10月2日 @

die side:黒衣の少女

気が付いたらここにいた。
自分が何なのか、どこから来たのか、良くわからない。
鏡にも映らないのでどんな顔をしているのかも解らない。

ただ解るのはここに、この町で私は生きていた事だ。

探せば、きっと解るはずなんだ。私の名前も私自身も

alive side:嗣永桃子

舞波が居なくなってから1ヶ月が過ぎた。
探索も空しく、舞波は見つからない。
舞波は誰にも言わなかったけれど、一人で能力者を調べるなんて危険な事をしていた。

舞波はあの「スーツの男」に・・・・・・・殺されたんだ。

「で、わたし達にどうしろって?」
夏焼雅は私のほうを見ないでそう答えた。
「どうしろって!そんな言い方は無いんじゃないのッ?」
私は雅の冷たすぎる言動に思わず制服の襟首を掴み掛かってしまった。
「やめなよ。桃子。これは・・・どうにも出来ないよ・・・・その「スーツの男」だって見つからないし。」
清水佐紀は私の手を取りなだめるように言った。
「そうだよ。もも。舞波の能力の事を良く解っているなら。どんなのが相手か解るんじゃないの?」
須藤茉麻が続けてそう言った。
「あたしたちじゃ勝てないだけじゃなくて死人がでるよ。」
熊井友理奈の言葉に反論出来なかった。
「みんな、悔しくないわけじゃないよ。」
徳永千奈美の言葉も解りたくなかった。
「このままだったら、私たちは舞波を見殺しにしたのと同じじゃないッ!」
「見殺しになんかして無いよ。桃はみんなのことをそんな風に思っているの?」
菅谷梨沙子の言葉は自分の焦りを見透かされているようだった。

私はその場から走り去った。


10月2日  A

die side:黒衣の少女

私を知っているのは誰だろう?
家族は居るのだろうか?友達は?

解らないから探しているのに・・・
探しているのに見つかるのだろうか?

私は・・・・

alive side:夏焼雅

「何なの?アイツ。舞波の事・・・誰も悔しく無い訳無いじゃないッ」
私は硬く、硬く拳を握り閉めた。
「しょうがないよ。みや・・・一番仲が良かったの桃じゃない。私たち以上にそう感じるんだよ。」
佐紀は私の拳をにぎってなだめた。
「そう・・・そうだね。」
私はその場を離れ
「放っておくと心配だから・・・」
と言って桃子の後を追った。

私だって舞波を殺ったヤツは憎い。
だけど、相手を見つけようにも舞波以外、誰もそんな能力を持っていないし
この1ヶ月、件の「スーツの男」は発見出来ていない。
佐紀の言う様に「どうにも出来ない」状態なのだ・・・・・・。

「桃ってこんなに足が速かったかな?」
すっかり見失ってしまった。
「あっ!」
   ドッ!
「ごめんなさい!」
「・・・・・・・いや、大丈夫だ。」
桃子を探す余り、前を見ずに歩いていたのでぶつかってしまった。
「これ、落としましたよ・・・」
そう言って私はサラリーマン風の男に
ボーリングの爪切りを渡した。


10月2日   B

die side:黒衣の少女

学校へ行ってみる事にした。
多分、わたしは生きていれば学生だった。と思う。
行けばきっと何か解るかも知れない。そう思えた。
いま、制服を着た娘が隣を通りすぎた。
その先に学校があるのだろう。

・・・・・いま通りすぎた娘。なんだか気になるな・・・・

alive side:須藤茉麻

雅を追って佐紀まで行ってしまった。
正直、残された私達は何をすればいいのかと言いたかった。
「どうしょっか?」
「どうするも、こうするも、みやがももを連れて来るのを待つしかないジャン」
千奈美の意見も、もっともだと思うけど・・・・
「ここでジッとしているのは何だか」
「舞波が居ないんだからバラバラに出てったらハグれるよ。」
友理奈の言葉に塞がれた。

