650 :六部198:2006/11/24(金) 17:34:05.18 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜1



―事実を積み重ねることが、必ずしも真実に辿り着くとは限らない―



ガタンゴトン・・・ガタンゴトン・・・

最終電車は規律正しい音を響かせながら夜を駆ける。

「あー、遅くなっちまったな・・・お母さんに文句言われそう」

車内で『ぼやく』女子高校生、藤本美貴はこの日、休みを利用してS市街へ行っていたのだが、
その帰り、駅の近くにあるゲームセンターに立ち寄ったのが間違いだった。
何気なく対戦型のレースゲームをやっていたのだが、
見知らぬ青年に負けたことが彼女の闘争心に火をつけてしまったようで、
それから約一時間、『勝つまで』やり続けていたのだ。
それに付き合わされた名も知らぬ彼は・・・まあ、運が悪かったとしか言いようがない・・・

「・・・つーか、今日は随分と人がいねーな」
時刻は夜の0時近くだが、休日の最終電車でも
杜王駅までは乗客もそこそこ多いはずなのに、
車内には藤本の他に数人しか乗っておらず閑散としている。


651 :六部198:2006/11/24(金) 17:35:08.97 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜2

「ま、別にどうでもいいや。空いてるほうがいいし」
こんな日もたまにはあるのだろう。
藤本は足を組み、車内の中吊り広告をなんとなしに眺めた。


-mommo-
『夏のチョイもてメイク』
『今年の夏の流行ファッション』

-週刊男児-
『S市一家殺傷事件の被害者少女が失踪』
『元・市会議員が激白!ある大物議員の黒いつながり』

-週刊WEDNESDAY-
『人気アイドルY・Mと俳優O・Sが熱愛?』
『半蔵門ひとみ パーティー会場でセクシードレスを披露』
『現役カリスマモデルが明かす!ストーカー被害による恐怖の半年間』


(・・・『夏のチョイもてメイク』か。美貴もそろそろ彼氏を作るか)
そんなことを考えていると、そのうち睡魔が意識を覆いだした。
(・・・ま、地元までまだ結構あるし・・・)

・・・・・・・・
・・・・



652 :六部198:2006/11/24(金) 17:35:55.64 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜3

キキィィィィ!!!!ウウゥウウゥゥンンン!!!

「うわッ!・・・と」

電車が急カーブをしたときのブレーキ音と大きな揺れで、
藤本は心地よい眠りから現実へと呼び戻された。

「んだよッ!気をつけ―」
眠りから覚まされたことに腹を立てた藤本は、
誰に言うでもなく悪態を吐いたが、その言葉を途中で止めた。
目の前に誰かが立っているからだ。

(子供・・・?)
黒いワンピースを着た少女が、じっとこちらを見つめている。
真っ直ぐに伸びる黒い髪、大きな瞳、年は10歳前後だろうか。
その手には、手の平大の小さな人形が握られている。

藤本がその身なりを観察している中、少女がおもむろに口を開いた。
「今日はね・・・これから、お墓参りに行くのよ」
「へ・・・?お墓・・・参り・・・?」
少女の唐突な言葉に、藤本は困惑気味に返事をした。


653 :六部198:2006/11/24(金) 17:36:49.96 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜4

カァンカァンカァンカァンカァン・・・・・

踏み切りの赤い光とサイレンが、車内を駆け抜ける。

「そう、お墓参りなのよ」
少女は再び藤本の目をじっと見つめた。
藤本はそれを聞くと、「へーそうなんだ」と言いながら車内を見渡した。
子供が一人で墓参りなんかに行くのだろうか。
近くに親がいるはずだ・・・そう思ったのだ。

だが、それらしき人物はいない。
というか、いつの間にか乗客は自分と、この少女しかいなくなってるのだ。
おそらく、寝ている間にいくつかの駅を通過したのだろう。

藤本は視線を少女に戻した。
「・・・」
彼女は無言でこちらを見つめている。
まるで、こちらが何か言うのを待っているようにも見える。

「えっと・・・誰のお墓参りに行くの?」
沈黙に堪えかねた藤本が、少女に問いかけた。
それと同時に顔を横に向けた。
彼女の瞳を見ていると、なんとなく吸い込まれてしまいそうになるからだ。
しかし、彼女はわざわざ自分の顔を、藤本の視線の前にもっていってこう答えた。
「それはプライベートなことだから言えないのよ」


654 :六部198:2006/11/24(金) 17:38:09.89 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜5

