァァァァァァァァァァァァァンッッ!!!!!


147 :364:2006/05/12(金) 03:10:41.42 0

「愛ちゃん!もう1回頼むよっ!! いくよ!ラブ・シードッ!!」
「オォォォォォォァァッ!ライク・ア・ルノアールッ!!」

ドゴドゴドゴドゴドゴ……ゴババババババババババババババッ!!!!

再びライク・ア・ルノアールが地面へのラッシュで津波への堤防を作り上げる!
さらにライク・ア・ルノアールは新垣とラブ・シードの足場をも凹ませていた。



3・・・2・・・1・・・・・・グボォウンッ!!



新垣は凹った地面の反動で堤防、そして津波よりも高く飛び上がる!!

「攻撃ばかりで本体がガラ空きだっ!喰らえ!スプラッシュ・ビーンズ!!」
ズビュビュビュビュビュビュビュビュビュッ!!

ラブ・シードの両手から放たれた種は、津波よりはるかに速い速度で
未来へと狙い過たず飛んでいく!
津波の堤防への到達よりも種が命中するほうが早いっ!!
新垣は心の中で勝利を確信した。


148 :364:2006/05/12(金) 03:11:31.94 0




「甘いっ!!」



しかし未来がそう叫ぶと、足元からさらに青い人型のスタンドが現れる。
バカな!!?スタンドは一人1体のはず!!
新垣は激しく動揺する。


バチャバチャバチャバチャバチャ……


ラブ・シードの放ったスプラッシュ・ビーンズは、一粒残らず未来の
オーシャンズ・ストーリーに命中し、そのまま体内に取り込まれた。

「オーシャンズ・ストーリーは射程距離内で自由に体積を変化させるスタンド!!
 津波だって私のスタンドのごく一部なんだよっ!!
 そしてそんな薄壁で私の津波を防げるもんか!!」



149 :364:2006/05/12(金) 03:13:17.53 0

飛び上がった新垣は既に落下を始めている。
そして新垣の目には、自身や高橋の身長よりも高い堤防、
そしてそれを50センチはゆうに超える巨大な津波が映っていた。
今あそこに着地するのはまずい!
それ以上に、愛ちゃんのスタンドではあの津波から逃れる術はないっ!!
こうなったら津波が来る前に地面にスプラッシュ・ビーンズを打ち込み、
津波を超える高さの樹木を生やしてやり過ごすしかない!
しかし、それが津波までに生やせる保証も、その木が津波に耐えられる保証もない!
最悪、木もろとも薙ぎ倒されてしまったら一巻の終わりだ。
それでも、今はやるしかないっ!


「す、スプラッシュッ…「里沙ちゃん!もう1回やっ!いくでっ!!」


新垣の声に被せるようにして、高橋が叫んだ。
よく見ると、高橋の足元が深く凹んでいる。
これはライク・ア・ルノアールの能力だっ!!



150 :364:2006/05/12(金) 03:14:10.44 0






グッボィィィィィィィィィ〜〜〜〜〜〜ン!!
バッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!




高橋は凹る勢いで新垣を捕まえつつ、高く高く飛び上がった!
その高さは、先ほど新垣が飛び上がった高さの比ではない。
地面では、高橋が作った堤防を津波が軽々と飲み込んでいる様が見えた。


151 :364:2006/05/12(金) 03:16:58.91 0


「うぉっ!高っけぇぇぇぇぇ!!」
「んなこと言ってる場合じゃないでしょ!!
 新たなる生命へと繋げっ!実れ!!ラブ・シードッ!!!!!」

新垣が叫ぶと、新垣の制服の背中から薄い茶色の翼が生える。
いや、これは植物の種だ!!
『アルソミトラ』の何十何百もの種の薄羽は折り重なってひとつの巨大な羽となり、
新垣とそれに捕まる高橋は風に煽られながらもグライダーのように滑空し、
津波の引いた地面に降り立った。

「なかなか面白いかわしかたするじゃないの」
「ハァ…ハァ…そんなに、簡単には、やられたり…しない…」
「まだまだ…ハァ、ハァ…勝負は、これからなんやよ……」
「ふぅ〜ん…。その元気、いつまで持つかしら?」

既に息が上がっている高橋と新垣に対して、未来は不適な笑みを零した。




216 :364:2006/05/13(土) 08:54:02.28 0
銀色の永遠 〜高橋愛はルノアールを男役にする〜C



チャプン……


未来は無造作に自分のスタンドの中に手を突っ込むと、スタンドの中で漂っていたモノを
掴んで取り出した。
「そっちのデコの能力…弾、というか、種を飛ばす能力か…
 ストレートのほうは地面を凸らせる能力…どちらも資料にないわね
 1年前の戦いにはいなかったメンバーかしら?」
「デコって言うな!これでも「おでこ可愛い」って言われてるんだから!」
「まぁ確かに里沙ちゃんのおデコと眉毛は…」
「うるさいよ愛ちゃん!相手に同意してないの!」
敵に同意してどこかマイペースな高橋に新垣は調子を狂わされる。
「ま、どちらも大したことなさそうね。
 まだ私、スタンド出してから1歩も動いてないんだけど」
未来は掴んでいた『芽が生えかけた種』を地面に落とすと、ブーツで踏みにじった。
それが新垣の怒りを買う。
「植物になんてことするの!!その種の痛みを思い知れっ!ラブ・シードッ!!」
新垣は怒りに任せ、ラブ・シードの能力を発動させる。


足蹴にされた種は爆発的に生長し、ツタとなって未来の全身を縛り上げる!!


217 :364:2006/05/13(土) 08:55:09.35 0




………はずだった。




シーン




「な…なんで、種から芽が出ないの…!?」
自分は間違いなく能力を発動させた。
本当なら未来という女は今頃縛り上げられて、その間に接近した
愛ちゃんのスタンドにポコポコにされてるはずなのに!
「里沙ちゃん危ないっ!!」
半ば呆然としている新垣を高橋が引き寄せる!


シュバババババッ!!!    チッ!!



218 :364:2006/05/13(土) 08:56:56.50 0

引き寄せられた新垣のいた場所を高速で弾丸のようなものが通り抜ける!
新垣の頬を弾丸がかすめた。一瞬の焼けるような痛みののちに、血が滲み始める。
「ッツ…!」
「種明かししてあげようか?
 私のオーシャンズ・ストーリーは海水を自由自在に操る!濃度も、体積もね!
 さっきその豆を防いだときには、スタンドの塩分濃度を死海と同じにしてたのさ!
 死海の水で育つ植物なんていないんだよォォっ!!」


バァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!


「さっきから攻撃も防御も行き当たりばったりの単調単調!!
 アンタらスタンド能力は初心者だなぁーっ!!
 よくそんなんであの安倍や後藤と同じ組織にいられるなぁぁぁぁっ!!!!」
未来が叫ぶと同時に、オーシャンズ・ストーリーの指先から先ほどと同じ弾丸が大量に発射される!
超圧縮された水滴だ!


ジュババババババババババババババババッ!!!!!


219 :364:2006/05/13(土) 08:57:59.43 0

「愛ちゃん!ちょっとだけ時間稼いで!!
 育って!!ラヴッ・スィィィィィィドッ!!」
「くっ!ライクァ・ルノアールッッ!!」
新垣が種を植える!高橋は三度地面の迫り出しで壁を作った。

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!

