655 :198:2005/10/30(日) 10:49:54 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜1
 
「フウ・・・」
いつもの訪問販売の男が「へい毎度あり〜!」と寒気をもよおすようなダンスを見せた後、
扉を開けて出て行くのを見送った『中澤裕子』は疲れと家の中が静かになったことにため息をついた。
「まったく・・・いいもん持ってきてくれるのはいいんやけど、あのサムいダンスはなんとかならんのかな・・・」
中澤は腕を組み独り言をつぶやいた。
いつも選りすぐりの良品をもってくるイケメンの訪問販売員は、中澤が商品を買うと
毎回不思議なダンスを見せながら彼女の家を去るのが習慣になっていたのだ。
昔はここ、杜王町に住んでいたのだが、何故か他の町に引越して
そこで仕事をしている。
が、ひいきにしてくれる中澤家には足しげく通っているのであった。

「さて、今日は休日やし・・・久しぶりにどっか出かけるか!」

中澤裕子は新聞記者の仕事をしており、寝る間も惜しみ仕事に励んでいる。
普段の休日は、いつも来る先程の訪問販売員の男と話をし、気に入った商品があれば
それを購入し、その後は家でごろごろしている。といったものであったが、
この日は天気も良いせいか、出かけることにした。

中澤はクローゼットの扉を開け、洋服を引っ張り出した。
結局メイクに2時間、洋服選びに1時間もかかってしまい、家を出る頃には
すでに午後一時を過ぎていたが、中澤は気にもせずに家を出た。


656 :198:2005/10/30(日) 10:51:52 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜2

特に欲しいものもなかったので、結局何も買わずに
ウィンドウショッピングの形になったが、気分は良かった。
「仕事で吸う空気と休日で吸う空気はやっぱちがうな〜
こんな休日もたまにはええもんやわ」

ウィンドウショッピングを済ませると、すっかり陽が傾いていた。
中澤は、杜王町の空を朱色に染める美しい夕焼けを見ながら、
散歩がてらに遠回りをしながら帰ることにした。

人気のまったくない道をぶらぶらと歩いていると、
小さな店が見えてきた。
「あれ?こんなところにいつの間に・・・」
繁華街から離れ、一軒だけポツンと建っているのが珍しかったので
中澤の足は自然とその店に向かっていった。
店の看板にはメルヘンチックな字体で『コリン』と、書かれていた


667 :198:2005/10/30(日) 15:55:32 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜3

中を見ると、洋服屋のようであった。
しかし、それはその辺で見かける『普通』の洋服ではなく、
いわゆる『ゴスロリ』と呼ばれる類の代物であった。
(私には無縁の世界やな・・・)
店頭に展示してあるものを手に取り、心の中で感想を述べていると
店内にいた店員らしき人がこっちに向かってきた。
「なにかお探しですか〜?」
「え?あ、いや・・・」
甘ったるい声に反応した中澤は、その声の方向に顔を向ける。
(うわ・・・すご・・・)

ピンクの生地にひらひらのレースをあしらったエプロンドレス。
頭にはティアラが乗っている。
まるでおとぎの世界から出てきたような姿であった。

「あ、もしかして娘さんにプレゼントとかですか〜?それだったら〜・・・」
店員は中澤の顔を見るなり、店内の品を物色する。
「・・・娘って・・・私まだ・・・」
「これなんかどうでしょう」
いいかけた中澤の言葉に被って店員が服をさしだした。
「娘さん、たぶん中学生くらいですよね?私の勘って結構良く当たるんですよ〜」
「プツン!」そんな音が聞こえたような聞こえないような・・・。
「いや、全然あたってへんし、第一私はまだ独身ですけど!つーかそんな年に見えるか?!」
中澤はイラッときて、少し強い口調になった。
「あ、違うんですか〜?それならそうと早く言ってくださいよ〜」
店員は悪びれる様子もなく、そそくさと服を店内にしまった。


668 :198:2005/10/30(日) 15:57:50 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜4

「と、なると・・・もしかしておばさまが着るんですか〜?」
再び店内から出てきた店員は、中澤を見つめながら言った。
「えっと・・・小倉さん?」
店員の胸のあたりのネームプレートに『小倉』と書かれていた。
「はい」
「あんたさっきからねぇ、失礼なこと言ってない?」
中澤は怒る気持ちを抑えながら、努めて冷静に話した。
「私のどこが中学生の子持ちに見える?」
「え?いや、外見でなんとなくですけど・・・」
「外見でって・・・一体私がいくつに見えるのよ?」
中澤の問いに、小倉は人差し指を顎に当てながら難しい顔をし、
首を右に傾けたり左に傾けたりしている。