「あ、そっか・・・じゃあ、しょうがないか」(んなんだよ、このガキ)
藤本はイライラしながらも、相手は子供なので、それをなるべく隠して
いかにも残念そうな表情を浮かべて俯いた。
「でも、特別に教えてあげる」
「え?」
少女の言葉に、藤本が顔を上げる。
「パパとお爺ちゃんのお墓参りに行くのよ。2人とも死んだの。殺されちゃったのよ。
ママは大怪我して入院してるのよ」
少女は無表情で、そう答えた。

(うわ・・・しまった・・・これはへヴィだぜ・・・だから一人なのか)
イライラはすっかり吹き飛び、「可哀想なことを聞いてしまった・・・」
と、藤本は心の中で悔やんだ。
「そう、殺されちゃったのよ。警察の人もまだ何も分かってないの」
藤本の心中を知ってか知らずか、少女はさらに話を続ける。
「死ぬ前にパパは特に怖がってたのよ『家にはナニかがいる』って」
「・・・ナニか?」
藤本は妙な引っ掛かりを覚えて、思わず聞き返した。

殺されたということは、犯人がいるはず。
そして、まさかとは思うが、その『ナニか』とはもしかしたら犯人は
『スタンド使い』なのかも、という可能性があるからだ。
最近は、そういう事に敏感になっている。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・


724 :六部198:2006/11/26(日) 01:39:45.84 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜6

こういうのも何だが、ただの殺人ならば自分は関わりない。
捜査などは警察に任せておけばいい。
だが、もしも犯人がスタンド使いなら話は別だ。スタンドは裁判で裁けない。

「パパには見えていたのね。家の中でじっとこちらを見ているんだって」
少女はそう言って、藤本の隣に座った。
「その・・・『ナニか』が?」
「そう、いつもいつも、ずっと見ていたの。テレビを見ているときも、中から出てくるのよ。
ごはんを食べようとして、冷蔵庫を開けるでしょ?そしたらその中にもいるの。
寝ようとしてお布団に入ったときなんか、足を掴まれたのよ」
「掴まれた?」
「そう、掴まれたのよ。とっても冷たいの・・・」

ふふふ・・・

少女が一旦話を区切ると、低い含み笑いが聞こえてきた。
「???」
藤本は辺りを見回したが、当然誰もいない・・・

「ねえ、お姉ちゃんはなんだと思う?パパの足をつかんだモノって?」
「え?さ、さあ・・・なんだろ?」

「ふふふ・・・」

また聞こえた・・・
それは、目の前にいる少女の口元からだった・・・


725 :六部198:2006/11/26(日) 01:40:25.24 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜7

「それはとっても怖いモノなのよ」
「とっても怖いモノ・・・」
藤本が、半ば無意識にオウム返しをする。
すると少女は、手に持っている人形の首を左手で弄びながら
身を乗り出し、藤本に顔を近づけていった。

「そう、とっても怖いの。冷たくて真っ黒で大きくて怖いモノなのよ。
怖いモノなの。怖い怖いモノ。それはそれは怖いの。
とってもとっても怖いものなよ。そう、それはとってもとっても怖いモノなのよ」
「そ、そうなんだ・・・」
「ふふ・・・そう・・・でも、怖いモノってナニかしら・・・?」
そう言って少女は人形を弄んでる左手に力を込めた。
すると、「ブチッ」という音を立てて人形の首は取れ、藤本と少女の間に落ちた。
偶然だろうが人形の瞳もまた、こちらを向いており、まるで少女と人形『二人』に
見つめられているようなイヤな気分になる。

(怖いモノ・・・か・・・)
藤本は俯いて考える。
が、それとは別の疑問が湧いてきた。

(・・・つーか、この子はこんな夜中にお墓参り?)


ガタンゴトン・・・ガタンゴトン・・・

電車は規律正しい音を響かせながら夜を駆ける。


726 :六部198:2006/11/26(日) 01:40:59.01 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜8

常識的に、こんな夜中にお墓参りなどありえない。
この少女は本当に行こうとしているのか?
そう考えると、この少女が言っていること全てが疑わしく思えてくる。
両親と祖父のことも嘘なのではないか?
だが、一体何のために?自分の駅に着くまでの暇つぶしにしては、随分と悪趣味だ。

藤本は少女の顔を、改めてじっと見つめた。
何故か彼女の周りに薄黒くモヤがかかっているように見える。
目をこすって、もう一度見ても同じだ。

「・・・ねえ、本当に―」
藤本が言いかけたとき、車内アナウンスが流れてきた。

『ご乗車ありがとうございました〜。まもなく〜杜王駅〜杜王駅〜』

電車はスピードを下げ、窓からは見慣れた風景が飛び込んでくる。
「あ、ごめん。お姉さん、ここで降りなきゃいけないから」
藤本は少女に一言謝ると、席から立ち上がって扉の前に行った。
可哀想だとは思ったが、ここで降りないと家に帰れない。
・・・いや違う。本当はそれよりも、この得体の知れぬ少女と二人っきりになりたくなかったからだ。

