105 :六部198:2006/03/15(水) 00:24:17.98 0
銀色の永遠 〜リロード〜1

〜ぶどうヶ丘公園〜

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・

月に照らされた男女が向かい合っている。
しかし、どう見ても良い雰囲気とはいえないものであった。

「・・・ずっとここまで尾けてきたんですか、なにか用でも?」
女が男に問いかける。
その口調には、明らかに警戒感がにじみ出ている。
「なあ、もう一度考え直してくれへんか?」
男はそう言いながら、こちらに一歩近づいた。

「あなたのやり方は間違ってる!私はもう協力する気はありません!」
女が一歩後ろに退き、強い口調で拒絶した。
が、男はかまわず足を進める。
「それ以上近づけば、あなたでも容赦はしませんよ!」

バシュウゥウゥゥッッ!!!

女の後ろに、人型のヴィジョンが浮かぶ。
そう、スタンドと呼ばれるモノだ。

「そんなおっかないモン出さんでくれや・・・」
男は足を止めると、掌を前に出しておどけて笑ってみせた。

しかし、女は警戒を解かない。
これがこの男のやり口だと知っているからだ。
その証拠に、その目には獲物を狙う鮫のような、冷酷な輝きを放っている。
こちらの隙を窺っているのがわかる。


106 :六部198:2006/03/15(水) 00:25:18.09 0
銀色の永遠 〜リロード〜2

「もう一度だけ言うで・・・俺のところに戻って来い・・・お前には、また頑張って欲しいねん・・・
春に新しく入ったヤツがおってな、こいつがまたじゃじゃ馬でな。お前によう似てるわ。
ソイツをキッチリ教育して欲しいねん」
男の表情が真剣なものに変わる。
それと同時に、その場の空気が一気に冷えて張り詰める。

女は男の目を見据え、だまって首を横に振る。

それを見た男は、溜め息交じりにこう言った。
「・・・そうか・・・なら仕方ないな・・・お前はもう賞味期限切れやな…こうなってしまっては…」


   死 ぬ し か な い な !! 中 澤 裕 子  ッ !!!!!  


男の背後に目がチカチカするような装飾のスタンドが現れた!
「お前は俺の信頼を裏切ったんや・・・しかもこれで二度目や!
これは許されへんわなぁ・・・」
そう言ってスタンドを構える。
「ええ、許されるとは思っていません」
女・・・いや、中澤裕子もスタンドを構える。
そして、独り言のようにこう続けた。
「お互いに・・・」

「??何か言うたか?」
「・・・いえ・・・私がおとなしくやられると思わんといてくださいよ」
「フッ・・・そやろな・・・だが、お前は今ここで俺に始末されるんや・・・」


107 :六部198:2006/03/15(水) 00:26:41.18 0
銀色の永遠 〜リロード〜3

ヒュオオオォォォォォォ・・・・・・

秋の冷たい風が吹き、月が雲に隠れると
闇が辺りを覆った。

そして、それを合図に中澤が先に動く。

ドッギャアアアアアァァァァァーーー!!!

(先手必勝や!一発でしとめたるッ!!)
中澤は一気に間合いを詰めて突進した!

しかし男は構えたまま動かないッ!
「ふふふ・・・アカンなぁ、猪突猛進はアカンでぇ・・・」
「いくらスピードがあろうと、真っ直ぐに来られたんじゃあ
動きが丸わかりやないかッ!!」
そう言うと男のスタンドが腰を落とし、目の前に迫った中澤のスタンド
『ワイフ・オブ・クロウ』目掛けて正拳突きを繰り出した。
男がニヤリと笑う。

しかしその瞬間ッ!

ブワアアァッッ!!

正拳が当たる直前、ワイフ・オブ・クロウは待っていたように
彼のスタンドの腕を掴み、そのままそれを軸にして回転するようにジャンプして彼の後ろに回ったのだ!
「何やとぉッ!!?」
「これで終いやぁッ!!」
ワイフ・オブ・クロウは反転し、自身の拳を男の後頭部目掛けて放った。


108 :六部198:2006/03/15(水) 00:27:45.91 0
銀色の永遠 〜リロード〜4

男は防御姿勢を取るべく、こちらを振り返ろうとする!
「振り返る暇は与えないッ!!これで全てぇッ!!!」


ブウゥゥンンンン!!!


「・・・えッ・・・?????」

ワイフ・オブ・クロウの拳は、むなしく空を切った。
「かわした?いや・・・」

ヒュオオオオオオオオォォォォォォォォ・・・・・・

再び風が吹き、月明かりが辺りを照らす。
「・・・消えた・・・」
見回しても男の姿は無かった・・・そう、忽然と消えたのであった・・・


シイイイィィィィィンンンンンンンンンンンンン・・・・・・・・・・・・・・


中澤は今起こったことが理解できずに、
独り呆然と立ち尽くしてしまった。

「そんな・・・ありえへん・・・」

・・・・・・パチ・・・パチパチ・・・パチパチパチパチパチパチパチ・・・

突然、後ろから手を叩く音がした。


109 :六部198:2006/03/15(水) 00:29:29.55 0
銀色の永遠 〜リロード〜5

振り返ってみると10メートルほど先に、消えたはずの男が立っていた。

「やるやないか・・・一瞬冷や汗かいたで・・・ケツの穴につららを突っ込まれた気分やったわ。
お前の直撃を喰らったら、ひとたまりも無いからな」
そう言って、自分の額を拭う仕草をした。
「ッ!!今までどこにッ?!」
「そんなことはどうでもええねん」
男はスタンドを従えたまま、両手を広げながら中澤にゆっくりと近づく。
「来るなッ!!」
そのようなことを言っても聞く相手ではないことはわかっていたのだが、
思わずそんなことを口走ってしまった。
中澤は、彼のその威圧感に不覚にも恐怖してしまったことを恥じた。

「そんなこと言わんとってや。長い間部に尽くしてくれたお前の、『最後の』顔を俺に見せてぇな・・・」
寺田は少し悲しそうな顔をしたが、その口調は軽い調子であった。
(『最後の』・・・か・・・)
中澤は、この男の殺意を改めて受け止めた。

フッ・・・

「ッ?!」

男の姿が再び消える。
そして・・・


153 :六部198:2006/03/16(木) 00:44:14.02 0
銀色の永遠 〜リロード〜6

「ここやで、中澤・・・」

「!!!!!!」
その声に気づいたときには遅かった・・・
すぐ目の前に男のスタンドの拳が迫っている。

「BYEBYEありがとうさよなら・・・」

その言葉を最後に、目の前が真っ暗になる・・・

・・・寺田先生・・・昔は優しくて、いい人だったのに・・・
・・・そんなことで、本当にこの町が・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



「・・・今の手ごたえ・・・アカン・・・失敗や・・・」
そう言って男は舌打ちをした。
「まずったなぁ・・・どないしよ・・・」
男は頭を掻きながら、その場を後にした・・・


154 :六部198:2006/03/16(木) 00:45:41.40 0
銀色の永遠 〜リロード〜7

〜???〜

・・・・・
・・


ハッッッッッッ!!!!!!!