「結構お若く見えますよね、38くらいですか?」
しばらく考え込んだ後、明るい表情でいかにも「お世辞です」
といわんばかりの口調で答えた。

プツン・・・

(あ〜なんか切れたわ・・・)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・


669 :198:2005/10/30(日) 16:01:24 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜5

「はあっっっ?!!!!私のどこが38なのよっ!まだ32よっ!!!」
ついに堪忍袋の緒が切れた中澤は怒りを爆発させた。
「これでもな〜、社内ではまだ20代でもいけるって言われてんのよ!
あんたの目ぇ腐ってるんちゃう?!!!!」
「え?32だったんですか〜?いや〜、本当は38よりも上かと思って控えめに言ったのに〜」
中澤の気迫にもまったく動じない小倉は、さらに怒りを増長させることを言う。

プツン・・・

(あ〜またなんか切れたわ・・・)

「アンタたいがいにせーよゴルァ!大体なに?こんっな趣味の悪い服作りくさってからに〜!
こんなん売れるとおもてんのか!ボケッ!!」
度重なる小倉の暴言にキレた中澤は、
店頭の服の裾を持ち、ひらひらさせると乱暴に引っ張った。

プツン・・・

今度は小倉のほうから何かが切れる音がした。


670 :198:2005/10/30(日) 16:09:46 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜6

「おいてめー・・・今なんつった・・・?何をした・・・?」
小倉のこめかみの血管がピクピクと動いている。
「あ〜?こんなに趣味の悪い服が売れるかっていったんじゃ!」
今度はもっと乱暴にレースの裾を引っ張った。
するとなんと、レース部分が取れてしまった。
「あ〜あ・・・すまんかったな。これ、弁償させてもらうわ。
あ、でもよかったなあ、一着売れるで」
中澤は取れたレースを目の前でひらつかせた。

ブチィッ!!!!!

小倉のほうから、さらに大きな音が聞こえた。

「てめーーーーー!!!!!!!!やっていいことと悪いことがあんだろーー!!!!!!!」
まるで人形のように可愛いらしい顔つきからは
想像もつかないような怒声が辺りに響いた。
「下手に出てりゃあいい気になりやがって!もう許さねえからな!!
カネ払ったくらいじゃ物足りねえ!てめえの腕の一、二本取らねえときがすまねえ!!!」
そう言うと、小倉の背後からなんと、スタンドが出現したのであった!


671 :198:2005/10/30(日) 16:18:37 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜7

そのスタンドは小倉の格好と同じような感じでブリブリの衣装に
ティアラを乗せたモノであった。しかし、どこか冷たさを感じる。
「あんた・・・それ・・・」
自分と同じ能力・・・スタンドを見て中澤は一瞬怒りを忘れて声を漏らした。
「ほー、見えるってことはてめえもスタンド能力者か・・・なら出しな・・・サシで勝負だ!」
「あんたまさか、元演劇部員なの?あんたも矢に撃たれたの?」

そう、中澤はぶどうヶ丘高校の出身であり、かつては寺田に才能を見込まれ、
演劇部のコーチとして身を置いていたのであったが、思うところがあり今の仕事に就いている。
「演劇部?矢?なんだそりゃ?これはなあ、小さい頃からのトモダチよっ!
ムカついた奴はこれでぶっ飛ばしてきた!」
小倉のスタンドはファイティングポーズ作ってみせた。

「そういやこの前、なんとかっていう占い師のばばあに占ってもらったんだ。
たしかカーズ・ホソギだかホソキだか忘れたが、そいつが言うには
この『能力』のことを『スタンド』、んで『キング・キル・33』とかいう名前を勝手に付けやがった。
まあ、私は昔から『プリンセス・コリン』って呼んでるがな」
小倉は得意顔でべらべらと話す。
「あんた・・・一体何者・・・?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・


672 :198:2005/10/30(日) 16:24:38 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜8

「私?ふふふ・・・よくぞ聞いてくれたな」
小倉はにやりと笑った。
「私は小倉ユウコりん!実は『コリン星』から来た宇宙人なんでプゥ〜!」
素っ頓狂な声を出し、スカートの裾を両手でつまみ、軽くお辞儀をする。
「はああああああああ???????」

中澤は目の前が一瞬白くなったようなめまいを覚え、ぐらついた。
「コリン星はあ〜、地球の裏側にあるお菓子で出来た星なの〜」
今度は両人差し指を頬に当て、体を横に傾けた。
その動作が一々癪に障る。
驚きで収まっていた中澤のイライラがまたその鎌首をもたげる。
「ユウコりんはそこのお姫様なんだプゥ〜」
そして、次々と出てくるあまりにも『アレ』な言葉に
中澤は一つの結論に達した。

ズキュゥゥゥン!!!!!