プシュウウウゥゥゥゥゥゥ・・・・

扉が開き、藤本が外に足を一歩踏み出したときだった。
「ふふふ・・・ねえ・・・」
少女が低い笑い声を出しながら、藤本を呼び止めた。


727 :六部198:2006/11/26(日) 01:42:34.57 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜9

「え?」
少女の声に振り返ると、彼女の周りを覆っていた黒いモヤが一気に広がり、
霧状に藤本の視界を遮った。
「・・・ッ?!」
突然の出来事に呆気に取られていると、その暗闇から
『チェーンソー』を持った『腕』が飛び込んできた!

ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!

「なッ!なにいいいぃぃぃ!!!!????」
藤本は咄嗟にBT03を出し、寸でのところでその腕を掴むことができた。

「こッこれはァッ!!!!」
ほんの一瞬の出来事だが、それが何を意味するかは明白ッ!
『スタンド攻撃』以外の何者でもない!
「でも、誰が・・・?」
いや、心の中では誰の仕業か分かっている。

「ふふふ・・・お姉ちゃんにも見えるのね。しかも、『ナツキ』と同じようなものまで持ってる」
暗闇の向こう・・・すぐ近くからする声。ついさっきまで話していた少女の声。
『ナツキ』とは、この少女の名前なのだろう。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・・・!!!!!!


728 :六部198:2006/11/26(日) 01:43:16.01 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜10

グググググ・・・・・

ナツキのスタンドは予想以上のパワー!
不快な機械音を撒き散らしながら、次第に藤本の顔にチェーンソーが近づいてくる!

「くそぉッ!!」
藤本は迫る腕を後ろにそらし、なんとか危機から脱出できた。

バッ!!

そして、ナツキのいる方向に身体を向けて迎撃体制をとる。
すると少しずつ黒い霧が晴れ、駅のホームの明かりが藤本の周りを照らした。
電車はいつの間にか走り去ったようだ。だが、攻撃者であるナツキは
自身のスタンドを従え、首を左右に傾げながらこちらを値踏みするように見ている。

彼女のスタンドは全身が黒いモヤに覆われていて、正確な姿形は判別できない。
いや、これこそがスタンドのデザインなのだろう。
その両手には、先程のチェーンソーのような物が握られており、
顔があるべき場所には、二つの微かな赤い光が目の形を作っている。

「お姉ちゃんも、ナツキを虐めるの?」
そう言ってナツキは、迎撃体勢をとって自分を睨む藤本とBT03を交互に見やった。
「え?なに?」
「ふふ・・・そうだと思った」
「???ちょ・・・なにが?」
話が一向に見えない藤本は戸惑うばかりであった。
『虐めてきた』のはそっちのほうだろ!と言いたげである。


729 :六部198:2006/11/26(日) 01:44:13.28 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜11

まったく話が見えない藤本であったが、ナツキはそんなこともお構いなく
スタンドから再び黒い霧を噴出させ、藤本の視界を奪っていく。

「くそッ!なんだってんだよ!」

ブウウゥゥウゥンンンン!!!!

チェーンソーの回転音が耳元で唸りをあげる!
「うおおぉぉ!!!!」
藤本は地面を転がるようにしてそれをかわした。
(・・・コイツの目的がわからねー・・・いや、はっきりしてるか・・・
コイツは美貴を殺そうとしているッ!!!)
藤本は立ち上がり、チェーンソーの音がした方向を向いて
神経を研澄まし、相手の気配を探った。

「・・・」

こちらを舐め回すような視線を感じる。
おそらくナツキにはこちらが見えているのだろう。
チェーンソーの音は攻撃の瞬間だけなのか、耳障りな騒音は聞こえない。

ゴクリ・・・

唾を飲み込む音が、まるでそこら中に響いているような錯覚を起こす。
(クソッ・・・まだ夏前だっつーのに汗が出てくるぜ・・・)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・


730 :六部198:2006/11/26(日) 01:44:57.51 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜12

ブウウイイッィィゥウウゥゥウゥンゥゥゥンンゥンンン!!!!

チェーンソーの騒音!そして、それと同時に右腕に強い痛みを感じる!
「なにッ?!ぐあああッ!!」
咄嗟に退いて切断は免れたが、ダメージを負ってしまった。

「もうすぐだったのに・・・ふふふ、惜しかったわ・・・」
暗闇の向こうからナツキが言う。
だが、言葉とは裏腹に、その口調はちっとも残念がってはいない。
むしろ愉しんでいる風だ。

「くそガキが・・・」
藤本は右腕を抑えながら、呻くように言った。
「あんまり美貴を怒らせるなよ・・・痛い目見るぜ・・・」
「あら、そんなことは無いのよ。そんなことは無いの。
そう、そんなことは全然無いのよ・・・ふふふ・・・」

「いちいちうぜーんだよッ!」

ドガァッ!!!!