思えば私達は何と言うバランスの元で成り立っていたのだろう。
自分たちの不得意や不足している能力をお互いで補完し合っていたのだ。
一人欠けても私達はダメだったのだ。
舞波がいたからこそ安心できた展開がまま有る。
この先、7人でやっていけるのか?
それが私の心を重くする。

「大丈夫だよ。そんなに心配しなくて大丈夫だよ。」
梨沙子の心配も有りがたい・・・けど。

私はぼんやりと校門のほうを見た。

何だろう・・・・アレは


10月2日  C

die side:黒衣の少女

少し歩くとさっきの女の子が出て来たであろう校門に着いた。
「ぶどうヶ丘中学校」
コレに見覚えがある!
きっと私が通っていた所だ!
あそこに居る子達も、もしかしたら知り合いなのかもしれない。

alive side:熊井友理奈

茉麻の指さすほうを見た。
校門の所に、黒い陽炎のようなものが動いている。

「スタンドだッ!」

射程距離の短い梨沙子を囲むように陣を組む。
私は「フィール・イージー」を人型に「設定」して警戒をした。
「ちなッ!」
「今、やってる!目標の2m手前ッ!」
相方、千奈美の潜水艦形スタンド「シークレット・ディーヴァ」の潜望鏡が地面から出ている。
「どう?」
「・・・・・今、感知してるけど・・・・」
「・・・・・・」
千奈美の顔が青ざめる。
「どうしょう・・・・スタンドじゃぁ・・・無いよ・・・・」
スタンドじゃ無い?じゃあ何なんだろう?
え・・・待って、もしかして?
そう考えている間に陽炎が接近してきた。
ス・・・・スタンドの攻撃がオバケに通じるのだろうか?
私がフィール・イージーで攻撃を試みようとした、その時だった。
「舞波!」
梨沙子のその言葉は私を止めた。
「舞波?」
陽炎が私達の所でゆらめいた。
「舞波・・・・なの?」
陽炎は嬉しそうにゆらめいた。


10月2日    D

die side:石村舞波

「石村舞波」
そうだ!これが私の名前だ!
炭酸飲料の缶ブタを開けたようにアタマの中がスッキリしてくる。
私の名前を呼んでくれたのだから私の知り合いなのだろう。
彼女たちと居ればもっと自分の事を思い出せるハズ。

でも変だな。あの子がいない・・・
あれ?   あの子って誰だっけ?

alive side:菅谷梨沙子

梨沙子はスタンド能力を身に付ける前から普通の人には見えないものが見えていた。
そのおかげで随分と変わり者扱いを受けていたが能力を身に付けてからは
「そういう友達」も出来たし、見えていたものはスタンドだったという風に思い込んでいた。

だが、この黒い陽炎は間違いなく石村舞波そのものである。
舞波が戻ってきてくれたのだ。うれしい、また遭えて本当に嬉しかった。
「舞波・・・・おかえり・・・」
この言葉に陽炎はうなずく様にゆらめいて見せた。

「舞波」「まいは」「舞波ッ!」
茉麻たちは次々に陽炎に話しかけた。
舞波はゆらめいて見せた。

「そうだ。ももちに遭わせてやろうよ。」
舞波がここにいるなら一番遭いたいのは桃子だろう。
そう思った私は居ても立っても居られなくなった。
「え?」
呆けた茉麻たちを尻目に
私は走りだした。


10月2日   E

die side:石村舞波

私の名前を呼んでくれた子がいきなり走りだした。
何処へいくのだろうか?
何だか解らないけど付いて行って見よう。

「ももち」・・・この言葉は何か引っかかるな・・・・
その子に遭えば解るのかな?