(あ、そっか・・・アホなんだ・・・)


724 :198:2005/10/31(月) 14:30:26 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜9

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二人の間に奇妙な・・・いや、ビミョーな空気が流れる・・・

「・・・はあ・・・コリン星?じゃあ、何?あんたは宇宙人だとでも言うの?」
「そうです」
真顔で答える小倉。
「はっ!じゃあ何?どうやってS市まで?この杜王町まで来たっていうの?
宇宙船ですか?!!!」
中澤は半ば呆れて質問した。
「・・・いや、別に・・・『東北新幹線』で来たんですけど・・・』

ズッ・・・・

おもわず中澤はよろめいてしまった。
「もうええわ・・・帰る・・・」
あまりのくだらなさに中澤は小倉に背を向け、立ち去ろうとした。
「おい待てよ!てめー、なに誤魔化して逃げようとしてんだ?!」
ドスの効いた声が中澤の後ろからする。
「あぁ?逃げる?誰がや?」
中澤は『逃げる』という言葉に反応し、彼女もまたドスを効かせ振り向いた。
「てめーのことだよ!腕の1,2本もらってくっつったろうが?ボゲェッ!!!」
びびって逃げてんじゃねーよ!そんなことだから独り身なんだよ!この『年増』のばばあが!!!!!」
「なっ?!『年増』じゃとぉっ?!」

プッツウウぅゥゥゥぅぅゥぅンンンンンンン・・・・・・・・・・

(切れた・・・私の中で決定的な何かが・・・・・・)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・


725 :198:2005/10/31(月) 14:31:08 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜10

「だっ・・・・誰が年増じゃああああ!!!ゴルァァァァァーーー!!!!!!!」

バシュウウウウゥゥゥウッゥッッッッッ!!!!!

中澤のスタンド『ワイフ・オブ・クロウ』が出現した。
「もう堪忍ならんぞぉぉ!!!!」
凄まじい憎悪が小倉に向けられる。
おそらく一般人から見ても『スタンド』は見えないだろうが、
その『オーラ』は感じることが出来るだろう。
それほどまでに凄まじい怒りだった。
「てめーの『ピーッ』の穴から手ぇ突っ込んで奥歯全部ひっこ抜いたるわあああああ!!!!」
怒りに任せ、中澤は小倉に向かって突進した。
「上等じゃねーかああああ!!!!!!」
それに負けじと、小倉も応戦する。

ドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガドガァァッッッ!!!

「くっ・・・!」
しかし、中澤の『ワイフ・オブ・クロウ』のパワーは凄まじく、
小倉の『キング・キル・33』はたまらず防御姿勢をとる。
「無駄じゃあっ!そんなヘナチョコガードッ!!」
構わず『ワイフ・オブ・クロウ』は『キング・キル・33』の
ガードの上から殴りつける。

バスバスバスバスバスバスバスッ!!グビギィッッッ!!!


726 :198:2005/10/31(月) 14:33:16 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜11

歪な音を発し、『キング・キル・33』のガードがはじかれた。
いや、破壊されたというべきか・・・。
「腕を持ってかれたのは、てめーの方になったなぁ!そらぁ!一発ぅぅッ!!!」
「うげあっ!!」
無防備になってしまった顔面に
キツイ一撃を喰らった『キング・キル・33』は
本体と共に後方へ吹っ飛んだ。

ドザアアアアァァァァァ!!!

「うう・・・ハッ!!」
立ち上がろうとする小倉の目の前には、既に中澤が立っていた。
「てめーは・・・私を怒らせた!!」
中澤は、『ワイフ・オブ・クロウ』を構えた。
「まだこんなもんじゃ気が済まねーぞおおお!!!もう一度ぶっ飛べえええ!!!!!!」
「うるせー!!ムカついてキレてんのはてめーだけじゃねーぞおおお!!!
てめーは私の魂の作品を侮辱した!!ぶっ飛ぶのはてめーの方だ!!!!」
小倉が叫ぶと、中澤の目の前に小さな人形がいくつか出現した。
「なっ?これは?!」
「トイ・ソルジャーズ(忠義の兵士)・・・」
小倉がニヤリと笑う。
よく見るとそれは、筒状の物を肩のあたりに乗せ、構えている・・・
それはバズーカだった!
「まずい!」と感じた中澤は後ろに飛び退こうとした。
「もう遅いっ!」

ドガアアアアアアァァァァァァァァンンンンンン!!!!!