気が付くと、中澤はベッドの上に寝かされていた。
「ここは・・・?」
身体を起こし、周囲を見回す。
ベッドの周りには、見知らぬ計器類が整然と並べてあり、
左腕には点滴の針が取り付けられている。
どうやらここは、病室のようだ。

しかし、状況は理解できたが、
何故自分がこんなところにいるのかが分からない・・・

思案に暮れていると、ふいにドアをノックする音が聞こえた。
返事をすると、一人の看護婦が入ってきた。
胸のプレートには『島田』と書いてある。
「気が付かれたんですね」
島田看護婦はそう言いながら、病室のカーテンを開けた。
室内に光があふれ、中澤は眩しくなり目の前に手をかざす。
「あの・・・」
「あ、ちょっと待っててくださいね、先生呼んできますから」
島田看護婦は中澤の言葉を遮るように言うと、そそくさと病室から出て行ってしまった。

「・・・なんやっちゅうねん。人の話聞けや・・・」
中澤は悪態をついたが、どうしようもないのでそのまま一人で待つことにした。


155 :六部198:2006/03/16(木) 00:47:23.20 0
銀色の永遠 〜リロード〜8

しばらくすると、島田看護婦と、医者らしき初老の男がやってきた。

「どうですか、ご気分のほうは?ちょっと失礼しますよ」
医者はベッドの横の椅子に座ると、聴診器を取り出して
中澤の胸に当てた。
「あの・・・ここはどこですか?それに、どうして・・・?」
中澤は今までの経緯を医者に尋ねた。

医者と看護婦の話をまとめると、こうだった。
昨晩、『駅近くの住宅地』に倒れている中澤を通行人が発見。
意識がなかったので、救急車によってここ、ぶどうヶ丘病院に搬送されて来た。
頭部を強く打った形跡があったものの、心音、脈拍、共に正常であり、
大事には至っていなかった。
ただ、多少衰弱していたので栄養剤による点滴を施してある。

ということだった。


156 :六部198:2006/03/16(木) 00:49:21.16 0
銀色の永遠 〜リロード〜9

〜ぶどうヶ丘病院前〜

病院を出た中澤は、会社に電話をかけた。
医者にはもう一日様子を見ておくように勧められたが、
病院が嫌いな中澤は、その日のうちに退院することにしたのである。
だが、大事をとって一応今日は会社を休むことにした。
どっちにしろ、もうすでに昼を過ぎているので行く気にはなれない。

「はあ・・・どないしよ・・・」
中澤はこれからのことを考え、溜め息をついた。
自分が生きていることを、寺田はすぐに嗅ぎつけるだろう。
彼と完全に決裂してしまったことで、
おそらく刺客が送り込まれてくるだろう。
それがもし、安倍や石川、吉澤・・・それに、後藤真希だったら・・・
自分は彼女等と戦えるのだろうか・・・?

(まあ、そのときはそのときやな。
まずは引越さなあかんか・・・住所われてるやろし)
もうこの町にはいられない・・・
中澤は新しい家を探すべく、S市街の不動産屋に向かった。
「・・・はあ・・・また私は逃げるのか・・・」


157 :六部198:2006/03/16(木) 00:51:35.21 0
銀色の永遠 〜リロード〜10

〜ぶどうヶ丘高校 演劇部 寺田の私室〜

「こんなこと頼めるのはお前だけや・・・」
ぶどうヶ丘高校演劇部顧問、寺田光男は
目の前に立っている少女に言った。。
「はあ・・・」
少女は力なく答え、怪訝そうな表情をしている。

「これ、見てくれや」
寺田先生は、ファイルと一枚の写真を少女に手渡してきた。
「あ・・・この人・・・」
「俺はお前を一番信用してるんや・・・」
そう言って寺田は、少女を見つめる。
その目はいつもの軽薄そうなモノではなく、真剣そのものだった。

少女はしばらく考えこんだ後、軽く頷いた。
「・・・わかりました」
それを聞くと、寺田の表情が明るくなる。
「そうか!頼んだで!」
そして少女の両肩をポンポンと叩いた。

「では・・・」
「あ、ちょっと待ちぃ」
部屋から出ようとする少女を寺田が呼び止める。
「はい?」
「・・・このことは、誰にも言わんとってな。極秘指令や」
「え?・・・あ、はい・・・それでは、失礼します」
「おう・・・」
少女はお辞儀をして、部屋から出た。


158 :六部198:2006/03/16(木) 00:52:42.96 0
銀色の永遠 〜リロード〜11

「先生からの指令、何て?」
部屋から出た少女に、別の少女が声を掛けた。
「ん?あ、愛ちゃん。いや別に・・・」
寺田に内緒にしておいてくれと言われたので、
内容は言えない。
「なんやね、その言い方〜。教えてよ」
愛ちゃんと呼ばれた少女が、頬を膨らましてこちらを睨む。
「そんな顔しても駄目なのだ。これは極秘指令だから」
少女は右手を前に出し、毅然とそれを拒否して部室の扉を開ける。
そして、『愛ちゃん』が何かブツブツ文句を言っているのを背中で聞きながら、
渡された写真とファイルを改めて見た。

彼女はこの写真の人物を知っている。
演劇部を裏から支えたこの人物を。




  指令・・・


  新垣里沙に命ずる。
  手段は問わない、中澤裕子を始末せよ!

