145 :六部198:2005/11/06(日) 16:55:03 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜1

深夜0時50分 ぶどうヶ丘公園〜公衆トイレ〜

はあ・・・はあ・・・はあ・・・

息を切らしながら一人の少女が公衆トイレの一番奥の用具入れに駆け込んだ。
「だから公園には行きたくないって言ったのに・・・」
扉を静かに閉めると、少女は呼吸を整えながら独り呟いた。
「もしも『公園運』なんてものがあったら私は多分最悪ね・・・」
そして乱れた長い髪をかきあげ、トイレの壁にもたれかかった。
彼女の名前は『斉藤美海』(通称みうな)という。

「藤本さん・・・無事でいてくれるといいけど・・・」

シャキーン・・・シャキーン・・・・・・・・

遠くから金属がこすり合わさる独特の音がこちらに近づいてくる。
その音にみうなは全身を硬直させる。

シャキーン・・・シャキーン・・・シャキーン・・・・・・・

音がすぐそこまで迫ってきた。
トイレの出入り口に何者かが立っている気配がする。
みうなは「通り過ぎてくれ」と心の中で神に祈ったが
その願いはあっさり却下され、『ソレ』はトイレの中に進入したのであった。

シャキーン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


154 :六部198:2005/11/06(日) 20:03:21 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜2

同日深夜0時7分 藤本家〜藤本美貴の部屋〜

「・・・でさ〜、何とか勝てたわけなんだよね〜」
そう言って藤本美貴は、ベッドに腰掛け、となりに居るみうなを見た。
「へ〜、亀井ちゃんのお父さんとそんなことがあったんですね」
みうなは驚いた顔でそれに答えた。

この日、みうなは藤本の家に遊びに来ていて、そのまま彼女の家に
宿泊することになっていた。

「あ〜・・・美貴、なんか小腹空いてきちゃったな」
話がひと段落すると、藤本は腹をさすった。
「ちょっと『セブン』までお菓子でも買いに行かない?」
「そうですね〜行きましょうか」
そう言うと二人は部屋着のまま外に出かけていった。

『セブン』とは、『セブン・イン・レイヴン』の略で
『7』の文字に鳥がとまっている印象的なデザインの看板が目印で、
『オーソン』と並ぶ二大コンビニエンスストアのことである。
藤本は家に近いこともあって、よくその店を利用していた。


155 :六部198:2005/11/06(日) 20:03:50 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜3

深夜0時21分 コンビニ〜セブン・イン・レイヴン前〜

「ねえ知ってる?ぶどうヶ丘公園の噂」
買い物を済ませ家に戻る途中、藤本は足を止め、
みうなに話しかけた。

ぶどうヶ丘公園とは、藤本の家の近くにある
小さな山全体利用した自然公園のことである。

「噂・・・ですか?さあ・・・知りませんけど・・・」
なんのことかさっぱりわからないみうなは、そう答えるしかなかった。
「あれ?知らない?『ハサミ女』っていう結構有名な話なんだけどな」
そういうと藤本は、ぶどうヶ丘公園にまつわる噂を語りだした。


156 :六部198:2005/11/06(日) 20:04:27 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜4

藤本の話をまとめると、こういうものだった。

20年以上前のこと、ある女が結婚まで考えていた恋人の浮気が発覚。
裏切られた女は、恋人とその浮気相手を植木ハサミでバラバラにして殺害。
そして死体を公園に埋め、その後自殺する。
という事件があった。

それからしばらくして、その公園に女の幽霊が出るという噂が立つようになった。
幽霊を見たという人もいる。
だが所詮噂は噂、その話は次第に忘れ去られた。

だがしかし、今から10年前、一人の若い女性がバラバラ死体で見つかった。
切断面からそれは巨大なハサミによって行われたようだった。
それはまさに昔の事件の被害者と状況が一致していたのだった。
過去の事件で加害者は自殺しているので、警察は模擬犯と見て操作を開始した。
だが、捜査もむなしく事件は迷宮入りとなってしまい、それと同時に
自殺した加害者の幽霊、『ハサミ女』の噂が再び持ち上がったのだった。