「爆死りんこ♪」


727 :198:2005/10/31(月) 14:41:04 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜12

爆風による砂煙が去ると、遠くで中澤がひざをついているのが見える。
どうやら直撃は免れたようだった。
しかし、その傷は決して浅くはない。
小倉はその姿を見て「ちっ」と舌打ちをしたが、すぐに余裕の表情に切り替わる。

「フン、運良く直撃を逃れたようだが・・・もうおしまいだな・・・
あんたと私の距離・・・何メートルだ?10メートルくらいか・・・」
そう言うと小倉は手を前にかざし、中澤との距離を計算した。
「あんた・・・さっきからスタンドと一緒に自分もくっついて行動してるな・・・
もしかして、近距離でしか使えないんだろ・・・」
中澤は表情を変えずに、その言葉を聴いていた。
「射程距離はせいぜい1〜2メートルってとこか?図星だろ?なあ?
だからこうすりゃあ私の勝ちは決定するっ!!」
『キング・キル・33』が手を中澤に向けると、先程の小さな兵隊が5体出現した。
『キング・キル・33』のてを見てみると、手の指が全部なくなっているのに気付いた。

そう、トイ・ソルジャーズは右手の指を兵隊に、左手の指を武器(この場合バズーカ)に変える!!
バズーカの射程は約12メートル!これが『キング・キル・33』の本当の能力!!!

中澤は青ざめた。あれをまともに喰らったら、今度こそ死ぬ。
だがこの状態ではガードすらままならない。
(あの目は本気や・・・もうこうなったら、アレを使うしか・・・
でも、アレを使ったら後が・・・いや、迷ってるとこやない!やるしかない!)


728 :198:2005/10/31(月) 14:42:59 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜13

「うおおおおおおお!!!!!!!!!!ドゥー・マイ・ベストおおおおおお!!!!!!!」
中澤は死力を振り絞って立ち上がり、なんと!
手をクロスさせ、小倉に向かって突進した!
「何っ?!正気かっ?!くっ・・・このままでは接近される!
『プリンセス・コリン』(小倉はこう呼んでいる)トイ・ソルジャーズに撃たせろっ!」

ドオォォンン!!!!×5

しかしその砲弾はよけられる!
「くそッ!!もう一度ぉッ!!やれえっ!!!」

ドオォォンン!!!!×5

再び砲撃をすると、今度は中澤のガード上と足に当たったのが見えた。
「よしっ!今度こそ爆死りんこっ♪」
小倉は笑顔になり、「ピョン」と跳ねた。しかし・・・
砲撃を喰らいながらも、中澤の突進は止まらないっ!!
「そんなバカなっ?!ガード上ならまだしも、足に喰らって走れるわけが・・・?!」

ザッ・・・

「距離約1,5メートル・・・これが私の射程距離・・・」
遂に小倉の目の前まで中澤は到達した。


729 :198:2005/10/31(月) 14:45:09 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜14

確かに中澤の足、そしてガードした腕はボロボロで血に塗れている。
だが、まるでそんなことも気に止めない・・・いや、気付いていないのか。
「あ・・・あ・・・どうして・・・?足にまともに喰らったのに・・・」
小倉の言葉にやっと気付いたのか、中澤は足元を見た。
「ああ・・・やっぱり直撃喰らってるわ・・・」
そして顔を上げる。
「ドゥー・マイ・ベスト・・・これが私の能力・・・『肉体的な痛み』を麻痺させる・・・」
「くそおっ『プリンセス・コリン』(小倉はこう呼んでいる)っッ!!!!」
「遅いっ!!!!」

「セリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリセリャアアアアア!!!!!」
「うああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

メメッッタタタタアアアアアアアアアアアア!!!!

小倉はラッシュを受け、吹っ飛んだ

・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・



730 :198:2005/10/31(月) 14:50:54 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜14

「あんた・・・なんて耐久力、精神力なの?」
手加減無しの猛ラッシュを受け、吹っ飛んだのにもかかわらず、
小倉は再び立ち上がったのだった。
「こ・・・このくらいでえぇぇぇ!やられるとおもってんのかあああ?!!!!」
ボロ雑巾のようになりながらも、小倉は
よろめきながら中澤に向かっていった。
「私だけならともかく・・・この『魂の作品』を傷つけたこと・・・」
気のせいか、小倉の体からキラキラと黄金に輝くものが見える。
それは、誇り高き黄金の精神そのものであった。

(『この娘』・・・それほどまでに・・・それに比べて私は・・・)

ドサアッ!