  尚、彼女のスタンドは強力だ。
  十分に用心するように。  

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・




215 :六部198:2006/03/17(金) 04:24:01.43 0
銀色の永遠 〜リロード〜12

〜帰り道〜

不動産屋をあらかた見回した中澤は、溜め息混じりに帰宅の路についていた。
つまり、いい部屋は見つからなかったのである。
「はあ〜・・・やっぱすぐにとこは見つからないもんやなあ〜」
そんなことをぶつぶつ言いながら、地元の住宅地の路地に入る。
「住宅地・・・」
その単語に、なにかが引っかかる・・・

(・・・なんで住宅地で倒れてたんや?私が先生・・・
いや、『寺田』と交戦したのは公園やないか。そこまで逃げてきた?)
中澤は首をぶんぶんと横に振り、その考えを否定する。
(アイツがそのまま逃がすわけがない。もし、後ろを向いて逃げたとしても、
きっと平然と背中から私を『刺す』やろ・・・殺ると決めたら殺る人や、あの人は・・・)

夕べのことを思い返す。
その中で一つの場面が浮かび、中澤は足を止めた。


216 :六部198:2006/03/17(金) 04:24:26.61 0
銀色の永遠 〜リロード〜13

その場面とは、あと一歩のところで寺田を仕留め損なった場面であった。
いや、あと一歩どころか、ほぼ到達していた。
なのに、直前でかわされた・・・
いや、消えたのだ・・・目の前で・・・

そして、少し離れた場所で姿を現した。
「瞬間移動・・・」
中澤はそんな言葉を口にする。
(それがあの人の能力・・・?)
殴ったものを一瞬で別の場所に移動させる。
それならば、自分が何故か公園から別の場所に飛ばされてたことも説明がつく。
・・・が、

(違うわ・・・んなわけない。私を始末しようとしてたんやないか!
別の場所に飛ばしたら、『逃げられる』ということやんか!意味が無い!
まあ、結果的に私は逃げられたわけやけど・・・)
中澤は目立った外傷が無かったことにほっとしながら、再び足を進めた。
気が付くと陽が落ち、街灯が薄暗い路地を照らしていた。
(あの人は数秒間、あの場に存在していなかった・・・)
中澤は歩きながら俯き、考え込む。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


217 :六部198:2006/03/17(金) 04:27:29.08 0
銀色の永遠 〜リロード〜14

思えば寺田のスタンドを見たのは初めてだった。
趣味の悪いデザインに光る腕・・・
それは、歪んだ正義を振りかざす悪魔のようだった。
昨日、演劇部の寺田の私室で初めて聞かされた彼の考え・・・
確かにそれは正義かもしれない。
だが、あくまで『寺田にとっての』ものでしかない。

「・・・それじゃあ、傷つくものが多すぎるんちゃいますか?
いや、もう既に傷ついた人が大勢おるわ・・・」
そう呟いて顔を上げると、住宅地の終わりまで来ていた。
遠くに見える空き地を通り過ぎて、角を一つ曲がれば自宅のマンションである。

「・・・」
中澤の表情が変わる。
それは、もうすぐ自宅に着くという安堵のものではなく、
緊張感が漂っている。
誰かが後ろを尾けているのだ。

「・・・」
その気配に注意を払いながら歩き続ける。
視線が背中に絡みつく。
明らかに自分を狙ってる・・・

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・


265 :六部198:2006/03/17(金) 23:29:09.93 0
銀色の永遠 〜リロード〜15

「何モンや・・・」
中澤は立ち止まり、振り返らずに背後の人物に声を掛けた。
「・・・中澤さんですね?」
少しの間のあと、女性の声が返ってきた。
「質問を質問で返すなや。何モンや、って聞いとんねん」
そう言って振り返ると、立っていたのは一人の少女であった。
そして、見覚えのある制服をきている。
「ほう、ぶ高(ぶどうガ丘高校)の生徒か・・・」
「はい、一年の新垣里沙と言います」
少女、新垣里沙が答える。
「・・・演劇部・・・か・・・」
「はい・・・」

中澤は、眉間にしわを寄せて目を閉じた。
この時点で、新垣の目的を察したからだ。
「私を始末しに来た訳やな」
「・・・」
新垣は沈黙でそれを肯定した。
「・・・なるほど・・・ほな、やろか」
中澤は目を開け、観念したように新垣を見据えた。
「ちょっと待ってください」
「は?なんや?」
「ここじゃあ近所の家に被害が出るかもしれません。
あそこへ移動しませんか?」
そう言って新垣は、遠くに見える空き地を指差した。
「フッ・・・」
中澤はニヤリと笑い、それに従った。


266 :六部198:2006/03/17(金) 23:31:31.76 0
銀色の永遠 〜リロード〜16

〜杜王町 中澤宅付近の空き地〜

「ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・・・・・・・!!!!」

新垣に誘われて空き地に入った中澤は、異音に振り返った。
「ッ!!これは・・・?!」
そして異様な光景に目を奪われた。
出入り口が樹木に覆われて、ふさがれているのである。
「これで邪魔者は入れなくなれました」
中澤とは対照的に、新垣は平然としている。
「そうか、あんたの仕業ってわけやな」
「はい、ラブ・シードッ!!」

バシュウウウウウウウンンンッッ!!!!!!!!

新垣の前に茶色い人型のスタンドが姿を現した。

「『ラブ・シード』これが私のスタンド。
植物を生み出し、操ることが出来ます。
ちなみに、まゆげに種を植え込んで、攻撃する『まゆげビーム』というのが・・・」
「ちょちょちょちょちょ・・・!待って!!」
解説する新垣を、中澤が途中で遮った。
「はい?」
「いや、普通そない簡単に自分の能力を明かしたらアカンやろ!」
何を考えてるんだ。と言わんばかりに中澤が声をあげる。
「これがあなたに対する礼儀だからです」
「礼儀・・・?」
中澤は意味がわからずに聞き返した。


267 :六部198:2006/03/17(金) 23:34:49.04 0
銀色の永遠 〜リロード〜17

「私は中澤さんのことを知っている。そのスタンドの能力のことも知っている。
でも、中澤さんは当然、初対面の私のことを知らない」
「まあ、そらそうやな。当たりま・・・」
「それではフェアではないのだ!」
中澤の言葉を今度は新垣が遮り、声を荒げた。
「は、はあ・・・」(のだ?)

「私はずっと演劇部に憧れていたのだ!初等部のころからずっと知っている!」
「ほう、それは随分と長・・・」
「練習風景や舞台裏を覗き見したことなど数知れずなのだ。
そう!まさに『演劇部ヲタ』といっても過言ではないッ!
そこで厳しく、だがしかしその眼差しはあくまで優しい!!
弱気になった先輩達を励まし指導するその姿!
表には決して出ず人目にはつかないが、裏で部を支え続けてきた貴女を私は知っているのだァッ!
私はそれに敬意を隠せない!
だからあえて自分の能力を明かし、対等に勝負を挑むのだあぁぁッッ!!!!!」

ドッギャアアアアアァァァァァァァァァンンンンンンンン!!!!

