410 :六部198:2005/11/10(木) 17:18:50 0
銀色の永遠 〜ジ・アンフォギヴン(トゥー)〜1

ある日、中澤裕子はぶどうヶ丘病院、533号室の前にいた。
「ん、ここやな・・・」

コンコン・・・

扉を叩くと中から「どうぞ」と声がしたので中に入る。
「あーーー!!中澤さんんんんんん!!!」
中澤の姿を見た少女が嬌声を上げる。
彼女は『石川梨華』
藤本美貴に大怪我を負わされ、おまけにカラスにもやられ入院中である。
「おう、久しぶりやな。人づてにアンタがここに入院してるって聞いてな、
まあ、意外に元気そうやな」
中澤は軽く右手を上げた。
「で、なんでそんな大怪我したん?」
「まあ・・・じつは・・・」

・・・・・・・・
・・・・・
・・・

「はあ〜、アンタが二次審査員ね〜、成長したもんだ〜」
「いや〜、でこの有様ですからね、情けないですよ」
中澤が大げさに驚くと、石川は照れくさそうに笑った。
「で、演劇部はまだ続いてるわけか・・・」
中澤は急に真面目な顔になる。
「どうか・・・したんですか?」
それを見た石川が心配そうに尋ねた。
「え?あ、いや・・・別に・・・それよりもアンタ〜・・・・」
中澤は心中を悟られまいと、話題を変えることにした。


411 :六部198:2005/11/10(木) 17:20:59 0
銀色の永遠 〜ジ・アンフォギヴン(トゥー)〜2

2日後・・・

中澤は、昨日取材の連絡をしておいた『ぶどうヶ丘高校』へ向かうべく
バスに乗り込んだ。

(よく切れるナイフを集めてる・・・その真意は一体・・・?
スタンド才能のあるものを『弓矢』を使って強制的に引き出す・・・)
揺れるバスの中、寺田のことをずっと考えていた。

もしかすると、彼は神に対し許されないことをしているのでは?
そして・・・『それ』に手を貸していた自分もまた、『許されざる者』なのではないのか・・・?

中澤の胸の中を罪悪感が蝕んでいた。


445 :名無し募集中。。。:2005/11/11(金) 01:12:05 0
銀色の永遠 〜ジ・アンフォギヴン(トゥー)〜3

学校に着いた中澤は、取材手続きをするため、事務室に入った。

表向きは『現代の教師と生徒の実態』
新聞記者という職業、おまけに事務員は昔と変わっておらず、
顔見知りだったので、すんなりと手続きを済ませることが出来た。

中澤は校舎の中に昔の面影を探しながら、職員室へと向かった。

「おー中澤じゃない!久しぶりー!」
職員室のドアを開けると、中にいた女性教師が声を掛けてきた。
「お久しぶりです、夏先生」
中澤は深々と頭を下げた。
「演劇部のコーチとして帰ってきたと思ったら、
またすぐにいなくなっちゃうもんだからびっくりしたよ」
「すいません、ちょっと急だったもんで・・・」
「それはいいとして、まさか新聞記者になってるとはね〜、
あんなに荒れてたのが嘘みたいね」
「ははは・・・」
中澤は返す言葉が無く、愛想笑いを返すのが精一杯だった。
「それより、寺田先生は?」
気を取り直して肝心のことをたずねた。
「寺田先生?多分演劇部の部室にいるんじゃない?」
「そうですか、ありがとうございました。じゃあ、これで失礼します」
中澤は再び頭を下げ、足早に職員室を去った。


446 :名無し募集中。。。:2005/11/11(金) 01:15:52 0
銀色の永遠 〜ジ・アンフォギヴン(トゥー)〜4

中澤は部室の前までくると、深呼吸をして
扉に手を掛ける。
「あのー、何か御用ですか?」
後ろから突然声を掛けられ、振り向くとそこには一人の少女が
怪訝そうにこちらを見ていた。
「あ、いや・・・ん?」
よく見るとその少女はどこか見覚えがあった。
「あなた・・・どこかで会ったことある?」
「え?多分ないと思いますけど・・・」
少女はいきなりの質問に戸惑っている。
「で、お姉さんはどなたですか?」
「あ、ごめんなさい。私は中澤裕子。ちょっと寺田先生に用事があって」
そういって中澤は名詞を手渡す。
「あー、もしかして4丁目に住んでる中澤さんですか?」
「??」
「父が話してたことがあります」
「もしかしてあなた・・・エリックさんとこの娘さん?」
「はい、亀井絵里といいます」
自己紹介した亀井は、丁寧に頭を下げた。

偶然の出会いに中澤は、運命めいたものを感じると共に、
よくもまあここまで似たものだな、と感心した。

銀色の永遠 〜ジ・アンフォギヴン(トゥー)〜5

「で、寺田先生は今いらっしゃるのかしら?」
本題にもどって中澤は亀井に尋ねた。
「いますよ、どうぞ」
そう言って亀井は、中澤を部室に入れた。

部員はまだ揃っていないのか殆どいない、
随分とだらだらしているな・・・と思ったが、そのまま亀井に連れられて
寺田の部屋の前まで来ていた。

コンコン・・・

「亀井です、お客さんが来てますよ」
「入りぃ・・・」
中からは聞き覚えのある声がする。
亀井は「どうぞ」と手で中に入るように勧めた。
「失礼します・・・」
中澤は手に汗をかいているのを感じながら、一礼して中に入っていった。