まるで散弾銃のような完全に横殴りの雨が迫り出しの壁にぶち当たる!
1発1発の弾丸は確実に壁を削り取っていく。
弾切れのないオーシャンズ・ストーリー弾で迫り出しの壁は破れてしまいそうだ!!
「里沙ちゃんっ、まだ〜!?もう保たんヨぉ!?」

「できたっ!さがって愛ちゃん!」


ドガガガガガガガガガガバガガガーーーーン!!
ビビビビビビビビビビビビビビビビビッ!!!!!!


ついに迫り出しの壁が水の弾丸で打ち破られる!
しかし、弾丸はその向こうにいるはずの2人には当たらず、左右へとはじかれる!!


220 :364:2006/05/13(土) 08:59:21.34 0

「水を弾く『蓮の葉の盾』ッッ!!もうそんな弾は通用しないッ!!」
「すごいヨォ!里沙ちゃん!!あとはあーしが……!」
高橋が構えを取る。弾丸の雨が止んだ瞬間に間合いを詰め、一気に本体を叩くつもりだ!
再び攻撃を開始するまでの間に片をつけることも、ルノアールのスピードなら可能なはずである。
しかし、未来の表情には焦りの色はない。むしろ、呆れているようにも見えるが…



「…ハァイ、詰んだ。
 だから単調だって言ってるのに…」
未来が哀れみを込めて呟いた。


ザパァッ!ザパァッ!ザパァッ!ザパァッ!!


新垣が盾で弾いていた水滴が膨張し、いつの間にかオーシャンズ・ストーリーの人型を形成していたのだ!!
形成したスタンドは4体!!四方を囲まれている!!


221 :364:2006/05/13(土) 09:01:52.22 0

「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ライク・ア・ルノアールッッッッ!!」

バシャッ!! ビシャッ!! ボシャァァァァン!!

高橋は近くにいた2体をルノアールで殴りつけ、1体を迫り出しで上空へ吹き飛ばす!
意外なほどあっさりと、それらは再び水となって地面に飛び散った。
残り1体!!


ビビビビビビビビビ…バラバラバラバラバラバラバラバラババラ!!!


「ぐあっ!! …………ぎゃあァァァァァあぁぁぁぁぁァァァァァァ!!」


蓮の盾で攻撃を防いでいるはずの新垣の悲鳴に振り返った高橋の目に映ったのは、
その残る1体のオーシャンズ・ストーリーに殴り飛ばされ、水滴のマシンガンに
蜂の巣にされる新垣の姿だった。



「り…里沙ちゃーーーーーーーーーーーーーーんっ!!」





03 :364:2006/05/16(火) 00:27:14.93 0
銀色の永遠 〜高橋愛はルノアールを男役にする〜D


「里沙ちゃん!里沙ちゃんっ!!」
高橋は新垣を殴りつけた残る1体のオーシャンズ・ストーリーを殴り飛ばすと
新垣に駆け寄り、彼女を抱き起こした。
「いつつ…あ、愛ちゃん…怪我、ない…ック…」
あれだけの弾丸を受けて重症なのに自分の心配をする新垣に、高橋は泣きそうになる。
新垣の身体は肌はアザだらけで、ところどころ血が滲んでいた。
右手で胸の下を抑えているのは、アバラか内臓を傷めているかもしれない。


ザッ……ザッ……ザッ………

「まず一人…いや、確実に息の根を止めるべきか…」

未来がゆっくり、ゆっくりと2人に向けて歩いてくる…。
その肩には、いつの間にか、身の丈ほどもあろうかという大きな水色の鎌が担がれている。
水を固めて作られた巨大な鎌は、透き通った水色で、人の首を刈り取る凶器とは
思えぬほどに透明に、光を浴びて煌いていた


404 :364:2006/05/16(火) 00:31:54.28 0

未来は拍子抜けしていた。
1年前は全く歯がたたなかったぶどうヶ丘の演劇部員。
それが2人がかりでかかってきてこのザマだということに。

確かに自分は1年間で強くなった。
当時最強と言われた鈴木あみには単純な実力ではまだ敵うとは思えないが
スタンドは無意識の才能である。
そして相性や作戦次第でその能力は2倍にも3倍にも生かされる。
今の自分が自身の最も得意とするフィールドであれば、鈴木亜美にも勝てると彼女は確信している!


1年前、彼女は期待のエースとして小室学園でも一目置かれた存在であった。
しかし、彼女は初陣を飾ることはできなかった。
小室学園に忍び込んだ市井紗耶香。
彼女が『弓矢』を盗み出して逃げたのにいち早く気づいた未来は
彼女が巧みに自身の能力で未来の攻撃をかわしながら逃げるのを追跡し続けた。
校舎を出、周囲に手ごろな大きさの『物体』がなくなり、自身の能力を生かすことの
できなくなった彼女を捕まえたのは他ならぬ未来だったのだ。
しかし彼女は盗み出した『弓矢』をあろうことか、自分や周囲の学生の目の届かぬ
どこかに飛ばしてしまったのだ!
未来は自身の能力で彼女を磔にし、他の学生の尋問(ほとんどリンチに近いものだったが)
に任せた。
そこへ後藤真希が現れたのだ。


405 :364:2006/05/16(火) 00:32:49.41 0


後藤の前で未来は無力だった。
どんな水の形も、後藤の風に遮られ、届かなかった。
そして未来は風にズタズタに切り裂かれ、再起不能に陥った。
その間の鈴木亜美と安倍なつみの一騎打ち、そして小室哲也の失踪。
入院している間に、すべては終わってしまったのだ。

小室学園はもはやぶどうヶ丘とは何の関係もない。
しかし、自分の気持ちはそれではおさまらない。
復讐。ただそのためだけに未来はこの1年生きてきたのだ!!!!


バァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーン!!!!


406 :364:2006/05/16(火) 00:33:48.91 0
「平和ボケしたもんだね…ぶどうヶ丘の演劇部も。
 1年前のスタンド使い…後藤はもっと、とんでもなかったよ。
 闘いの中に身を置くって覚悟あるの?自分たちが死なないとでも思ってた?」

「あ……あぁ……」
新垣を抱いたまま、自分が小刻みに震えているのを高橋は自覚していた。
自分の能力では、こいつに勝つことはできない。
いや、1歩でも動かすことも、近づくことすらできなかった。
自分は何もしていない。攻撃も、防御も、全て里沙ちゃんがしていたんだ。
自分は何もできない?
このまま何もできずに殺されてしまうのか?

「あららぁ…スタンドも消えちゃったよ。
 そのまま何もせずに首落とされるつもり?」

「あぃ…ちゃ、逃げて………愛、ちゃん…だけでも……」

誰かが何かを言っている。しかし、何も聞こえない。
身体が動かない。何も考えられない。


ザッ!!

未来は2人のすぐそばまで歩いてくると、担いでいた鎌を両手で振り上げた。
「予告通り…演劇部の犠牲者1号になってもらうよ…」


407 :364:2006/05/16(火) 00:34:14.12 0



まずは2人だ。
そして、これが片付いたら現在の演劇部の規模を調べる。
新入りが2人同時に消えたら部としても大騒ぎだろう。
部の集会なども開かれるに違いない。
そうすれば、教室に全員が集まった段階で『オーシャンズ・ストーリー』で
教室を完全に『水没』させてしまえばいい。
そうだ、ついでに『弓矢』を手に入れよう。
これを見つけて小室先生を探し出して渡せばきっと昔のように戻れる!
私がエースとなる時代がくるんだ!!