今でも巨大な植木バサミを持った幽霊が深夜の公園中を徘徊しているのを
目撃した、という情報もある・・・・・。


157 :六部198:2005/11/06(日) 20:04:53 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜5

・・・・・・・・・・・・・・・・

藤本は得意げに話すと、「どうだ」といわんばかりに
みうなの方を見つめた。
「はあ・・・そうなんですか・・・で、一体・・・」
そこまで言いかけて、みうなは嫌な予感がした。
「え・・・?まさか・・・」
「こっから近いし、今からちょっとキモ試しに行かない?」

ドッギャアアアアンンン!!!!

「ええええ?!!!!嫌ですよ!そんなの!
それに・・・公園にはもう近づきたくないんです!」
みうなは明らかに嫌そうな顔で答える。
「まあ、確かにトラウマになってるかもしれないけどさ〜
一度嫌な目に会ったからって、続けて嫌なことが起こるわけないじゃん」
「いや、一回だけじゃ・・・」
しかし言いかけたみうなの腕を引っ張り、藤本は公園に向かう。
「まあ、リハビリだと思ってさ、大丈夫だから」
藤本は急に真面目な口調になり、みうなを見た。
「・・・・じゃあ、ちょっと見に行くだけですよ・・・」
それに感じ入ったのか、みうなは承諾してしまった。
「よし!それじゃあ、恐怖体験プチツアー、出発進行♪」
藤本は自分の腕と、みうなの腕を上にあげ、
軽快にステップを踏んだ。


158 :六部198:2005/11/06(日) 20:06:06 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜6

深夜0時27分 ぶどうヶ丘公園への道

「藤本さんって幽霊とか信じてるんですか?」
ぶどうヶ丘公園に向かう途中、みうなは藤本に言った。
「まあ、怖い話は嫌いじゃないし、前に会ったことがあるんだよ」
「本当ですか〜?」
「いや、マジなんだって!それにスタンドがいるんだから
幽霊もいたって不思議じゃないだろ?」
藤本は少し「むっ」として反論する。
「私も昔は信じてましたけど、結局幽霊は幽霊、スタンドはスタンドですよ。
幽霊はスタンドのことなんですよ」

しばらくすると、出入り口が見えてきた。
大きな石柱が左右に並んでおり、右側には『ぶどうヶ丘公園』と掘られていた。
二人はその間を通り、公園の中に入った。


159 :六部198:2005/11/06(日) 20:06:39 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜7

深夜0時33分 ぶどうヶ丘公園

二人は公園奥のログハウスの横にある坂道を上がり、山の中腹へと向かった。
この公園は2層に分かれており、この坂道の反対側にあるもう一つの道が、
互いに山の外側を回りこむようにして頂上へ続いている。
ロープが張られているが、すぐそこは崖状になっており暗い夜中に歩くのは少々危険である

やがて頂上に着くとそこはベンチと公衆トイレがあるだけの広場であった。
中央には銅像が建っており、天を指差している。
昼間に見る分にはなんてことはないのだろうが
人気のないこの時間に見るとなんとなく不気味で、今にも動き出しそうだった。

「・・・なんか別にたいしたこと無いね、ちょっとがっかり」
藤本は残念そうに言った。
「ねえ、もう帰りましょうよ」
何もなかったことに安心したが、これ以上ここにいたくないみうなは
藤本にそう促した。
「う〜ん・・・そうだな、もう帰るか」
とくにすることも無いので、二人は来た道を引き返すことにした。


160 :六部198:2005/11/06(日) 20:07:59 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜8

