673 :六部198:2005/11/14(月) 01:43:40 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜1

「突然だがみうな、寺田のおっさんから指令だ」
吉澤は、鏡の前でダンスの練習をしていたみうなに声を掛けた。
「えっ?指令・・・ですか?」
「そうだ・・・」
みうなが向き直ると、吉澤は寺田から渡されたであろう紙を広げて見せた。

     斉藤美海に命ずる。
     本校高等部3年B組『村田めぐみ』を演劇部に勧誘せよ。 
   
     尚、手段は問わないこととする。
     その際、彼女のスタンド攻撃には十分注意すること。

                                 寺田      

「・・・・スタンド攻撃・・・相手はスタンド能力者・・・?」
「そうらしいな・・・詳しい経緯はしらないが・・・まあとにかく、気をつけろよ・・・」
そう言って吉澤はみうなの背中を叩き、
隅に置いてあったサッカーボールでリフティングを始めた。
(おお、初指令だ・・・)
そう、実はこれがみうなが入部して以来初めて受けた指令だった。
(よし!がんばるぞ!!)
心の中で気合を入れ、部室を後にした。

バアンンンンン!!!


674 :六部198:2005/11/14(月) 01:46:12 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜2

みうなはまず3-B教室に向かい、
とりあえず近くにいる女生徒に声を掛けてみた。
「あのー村田めぐみさんはいらっしゃいますか?」
「えー?さあ?もう帰っちゃったんじゃない?」
「そうですか・・・」
「あ、待って!」
情報を得られず、他を当たろうとすると女生徒が呼び止めた。
「もしかすると、旧校舎に行ってるかもしれない」
「・・・旧校舎・・・ですか・・・?」
旧校舎は現在使われていない古びた木造の校舎である・・・。

「一体なぜ?」と聞いてみたが、女生徒は「さあ?」と首を傾げるだけだった。
だが最近、よく放課後に旧校舎の方へと歩く彼女の姿が目撃されているらしい。
みうなは女生徒に礼を言い、早速旧校舎へと向かった。


675 :六部198:2005/11/14(月) 01:48:42 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜3

旧校舎に着いたみうなは、教室を一箇所づつ見て回ることにした。

ぎし・・・ぎし・・・ぎし・・・・

普段から人がいない木造旧校舎・・・しかも陽が傾き、中は薄暗くなってきている・・・
その中に自分の足音と、木の鳴き声だけが響く・・・。

ぎし・・・・ぎし・・ぎし・・・・・フフフ・・・・ぎし・・・ぎし・・・・

「!!!!」
一瞬笑い声のようなものが聞こえ、慌てて後ろを振り返る。
しかし、そこには誰もいない・・・・。
(気のせい・・・よね・・・)
気を取り直して教室を見て回るが、一度気になりだすと止まらない。
誰かが後ろからついて来ている気がして何度も振り返る。
壁の染みが人の顔に見えてくる。
など、恐怖がみうなの頭の中を支配し始めていた・・・。

(もうやだな・・・あの教室で最後にしよう・・・また明日、お昼休みにでも3年の教室に行こう・・・)
そう思いながら、足早に突き当りの教室へ向かった。

ぎし・・・・・ぎし・・・・マッテ・・・・・ぎし・・・ぎし・・・ぎし・・・・・


723 :六部198:2005/11/14(月) 16:45:55 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜4

木の軋む音に混じって、今度は自分を呼び止める声が聞こえる。
(・・・気のせいだ・・・早く行こう・・・てゆーか、本当にここにいるのかな?)

教室の前に着き、扉に手を掛けたその瞬間。
「ちょっと待ってって・・・!」
突然後ろから誰かに肩を捉まれた。
「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「うぎゃああああああああああああああああああああ!!!!」
旧校舎中に『二つ』の悲鳴が響く。

「・・・・え?」
自分以外の悲鳴が聞こえ、声の方をよく見ると
そこにはメガネを掛けた女子生徒がいた。
「ちょ・・・びっくりさせないでよ!!」
その女子生徒は、ずり落ちたメガネを中指で直しながら言った。
「あ、よかった・・・人間だったのか」
みうなは、ほっと胸をなでおろした。
「で、あなたここで何してるの?」
メガネの女子生徒は怪訝な顔で聞いてきた。
「あ、私高等部2年『演劇部』の斉藤美海と申します。
実は人を探していて・・・」
みうなが軽く自己紹介をし、要件を言おうとすると、
メガネの女子生徒の表情が変わった。