未来は鎌に力を込める!!






408 :364:2006/05/16(火) 00:34:50.87 0




  「何やってんだテメーラッ!!」




校舎のほうから声がした。
女子生徒…面倒だな。

いや……あれは、スタンド?
……演劇部か……しかしあのスタンドも見たことがない。新入りか?



闘気を纏ったショートカットの女子生徒、三好絵梨香はすさまじい形相で
3人を睨み付けていた。


494 :364:2006/05/17(水) 20:07:01.08 0
銀色の永遠 〜高橋愛はルノアールを男役にする〜E


「けっこうな時間が経つっていうのに戻ってこないからって見に来てみたら
 敵と交戦中だなんてね…」

三好絵梨香はゆっくりと3人に近づいてきた。
シーズン・オブ・ディープレッドは赤く輝いている。
その輝きはライク・ア・ルノアールに遜色ないほどである。
高橋も新垣も、その紅いスタンドを見たことはあったが、2人とも『一兆度の怒り』を知らない。
ここまで真っ赤に染まったシーズン・オブ・ディープレッドを見るのは初めてだった。

「演劇部の新手…しかし、私の射程距離に入った以上!お前も詰んだ!!
 オーシャンズ・ストーリー!!」
未来の鎌が水に戻り、人型を形成する!
腕を三好に向けたオーシャンズ・ストーリーから水滴のマシンガンが掃射される!!

ジュババババババババババババババババッ!!!!!



495 :364:2006/05/17(水) 20:07:56.80 0

三好は動かない。
まともに喰らったらこれだけでも確実に再起不能になるというのに!!
そしてシーズン・オブ・ディープレッドに水滴のマシンガンが突き刺さる!!!!!


ドジュワァァァァァァアァァアァァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!


突然、シーズン・オブ・ディープレッドから真っ白な煙が噴き出した。
いや、これはオーシャンズ・ストーリー弾が蒸発する水蒸気だ!!
熱したフライパンに水滴を落とすと激しい水蒸気爆発を起こすように、
シーズン・オブ・ディープレッドの高熱で水滴のマシンガンは全て蒸発させられ、
発生した激しい水蒸気は三好とそのスタンドを完全に覆い隠した。
「バカなッ!!?この能力は!?」
初めて未来が狼狽する。
自分の攻撃を一歩も動かずにこんな防がれ方をするとは思わなかったのだ。


「この匂い…潮風…海水を操るスタンドか…」
「ハッッ!!!!」

ゴシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!



496 :364:2006/05/17(水) 20:08:37.02 0

あれだけ強烈な殺気を放っていたのに、気配を感じることすらなかった。
突然背後から声がした、と思ったときには既に未来は殴り飛ばされていた。
殴り飛ばされた未来はそのまま、三好を覆い隠していた水蒸気の中にまで吹っとんだ。


水蒸気の霧が晴れる。
高橋、新垣の横には三好が立っており、そこから離れた場所に未来が膝をついている。
たった一手で、詰んだはずの形成は完全に逆転した。

「海水成分のミネラルパックは生憎間に合ってるんだよ。
 毎日肌のお手入れをしてないと、女の子たちには嫌われちゃうからね。
 ……あとでしっかり相手してやるから、ちょーっとそこで待ってな!
 ま、別に逃げてもいいけど…逃げる獲物を狩るのもそれはそれで楽しいし…」
三好が心底楽しげな表情で未来に話しかける。
しかしその声色、オーラは威圧感に満ちている!
未来はたった一撃で膝に力が入らなくなっていた。これでは逃げることも叶わない。




497 :364:2006/05/17(水) 20:09:19.45 0

「随分やられたねぇ〜…大丈夫?」
2人にしゃがみこみ、さっきまでの威圧感も、オーラも消して、いつもの
『ちょっと女ッタラシの演劇部の先輩』の雰囲気になった三好が2人に話しかける。
「あ、ハイ…あーしは、何とか……」
「ック…私も、アバラが、折れるかヒビ入るかしてますけど…」
先輩が助けてくれた、しかも完全に形成が逆転したこの状況に安堵した2人は答える。

「そっか、大丈夫か………」

突然、三好は立ち上がった。高橋も新垣も驚く。逆光でその表情は見えない。

「あの、三好サン……?」
高橋が声をかける。


ゴシャァァァァァァァッ!!


突然、三好が高橋を蹴りつけた!!

「お前らフザけてんじゃねェェェェェェェェッ!!!!」





498 :364:2006/05/17(水) 20:10:59.16 0
銀色の永遠 〜高橋愛はルノアールを男役にする〜F



ゴスッ!ゴシャッ!ガスッ!ガスッ!!ゴスッ!!ゴシャッ!!


高橋に、そして新垣に容赦のない三好の蹴りが降り注ぐ。
「いいかっ!私らはっ!常にっ!最強なんだっ!!演劇もっ!!スタンドもッ!!
 どんな相手でもっ!絶対ッ!!負けるわけにっ!いかないんだよッ!!」


ゴシャッ!ゴスッ!メキャッ!バキッ!ガスッ!ゴスッ!ガッ!


「相性だの!能力差だの!慣れだの!!そんなのはッ!言い訳にっ!ならないんだよっ!
 エース候補ッッ!!?大好きィィッ!!?そう思うならッ!!まずッ!!
 それだけのっ!!実力ッッ!!つけなッッッ!!!甘えるなっ!!舐めンなッッッ!!」

バキッ!ズガッ!ゴシャッ!ゴスッ!バキッ!メキッ!メシッ!!





499 :364:2006/05/17(水) 20:12:01.57 0

イカれてる…未来はそう思った。
完全に形成は逆転した。演劇部の後輩を助けたんだ。
なのに今度はその後輩をボコボコにしてるだと!!?
だがしかし…その言葉には真実がある。
「エース候補…それに見合った実力をつける……」
未来はゆらりと立ち上がり、オーシャンズ・ストーリーの能力を発現させた。
未だ、ショートカットの女は気付いていない。

「確かにお前の言う通りだよ…エース候補に必要なのは圧倒的な実力…
 でもお前もエースじゃない…私のこの攻撃に気付いていないお前も……!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「ん?」
にわかに三好に影がかかる。今日は天気だというのに。足を止めて三好は空を見上げた。
「今更気付いてももう遅い!!詰んだァァァァッ!!」
三好の上空、十メートルほどの所に、巨大な水の塊が浮かんでいた。
「1辺3メートル27立方メートル!27トンの水に押し潰されろっ!!オーシャンズ・フォール!」

スタンドを出しただけの三好と無防備な高橋、新垣に膨大な量の水が降り注ぐ!


ドゴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!



500 :364:2006/05/17(水) 20:12:56.05 0









「あ………ぁ………そんな……うぁぁぁっ!!」
未来が左腕を押さえて蹲る。その左腕は火傷で赤黒く変色し、動かなくなっていた。
三好とシーズン・オブ・ディープレッドは何事もなかったかのように佇んでいる。


あの瞬間、再び紅く赤く輝いたシーズン・オブ・ディープレッドは高熱を発し、
27tもの水を全て蒸発させ尽くした……!
恐ろしいほどのスタンドパワー!高橋も新垣もただただ驚愕している。


「つまんない横槍入れちゃって…そんなに逝きたいのなら先にバラしてあげるよ!!」
『一兆度の怒り』を身に纏った三好が未来に向き直る!
一歩未来に近付くごとに、未来の周囲の温度が10℃も上がるようだ!
「う…く……お、オーシャンズ・ストーリー…!」
未来もスタンドを出す。しかし、そのビジョンはブレかけている。



501 :364:2006/05/17(水) 20:13:50.92 0

「まずはそのオイタする腕…そして脚…大丈夫…絵梨香の熱で焼いて血は止めるから失血しない……」
ゆっくりと近付いた三好の、シーズン・オブ・ディープレッドの射程距離に未来が入ろうかという瞬間!!