alive side:徳永千奈美

いきなり梨沙子が走りだした。
大体、何処へ行くとも言わずに行ってしまった桃子をどうやって探すつもりなのか?
「ああッ!もうッ!!」
私は走り出し梨沙子を止めた。
「ちなッ!何するの?舞波を早くももちに遭わせないと!」
静止を振り切ろうとする梨沙子の肩を掴んで言った。
「居る場所も解んないで見つかるとか思ってんのッ!もう本当にしょうがない!」
私は深呼吸をすると「シークレット・デーヴァ」を地面に深航させた。
「ソナー・レベル5ッ!」
キィイイイィイイイイイィイイイイイイイイイィイン
「あ〜ぁ。言いたくなかったけど、私の「S・ディーヴァ」の射程距離、本当はもっと広いの。」

千奈美の「シークレット・ディーヴァ」は地中や物体内を自在に潜行し索敵や探索を行う
尖兵の役割を担っていた。本人は保身の為に精々10mが感知限度という風に言う様にしていた。
もっとも最大感知範囲1kmの「レベル5」は余りにも大雑把にしか解らない。
だから実戦性に欠ける行為は控えたかったのだが、思わず使ってしまった。
          私も桃に舞波を遭わせたいのかな?
「やっぱり幾つも写っている。みやのも佐紀のも桃のも区別が付かないよ。」
「あばッ?」
「だから1つずつ、その場所を当たっていくしかないよッ!」
「良いッ!梨沙子一人じゃなくて私や友理奈、まぁさんも全員いっしょだかんねッ!」


10月2日     F

die side:石村舞波

私は彼女たちと一緒に私に繋がる人を探しに出た。

早く逢ってみたいと思う。早く逢わなければとも思う。

なんだろう、この胸騒ぎは・・・。


alive side:夏焼雅

ボウリングの爪切りを渡した途端、サラリーマンの目つきが変わった。
おまけに私の手に触れてきた。
「ちょっとッ!やめてくださいッ!!」
私はその手を払いのけて男から距離を取った。
不愉快だった。充分不愉快だった。
半歩でも近ずいたら、痛い目に遭わせてやる。
そう思い男を睨みつけた。

「おいおい、そんなに怖い顔をするものじゃあない。」
「だがいい、気にいったよ・・・・少々幼い様だがな。」

「私の名前は吉良吉影・・・・君の名前は?」
「中学生をナンパかよッ!この変態野朗ッ!」
「質問にッ!」
答えろ。と言いかけた吉良の左耳に痛みが走る。
「失せろよ・・・。次は額に穴が開くッ!」

「ふふ・・・そうか・・・・お前もそうか・・・・」
     ズギュウウュン
吉良は「キラークィーン」を出してみせる。
「・・・・お前も?」
「『スタンド』だったな?この間も一人仕留めたばかりだよ・・・」
「この間・・・・まさか・・・?」
「私の名前は吉良吉影。もう一度聞こうお前の名前は?」
「夏焼雅ッ!」
私は殺意をむき出して答えた。
「今からお前を殺す人間の名前だッ!」
「みやび・・・・・か実に良い名前を貰ったね。」
「早速、恋人になってもらおうか?」


10月2日    G

die side:石村舞波

胸騒ぎがする・・・・。

これは悪い予感・・・・なのかな・・・

alive side:清水佐紀

「参ったなぁ・・・。」
みやの後を追っていたら・・・・有り得ない事だけど
道に迷ってしまった。

というより、この場所から「出れなくなってしまった」

角を曲がると・・・・・またポストだ・・・・・

もぉ〜。どうなっているんだろう。急いでいるのに。

「あなたも、道に迷ったの?」
後ろから声を掛けられた。
女の人・・・・音の位置の高さから私より少し背は高い・・・・
普段ならば警戒する必要も無い、けれど・・・・・
「道に迷ったのでしょ?」
私は身体を反転させて距離を取りながら振り返った。
ふ・・・・・普通の人?
それが私の杉本鈴美の第一印象だった。