ザッ・・ザッ・・ザッ・・ザッ・・・ザッ・・・・・・

砂利を踏みつける音だけが闇の中に響く・・・
ふと崖の下を見ると、明かりに照らされた今は無人のログハウスが浮かび上がっている。
「キャッ!」
みうなは足元の石につまずき転んでしまった。
「いたたたた・・・・」
「おいおい・・・大丈夫か?気をつけなよ」
藤本が振り向き、手を差し出した。
「あ、すいません・・・・・・あれ??」
その手をつかみ立ち上がると、藤本越しにあるものがぼんやりと映っているのに気付いた。
「誰か・・・いる・・・?」

「えっ?」
藤本はみうなの目線を追った。
その視線の先には暗くてよく見えないが、確かに誰かがいて
少しづつこちらに近づいてくるのがわかる。
人影が近づいてくるにつれ、姿形がはっきりしてきた。
前髪を長く垂らしているので顔が確認できないが、服装や体格で女と判断できた。
そしてだらしなく下に伸びる両手で、何かを持っている。
それは大きな植木バサミにだった。
「藤本さん・・・あれって・・・もしかして・・・・・」

ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴゴ・ゴ・ゴゴゴ・ゴゴゴ・・・・・・・・・


161 :六部198:2005/11/06(日) 20:10:17 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜9

女は植木バサミを頭上に掲げ、切先を二人に向けると
刃を開いたり閉じたりしながらゆっくりと近づいてて来た。

シャキーン・・・シャキーン・・・・・・・・

「うああああああああああ!!!!!!出たああああああああああ!!!!!!!」
「早く逃げましょう!!!」
みうなは叫び声を上げる藤本の腕をつかみ、反対方向の道へと走った。

ハア・・・ハア・・・ハア・・・

二人は再び頂上に出て、反対側の坂道へ入った。
「やっぱり噂は本当だったんだ!『ハサミ女』は実在している!!」
藤本は息を切らしながら独り言のように言った。
「でも本当に幽霊かどうかはわかりませんよ!ただの頭のおかしい人かも」
「おめーこの状況でまだそんなことを!」
意外に頭の固いみうなに、藤本は声を荒げた。
「藤本さんっ!あれっ!!!」
みうなが前方を指差す。
「!!!!」
二人はおもわず立ち止まってしまった。
目の前には、さっきまで反対側の道いた女がいつの間にか前に立っているのだった。
「そんな?!ありえないッ!全力で先回りするにしても、ここでまた会うなんて
おかしすぎるっ!!!」
みうなは信じられないといった表情をしている。
「だが実際に目の前にいるだろうがっ!こうなったら強硬突破だっ!
オオオオオオオオオッ…ブギートレイン!オオオスリイイィッ!!」

VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVV!!!!


162 :六部198:2005/11/06(日) 20:11:37 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜10

「なっ?効かないっ?」

今起こったことを簡単に説明しよう・・・。

ブギートレイン03を発動させた藤本は、ハサミ女を思いっきり殴った。
それは確かにヒットしたのだった。
しかし、ハサミ女にダメージを受けた様子は無かった・・・
苦悶の表情をあげる代わりに、「にや〜っ」と耳まで裂けんばかりに
口の両端をあげた。
そして、一瞬呆然とした藤本の首に大きなハサミをあて、刃を閉じた。

「藤本さんっ!」
みうなの声に我に返った藤本はそれを間一髪でよけた。
だがっ!よけた方向が悪かった。
「うあああああああ!!!!!・・・・・・・」
バランスを崩した藤本は、崖側のほうに大きくよろめき、
そのまま転落してしまったのだった。
「藤本さんンンンッッ!!!」
みうなは叫んだが、返事は返ってこなかった。
「スタンド攻撃が効かないなんて・・・こいつは本当に幽霊だというの?
くっ・・・藤本さん・・・ごめんなさいっ!」
みうなはハサミ女に背を向け、再び反対側の坂道に向かって逃げ出した。
そうするしかなかったのだ・・・藤本の悪運を信じて、今は無様に逃げるしかなかった。