724 :六部198:2005/11/14(月) 16:48:38 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜5

「帰ってください!ここには村田なんて人はいませんよ」
「・・・・・・あなたが村田先輩ですね・・・・」
「・・・!な、な、な、何を根拠に?」
メガネの女子生徒は明らかに動揺している。
「人を探している・・とは言いましたが、誰とは言ってないのに
なぜそれを知っているんですか?」
みうなは「やれやれ」といった具合で説明した。

「ふう・・・ばれちゃあしょうがない・・・とにかく私は忙しいんです、
前にも話しましたが演劇部には入りません!」
メガネ改め、村田めぐみは強い口調で言うと
そのまま教室に入ってしまった。
(この人、前にも誘いを受けていた?
どちらにしろ、このまま帰るわけにはいかない)
「ちょっと話だけでも聞いてください!」
そう言ってみうなは、村田の後を追って教室の中に入った。


725 :六部198:2005/11/14(月) 16:50:40 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜6

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・

「こ、これは・・・?」
そこは異様な空間だった。
頭がおかしくなりそうな色彩の画、毛皮を着た人体模型、
人の頭(恐らくマネキン)の付けられた鳥の剥製らしきもの・・・etc

「てめーっ!勝手に人の神聖なアトリエに入ってきてんじゃねー!!!!」
村田はみうなに気付いて、血相を変えて詰め寄ってきた。
「勝手にって・・・別に先輩の部屋じゃないですよね?
そもそもこの校舎は立ち入り禁止なんですよ?」
「そんなのはカンケーねーんだよっ!とにかく帰れっつってんだよっ!!!」
村田はメガネを指で直し、その指をそのままみうなに向けた。
「こちらとしてもこのまま『はいそうですか』と帰るわけにも行かないんですよ
さっきも言いましたけど、話だけでも聞いてみてくれませんか?」
みうなは努めて冷静に説得をする。
「しつけーぞ!お前も寺田みたいに痛い目に会わせてやろうか?」
村田の背後にゆらゆらと揺らめく『何か』が見える。

       -彼女のスタンド攻撃には十分注意すること-

みうなは指令文に書かれてあった一文を思い出していた。


727 :六部198:2005/11/14(月) 16:56:38 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜7

「それは・・・スタンド使いとは聞いていたけど・・・」
「お前もこれが見えるのか?・・スタンド・・・そう呼ばれてるらしいな・・・あの野郎・・・突然私に
弓矢を構えて撃ってきやがって・・・だがこの『ブラッド・ステインド(赤いフリージア)』で弾き返してやったがな!」
そう言うと村田は、自らのスタンドをはっきりと現した。

ズ ズ ズ ズ ズ・・・・・・

女性型でスカート姿のスタンド・・・
スカートの裾や肩に花を形作った美しい装飾のものだが
なにやら血がこびり付いたような模様をしている。

「こいつを見て、寺田はびっくりしてたな・・・」
村田はメガネを直し、笑った。
(そりゃあ突然スタンドを出されたらびっくりだわ・・
まあ、いきなり矢を撃つ先生も先生だけど・・・私にもいきなり撃ってきたし・・・ん?
そういえば今まで気にも留めてなかったけど、
先生にもスタンドが見えているってことは・・・先生もスタンド使い・・・?)

「まあそれはそうと、痛い目に会いたくなかったら帰るんだな!」
村田が自信満々といった表情で言う。
「・・・痛い目に会うのは先輩の方かもしれませんよ・・・
一応手段は選ばなくていいらしいですから・・・」
村田のその態度に少し「ムッ」ときたみうなは強硬手段に出ることにした。
「スノー・ドロップ!!」

バシュウゥゥッ!!!