「待ってくだサい!!」


高橋はボロボロの身体ながら立ち上がった。腕も脚も、痣だらけだ。
隣では新垣も、起き上がり、立ち上がろうとしている。

「まだ、あーしたち…やれます……最後まで…やらシて、くだサい……」
その目は、先ほどまでの曇ったものではなく、再び戦士の目に戻っていた。

ギュァァァァァァァァン!!

ライク・ア・ルノアールとラブ・シードが浮かび上がる。
2体ともボロボロだが、それでも闘う意思があるっ!!
振り返った三好は、2人と目を合わせ、その目をじっと見つめる。


「………面白いこと考えた。もう1回闘って、勝ったほうは見逃す。
 負けたほうは絵梨香が解体。これでどーォ?」
三好は、本当に楽しい、というような無邪気な笑みを見せた。



502 :364:2006/05/17(水) 20:14:44.47 0

こ、この女、マジで狂ってる!!
この危なさは、いつかの我を忘れた後藤真希以上じゃないか!!正気かコイツ!?
こんな奴を相手にしてはいけない。今の自分のスタンドでは適わない!!
だが、しかし…向こうの半死半生のデコとストレートなら勝てる!
この女さえ現れなければ、私は勝っていたんだ!
私もダメージを受けたが、何発も攻撃を喰らった向こうのダメージはそれ以上だ!
ならばここはこの賭けに乗ったほうが得策!
勝ってこの場を逃れ、今一度作戦を練って出直すんだ!!
「……いいよ、それで」


「あーしたちもええです。ただ、あーしたちが勝っても、その人を殺すのは…」
高橋が答える。新垣も同じ意見なのか、居心地悪そうな目を三好に向ける。

「…甘いね2人とも。ま、いいけど。2人の戦いぶり次第では考えてとく」

三好はそこまで言うとスタンドを引っ込め、3人から離れていく。
高橋と新垣は生まれ変わったような精悍な目つきで、
未来は額に汗を滲ませながらも相手と睨み合う。

「アァ、分かってると思うけど、逃げたらその場で負けだから。
 じゃあ……はじめ」

三好の合図が、二組の戦いの第2ラウンドの鐘となった。





87 :364:2006/05/19(金) 20:49:10.58 0
銀色の永遠 〜高橋愛はルノアールを男役にする〜G


「オーシャンズ・ストーリー!!」
未来が叫ぶと、2体の水色の人型スタンドが未来のそばに現れる。
「かかれっ!!」
そのまま、2体のスタンドは高橋と新垣に突っ込んできた!!

「ライク・ア・ルノアールッ!オラァァッ!」
「ラブッ・シィィーーードッ!!やぁっ!」

ズバシャッ!!ビシャァァァッ!


高橋はルノアールで殴りつけ、新垣はラブ・シードで生み出したツタを鞭代わりに
薙ぎ払い、それぞれオーシャンズ・ストーリーを打ちのめす!
2体のO・ストーリーは水しぶきとなって飛び散った。



88 :364:2006/05/19(金) 20:49:52.12 0

「甘いっ!まだまだ!!」

未来の叫びで、飛び散ってできたO・ストーリーの水溜りが膨張し、再び人型を形成する。
しかも四散した水塊それぞれから、併せて4体が形成される!!
「クッソ、オラオラオラァァ!」
「ック…やぁっ!とぉーっ!」
再び2人はルノアールで殴り、鞭で薙ぎ払ってO・ストーリーを打ち倒す!!
肋骨の傷が重いのか、新垣は鞭を振るって身体を捩る度に顔をしかめ、苦しげな息を吐く。

「残念!倒したら倒しただけ増えるよぉ〜」
楽しげに未来が答える。その言葉に呼応するように、また人型のO・ストーリーが増える。今度は8体だ!

「クッソ…ライク・ア・ルノアールッ!!」

ドゴッ……グボゥンッ!

高橋はルノアールで地面を殴りつけ、迫り出しでO・ストーリーとの間に壁を作る。
「コレならどうヤァァァーーーッ!
 オラオラオラオラオラオラオラオラァァァァーーー!!」
そのまま壁をラッシュで殴りだした!!

ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴガガァァーーーン!

ルノアールのラッシュで破られた迫り出しは岩弾となって襲い掛かり、O・ストーリーを打ちのめす!!



89 :364:2006/05/19(金) 20:50:47.54 0



しかし……



「水を拳ではったおせるかッ!岩で水を押し潰せるかッ!鞭が水を薙ぎ払えるかッ!
 無駄ァッ 無駄ァッ ひゃひゃハハハーッ」
未来の言葉に呼応するように、岩に打ち砕かれたオーシャンズ・ストーリーは
さらに分裂して人型を形成する。もはやその数は咄嗟には数え切れないほどだ!
そして新垣も高橋も気付いていた。さっきから何体人型スタンドを殴り倒そうとも、
本体の未来はダメージを受けていないことを。
先ほどの三好が蒸発させ尽くした数十トンの水でさえも、未来の左腕一本分のダメージしかないのだ。
この程度の数の人型の水を出すことくらい、未来には何ともないのだ。
少なくとも破られて、ダメージを受けるほどには。

「愛ちゃん!!」
「里沙ちゃん下がっとって!!ライク・ア・ルノアール!!」

ガスッ……グボァァァァァァァァンッ!!



90 :364:2006/05/19(金) 20:51:22.36 0

高橋は自分と新垣の間に迫り出しの壁を作り出す!
まるで怪我をした新垣をかばうように!
慌てて作ったのか、迫り出しの壁は新垣側にほんの少しだが傾いている。
「仲間を庇ったって無駄無駄ァァ!!取り込んで沈めてやるぁぁぁぁっ!!」
壁で背後を断たれた高橋に、オーシャンズ・ストーリーたちが殺到する!!
「しょわしないッッ!!ライク・ア・ルノアールッッッ!!
 オラオラオラオラオラオラッッッツ!!!!」

ググググググゥゥゥゥゥウウゥゥゥゥゥゥッッッ!!

高橋は地面に斜めにラッシュを打ち込み、そのまま壁にくっついて頭を庇って蹲る。
「ハッッッ!デコをかばっといて自分は無防備って馬ッ鹿じゃないの!!?
 破れかぶれに地面を殴ったってそれじゃあ水を壊せないのは立証済みでしょうがァァ!!
 いけっ!オーシャンズ・ストーリーズゥゥ!!」
身を伏せている高橋に水のスタンドが飛びかかる!!





91 :364:2006/05/19(金) 20:52:16.96 0



グッッッッボァッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンンン!!



オーシャンズ・ストーリーたちがまさに高橋に飛びかかろうとしたその時!!
前方内側に斜めに浅い角度でルノアールが入れたラッシュの凹りが迫り出し、
高橋の頭の上でオーシャンズ・ストーリーたちに炸裂する!!
迫り出しの勢いで背後の壁に叩きつけられたオーシャンズ・ストーリーだった水塊は
「斜め」な背後の壁をスライダーにして滑って上空に飛び出し、はるか後方まで吹き飛んでいった。
高橋が身を伏せたのは、前方の迫り出しを自分自身が喰らわないようにするためだったのだ!!

バァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!


「さっきの三好サンへの攻撃とかでアンタの射程距離は見キったヨー!!
 あそこまで飛ばしてまえばもう甦ったりはでキんやろ!?」
迫り出しの下から這い出てきた高橋が叫ぶ。



92 :364:2006/05/19(金) 20:53:03.19 0

「……ハァイ、詰んだ。
 惜しかったね。身を庇うときにスタンドも消してれば完璧だったのにね」



ザパァァァァッ!!



突然、高橋の目の前に人型のオーシャンズ・ストーリーが現れる!!
オーシャンズ・ストーリーを殴って濡れたルノアールの手から膨張して人型を形成したのだ!!

「うぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「愛ちゃん!!スタンド消して!!」
迫り出しを回り込んできた新垣が叫ぶっ!
「もう遅いっ!!食らえッッッ!!」

バッシャァァァァァァァァァァァァン!!



93 :364:2006/05/19(金) 20:53:43.02 0

「ギャァァァァァァァァァァァ!!目がッ!あっしの目がァァァァァァァァァッ!!」
高橋が顔を覆って転げまわって絶叫する。顔面、いや、目を殴られたのだ。
目を開けられぬほどの激痛にスタンドが高橋は一瞬スタンドを消してしまったため、
ルノアールの腕をから広がっていたオーシャンズ・ストーリーも消えてしまっている。

「死海の水だっ!肌に触れるだけでも塩分でピリピリ痺れるのに、
 直接目なんか触れたら痛みで目も開けていられないよっ!!
 そしてとどめだっ!喰らえ!オーシャンズ・ストーリー!!」
再び未来の足元から水溜りが膨張し、巨大な津波を形成する。

高橋が動けない今、新垣にこの津波を防ぐ手立てはない!!
「愛ちゃん!!スタンドで壁をッッ!!津波が来るよっ!」
「目が痛いんよォ!壁…かべ…どっちやぁぁぁぁ!!?」
目を閉じたまま転げまわったせいで高橋は前後不覚に陥っている。

「ラブ・シードッ!愛ちゃん!!早くっ!!」
「ムダだよっ!真水で洗い流しでもしない限りその目は見えるようにならないよ!!」
高橋は目が見えない、つまり津波が来る方向もその高さも分かっていない。
そんな状況でこれまでのように正確に堤防など作れるはずがない!!
2人を飲み込むには十分な波が2人に襲い掛かるッッ!!


ドバッッッッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!



94 :364:2006/05/19(金) 20:54:16.89 0





「……フゥ、さっきより歯応えはあったけど、やっぱり所詮は素人。私の敵じゃあないね。
 ねぇ!これで私の勝ちでしょ?見逃してくれるんだよね!?」
未来は離れた所に立っている三好に呼びかける。
「ハァ?何言ってるの?そんなこと言って逃げるつもり?」
「なっ……話が違う!!勝ったら見逃してくれるって…!」
「勝ったら、でしょ?まだ勝負もついてないうちに何を言ってるの?」
「そんな!?確かにあの2人は津波に飲まれて……ハッッ!!」

未来は慌てて2人のほうを見る。

そこには、地面から迫り出した壁の堤防があった。先ほどの津波を防ぐには十分な高さだ。
「バカなっ!!防げるはずが……!」
迫り出しの壁がゆっくりと地面に戻っていく。
その向こうには、多少土で汚れてはいるものの、先ほどから特別に傷を負った様子のない
高橋と新垣が並んで立っていた。



95 :364:2006/05/19(金) 20:55:01.40 0

「どうして!?あの状況でこんな正確な壁を作れるはずない!!」
「…あの瞬間、ラブ・シードで『サボテン』を生み出して、
 中に蓄えられた水で愛ちゃんの目を洗い流した…サボテンは95%が真水でできてる…」
「で、でもっ!海水まみれになってるここの地面で植物なんて育つはずが…!」
「確かにここの地面じゃあ育たん…でも、ルノアールの迫り出しの壁、それの内側は
 『地中』が迫り出したモンや。
 地中の土は海水は染み込んどらん普通の土ヤから植物も生えるんよ。
 危なかった……里沙ちゃん、助カったわ…」
「でも間に合ってよかった…あとちょっと遅かったら、2人とも文字通り海の藻屑だもんね」

2人は手の甲を軽くぶつけ合う。


447 :364:2006/05/25(木) 07:16:16.73 0
銀色の永遠 〜高橋愛はルノアールを男役にする〜H

「フ…フン!そんな小細工で!!
 単にもう1回攻撃すればいいだけの話…!」
予想外の対処法を講じられた未来は少々の動揺を見せている。
それに対し、高橋・新垣の気合・意気はどんどん上がっている!
「そうはさせんヨー!いくで里沙ちゃん!!
 ライクァ・ルノアァァァーールッ!!」
「ラブ・シィィーーードッ!」
2人がそれぞれのスタンドの名前を叫び、スタンドを発現する。
そのまま高橋はライク・ア・ルノアールで地面を殴りつけだした!!

ドゴドゴドゴッ…グボォォゥン!グッボォォン!グボォォォォンッ!!

ルノアールの迫り出しで高橋と新垣の前に横に並んだ3枚の壁が作り出される。
3枚の壁はそれぞれが人2人を覆い隠すには十分な大きさである。
「さァー、どの壁に隠れてるかナァー?」
壁の向こう側で高橋が茶化したように言う。

「チッ…何をするかと思えば!そんな薄壁意味がないって何度やったら分かるの!?」
あからさまな挑発に苛立つ未来は津波で全てを飲み込もうとオーシャンズ・ストーリーを
発現させ、それを水溜りとして沈み込ませた。
これを津波にして壁もろとも2人を海に沈めてしまえば今度こそ終わりである!



448 :364:2006/05/25(木) 07:16:45.49 0


グッボィィィィィン!!


突然、右側の壁の向こうからスタンドと共に人影が飛び出す!
交差させた腕の指先がキラキラと輝き、破壊のビジョンが形成される!!
「今度はこっちから攻撃する番!!くらえ!スプラッシュ・ビーンズ!!」

ビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュ!!

壁は攻撃のタイミングと場所をずらし、隠すためのカムフラージュ!
ライク・ア・ルノアールの能力の迫り出しの凸った勢いで飛び上がった新垣は
壁の上まで跳ね上がり、ラブ・シードで大量の種を射出した!!

「チッ!戻れ!!オーシャンズ・ストーリー!!」
未来は慌てて水溜りになったスタンドを人型に戻す。
左腕の動かぬ未来だが、そのスタンドはきちんと左腕も形成されている。
膨大な体積を持つオーシャンズ・ストーリーだからこその芸当であろう。
ラブ・シードが放った種はあるいはスタンドに取り込まれ、
あるいは狙いが外れたのか未来の足元に散らばった。

「フン!単発の攻撃なんて効か…ハッッ!!」
ラブ・シードの攻撃を防いだ未来だが、前方からさらに黒くて大きな物体が飛んでくる!
未来は慌ててスタンドにガードさせ、叩き落す!

ガッ……ドゴォスッ!