182 :六部198:2005/11/07(月) 01:24:13 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜11

深夜0時47分 ぶどうヶ丘公園〜崖下〜

「いたたたたた・・・・・・」
転落した藤本は幸いなことに、手足を少し痛めただけの軽傷で済んでいた。
崖の上をみると、みうなが走り出したのが微かに見えた。
それと同時に、ハサミ女が崖をすべるように降りてこちらに向かってくるのも見えた。
「やばい・・・」
藤本は足の痛みを我慢しながら走った。
(みうなを置いて逃げるわけにはいかない・・・)
いったんは出口に向かって行ったが、方向を変えて
ログハウスの裏口の鍵を壊し、中に逃げ込んだ。

「少し休もう・・・くそっ痛いな・・・」
藤本はログハウスの職員室の机の下に潜った。
「幽霊にスタンドが効かないなんて聞いてねーぞ・・・
つーか、死んでるからダメージが無いってことか・・・
やっぱ霊能者に頼むしかないのかな・・・」
小声で愚痴をこぼしながらも、そのまま足の痛みが引くまで
休憩することにした。


183 :六部198:2005/11/07(月) 01:27:45 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜12

深夜0時48分 ぶどうヶ丘公園〜頂上〜

「なんでっ?!」
今は後方にいるはずの女のハサミの切先が見え、
みうなは苛立ちを隠せず、一人声を荒げた。

「くっ・・・いったんやり過ごそう・・・」
一度立ち止まり、あたりを見回す。
こうしてる間にも、ハサミの全身が姿を現し
それを持つ手が見えてくる。
みうなは近くにあった公衆トイレに向かって走った。
そして一瞬男子トイレに入りかけたが、
なんとなく入りづらかったので女子トイレの方へ逃げ込んだ。


184 :六部198:2005/11/07(月) 01:29:27 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜13

深夜0時50分 ぶどうヶ丘公園〜ログハウス内〜

足の痛みが少し引いてきたので、
みうなを探しに行くべく机の下から出るとふいに
「ガチャ・・・」と正面の玄関から誰かが入ってくる音が聞こえた。
みうなかと思い、職員室のドア窓からそっとのぞく・・・
それは、ハサミ女だった。
「・・・!!」
藤本は慌てて、また机の下に潜った。

ガタッ・・・

(しまった!!)
慌てていたためか、尻を机の脚にぶつけてしまった。
(頼む・・・来ないでくれ・・・・)
しかし、ハサミ女は職員室の扉を開け、中に侵入してきた。
(うあああ・・・来たあ・・・どうすりゃいいんだよ?)

そのときであった!
ハサミ女が一瞬ぐらつき、壁に手をついた。
(っ!!今がチャンスッ!すべてに感謝してGOGO!)
その隙を逃さず、藤本はハサミ女の横をすり抜けて
ログハウスを脱出した。

「でも・・・今のは一体なんだったんだ?まあいいや、とりあえずみうなを探さないと!
くそっ・・・携帯電話持ってくるんだったな・・・」
藤本は頂上に向けて走り出した。


185 :六部198:2005/11/07(月) 01:32:20 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜14

深夜0時50分 ぶどうヶ丘公園〜公衆トイレ〜

はあ・・・はあ・・・はあ・・・

みうなは息を切らしながら、女子トイレの一番奥の用具入れに駆け込んだ。
「だから公園には行きたくないって言ったのに・・・
でも、幽霊って本当に存在するんだ・・・」
扉を閉めると、みうなは呼吸を整えながら独り呟いた。
「もしも『公園運』なんてものがあったら私は多分最悪ね・・・」
そう言って乱れた髪を手でかきあげた。
「藤本さん・・・無事でいてくれるといいけど・・・」

シャキーン・・・シャキーン・・・・・・・・

ハサミの刃がこすり合わさる独特の金属音がこちらに近づいてくる。
みうなは全身を硬直させ、息を止めた。

シャキーン・・・シャキーン・・・シャキーン・・・・・・・

音がすぐそこまで迫ってきた。
トイレの出入り口にハサミ女の気配がする。
みうなは「通り過ぎてくれ」と心の中で神に祈ったが
その願いはあっさり却下され、『ソレ』はトイレの中に進入したのであった。


186 :六部198:2005/11/07(月) 01:33:36 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜15

ドガアッ!!