「ふふ・・・・どうしたのそんなに警戒して」
私は警戒を解かずに
「あなたは・・・・」
とだけ返事をした。
「ハァ〜。さっきの子もそうだけど用心深いのね〜。」
「さっき?」
「嗣永桃子ちゃん。同じ学校なんじゃないの?」
「桃が・・・ここに・・・」
「もしかして・・・・貴女も石村舞波ちゃんの知り合い?」
「舞波?なんで舞波の事を知っているんですかッ!」
「そうね、まずはあたしの事から話そうか・・・・」


10月2日    H

alive side:徳永千奈美

「えぇ〜と、もうすぐ。15m位!」
私は感知反応をみんなに伝える。
シークレット・ディーヴァに感知しているのは・・・・誰だろう

alive side:嗣永桃子

杉本鈴美さんから舞波の消えた真相を聞いてしまった・・・・
解っていてもつらい・・・・
舞波以外にも鈴美さんや数え切れないほどの人がアイツの手によって殺され続けているらしい。
こんな事が許される訳が無いッ・・・・
あの男・・・何処にいるんだ・・・・絶対許せない・・・

「桃ッ!」
声の方を振り向く
雅と佐紀以外いつもの面子だ・・・
「みんな・・・」
私は力なく答えた。

「ももちッ!舞波ッ舞波が帰ってきたよッ!!」
私に飛びつくように梨沙子が駆け寄ってきた。
「舞波?」
私は話が読めないでいた。

目の前に黒い陽炎が揺らめいていた。

何故だか解らないけれど・・・・涙があふれて来た。


10月2日     I

alive side:清水佐紀

私は鈴美さんから「殺人鬼」の事、「舞波」の事を聞いた。
「ここが出口。あなたもアイツに狙われているかもしれない・・・くれぐれも・・・ね。」
私は鈴美さんに礼を言おうとした瞬間「何か」か伝った。
「あッ?」
「大丈夫?鼻から血が・・・・」
鈴美さんの気遣いに
「大丈夫です。」
とだけ答えてその場を足早に去った。
血をハンカチでぬぐいながら思い出す。
前にもこう言う事が在った。
鼻から血が出て、この嫌な感覚。
「みや・・・・・」
私は感覚に任せ夏焼雅のいる場所に急いだ。

alive side:夏焼雅

「どぉおぉおおぉぉぉぉぉおりゃやぁぁぁあぁあぁぁあぁッ!!!」
   ズッゴォォオオォオォオオオオンンンンッッッ!!!!!
近づくキラに向けて長槍「セクシー・アダルティ」を叩き込む!
「ほう?いい威勢だね。だが威勢だけでは・・・・」
「なッ?」
キラはセクシー・アダルティをガードしたまま後方に浮く!
「オォイ!最長10m!いくべぇ!」
   グゥィイイイイイイイイイィイイイイイイッッ
私はセクシー・アダルティに力を注ぎその伸びを加速させるッ!
キラの身体は路地を抜け暗がりの壁に叩きつけられた。
    ドゴォオオオオッ!
「中々・・・・面白いマネを・・・するな。」
キラはダメージを感じていない!
壁に激突する瞬間にスタンドを使って受身を取ったか?
「・・・・・あんただって抜け目がないね」
私は履き捨てるように言った。
間合いでのアドバンテージはコチラに有る。
「後悔したって遅いから・・・」
槍の標準を人中に合わす。
「ふふ・・・・そう焦るなよ。ここは人も来ない。ゆっくり相手をしてやるよ。」
キラは手を振って周りを見回して見せた。
「・・・・・ッ?・・・・ッッ!!」
ここは舞波の「信号弾」の射出された場所だった!
「お前のトモダチの墓場だろう?」
キラの嘲る様な表情が私を激昂させた。
「あァああああぁあああああああぁぁあああッッッ!!!!!!」


live side:徳永千奈美

桃も舞波に逢えたし(幽霊だけど・・・)あとは佐紀さんとみやを拾っていけば
一件落着。とっととすまして帰ろうか・・・・・
私は右手の甲に浮ぶ「シークレット・デーヴァ」の感知レーダーに目を落とす
「え〜と動いていない機影x3・・・・x3ッ!?」
感知レーダーはスタンド使いのみの設定・・・・て事は〜? 