藤本がBT03で力任せに地面を殴ると、その破片が周囲にバラバラと飛び散った。
「威嚇?それとも癇癪って言うのかしら?ふふふ・・・そんなことをしても、ちっとも怖くないのよ」
まったく動じていないナツキの気配がゆっくりと近づいてくる。


773 :六部198:2006/11/27(月) 00:35:33.04 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜13

「・・・」

最終電車が過ぎ去ったホームは、すっかり静まり返っている。

ジャリッ

「ッ!!!そこだああぁッ!!!」
藤本は、その音がした方向に向き直リ、闇に両拳を叩き込んだ!

バスバスッ!!!!

「ぐッ!!」
ナツキのうめき声が聞こえ、一瞬だけ黒い霧が薄くなった。
腹を抱えてうずくまっている姿がうっすらと見える。
その足元には、先ほどBT03が殴ったコンクリートの破片が散らばっている。
破片を踏みつける音を頼りに、ナツキ位置を読んだのだ。
「ふん!もっと喰らわせてやるぜッ!」
藤本はそう言って、霧が薄くなっている間にナツキに突っ込んだ。

「おおおぉッ!!!!!!!」
BT03の拳が振り上げられた瞬間!

「・・・そんなんじゃ、全然ダメなのよ」

ナツキの目が不気味に光った。


774 :六部198:2006/11/27(月) 00:36:33.04 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜14

ナツキはうずくまったままスタンドのチェーンソーを前に突き出し、
そのまま身体を捻りながら持ち上げたッ!

ブウゥゥゥゥゥゥンンンン!!!!!

だがッ空振りッ!!
高速回転をするチェーンソーの刃が、虚しく空を切り裂いた!

その刃の先、わずか数センチ向こうから、上体を後ろに反らせた藤本が
勝ち誇ったようにナツキを見下ろしている。
「悪いが、美貴はこういうの慣れっこなんだよ!そんくらいの予想は既にしてるぜッ!!」
藤本はそう言って、すぐさま上体を戻して体勢を整えた。
「隙だらけだッ!!」

バギイィィィッ!!!

BT03の拳が、ナツキの頬を捉えた!
「キャアアッ!!」
さらに十分に勢いをつけた回し蹴りッ!!
「オラアッ!」

ドガッ!!ズザアアァァァ・・・

連撃を喰らったナツキは地面に叩きつけられた。
そのショックからなのか、霧が晴れていく。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・


775 :六部198:2006/11/27(月) 00:37:12.54 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜15

「ハア・・・ったく・・・なんなんだっつーんだよ、おめーは」
藤本は息を整えて額の汗を拭うと、地面に倒れこんだナツキを見下ろし呆れたように言った。

「・・・クスン・・・」
「え?」
「グス・・・ヒックヒック・・・」
突然泣き出すナツキ。
「ちょ、ちょっと?」
「グスッ・・・どうして?どうしてみんなナツキを虐めるの?ヒドイことするの?」
「え?いや、美貴は・・・その・・・つーかおめーが先に攻撃してきたんじゃねーかよ」
言い返してみたものの、藤本の言葉尻は弱い・・・
「ナツキが全部悪いの?悪いヤツは死んで当たり前だ、って先生が前に言ってたの。
やっぱりナツキが死ねばいいの?」
「いや、そこまでは・・・」
「・・・うぅ・・・ヒック・・・」
ナツキは顔を両手で覆い、そのままうずくまってしまった。

うずくまって泣いている、年端も行かない少女と高校生・・・
傍から見れば、完全に藤本が少女を泣かせている光景だが、周りに人がいないのが幸いだ。
(・・・なんなんだよ・・・美貴が悪いみたいじゃん)
藤本は罪の意識を感じ、うずくまったままのナツキに向かって軽く頭を下げた。
「あー、いや・・・その・・・やり過ぎた、ゴメン」
「・・・じゃあ、ナツキは悪くない?」
ナツキが涙目で藤本を見上げる。
「・・・ああ、そうだな」


776 :六部198:2006/11/27(月) 00:37:57.74 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜16

「じゃあ、お姉ちゃんが悪いの?」
「・・・は?」
ナツキの言葉に藤本は顔をしかめたが、とりあえずその場しのぎで
「ああそうだな、悪かった」と、半ば投げやりに数回頷いた。

「そっか・・・お姉ちゃんが悪いんだ・・・ふーん・・・」
ナツキはそう呟くと、そのまま黙り込んでしまった。
「・・・?どうした?」
そう言って藤本がナツキに一歩踏み出したとき・・・

「じゃあ、お姉ちゃんは死んで当然なのね!!!」
ナツキは顔を上げ、狂気を浮かべながら藤本に襲い掛かった!