みうなが叫ぶと彼女のスタンド『スノー・ドロップ』が出現した。


729 :六部198:2005/11/14(月) 17:37:24 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜8

みうなのスタンドを見た村田のメガネが一瞬光った気がした。
「ほう、お前も同じような能力を・・・んでもってヤルってわけか?
・・・なら表に出な・・・ここじゃ作品に傷がつくかもしれない・・・」
そういうと村田は親指で教室の外に出るよう合図した。
みうなはそれに従い、先に廊下に出た。

(痛ッ・・・!何?)
みうなは首の後ろの付け根に痛みを感じ、振り返る。
見ると教室の中の村田が彼女の作品と思しきモノに布をかぶせていた。
おそらくこれが済んだら帰るつもりなのだろう。
外をみると既に日が暮れて月が出ていた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・

月明かりの中、スタンドの睨み合いが続き、二人の間に緊張した空気が流れる。

「どうした?かかってこないのか?勝負はヤルって決めた瞬間から始まってるんだぜ?」
痺れを切らしたのか、村田がみうなを挑発する。
「先輩の言うとおり・・・勝負は既に始まっているし、もう私は行動を起こしています・・・
そして、私が先輩にかかっていく必要は無いんですよ・・・先輩がこちらに来るんです!」
スノー・ドロップが両手を構えた。
「ロックオン完了っ!スノー・ドロップ!!!!!!
先輩は既に私の術中にはまっているんですよっ!」

ズキュウウゥゥゥゥゥンンンンンンン・・・・



730 :六部198:2005/11/14(月) 17:39:19 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜9

ズキュウウゥゥゥゥゥンンンンンンン・ぐンんぐぐににゃやあぁぁぁ・・・・あぁぁぁぁ・・・・・

「なっ?!・・・これは・・・?!」
『引き寄せる能力』を発動するその瞬間!
突然みうなの視界が歪み、パチパチと星のようなものが浮かんで見える!
たまらず壁にもたれかかる。
(しまった!ロックオンが外れた・・!!)
再び村田の方を向くが、彼女の姿も歪み、はっきりと捉えることが出来ない!
「バカめッ!!!術中にはまっていたのはお前だッ!!!!」
村田が突進してきた。
(これはスタンド能力?!まさか・・・さっきの痛みは・・!?)

「ムメムメムメムメムメムメムメムメムメムメムメムメMUMYAaaaaaaa!!!!!!!」

ドッッギュアアアアアァァァァァッッッ!!!

村田のラッシュを受け、後方に吹っ飛んだが
みうなは今までの何度かの戦いで成長しているっ!
痛みを精神で打ち消し、すぐさま体制を整えようとする。

グラッ・・・!

「くっ・・・」
しかしまだ視界は歪んだまま・・・
そして前方に村田の姿が見えない!
(どこに・・・ハッ!)


731 :六部198:2005/11/14(月) 17:44:34 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜10

「うしろ!ウシロ!!うしろ!うしろ!!ウシロ!うしろおおぉぉぉぉぉ!!!」
その声と共に背中に衝撃が走る。
どうやら蹴りを喰らってしまったようだ。

ドヴァアアアア・・・・ンンンン・・・・

「どうした?フフッ・・・もう終わりかな?」
「うう・・・教室を出るときに首の付け根に感じた痛み・・・
先輩の仕業だったんですね・・・」
みうなは壁に手をつきながら立ち上がった。
しかし、まだ視界は歪んだままだった。
「そう・・・まさか卑怯とか言うつもりじゃないでしょうね?
勝負に卑怯もクソもないのよ」
そう言って村田はメガネを直した。
「・・・いえ・・・私の油断が招いたことです・・・自業自得ってやつです・・・」
ふらふらになりながらも、みうなは村田を見た。
みうなの瞳には、まだ輝きが残っている。
「その瞳・・・まだやる気ってかんじね・・・」
村田は「フッ」と笑った。
嘲笑、侮蔑ではなく、相手を好ましく思う「それ」であった。
「はい・・・これも部の仕事なんで・・・」
「ならとことん行こうかっ!!」
村田は再びスタンドを構えた。


732 :六部198:2005/11/14(月) 17:46:28 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜11

(ッ!!視界がはっきりしてきた!効果が解けてきている!この状態ならまだ戦えるっ!)
「うおおおお雄雄雄雄雄雄雄雄!!!!」
みうなは気合を入れ、村田にラッシュを掛ける!

バスバスバスバスバスバスッ!!

「ッ!!なかなかやるじゃない!」
村田は強気に言うが、防戦一方になっていた。
「隙ありっ!」

ガスゥッ!!!

スノー・ドロップの一撃が村田のスタンド『ブラッド・ステインド』にヒットした。
「ぐはっ!」
「まだまだあっ!」
傷を庇う暇も与えずにそのまま拳を押し込む!
「くうらああぁあ!!!」

バギィッッッッッ!!!!!

先程のみうなのように、今度は村田が吹っ飛んだ。

ドザアァァッ!

