335 :314:2006/02/08(水) 22:28:01.64 0
銀色の永遠 〜中島早貴のワンダフルハーツ1〜

「なかさきちゃんが休んでるんです!すごいニュースです!!」

熊井友理奈が大声で騒いでいる横で、徳永千奈美は、呆れ顔で笑っている。
「なかさきちゃん休みなんだ。ふーん、で、それのどこがニュースなの?」

千奈美は友理奈や中島早貴と違うクラスなので、
放課後になった今まで知らなかったが、どうやら早貴は今日学校を休んだらしい。

「だって、わたし、なかさきちゃんと小学校の時から今までずっと一緒のクラスだったけど、
なかさきちゃん今まで休んだことなかったもん。ビックリしたよ」
友理奈はすごい勢いで説明をしたが、千奈美には、その熱意は伝わらなかったようであった。

「へぇ〜、そうなんだ。28へぇ〜ぐらいかな」
「ちょっと低いね。まあいいや、で、そういう訳だから、なかさきちゃんに手紙とか届けることになっ

たの。
だからついて来てくれない?」

友理奈のお願いを聞いた千奈美は、少しばつのわるそうな表情をして友理奈に謝った。
「うーん、ごめん。無理。今日はまあさんとS市に買い物に行く事になってんの」
「えーーー!!じゃあ、みんな駄目なんだね。雅ちゃんとりーちゃんは、二人で『Revolution』に行く

らしいし、
佐紀ちゃんは、『用事がある』ってさっさと帰っちゃうし、ももちは、久住さんと仲良く帰っちゃって

たし」
「じゃあ、一人で行ったら?なかさきちゃん調子悪いんだろうし、大勢で押しかけたら悪いでしょ」

千奈美の真面目な発言に友理奈は少し肩を落としながら返事をした。

「分かった。一人で行って来るよ。でも千奈美ちゃんの家、なかさきちゃん家に行く方向と一緒だよね


途中まで一緒に帰ろ?」


336 :314:2006/02/08(水) 22:30:04.03 0
銀色の永遠 〜中島早貴のワンダフルハーツ2〜

「でもさあ、なんで、なかさきちゃんってスタンド使えないんだろうね。演劇部員なのに」
千奈美は強い疑問を含んだ口調で口を開いた。
「うーん、何でかな?なかさきちゃんに聞いたら、『寺田先生にスカウトされた』って言ってたよ」
「スカウト?久住さんもスカウトされたみたいなこと言ってたけど、どうなんだろ」
「矢にも刺されたらしいけど、他の人みたいに気絶したりしなかったらしいよ。ちょっと傷ができただ

けだったんだって」
「不思議だよね。スタンドは見れるのに、スタンドが見えない。どういうことなんだろ?」
二人は、懐疑の念に囚われていたようだったが、その答えは見つからなかった。

「あっ、千奈美ちゃんの家が見えてきちゃったね。じゃあ、また明日」
友理奈は、そう言うとゆっくり走り出した。
「うん。ばいばい、なかさきちゃんによろしくね」
その声を背に聞いた友理奈は、大きな体を力一杯動かし手を振りながら、走り去っていった。

「んっ?友理奈ちゃんの後ろに変な霧みたいなのが……?
友理奈ちゃん行っちゃった。うーん、まあいいか。早く準備してまあさんと出かけよっと」
千奈美は友理奈の背中から少し不穏な気配を感じたが、気にも留めずにその場を後にした。


337 :314:2006/02/08(水) 22:31:21.73 0
銀色の永遠 〜中島早貴のワンダフルハーツ3〜

『ピンポーン』

「うーん、誰も出てこないなあ。なかさきちゃん病院にでも行ってるのかな?」
友理奈が一人つぶやいていると、目の前のドアが静かに開かれた。

『ガチャッ』

「あっ、友理奈ちゃんどうしたの?」
友理奈の前には、水色のパジャマを着た早貴の姿があった。
「あっ、なかさきちゃん。元気?なかさきちゃんお休みだったから、手紙とか渡しにきたの。」
「そうなんだ、ありがとう。友理奈ちゃん。
こんな所で話すのもなんだから、調子もよくなったし、お茶でも出すから上がって」

友理奈が早貴の部屋に足を踏み入れると、そこは、中学生の女の子らしい可愛らしい部屋だった。

そこら中にぬいぐるみが転がっていた。
世界中で人気を博しているネズミのぬいぐるみや最近人気の癒し系の熊のぬいぐるみ
なんだかよく分からない気持ち悪い造形のものもいた。