「はあ・・・はあ・・・」
自分の想いをぶちまけた新垣は、荒い息をつき、膝に手を突いた。
「な、なるほど・・・」
(おいおい、バトル前にバテてんちゃうか?)
中澤は思わず新垣の肩に手をかけようと手を伸ばしたが、
新垣はさらに言葉を続ける。
「それに、スタンドについての指導の功績も大きい・・・
いや、むしろそっちがメインだったらしいですね」
そう言って上目遣いで中澤を見つめた。
その顔は既に、戦士のものになっていた。


268 :六部198:2006/03/17(金) 23:36:24.62 0
銀色の永遠 〜リロード〜18

新垣の闘志を感じた中澤は、彼女と一歩距離をとった。
「そこまで知ってるんかいな」
「まあ、この部分は入部してから石川さんに聞いたんですが」
「あのアホ・・・余計なことを・・・」
中澤が舌打ちをする。
「あ、石川さんを責めないでください。私がしつこく聞いたもんで」
それを聞いた新垣は、すぐさま石川梨華をフォローした。

「そういうことで、正々堂々と貴女を始末させていただきます・・・
出来ればやりたくない仕事ですが、これも寺田先生直々の指令なんで」
そう言って新垣は、『ラブ・シード』を構えた。
「フッ・・・寺田先生の指令は絶対・・・か・・・」

ズズズズズズズズズ・・・・・

中澤も自分のスタンド『ワイフ・オブ・クロウ』を出して、同様に構えた。
全身真っ黒で、手足に白いチューブのようなものが巻きつけられている。
そして、本体同様の鋭い眼光が相手に威圧感を与える。

「不本意な形ではありますが、貴女と闘えることを誇りに思います」
ラブ・シードの両手が光を帯びる。
「スプラッシュ・ビーンズゥゥッッッ(愛の種)!!!」
新垣が叫ぶと、その手から大量の豆が射出された。


402 :六部198:2006/03/20(月) 01:29:35.69 0
銀色の永遠 〜リロード〜19

ドパッパパアアアアアアアッッッ!!!!!!!!

「フンッ!飛び道具・・・近中距離タイプといったところかッ」
中澤は、迫り来る豆を弾きながら新垣へと距離をつめる。
そして、拳を振り上げて新垣の顔面を狙う。
「どうしたッ?!それで終いかッ?!」
「・・・いーや、まだなのだ?」
新垣が不適に笑う。
「何ッ?・・・おわぁぁぁッッ!!!」

ズッテーーーーンンン!!

不意に足元を取られた中澤は、無様に転倒してしまった。
「これは・・・」
足元を見ると、地面からツタのようなものが伸びており、
それが巻きついているのであった。
「言ったはずなのだッ?植物を操るって!種(豆)を蒔けば、そこから新たな命が生まれる!
そしてまだまだ終わりではないのだッ!」
新垣の髪の毛から無数の枝が出現し、それが中澤を狙って伸びだした。

「ッ!!」

「おおおおおらららららおらおらおらおらおらおらおらおらあぁぁぁぁぁ!!!!」

バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ!!!!!

中澤は、自分のスタンド『ワイフ・オブ・クロウ』のラッシュで
その枝をへし折り、なんとか攻撃をかわす。


403 :六部198:2006/03/20(月) 01:32:52.52 0
銀色の永遠 〜リロード〜20

枝を折って攻撃をしのいでいるその間に、中澤は足に絡まったツタを無理やり引きちぎって
身体を回転させ、その場を離れた。
・・・が・・・

バチィンッ!!

再び身動きが取れなくなってしまった。
「おおぉぉぉぉ!!これはぁッ!!」
ハエトリグサのような、巨大な食虫植物らしきものに身体をはさまれている。
しかし腕を伸ばしていた状態だったので、幸運にも両腕の自由は利く状態であった。
その両腕で、葉っぱを引き剥がす。
「隙だらけなのだッ!!」
その声の方向を向くと、ラブ・シードの蹴りがすぐ側まで迫っていた。
(しもた!間に合わんんんんん!!!)

ドッバアアアァァァッッ!!

「ぐはぁッ!」
直撃を喰らう中澤。
しかし、その衝撃で拘束から脱することが出来た。
そして、その場で身体のバネを使って起き上がり反撃を加えようとするが・・・
「おまけなのだ」

ズブゥッ・・・!

「なあぁック・・・!」
新垣の鋭い枝が右肩に刺さり、反撃のチャンスを潰されてしまう。
その隙に彼女は、サッと身を引き距離を取った。
「・・・」


404 :六部198:2006/03/20(月) 01:34:32.21 0
銀色の永遠 〜リロード〜21

「・・・一本取られたわけやな・・・」
中澤が口を開く。
「どうでしょうか・・・夢中でやっただけなので」
新垣はそれを肯定も否定もせずに答えた。
驕るわけでも謙遜でもなく、素直にそう思ったからだ。
その態度はいたって冷静で、口調も丁寧なものに戻っている。

中澤が間合いを詰めようとすると、新垣はそれに合わせて距離をあける。
二人の距離を、5メートルギリギリを保っていた。
(チッ・・・)
心の中で舌打ちをする。
(思えばこの地形・・・植物を操るあの子に思いっきり有利やな。
まさか、誘い込まれたんか?近所に被害が出るといったのは方便ってことか?
それなら一本どころか、二本も三本も取られたわけやな・・・
寺田のときといい、この私がこうも簡単に策にはまるとは・・・まったく・・・)
中澤は苦虫を噛み潰したような表情で
自らの軽率を恥じ、もう一度舌打ちをした。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・


405 :六部198:2006/03/20(月) 01:35:51.52 0
銀色の永遠 〜リロード〜22

膠着状態から先に動いたのは新垣のほうだった。
「スプラッシュ・ビィィィィンズ!!!」
再び豆を中澤に向かって射出する。
同時に地面にも豆を蒔く。
さきほど同様、『何か』を生み出すつもりであろう。

それに合わせて中澤も動く。
「うおおおおおりゃああああ!!!!」
豆を少し喰らってしまったが、それに構わず新垣に向かって突進する。

「貫かれるがいいッ!中澤裕子ッ!!」
新垣がこちらを指差して叫ぶと、前方から何かが中澤に向かって伸びてきた。
『竹』である。
それはまるで槍の様に鋭くこちらを突いてくる。
そして背後からは、ツタが足元を狙って素早く伸びてきていた。
「おらおらおらおらおらおらおらおらあああぁぁぁぁ!!!!!!」
中澤はまず、大ダメージを受ける可能性のある竹槍を先に破壊した。
しかし、またもツタに絡まれて足元が不自由になってしまう。
「ああぁーッ!いまいましいッ!!」
中澤はそう吐き捨てると、絡まったツタを引きちぎる。
「あまり生き物を虐めてはいけないのだッ!」
新垣がこちらに向かってくる。
「アンタがそうさせてんのやろがッ!ボケッ!」
中澤が新垣を睨む。
「むむッ・・・そんなこと言う子には、お仕置きなのだ!!」

バアアアアアアアァッッ!!