「先輩ッ!まだ演劇部に行く気はありませんかっ!?」
みうなは少しイラつきながら、村田に降参を呼びかける。

733 :六部198:2005/11/14(月) 17:52:14 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜12

「この痛み・・・手加減しているな・・・この村田めぐみを従わせたいなら、もっとマジでやるんだな・・・」
村田は立ち上がってメガネを直し、口元に付いた血を手でぬぐって舐めると、
その手を前に差し出し「かかってこい」と言わんばかりのポーズを取る。

「視界も戻ってきている、先輩のスタンド能力の効果が切れてきてますよ。
私のスタンドは相手を拘束しつつ自分に引き寄せる能力!
このままじゃ私の一声で先輩は私に引き寄せられ、深刻なダメージ受けることになりますよ!」
みうなはあえて自分の能力を明かして警告する。
それに従わなければ、警告通りのことをする覚悟はしている。
不本意だが、引きずってでも演劇部に連れて行く。
自分に初めて課せられた指令を失敗に終わらせることは出来なかった。
「もう準備は出来ています・・・5秒数える前に降参してください・・・」
そう言ってみうなはカウントダウンを開始した。

「5・・・」
村田は不適な笑みを浮かべている。
降参の意思などまったく感じられない。

「4・・・」
みうなは構わずカウントダウンを続ける。

「3・・・先輩・・・もう手加減はしませんよ」
「効果が切れてきているだと・・・?
笑わせるなッ!まだ始まってもいないわぁぁぁ!!!」

ギュウウウゥゥゥゥンンンンンンンン!!!

村田の叫びと同時に『ブラッド・ステインド(赤いフリージア)』が激しい唸りを上げたっ!

767 :六部198:2005/11/15(火) 01:37:53 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜13

村田の姿が忽然と消えた。
それと同時に視界の隅でまたパチパチと星のようなモノがちらつく。
「っ!?どこに消えたっ?!」

「ココダ・・・」
突然後から声がして、みうなは「ハッ」と振り向いた。
「!!!!!」
声の主は村田では無く、代わりに見覚えのある顔が浮かんでいた。

「お前は・・・・どうしてッ?!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・



768 :六部198:2005/11/15(火) 01:39:04 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜14

そこにいたのは、かつて幼い少女を殺し、スタンド能力で人形として操り
夜な夜なダンスを踊らせていた変態殺人鬼・・・『堂本光一』であった!

「お前は?堂本光一ッ?!死んだはずじゃ・・・」
そう、この殺人鬼はみうなと藤本によって倒され病院に運ばれたが
『結果的』に医療ミスによって死亡しているはずなのだ。
「ヲイおい・・・俺も忘れてもらっちゃあ困るぜ・・・・」

ベロベロ・・・・ドグチャア・・・・

堂本の頭が割れ、そこからもう一つの人格であり、光一の友人、
『剛』が顔をのぞかせた。

「ウあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
そのあまりにもグロテスクな光景に恐怖したみうなの悲鳴が校舎に響く。
「おいおい・・・ご挨拶じゃねーか・・・なあ?光一・・・」
「まったくだ・・・それにこんな風にしたのは君じゃないか・・・」
剛と光一が交互に喋りかけながら、みうなに近づいてくる。
「来るなあッ!!」

ドンッ!

あとずさったみうなの背中に、何かが当たった感触がした。

シャキイイイイィィィンンンンンン・・・・

振り向くとそこにはぶどうヶ丘の幽霊『ハサミ女』こと中谷美紀が、
持っている大バサミを振り下ろさんとしていた。



769 :六部198:2005/11/15(火) 01:40:13 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜15

「くそお!」
みうなは中谷の股下を潜り抜け、なんとか虎口を脱した。
「・・・おお!うまいうまい!」
『剛』がそう言うと、『光一』も「ククク・・・」と崩れかけた顔で薄ら笑いを浮かべる。
「う、うるさいッ!!」

ブウゥンッ!!