机の上は普段勉強をあまりしてないのだろう。
少女マンガやゲームのカセットなどが乱雑に置かれていた。

流れていた音楽は最近流行のアイドルやアーティストと呼ばれるものではなく
意外にも、どこかの民俗音楽のような静かでゆったりとした荘厳なものだった。



338 :314:2006/02/08(水) 22:34:26.13 0
銀色の永遠 〜中島早貴のワンダフルハーツ4〜

「友理奈ちゃん、適当なとこに座ってね。お茶入れるから。
そういえば友理奈ちゃんって、毎朝紅茶なんだよね。羨ましいなあ」
早貴はそう言いながらゆっくりと紅茶を注いだ。横にはクッキーが並べられていた。
「うーん。そうかな?でもおいしいよね、紅茶。
……そういえば今年もあと少しだね。来年はもっといい年になって、舞波も帰ってきたらいいなあ」
その言葉に二人は小さな沈黙を創った。

「……でもさあ、ほんとにいろいろあったよね。キョトシは。
…今、キョトシって言ったよね?早貴。キョトシって」
二人は声を出して笑った。それは、先ほどまでの空気を消し去るには十分なものであった。
早貴は『キョトシ』と言ったことに少し照れていたようだったが、二人の空気は明るさを取り戻した。
「ふふ、キョトシって。でも、来年も演劇部で楽しくできたらいいなあ」
「そうだね。でも、早貴、演劇部にいてもいいのかな?早貴スタンド使えないし」
「大丈夫だよ。スタンド使えなくても。使わないで済むならそのほうが良いんだしね。
それに、今、みんな仲良いけど、もしスタンドがなくてもわたし達はきっと今と同じぐらい仲良かった

よ。
だからわたし達が出会って仲良くなったのは、きっと『運命』なんだよ」
「うん、そうだね。ありがと、友理奈ちゃん」

二人はその後、三十分近く話していたが、どうやら友理奈は眠ってしまったようだ。

早貴が友理奈の顔を覗き込みながら呟いた。
「友理奈ちゃん、可愛いなあ。わたしもこのぐらい可愛かったらな」


339 :314:2006/02/08(水) 22:36:10.11 0
銀色の永遠 〜中島早貴のワンダフルハーツ5〜

『ガタッ』

「何、今の音?お母さんはまだ帰ってこないはずだし。
……友理奈ちゃん起きて。早く起きて」
「うーん、なあに。もう五分だけ」
友理奈は眠そうに目をこすりながら、早貴にそう答えた。
「何言ってるの。友理奈ちゃん。誰か家に入ってきたみたいなの」
「えっ、ホント?なかさきちゃんの家族じゃないんだよね?
って言うことは……セールスマンか何かかな?」
「そんなわけないでしょ。泥棒さんか何かだよ」
「泥棒かあ…懲らしめないとね。なかさきちゃんさがっててね」

二人がそんな会話をしていると足音が上に昇って来ていた。

『ガチャッ』

「フィール・イージィ」
「グバッ!!何だこれ?クソ!」

ドアから姿を現した太った男は、いきなりの攻撃に驚いたようで
すぐにドアを閉め、二人に背を向け逃げ出した。

「逃がさないよ。なかさきちゃんは危ないからここで待ってて」
友理奈は早貴にそう告げると男を追って走り出した。

この杜王町を汚すものを見逃すわけにいかなかったからだ。

「あっ、友理奈ちゃん……待って早貴を置いてかないでよお」
一人にされて心細かったからなのか早貴も二人を追ってゆっくりと動き出した。


340 :314:2006/02/08(水) 22:37:43.76 0
銀色の永遠 〜中島早貴のワンダフルハーツ6〜

タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタ

何なんだ。友理奈ちゃんにもあんなものが出せるのか。
しかも追ってきてやがるし。チッ、やるしかないか。
ここなら、この階段の量とあの事件を気味悪がって誰も来ないだろ。

男は友理奈との距離を確認すると、右手に見えた女川神社の888階段を昇っていった。

はあ、はあ、はあ、やっぱこの階段ヤバイな。この体じゃあきついぜ。
昔ならこんなことなかったのにな……おっ、きやがったな。可愛がってやるぜ。
「友理奈ちゃん」
「はあ、はあ、えっ、なんでわたしの名前を?」
友理奈の美しい顔は、知らない男に自分の名を呼ばれたことによる不信感が張り付いていた。
「まあ、有り体に言えばオレは、君のストーカーさ。
2週間前に初めて見た君の姿はまるで天使だったな。それから、毎日君のことを見てたんだ。
この力を使ってね」