入り口のほうでドアを突き破る音がした。

ドガアッ!!

間をおいてまた激しい音が響く。
おそらく入り口から順番に中を調べているのだろう。
(まずい・・・このままじゃ見つかっちゃう・・・
そして、あのハサミで・・・)
みうなは自分があの巨大な植木バサミで貫かれる画を想像した。
その間にも3回ドアを突き破る音が鳴り響く。

そして・・・ドア一枚を隔てたすぐ先に、ハサミ女の気配がする。
(くっそおおぉぉ・・・こうなったら駄目元でやってやる!)
「スノー・ドロップううう!!!」

バアンッッ!!!!!!

勢いよくドアを開け、ハサミ女をスタンドで殴りつけた。
すると、ハサミ女はスノー・ドロップの拳を受けぐらついたのだった。
「えっ?!」
その光景に、みうなは一瞬目を奪われた。
だが、すぐさまに気を取り直しその場を逃げ去った。


187 :六部198:2005/11/07(月) 01:38:17 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜16

藤本が落ちた場所へと向かう途中、みうなは考えていた。
(さっき・・・たしかに効いたように見えた・・・
私のスタンドパワーは藤本さんのよりも、ずっと劣っているはず・・・
なのに・・・なんで・・・?
それにどうしてあの女は先回りできたのか?)

いつの間にか行く先にいる女・・・藤本の攻撃が効かなく、自分の攻撃が効いた・・・

みうなの頭の中でパズルが組み合わさっていく感じがした。
(まさか・・・・いや、でもそう考えるしか・・・・)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・


188 :六部198:2005/11/07(月) 01:44:26 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜17

深夜0時55分 ぶどうヶ丘公園〜坂道頂上付近〜

「みうなっ!!!」
その声に顔を上げると、藤本がこちらに走ってくるのが見えた。
「藤本さん!!!」
藤本が無事なことと、行き違いにならなかったことを神に感謝し、
みうなは嬉しそうに彼女の名を叫ぶ。

藤本の後ろには案の定ハサミ女が彼女の後を追ってきていた。
そして自分の後ろに目をやると、公衆トイレから
もう一人のハサミ女が出てくるのが見えた。
(『ハサミ』女だけに前後から挟まれるか・・・って何考えてるんだ・・・)
今思ったことは墓の中まで持っていこうと、みうなは固く決心した。

「うおっ!!なんでトイレからハサミ女が?!どういうことだ?
まさか、ハサミ女は二人いるってことなのか?!!」
(やっぱり・・・そういうことね・・・)
うろたえる藤本を尻目に、みうなは自分の考えがあたっていたことを確信した。
「藤本さん、よく聴いてください!ハサミ女は一人しかいません」
みうなは公衆トイレから出てきたハサミ女から目を離さずに言った。


227 :六部198:2005/11/07(月) 19:17:25 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜18

「はあ?なに言ってんだ?前と後ろに二人いんだろうがっ!」
わけの分からない藤本はイライラする。
「いいですか?つまり、こういうことですっ!!!
スノー・ドロップ!!!」

ズキュウウウゥゥゥゥンンン!!!

公衆トイレ側のハサミ女がみうなに引き寄せられる!
そしてハサミ女を殴りつけた。
「無理だっ!!コイツにスタンド攻撃は効かなっ・・・?!!」
言いかけた藤本の目に映ったのは、
スノー・ドロップにぶっ飛ばされたハサミ女の姿だった。

ドガアアァァァァ!!!