alive side:夏焼雅

「おぉ!夏焼家槍戯!雅棟燐虞槍ッッッ!!!!!」
私自身の能力!秒間60連撃!
それに乗せて「セクシー・アダルティ」の伸縮、可変、自在の刺撃!
「蜂の巣にしてやるッ!」
私は連撃を早める!が妙だ?
キラのあの表情・・・・!
私の攻撃を防ぐのがやっとの癖に「何かを仕掛けた」みたいな表情。
まさか?コイツの能力は?

そう思った瞬間。前方の空間が  歪んだ

「セクシー・アダルティッッ!!!」
   ドボァアァアァッァァァッァァッァアアン
「うおぉお!伸びろッッ!!」
私はセクシー・アダルティを足元に突き刺し棒高跳びの様にその場から離脱した。

「うぅ〜む。距離に・・いや問題があったのは弾のほうか?慣れがもう少し必要か?」

弾?コイツの能力は爆発する「見えないモノ」を射出する能力なのか?
舞波が居れば簡単に解るのに・・・

舞波・・・・力を貸して・・


10月2日   K

alive side:吉良吉影

『ふむ。思いがけず「空気弾」のいい練習になったよ・・・・。』
『血塗れの君も美しいな・・・・ふふ・・・「手」には傷を付けずキレイにしておいた』
『その苦心も解ってもらいたいものだよ。』

『遊びは終わりだ・・・・さあ私の元に来るんだ。手だけのキレイな体でね。』

alive side:夏焼雅

「腕が・・・・上がらない・・・この出血・・・ヤバすぎる・・・」
キラの「爆発するモノ」の攻撃に直撃こそは
避けたものの深手を負ってしまった。
この場から逃げようにも、
槍に手をかけるのが精一杯だ・・・
だが・・・ヤツもこの状況に「油断」している。

『遊びは終わりだ・・・・さあ私の元に来るんだ。手だけのキレイな体でね。』

一瞬でも虚を付けば・・・勝機が有る。・・・一瞬でも

『最後は派手に消えて貰おう、この接触弾でね!』

「!」
触れると爆発するヤツッ?マズイ!動けないッ!くゥッ!このまま終わるのかッッ?!

「舞波・・・・」
私は舞波のカタキを討てずにこのまま・・殺されてしまうのか?
「ベリー・フィールドッ!」    

ドウゥウゥウウゥンンッ!

爆発音はしたものの 私は無事だった。
彼女の無敵の盾に依って・・・
「間に合ってよかったッ!みやッ!諦めたらダメだよ!」
あぁ!この声は・・・
「佐紀・・・ちゃん・・・」
見れば彼女の顔に血を拭った後があった
「あの時」みたいに私の窮地を感じてくれたのだろうか?
私は佐紀の肩にしがみ付き身体を起こす。
「そうだね・・・諦めたら、舞波に笑われるよ。」
舞波!私に力を貸してッッツ!
「夏焼家槍戯!牌屡蕃珂ァアァッ!!!!!」


10月2日  L

alive side:清水佐紀

みやの渾身の一撃は殺人鬼のガードした腕ごと身体を貫いた!
虫ピンで刺した様に左上腕部と左鎖骨を貫いている。
致命傷では無いが十分に重傷だッ!
「みやッ!」
私の肩を掴んだ雅の手の力が弱くなっていくッ!
「大丈夫・・・もう少し肩かしてね。」
雅はそう言ったがその身体はどんどんズリ下がっていく。
私は雅の身体を強く抱え上げた。
私が信じてさえいれば雅は何処までも高みにいける。
その為なら私はどこまでも彼女を守る「傘」になろう。

「?」
重傷のはずの殺人鬼が震えながら右手をこっちに向けている。
それと同時に空気の歪みが向かって来た。
「みや?これはッ!」
「さっきの「爆発するヤツ」。」
雅の呼吸が激しくなってきた。
これ以上、長引くのは危険だッ。
「佐紀ちゃん。次で仕留めるッ!」
「爆発した刹那。それで決める」

私の仕事は雅を信じる事なのだ。
異存など無い。爆発した瞬間「セクシー・アダルティ」を引き抜いて
完全に急所を狙う。今度は私が身体を押さえて固定している。

「大丈夫だよ!みやッ!」

歪みは2m、1mと近づいてきた。
40cm、20cm。来たッ!