――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――――


357 :314:2006/02/09(木) 00:45:59.92 0
銀色の永遠 〜中島早貴のワンダフルハーツ7〜

男の体から細身のしかし力強い肉体を持ったスタンドが現れた。
そのスタンドは緑色一色でまとめられており、背には小さな羽根が生えていた。
さらに目は大きく複眼であり、顔は蜻蛉のようで、
本体と一緒で爽やかなイメージを抱けるものではなかった。

「そうそう自己紹介が遅れたね。オレの名前は山本圭壱。
友理奈ちゃんもこれ見えるんだよね?
こいつの名前は『ハッピーゴーラッキーパーソン』って言うんだ」
「『スタンド使いは惹かれあう』か」
「友理奈ちゃん、何か言ったかい。そろそろいくよ」

山本と名乗った男は、そう言うと同時に友理奈にスタンドで殴りかかった。
右、左、右、右、左、テンポ良く攻める山本の攻撃だったが、
スピードが遅いため友理奈は華麗にかわしていた。

「ふーん、オジサン大したことないですね。このぐらいならわたしの能力を使うまでもないかも」
「友理奈ちゃん結構やるね。でもこれならどうかな」

山本がそう言うと、辺りに霧のようなものがかかり始めた。


359 :314:2006/02/09(木) 00:48:42.62 0
銀色の永遠 〜中島早貴のワンダフルハーツ8〜

「んっ!?何これ。よく見えない」
「これがオレのハッピーゴーラッキーパーソンの能力、『ミスティワールド』
霧を作り出すことができるんだ。
全然俺のこと見えないだろ?待っててね。今、そこに行くからね」

「フィール・イージィ」
「おっ、スタンド出したんだね。こっちからは良く見えるよ。
でも無駄無駄、俺がどこにいるか分からないだろ?」

友理奈からは見えないが、序々に二人の距離が詰められていく。

「フィール・イージィッ!ディーハイドレイションッ!!」

「んっ、なんだ。白い粉が……ギャーーーーー!!!」

山本は身を悶えさせ地面を転がり回った。
友理奈の視界は自然と広がっていった。

「やっぱ大したことないね。オジサン戦闘経験ないでしょ。
不用意に飛び込んで来すぎだし、戦い方が雑すぎるよ」

クソ、女の子だと思っていたが、可愛い顔していくつか死線を潜り抜けてやがるな、この子。
けどこんなところで捕まるわけには……あの子は……よし、いける。

山本の視線の先には、二人を追いかけてきた早貴がいた。
素早く山本は立ち上がり友理奈の背中の先に向かって走り出した。

「どうしたの、オジサン?もう降参なの?……しまった」

友理奈が振り返り山本の姿を視界に入れたときには、もうすでに山本は早貴の体を掴んでいた。


360 :314:2006/02/09(木) 00:51:17.09 0
銀色の永遠 〜中島早貴のワンダフルハーツ9〜

「友理奈ちゃん…」
「卑怯だぞ。なかさきちゃんは関係ないじゃない」
「ふふ、もうそんな悠長なこと言ってられる状況じゃなくなったんだよ。オレは
さあ、攻撃は無しだぜ。この子を殺されたくなかったらな」
「友理奈ちゃん、わたしを気にしないでこの人を倒して。
どうせこの人友理奈ちゃんを倒した後に早貴の事も殺すんだから。
足手まといになりたくないの」
「何言ってんだこのやろう。ちょっと黙ってろ」
「なかさきちゃん……分かった」

友理奈は覚悟を決めた顔を早貴に向けた。

「って言いたいけど、ゴメンネ。やっぱなかさきちゃんのこと見捨てられないよ、わたし。
待っててね。二人で勝つ方法考えるから」
「ははっ、友理奈ちゃんは友達思いだね。だけどそれが命取りだな」

それからは、一方的だった。
山本は本気ではないようだったが、それでも女の子の体をいたぶるのには十分で
友理奈の体はボロボロになっていた。

「最初からオレに従ってれば気持ちよく死ねたのに。
でも、そろそろ死んでもらわないとな。あんまりゆっくりもしてられないしな」

それまで早貴を押さえつけていたハッピーゴーラッキーパーソンを呼び戻し
その腕が友理奈の服の襟の部分を掴み友理奈の体を持ち上げた。

――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――――


361 :314:2006/02/09(木) 00:54:48.59 0
銀色の永遠 〜中島早貴のワンダフルハーツ10〜

「友理奈ちゃんから、その臭い手を離せ」
ハッピーゴーラッキーパーソンから解放された早貴が立ち上がり山本を睨みつけていた。
「ハア?スタンドも使えないガキが何言ってんだ。先にぶっ殺されたいか?」