ブウゥゥゥゥゥンンンン!!!!!!!!!!ギャギャッググイギイイギギギギギ!!!!!

「なにいいぃ!!?ぐあああああ!!!!!!」

ほんの少しの油断・・・ナツキのチェーンソーが藤本の右太ももに食い込んでいく。
(ちくしょー・・・やられた!)
後悔既に遅しだが、そんなことを考えている暇はない。
「くッ・・・オルアァッ!!」
藤本はBT03の左足でナツキのスタンドを蹴り、その勢いを利用して後ろに飛び退いた。
そして、『満月の流法』で傷の『応急手当』をする。
(くそッ・・・これは怪我のときは使いたくねーんだが・・・5分後か・・・)
藤本は時計の針を見ながら、来るべく時への覚悟を決めた。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・・・!!!!!


777 :六部198:2006/11/27(月) 00:38:39.77 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜17

ゥゥゥゥウウウゥゥゥウウゥゥゥゥ・・・・

再び辺りが暗くなっていく。

(また『霧』かよ・・・やれやれ、これが一番厄介だぜ・・・)
藤本は舌打ちをして、見えなくなっていくナツキを睨んだ。

「ふふふ・・・ワルイ子はお仕置きなのよ。そう、お仕置き・・・
虐めるワルイ子は、みんなお仕置きなのよ・・・ふふ・・・」

「ほう、そうかい!だったらやってみな!こっちもヒマじゃねーんだ!」
藤本は暗闇に右手を差し出し、クイクイッと挑発するように手招きした。
そして、キレイに回れ右をすると―


猛スピードでその場から逃げ出した・・・


「ふふ・・・逃げるの?それでいいの?」
ナツキが笑いながら藤本を追いかける。

(ふん!なんとでも言いやがれ。)

ナツキの言葉を背に、藤本は心の中で呟きながら走っていった。


826 :六部198:2006/11/28(火) 22:00:29.74 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜18

ダッダッダッダッダッダッダ!!!!

ナツキから遠ざかるのに比例して黒い霧が薄くなり、
彼女の姿が見えなくなる頃にはすっかり消えてしまった。
(霧の射程範囲は、あんまり広くないみたいだな・・・)

藤本は駅の階段の手すりにつかまり、滑るように降りていく。
駅校舎内にはまだ、清掃員や駅員が数名残っており、
舎内を駆け抜ける藤本に奇異な視線を向けている。
だが、そんなのに構っている余裕はない。
藤本はそのまま、駅の公衆トイレに入っていった。

「む・・・これは・・・」
トイレの中に入ると、そこに並ぶ見慣れない物体に眼がいった。
「男子トイレか・・・」
夢中だったので、階段から近かった男子トイレに入ってしまっていたのだ。
「ま、誰もいないし、そんなの気にしてもしょうがねーし、となりに移動するのも面倒くせーし」
そう言って藤本は個室に入って扉の鍵を閉め、便座を下ろしてそこに座って一息ついた。
「・・・うまくいってくれればいいんだが・・・どっちにしろ、こうするのが手っ取り早い」

このままやり過ごすつもりなのだろうか・・・そうだとしたら、その思いはすぐに砕け散ることになる。

「ふふふ・・・かくれんぼ?」
ナツキの声がすぐ近くで聞こえたからだ。
藤本の中に緊張が走り、心臓の鼓動は速くなっていった。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・


827 :六部198:2006/11/28(火) 22:01:08.82 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜19

「かくれんぼなら得意よ」
ナツキはそう言ってトイレの中に入り、個室のドアを順番にノックし始めた。

コンコン・・・

コンコン・・・

「うぐぁッ・・・」

3番目のドアをノックしようとしたところで、小さな呻き声がした。
それは藤本のモノだ。

ナツキはその場にしゃがみ、ドアの隙間から中を覗いてみた。
足と幾つかの血痕が見える。
先程藤本が治した傷が、『時間が来て』元に戻ってしまったのだ。

中に藤本がいることを確信したナツキは立ち上がって
ドアをノックし、そしてさらにドアに顔をくっ付けてこう言った。
「コンコン・・・入ってますか?・・・ふふふ・・・」
獲物を追い詰めたことにサディスティックな笑みをこぼすと、
返事を聞くことも無くスタンドでドアに風穴を開けた。

ドガアアアアアァァァッッッ!!!!!!