449 :364:2006/05/25(木) 07:17:39.39 0

叩き落された黒くて巨大なカタマリはそのまま地面で跳ね返り、未来の腹を直撃する!
「ぐぇぇっ!これは!?」
そのままその物体は地面を跳ね回る。再び未来にぶつかってきた。
「な、何だこれはっ!!?」
未来はカタマリを踏みつける。
固いそれはチカラを込めると砕けた。固い殻と、中身はグズグズになった繊維と液体が流れ出してくる。

未来は巨大な弾丸の飛んできた方向を見ると、壁の横から姿を見せている高橋愛と目が合った。
「ヘヘン!やっと1発当たったナァ」
高橋は手をひらひらさせる。
壁を作る能力と植物の種を打ち出す能力、それだけでは今の攻撃は説明がつかない。
ではこの攻撃は…この弾丸は!?
未来は改めて踏み砕いた弾丸を見下ろす。

「これは…ヤシの実!?デコの能力か!!」
そう、ラブ・シードによって生成された『椰子の実』をライク・ア・ルノアールで凹らせ、飛ばしてきたのだ。
凹った勢いで椰子の実の内部組織は破壊され、さらに外殻の凸る勢いで
撹拌された内部組織と開放されたエネルギーの勢いで未来の足元で跳ね回ったのだ!
近距離パワーで『殴る』タイプのルノアールには投擲は得意ではない。
しかし、ハンドボール大の大きさの椰子の実を10数メートルの距離を投げる程度のことは、
中高生の女の子でさえも十分可能なことである!ましてや近距離パワー型スタンド!!
跳ね返った実が未来に直撃したのは偶然である。しかし、その一撃は未来に脅威を感じさせたのは事実である!!

バァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!



450 :364:2006/05/25(木) 07:18:10.88 0

「フザけたマネを…!」
「さーァ?今度は止められるカなァ?」
再び未来が顔を上げた時には、既に高橋の姿はない。また壁の裏側に身を隠したのだ。
「チッ…その壁をブチ破ればそんなチャチな攻撃もおしまいなんだよぉぉ!!」
オーシャンズ・ストーリーは両腕に前に出すと、水滴のマシンガンを撃つために構えを取る。
水滴弾で迫り出しの壁が破れることも既に実証済みである!!

グボゥンッッ!!

「スプラッシュ・ビーンズッッッ!!」

まさに掃射しようという時!壁の上から再び何かが飛び出す!!
しかし未来は慌てない。何度も見た攻撃である。照準を飛び出した相手に合わせ直す!
「ムダだって何度やったら分かるの!!?オーシャンズ・ストー……何っ!!?」

未来は驚愕する。
全てはフェイントだった。何度も見せた攻撃、そして攻撃の掛け声すらも!!
飛んでくる物……それは!!


「い、岩だとぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!?」




451 :364:2006/05/25(木) 07:18:45.43 0

直径数十センチはある大岩。それは先ほどの椰子の実よりもはるかに大きい。
まともにくらったらそれだけで勝負は決まってしまうだろう。
ルノアールの迫り出しで切り出された壁の岩…いや、海水が染み込んで固まった地面の迫り出しの土塊は
迫り出しの勢いという『投石器』で発射され、未来にまっすぐ突っ込んでくる!!

「オーシャンズ・ストーリー!!水滴弾で軌道を変えろぉぉぉぉ!!」

ビビビビビビビビビビビビビビビビビッッッッ!!
……ォォィィン……ッボィィン……

オーシャンズ・ストーリーは水滴のマシンガンを土塊に向かって掃射する!!
水滴の掃射で勢いを殺された岩は、未来の数メートル前に落下し、粉々に砕けた。

「ええ反応やけど、今度はどうかナァー?」
未来は空を見上げる。時間差で再び、今度は2発の土塊が飛んでいる!!
「おぉぉぉぉぉぉっ!撃ち落とせ!オーシャンズストォーリィィィズッ!!」
未来はさらに2体の人型のO・ストーリーを発現させ、3体のスタンドで上空に水滴を掃射する!!

ビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビッ!!

「上ばっかりに気を取られているとぉぉ!!スプラッシュ・ビーンズッ!!」
上空と地上の波状攻撃!!
壁の隙間から姿を覗かせた新垣が、上空の土塊に攻撃している未来に種を打ち込む。
脇腹を痛め、それでも先ほどの飛び上がる攻撃。新垣はもはや苦痛にかなり呼吸も乱れている。
本当は先ほどのフェイクの投石攻撃も、新垣自身はもはや激痛に飛び上がる
こともできなかったのだが、未来はそんなことに気付くこともないであろう。


452 :364:2006/05/25(木) 07:19:38.88 0

「クッ…そんな攻撃でぇぇぇぇええっっ!!」
未来は3体のオーシャンズ・ストーリーのうちの1体をスプラッシュ・ビーンズの
軌道上に盾として立たせる。
新たに人型スタンドを生み出さないのは、未来に余裕がなくなってきている証拠である!

ズドォォゥン! ズドォォォン!!
……ッボィィィン! グボォォィィィン!

上空を舞っていた2つの土塊が落下する。
やはり水滴で勢いを殺されたが、落下地点は先ほどの1発目よりも未来に近い。
そして、さらに2個の土塊が壁の向こうから発射される!!
新垣は、先の岩が落下するのを確認して、既に壁の裏側に身を隠している。

「こんな攻撃でェェェェェッ!!!!撃ち落とぉぉぉぉぉぉぉぉすッッ!!」
再び未来はオーシャンズ・ストーリーたちに水滴の弾丸を掃射させる!!

ビビビビビビビビビビビビビビビビビ…ズバシャァァァァァン!!

突然、1体のオーシャンズ・ストーリーが吹き飛ばされる!!
上空に気を取られていたが、今度は再び壁から姿を見せていた高橋がヤシの実弾を投げつけたのだ!
「クッ!このぉっ!!」
「ホラ!こっち見とると岩が降るんよっ!!」
「クッソガキがぁぁぁッ!!」
未来はスタンドを従えて数歩バックステップで下がる。土塊の落下点を逃れたのだ!!
「退いた…この瞬間を待っとったンやぁぁぁぁ!!」
未来が数歩下がったのを見た高橋は、なんと未来に向かって駆け出した!!

タタタタタタタタタタタタタタタターーーーーー!!



453 :364:2006/05/25(木) 07:20:14.43 0

「フン!そんな破れかぶれの特攻ッ……!!」
「上空注意ヤッ!!」

ズッドォォォォォン!ドッガァァァァァンッ!!

高橋と未来の間に土塊が降る。狙い過たず、未来が数秒前までいた場所である!
わずか数メートルの場所、自分のいた場所に巨大な土塊が振ったことに未来は一瞬怯む。
その間に高橋とライク・ア・ルノアールは一気に距離を詰める!
「クッ…突っ込め!!オーシャンズ・ストーリーズ!!」
2体のオーシャンズ・ストーリーが高橋を迎え撃とうと駆け出してくる!

高橋は足を止めない。スタンドで殴ることは危険であるはずなのに。
走っているライク・ア・ルノアールは右腕に力を込める。
その右腕には、ある物が握りこまれていた。



454 :364:2006/05/25(木) 07:20:46.68 0

「里沙ちゃんがくれた種…海水じゃあ芽ぇ出んでも、地面に撒かンけりゃぁー芽は出るはずだよナー
 とりあえず里沙ちゃんの代わりに叫バしてもらうンよッ!『ラブ・シード』ッッッ!!」

ドルドルドルドルドルッ!! ビャァァァァ!バシャァァァァァァァンッ!