そして、後ろで大きな音がして振り向くと、坂道側のハサミ女が地面に倒れていた。
「どういうことだっ??!!!」
藤本はみうなに詰め寄った。

「幽霊はあくまでも一人ッ!!
この幽霊は自分とそっくりの姿をした『スタンド』を持つ『スタンド使い』!!!
スタンドはスタンドでしか倒せないルール!!
スタンドで幽霊は倒せないかもしれないが、スタンドはスタンドを倒すことは可能ッ!!!
そしてスタンドを倒せば本体も倒せるはず!!」

ドッギャアアアアァァァァンンンンンン!!!!


228 :六部198:2005/11/07(月) 19:20:01 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜19

「強力なスタンドを倒すには、本体を倒してしまうのが手っ取り早いっていうが・・・
この場合は・・・全くの逆だっ!!」
「感心してる場合じゃないですよっ!藤本さんっ、後ろを見てっ!本体を食い止めてください!」
みうなの激が飛ぶ。
後ろを見ると本体が起き上がり、藤本目掛けてハサミを振り下ろした。

ガキィッ!!

藤本はすかさずスタンドで防御したが、二の腕部分に喰らってしまった。
「くッ!しまった!!」
そう思って自分の腕を見たが、どこにも傷が見当たらない。
「スタンドのルール!スタンドはスタンドでしか倒せない!
つまり、本体にはスタンドを傷つけることは出来ないんですっ!」
「ッ!!そういうことかッ!!スタンドで防御していればこっちはダメージを受けない!」
「そういうことですっ!だからそこで食い止めてください!!」
「オッケー!ちょっと地味だが、今はみうなのサポートに回ってやるぜっ!」


229 :六部198:2005/11/07(月) 19:23:27 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜20

「うおおおお雄雄雄雄雄雄!!!!」
みうなが気合の雄叫びを上げ、幽霊のスタンドを猛ラッシュする。

ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガ!!!!

「よしっ!こいつ、スピードは全然遅いッ!いけるわっ!」
すべての攻撃がハサミ女のスタンドにヒットしたのを見て、みうなは勝利を確信した。
それに連動して本体も苦悶の表情を見せよろめく。
スタンドは『心の像(ヴィジョン)』幽霊に肉体的ダメージは無いかもしれないが、
精神的ダメージがあるということなのだろう。
「おっしゃあ!この勝負勝てるッ!やれえっ!みうなぁっ!!」
それを見て藤本は拳を天に掲げる。

「チャージ&ロックオン完了!スノー・ドロップ!!」
みうなが叫ぶと、吹っ飛んだハサミ女のスタンドが再び引き寄せられる。
「チェックメイトよ!くらららららららららららららららああああああ!!!!!!!」

ドグメキャバキコスブラヌボアヴドゥルズガアアア!!!

バアアアアアアアアアアアアンンンンンンン!!!!


240 :六部198:2005/11/07(月) 21:03:57 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜21

深夜1時03分 ぶどうヶ丘公園〜頂上〜

シュワシュワと泡を立てながら幽霊と、そのスタンドが地面に沈んだ。
「噂は本物で幽霊もいたんですね・・・」
みうなは息を整えながら呟いた。
「美貴の言ったこと・・・正しかったろ?」
「そうですね・・・」
藤本が笑顔を見せると、みうなもまた、笑顔で返した。
「・・・帰るか・・・」

・・・・・・・・・
・・・・・
・・
二人は出入り口に続く坂道を下り、ふもとにたどり着いた。


243 :六部198:2005/11/07(月) 21:08:14 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜22

シャキーン・・・シャキーン・・・・・・・・

(・・・・え?)
微かにハサミのこすり合わさる音を聞いたみうなは、来た道を振り返った。
「きゃあっ!」
なんと、そこには倒したはずのハサミ女が、二人を追いかけてきていた。
「ちょ!なんで・・・?!おいっ!逃げるぞっ!」
藤本はみうなの手をつかみ、出口へと急いだ。
「みうなっ、早くっ!」

ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッ・・・バアン!!!