「クッ・・・」
その間にも中谷がこちらに向かってハサミを振り回す。
「ッのおおお!!」
みうなは体制を立てなおし、スノー・ドロップで中谷の顔面を殴りつける。

グシャアッ!!ボタボタボタ・・・・

(えっ?)
スノー・ドロップの拳が中谷の顔面を貫き、大きな穴が開き、
そこから大量の血と蛆虫のようなものがこぼれ落ちた。


770 :六部198:2005/11/15(火) 01:43:01 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜16

「おやおや・・・レディの顔を傷つけるとは・・なんてヒドイヤツなんだ・・・なあ?剛」
「まったくだ・・・ヒドイヤツだ・・・」
その光景を見ている双頭の堂本が二人(?)で冷やかす。
「黙れっ!!!」
(幽霊にスタンド攻撃が効いた?コイツはスタンド?でもこれは何かがおかしい・・・
ハサミ女は公園から出られないんじゃないの?第一堂本は死んでるはずだし
『顔』から『顔』が出てきてるなんてありえない・・・!うっ・・・目がチカチカする・・・)

「なに考え事してんだあああ?!!」
いつの間にか自分の目の前まで来ていた堂本がみうなに殴りかかる。

ドボオオォッッ!!

「うげえええぇぇぇ!!!」
すかさずスノー・ドロップで反撃すると、堂本の腹に大きな穴が開き、
口から血を吐いた。
だが、中谷といい、堂本といい、手ごたえがまったく感じられなかった。
(何だ?この現実感の無さは・・・それに村田先輩はどこに・・・・?ハッ?!)
みうなは村田の作品を見たときにある言葉が浮かんだのを思い出した。

          『サイケデリック』
幻覚を引き起こすといわれる薬・LSDの服用によってもたらされる症状に似た
ファッション、音楽、アート、風俗を総称して呼ばれることが多い。-某サイトより抜粋-

(スタンドの能力は本体の精神構造にほぼ依存する・・・
なんで気づかなかったんだ?これは・・・いや、これこそが!)

ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド・・・・・


771 :六部198:2005/11/15(火) 01:45:11 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜17

「これこそが村田先輩のスタンドの本当の能力!これは幻覚だッ!!!」
みうながそう叫ぶのを、村田は教室の影から見ていた。
「気付かれたか・・・なかなか勘が鋭い娘ね・・・」
メガネを指で押し上げ呟いた。
「あなたが何を見ているかは分からないけど、
なかなか面白そうだ・・・」
そう言うと、教室の中からスケッチブックを取り出し、
みうなをスケッチしだした。
彼女が自滅するのをこのまま待つことにしたのだ。

「このスタンドを使って私はサイケアート界の『スーパースター』になるんだ・・・
演劇部に構ってる暇は無い・・・」

そう、村田めぐみは幻覚症状を引き起こすこのスタンド能力を自分自身に使い、
そこで見た世界をアートに反映させていた。
『ドラッグ』を一切使用せず、この『才能』のみで業界に殴りこみに行く。
極めて健康的、そんな自分を誇りに思っていた。


772 :六部198:2005/11/15(火) 01:46:55 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜18

中谷美紀がみうなに向かってハサミを振り下ろす。
「これは幻覚、私の頭の中の出来事!幻を恐れる必要はないわっ!」
みうなはそう言って、ハサミをよけようとしない。
「おいおい!死んじまうぞお!」
堂本剛がまたもや冷やかす。
「マボロシぶぜいが利いた風なことを言ってんじゃないわよ!!」
みうなが一喝すると、堂本は肩をすくめ、『下』の光一に何かぼやきだした。

目の前にハサミの刃が迫る!
「・・・・」
みうなは目を見開きそれを受け止めようとする。
・・・が。

ブウゥンッ!!

(くそっ!!)
条件反射なのか、ギリギリでそれをかわした。
「ッ!!」
頬に痛みを感じ、手をそこにやると何かが付いた。
見るとそれは・・・・自分の血だった。
「どうしてッ?!幻なのにッ!!」
その間にも中谷の攻撃は続く。
みうなはたまらず教室の中、『村田のアトリエ』に逃げ込んだ。

だが、そこにサイケなアトリエはなかった・・・
暗黒の世界・・・ふと足元を見ると、木造の床ではなく
金網になっており、その下はどこまでも闇が広がっていた・・・
「これは・・・まさか・・・・」


815 :六部198:2005/11/15(火) 22:37:42 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜19