ライク・ア・ルノアールが握り込んでいた『ラブ・シードの種』が生長し、1m強の『木の枝』になる。
そのままそれを槍代わりに、2体のオーシャンズ・ストーリーを薙ぎ払った!!
そしてさらに走った高橋は、砕けた土塊を足場に跳び、未来本体に槍を振り下ろす!!


バッキィィィィィィィィィィィィン!!


未来は慌てて生成した水の鎌で槍を受け止める。高橋は着地し、そのまま鍔迫り合いの格好となる。
「……2m……ようやく…ようやくあーしの射程距離に入ったンよ…」

不敵な笑みを込めて呟く高橋に、未来は冷や汗を流した。


539 :364:2006/05/26(金) 22:10:29.63 0
銀色の永遠 〜高橋愛はルノアールを男役にする〜I


バキィィィッ!バキィィィィィィン!


高橋のライク・ア・ルノアールが自分の能力で生み出した能力の木の槍で、
未来と名乗った女の鎌と斬りつけ合っている。
槍と鎌のぶつかり合う鈍い音が辺りに響く。
新垣は高橋が作った迫り出しの壁に寄りかかり、二人の戦いを見守っていた。
アバラが折れてわき腹が痛い。新垣は苦しげな息を吐き出す。
気を抜くとスタンド能力を解除してしまいそうだ。
しかし今解除してしまったら高橋は勝つことができないだろう。
新垣は切れ切れになりかけている集中力を引き締め、真剣な目で二人の戦いに意識を集中する。

――気を抜くな――タイミングが全て――

2人の闘っている足元では、ゆっくり、ゆっくりといくつもの植物が『芽を出して』いる――。



540 :364:2006/05/26(金) 22:10:52.91 0

バキィィン!ベキィィィィッ!

ルノアールが何度も木の枝の槍を振り下ろす。しかし、未来はそれを巧みに水の鎌で受け流していた


スピードは明らかにライク・ア・ルノアールのほうが速い。しかも相手は右腕一本である。
その気になればルノアールのラッシュで一気に決着をつけることは可能であろう。
しかし、敢えてそのスピードや能力に頼らずに武器での攻撃を繰り返すのは
未来の水の鎌がまた変形して形勢が変わることを警戒していたからである。

「おぉぉぉォォォーラァッ!!」
「はぁッッ!!」

バキィィッ!

ルノアールが上段から棒を振り下ろし、未来はそれを鎌の峰で受け止める。
そしてそのまま未来が腕をひねり、棒は鎌の曲線を滑ってそのまま狙いを外されて振りぬかれる。
右手一本とは思えないほどの腕と身体捌き!恐らくはインパクトや打ち合いのたびに
鎌の要所要所の浮力を調節して振り回す工夫をしているのだろう。
力の向きをずらされた棒はそのまま斜めに振り下ろされ、地面へと叩きつけられる。
高橋の無防備な背中が未来に晒される!
「もらったっ!!」
未来が鎌を振りかぶる!!



541 :364:2006/05/26(金) 22:11:18.42 0

「今だッッ!ラブ・シィィーーードッッ!!!」

ドルドルドルドルドルドルドルドルッ!!

高橋と未来を取り巻くように細身の背の高い木が何本も生える!!
「何ィッ!これは!!?」
「さっき里沙ちゃんが蒔いた種やッッ!
 『マングローブ』は海水でも育つんやよっ!!」
周囲に気を取られて隙ができた未来に高橋が枝の槍を叩きつける!!

バッシィィィィィィィン!!

「ッツゥゥ!!」
強かに右腕を打ち据えられた未来は吹っ飛び、痛みで鎌を取り落とす。
地面に落ちた鎌は未来の手を離れてスタンドを維持できないのか、水となって飛び散った。
「これであーしたちの勝ちヤぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
吹き飛んで射程距離外に出た未来を追って、ライク・ア・ルノアールに
ラッシュをさせながら高橋が駆け出す!!
しかし吹き飛んだ勢いで尻餅をついている未来の表情にはまだまだ余裕がある。
あと数秒も経たないうちにルノアールのラッシュが決まるというのに!
未来は笑みすら作ってみせる。それが高橋の癪に障る。
「何を笑ろとるンヤぁぁぁぁぁ!!
 おォォォォォォォッちょきんしねまぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァッ!!」
ライク・ア・ルノアールが未来にラッシュを繰り出す!!



542 :364:2006/05/26(金) 22:11:38.04 0


スッテーーーン!!


高橋は何かに脚を取られて、盛大に転んだ。
ライク・ア・ルノアールのラッシュはギリギリ射程距離に届かず、空振りする。
「な、なンヤァァ!?足を何かに掴まれて…!?」
高橋は自分の足を見る。
そこには『地面から這い出た水でできた手首』が、自分の足首をしっかり掴んでいた。

「な、なんやってぇぇ!?水を操る余裕なんて…!?」
「ハァイ、詰んだ。
 アンタが自分で作ったんでしょ、その水溜り。『鎌を取り落とさせて』」
未来はいつの間にか立ち上がり、見下ろしていた。
「クッソ…うぉりゃッ!!」
ライク・ア・ルノアールが未来を殴りつける。
しかし、射程距離のギリギリ外に立っている未来には届かない。
「近付かれたときはどうしようかと思ったよ…。
 さすがに鎌を振るってるときは他に海水を操作してる余裕はなかったからね」
未来が上空に目を向ける。その視線の先を追った高橋は戦慄した!
上空に、巨大な水塊が浮かんでいる!それはどんどん膨張し、巨大化している!!

「クソッ…外れん!!」
高橋がどんなに脚をひねっても、引っ張っても、ルノアールで殴っても足元を凸らせても、
『水の手首』は高橋の足首を離さなかった。



543 :364:2006/05/26(金) 22:12:05.20 0

「このまま水で押し潰してあげる…
 さっきよりは少ないけど、約15トン…痛みもないし、苦しむ間もなく圧死するから…」
突然、高橋は抵抗の動きを止める。
そのまま無言で立ち上がり、上を見上げて大きく深呼吸を始めた。
もちろん、足首は掴まれたままで高橋はそれ以上動けないし、攻撃も未来には届かないというのに。
「なに?観念でもした?」
「いンや……15トンっつったら、一辺約2.5mの立方体ほどの容量か…
 確かに、そんなん食らったらイッパツで終わりだわなぁー…誰でも…」
「……何が言いたい?」
「喰らうんはあーしだけやないってことや!!里沙ちゃんっ!!」
「ラブ・シードッッ!! 能力を『解除』しろっ!!」
「ライク・ア・ルノアールッッッ!!
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラーーー!!」
高橋と未来を取り囲んでいた植物はしおれながら消滅する!
さらに高橋は、自分と未来との間の地面に猛烈な勢いでラッシュを繰り出した!!

ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ!!!!

「そ、それ以上妙なマネをするなぁぁーーーッ!!
 オーシャンズッ・フォォォーールッッッッ!!
突然の2人の『奇行』に動揺した未来は頭上に浮かぶ水を落下させ、自らはそこから逃れようと数歩

下がった。

「…ええんか?この水降らして?」
高橋が妙なことを呟く。
「このままッ!!押し潰されてッ……え?」
未来は、自分の足元が不安定に沈みかけているのに気がついた。
ストレートの能力は殴った地面を迫り出させる能力。なのに、地面に『ヒビが入っている』?