公園の外へと逃れた二人は、後ろを見ると
ハサミ女は出口付近でうろうろしていた。
「もしかして、公園から出られないのか・・・?」
「自縛霊ってやつですか・・・」


244 :六部198:2005/11/07(月) 21:12:39 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜23

深夜1時12分 帰り道

「あ〜くそっ!食料置いてきちまった!」
藤本が悔しそうに言う。
「もうしょうがないですよ・・・」
そのことはみうなも悔しいが、公園に戻るのも
『セブン・イン・レイヴン』にまた買いに行くのもおっくうなので、
もうあきらめていた。

「なんで倒したはずなのに、あの幽霊は復活したんでしょうね?」
みうなは帰り道ずっと考えていたことを口にした。
「たぶん・・・本当に成仏しない限り、倒しても倒しても復活するんじゃない?」
「・・・なんか、可哀想・・・ですね・・・・」

恋人に裏切られ、恋人とその浮気相手を殺害、そして自分も自殺。
その後も彼女の魂は救われることも無く、あの公園を20年間彷徨っている・・・
そのあまりにも長い時間を考えると、
みうなの胸にやりきれない想いがこみ上げてきた。


245 :六部198:2005/11/07(月) 21:18:58 0
銀色の永遠 〜ダイ・ダイ・マイ・ダーリン〜24

深夜1時52分 藤本家〜藤本美貴の部屋〜

二人はシャワーを済ませ、ベッドに入った。
「あ〜あ、私って公園で怖い思いをする運命なのかな?」
みうながぼやく。
「そりゃ考えすぎだって」
となりにいる藤本がそれを否定する。
「いや、公園に行く前に言いかけたんですけど、実はこれで3回目なんですよ、こういうの・・・」
みうなは顔を手で覆って嘆いた。

「・・・もうおめーとは二度と公園は近づかねえ・・・」
しばしの沈黙の後、藤本は冷たい声で言い放った。
「だから言おうとしたのに〜!藤本さんが無理矢理誘ったんじゃないですか〜」
「はいはい、美貴が悪かったよ!もう寝よ」
そう言うと藤本は枕もとの電気を消した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・藤本さんの初恋って何歳の頃ですか?」
「どうだっていいだろ、そんなの・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・なんか眠れないんで、子守唄でも歌ってくれませんか?」
「うっさい!永遠に眠らせるぞ!!」

・・・・・・・・
・・・・
・・



248 :六部198:2005/11/07(月) 21:24:39 0
藤本美貴
スタンド名:ブギートレイン03
軽傷を負いつつも、公園を脱出

みうな 
スタンド名:スノー・ドロップ
無事に公園を脱出

ハサミ女の幽霊(生前の名は中谷美紀)
スタンド名:サイレント・ジェラシー
一度倒されるも、その怨念は消えることなく
いまも公園内を彷徨い続けている・・・

TO BE CONTINUED…

名所案内・・・ぶどうヶ丘公園

S駅からバスに乗り、「ぶどうヶ丘公園前」で下車。
一つの山全体を利用した、市内でも有数の大きな自然公園。
自然動物が多く生息し、ハイキングに最適。
上下二層に分かれており、下層部には子供達が遊べるログハウスがあり、子供達にも人気。
東西から山肌を回りこむように伸びる坂道は、上層部の広場に続いている。
目立つものは銅像しかないが、そこから見る景色は絶品。
トイレは上層下層に一箇所づつあるので便利。中は意外に清掃が行き届いていてきれい。
・・・「Sウォーカー」誌より抜粋。

なお、ここには巨大なハサミを持った幽霊が出るとの噂があり、
そのためか、夕方以降は人影がぱったりと途絶える。
・・・「日本不思議発見」誌より抜粋。