中澤は思わずギョッとし、目を疑った。
新垣の身体からいくつもの緑色の『針』のようなものが飛び出してきたからだ。


406 :六部198:2006/03/20(月) 01:38:21.35 0
銀色の永遠 〜リロード〜23

『針』いや、よく見るとそれは松の葉に似ていた。
そして手のひらや、顔からは針が出ていないことから、
おそらく制服に種を仕込んで、葉の部分だけを表面に出したのであろう。
「ぎゅううううっ〜〜〜〜と抱きしめるウゥゥゥゥウウウゥウゥ
抱きしめのお仕置きなのだああぁぁああぁぁアアァ!!!」

ギャーーースッ!!!

「チッ・・・」
中澤は舌打ちをして、迫る新垣の攻撃をあっさりかわす。
「何トロくさいことやってんねん!
しかもたかが葉っぱに刺さるのが怖くて、スタンド使いやってんちゃうわああぁ!!」
そう言い放って、針状の葉に構わず無防備になったその背中に蹴りを放った。

しかし新垣は、すかさず振り返ってこちらに両手をかざす。
「ッ!!スプラッシュ・ビーンズッ(愛の種)!!」

ズキュウン!
   ズキュウン!!
      ズキュウン!!!

「さっきからチマチマとッ!そんなん喰らったところで大したダメージにもならんッ!
ったく・・・うっおとしいんじゃ!!!」

バキィィィッ!!!!

「くうぅッ・・・」
新垣は軽く呻いて、蹴りの衝撃で後方へ吹っ飛んだ。


407 :六部198:2006/03/20(月) 01:39:03.46 0
銀色の永遠 〜リロード〜24

だが!中澤は、たった一発で新垣が地面に倒れることを許さないッ!
そのまま追撃の手を緩めることはないッ!

「ゴルアぁッ!!」

新垣が吹っ飛ぶスピードより速く後ろに回り、
下からすくい上げるようなパンチで、強制的に身体を起こさせた。

「うおおおぉッッッ??!!!」

そして再び正面に回って、勢いよく前のめりになった新垣にラッシュを浴びせる。

「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおら
おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらお
らおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおら
おらおらおらおらおらおらああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

「ぐあああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!」

ドガグアクシャルアバババババボルボルボルボルボル!!!!!!


408 :六部198:2006/03/20(月) 01:39:38.75 0
銀色の永遠 〜リロード〜25

中澤のラッシュは止まらない!
しかも所々で後ろにも回り、倒れないように上下左右から拳撃を浴びせ続ける。

(こッ・・・このままでは・・・
ディ・モールトに(非常に)まずいのだ・・・早くここから『脱出』しなければ・・・)
新垣は、その凶猛な嵐の中で気を失いそうになりながらも、必死に打開策を講じる。

(今はこれしかッ!)

「・・・必殺・眉毛ビィィィィムゥゥゥゥゥゥゥゥl!!!!!!!!」

彼女の眉毛に植え込んだ種が爆発的に成長し、その鋭い枝が中澤を襲う!!!

ドリュリュリュリュリュリュリュリュリュリューン!!!!!


中澤の攻撃が止む。
しかし・・・


409 :六部198:2006/03/20(月) 01:40:21.72 0
銀色の永遠 〜リロード〜26

!!!!!!!!!!!!!!!!!

「何ィ?!!」
新垣は目の前の光景が信じられなかった。
顔面に眉毛ビームを打ち込まれながらも、それに構わずこちらに迫る中澤がいたのだ。
顔をひねり、目などへ直撃はかわしているが、右半分にはたくさんの枝が突き刺さっている。
「こ・・・この程度でええええええぇぇぇえええぇぇぇえぇぇぇ!!!!!」
中澤の獣のような咆哮が辺りこだまする。

バッキャーーーーンッ!!!!!

中澤の渾身の一撃が、新垣を捉えた!
「ぐはあああッッッッ!!!」
新垣が吹っ飛ぶ。。
そして、先ほど同様に追撃が加えられようとしていた。
「ゲホッ・・・このままでは・・・スプラッシュ・ビーンズ!!」

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・!!!!

新垣の下から樹木が大量に生えだし、そのまま重なりながら彼女を上へと押し上げた。

「逃げんなやこらぁ!!」
下のほうで中澤の叫び声がする。
「ハア・・・ハア・・・ひとまず逃げ切ることが・・・うおぉッ?!」
安心したのもつかの間、大きな衝撃が走り、新垣の身体を大きく揺さぶった。

ドオオォォォォンンンンン!!!!


410 :六部198:2006/03/20(月) 01:41:43.72 0
銀色の永遠 〜リロード〜27

メキメキメキメキメキメキメキメキ・・・・

鈍い音を立てながら景色が斜めになっていく。
新垣を支えていた樹木を、中澤が破壊したのだ。
「うわあああああ!!!」
その叫びと共に、そのまま宙に投げ出されて地面へと落下していった。

「待ってたでぇ!!」
下で待ち構えていた中澤が、空中で自由の利かない新垣を掴み
彼女をぶん投げた。

ドサアアァァァ!!!