早貴はこぶしを握り締め果敢にも山本に殴りかかっていった。
しかし敵うはずもなくあっけなく早貴は地に伏した。

スタンドも持っていない自分では敵うはずもない。
そう分かっていても早貴は立ち上がらずにはいられなかった。
自分の為にあんなになってしまった友理奈の為に。
何度倒されても何度殴られても『アキラメル』という選択は早貴には無かった。

くそー。わたしに、わたしに力があったら。

――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――――

「痛いだろ。辛いだろ。そろそろ嬲るのにも飽きたから殺してやるよ」

山本は早貴の顔を睨み付けハッピーゴーラッキーパーソンの腕を動かした。
その腕は早貴の体に届いたように思われたが、
しかしその腕は紫色の手によって運動を停止させられていた。

早貴の前方には、スタンドが立ち早貴の体を守っていた。
その体は右半分が青、左半分が紫、そして右目が赤、左目が緑、とカラフルなものであった。
そしてその左腕には、銀色の鎖が巻きつけられていた。

バーン!!!!!!!!!!!!!


388 :314:2006/02/09(木) 17:43:23.94 0
銀色の永遠 〜中島早貴のワンダフルハーツ11〜

カラフルなスタンドは山本の手を離し早貴の方に向き直った。

「アナタニハスバラシイ”セイシン”ガアル。ヒトヲマモリ、ヒトヲタスケヨウトオモウ
ケンシンノ”セイシン”ダ。サア、ヤツノキタナイクチヲトジサセマショウ、サキ」

カラフルなスタンドは、その口を開き、早貴の目を見つめた。

「何、これ?もしかしてわたしのスタンドなの?
だったら名前があるはずよね。あなたの名前は?」

「ナマエ、デスカ。ソウデスネ……アナタノスバラシイ”セイシン”ト
アナタノタメニウラギラズサイゴマデタタカッタカノジョノカガヤカシイ”セイシン”
ニチナンデ””ワンダフルハーツ””トデモナヅケマショウカ」

ワンダフルハーツは友理奈と早貴を見つめそう言った。

「ワンダフル、ハーツか。うん。いい名前だね。
よし、ワンダフルハーツわたしからの最初のお願い。わたしと一緒にあいつを倒して」
「オーケー、サキ。マカセテクダサイ」

早貴は素早く動き山本の横に転がっていた友理奈の体をワンダフルハーツの右手でヒョイと持ち上げた。

「何なんだ?こいつ。今スタンドに目覚めたのか?
でも所詮ガキのスタンドぶっ殺してやる!」

ハッピーゴーラッキーパーソンが早貴に殴りかかった。
しかし、左手一本では防ぎきれずにワンダフルハーツと早貴は簡単に吹っ飛ばされてしまった。
友理奈も一緒に吹き飛ばされたが、幸い大きな衝撃は受けていないようだった。


389 :314:2006/02/09(木) 17:45:11.81 0
銀色の永遠 〜中島早貴のワンダフルハーツ12〜

「大丈夫なの?ワンダフルハーツ!吹っ飛ばされちゃったじゃない」
「サキ、ワタシノチカラハコンナモノデハアリマセンヨ」

「なかなか強そうなスタンドだと思ったがパワースピード共に並ってところだな。
けど、念には念を置くぜ。その鎖も怖いしな」

ハッピーゴーラッキーパーソンはまたしても霧のようなものを作り出した。

「どうしよう。見えなくなっちゃったよ。…そっかこの鎖なら近づいてくる前に」

早貴はワンダフルハーツの左手に巻きついていた鎖を振り回した。
しかしそこに山本はおらずブンという風を切る音だけが聞こえた。

「そんな短い鎖近づかなけりゃあ恐くないね」
「イタッ」

早貴の体に石がぶつけられた。
どうやら山本が投げつけてきたようだ。
二発三発と早貴の体にぶつけられていく。

「なかなかコントロール良いだろ。俺は野球をやっててね。
お前ぐらいの的なら狙うことはできるぜ」

「くそー、どうしたら」
「サキ、ナニヲシテルンデス?アナタニハコノクサリガアルデショウ」
「だってこんな短いのじゃ……あれ」

早貴が鎖に目をやると2,3メートルほどだった鎖が10メートルはあるだろうか、長くなっていた。
「よしこれなら」


390 :314:2006/02/09(木) 17:46:31.80 0
銀色の永遠 〜中島早貴のワンダフルハーツ13〜

ワンダフルハーツは鎖の巻きつけられた左腕を地面と水平に振り回し始めた。

ブンブンブンブンブンブン

「グボア!!」
山本の顔に鎖が強かに当たった。

「やった。当たった。よーしそこだ」
早貴の元に戻ってきていた鎖を今度はまっすぐに山本の声がしたほうに投げつけた。
まっすぐに届いた鎖が山本の腕に巻きつけられた。
その鎖によって徐々に山本と早貴の距離が詰められていく。