そして、そこに上半身を突っ込み中を覗き込むと、便器に座っている藤本と目が合った。
「みーつけたー」


828 :六部198:2006/11/28(火) 22:01:53.85 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜20

ナツキは藤本の顔をじっと見つめる。
しかし、それは期待していた怯えた表情ではなく、してやったり顔であった。
「???」
「そうすると思ったぜ」
藤本は立ち上がり、ナツキを指差してニヤリと笑った。
そして、何かを言い返そうとするナツキよりも速く、ドア目掛けてBT03の拳を叩き込んだ。
「満月の流法!!!!」

ギュイイイィィィィィィンンンン!!!!

トイレのドアが、みるみるうちに元の姿に戻っていく!
ナツキはハッと事態を悟ったが、時は既に遅きに失していた。
「あ・・・」
元に戻るドアに上半身を挟まれて、身動きが取れなくなってしまったのだ。

「さて、美貴はこんなクセーとこから早く出たいワケだが、どうやって出たらいいかな?」
藤本は意地の悪い笑みを浮かべ、指の関節を鳴らしながらナツキに問う。
だが、答えを聞くことも無く、すぐに結論を告げた。
「んー、決めた。このまま、ぶち壊し出させてもらうか!」
「ッ!!」
藤本の言葉を聞いたナツキは、慌ててスタンドで黒い霧を噴出させて身を隠そうとした。
「この状況じゃ意味ねーだろうよ!!おおお!!!!ゴールデンゴール決めてええッッ!!!!!」

VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVV
VVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVVV!!!!!!

ドッギャ〜ン!!


829 :六部198:2006/11/28(火) 22:02:45.25 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜21

「・・・ったく、何だってんだよ。今日は災難だぜ」
藤本はナツキを見下ろし、溜め息を吐いた。
「うぅ・・・」
ナツキが小さく呻く。
意外にもダメージはあまり見受けられない。
凶悪なスタンドとはいえ相手は子供だったので、
おそらく藤本は多少手加減をしたのだろう。
「おい、大丈夫か?掴まれよ」
藤本が手を差し出すと、ナツキは急に怯えた表情で
それを振り払って後退りし、頭を抱えてその場に小さく蹲った。
「いやッ!!ぶたないで!」

「え?」
突然の出来事に困惑する藤本。
「言うこと聞くから、いい子にしてるから・・・」
「え、ちょっと待って、意味が全然分からないんですけど・・・」
「誰にも言わないから・・・グスッ・・・だから、もうやめて・・・」
まったく話が噛み合わない。
業を煮やした藤本はナツキの肩を掴み、少し強く揺さぶった。
「おい!どうしたんだ?!」
「ヒック・・・ん?あれ?」
ナツキは顔を上げると、呆けたように藤本を見上げた。
「大丈夫か?」
自分がされたことなど忘れ、藤本は屈んで心配そうにナツキの顔を覗きこんだ。
だが、ナツキは不思議そうに藤本を見つめるだけであった。
「・・・えっと・・・お姉ちゃん、誰?」
「・・・は?」


830 :六部198:2006/11/28(火) 22:03:51.34 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜22

二人の間に微妙な空気が流れる。
ナツキは先程からずっと、まるで今初めて藤本を見るような目で見ている。
そして、藤本の傷に目がいったのか、身を乗り出してきた。
「あ!どうしたの?その傷!」
(てめーにやられたんだよ)
藤本は、その言葉を胸の中にしまった。
何か様子がおかしい。
「は、早く手当てしないと!救急車を呼ばないと!」
そう言ってナツキは立ち上がって外に出ようとする。
「ちょっと待て!」
藤本はナツキの腕を掴んで、強引に引き止めた。
「まず、話をしよう」
「え、でも、血がいっぱい出てるよ。早くお医者さんに診てもらわないと!」
ナツキは涙目になっている。本気でこちらの心配しているようだ。
「これくらい大丈夫だから」
藤本がそう言うと、ナツキはその場にしゃがみこんだ。
その視線は、相変わらず藤本の傷にいっている。

やはり、何かがおかしい・・・なんというか、憑きモノが取れたような感じだ。
さっきまでの狂気じみたものも感じられず、ただの少女といった雰囲気。


831 :六部198:2006/11/28(火) 22:05:15.77 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜23