「がはぁッ・・・!」
地面に叩きつけられた衝撃で息が詰まる。
しかし、苦しんでいる暇も与えられないと言わんばかりに。
中澤がこちらに突進してくるのが見えた。
「おらあぁッ!!」
「くそッ!ラブ・シィィィードッ!!」

新垣はとっさに制服の袖に埋め込んだツタで、ワイフ・オブ・クロウの腕を絡めとった。
そして、身体を回転させてパンチをかわし、
彼女の勢いも利用しながらジャイアント・スイングの要領でぶん投げる。
「どおおぉぉぉぉりゃあああぁぁぁあっぁぁぁ!!!!」
「おわあああぁぁぁぁぁっぁぁ!!!」
中澤はスタンドと共に吹っ飛ばされ、塀に激突した。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・・・・・


459 :六部198:2006/03/21(火) 02:47:40.90 0
銀色の永遠 〜リロード〜28

ハア・・・ハア・・・ハア・・・

二人は共に荒い息を吐き、地面に倒れこんだ。

「・・・なんてパワーだ・・・しかもあまりにもクレイジーなのだ・・・」
新垣は驚愕と賞賛を混じえて中澤に言った。
「まるで『もっさん』のよう・・・いや、それ以上なのだ・・・」
「もっ・・・さん・・・?なんやそれ?何か昨日も部室でそんなこと聞いたような・・・」
中澤は立ち上がり、塀にもたれながら『もっさん』の意味を尋ねる。
長いラッシュと、投げられたときに受身を取れなかったダメージで、かなり苦しそうであった。
「・・・え?昨日部室にいたんですか?」
新垣が驚いたように言う。
「ああ、ちょっとな・・・そういやアンタもおったな。
チラッと見えただけなんで気づかへんかったわ」
「なんてことなのだ・・・せっかくおしゃべりするチャンスがあったのに・・・」
新垣は悔しそうに地面を叩いた。
「ま、まあ・・・それはそうと、『もっさん』ってなんやねん?」
中澤は「この状況でよくそんなこと言えるな」と思いながら、もう一度意味を聞きなおす。
「あ、すいません。今年新しく入った後輩です。まあ、学年は上なんですが」

(寺田が言ってたのは、その子のことか・・・)
「ふ〜ん・・・まあ、ええわ。さて、それより・・・そろそろ決着をつけなあかんな・・・
残念ながら仲良くおしゃべりは出来そうにないわ」
中澤はふらふらと新垣の方へと歩き出した。
「うぅ・・・」
新垣が呻く。
立ち上がろうとするも、ダメージが思ったよりも大きく足に力が入らない。


460 :六部198:2006/03/21(火) 02:48:42.68 0
銀色の永遠 〜リロード〜29

「降参しいな・・・」
中澤は、新垣を見下ろしながら静かに言った。
「・・・それは出来ないのだ・・・」
「私は寺田に協力することはないが、『今は』別に邪魔をするつもりもあらへん。
出口を開けてくれや・・・もうアンタはろくに戦える状態やない」
「そ、そんなことは無いのだ・・・負るのは貴女だ・・・」
「そうか、なら徹底的にアンタを叩き潰すだけやな」

中澤が少しづつ新垣に近づく。
すると、新垣はそれを制するように手をかざした。
「・・・そら、なんのマネや?」
「・・・福は内・・・なのだ」


461 :六部198:2006/03/21(火) 02:49:43.31 0
銀色の永遠 〜リロード〜30

「はあ?福は内?脳ミソがクソになったんかいな?」
中澤は呆れたように顔をしかめた。
「貴女の体内には、既にいくつもの種が埋もれているはずなのだ」
新垣が不適に笑う。
「なんやと?」
中澤は自分の身体を見る。
そして、さきほどから豆をいくつか喰らっていたのを思い返した
「なるほどな、ただ闇雲に撃っていたワケちゃう・・・ってことか」

「降参するのは貴女のほうなのだ。そうすれば再起不能ということでかたずける。
さもなくば、仕込んだ種を発芽させて貴女の身体を突き破らせる
もしかすると貴女の心臓や頭にも入っているかもしれない・・・のだ・・・」
そう言って新垣はラブ・シードを構えた。
「脅しになってへんで?」
「脅しではない・・・本気なのだ」
「ほ〜う・・・」
中澤は構わずに新垣に近づく。そして射程距離に入った。
「や、やめるのだッ!・・・むむッ、やむをえん!ラブ・シード!発芽させろ!!」
新垣が叫ぶと、中澤の全身から様々な植物が飛び出した!

ズヌヲォォォオオオオオオォォォォ・・・
バリバリバリ…ドッパアアアアアアアァァァァ!!


462 :六部198:2006/03/21(火) 02:50:20.45 0
銀色の永遠 〜リロード〜31

「ば・・・馬鹿な・・・!!」
新垣は信じられないと言った顔をする。
中澤は植物に侵食されながらも、平然とこちらに向かってくる。
そして、あっというまに首をつかまれ、地面に押し付けられた。
「ぐはッ・・・!」
「ふん・・・どうやら心臓や頭には入っていなかったようやな」
中澤は一度顔を横にやり、こみ上げてきた血を地面に吐き捨てる。
「そんな・・・だとしても、その痛みに耐えられる訳・・・ハッ!」
そこまで言いかけて、新垣は寺田に渡されたファイルにあった中澤裕子の能力を思い出した。
「ご明察・・・『Do my Best』痛みを打ち消す能力や・・・まあ、後が怖いねんけどな・・・使わせてもらったわ」
中澤・・・というより『中澤っぽい植物』がニヤリと笑った。

「さて・・・効果が切れないうちに、もう一回言うで。
出口を塞いでる木をどけてくれへんか・・・」
「くっ・・・だから、それは断ると言ったはず・・・」

バギィッ!!!!!

「ぐああああああああああ!!!!!!!!!!」
横腹を踏みつけられ、異音と共に新垣の悲鳴が響く。


463 :六部198:2006/03/21(火) 02:51:28.45 0
銀色の永遠 〜リロード〜32

「おっとぉ、今の音・・・アバラが何本かイッタか?」
中澤は大げさに耳に手を当てながら、首を傾げた。

「ええか?脅すんなら・・・まずこうやって、相手を痛めつけて恐怖を叩き込むんや。
アンタも下手な口上述べるより、種を発芽させればよかったんや。
そして確実に心臓や頭に埋め込むべきやった。しかも一瞬躊躇したな、
それを考えればアンタは『イイ奴』かもしれん・・・だが、それは甘いねん」
中澤は、まるで教え子に諭すように優しく言った。
そして一旦間をおき、冷徹な目でこう続ける。
「あんまり年寄りに無理させんでくれや。ええか、コレが最後や・・・」