     パンッ!

予想より遥かに小さい音で歪みは「ベリー・フィールド」に接触して爆ぜた。

「?ッ佐紀ちゃんッツツ!」
雅の声に続いて私の後ろから爆発音が鳴り響いた。

ワンテンポ遅れて私自身が爆撃を受けたのに気付いた。


10月2日   M

alive side:夏焼雅

   ブシュユウゥゥウ!
佐紀の身体から鮮血が迸る。
こっちに真っ直ぐ向かってくるヤツはフェイクで
死角を使って迂回させて来たヤツが爆発したのだ。
キラは私には使わなかったが「歪み」を操れるようだッ!クソッ!!

『お前が消えれば、私を固定するこの槍も消える・・・・これが本当の終わりだ。』
    ドバァアッ!!
キラは私の身体が動かない事を良い様にでかい「歪み」を打ち込んで来た!
佐紀がやられた今、私に防ぐ術はない・・・・。

「歪み」はどんどん近づいてくる。
「ク・・・ッ!」

20cm、10cm。ダメだ当たるッ!
そう思った瞬間、目の前に立方体の展開図が現れた。
パタッ  パタッ パタッ
あっという間に「歪み」を箱がラッピングして地面に転がった。
「コレは・・・まあさの・・・・・」

「トゥデイ・イズ・マイバースディッ!」

「みんな・・・・」
声の方を向く私に
「みやッ!そのまま後ろに後方回避ッ!」
友理奈の指示が飛ぶ!私はキラからセクシー・アダルティを引き抜き
急いで縮め槍先を足元に、柄に佐紀を引っ掛けてS・アダルティを伸ばしみんなの元に回避する。
「佐紀ちゃんがやられている・・・・梨沙子、お願い」
「あばばッ!ファイアフライズ・スターッ!」
    ギュンッツ!!!
梨沙子の『物体を溶接する能力』でたちどころに佐紀の出血が止まる。
「さてと、これでさきさんも無事ッ!」
茉麻は自らのスタンド能力で立方体に「ラッピング」したキラの爆撃を玩んでいる。
「まぁ、みやはりさこに怪我を治して貰っていなよ。」
    ズハァッ!
私は目を離していないのに係らず。手品のようにもうひとつ「立方体」を手にしている。
「それじゃあ、友理のを投げつけるから千奈は援護よろしく。〆はももでッ!」
そう言うや否や茉麻は10mは離れているキラにむかって「立方体」二つを投げつけた。


10月2日   N

die side:石村舞波

この子達は清水佐紀と夏焼雅・・・・そうだ思い出した。仲間だ。私の大事な仲間だ。
二人とも酷い怪我をしている・・・・誰に?・・・アイツにか?

アイツ・・・アイツはッ!

alive side:須藤茉麻

目標までの距離10m。その程度なら苦も無く当てられる。
問題はどう着弾させるか?だ。
「ちなッ!」
千奈美の「シークレット・ディーヴァ」の攻撃を催促する。
地面に潜航している「S・ディーヴァ」の魚雷が地上の標的に向かって射出される。
ドゥッ!ドゥッ!!ドゥウッ!
『このッ!』
標的は無傷の右腕で魚雷を跳ね除ける。その一瞬が欲しかったのだ。
「BOX!オープンッ!」
私の掛け声と伴に「トゥディ・イズ・マイバースディ」の展開図ら爆撃が開放される。
   ドッゴォオオォン!!
標的の頭上で爆発が起きる。もう少し引き付けて開けてたらオイシイ展開だったかな?