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・

そこは去年のイヴの日の悪夢そのものであった。
そしてなぜか旧校舎内ではなく、自宅前の風景に変わっていた
前方に誰かがいる・・・それは村田ではないのは明らかだ。

「みうなちゃん・・・駄目じゃないか・・・綺麗な顔が台無しだよ・・・」
「!!あんたは・・・!」
そこにいたのは、去年のイヴの日にみうなを恐怖に陥れたストーカーだった。
「幻だからって舐めてかかっちゃいけないんだよ・・・」
ストーカーはにやにや笑っている。
みうなはとっさに身構えた。
「おっと・・・そんなに警戒しないでくれよ・・・傷つくなあ・・
それに、僕だってなんでこんなところにいるのか解らないんだ・・」
男は「何もしない」と言いたげに、両手を広げた。
しかしみうなは、その警戒を解くことはなかった。


816 :六部198:2005/11/15(火) 22:39:29 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜20

「こんな話を知ってるかい?昔、ある実験が行われたそうなんだ・・・」
「・・・?何が言いたいの?」
「まあ聞きなよ・・・被験者に目隠しをし、アイスを腕に押し付けた。
普通ならただ冷たいって感じるだけなんだけど、そのときにあることを
被験者にこう言い続けたんだ・・・『今から焼けた鉄の棒を君の腕に押し付ける』
ってね・・・するとアイスを押し付けられた腕がどうなったと思う?」
「?・・・さあ・・・」
「なんと!腕にまるで火傷を負ったような痕が付き、被験者が苦しみだしたんだ!」
「まさか・・・そんなことが・・・」
「みうなちゃんのその頬の傷と一緒さ、それは幻じゃないよ」
そう言ってストーカーはみうなの頬を指差した。
みうなはとっさにその傷に触れると、やはり痛む・・・

「でも、それとこれとで一体何の関係が・・・?」
「僕が思うに、村田さん・・・だっけ?彼女の能力幻覚には
強力な自己暗示の作用があるんじゃないかな?
それから脱するには、術者が解除するか・・・アレしかないんじゃない?」
「・・・アレ?・・・ってまさか・・?アレ?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・


817 :六部198:2005/11/15(火) 22:41:15 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜21

「ショック療法ってこと・・・?」
「う〜ん・・・まあ、そういうことになるかな?フフフ・・・
でも強力な幻覚から覚めるには、それ相当の強いショックがいるよ」
ストーカーは腕を組み笑う。

「てゆーか・・・あんた・・・なんで私にそんなことを・・・敵じゃないの?」
みうなはさっきからそのことが気になっていた。
「何言ってるんだい?僕はいつでも君の味方さ!
それに、ここは君の頭の中の世界・・・もしかすると君は既に
トリックに気付いており、僕に語らせたんじゃないかな?
じゃあ、そろそろ僕は消えることにしよう・・・一目会えて嬉しかったよ・・じゃあね・・・」
そう言ってストーカーが正面を向いたまま闇の中に消えると、
悪夢の世界も同時に消え失せ、気付くと自分は廊下に立っていたのだった。


「どこに行ってたんだ?寂しかったよ」
目の前には双頭の堂本がいた。
その背後には、顔に穴の開いた中谷もいる。
「ちょっと知り合いにね・・・」
そう言うと、「キッ」と堂本を睨み、こう続けた。
「そして!もうこんな馬鹿げた幻覚とはおさらばよ!」

818 :六部198:2005/11/15(火) 22:42:56 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜22

スノー・ドロップが、みうなに向かって構えをとる。
(やれやれ・・・本当にこれしかないのかな・・・)
「おいっ!てめー何考えてるッ!!」
「やれー!!スノー・ドロップ!!!!」
そして!なんと自分に向けて攻撃をしたのだった!!

ドグメキャバキコスブラヌボアヴルゴズガアアア!!!!!

「うぐああああ!!!!!!!」

ドッギャアアアアアアアアんンンンンンンn!!!!!

(これで目が覚めなかったら最悪・・・ね・・・)

・・・・・・・・
・・・・・
・・・



819 :六部198:2005/11/15(火) 22:45:21 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜23

気が付くと目の前に村田の姿が見えた。
唖然とした表情をしている。
無理も無い、突然自分のスタンドで自分を殴ったのだから・・・
「素敵な世界から帰ってきましたよ・・先輩・・・」
ふらふらと立ち上がり、村田を指差した。
「あんた・・・イカレてるのか・・?」
「私は正常ですよ・・・適切な判断をしたつもりです・・・
さあ、続けましょうか・・・?それとも降参しますか?」
みうなは頬の血を拭い、それを舐めるとその手を村田に向け、
先程の村田同様のポーズを取る。
「・・・フッ・・・上等じゃない!小手先抜きで行こうかッ!!」
村田はスケッチブックを投げ、それが着地するのを合図に
二人は再度激突した!!