「おじさん、もう逃げられないよ」
二人の距離はもうすでに0に近く接近戦用のスタンドである早貴のワンダフルハーツでも十分に届く距離であった。

「ふん、ガキが忘れたのか。さっき片手とはいえ俺に圧倒されたろうが。お互い片手のこの状態で勝てると思ってるのか」
「そうだった。どうするの、ワンダフルハーツ?」
「マッタクモンダイアリマセン。コノママデケッコウ」
「そんなあ。やばいってワンダフルハーツ」

「話はまとまったかい。そろそろいくぞ!」

ハッピーゴーラッキーパーソンの左腕が早貴に向かってうなりを上げて進んでいった。



391 :314:2006/02/09(木) 17:47:35.44 0
銀色の永遠 〜中島早貴のワンダフルハーツ14〜

「ああっー、もうどうにでもなれえーーーー!!!」

ワンダフルハーツの青い右腕がハッピーゴーラッキーパーソンの左腕を迎え撃った。

「ウギャーーーー!!!!!痛い、痛い、痛い」

「あれ?どうなったの、今?」

予想に反して地面を転げまわっていたのは、山本だった。
山本の左腕の拳は砕けてしまったようで、ボロボロだった。

「セツメイシテマセンデシタッケ?ワタシハミギノキンリョクダケイチジルシクツヨイノデス」
「聞いてないよお。でもよかったあ。これで勝負ありだね」
「ゆっ、許してくれ!出来心だったんだ」
「ふーん、でもおじさん見たいな人そのままにしてたらみんなが危ないよ。
だから警察に電話しないとね。携帯出して」

早貴は山本の懐から取り出された携帯で、警察に電話をした。

「なかさきちゃん、やったね」
「友理奈ちゃん……うん、早貴やったよお」
友理奈は全身に擦り傷や打ち身の跡があり、ボロボロであったがなんとか無事な様子であった。



392 :314:2006/02/09(木) 17:48:36.45 0
銀色の永遠 〜中島早貴のワンダフルハーツ15〜

「どうする友理奈ちゃん?一発殴っとく?」
「ううん、いいよ。一応この人も反省してるみたいだし」
「駄目だよ。友理奈ちゃん一発ぐらい殴らないと。友理奈ちゃんが殴らないならわたしがやる。
さっきのは、早貴の分。これは友理奈ちゃんの分!」

ワンダフルハーツの右腕が天高く振り上げられた。

「うわーー!やめてくれ!!そんなのもう一発食らったら死んじまう!!」

ワンダフルハーツの豪腕が振り下ろされた。


「キュフフ、面白いね。泡吹いて気絶しちゃったみたい」

早貴の右腕は地面を強く叩いたので、その結果地面に穴は開いたが山本の体はなんともなかった。


393 :314:2006/02/09(木) 17:50:45.10 0
銀色の永遠 〜中島早貴のワンダフルハーツ16〜

―−翌日――

「なかさきちゃん、おっはよー」
「あっ、友理奈ちゃんおはよ」
二人とも顔にいくつもバンソーコーを張り、全身の痛みをこらえているようであったが元気そうであった。

「何でわたしあのときスタンド出せたんだろーね?」
「うーん、よくわかんないけど、なかさきちゃんもうスタンド持ってたんじゃないかな。
ただ使うきっかけが無かっただけで。それが人を守るって言う強い気持ちに反応したから出せたんだと思う。
自分の為じゃなくて人の為に全力が出せる。それってすごいと思うよ」
「うん、そうかもね。ありがと。でも友理奈ちゃんが『二人で勝つ方法考えるから』って言ってくれた時は嬉しかったよ。
ワンダフルハーツも『二人の精神にちなんで『ワンダフルハーツ』だ』って言ってたし。友理奈ちゃんのおかげだよ」
「もー、恥ずかしいよお」

友理奈は真っ赤な顔をして走り出した。その背中を追って早貴も走り出した。

空はきれいな青空だった。


中島早貴 軽傷
スタンド名:ワンダフルハーツ

熊井友理奈 軽傷
スタンド名:フィール・イージィ

山本圭壱 再起不能(調べにより余罪が発覚。逮捕)
スタンド名:ハッピーゴーラッキーパーソン


TO BE CONTINUED…