alive side:熊井友理奈

『ぐぁっなんだ?』
爆撃の後、サラリーマンに白い粉が舞いかかる。
私の「フィール・イージィ」が見事に着弾した。
残酷なようだけど佐紀や雅にこれだけ重傷を負わせたんだ。
苦しんで貰わないと。ね

「フィール・イージィッ!ディーハイドレイションッ!!」

サラリーマンが悶え苦しみだした。もっともだろう。
粉・・・私のスタンドがかかった所からは強烈に身体の水分が取られて
いるのだから。脱水している所はひどい火傷のような痛みが走る。

「人を苦しませた分。苦しむべきだよ・・・・」

もうこれで終わりだろう。そう思った私の横を桃子が通りすぎる。
「まだ、フィール・イージィが飛び散っているから近づかないほうが良いよ。」
静止を聞かずに歩みを止めない桃子の肩と掴んで止めようとした私の右腕が爆ぜた。
「な・・・・?」


10月2日    O

die side:石村舞波

また友達は傷付けられた。友理奈の鮮血に桃子が赤く染まる。
アイツはどんな権利があって簡単に人を傷付けるのか?
許せない。絶対に許せない。

alive side:須藤茉麻

あっと言う間の出来事だった。標的は友理奈のスタンドを爆撃したようで
出ている血ほどのダメージはなさそうだが。あの状態からまだ反撃してくるとは。
千奈美に次の攻撃の合図を送ろうとした途端。

舞波の陽炎が強く揺らめき始めた。
まるでカーテンをくぐる様にのように。

舞波がそこから出て来た。

regeneration side:石村舞波

どうしてか解らないが私、石村舞波はまたここに戻ってこれたようだ。
今度は私は不可視の存在ではなく生前のような形なのだろう。

私は私が為すべき事のために戻ってきたのだ。

歩をすすめ右腕から血を流す友理奈に止血をする。
「もう大丈夫だよ。」
「舞波・・・・ありがとう・・・。」
私は友理奈にスタンドを引っ込めて下がるように促した。

「ももち。ひさしぶり・・・」
「・・・・まいはッ!」

「また何時もの様にやろうよ、私がサポートするから。」
私の言葉に桃子は笑って答えた

私の人生を終わらせた殺人鬼。ソイツは私の大切な仲間も傷付けた。
「許せないッ!いや許さないッ!!パッションE−CHAE−CHA δッ!!」
         ギュンッ!
「ジャミングウエーブッ!エクストリィイームッツ!!!」
   グゥキュウウウウウウウユウウウウウウウウュン!!!!!


10月2日    P

石村舞波のパッションE−CHAE−CHA δから発された波動は渦となり吉良吉影を取り囲む。
「くっ!誰かと思えば・・・・」
波動の渦を掻き消す様にキラークィーンの右腕を打ち下ろす。

「久しぶり、殺人鬼さん。殺した人間にこうやって会うのはどんな気分?」
舞波は吉良を嘲るように言ってみせ挑発する。
「コイツが舞波や鈴美さん・・・ほかに大勢を殺している・・・殺人鬼・・・」
桃子の腕が戦慄く。
「あの時のスーツの男じゃない!」

「・・・そうか・・・カワジリコウサクではない事を知っているのか・・・」

一瞬を付き吉良のキラークィーンは桃子の身体に触れる。
    ドグィァアアンッ
瞬く間に爆ぜる桃子の身体・・・。

だが次の瞬間、吉良の目の前にはビデオテープを巻き戻したように爆破したはずの桃子が居た。

「そんな?このッ」
    ドグゥアアアアン
       「そんな?このッ」
             ドグゥアアアアン
              「そんな?このッ」
                   ドグゥアアアアン   
                     「そんな?このッ」
                           ドグゥアアアアン
                            「そんな?このッ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・