やはり、ダメージは大きいのだろう。小倉は倒れ、ひざを突いた。
「どうやら私の負けみたい・・・私の誇りは所詮この程度のもの・・・」
小倉は力なく笑った。
「ううん・・・私の負けよ・・・私はスタンド能力で痛みを打ち消しているけど、
あなたは『自らの誇り』によって『乗り越えている』・・・
その時点で既に私の負けなのかも・・・それにもう麻痺が切れたみたい・・・
これ・・・あまり長くもたへんねん・・・」

ドサアッ!

今度は中澤が地面に倒れこんだ。


731 :198:2005/10/31(月) 14:54:11 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜15

『びびって逃げてんじゃねーよ!』・・・
薄れ行く意識のなか、バトル直前に言われた言葉が、
まるで壊れた蓄音機のように、中澤の頭の中を何度も繰り返し再生されていた。
実は『年増』『独り身』という言葉よりもそのことが一番こたえたのだった。
(そう・・・あの時、私は逃げたんだ・・・
寺田先生の考えがわからなくなって・・・
怖くなって・・・そして、演劇部から逃げた・・・)
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

「はっ!?」
気付くとそこは不思議空間であった。
周りには、ぬいぐるみやらなにやらメルヘンちっく。
「あ、気が付かれましたか」
声のほうを向くと、そこにはぼろぼろの小倉がいた。
「ここは?」
「お店の休憩室です」
「あんた・・・その体で私をここまで?どうして?」
「・・・さすがにあのままお店のまん前で
倒れてるわけにもいきませんからね」
小倉はにっこりと笑った。
さっきまでのものとはまるで違う、安心感を与えるものであった。


732 :198:2005/10/31(月) 14:55:39 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜16

少しの静寂の後に小倉が口を開いた。
「私、少し冷静になって考えてたんです。お洋服コケにされて、乱暴にされたときは
さすがにムカついたけど、結局、私の技術が足りないからなんですよね・・・」
そう言って俯いた。
「え?いや、アレは、私も逆上してたから・・・」
異様に落ち込んでいる小倉を、おもわず慰める中澤。

「そんなんじゃないんです!」
小倉は中澤に向き直って語気を強めた。
「誰もが素敵と思えるような代物だったら
あんなことにはならなかったと思うんですっ!」
「え?あ・・・はあ・・・」
中澤は納得したような、しないような変な気分になった。
「私、自惚れてたんですね。あなたのおかげで目が覚めました!
修行しなおして出直します!ありがとうございましたっ!」
「え?・・・ど、どういたしまして?」
勝手に自己解決する小倉に、中澤はそう答えるしかなかった。

ピーポーピーポーピーポーピーポーピーポー・・・

そこに救急車のサイレンの音がこちらに向かって聞こえてきた。
「あ、やっと来たみたい」
小倉は中澤を店に入れた後、救急車を呼んでいたのだった。


733 :198:2005/10/31(月) 14:59:01 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜17

「私の目を覚まさせてくれたお礼をしないと」
二人が担架に乗せられ、それぞれの車に向かう途中で
小倉は中澤に声を掛けた。
「え?いや、そんなことより、あの服弁償させてくれへんか」
中澤は彼女の作品を傷つけたことを、深く後悔していた。
「ううん、そんなことはいいんです・・・あ、そういえば
あなたの名前・・・聞いてなかった」
「中澤裕子・・・」
「中澤裕子かあ・・・あ、私と同じ名前ですね」
「・・・せやね・・・」
二人は顔を見合わせて笑った。
先程まで激しく喧嘩をしていたとは思えなかった。

「あ、すいませんちょっと待ってください、中澤さあーん!」
小倉は救急隊員にそう言って、大声で中澤を呼び止めた。


734 :198:2005/10/31(月) 15:03:39 0
銀色の永遠 外伝 〜ユウコ・スターダスト〜18

「ちょっとすいません、止めてください」
その声に気付いた中澤も担架を止めさせる。
「なんやー?」
「退院したらコリン星に招待しますよー!」
中澤は怪我と関係なく意識が遠くなった気がした。
(まだそんなこと言うとるんかい・・・)
「コリン星って・・・あんた、んなもんどうやって行くねん?宇宙船にでも乗るんか?!」
呆れて声も出なかったが、何とか切り返すことができた。

「えっ?どうやってって・・・『東北新幹線』ですけど・・・」

ズリッ・・・

その言葉に中澤は担架から落ちそうになった。


         ジャンッ!!!!!!


中澤裕子
スタンド名 『ワイフ・オブ・クロウ』

小倉優子
スタンド名 『キング・キル・33』(ただし、本人は『プリンセス・コリン』と呼ぶ)

後日・・・中澤は、寺田のもとを訪れることを決心する。

TO BE CONTINUED…