ピシ……ピシピシ……ドゴォォォォォォォン!!



544 :364:2006/05/26(金) 22:12:37.73 0

「何ィィィィィィィィッ!!!?」
突然、高橋が殴っていた所から地面が陥没した!!
地面の亀裂は高橋と未来をも飲み込み、深く深く落ち込んでいく!!!
「『マングローブ』を解除した地面は根っコがなくなってスカスカやっ!!
 『迫り出し』を使わンと殴れば地面は陥没する!!
 そしてッ!!自分の技でアンタも押し潰されるンやぁぁーーー!!」
未来と共に落下した高橋が叫ぶ!!
確かに、水の落下地点の真下で動けなければ、自分も直撃を喰らう!能力を解除しない限り!!
「オーシャンズストーリー!!能力を解除しろぉぉぉーーーーーーー!!」

ドッゴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!


「ハァ…ハァ…ハァ…あ、危なかった……」
未来は2メートルほど落ち込んだ穴の中でぺたりと座り込む。ギリギリでスタンドの攻撃の解除が間

に合ったのだ。
あのまま、この逃げ場のない穴の中でオーシャンズ・フォールをまともに食らったなら、
再起不能では済まず、確実に命を落としていただろう。

「解除シたンか……あのまま降らしとッたら、少なくともあーしは殺せとったンに…」
「ハッッ!!」
そう、この穴に落ちたのは未来ひとりではない!!
真っ赤なスタンドを隣に従えた高橋は、未来のすぐ背後に立っていた。



545 :364:2006/05/26(金) 22:13:03.27 0

「アンタァ……あーしらに……「覚悟」はあるンか…と…言ったナぁ…
 見シたるヨ…ええ…おい 見シたるヨ……
 ただしアンタにもしてもらうンやよッ!
 再起不能るってェェェェ「覚悟」をナああああああ〜〜〜〜〜〜!!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!オーシャンズ・ストーリィィィーーー!!」
未来はスタンドのビジョンを生み出そうとする、が、狭いこの空間では自在に水をことができない。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!」

ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガ!!!

高橋は『迫り出しのラッシュ』で壁を殴りつけ続ける。
迫り出しは未来、高橋問わずでたらめやたらに四方八方から殴りつけ続ける!!

ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガ……ドッギャ〜ン!!



546 :364:2006/05/26(金) 22:13:34.62 0

ラッシュの音が鳴り止んだのを確認して、新垣は穴を覗き込む。
穴の中には、手を伸ばして穴をよじ登ろうとしている高橋と、倒れ伏して気絶している未来がいた。
新垣は慌てて高橋に手を貸し、穴から引っ張り出す。
「里沙ちゃん……ヤッたよォ…あーしたちの、勝ちヤ……」
「全く…無茶するんだから…言ってくれればもっと援護するのに…」
高橋は頭や腕などから血を流し、制服も血に染まっている。今の『迫り出しラッシュ』を
自分も食らった結果であろう。
しかし、その顔は晴れやかであった。

「ま、ギリギリとはいえ、2人の勝ちだね、かなり危なっかしかったけど」
いつの間にか近付いてきていた三好が2人に笑みを見せる。
2人の覚悟を見届けた三好は、2人をはれて演劇部の仲間として認めたのだ!!
「里沙ちゃん、やったなァ……」
「ちょっとは、先輩たちに、追いつけた、かな……」
三好の笑顔に今度こそ安心した2人は、そのまま倒れ、意識を失った。



547 :364:2006/05/26(金) 22:13:52.56 0

      ◇      ◇      ◇

「ハッッッ!」
「あ、目、覚めた?」
高橋は、自分がベッドに寝かされていることに気がついた。
「石川さん、ここは?あーし、何でここに?」
状況が掴めない高橋はキョロキョロと周囲を見回す。
病室?隣のベッドに里沙ちゃん?え、夜?何で石川さんと吉澤さんがここに?
「ぶどうヶ丘病院だよ。マメと2人、病院に運ばれたの、覚えてない?」
「三好さんが救急車呼んでくれたんだって。私も目、覚めたのついさっきだけど」
石川と新垣が教えてくれる。
そういえば、身体中に包帯や絆創膏や、手当ての跡がある。
「あの未来って人は…どうなったン、ですか?」
三好の「負けたほうは解体」という発言があるだけに、高橋は不安を滲ませる。
「あー、部室に引っ張ってって安倍さんと先生が話し聞いてたよ。
 いろいろ聞きたいことあるみたいだったからね
 三好はさっきまでいたけど、帰っちゃったね」
吉澤が教えてくれた。
先生と安倍さんなら大丈夫だろう、と高橋は心の中で少し安心した。

「いま2人の親御さんと飯田さんと柴っちゃんが別室で話ししてる。
 やっぱりこんないきなり大怪我されたんじゃ親御さんも心配だろうしね
 飯田さんたち親御さんに謝って演劇部の活動説明してるけど、自分たちでも謝っときな」
「演劇部にいると、演劇以外にこうしてスタンドで大怪我することもあるかもしれない。
 家族や友達に心配かけたりすることもあるし、逆にスタンドで人を傷つけることだってある。
 もしも嫌だったら、抜けてもいいんだからね。よく考えてみて」
取りとめのない話のあと、最後に石川と吉澤はこういい残して帰っていった。
高橋と新垣は病室に取り残される。



548 :364:2006/05/26(金) 22:14:13.97 0


「なぁ里沙ちゃん……あーし…演劇部辞めたりせンからね…
 どんな活動やって、あーし自身が選んだ『演劇部』の活動である限り…あーしは極めてみせる!」
「私だって!
 確かにびっくりはしたけどさ、安倍さんも後藤さんもこういうことをしてきたわけだし!
 私は…先輩たちのようになりたい!!」


バァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!


「あーしは……この部で1番になる!」
「私だって、安倍さんや後藤さんみたいに演劇もスタンドも最強になるもん!」
「里沙ちゃん…あーしたち、ライバルやな」
「ライバルだね。2人で『無敵なライバル』になろうよ」
「あはは、何やそれw」
「いいじゃーん!無敵なライバルで!」
「負けんからな」
「うん」
2人は顔を見合わせて笑いあった。

しかし、そんな笑いは病室のドアを叩くノックの音でかき消される。
そう、2人はこれから、ある意味未来玲可よりも恐ろしい、
『愛娘を怪しげな部活から引き戻そうとする両親たち』と戦わなければいけないのだ。
ガチャリ!とドアの開く音に、2人は引き攣った顔を見合わせた。



549 :364:2006/05/26(金) 22:14:31.56 0

高橋愛    全治3週間
スタンド名  ライク・ア・ルノアール
新垣里沙   全治4週間
スタンド名  ラブ・シード

未来玲可   再起不能
スタンド名  オーシャンズ・ストーリー

TO BE CONTINUED・・・



550 :364:2006/05/26(金) 22:14:51.38 0

2週間後―――


ぶどうヶ丘高校の体育館には、衣装や化粧で怪我を隠し、不慣れなぎこちない演技ながら
演劇部への溢れんばかりの愛情を漲らせて、舞台の主役を勤める2人の少女がいた。

後に演劇部のエースとなるその2人の演技に元エースの後藤真希が強烈な印象を
受けていたことを二人が知るのは、それから1年半後のことである――