藤本は一気に沸きあがる疑問を押さえ、話を切り出していった。
「まず、お姉さんのこと全然覚えてないの?」
ナツキは無言で頷く。
「今までのことも全部?」
「今まで?」
「そう、電車を降りてからの出来事」
「電車を降りて・・・」
ナツキは首を左右に傾げながら、難しい顔をしている。
「・・・わかんない。それより、どうしてこんなところにいるの?
ナツキはお墓参りに―ッ!」
そこまで言いかけて、ナツキはハッと立ち上がった。
「そうだ、早く行かないと!」
「ちょっと待って!もう少し!」
慌てて再びその場から離れようとするナツキの腕を、藤本が掴む。
「墓参りって本当だったの?」
「本当だよ。ていうか、何で知ってるの?」
ナツキは少し警戒した様子で、さっと身を引いた。
「いや、さっき電車の中で言ってたでしょ」
「???」

「・・・本当に何も覚えていないのか・・・」
「ずっとお墓参りに行けなかったから、今日行こうと思って電車に乗ったの。
そうしているうちに、段々眠くなってきて・・・そして気づいたら、こんなところに・・・」
そう言って俯くナツキを見て、藤本は溜め息を吐いて頭をかきむしった。


832 :六部198:2006/11/28(火) 22:07:15.66 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜24

・・・改めて話を聞いてみると、どうやら彼女の家族に降りかかった不幸は事実で、
常識外れだが本当に墓参りに行こうとしていたということも事実であるらしい。
そういえば、少し前の新聞に彼女が言っていた事件が載っていたような気がする。

そして、今までのことを何も覚えていない。
彼女は100%スタンド使いだ。
だが、自身はそれに気づいておらず、しかもまだ子供なので精神が弱く、
所謂『スタンドに乗っ取られてしまった』状態だったということが考えられる。
おそらく、先の事件で気持ちが弱くなってしまったのも原因の一つなのだろう。

「もう、いい?」
ナツキが藤本の顔を覗き込む。
「・・・」
藤本は無言で数回頷いた。
そんな藤本を見て、ナツキは外へと歩き出す。
そして、出口付近で一度立ち止まって振り返った。
「あ、そうだ、先にママの病院に行こうかな。この駅の近くにあるの」
「おいおい、こんな時間じゃ面会は無理だぜ」
藤本がそう言うと、ナツキは
「大丈夫なのよ、ナツキは特別だから・・・ふふふ」
と言って人差し指を立てた。
「ママもパパとお爺ちゃんに会いたがってるだろうし、連れてってあげよう」
「ああ、そうかい」(無理に決まってんだろ)
藤本は呆れたように言うと、少しだけ笑みをこぼした。
そして最後に、こう付け加えた。
「犯人、早く捕まるといいね」
その言葉に、ナツキは少し寂しそうに頷いた・・・気がした。


833 :六部198:2006/11/28(火) 22:08:54.75 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜25

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・

ナツキの姿はもう無い。
こんなところに一人でいても仕方がない。
ナツキが本当に母が入院している病院に向かったのかそうでないのかは
今更確かめる術はないが、そんなことはもうどうでもよい。
さっさと家に帰ろう。

トイレから出て駅の出口を見ると、駅員がシャッターを閉めようとしている。
「あ、すいませーん!」
藤本は慌てて駅員に声を掛け、閉まりかけのシャッターをくぐって外に出た。

さすがに周辺にはひと気がない。
いるのは酔っ払ってしまった中年の男性が数人。
この人達は明日会社に行けるのだろうか、などと考えながらも、
駅前に停めてあった自転車にまたがってペダルを漕いだ。
「あーあ、かなり遅くなったし怪我してるし、こりゃお母さんから文句どころか説教だな・・・」


834 :六部198:2006/11/28(火) 22:09:51.22 0
銀色の永遠 〜クローリング・イン・ザ・ダーク〜26

無事に家に帰宅した藤本は、母親の説教を受けつつも、
就寝の床に就きつつも考える。
今日の一件・・・ナツキという不幸な少女のこと。
そして、彼女とその家族に降りかかった事件のこと。
これを寺田に報告しようかどうか、藤本は迷っていた。
彼女が言うには、父親は死ぬ前に何かを見ていたようだった。
彼女がスタンド使いであったということは、その血の繋がりのある父もそうであったと考えられる。
だとすると父親が見たのは、幻覚などではなくやはりスタンドで、それに殺害された可能性が濃厚だ。

「・・・まあいいや、よっちゃんさんにだけ報告して後はまかせよう」
演劇部部長の吉澤に報告するということは、結局寺田の耳にも入るわけなのだが、
あまり深く考えるのはやめて布団に包まり瞳を閉じた。

「・・・なんか、結局色んなことが謎のままだったな・・・」
釈然としないものが残るが、そこは藤本美貴。
大して日も経たないうちに忘れてしまうだろう。

実際、この日から一週間も経たないうちに、今日の出来事は
藤本の頭の中から消えてしまうことになる。


藤本美貴 翌日、今日の出来事を吉澤に報告する  
スタンド名:ブギートレイン03 

ナツキと名乗った少女 ???
スタンド名:??? 