「舞波ッ?これは・・・・どういう事?」
桃子は状況の異常さに慄いた。
殺人鬼はこちらも見ずに一人ゴトをずっと言っている。
「ふふ・・・面白いよね。私の最初のジャミング波でもう感覚器が狂っちゃっているんだ・・・」
「さぁ?どうする?ももち?」


10月2日     Q

alive side:嗣永桃子

私の目の前に舞波を殺した許しがたい存在がいる。
この男は鈴美さんを始め多くの人の命を奪っておきながら15年も生き続けている。
コイツのこの感覚・・・・人ではない・・・怪物。そのものだッ!
そう考えると単に怨みではなく「倒すべき相手」なのだ。そう思えた。

「おぉおおおッ!!FLYHIGHッッ!!!」
      ギャーーーーーンン!!!
私は自らのスタンドを出し殺人鬼を対峙する。

『そんなこのそんなこのそんなこのそんなこのそんなこの・・・・・・』

これで全てを終わらせよう・・・・・

「バルッ!」
  ドシィッ!
FLYHIGHの攻撃を受けた部分が風船の様に膨張し爆ぜる。
『ぐぁッ!?なんだイキナリ攻撃をッ!?』
この一撃で殺人鬼も目が覚めたようだ。
「おはよう。よく痛みを味わっておくといいよ。」
桃子はFLYHIGHにありったけの力を込める。
「バル!バル!バル!バル!バル!バル!バル!バル!バル!バル!バル!バル!」
連撃を受けた殺人鬼はさながら葡萄のように全身が膨れ上がる。
「ウォオオオォオオオォムッ!!バル!バル!バル!バル!バル!バル!バル!バル!バル!!!!!」
『そんな・・・この私が・・・切り・・抜けられない・・・トラ・・・プギッ!」

           パァンッ!

その音を最後にそこには血の海だけが残った。


10月2日   R

encore:ByeBye またね

「これで終わったね・・・」
舞波は血の海で己を殺した殺人鬼の死を確かめるとそう呟いた。

「終わりって舞波ッ?」
桃子の言葉を遮るように
「久しぶりに逢えたのに・・・残念だけどこれで終わりなんだ。」
舞波は別れの言葉を放つ。

「みんな・・・」
仲間のほうを振り向いた舞波の身体は透け始め、足は宙に浮き出した。

「駄目ッ!」
梨沙子は「ファイアフライズ・スター」の能力を使って自らの手と舞波の身体を
「溶接」して固定しようとする。
それも空しく霞みを掴むように手に平から舞波の身体は消える。
「梨沙子。これは決まってた事なんだ。私はもう帰らなくちゃ。」
舞波の言葉に梨沙子は泣き崩れる。
「舞波これでもう逢えないの?」
茉麻の問いに
「お盆になったら逢えるよ。」
冗談を含めて言ったつもりだが
茉麻は号泣してしまった。
「マイハッ!お供えは何がいいッ!!?」
千奈美の言葉に
「苺。」
と即答し。
「千奈美。あまり意地を張らずに、皆と仲良くね。」
と千奈美に手を振った。
「舞波の事ッ!絶対忘れないから!」
「私も忘れない。私達は生まれ変わっても絶対また会えるよ。」
そう言って友理奈と握手しょうとしたが悲しいかなソレは叶わなかった。
「舞波・・・」
雅に抱きかかえられて佐紀が私の方に手を伸ばす。
その手に触れるように
「佐紀ちゃん。私は佐紀ちゃんの事、大好きだったよ。」
私は触れる事の叶わない手を重ねた。
「舞波、私・・・」
雅は私に何か言おうとして口ごもった。
「私の為に闘ってくれてありがとうッ!」
私の為に大怪我までしてくれた雅。ありがとう、そしてごめんね。

私の身体はどんどん浮き上がる。

「舞波・・・行っちゃやだよぅ・・舞波ぁ・・・」
桃子の言葉は私の胸を締め付けた。

「桃子・・・・」


「いつか、いつかまた・・・・星の下で。」