    「   出   口   を   開   け   ろ   」


新垣を押さえつける力が次第に強くなる。
首の骨がきしむ感触が、スタンドを通して伝わってくるのがわかった。


464 :六部198:2006/03/21(火) 02:53:22.43 0
銀色の永遠 〜リロード〜33

首を締め付けられながらも、新垣は無言の抵抗を続ける。
中澤はその根性に、少なからず敬意を感じていた。
「寺田の指令が失敗するのが怖いんか?平気や、あの人は身内には意外と寛容やからな。
これくらいじゃ、大して咎めんやろ。私もこれでしばらく再起不能やろし」
そう言いながら、中澤は心の中でカウントダウンを開始する。

5秒数え終わったら、新垣の首をへし折るつもりであった。
あえて口に出さないのは、相手に『5秒間も』形勢逆転の機会を与えることになるのを知られてしまうからだ。
そして樹木が消えなくても、破壊して脱出すればいいだけのことだ。
(4・・・3・・・)
「雪辱の機会はまたあるはずや、失敗も糧やろ。
このまま死ねば、アンタはその時点で終わりや」

(・・・1・・・)

ズズズズズズズズズズズズズズズズ・・・・

出口を塞いでいた樹木が、まるでVTRを逆再生させたように萎んでいく。
それと同時に中澤を覆っていた枝やツルなども姿を消し、
足元にポロポロと種が落ちていった。
新垣が能力を解除したのだろう。

「ゲホッ・・・ゲホッ・・・」
中澤から解放された新垣は、何度も咳き込みむせ返った。
「それでええ・・・ほな」
中澤は心の中でほっとしながらも、
それを悟られないように背を向けた。


465 :六部198:2006/03/21(火) 02:56:15.25 0
銀色の永遠 〜リロード〜34

「待ってください!一つ聞きたいことが!!」
立ち去ろうとする中澤を新垣が呼び止めた。
「あぁ?」
中澤は面倒くさそうに振り返る。
「あの・・・中澤さんは、どうして部を辞めたんですか?」
新垣は、ずっと気になっていたことを中澤にぶつけた。
「・・・さあね・・・寺田先生が信じられへんようになったからかな?」
(そして昨日、はっきりした。私はあの人の『正義』に同調することは出来ない・・・)

「・・・」
新垣はその場で俯き、考える。

部創立当時から付き従ってきた人が、そんな考えになってしまうようなことがあったのだろうか?
もしかすると、自分もそうなってしまう日が来てしまうのだろうか?
・・・いや、それはあくまで中澤裕子の判断だ。
自分は自分、それだけのことだ・・・
そして今日の屈辱をバネに、もっと強くなることを強く誓った。

そうしているうちに、中澤は再び新垣に背を向けて歩き出した。
「・・・また会うことになるかもしれへんな。そのときは多分・・・
いや、また敵同士やろな。ほな、さいなら」
そう言って中澤は、新垣に背を向けて手を振る。
新垣は、その背中を黙って見送った。

バアアアアアアァァァァァァァァァァァァ・・・・・・・・


531 :六部198:2006/03/22(水) 01:59:01.53 0
銀色の永遠 〜リロード〜35

中澤は歩きながら、再び寺田のスタンドのことについて考えていた。
(あれは瞬間移動ではない・・・確かに寺田自身も、一瞬で別の場所に移動しとったが、タイムラ

グがあった。
数秒間消えてた・・・消える・・・?・・・まさか・・・あーいや、でも・・・)
頭の中でいくつモノ仮説が浮かんでは消え、その度に頭を振る。
「あーもう!!わけわからん!!・・・ウッ・・・?!!」
空にイライラをぶつけた瞬間、中澤の身体に異変が起こる。

「痛ったあああぁぁぁあぁぁぁ!!!!!」
『Do my Best』の効果が切れたのだ。
凄まじい激痛に耐えかね、地面を転げまわった。

「おおおぉぉぉぉぉぉ・・・・・・・はあ・・・はあ・・・家は目の前だってのに、ちくしょー・

・・」
マンションは目の前にそびえたっている。
しかし、立ち上がることすらできない。
そのことが、さらにイライラと痛みを増幅させる。

そのときであった・・・

「・・・裕ちゃん・・・?」

誰かが自分を呼んでいる。
しかも、この声は聞き覚えがある。
「ご、後藤・・・」
見るとそれは、紛れも無く『後藤真希』であった。
(ま、まさか・・・この子も・・・?)
鼓動が次第に激しくなっていく。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・


532 :六部198:2006/03/22(水) 02:02:14.53 0
銀色の永遠 〜リロード〜36

〜中澤のマンション前〜

中澤は後藤を見たまま、動けなかった。
この状態で彼女と戦うことなどできるわけが無い。
(まずい・・・絶体絶命や・・・)
中澤は観念したように目を閉じた。

「ちょっと!裕ちゃん!どうしたぽ?その傷!!」
身体を揺さぶられ、中澤は目を開ける。
後藤が心配そうにこちらを見つめていた。
「へっ?あんた・・・刺客やないのか?」
「はあ?!四角?なに言ってんの?なんで図形が出てくんの?!」
意味のわからないことを言う中澤に、後藤はさらに意味のわからない言葉で返した。

「???」
よく見ると、後藤はスウェット姿で両手にレジ袋を持っており、
とても刺客とはいえない格好であった。
「・・・とりあえず敵やないんやな・・・はあ、よかった・・・」
中澤は安堵の息をつく。
「あたりまえじゃん!んで、何があったぽ?」
「あ・・・そのまえに、出来ればここの3階まで連れてってくれへんかな?」
そう言って中澤は、マンションの入り口を指差した。
「んあ。ここ、裕ちゃん家だったんだ・・・」

後藤は中澤の肩を担ぎ、そのままマンション内へと入っていった。
「スマン・・・助かるわ・・・」


533 :六部198:2006/03/22(水) 02:03:29.50 0
銀色の永遠 〜リロード〜37

〜中澤の部屋〜

部屋に入った中澤はベッドに寝かされた。
後藤が心配そうに彼女を見つめている。
「救急車呼ばなくて本当に平気なの?」
そう言って、レジ袋の中からペットボトルのお茶を差し出した。
「ん、ありがとな。まあ、後で呼ぶことになると思うけど。
とりあえず、家に帰っときたかったんや」
中澤は差し出されたお茶を一気に飲み干した。
「んで、何があったぽ?」
後藤はただ事ではないことを察しながらも、中澤の身に何が起きたのかを尋ねた。
「ああ・・・実はな・・・」