842 :六部198:2006/11/29(水) 01:34:54.34 0
銀色の永遠 〜                 〜

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

『S市で一家殺傷』

本日午前9時ごろ、S市の会社員、岡本陽一さん(37)宅で、陽一さん、妻の和美さん(35)、
娘の奈月さん(10)、同居している陽一さんの父、一郎さん(64)が倒れているのを、近所の住人が発見した。
和美さんは一命を取りとめたものの、陽一さん、一郎さんは発見時には既に死亡していた模様。
なお、娘の奈月さんは奇跡的に怪我は無かった。
司法解剖の結果、陽一さん、和美さん、一郎さんは、身体を刃物のようなもので切断された痕があり、
死因は多量の出血による失血死。死亡推定時刻は、同日の午前3時頃とみられる。
現場の状況から、警察は殺人事件と断定し、近所の聞き込みなどを中心に捜査を進めている。

中略

娘の奈月さんに怪我はなかったものの、強いショック状態に陥っており、
和美さんとともに救急車で市内の病院に搬送された。
警察は奈月さんの回復を待ってから、詳しい事情を聴く方針の模様。


843 :六部198:2006/11/29(水) 01:35:28.50 0
銀色の永遠 〜                 〜

『S市一家惨殺事件被害者の少女が失踪』

3ヶ月前に起きたS市一家惨殺事件。そこで奇跡的に無傷で生き残ったNちゃんを覚えているだろうか。
彼女は事件による精神的ショックで市内の病院に入院して、退院後は同市内の
児童保護施設に預けられていたのだが、実は2日前から行方不明になっている
という情報を本誌独自の調査で入手した。

中略

そもそもこの『S市一家惨殺事件』には、いくつか不可解な点がある。
現場があまりにも残酷なので新聞には載っていなかったが、
殺された2人は全員、ほぼ一撃で身体を真っ二つにされている。
運よく生き延びた妻のKさんも、肩からバッサリと斬られて虫の息状態だったとか。
後の調べによると、凶器はノコギリのようなものらしい。
そして、その凶器は未だ発見されておらず、目撃証言もない。
家内には大量の血痕が残されていたが、犯人と思しき足跡が発見されなかった。

中略

それにしても、何故Nちゃんだけ無傷で助かったのか?
彼女は全身血塗れだったらしいが、それは全て家族のものだった。
警察も本人から何かを聴きだそうとしたらしいが、事件の後遺症なのか
彼女は一切口を閉ざしてしまい、何も聞き出せなかったらしい。
そして、今回の失踪・・・謎は深まるばかりである。

・・・「週刊男児」より抜粋。


844 :六部198:2006/11/29(水) 01:36:12.72 0
銀色の永遠 〜                 〜

『S市一家惨殺事件の家族の意外な疑惑』

あまり故人を悪くは言いたくないが、生き残りのNちゃんは家族から
虐待を受けていたという疑惑がある。
夜に大きな怒鳴り声とNちゃんの泣き声らしきものを、近所の住人が度々耳にしていたらしい。
また、早朝に一人で泣きながら玄関に立たっていた、という目撃証言もある。
もしかするとNちゃんの失踪は、いつか退院するであろう母親から逃れるためだったのかもしれない。

・・・「週刊男児」より抜粋。


『夜中の病院内で殺人』

本日午前7時ごろ、S市の病院で入院している患者が、何者かに殺害されている、
と同病院の看護師から警察に通報があった。
調べによると、亡くなったのは市内在住で、同病院に入院中の岡本和美さん(35)
遺体は大型の刃物のような物で切断されており、司法解剖の結果、
推定死亡時刻は同日午前1時ごろで、ほぼ即死であった模様。
死亡した和美さんは、先に発生したS市一家殺傷事件の被害者であり、
先の事件と今回の手口が似ている事から、同一の犯人によるものと警察は断定し、
連続殺人事件として捜査を続けている。

なお、和美さんの娘で、現在行方不明中の奈月さん(10)も見つかっておらず、
事件の真相解明は難航の装いをみせている。

・・・「S新聞」より。


845 :六部198:2006/11/29(水) 01:37:20.67 0
銀色の永遠 〜                 〜


『パパには見えていたのね。家の中でじっとこちらを見ているんだって』


『そう、とっても怖いの。冷たくて真っ黒で大きくて怖いモノなのよ』


『ふふふ・・・お姉ちゃんにも見えるのね』


『・・・どうして?どうしてみんなナツキを虐めるの?ヒドイことするの?』


『ママもパパとお爺ちゃんに会いたがってるだろうし、連れてってあげよう』




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・


TO BE CONTINUED…