そのとき、部室の入り口のほうから「ガラッ」と扉を開ける音が聞こえた。
「あ、もっさん!珍しいですね」
誰かがその人物に声を掛ける。

だが、中澤にはそんなことはどうでもよかった。
なかなか顔を上げることが出来ない・・・
勝手にやめた自分を、彼はどう思っているのか・・・
体が自然と硬くなる。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・・



449 :六部198:2005/11/11(金) 01:32:40 0
銀色の永遠 〜ジ・アンフォギヴン(トゥー)〜6

「お〜!久しぶりやないか〜!寂しかったんやで〜!!」
そう言うと寺田は、椅子から立ち上がって両手を広げた。
そのあまりにも軽い調子に中澤は拍子抜けし、それと同時にホッとする。
「お久しぶりです」
「まあまあ、座りぃや」
寺田はソファーに座るように促した。
「あ、いや・・・すぐに済みますので、このままで結構です」
「そうか〜・・・ゆっくりしてったらええのに・・・」
寺田は心から残念そうに俯いた。
そのとき、中澤の耳に一瞬舌打ちする音が聞こえたような気がした。
「で、一体なんの用なんや?」
顔を上げた寺田は笑顔で問いかける。
「実は・・・以前から聞きたいことがあったんです・・・・・」
中澤は自分の鼓動が早まるのを感じていた。


516 :六部198:2005/11/11(金) 18:00:56 0
銀色の永遠 〜ジ・アンフォギヴン(トゥー)〜7

その日、藤本美貴は珍しく部活に顔を出すべく、演劇部の扉を開けた。
「あ、もっさん!珍しいですね」
中にいた新垣が声を上げた。
「うっさいな〜、そんなに美貴が来るのが珍しいか?」
「いや、何週間ぶりってかんじですよ!」
「はいはい、そうですか・・・どうせ美貴は幽霊部員ですよ・・・ん?」
少しいじけながら中に入り、何気なく奥の部屋を見ると、
亀井に案内されて誰かがそこに入っていく姿が見えた。

「亀井〜今の誰?」
「なんか、寺田先生の知り合いみたいですよ?何か話があるとか・・・」
「げ〜、今日寺田のおっさんいるのかよ〜・・・来なきゃよかった・・・」
藤本はあからさまに嫌な顔をする。
「で・・・、女の人みたいだったけど」
「中澤裕子さんっていう女の人ですよ、実は僕のお父さんの・・・ちょっと!なにしてるんですか!!?」
亀井の言葉が終わる前に藤本は、扉に耳をあて、盗み聞きをしようとしていた。
「ちょっと、まずいですよ!そんなこと!」
そういいながら亀井も扉に耳を当てる。
「まずい、とか言っておきながらお前もやってんじゃねーかよ!」
「うへへへ・・・そりゃ僕だって気になるし・・・」

その光景を見ていた新垣は「はあ・・・」とため息をついて、
窓際においてある植木鉢に水をやりに行った。


517 :六部198:2005/11/11(金) 18:03:12 0
銀色の永遠 〜ジ・アンフォギヴン(トゥー)〜8

「・・・・・」
「・・・!!それって・・・・先生!」

寺田の声はほとんど聞こえないが、中澤の怒鳴り声のようなものが断片的に聞こえる。
なにやらあまり穏やかなではない様子だった。
二人はお互いの顔を見合わせ、首をひねる。

「・・・・・・・」
「あなた・・・一体・・・?・・・こ・・・・る・・・・・・・!?」
「・・・」

ガチャ・・・

突然扉が開き、中澤が出てきた。
二人は慌ててそこから飛び退いて彼女を見上げる。
「あはは・・・いや、ゴミがついてたから・・・
別に盗み聞きなんかしてないっすよ・・・」
藤本が苦しい言い訳をする。


518 :六部198:2005/11/11(金) 18:06:15 0
銀色の永遠 〜ジ・アンフォギヴン(トゥー)〜9

「・・・・・」
顔色が悪く、気分が優れないようだった。
「あ・・・大丈夫ですか?」
「・・・・」
亀井が心配して声を掛けたが、
中澤はそのまま部室を出て行ってしまう。
無視した、というよりも聞こえていないかのようだった。

しばらくすると、寺田も部屋から出てきて、そのまま外へと行ってしまう。
「どこへ行くんですか?」
「ん?ああ、ちょっと出てくるわ・・・後のことは吉澤に聞きや・・・」
寺田は藤本にそう答えると、背を向け手を振って行ってしまった。

後を尾けてみようと思ったが、何故か体が動かなかくなり
黙ってそれを見ているしかなかった・・・

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・・


TO BE CONTINUED…