・・・・・
・・・


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・

「・・・寺田・・・なんてやつだぽ・・・」
後藤の身体から怒りの感情が湧き上がり、室内に不穏な風が巻き起こる。
「落ち着けや!それより、ええんのんか?私とこんなところにおって」
中澤は部を抜けて、しかも寺田の放った刺客を叩きのめした。
完全に部を裏切ったことになった自分と一緒にいる後藤の身を案じていた。
それを受けて、後藤はわれに返る。
「あ・・・裕ちゃん知らなかったんだっけ?
実はごとー、部はとっくに辞めてんだよね」
「・・・ええッ?!いつ?!」
意外な言葉に中澤は思わず、大きな声をあげた。


534 :六部198:2006/03/22(水) 02:06:50.90 0
銀色の永遠 〜リロード〜38

「いや、いつって。去年のことだぽ」
「そんなん聞いてへんかったわ〜」
「そりゃそうだよ!裕ちゃん、いきなり部を辞めてから音信不通になるし」
後藤が顔をふくれさせて中澤を睨む。
「あ・・・いや、あの後すぐ実家に帰っとってな、連絡できへんかったのは悪いとおもっとる」
中澤は「ばつ」が悪そうに俯いた。
「ふ〜ん・・・まあ、でもなんでまたここに?」
「んで、就職したんやけど、何故かS市に配属になってな。
やっぱここに引き付けられてしまうんかな・・・」
そう言って中澤は、窓を見て遠い目をした。

「んで、あんたはなんで辞めたん?」
今度は中澤が質問した。
すると後藤は、暗い顔をして俯いてしまった。
「あ、スマン・・・やっぱ、『あのこと』・・・か・・・?」
後藤は黙って頷く。
中澤は質問したことを少し後悔した。

『あのこと』・・・小室学園との抗争。
かくいう自分も、そのことが寺田と自分に対する疑問の発端であった。
中澤は今でも当時の惨状を鮮明に思い出せる。
(あの事件でみんなが傷ついた。特にこの子は、市井の件であまりにも・・・)
二人の間に重苦しい空気が流れる。


535 :六部198:2006/03/22(水) 02:08:39.40 0
銀色の永遠 〜リロード〜39

「う・・・う〜ん・・・」
沈黙を破り、中澤が苦しそうに呻いた。
やはり新垣戦のダメージは大きいようだ。(当たり前なのだが・・・)
「ちょっと、裕ちゃん!」
後藤が慌てて中澤の側に駆け寄る。
「ゴメン・・・ごっちゃん。や、やっぱ救急車呼んでくれへんかな?」
意識が朦朧としながら、後藤に手配を頼んだ。
後藤は取り乱しながら119をコールし、なにやら喚いている。
(ま、まずい・・・これは・・・)

中澤は薄れ行く意識の中で、サイレンの音が近づいてくるのを感じながら。
そのまま、眠りに身を委ねた。

・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
・・



536 :六部198:2006/03/22(水) 02:10:10.90 0
銀色の永遠 〜リロード〜40

次の日・・・

〜ぶどうヶ丘病院 615号室〜

「ハッッッッッッ!!!!!!!」

気が付くと、中澤はベッドの上に寝かされていた。
「ここは・・・?」
首を使って周囲を見回す。
ベッドの周りには、見知らぬ計器類が整然と並べてあり、
左腕には点滴の針が取り付けられている。
おまけに体中に包帯を巻かれ、まるでミイラのようだった。
「あ、病院か・・・ん?」
身体を起こして横を見てみると、後藤の姿があった。
椅子に座ったまま寝ているようだ。

「失礼します」
看護婦がドアをノックして部屋に入ってきた。
見ると昨日と同じ、島田看護婦であった。
彼女は中澤と目が合うと、意地悪そうに笑いながらこちらに近づいてきた。
「お帰りなさい。昨日よりも随分ひどくなっていますね。
マンションのベランダから落ちたんですって?」
「え?」
「そちらの方が言ってましたよ。
キチンと治療しないからベランダから落下したりするんですよ。
まあ、運よく木に引っかかったから、最悪の事態にはならなくて良かったですけどね」
「あ、はは・・・」(そっか、うまくやってくれたんやな)
中澤は後藤に眼をやり、心の中で感謝した。
「じゃあ、先生呼んで来ますから」
そう言って島田看護婦は病室を後にした。


537 :六部198:2006/03/22(水) 02:12:24.62 0
銀色の永遠 〜リロード〜41

「はあ・・・また、入院か・・・」
中澤は眠る後藤を横目に、独り溜め息をついた。


・・・この後中澤は、後藤との交流を再会する。
そして、同病院に入院中の石川に偶然出くわすことになる。
一瞬緊張が走ったが、刺客の件は一切知らされていなかったらしい。
(勿論、新垣とのことや刺客のことなど直接的な表現は避け、遠まわしに聞いたのは言うまでもな

い。)


中澤裕子 再起不能 入院
スタンド名 ワイフ・オブ・クロウ

新垣里沙 再起不能
スタンド名 ラブ・シード

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・



543 :六部198:2006/03/22(水) 04:05:11.13 0
銀色の永遠 〜リロード〜42

・・・そして数ヵ月の月日が流れる。

〜中澤の部屋〜

無事に退院した中澤は、新しい住居も決まり、また普段の生活に励んでいた。
そしてその間、不思議と寺田の刺客が現れることはなかった。
そのことにわずかな疑問を抱きつつも、平穏な暮らしが続いていることに
ほっとしていた。

ある休日。
いつものようにわざわざ他町から訪ねて来る
胡散臭いセールスマン『エリック亀造』とのトーク後、
真昼間からビールを飲んで家でくつろいでいた。

そんな中、不意に電話の音が鳴り響く。

プルルルルルルルルル・・・・・プルルルルルルルルル・・・・・


544 :六部198:2006/03/22(水) 04:06:30.51 0
銀色の永遠 〜リロード〜43

「・・・ん?なんや?」
中澤は立ち上がって電話に向かっていくと、受話器を取った。

「はい、中澤ですが」

『もしもし?』
受話器の向こうから、聞き覚えのある声する。

「おう、ごっちゃんやないか!」

『・・・』

返事がない・・・
そして、なにやら様子がおかしいと気づくのに、さして時間はかからなかった。

「後藤・・・?」





『・・・裕ちゃん・・・もう我慢ならないんだよ。町が・・・杜王町が汚されていくのが
我慢ならないんだ』


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・



TO BE CONTINUED…