「うおおおお雄雄雄雄雄−−−!!!」
「ムメムメムメムメムメムメムメムメエエエエ!!!」

バキコスブラヌボアヴルゴズガドグメキャアアア!!!!!

「ぐはっ!!」
「くッ!!!」
両者相打ちッ!
だがしかし、打ち合いは続くッ!!
ブラッド・ステインドの蹴りがスノー・ドロップの顔面に迫った。
(もらった!これを喰らえば良しッ!よけても連蹴りでキメてやるッ!!)
しかし、みうながとった行動は意外なものだった。


820 :六部198:2005/11/15(火) 22:47:47 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜24

なんとみうなはそのまま突っ込み、攻撃を喰らいながらも距離を詰め、
ブラッド・ステインドに拳を叩き込んだのだった!
「ニャニィッッ??!!!」

ドッグワアアアンンンンン!!!

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


月に照らされた旧校舎の廊下に、二人の息づかいだけが聞こえる・・・
「・・・・さっきの自爆行為といい、今の防衛本能を無視した攻撃といい
なんてやつだ・・・」
大の字に『のびた』村田が半ば呆れたように言った。
「・・・負けるわけにはいきませんのでね・・・」
みうなも力尽きたのか、壁によりかかり荒い息をついている。
「・・・覚悟が違うってわけか・・・私の負けだ・・・好きにしな・・・」
「・・・じゃあ、演劇部に入って貰えますね?」

「あははははははは!!!!」
村田は大笑いして頷き、親指を立てた。
「あんた最高だよ!わかった、従うよ!」
「ふふっ」
みうなも、釣られて笑った。

こうして、みうなによる強硬勧誘劇は幕を閉じたのである・・・・


821 :六部198:2005/11/15(火) 22:49:02 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜25

「ちょっと待っててくれない?」
そう言うと村田はアトリエに入り、自分の身長ほどもある不気味な人形を取り出してきた。
「・・・そ、それは・・・?」
「あ、紹介するね、このコは『プペちゃん』可愛いでしょ?このコも一緒に行くから」
村田は『プペちゃん』の頭をなで、にっこりと笑った。
「・・・あ・・はは・・・か、可愛いですね・・・・」
みうなは苦笑いをしながら、そう答えるしかなかった。

「あの・・・」
お互いに肩を借りながら部室に向かう途中、みうながおもむろに声を掛けた。
「ん?」
「演劇部の勧誘を断ったってことは何か他にやることが・・・」
「ああ、あのアトリエを見ただろ?」
「はい・・・」

村田は自分の夢を語り始めた。
-〜アンチ・×××・スーパースター〜17を参照-

「それは凄いですね・・・」
みうなは心からそう思った。
「そういうことだから、部に入ってもアート活動はさせてもらうよ」
「あ、それは平気ですよ。部長も掛け持ちで部活やってますから」
「そうか、それは安心した・・・」


822 :六部198:2005/11/15(火) 22:52:28 0
銀色の永遠 〜アンチ・×××・スーパースター〜26

「部に入らなかった理由・・・実はもう一つあったんだ・・・」
村田は急に立ち止まって真面目な顔になり、みうなを見つめた。
「え・・?」

サワサワサワ・・・・・・

窓の外で風が吹き、木々が揺れる音が響いた。
「・・・どういうことですか?」
「寺田・・・アイツ・・・何かおかしい・・・」
「・・・?おかしいって?」
「いや、よくわからないんだけど・・・私の直感がそう言ってる・・・」
「・・・」
「とにかく・・・私は入部はするが、寺田の支配下に入るわけじゃない
って言いたいだけ・・・まあ表面上は従っておくけど・・・
みうなも・・・あ、『みうな』って呼ばせてもらうよ・・・
みうなもアイツに気を許さないほうがいいよ」
「・・・・・」

サワサワサワザワザワ・・・・・・
雲が月を覆い、辺りが暗くなる。
そして二人は、そのまま無言で部室へ向かった。


823 :六部198:2005/11/15(火) 22:52:48 0
みうな 
スタンド名 スノー・・ドロップ
指令:『村田めぐみ』を勧誘せよ 成功

村田めぐみ
スタンド名 ブラッド・ステインド(赤いフリージア)
演劇部に入部することを決意

TO BE CONTINUED…